説明

部品実装装置および部品実装装置における基板搬送方法

【課題】複数の基板搬送レーンを備えた構成において、基板搬入順序を合理的に制御して生産性を向上させることができる部品実装装置および部品実装装置における基板搬送方法を提供することを目的とする。
【解決手段】コンベア10A、10B、10C、10Dを並列して成るコンベア列の側方に部品供給部20A,20Bが配設され、上流側装置から受け渡された基板13を振り分ける基板振り分け部M3Bとを備えた構成において、新たな基板13が基板振り分け部M3Bに受け渡されたならば、予め基板データ記憶部に記憶された当該基板品種についての搬入優先順位データおよび搬入優先順位の高い優先基板13*が搬入されるべき基板搬送コンベアのレーン区分を予め設定した搬入レーン設定データを読み出し、実際の基板搬送動作の制御指示がこれらの条件を遵守しているか否かを判定して、結果を表示部に警告として報知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に部品を実装する部品実装装置およびこの部品実装装置において基板を搬送する基板搬送方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
部品を基板に実装して実装基板を製造する部品実装装置には、基板を上流側から下流側へ搬送するための基板搬送機構が設けられており、基板搬送機構によって搬送され所定の実装位置に設けられた基板保持部に位置決め保持された基板を対象として、部品供給部から取り出した部品を実装ヘッドによって移送搭載する部品実装作業が実行される。この部品実装作業の効率を向上させることを目的として、基板搬送機構に複数の基板搬送レーンを有する構成の部品実装装置が知られている(例えば特許文献1参照)。この特許文献例においては、1対のコンベアベルトを平行に並設した構成の搬送装置(基板搬送レーン)を2列備えた例が示されている。このような構成を採用することにより、一方の基板搬送レーンにおける基板搬送動作と他方の基板搬送レーンにおける部品実装動作を並行して行うことができる。これにより、基板搬送時においても部品実装作業の中断が発生せず、生産性を向上させることができるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−31613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のように複数の基板搬送レーンを備えた部品実装装置においては、上流側装置から受け渡される基板をどの基板搬送レーンに搬入するかを動的に制御する基板振り分け制御が必要とされる。従来の部品実装装置では、基板搬送レーン毎に出力される基板要求信号、すなわち当該基板搬送レーンにおいて新たな基板の受け入れが可能となったことを示す信号が出力された順に、基板を搬入する方式が一般的であった。しかしながら上述の従来方法においては、以下のような不都合が避けられない。
【0005】
すなわち、複数の基板搬送レーンを備えた部品実装装置では、実装ヘッドが部品供給部と基板搬送コンベアに設けられた基板保持部との間を往復移動する距離は、基板搬送レーンと部品供給部との位置関係によって異なる。このため、部品供給部に近い方の基板搬送レーンに位置する基板を対象とする場合と、部品供給部に遠い方の基板搬送レーンに位置する基板を対象とする場合とでは、部品実装作業効率において顕著な差異が生じる。
【0006】
ところが従来方法においては、単純に基板要求信号の先後に基づいて基板を搬入する基板搬送レーンを決定してため、部品供給部から近い方の基板搬送レーンが新たな基板を受け入れることが可能な状態になった場合でも、そのタイミングより以前に部品供給部から遠い方の基板搬送レーンについて基板要求信号が既に出力されている場合には、基板は部品実装作業効率の低い部品供給部から遠い方の基板搬送レーンに搬入される。このため、実装作業効率の観点からは本来望ましい基板搬入順序が実現されず、生産性の向上を妨げる要因となっていた。
【0007】
そこで本発明は、複数の基板搬送レーンを備えた構成において、基板搬入順序を合理的に制御して生産性を向上させることができる部品実装装置および部品実装装置における基板搬送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の部品実装装置は、基板を搬送しこの基板を位置決めして保持する基板保持部が設けられた基板搬送コンベアを複数並列して成るコンベア列と、前記コンベア列の側方に配置され前記基板に実装される部品を供給する部品供給部と、上流側装置から受け渡された新たな基板を前記複数の基板搬送コンベアに振り分ける基板振り分け部と、基板振り分け部および基板搬送コンベアを制御することにより、前記受け渡された基板をいずれかの基板搬送コンベアの基板保持部に搬入する基板搬送動作を実行させる基板搬送制御部と、前記部品供給部から部品を実装ヘッドによって取り出して前記基板保持部に位置決め保持された基板に実装する部品実装機構と、前記基板搬送コンベアにおける基板の有無検出結果に基づいて当該基板搬送コンベアが新たな基板を受け入れることが可能な状態であるか否かを判定し、この判定結果に基づいて基板要求信号を出力する信号出力部と、前記基板の品種に対応し当該基板の実装作業負荷の大小順に付与される搬入優先順位データ、および前記搬入優先順位の高い基板が搬入されるべき基板搬送コンベアのレーン区分を予め設定した搬入レーン設定データを記憶する記憶部と、当該部品実装装置の稼働状況を表示する表示部とを備え、前記基板搬送制御部は、前記新たな基板が基板振り分け部に受け渡されたならば、前記搬入優先順位データおよび搬入レーン設定データを読み出し、前記基板要求信号が出力されている複数の基板搬送コンベアのうち、前記搬入レーン設定データによって予め設定されたレーン区分の基板搬送コンベアに前記搬入優先順位データにおける搬入優先順位の高い基板が搬入されるように制御指示されていないと判定したならば、前記表示部にその旨報知する。
【0009】
本発明の部品実装装置における基板搬送方法は、基板を搬送しこの基板を位置決めして保持する基板保持部が設けられた基板搬送コンベアを複数並列して成るコンベア列と、前記コンベア列の側方に配置され前記基板に実装される部品を供給する部品供給部と、上流側装置から受け渡された基板を前記複数の基板搬送コンベアに振り分ける基板振り分け部と、前記基板振り分け部および基板搬送コンベアを制御することにより、前記受け渡された基板をいずれかの基板搬送コンベアの基板保持部に搬入する基板搬送動作を実行させる基板搬送制御部と、前記部品供給部から部品を実装ヘッドによって取り出して前記基板保持部に位置決め保持された基板に実装する部品実装機構と、前記基板搬送コンベアにおける基板の有無検出結果に基づいて当該基板搬送コンベアが新たな基板を受け入れることが可能な状態であるか否かを判定し、この判定結果に基づいて当該基板搬送コンベアへの新たな基板の搬入を求める基板要求信号を出力する信号出力部と、前記基板の品種に対応し当該基板の実装作業負荷の大小順に付与される搬入優先順位データ、および前記搬入優先順位の高い基板が搬入されるべき基板搬送コンベアのレーン区分を予め設定した搬入レーン設定データを記憶する記憶部と、当該部品実装装置の稼働状況を表示する表示部とを備えた部品実装装置において、前記基板を前記基板保持部へ搬入する基板搬送方法であって、前記新たな基板が基板振り分け部に受け渡されたならば、前記搬入優先順位データおよび搬入レーン設定データを読み出し、前記基板要求信号が出力されている複数の基板搬送コンベアのうち、前記搬入レーン設定データによって予め設定されたレーン区分の基板搬送コンベアに前記搬入優先順位データにおける搬入優先順位の高い基板が搬入されるように制御指示されていないと判定したならば、前記表示部にその旨報知する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、基板搬送コンベアを複数並列したコンベア列の側方に配置され基板に実装される部品を供給する部品供給部と、上流側装置から受け渡された基板を複数の基板搬送コンベアに振り分ける基板振り分け部と、基板の品種に対応して当該基板の実装作業負荷の大小順に付与される搬入優先順位データおよび前記搬入優先順位の高い基板が搬入されるべき基板搬送コンベアのレーン区分を予め設定した搬入レーン設定データを記憶する記憶部とを備えた構成において、新たな基板が基板振り分け部に受け渡されたならば搬入優先順位データおよび搬入レーン設定データを読み出し、搬入レーン設定データによって予め設定されたレーン区分の基板搬送コンベアに搬入優先順位の高い基板が搬入されるように制御指示されていないと判定したならば表示部にその旨報知することにより、部品実装作業効率上有利な方の基板搬送コンベアに実装作業負荷の大きい優先基板を確実に搬入することができ、基板搬入順序を合理的に制御して生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施の形態の部品実装システムの構成を示すブロック図
【図2】本発明の一実施の形態の部品実装装置の平面図
【図3】本発明の一実施の形態の部品実装装置の制御系の構成を示すブロック図
【図4】本発明の一実施の形態の部品実装装置において記憶される基板データの説明図
【図5】本発明の一実施の形態の部品実装装置において表示部に表示される設備稼働状況の表示画面の説明図
【図6】本発明の一実施の形態の部品実装装置における基板搬送動作の動作説明図
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。まず図1を参照して、部品実装システム1の構成を説明する。図1において、部品実装システム1は、複数の部品実装用装置である基板供給装置M1、スクリーン印刷装置M2、部品実装装置M3、外観検査装置M4、リフロー装置M5、基板回収装置M6をX方向(基板搬送方向)に直列に連結して構成されている。ここで部品実装装置M3は、複数の基板搬送コンベアを有する部品実装機構部M3Aの上流側に、スクリーン印刷装置M2から送られた基板を各基板搬送コンベアに振り分ける機能を有する基板振り分け部M3Bを付随させた形態となっている。各装置はLAN2によって相互に接続され、各装置の作業動作はLAN2に接続されたホストコンピュータ3によって統括して制御される。
【0013】
各装置の機能を説明する。基板供給装置M1は、マガジンなどの容器に収納された部品実装対象の基板を取り出して、スクリーン印刷装置M2に供給する。スクリーン印刷装置M2は、基板に形成された部品接続用の電極に接合材料であるクリーム半田などのペーストを印刷する。スクリーン印刷装置M2によってペーストの印刷が終了した後の基板は、基板振り分け部M3Bによって振り分けられた後、部品実装機構部M3Aの複数の基板搬送コンベアのうちの特定の基板搬送コンベアに搬入され、ここで搬入された基板を対象として部品供給部から取り出された電子部品を所定位置に実装する部品実装作業が行われる。
【0014】
外観検査装置M4は、部品実装作業後の基板をカメラによって撮像することにより、実装後の電子部品の有無や位置ずれなど、実装状態の良否判別を目的とした検査を行う。検査の結果が良好であると判定された基板はリフロー装置M5に搬入され、ここで基板を加熱することにより、クリーム半田を溶融固化させて、電子部品を基板の電極に半田接合する。半田接合を終えて部品実装作業が完了した基板は、基板回収装置M6によって回収される。
【0015】
次に部品実装装置M3の構成および機能を図2を参照して説明する。前述のように、部品実装装置M3は本体部としての部品実装機構部M3Aの上流側に、基板を振り分ける機能を備えた基板振り分け部M3Bを組み合わせて構成される。まず部品実装機構部M3Aの構成について説明する。図2において、基台9の上面には、第1基板搬送コンベア10A、第2基板搬送コンベア10B(以下、「第1コンベア10A」、「第2コンベア10B」と略記する。)より成る前側コンベア列11A、および第3基板搬送コンベア10C、第4基板搬送コンベア10D(以下、「第3コンベア10C」、「第4コンベア10D」と略記する。)より成る後側コンベア列11Bが、装置中心線CLを挟んでX方向に配列されている。すなわち部品実装装置M3は、基板13を搬送する基板搬送コンベアを複数並列して成る前側コンベア列11A、後側コンベア列11Bを備えている。
【0016】
第1コンベア10A、第2コンベア10B、第3コンベア10C、第4コンベア10Dは、いずれも固定レール10aと可動レール10bを組み合わせて構成されており、それぞれの固定レール10aと可動レール10bに備えられたコンベアベルトをベルト駆動機構18A、18Bによって駆動することにより、基板振り分け部M3Bより供給された基板13をX方向に搬送する。
【0017】
第1コンベア10A、第2コンベア10B、第3コンベア10C、第4コンベア10Dは、それぞれ部品実装機構部M3Aにおいて実装作業対象の基板13を搬送する第1搬送レーンL1、第2搬送レーンL2、第3搬送レーンL3、第4搬送レーンL4を構成する。第1搬送レーンL1、第2搬送レーンL2、第3搬送レーンL3、第4搬送レーンL4のX方向の略中間位置には、基板保持部12が設けられており、基板保持部12はそれぞれの基板搬送コンベアによって搬送された基板13を位置決めして保持する。
【0018】
それぞれの基板保持部12には、基板検出センサS1、S2、S3、S4が設けられており、これらの基板検出センサは第1コンベア10A〜第4コンベア10Dの各基板保持部12における基板13の有無を検出する。そしてこの基板検出結果に基づき、後述するように、当該基板搬送コンベアが新たな基板13を受け入れることが可能な状態であるか否かが判定される。
【0019】
第1コンベア10A、第2コンベア10Bおよび第3コンベア10C、第4コンベア10Dにおいて、内側に位置する可動レール10bはY方向に移動可能となっており、レール幅寄せ機構17A、17Bを駆動することにより、可動レール10bがY方向に移動し、これにより、固定レール10aと可動レール10bとの間隔によって定められる搬送幅Wを、対象とする基板13に応じて調整することができる。
【0020】
前側コンベア列11A、後側コンベア列11Bのそれぞれの側方には、前側部品供給部20A、後側部品供給部20Bが配置されており、前側部品供給部20A、後側部品供給部20Bには基板13に実装される部品を収納した複数のパーツフィーダ21が並設されている。なお、図2においては、紙面の下方が実装置における前側であり上方が後側に相当する。基台9の上面側には、前側ヘッド移動機構22A、後側ヘッド移動機構22Bによってそれぞれ駆動される前側実装ヘッド23A、後側実装ヘッド23Bが配設されている。
【0021】
前側実装ヘッド23Aは、前側部品供給部20Aから部品を取り出し、第1コンベア10Aまたは第2コンベア10Bの基板保持部12に保持された基板13に実装する(矢印c、d)。同様に、後側実装ヘッド23Bは、後側部品供給部20Bから部品を取り出し、第4コンベア10Dまたは第3コンベア10Cの基板保持部12に保持された基板13に実装する(矢印e、f)。すなわち、前側ヘッド移動機構22Aと前側実装ヘッド23A、後側ヘッド移動機構22Bと後側実装ヘッド23Bは、それぞれ前側部品供給部20A、後側部品供給部20Bから部品を実装ヘッドによって取り出して、基板保持部12に位置決め保持された基板13に実装する部品実装機構を構成する。
【0022】
これらの部品実装機構による部品実装作業において、第1コンベア10Aは第2コンベア10Bよりも前側部品供給部20Aに近接しており、また第4コンベア10Dは第3コンベア10Cよりも後側部品供給部20Bに近接していることから、矢印c、eにて示すヘッド移動経路は、矢印d、fにて示すヘッド移動経路よりも短い。したがって、前側コンベア列11Aを対象とする部品実装作業においては、第1コンベア10Aに位置する基板13を対象とする方が第2コンベア10Bに位置する基板13を対象とするよりも、より高い部品実装作業効率を実現することができる。同様に、後側コンベア列11Bを対象とする部品実装作業においては、第4コンベア10Dに位置する基板13を対象とする方が第3コンベア10Cに位置する基板13を対象とするよりも、より高い部品実装作業効率を実現することができる。このため、本実施の形態では、後述するように、前側コンベア列11Aにおいては第1コンベア10Aを、また後側コンベア列11Bにおいては第4コンベア10Dを基板搬入における優先レーンとして設定するようにしている。
【0023】
次に基板振り分け部M3Bの構成を説明する。基台5上には、1対の第1基板振り分けコンベア6A、第2基板振り分けコンベア6Bが搬送方向をX方向にして並設されている。第1基板振り分けコンベア6A、第2基板振り分けコンベア6Bは、いずれも固定レール6aと可動レール6bを組み合わせて構成されており、それぞれの固定レール6aと可動レール6bに備えられたコンベアベルトをベルト駆動機構8A、8Bによって駆動することにより、上流側(図面左側)より供給された基板をX方向に搬送する(矢印a)。
【0024】
第1基板振り分けコンベア6A、第2基板振り分けコンベア6Bにおいて内側に位置する可動レール6bはY方向に移動可能となっており、レール幅寄せ機構7を駆動することにより、可動レール6bがY方向に移動し、これにより、固定レール6aと可動レール6bとの間隔によって定められる搬送幅Wを対象とする基板13に応じて調整することができる。さらに、第1基板振り分けコンベア6A、第2基板振り分けコンベア6Bは、基台5上において駆動機構(図示省略)によってY方向(矢印b)に一体的に移動可能となっており、これにより第1基板振り分けコンベア6A、第2基板振り分けコンベア6Bを部品実装機構部M3Aに設けられた2つのコンベア列11A,11Bのいずれかと連結させることができる。すなわち基板振り分け部M3Bは、第1基板振り分けコンベア6A、第2基板振り分けコンベア6BのY方向への移動と、第1基板振り分けコンベア6A、第2基板振り分けコンベア6Bによる基板搬送動作とを組み合わせることにより、上流側装置であるスクリーン印刷装置M2から受け渡された基板13を部品実装機構部M3Aの複数の基板搬送コンベアに振り分ける機能を有している。
【0025】
次に図3を参照して、制御系の構成を説明する。図3において、制御装置30はホストコンピュータ3からの指令に基づき、部品実装装置M3を構成する以下の各部を制御する。この指令には、品種の異なる複数の基板を対象とする混流生産において、逐次上流側から受け渡される基板の品種を示す基板品種指令が含まれている。また制御装置30は、内部制御機能として信号出力部31、基板搬送制御部32を備えており、これらの機能により、部品実装システム1の稼働時における部品実装装置M3の基板搬送動作が制御される。基板搬送制御部32が基板振り分け部M3Bおよび第1コンベア10A、第2コンベア10B、第3コンベア10C、第4コンベア10Dを制御することにより、上流側のスクリーン印刷装置M2から受け渡された基板13を、いずれかの基板搬送コンベアの基板保持部12に搬入する基板搬送動作が実行される。
【0026】
この基板搬送動作において、信号出力部31は、第1コンベア10A、第2コンベア10B、第3コンベア10C、第4コンベア10Dにそれぞれ設けられた基板検出センサS1、S2、S3、S4による基板13の有無検出結果に基づいて、当該基板搬送コンベアが新たな基板13を受け入れることが可能な状態であるか否かを判定し、この判定結果に基づいて当該基板搬送コンベアへの新たな基板13の搬入を求める基板要求信号を出力する。なお、ここでは基板検出センサS1、S2、S3、S4を基板保持部12に設け、基板保持部12における基板13の有無を検出するようにしているが、第1コンベア10A〜第4コンベア10Dの下流端部に同様の基板検出センサを設け、基板搬送コンベアから基板13が完全に下流側に排出されたことを検出するようにしてもよい。
【0027】
制御装置30が前側ヘッド移動機構22A、前側実装ヘッド23A、前側部品供給部20A、後側ヘッド移動機構22B、後側実装ヘッド23B、後側部品供給部20Bを制御することにより、第1コンベア10A、第2コンベア10B、第3コンベア10C、第4コンベア10Dに搬入された基板13を対象とする部品実装動作が実行される。認識装置33は、基板保持部12に搬入された基板13や前側実装ヘッド23A、後側実装ヘッド23Bによって取り出された部品を撮像した画像を認識処理する。表示部34は、液晶パネルなどの表示装置であり、ホストコンピュータ3の稼働状況についての所定の項目に関する画像(図5参照)を表示する。記憶部35は、ホストコンピュータ3による基板搬送動作や部品実装動作を実行するための必要なデータを記憶する。本実施の形態においては、記憶部35は実装対象となる基板13についての各種のデータを基板品種毎に記憶した基板データ記憶部37を備えている。通信部36は、他装置やホストコンピュータ3との間でLAN2を介して信号の授受を行う。
【0028】
次に図4を参照して、基板データ記憶部37に記憶されるデータ内容について説明する。図4(a)に示すように、基板データ記憶部37には、基板サイズデータ37a、基準位置データ37b、搬入優先順位データ37c、搬入レーン設定データ37dなど、実装対象の基板についてのデータが記憶されている。基板サイズデータ37aは、実装対象となる基板13の長さ・幅などの寸法を示すデータであり、対象となる基板の品種が指定されるとこの基板サイズデータ37aが読み出され、基板サイズデータ37aに示す幅データに基づいて、第1コンベア10A〜第4コンベア10Dや、第1基板振り分けコンベア6A、第2基板振り分けコンベア6Bの搬送幅Wが調整される。基準位置データ37bは、基板13が基板保持部12に位置決め保持された状態における基板座標系と、部品実装機構部M3Aの機械座標系との相関関係を示すデータである。
【0029】
搬入優先順位データ37cは、基板13の品種に対応して当該基板の実装作業負荷の大小順に付与される搬入優先順位を示すデータである。図4(b)に示すように、搬入優先順位データ37cには、実装対象となる基板13の品種を示す基板品種38a毎に、当該基板における実装作業負荷38bを対応させ、実装作業負荷38bの大小順を示す搬入優先順位38cを付記して構成される。ここで実装作業負荷38bとしては、当該品種の基板に実装される部品数など、その基板を対象として部品実装機構部M3Aが部品実装作業を実行するのに要する作業タクトタイムとの間に明確な相関関係が認められる数値パラメータが用いられる。もちろん試作基板を対象としてタクトタイムを実測して得られたデータを用いてもよい。
【0030】
そして実装作業負荷38bの大きい順に搬入優先順位38cが付され、搬入優先順位38cが高い基板は優先基板と見なされて、予め部品実装作業効率が高いと判定されている優先レーンに搬入されるよう、基板搬送制御部32による基板搬送動作が制御される。すなわち、複数品種の基板が混在して基板振り分け部M3Bに受け渡された場合において、基板データ記憶部37にアクセスして搬入優先順位データ37cを読み出すことにより、各品種の搬入優先順位38cが読み取られ、これらの中で最も搬入優先順位の高い基板が優先基板と見なされる。
【0031】
搬入レーン設定データ37dは、搬入優先順位の高い基板が搬入されるべき基板搬送コンベアのレーン区分を予め設定したものである。すなわち図4(c)に示すように、搬入レーン設定データ37dは、レーン区分38d毎に当該搬送レーンに搬入されるべき対応基板38eを規定したものとなっている。ここでは、搬入優先順位が高い優先基板は、前述のように部品供給部に近接して部品実装作業効率に優れる優先レーンとしての第1搬送レーンL1、第4搬送レーンL4に搬入され、それ以外の非優先基板はその他の第2搬送レーンL2、第3搬送レーンL3に搬入されるよう、予め設定されている。もちろん、基板品種が単一で搬入優先順位が存在しない場合には、第1搬送レーンL1、第4搬送レーンL4に優先的に搬入される。
【0032】
次に図5を参照して、表示部34に表示される表示画面34aについて説明する。表示画面34aは、部品実装装置3Mの稼働状況を表示するとともに、タッチパネル形式の入力部によって所定項目について操作入力を行う機能を有するものであり、以下に説明する所定の項目が詳細表示される。部品実装装置M3の稼働中には、日時データが表示枠41に表示されると共に、生産中である旨が表示枠40に示される。モード変更スイッチ42を操作することにより、自動/手動などの運転モードが切り換えられ、サイクル停止スイッチ43を操作することにより、所定のサイクル終了後の装置停止が可能となる。
【0033】
作業進捗状況表示枠44には、2つの実装ヘッド毎の実装点数の累計が、予定実装点総数に対する割合の形で表示される。装置稼働状況表示枠45の生産枚数表示欄45aには、2つの実装ヘッド毎の生産枚数の累計が、基板単位、ブロック単位で稼働率と共に表示される。また操作スイッチ45b、45c、45dを操作すると、それぞれの項目についての別ウインドウの画面が表示される。操作スイッチ45bを操作すると、各部品供給部におけるフィーダ配置に関する情報が別画面で表示され、操作スイッチ45cを操作すると、各実装ヘッドにおける吸着ノズルの装着状態に関する情報が別画面で表示され、また操作スイッチ45dを操作すると、全般的な稼働状態を示す一般的な情報が別画面が表示される。さらにパーツ切れ状況表示欄46には、各フィーダテーブルにおいてパーツ切れとなっているフィーダ名が表示される。
【0034】
さらに本実施の形態に示す部品実装装置M3においては、基板搬送制御部32の制御機能により、複数品種の基板13が部品実装機構部M3Aの複数の基板搬送コンベアへ搬入される際に、部品実装作業効率上の観点から望ましい基板搬入順序が実現されているか否かを常に監視し、搬送動作実行における制御指令上で望ましくない基板搬入順序となっている場合には、表示画面34aにマシンオペレータにその旨報知するための表示を行うようにしている。
【0035】
すなわち、表示画面34aに設けられた基板搬入予定表示欄47には、次回動作において新たに部品実装機構部M3Aに搬入される基板13のうちの優先基板13*が、制御指令データ上ではどのレーン区分の基板搬送コンベアに搬入されるようになっているかが表示される。基板搬入予定表示欄47には、部品実装機構部M3Aに配列された4つの第1搬送レーンL1〜第4搬送レーンL4が図示され、各搬送レーンには、搬入予定の基板が優先基板13*であることを示す識別表示(図示例ではハッチング表示)を伴った形で表示される。
【0036】
ここで、優先基板13*は、図4(c)に示す搬入レーン設定データ37dによれば、第1搬送レーンL1または第4搬送レーンL4に搬入されるべきものであるが、マシンオペレータによる指示操作上のミスなどによってデータ入力が正しく行われない事態が、ある確率で不可避的に発生する。そしてこのような場合には、基板搬入予定表示欄47にはデータ入力の誤りがそのまま反映された基板搬入態様が表示される。図5に示す例では、本来搬入されるべき第1搬送レーンL1の替わりに、第2搬送レーンL2に優先基板13*が搬入されるように表示されるとともに、表示画面34aに設けられた状況報知枠48には、第2搬送レーンL2における搬入レーン設定を見直すことを促す警告が報知される。そしてこの警告報知を承けたマシンオペレータは、優先基板13*を第2搬送レーンL2に替えて第1搬送レーンL1に搬入するよう、基板搬送の制御指令を手動操作により変更する。
【0037】
次に図6を参照して、部品実装装置M3による基板搬送動作および基板振り分け動作の例を説明する。図6は新たに部品実装システム1の稼働を開始する場合など、部品実装機構部M3Aに全く基板13が搬入されていない状態から、新たに基板搬送動作が開始される場合を示している。すなわち、この場合には図6(a)に示すように、基板検出センサS1,S2,S3,S4はいずれも基板13を検出しないことから、第1搬送レーンL1〜第4搬送レーンL4の全てについて基板要求信号RがON状態となっている。
【0038】
このとき、基板振り分け部M3Bにおいては、上流側から基板13が第1基板振り分けコンベア6A、第2基板振り分けコンベア6Bにそれぞれ受け渡されている。そしてホストコンピュータ3からの指令によって当該基板13の品種を読み取った基板搬送制御部32は、基板データ記憶部37に記憶された搬入優先順位データ37cおよび搬入レーン設定データ37dを読み出し、当該基板13が混在して処理される他の基板よりも実装作業負荷が高い優先基板13*に相当するか否かを判断する。図6(a)に示す例では、これらの基板13はいずれも優先基板13*である例を示している。
【0039】
この場合には、基板搬送制御部32は基板要求信号Rが出力されている全ての基板搬送コンベアのうち、前側部品供給部20A、後側部品供給部20Bに最も近接した位置にあり、搬入レーン設定データ37dに予め設定されたレーン区分のうち搬入優先順位の高い基板が搬入されるべき基板搬送コンベアに、搬入優先順位の高い優先基板13*を基板振り分け部M3Bから搬入させる。すなわち図6(b)に示すように、優先基板13*は、第2基板振り分けコンベア6Bから第4搬送レーンL4へ搬入され(矢印g)、次いで第1基板振り分けコンベア6Aから第1搬送レーンL1へ搬入される(矢印h)。
【0040】
この基板振り分け動作においては、前述のように、搬入優先順位の高い基板が搬入されるように予め設定されたレーン区分との対応関係が順守されているか否かを、基板搬送制御部32によって自動的に判定し、判定結果に応じて必要な警告を報知するようにしている。すなわち、基板搬送制御部32は、新たな基板13が基板振り分け部M3Bに受け渡されたならば、基板データ記憶部37に記憶された搬入優先順位データ37cおよび搬入レーン設定データ37dを読み出す。そして基板要求信号Rが出力されている複数の基板搬送コンベアのうち、搬入レーン設定データ37dによって予め設定されたレーン区分の基板搬送コンベアに、搬入優先順位データ37cにおける搬入優先順位の高い優先基板13*が搬入されるように制御指示されていないと判定したならば、表示部34の表示画面34aにその旨報知する。これにより、部品供給部に近接して部品実装作業効率上有利な方の基板搬送コンベアに、実装作業負荷が高い優先基板13*を確実に搬入することができ、基板搬入順序を合理的に制御して生産性を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の部品実装装置および部品実装装置における基板搬送方法は、部品実装作業効率上有利な方の基板搬送コンベアに実装作業負荷の大きい優先基板を搬入することができ、基板搬入順序を合理的に制御して生産性を向上させることができるという効果を有し、配線基板に電子部品を実装して実装基板を製造する分野において有用である。
【符号の説明】
【0042】
1 部品実装システム
10A 第1コンベア
10B 第2コンベア
10C 第3コンベア
10D 第4コンベア
11A 前側コンベア列
11B 後側コンベア列
12 基板保持部
13 基板
20A 前側部品供給部
20B 後側部品供給部
21 パーツフィーダ
22A 前側ヘッド移動機構
22B 後側ヘッド移動機構
23A 前側実装ヘッド
23B 後側実装ヘッド
M3A 部品実装機構部
M3B 基板振り分け部
L1 第1搬送レーン
L2 第2搬送レーン
L3 第3搬送レーン
L4 第4搬送レーン
S1、S2、S3、S4 基板検出センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を搬送しこの基板を位置決めして保持する基板保持部が設けられた基板搬送コンベアを複数並列して成るコンベア列と
前記コンベア列の側方に配置され前記基板に実装される部品を供給する部品供給部と、
上流側装置から受け渡された新たな基板を前記複数の基板搬送コンベアに振り分ける基板振り分け部と、
基板振り分け部および基板搬送コンベアを制御することにより、前記受け渡された基板をいずれかの基板搬送コンベアの基板保持部に搬入する基板搬送動作を実行させる基板搬送制御部と、
前記部品供給部から部品を実装ヘッドによって取り出して前記基板保持部に位置決め保持された基板に実装する部品実装機構と、
前記基板搬送コンベアにおける基板の有無検出結果に基づいて当該基板搬送コンベアが新たな基板を受け入れることが可能な状態であるか否かを判定し、この判定結果に基づいて基板要求信号を出力する信号出力部と、
前記基板の品種に対応し当該基板の実装作業負荷の大小順に付与される搬入優先順位データ、および前記搬入優先順位の高い基板が搬入されるべき基板搬送コンベアのレーン区分を予め設定した搬入レーン設定データを記憶する記憶部と、当該部品実装装置の稼働状況を表示する表示部とを備え、
前記基板搬送制御部は、前記新たな基板が基板振り分け部に受け渡されたならば、前記搬入優先順位データおよび搬入レーン設定データを読み出し、前記基板要求信号が出力されている複数の基板搬送コンベアのうち、前記搬入レーン設定データによって予め設定されたレーン区分の基板搬送コンベアに前記搬入優先順位データにおける搬入優先順位の高い基板が搬入されるように制御指示されていないと判定したならば、前記表示部にその旨報知することを特徴とする部品実装装置。
【請求項2】
基板を搬送しこの基板を位置決めして保持する基板保持部が設けられた基板搬送コンベアを複数並列して成るコンベア列と、前記コンベア列の側方に配置され前記基板に実装される部品を供給する部品供給部と、上流側装置から受け渡された基板を前記複数の基板搬送コンベアに振り分ける基板振り分け部と、前記基板振り分け部および基板搬送コンベアを制御することにより、前記受け渡された基板をいずれかの基板搬送コンベアの基板保持部に搬入する基板搬送動作を実行させる基板搬送制御部と、前記部品供給部から部品を実装ヘッドによって取り出して前記基板保持部に位置決め保持された基板に実装する部品実装機構と、前記基板搬送コンベアにおける基板の有無検出結果に基づいて当該基板搬送コンベアが新たな基板を受け入れることが可能な状態であるか否かを判定し、この判定結果に基づいて当該基板搬送コンベアへの新たな基板の搬入を求める基板要求信号を出力する信号出力部と、前記基板の品種に対応し当該基板の実装作業負荷の大小順に付与される搬入優先順位データ、および前記搬入優先順位の高い基板が搬入されるべき基板搬送コンベアのレーン区分を予め設定した搬入レーン設定データを記憶する記憶部と、当該部品実装装置の稼働状況を表示する表示部とを備えた部品実装装置において、前記基板を前記基板保持部へ搬入する基板搬送方法であって、
前記新たな基板が基板振り分け部に受け渡されたならば、前記搬入優先順位データおよび搬入レーン設定データを読み出し、前記基板要求信号が出力されている複数の基板搬送コンベアのうち、前記搬入レーン設定データによって予め設定されたレーン区分の基板搬送コンベアに前記搬入優先順位データにおける搬入優先順位の高い基板が搬入されるように制御指示されていないと判定したならば、前記表示部にその旨報知することを特徴とする部品実装装置における基板搬送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−171538(P2011−171538A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−34454(P2010−34454)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】