部品接続構造体および部品の接続方法
【課題】硬化により接着を行う接着剤を介して筐体と基板とを接着してなる部品接続構造体において、接続される部品の種類の制約を受けることなく、また接着領域が拡大したとしても、接着剤の内部に気体がボイドとして残存するのを極力防止する。
【解決手段】第1の接着剤41を介して接着された筐体10および基板20のうちの筐体10に、硬化時に発生する第1の接着剤41中の気体を外気に排出するための排出通路としての貫通孔50を設けている。この貫通孔50は、筐体10の一面11のうち第1の接着剤41が配置されている領域である接着領域から第1の接着剤41が配置されていない領域である非接着領域まで、延長して設けられている。
【解決手段】第1の接着剤41を介して接着された筐体10および基板20のうちの筐体10に、硬化時に発生する第1の接着剤41中の気体を外気に排出するための排出通路としての貫通孔50を設けている。この貫通孔50は、筐体10の一面11のうち第1の接着剤41が配置されている領域である接着領域から第1の接着剤41が配置されていない領域である非接着領域まで、延長して設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化により接着を行う接着剤を介して2個の部品同士を面接着してなる部品接続構造体、および、そのような部品接続構造体を形成するための部品の接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、2個の部品を、硬化により接着する接着剤を介して対向させ、これら両部品同士を接着剤により接着してなる部品接続構造体がある。具体的に、これら各部品としては、ICチップ、セラミック基板、ヒートシンク、筐体などが挙げられ、これらの2個の部品を、硬化により接着力を発揮する接着剤、たとえばエポキシ樹脂やシリコーン樹脂などよりなる接着剤やはんだ等を用いて、面接着するものである。
【0003】
しかしながら、部品の表面における接着剤が配置されている領域すなわち接着領域が広い場合には、接着剤の内部、特に接着領域の中央部寄りにおいて、気体がボイドとして残存しやすくなる。
【0004】
このボイドは、接着剤を塗布する時に巻き込まれた大気や、接着剤の硬化反応時に発生するガスなどが原因である。こうして発生したボイドが接着剤中に残存すると、接着剤の熱伝導率の低下、密着力の低下といった不具合が発生する。
【0005】
この問題に対して、従来では、真空中で組み付けることにより、大気の巻き込みに起因するボイドの発生を抑制する方法(特許文献1参照)や、被着体であるセラミック基板を被接着側方向に凸状に反らせることで、ボイドを外部に押し出す方法(特許文献2参照)が提案されている。
【0006】
また、同問題に対して、ICチップ裏面にぬれ性の異なる2種の金増電極を設け、ぬれ性のよい電極パターンでボイドを外部に誘導することで、ボイドの発生を抑制する方法(特許文献3参照)も提案されている。
【特許文献1】特開2000−216365号公報
【特許文献2】特開平10−154774号公報
【特許文献3】特開2006−261551号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載の方法では、巻き込んだ大気に起因するボイドを抑制することは可能であるが、接着剤の硬化反応により発生したガスに起因するボイドを抑制することはできない。
【0008】
また、上記特許文献2では、基板のサイズが大きくなる程、ボイドを外部に押しやることが難しくなるため、接着領域の大きな部品に対応できない。また、上記特許文献3では、2種の金属電極を用いるため、加工費が増大することや、また、ICチップ裏面とはんだのみに用途が限定されてしまうという問題がある。
【0009】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、硬化により接着を行う接着剤を介して2個の部品同士を接着してなる部品接続構造体において、部品や接着剤の種類の制約を受けることなく、また接着領域が拡大したとしても、接着剤の内部に気体がボイドとして残存するのを極力防止できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明は、接着剤(41、42)を介して接着された両部品(10、20、30)のうち少なくとも一方の部品に、接着剤(41、42)中の気体を外気に排出するための排出通路(50、60)を設け、この排出通路を、当該少なくとも一方の部品の表面のうち接着剤(41、42)が配置されている領域である接着領域から接着剤(41、42)が配置されていない領域である非接着領域まで、延長して設けたことを特徴とする。
【0011】
それによれば、両部品(10〜30)の接着時において、接着剤(41、42)の内部に残存する気体は、接着剤(41、42)の内部から排出通路(50、60)を介して非接着領域まで移動し、そこから外気に排出されるため、部品や接着剤の種類の制約を受けることなく、また接着領域が拡大したとしても、接着剤(41、42)の内部に気体がボイドとして残存するのを極力防止することができる。
【0012】
ここで、排出通路としては、接着領域から少なくとも一方の部品の内部を通って非接着領域まで貫通する貫通孔(50)であるものにできる。
【0013】
具体的には、両部品(10、20)の他方の部品(20)が、一方の部品(10)の一面(11)に接着剤(41)を介して接着されており、一方の部品(10)の一面(11)のうち接着剤(41)が配置されている領域が接着領域であり、一方の部品(10)における一面(11)とは反対側の他面(12)が非接着領域である場合には、排出通路としての貫通孔(50)は、一方の部品(10)の一面(11)から他面(12)に貫通する孔として構成されたものにできる(後述の図1、図3、図10、図11、図12等参照)。
【0014】
また、貫通孔(50)における非接着領域側の開口部(50a)を、当該非接着領域の表面に設けられ貫通孔(50)よりも大きな開口サイズを有する凹部(51)の底部に開口しているものとしてもよい(後述の図3参照)。
【0015】
それによれば、排出通路としての貫通孔(50)を介して非接着領域まで、接着剤(41)が流れ出したとしても、凹部(51)に拡がって凹部(51)内に貯められるため、当該非接着領域の表面上に接着剤(41)が拡がるのを抑制することができる。
【0016】
また、貫通孔(50)における接着領域側の開口部(50b)を、当該貫通孔(50)の内部から外側に向かって広がるテーパ形状としてもよい(後述の図3参照)。
【0017】
それによれば、接着剤(41)中の気体が、接着領域側の開口部(50b)のテーパ面に沿って当該開口部(50b)に入りやすくなるため、当該開口部(50b)にトラップされやすくなり、また、当該開口部(50b)から貫通孔(50)を介して排出されやすくなる。
【0018】
また、接着剤(41)を、貫通孔(50)内から貫通孔(50)における非接着領域側の開口部(50a)まで充填してもよく(後述の図9参照)、それによれば、アンカー効果による接着力の向上が期待される。
【0019】
また、排出通路としては、上記貫通孔(50)以外にも、接着領域から非接着領域まで少なくとも一方の部品の表面に形成された溝(60)であってもよい(後述の図4および図5参照)。
【0020】
また、接着剤(41)を、熱伝導性を有するフィラー(F)を含有したものとした場合には、排出通路(50、60)の通路面積がフィラー(F)の平均粒径よりも小さいものであることが好ましい(後述の図3および図5参照)。それによれば、接着剤(41)のフィラー(F)が排出通路(50、60)を通して排出されるのを防止し接着剤(41)の熱伝導性の低下を防止できる。
【0021】
また、上述したように、排出通路としての貫通孔(50)が、一方の部品(10)の一面(11)から他面(12)に貫通する孔として構成されている部品接続構造体(後述の図1、図3等参照)を形成する部品の接続方法としては、他方の部品(20)を一方の部品(10)の一面(11)に未硬化の接着剤(41)を介して搭載し、一方の部品(10)の一面(11)を地方向に向け、一方の部品(10)の他面(12)を天方向に向けた状態で、接着剤(41)の硬化を行うようにすればよい(後述の図2参照)。
【0022】
それによれば、排出通路としての貫通孔(50)が地方向に位置する接着剤(41)から天方向に向かって延びる形で接着剤(41)の硬化が行われるため、当該硬化時に発生する接着剤(41)中のガスが、貫通孔(50)を介して天方向に向かって抜けやすくなる。
【0023】
また、この接続方法においては、接着剤(41)として水分により硬化するものを用い、接着剤(41)の硬化を、貫通孔(50)を介して接着剤(41)に水分を供給することにより行うようにしてもよい(後述の図6参照)。
【0024】
それによれば、水分により硬化する接着剤(41)を用いたとしても、硬化時には貫通孔(50)を介して接着剤(41)に水分を供給することで、接着剤(41)の硬化を適切に行える。
【0025】
また、接着剤(41)として水分により硬化するものを用いた場合には、一方の部品(10)の一面(11)に未硬化の前記接着剤(41)を設ける前に、一方の部品(10)の前記一面(11)に水分を供給しておく方法も採用できる(後述の図7参照)。
【0026】
水分により硬化する接着剤(41)の場合には、このように接着剤(41)の配置部分に予め水分を供給しておいてもよく、この場合であっても貫通孔(50)から硬化時に発生する接着剤(41)のガスが抜けるため、問題はない。
【0027】
また、上記接続方法においては、接着剤(41)として主剤(41a)と硬化剤(41b)との反応により硬化する2液型接着剤を用い、一方の部品(10)の一面(11)に未硬化の接着剤(41)を設けるときには、主剤(41a)および硬化剤(41b)の一方を設けた後、その上に他方を設けるようにすればよい(後述の図8参照)。
【0028】
このような2液型の接着剤(41)の場合に、主剤(41a)と硬化剤(41b)とを分けて配置したとしても、硬化時に発生するガスは貫通孔(50)から排出されるため、適切な接着が行える。
【0029】
なお、特許請求の範囲およびこの欄で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、説明の簡略化を図るべく、図中、同一符号を付してある。
【0031】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る電子装置100の構成を示す図であり、(a)は概略断面図、(b)は(a)の下視平面図である。
【0032】
本実施形態の電子装置100は、大きくは、筐体10と、筐体10の一面11上に第1の接着剤41を介して搭載された基板20と、基板20の一面21上に第2の接着剤42を介して搭載された電子部品30とを備えて構成されている。
【0033】
ここで、筐体10の一面11と基板20における一面21とは反対側の他面22とが、第1の接着剤41により接着され、基板20の一面21と電子部品30における一面31とは反対側の他面32とが、第2の接着剤42により接着されている。
【0034】
筐体10は、たとえば、金属や樹脂あるいはセラミックなどよりなるケースでもよいし、またはヒートシンクやリードフレーム、さらにはバスバーなどであってもよい。つまり、筐体10は、基板20をその上の電子部品30とともに支持できるものであれば、特に限定されない。
【0035】
基板20は、板状のものであって一面21に電子部品10を搭載できるものであるならば、特に限定されない。具体的には、基板20としては、アルミナなどのセラミック基板、プリント基板、金属基板などの配線基板が挙げられる。また、基板20としては、単層基板でも積層基板でもよい。
【0036】
電子部品10としては、特に限定するものではないが、たとえばICチップ、コンデンサ、抵抗素子などの表面実装部品が挙げられる。また、基板20に搭載される電子部品10は、単数でも複数でもよい。
【0037】
この電子部品30は、図示しない導電性接着剤やワイヤなどを介して基板20と電気的に接続されるものである。たとえば、基板20の一面21に、金属箔や導体ペーストなどよりなる図示しない導体部を設け、この導体部を介して、電子部品30と基板20との電気的接続を行うようにする。
【0038】
筐体10と基板20との間に介在する第1の接着剤41、および、基板20と電子部品30との間に介在する第2の接着剤42は、硬化により接着力を発揮するタイプの接着剤である。
【0039】
具体的に、これら第1および第2の接着剤41、42としては、エポキシ樹脂やシリコーン樹脂などの加熱硬化型あるいは室温硬化型の樹脂接着剤や、一般的な主剤と硬化剤との混合反応で硬化する2液型の接着剤、あるいは、はんだなどが挙げられる。また、これら接着剤41、42としては、熱伝導性や導電性を付与するための銅や銀などのフィラーが含有されたものであってもよい。
【0040】
ここで、本実施形態の電子装置100においては、第1の接着剤41を介した筐体10と基板20との接合構造において、次に述べるような独自の構成を採用している。
【0041】
本実施形態においては、電子装置100のうち第1の接着剤41を介して接続された筐体10と基板20とにより部品接続構造体が構成されている。そして、筐体10および基板20が部品接続構造体における両部品10、20に相当し、第1の接着剤41が部品接続構造体における接着剤に相当する。
【0042】
そして、本実施形態では、この部品接続構造体において、一方の部品である筐体10には、硬化時に第1の接着剤41中に発生する気体を外気に排出するための排出通路50を設けている。この排出通路50は、図1(a)に示されるように、筐体10の表面のうち第1の接着剤41が配置されている領域である接着領域から第1の接着剤41が配置されていない領域である非接着領域まで、延長して設けられている。
【0043】
具体的には、上述したように筐体10の一面11上に基板20が搭載され、筐体10の一面11と基板20の他面22とが第1の接着剤41を介して接着されている。ここにおいて、筐体10の一面11のうち第1の接着剤41が配置されている領域が上記接着領域となっており、筐体10における一面11とは反対側の他面12が上記非接着領域となっている。
【0044】
さらに言うならば、筐体10および基板20は、図示例では、ともに板状のものであり、これら筐体10および基板20の表面とは、筐体10の表裏の板面である一面11および他面12と側面、基板20の表裏の板面である一面21および他面21と側面のことである。
【0045】
このとき、本実施形態の部品接続構造体における接着領域とは、これら筐体10および基板20の表面11、12、21、22のうち第1の接着剤41に接触している部位であり、非接着領域とはそれ以外の部位のことである。
【0046】
たとえば、本実施形態の筐体10の一面11における接着領域は、後述する図4(b)に示されるものと同様である。そして、本実施形態では、排出通路50は、筐体10における接着領域、非接着領域を接続する通路として、筐体10側に設けられたものとなっている。
【0047】
具体的に、本実施形態では、排出通路50は、接着領域から筐体10の内部を通って非接着領域まで貫通する貫通孔50であり、この貫通孔50は、筐体10の一面11から他面12に貫通する孔として構成されている。このような貫通孔50は、筐体10に対して、プレスやエッチングあるいは切削などによる穴あけ加工を施すことにより形成することができる。
【0048】
また、この排出通路としての貫通孔50の通路断面積、ここでは孔の断面積は、第1の接着剤41がその硬化時に発生するガスが通過できる大きさであればよい。そして、貫通孔50の孔形状については、図1(b)では円形の孔であるが、特にこれに限定されるものではなく、上記ガスが通過できるものであれば、それ以外にも多角形の孔、その他任意の孔形状が可能である。
【0049】
また、本電子装置100においては、図示しないが、たとえば、基板20の外側にリードフレームを設け、このリードフレームと基板20あるいは電子部品30とをボンディングワイヤなどにより電気的に接続している。そして、電子装置100は、このリードフレームを介して、外部との電気的なやりとりを可能としている。
【0050】
次に、本実施形態の電子装置100の製造方法について、述べる。本電子装置100は、各接着剤41、42を介して、筐体10、基板20、電子部品30を接着することにより製造されるものである。
【0051】
そして、これら3部品10〜30の接着の順序は、任意である。つまり、第1の接着剤41を介して筐体10と基板20とを接着した後、第2の接着剤42を介して電子部品30と基板20とを接着してもよいし、それとは逆に、基板20と電子部品30とを接着した後、基板20と筐体10とを接着してもよい。
【0052】
しかしながら、本製造方法では、上記排出通路としての貫通孔50を有する筐体10と基板20との接着工程については、次に述べるような独自の方法を採用している。この接着工程について図2を参照して述べる。図2は、第1の接着剤41を介した筐体10と基板20との接着工程を示す工程図である。
【0053】
この接着工程では、図2に示されるように、基板20を筐体10の一面11に未硬化の第1の接着剤41を介して搭載するとともに、筐体10の一面11を地方向に向け、筐体10の他面12を天方向に向けた状態とする。そして、この状態で、加熱などにより第1の接着剤41の硬化を行う。
【0054】
図2(a)に示されるように、この第1の接着剤41の硬化時には、第1の接着剤41中にガスGが発生する。このガスGは、第1の接着剤41の硬化反応により発生するガスや、元々第1の接着剤41中に含有されていた水分などである。これらのガスGは、大気よりも比重が軽いものが一般的である。
【0055】
この硬化時には、排出通路としての貫通孔50が地方向に位置する第1の接着剤41から天方向に向かって延びる形となっている。そのため、硬化の際には、第1の接着剤41が硬化して筐体10と基板20とが接着するとともに、第1の接着剤41中のガスGが、図2(b)に示されるように、貫通孔50を介して天方向に向かって抜けていく。
【0056】
こうして、第1の接着剤41により筐体10と基板20とが接着される。また、基板20と電子部品30とを第2の接着剤42により接着する。それにより、本実施形態の電子装置100ができあがる。
【0057】
ところで、本実施形態の電子装置100では、部品接続構造体を構成する筐体10と基板20とのうち筐体10において、第1の接着剤41中の気体を外気に排出するための排出通路としての貫通孔50を、筐体10における上記接着領域から上記非接着領域まで、延長して設けている。
【0058】
それによれば、筐体10と基板20との接着時において、第1の接着剤41の内部に残存する気体を、貫通孔50を介して非接着領域まで移動させ、そこから外気に排出することができる。
【0059】
そのため、様々な種類の筐体10および基板20に対して、また、筐体10および基板20のサイズが大きくなって接着領域が拡大したとしても、第1の接着剤41の内部に気体がボイドとして残存するのを極力防止できる。
【0060】
ここで、本実施形態では、上記図2に示されるように、第1の接着剤41による接着工程において、筐体10の一面11を地方向に向け、筐体10の他面12を天方向に向けた状態とすることで、硬化時に発生するガスGを、第1の接着剤41から貫通孔50を介して天方向に向かって排出しやすくしている。
【0061】
地方向から天方向に向かってガスGが抜けるように、貫通孔50を配置して、第1の接着剤41の硬化を行うことは、当該ガスGの排出性を良好にするとともに、第1の接着剤41が貫通孔50から筐体10の他面12側へ流出するのを防止するという効果も、期待できる。
【0062】
なお、第1の接着剤41による筐体10と基板20との接着工程においては、上記図2の方法とは反対に、筐体10の一面11を天方向に向け、筐体10の他面12を地方向に向けた状態で、第1の接着剤41の硬化を行ってもよい。この場合、たとえば、筐体10の他面12側を減圧雰囲気とするなどにより、上記ガスGの貫通孔50を介した排出を促進するようにすることが望ましい。
【0063】
また、本実施形態によれば、第1の接着剤41は、貫通孔50にまったく入り込まない場合もあるが、一部が貫通孔50に入り込む場合もある。これは、第1の接着剤41を介して筐体10と基板20とを組み付けたときの圧力や、毛細管現象などにより、硬化前の第1の接着剤41が貫通孔50に入り込むためである。
【0064】
このように、第1の接着剤41の一部が貫通孔50に入り込んだ場合、その分、第1の接着剤41の接着面積が増加し、第1の接着剤41を介した筐体10と基板20との密着性の向上や熱伝導性の向上につながると考えられる。
【0065】
(第2実施形態)
図3は、本発明の第2実施形態に係る電子装置の要部の構成を示す図であり、(a)は概略断面図、(b)は(a)の下視平面図である。この図3は、上記図1に示した電子装置100における筐体10と基板20との接続部分を示したものである。
【0066】
なお、この図3以外の部分は、本実施形態においても上記図1の電子装置100と同様である。つまり、本実施形態においても、排出通路としての貫通孔50による作用効果は、上記第1実施形態と同様である。そして、ここでは、本実施形態と上記第1実施形態との相違点を中心に述べることとする。
【0067】
本実施形態では、第1の接着剤41は、樹脂成分中に熱伝導性を有するフィラーFを含有したものとしている。そして、本実施形態では、このフィラーFを含有する第1の接着剤41であることも考慮した構成となっている。
【0068】
まず、本実施形態では、図3に示されるように、筐体10の非接着領域すなわち筐体10の他面12には、貫通孔50よりも大きな開口サイズを有する凹部51が設けられていることが上記第1実施形態と相違する。この凹部51は、筐体10の一面12より凹むとともに、その開口部の大きさが、貫通孔50の孔のサイズよりも大きいものである。たとえば、凹部51の開口径は、貫通孔50の孔径の2倍以上である。
【0069】
そして、貫通孔50における非接着領域側の開口部50aすなわち筐体10の他面12側の開口部50aは、この凹部51の底部に開口している。この凹部51の開口形状は特に限定されるものではないが、図3(b)に示される例では、円形孔である貫通孔50よりも一回り大きな円形となっている。
【0070】
それによれば、第1の接着剤41を介した接着工程において、貫通孔50を介して非接着領域である筐体10の他面12まで、第1の接着剤41が流れ出したとしても、その接着剤41は凹部51に拡がって凹部51に貯められる。そのため、筐体10の他面12に第1の接着剤41が拡がるのを抑制できる。
【0071】
また、図3(a)に示されるように、貫通孔50における接着領域側の開口部50b、すなわち、貫通孔50における筐体10の一面11側の開口部50bが、当該貫通孔50の内部から外側に向かって広がるテーパ形状となっていることも、本実施形態の独自の構成である。
【0072】
それによれば、接着工程において、第1の接着剤41中に発生するガスが、この接着領域側の開口部50bのテーパ面に沿って当該開口部50b内に入りやすくなる。そのため、当該ガスは、当該開口部50bにトラップされやすくなり、ひいては、当該開口部50bから貫通孔50を介して排出されやすくなる。
【0073】
また、本実施形態では、第1の接着剤41を、熱伝導性を有するフィラーFを含有するものとしているが、本実施形態では、排出通路としての貫通孔50の通路面積を、フィラーFの平均粒径よりも小さいものとしている。
【0074】
このフィラーFは、上述したように銀や銅などの粒子であり、その平均粒径は、この種の一般的なフィラーを含有する接着剤と同様に定義づけられたものである。そして、このようなフィラーFが、互いに接触した状態で第1の接着剤41の硬化がなされることにより、熱伝導の経路が、第1の接着剤41中に形成される。
【0075】
そして、本実施形態によれば、貫通孔50の通路面積をフィラーFの平均粒径よりも小さくしているため、接着工程において、第1の接着剤41のフィラーFが、貫通孔50を通して排出されるのを防止し、ひいては、第1の接着剤41の熱伝導性の低下を防止することができる。
【0076】
また、この場合、接着工程において、第1の接着剤41中の樹脂成分のみが貫通孔50に流れ込み、フィラーFは貫通孔50に入り込まずに筐体10と基板20との間に残る。そのため、筐体10と基板20との間において、第1の接着剤41は、元来の第1の接着剤41におけるフィラーFの組成よりもフィラーリッチの状態となり、結果的に、第1の接着剤41の熱伝導性が向上することが期待される。
【0077】
また、第1の接着剤41中の樹脂成分のみを貫通孔50に流れ込ませることを、積極的に行うためには、排出通路である貫通孔50の内壁の表面を、貫通孔50以外の筐体10の表面よりも、第1の接着剤41に対する濡れ性に優れたものとすることが望ましい。具体的には、貫通孔50の内面に金属メッキを施したり、当該内面をブラスト処理などで粗化したりすればよい。
【0078】
(第3実施形態)
図4は、本発明の第3実施形態に係る電子装置の要部の構成を示す図であり、(a)は概略断面図、(b)は(a)の下方から視たときの筐体10の一面11の概略平面図である。
【0079】
本実施形態は、筐体10に設けた排出通路を上記貫通孔50に変えて溝60としたものであり、それ以外の部分は、上記図1の電子装置100と同様である。以下、上記第1実施形態との相違点を中心に述べることとする。図4(b)中、溝60には識別のため点ハッチングを施したが、これは断面を示すものではない。
【0080】
図4に示されるように、本実施形態では、排出通路60を、筐体10の一面11における接着領域から非接着領域まで延びるように形成された溝60として構成している。ここでは、非接着領域は、筐体10の一面11のうち接着領域の外側の部位であり、これら筐体10の一面11における接着領域および非接着領域は、具体的には、図4中の両端矢印の範囲や矩形破線にて示す通りのものである。
【0081】
このような溝60は、エッチングやプレス、型成形、切削などにより形成可能である。そして、本実施形態では、部品接続構造体を構成する筐体10と基板20とのうち筐体10において、排出通路としての溝60を、筐体10における上記接着領域から上記非接着領域まで、延長して設けている。
【0082】
そのため、筐体10と基板20との接着時において、第1の接着剤41の内部に残存する気体を、溝60を介して非接着領域まで移動させ、そこから外気に排出することができる。そのため、様々な種類の筐体10および基板20に対して、また、筐体10および基板20のサイズが大きくなって接着領域が拡大したとしても、第1の接着剤41の内部に気体がボイドとして残存するのを極力防止できる。
【0083】
ここで、本実施形態では、第1の接着剤41による接着工程は、特に特別な方法を採用しなくともよく、たとえば、筐体10と基板20との接着は、筐体10を地側、基板20を天側に位置させて行ってもよい。
【0084】
(第4実施形態)
図5は、本発明の第4実施形態に係る電子装置の要部の構成を示す図であり、(a)は概略断面図、(b)は(a)の下方から視たときの筐体10の一面11の概略平面図である。なお、図5(b)においても溝60には識別のため点ハッチングを施してある。本実施形態も、上記第3実施形態と同様に、排出通路を溝60としたものであり、ここでは、上記第3実施形態との相違点を中心に述べることとする。
【0085】
本実施形態では、第1の接着剤41は、樹脂成分中に熱伝導性を有するフィラーFを含有したものとしており、このフィラーFを含有する第1の接着剤41に適した溝60の構成を提供するものである。
【0086】
つまり、本実施形態における排出通路としての溝60は、その通路面積をフィラーFの平均粒径よりも小さいものとしている。それによれば、第1の接着剤41のフィラーFが溝60を通して排出されるのを防止し、ひいては、第1の接着剤41の熱伝導性の低下を防止できる。
【0087】
また、この場合も、第1の接着剤41による接着工程においては、毛細管現象などにより、溝60に沿って、第1の接着剤41中の樹脂成分が上記ガスとともに、流れだす。特に、本実施形態では、筐体10の一面11における接着領域から非接着領域に向かって低くなるように傾斜している。
【0088】
そのため、当該接着工程を、筐体10の一面11を天方向に向けた状態で行えば、第1の接着剤41中の樹脂成分が、当該傾斜に倣って溝60内に流れ出し、非接着領域まで排出されやすくなる。
【0089】
そのため、本実施形態においても、筐体10と基板20との間において、上記同様のフィラーリッチの状態となり、結果的に、第1の接着剤41の熱伝導性が向上することが期待される。
【0090】
なお、ここでは、図5に示されるように、筐体10の一面11の中央部が頂部となるように、ピラミッド状に突出することにより、当該一面11において上記傾斜が構成されている。また、筐体10の一面11における上記傾斜の構成は、当該ピラミッド形状以外にも、たとえば、筐体10の一面11を凸状の曲面とするものであってもよい。
【0091】
また、本実施形態においても、第1の接着剤41中の樹脂成分のみを溝60に流れ込ませることを、積極的に行うためには、排出通路である溝60の内面を、溝60以外の筐体10の表面よりも、第1の接着剤41に対する濡れ性に優れたものとすることが望ましい。具体的には、上記同様に、溝60の内面に金属メッキを施したり、当該内面を粗化処理したりすればよい。
【0092】
(第5実施形態)
図6(a)は、従来技術に基づいて本発明者が試作した比較例としての部品接続構造体の接着工程を示す工程図、図6(b)は、本発明の第5実施形態に係る部品接続構造体の接着工程を示す工程図である。本実施形態の接着工程は、上記貫通孔50に関する上記各実施形態の部品接続構造体を形成するにあたって、適用が可能である。
【0093】
上述したように、第1の接着剤41としては、シリコーン樹脂などよりなる室温硬化型の樹脂接着剤が採用可能である。具体的には、湿気硬化型のシリコーン接着剤が一般的である。このものは、室温で空気中の水分と化学反応して硬化し、室温で硬化するので使いやすく、接着性の点でも優れているという特性を有する。
【0094】
しかしながら、従来の部品接続構造体では、接着剤として、このような水分により硬化するものを用いることは困難であった。その理由は、図6(a)に示されるように、従来では、湿気硬化型の第1の接着剤41において、硬化時には表面側は水分(H2O)に触れて硬化するが、内部では水分が行き届かず、未硬化のままとなるためである。なお、図6(a)では、第1の接着剤41のうち硬化部分に点ハッチングを施し、未硬化部分にはハッチングを施していない。
【0095】
それに対して、本実施形態では、筐体10に貫通孔50が設けられているため、空気中の水分が、筐体10の他面12側から貫通孔50を通して、第1の接着剤41に供給される。そのため、水分により硬化する接着剤を第1の接着剤41として用いた場合であっても、第1の接着剤41の内部において硬化反応が行われ、第1の接着剤41全体を硬化させることができる。
【0096】
また、このとき、本実施形態の接着工程では、硬化反応により第1の接着剤41中に発生するガスは、貫通孔50を介して排出される。そのため、第1の接着剤41の内部に気体がボイドとして残存するのを極力防止できる。
【0097】
(第6実施形態)
図7は、本発明の第6実施形態に係る部品接続構造体の接着工程を示す工程図である。本実施形態の接着工程は、上記第1〜第4の各実施形態のうち上記貫通孔50に関する部品接続構造体を形成するにあたって、適用が可能である。
【0098】
本実施形態においても、第1の接着剤41として水分により硬化するものを用いる。このとき、本実施形態の接着工程では、図7に示されるように、筐体10の一面11に未硬化の第1の接着剤41を設ける前に、筐体10の一面11に水分を含む吸水部Kを設けておく。
【0099】
この吸水部Kは、たとえば、筐体10の一面11を湿らせた状態とすることにより構成してもよいし、吸水した樹脂の塗膜であってもよい。このように筐体10の一面11に水分を供給した後、湿気硬化型の第1の接着剤41を配置し、さらに、基板20を組み付ける。
【0100】
この状態で、第1の接着剤41は、吸水部Kからの水分により硬化し、筐体10と基板20とは接着される。また、このとき、硬化反応により第1の接着剤41中に発生するガスGは、貫通孔50を介して排出されるため、第1の接着剤41の内部に気体がボイドとして残存するのを極力防止できる。
【0101】
(第7実施形態)
図8は、本発明の第7実施形態に係る部品接続構造体の接着工程を示す工程図である。本実施形態の接着工程は、2液型の第1の接着剤41を用いるものであり、上記第1〜第4の各実施形態のうち上記貫通孔50に関する部品接続構造体を形成するにあたって、適用が可能である。
【0102】
2液型の接着剤は、一般に知られているように、エポキシ樹脂などよりなるものであり、主剤と硬化剤との反応により硬化するものである。本実施形態の第1の接着剤41は、主剤41aと硬化剤41bとの反応により硬化する。
【0103】
そして、本実施形態の接着工程では、筐体10の一面11に未硬化の第1の接着剤41を設ける工程において、図8に示されるように、筐体10の一面11に硬化剤41bを設け、次にその上に主剤41aを設ける。その後は、基板20を組み付ければ、2液41aおよび41bが反応することで第1の接着剤41が硬化し、筐体10と基板20とは接着される。
【0104】
このとき、硬化反応により第1の接着剤41中に発生するガスGは、貫通孔50を介して排出されるため、第1の接着剤41の内部に気体がボイドとして残存するのを極力防止できる。
【0105】
なお、筐体10の一面11に未硬化の第1の接着剤41を設ける工程では、図8の例とは逆に、筐体10の一面11に主剤41aを設けた後に、その上に硬化剤41bを設けてもよい。
【0106】
このように、本実施形態によれば、2液型の接着剤を第1の接着剤41として用いた場合において、主剤41aと硬化剤41bとを分けて配置したとしても、硬化時に発生するガスGは貫通孔50から排出されるため、適切な接着が行える。また、従来では、2液型の場合、主剤と硬化剤とを予め混合してから塗布を行っていたが、本実施形態では、混合することなく、主題と硬化剤とを別々に塗布しても接着が可能となる。
【0107】
なお、本第7実施形態および上記第5、第6実施形態のように、湿気硬化型の接着剤や2液型の接着剤を第1の接着剤41として用いる接着方法は、排出通路としての上記溝60を有する部品接続構造体(上記図4、図5参照)を形成する場合にも、適用できることは、改めて説明するまでもなく可能である。
【0108】
(第8実施形態)
図9において(a)、(b)、(c)は、それぞれ本発明の第8実施形態に係る第1の例としての電子装置の要部、第2の例としての電子装置の要部、第3の例としての電子装置の要部を示す概略断面図である。
【0109】
上述したように、第1の接着剤41の一部が貫通孔50に入り込んだ場合、第1の接着剤41の接着面積の増加により、密着性の向上や熱伝導性の向上が期待されるが、本実施形態は、貫通孔50の中へ、積極的に第1の接着剤41を入り込ませ、上記効果を促進する構成としたものである。
【0110】
つまり、図9に示されるように、本実施形態では、第1の接着剤41は、貫通孔50内から貫通孔50における非接着領域側の開口部50a、または、その近くまで、充填されている。これは、第1の接着剤41を介して筐体10と基板20とを組み付けるときの圧力や、毛細管現象などにより、硬化前の第1の接着剤41を貫通孔50に入り込ませることにより実現することができる。
【0111】
図9(a)に示される第1の例では、上記図1に示した貫通孔50において、貫通孔50内から貫通孔50における非接着領域側の開口部50aまで、すなわち貫通孔50の全体に、第1の接着剤41を入り込ませたものである。この場合、第1の接着剤41においては、アンカー効果による接着力の向上が期待できる。
【0112】
また、図9(b)に示される第2の例では、上記図3に示したような非接着領域の表面に設けられた凹部51を有する構成において、貫通孔50の全体に第1の接着剤41を入り込ませたものである。
【0113】
この場合も、上記アンカー効果による接着力向上が期待される。それとともに、貫通孔50における非接着領域側の開口部50aからはみ出した第1の接着剤41は、凹部51に収納されるため、非接着領域である筐体10の他面12に、第1の接着剤41がはみ出さないという利点がある。
【0114】
また、図9(c)に示される第3の例では、貫通孔50は、筐体10の一面11から筐体10の他面12に向かって真っ直ぐ延び途中で曲がって筐体10の側面13まで貫通する孔として構成している。つまり、この例では、筐体10の非接着領域は、筐体10の側面13である。
【0115】
この場合、第1の接着剤41は、貫通孔50における筐体10の一面11側の開口部50bから貫通孔50の曲がり部まで、入り込んで充填されている。この場合も、第1の接着剤41におけるアンカー効果による接着力の向上が期待できるとともに、筐体10の他面12に、第1の接着剤41がはみ出さないようにできる。
【0116】
ここで、これら図9(a)〜(c)の各例においても、上記図3に示されるものと同様に、貫通孔50における接着領域側の開口部50bが、当該貫通孔50の内部から外側に向かって広がるテーパ形状となっていてもよい。
【0117】
(他の実施形態)
なお、上記各実施形態では、部品接続構造体を構成する両部品である筐体10および基板20のうち、筐体10のみに上記排出通路50、60を設けたが、このような排出通路50、60は、基板20のみに同様に設けてもよいし、筐体10と基板20との両方に設けてもよい。
【0118】
また、上記各実施形態では、上記図1に示される電子装置100において、第1の接着剤41を介して接続された筐体10と基板20とが、部品接続構造体を構成する両部品10、20および接着剤41に相当したが、上記電子装置100において、第2の接着剤42を介して接続された基板20と電子部品30とが、部品接続構造体を構成するものであってもよい。
【0119】
この場合には、第2の接着剤42を挟む基板20と電子部品30との両方、もしくはいずれか一方において、上記各実施形態と同様の排出通路としての貫通孔50または溝60を設ければよい。また、この第2の接着剤42に関する部品接続構造体の製造方法についても、上記各実施形態に示した製造方法を適用してよい。
【0120】
図10は、この第2の接着剤42に関する部品接続構造体の場合において、電子部品30のみに排出通路としての貫通孔50を設けた例を示す概略断面図であり、また、図11は、同場合において、基板20のみに排出通路としての貫通孔50を設けた例を示す概略断面図である。
【0121】
図10では、上記電子装置100において、第2の接着剤42を介して接続された基板20と電子部品30とが部品接続構造体を構成しており、貫通孔50は、電子部品30の厚さ方向を貫通した孔とされている。つまり、この貫通孔50は、電子部品30の他面32のうち接着領域から非接着領域である電子部品30の一面31まで延長して設けられている。
【0122】
また、図11では、上記電子装置100において、第2の接着剤42を介して接続された基板20と電子部品30とが部品接続構造体を構成しており、貫通孔50は、基板20の厚さ方向に貫通した孔とされている。つまり、この貫通孔50は、基板20の他面22のうち第2の接着剤42が配置されている接着領域から第2の接着剤42が配置されていない非接着領域である基板20の一面21まで延長して設けられている。
【0123】
そして、これら図10および図11に示される各例においても、上述した貫通孔50と同様の作用により、第2の接着剤42の内部に気体がボイドとして残存するのを極力防止することができる。
【0124】
また、部品接続構造体とは、硬化により接着を行う接着剤を介して2個の部品同士が面接着されたものであればよいものである。そこで、たとえば、上記電子装置100において、第2の接着剤42を介した基板20と電子部品30との組み合わせ、および、第1の接着剤41を介した筐体10と基板20との組み合わせの両方が、部品接続構造体として構成されていてもよい。
【0125】
図12は、このような場合において、電子装置100における筐体10、基板20、電子部品30のすべてに対して、排出通路としての貫通孔50を設けた例を示す概略断面図である。
【0126】
なお、この場合、上記図11に示されるように基板20のみに貫通孔50を設けた構成でもよく、その場合には、第1の接着剤41については、基板20における第1の接着剤41の接着領域から非接着領域に延びる貫通孔50による効果が発揮され、第2の接着剤42については、基板20における第2の接着剤42の接着領域から非接着領域に延びる貫通孔50による効果が発揮される。
【0127】
また、図12において、貫通孔50を、基板20には設けずに電子部品30および筐体10のみに設けた構成であっても、第1および第2の接着剤41、42について、それぞれボイド残存防止効果が発揮される。
【0128】
また、上記電子装置100は、筐体10、基板20、電子部品30の3部品の積層構造であったが、上記電子装置100において当該3部品のどれか1つを省略して2部品とした構造や、筐体10の上に直接電子部品30を、接着剤を介して搭載した構成であってもよい。この場合にも、接着剤を介して接着された両部品の少なくとも一方に、上記したような排出通路を設ければ、同様の効果が期待される。
【0129】
また、排出通路としての貫通孔50としては、接着剤41、42に発生する上記ガスが通過できるものであるならば、多孔質の樹脂、セラミック、金属などのポーラス材料よりなるものであってもよい。図13は、ポーラス材料Pを用いた貫通孔50の種々の例を示す概略断面図である。
【0130】
図13(a)は、貫通孔50における接着領域側の開口部50b側の部位の一部を、ポーラス材料Pにより構成したものである。図13(b)は、貫通孔50における外周側の部位をポーラス材料Pにより構成したものである。図13(c)は、貫通孔50の全体をポーラス材料Pにより構成したものである。これらポーラス材料Pは、たとえば筐体10に埋め込むことにより、貫通孔50として構成される。
【0131】
また、上記各実施形態では、排出通路として貫通孔50と溝60とを示したが、排出通路としては、溝と貫通孔とを組み合わせたもの、たとえば、途中まで溝により構成され、排出側の残り部分が貫通孔により構成されたものであってもよい。さらに、排出通路としては、貫通孔や溝に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0132】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電子装置の構成を示す図であり、(a)は概略断面図、(b)は(a)の下視平面図である。
【図2】上記第1実施形態に係る第1の接着剤を介した筐体と基板との接着工程を示す工程図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る電子装置の要部の構成を示す図であり、(a)は概略断面図、(b)は(a)の下視平面図である。
【図4】本発明の第3実施形態に係る電子装置の要部の構成を示す図であり、(a)は概略断面図、(b)は(a)における筐体の一面の概略平面図である。
【図5】本発明の第4実施形態に係る電子装置の要部の構成を示す図であり、(a)は概略断面図、(b)は(a)における筐体の一面の概略平面図である。
【図6】(a)は、比較例としての部品接続構造体の接着工程を示す工程図、(b)は、本発明の第5実施形態に係る部品接続構造体の接着工程を示す工程図である。
【図7】本発明の第6実施形態に係る部品接続構造体の接着工程を示す工程図である。
【図8】本発明の第7実施形態に係る部品接続構造体の接着工程を示す工程図である。
【図9】(a)、(b)、(c)は、それぞれ本発明の第8実施形態に係る電子装置の第1の例の要部、第2の例の要部、第3の例の要部を示す概略断面図である。
【図10】電子部品のみに排出通路としての貫通孔を設けた例を示す概略断面図である。
【図11】基板のみに排出通路としての貫通孔を設けた例を示す概略断面図である。
【図12】電子装置における筐体、基板、電子部品のすべてに対して排出通路としての貫通孔を設けた例を示す概略断面図である。
【図13】ポーラス材料Pを用いた貫通孔50の種々の例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0133】
10…筐体、11…筐体の一面、12…筐体の他面、20…基板、30…電子部品、
41…第1の接着剤、41a…主剤、41b…硬化剤、42…第2の接着剤、
50…排出通路としての貫通孔、50a…貫通孔における非接着領域側の開口部、
50b…貫通孔における接着領域側の開口部、51…凹部、
60…排出通路としての溝、F…フィラー。
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化により接着を行う接着剤を介して2個の部品同士を面接着してなる部品接続構造体、および、そのような部品接続構造体を形成するための部品の接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、2個の部品を、硬化により接着する接着剤を介して対向させ、これら両部品同士を接着剤により接着してなる部品接続構造体がある。具体的に、これら各部品としては、ICチップ、セラミック基板、ヒートシンク、筐体などが挙げられ、これらの2個の部品を、硬化により接着力を発揮する接着剤、たとえばエポキシ樹脂やシリコーン樹脂などよりなる接着剤やはんだ等を用いて、面接着するものである。
【0003】
しかしながら、部品の表面における接着剤が配置されている領域すなわち接着領域が広い場合には、接着剤の内部、特に接着領域の中央部寄りにおいて、気体がボイドとして残存しやすくなる。
【0004】
このボイドは、接着剤を塗布する時に巻き込まれた大気や、接着剤の硬化反応時に発生するガスなどが原因である。こうして発生したボイドが接着剤中に残存すると、接着剤の熱伝導率の低下、密着力の低下といった不具合が発生する。
【0005】
この問題に対して、従来では、真空中で組み付けることにより、大気の巻き込みに起因するボイドの発生を抑制する方法(特許文献1参照)や、被着体であるセラミック基板を被接着側方向に凸状に反らせることで、ボイドを外部に押し出す方法(特許文献2参照)が提案されている。
【0006】
また、同問題に対して、ICチップ裏面にぬれ性の異なる2種の金増電極を設け、ぬれ性のよい電極パターンでボイドを外部に誘導することで、ボイドの発生を抑制する方法(特許文献3参照)も提案されている。
【特許文献1】特開2000−216365号公報
【特許文献2】特開平10−154774号公報
【特許文献3】特開2006−261551号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載の方法では、巻き込んだ大気に起因するボイドを抑制することは可能であるが、接着剤の硬化反応により発生したガスに起因するボイドを抑制することはできない。
【0008】
また、上記特許文献2では、基板のサイズが大きくなる程、ボイドを外部に押しやることが難しくなるため、接着領域の大きな部品に対応できない。また、上記特許文献3では、2種の金属電極を用いるため、加工費が増大することや、また、ICチップ裏面とはんだのみに用途が限定されてしまうという問題がある。
【0009】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、硬化により接着を行う接着剤を介して2個の部品同士を接着してなる部品接続構造体において、部品や接着剤の種類の制約を受けることなく、また接着領域が拡大したとしても、接着剤の内部に気体がボイドとして残存するのを極力防止できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明は、接着剤(41、42)を介して接着された両部品(10、20、30)のうち少なくとも一方の部品に、接着剤(41、42)中の気体を外気に排出するための排出通路(50、60)を設け、この排出通路を、当該少なくとも一方の部品の表面のうち接着剤(41、42)が配置されている領域である接着領域から接着剤(41、42)が配置されていない領域である非接着領域まで、延長して設けたことを特徴とする。
【0011】
それによれば、両部品(10〜30)の接着時において、接着剤(41、42)の内部に残存する気体は、接着剤(41、42)の内部から排出通路(50、60)を介して非接着領域まで移動し、そこから外気に排出されるため、部品や接着剤の種類の制約を受けることなく、また接着領域が拡大したとしても、接着剤(41、42)の内部に気体がボイドとして残存するのを極力防止することができる。
【0012】
ここで、排出通路としては、接着領域から少なくとも一方の部品の内部を通って非接着領域まで貫通する貫通孔(50)であるものにできる。
【0013】
具体的には、両部品(10、20)の他方の部品(20)が、一方の部品(10)の一面(11)に接着剤(41)を介して接着されており、一方の部品(10)の一面(11)のうち接着剤(41)が配置されている領域が接着領域であり、一方の部品(10)における一面(11)とは反対側の他面(12)が非接着領域である場合には、排出通路としての貫通孔(50)は、一方の部品(10)の一面(11)から他面(12)に貫通する孔として構成されたものにできる(後述の図1、図3、図10、図11、図12等参照)。
【0014】
また、貫通孔(50)における非接着領域側の開口部(50a)を、当該非接着領域の表面に設けられ貫通孔(50)よりも大きな開口サイズを有する凹部(51)の底部に開口しているものとしてもよい(後述の図3参照)。
【0015】
それによれば、排出通路としての貫通孔(50)を介して非接着領域まで、接着剤(41)が流れ出したとしても、凹部(51)に拡がって凹部(51)内に貯められるため、当該非接着領域の表面上に接着剤(41)が拡がるのを抑制することができる。
【0016】
また、貫通孔(50)における接着領域側の開口部(50b)を、当該貫通孔(50)の内部から外側に向かって広がるテーパ形状としてもよい(後述の図3参照)。
【0017】
それによれば、接着剤(41)中の気体が、接着領域側の開口部(50b)のテーパ面に沿って当該開口部(50b)に入りやすくなるため、当該開口部(50b)にトラップされやすくなり、また、当該開口部(50b)から貫通孔(50)を介して排出されやすくなる。
【0018】
また、接着剤(41)を、貫通孔(50)内から貫通孔(50)における非接着領域側の開口部(50a)まで充填してもよく(後述の図9参照)、それによれば、アンカー効果による接着力の向上が期待される。
【0019】
また、排出通路としては、上記貫通孔(50)以外にも、接着領域から非接着領域まで少なくとも一方の部品の表面に形成された溝(60)であってもよい(後述の図4および図5参照)。
【0020】
また、接着剤(41)を、熱伝導性を有するフィラー(F)を含有したものとした場合には、排出通路(50、60)の通路面積がフィラー(F)の平均粒径よりも小さいものであることが好ましい(後述の図3および図5参照)。それによれば、接着剤(41)のフィラー(F)が排出通路(50、60)を通して排出されるのを防止し接着剤(41)の熱伝導性の低下を防止できる。
【0021】
また、上述したように、排出通路としての貫通孔(50)が、一方の部品(10)の一面(11)から他面(12)に貫通する孔として構成されている部品接続構造体(後述の図1、図3等参照)を形成する部品の接続方法としては、他方の部品(20)を一方の部品(10)の一面(11)に未硬化の接着剤(41)を介して搭載し、一方の部品(10)の一面(11)を地方向に向け、一方の部品(10)の他面(12)を天方向に向けた状態で、接着剤(41)の硬化を行うようにすればよい(後述の図2参照)。
【0022】
それによれば、排出通路としての貫通孔(50)が地方向に位置する接着剤(41)から天方向に向かって延びる形で接着剤(41)の硬化が行われるため、当該硬化時に発生する接着剤(41)中のガスが、貫通孔(50)を介して天方向に向かって抜けやすくなる。
【0023】
また、この接続方法においては、接着剤(41)として水分により硬化するものを用い、接着剤(41)の硬化を、貫通孔(50)を介して接着剤(41)に水分を供給することにより行うようにしてもよい(後述の図6参照)。
【0024】
それによれば、水分により硬化する接着剤(41)を用いたとしても、硬化時には貫通孔(50)を介して接着剤(41)に水分を供給することで、接着剤(41)の硬化を適切に行える。
【0025】
また、接着剤(41)として水分により硬化するものを用いた場合には、一方の部品(10)の一面(11)に未硬化の前記接着剤(41)を設ける前に、一方の部品(10)の前記一面(11)に水分を供給しておく方法も採用できる(後述の図7参照)。
【0026】
水分により硬化する接着剤(41)の場合には、このように接着剤(41)の配置部分に予め水分を供給しておいてもよく、この場合であっても貫通孔(50)から硬化時に発生する接着剤(41)のガスが抜けるため、問題はない。
【0027】
また、上記接続方法においては、接着剤(41)として主剤(41a)と硬化剤(41b)との反応により硬化する2液型接着剤を用い、一方の部品(10)の一面(11)に未硬化の接着剤(41)を設けるときには、主剤(41a)および硬化剤(41b)の一方を設けた後、その上に他方を設けるようにすればよい(後述の図8参照)。
【0028】
このような2液型の接着剤(41)の場合に、主剤(41a)と硬化剤(41b)とを分けて配置したとしても、硬化時に発生するガスは貫通孔(50)から排出されるため、適切な接着が行える。
【0029】
なお、特許請求の範囲およびこの欄で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、説明の簡略化を図るべく、図中、同一符号を付してある。
【0031】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る電子装置100の構成を示す図であり、(a)は概略断面図、(b)は(a)の下視平面図である。
【0032】
本実施形態の電子装置100は、大きくは、筐体10と、筐体10の一面11上に第1の接着剤41を介して搭載された基板20と、基板20の一面21上に第2の接着剤42を介して搭載された電子部品30とを備えて構成されている。
【0033】
ここで、筐体10の一面11と基板20における一面21とは反対側の他面22とが、第1の接着剤41により接着され、基板20の一面21と電子部品30における一面31とは反対側の他面32とが、第2の接着剤42により接着されている。
【0034】
筐体10は、たとえば、金属や樹脂あるいはセラミックなどよりなるケースでもよいし、またはヒートシンクやリードフレーム、さらにはバスバーなどであってもよい。つまり、筐体10は、基板20をその上の電子部品30とともに支持できるものであれば、特に限定されない。
【0035】
基板20は、板状のものであって一面21に電子部品10を搭載できるものであるならば、特に限定されない。具体的には、基板20としては、アルミナなどのセラミック基板、プリント基板、金属基板などの配線基板が挙げられる。また、基板20としては、単層基板でも積層基板でもよい。
【0036】
電子部品10としては、特に限定するものではないが、たとえばICチップ、コンデンサ、抵抗素子などの表面実装部品が挙げられる。また、基板20に搭載される電子部品10は、単数でも複数でもよい。
【0037】
この電子部品30は、図示しない導電性接着剤やワイヤなどを介して基板20と電気的に接続されるものである。たとえば、基板20の一面21に、金属箔や導体ペーストなどよりなる図示しない導体部を設け、この導体部を介して、電子部品30と基板20との電気的接続を行うようにする。
【0038】
筐体10と基板20との間に介在する第1の接着剤41、および、基板20と電子部品30との間に介在する第2の接着剤42は、硬化により接着力を発揮するタイプの接着剤である。
【0039】
具体的に、これら第1および第2の接着剤41、42としては、エポキシ樹脂やシリコーン樹脂などの加熱硬化型あるいは室温硬化型の樹脂接着剤や、一般的な主剤と硬化剤との混合反応で硬化する2液型の接着剤、あるいは、はんだなどが挙げられる。また、これら接着剤41、42としては、熱伝導性や導電性を付与するための銅や銀などのフィラーが含有されたものであってもよい。
【0040】
ここで、本実施形態の電子装置100においては、第1の接着剤41を介した筐体10と基板20との接合構造において、次に述べるような独自の構成を採用している。
【0041】
本実施形態においては、電子装置100のうち第1の接着剤41を介して接続された筐体10と基板20とにより部品接続構造体が構成されている。そして、筐体10および基板20が部品接続構造体における両部品10、20に相当し、第1の接着剤41が部品接続構造体における接着剤に相当する。
【0042】
そして、本実施形態では、この部品接続構造体において、一方の部品である筐体10には、硬化時に第1の接着剤41中に発生する気体を外気に排出するための排出通路50を設けている。この排出通路50は、図1(a)に示されるように、筐体10の表面のうち第1の接着剤41が配置されている領域である接着領域から第1の接着剤41が配置されていない領域である非接着領域まで、延長して設けられている。
【0043】
具体的には、上述したように筐体10の一面11上に基板20が搭載され、筐体10の一面11と基板20の他面22とが第1の接着剤41を介して接着されている。ここにおいて、筐体10の一面11のうち第1の接着剤41が配置されている領域が上記接着領域となっており、筐体10における一面11とは反対側の他面12が上記非接着領域となっている。
【0044】
さらに言うならば、筐体10および基板20は、図示例では、ともに板状のものであり、これら筐体10および基板20の表面とは、筐体10の表裏の板面である一面11および他面12と側面、基板20の表裏の板面である一面21および他面21と側面のことである。
【0045】
このとき、本実施形態の部品接続構造体における接着領域とは、これら筐体10および基板20の表面11、12、21、22のうち第1の接着剤41に接触している部位であり、非接着領域とはそれ以外の部位のことである。
【0046】
たとえば、本実施形態の筐体10の一面11における接着領域は、後述する図4(b)に示されるものと同様である。そして、本実施形態では、排出通路50は、筐体10における接着領域、非接着領域を接続する通路として、筐体10側に設けられたものとなっている。
【0047】
具体的に、本実施形態では、排出通路50は、接着領域から筐体10の内部を通って非接着領域まで貫通する貫通孔50であり、この貫通孔50は、筐体10の一面11から他面12に貫通する孔として構成されている。このような貫通孔50は、筐体10に対して、プレスやエッチングあるいは切削などによる穴あけ加工を施すことにより形成することができる。
【0048】
また、この排出通路としての貫通孔50の通路断面積、ここでは孔の断面積は、第1の接着剤41がその硬化時に発生するガスが通過できる大きさであればよい。そして、貫通孔50の孔形状については、図1(b)では円形の孔であるが、特にこれに限定されるものではなく、上記ガスが通過できるものであれば、それ以外にも多角形の孔、その他任意の孔形状が可能である。
【0049】
また、本電子装置100においては、図示しないが、たとえば、基板20の外側にリードフレームを設け、このリードフレームと基板20あるいは電子部品30とをボンディングワイヤなどにより電気的に接続している。そして、電子装置100は、このリードフレームを介して、外部との電気的なやりとりを可能としている。
【0050】
次に、本実施形態の電子装置100の製造方法について、述べる。本電子装置100は、各接着剤41、42を介して、筐体10、基板20、電子部品30を接着することにより製造されるものである。
【0051】
そして、これら3部品10〜30の接着の順序は、任意である。つまり、第1の接着剤41を介して筐体10と基板20とを接着した後、第2の接着剤42を介して電子部品30と基板20とを接着してもよいし、それとは逆に、基板20と電子部品30とを接着した後、基板20と筐体10とを接着してもよい。
【0052】
しかしながら、本製造方法では、上記排出通路としての貫通孔50を有する筐体10と基板20との接着工程については、次に述べるような独自の方法を採用している。この接着工程について図2を参照して述べる。図2は、第1の接着剤41を介した筐体10と基板20との接着工程を示す工程図である。
【0053】
この接着工程では、図2に示されるように、基板20を筐体10の一面11に未硬化の第1の接着剤41を介して搭載するとともに、筐体10の一面11を地方向に向け、筐体10の他面12を天方向に向けた状態とする。そして、この状態で、加熱などにより第1の接着剤41の硬化を行う。
【0054】
図2(a)に示されるように、この第1の接着剤41の硬化時には、第1の接着剤41中にガスGが発生する。このガスGは、第1の接着剤41の硬化反応により発生するガスや、元々第1の接着剤41中に含有されていた水分などである。これらのガスGは、大気よりも比重が軽いものが一般的である。
【0055】
この硬化時には、排出通路としての貫通孔50が地方向に位置する第1の接着剤41から天方向に向かって延びる形となっている。そのため、硬化の際には、第1の接着剤41が硬化して筐体10と基板20とが接着するとともに、第1の接着剤41中のガスGが、図2(b)に示されるように、貫通孔50を介して天方向に向かって抜けていく。
【0056】
こうして、第1の接着剤41により筐体10と基板20とが接着される。また、基板20と電子部品30とを第2の接着剤42により接着する。それにより、本実施形態の電子装置100ができあがる。
【0057】
ところで、本実施形態の電子装置100では、部品接続構造体を構成する筐体10と基板20とのうち筐体10において、第1の接着剤41中の気体を外気に排出するための排出通路としての貫通孔50を、筐体10における上記接着領域から上記非接着領域まで、延長して設けている。
【0058】
それによれば、筐体10と基板20との接着時において、第1の接着剤41の内部に残存する気体を、貫通孔50を介して非接着領域まで移動させ、そこから外気に排出することができる。
【0059】
そのため、様々な種類の筐体10および基板20に対して、また、筐体10および基板20のサイズが大きくなって接着領域が拡大したとしても、第1の接着剤41の内部に気体がボイドとして残存するのを極力防止できる。
【0060】
ここで、本実施形態では、上記図2に示されるように、第1の接着剤41による接着工程において、筐体10の一面11を地方向に向け、筐体10の他面12を天方向に向けた状態とすることで、硬化時に発生するガスGを、第1の接着剤41から貫通孔50を介して天方向に向かって排出しやすくしている。
【0061】
地方向から天方向に向かってガスGが抜けるように、貫通孔50を配置して、第1の接着剤41の硬化を行うことは、当該ガスGの排出性を良好にするとともに、第1の接着剤41が貫通孔50から筐体10の他面12側へ流出するのを防止するという効果も、期待できる。
【0062】
なお、第1の接着剤41による筐体10と基板20との接着工程においては、上記図2の方法とは反対に、筐体10の一面11を天方向に向け、筐体10の他面12を地方向に向けた状態で、第1の接着剤41の硬化を行ってもよい。この場合、たとえば、筐体10の他面12側を減圧雰囲気とするなどにより、上記ガスGの貫通孔50を介した排出を促進するようにすることが望ましい。
【0063】
また、本実施形態によれば、第1の接着剤41は、貫通孔50にまったく入り込まない場合もあるが、一部が貫通孔50に入り込む場合もある。これは、第1の接着剤41を介して筐体10と基板20とを組み付けたときの圧力や、毛細管現象などにより、硬化前の第1の接着剤41が貫通孔50に入り込むためである。
【0064】
このように、第1の接着剤41の一部が貫通孔50に入り込んだ場合、その分、第1の接着剤41の接着面積が増加し、第1の接着剤41を介した筐体10と基板20との密着性の向上や熱伝導性の向上につながると考えられる。
【0065】
(第2実施形態)
図3は、本発明の第2実施形態に係る電子装置の要部の構成を示す図であり、(a)は概略断面図、(b)は(a)の下視平面図である。この図3は、上記図1に示した電子装置100における筐体10と基板20との接続部分を示したものである。
【0066】
なお、この図3以外の部分は、本実施形態においても上記図1の電子装置100と同様である。つまり、本実施形態においても、排出通路としての貫通孔50による作用効果は、上記第1実施形態と同様である。そして、ここでは、本実施形態と上記第1実施形態との相違点を中心に述べることとする。
【0067】
本実施形態では、第1の接着剤41は、樹脂成分中に熱伝導性を有するフィラーFを含有したものとしている。そして、本実施形態では、このフィラーFを含有する第1の接着剤41であることも考慮した構成となっている。
【0068】
まず、本実施形態では、図3に示されるように、筐体10の非接着領域すなわち筐体10の他面12には、貫通孔50よりも大きな開口サイズを有する凹部51が設けられていることが上記第1実施形態と相違する。この凹部51は、筐体10の一面12より凹むとともに、その開口部の大きさが、貫通孔50の孔のサイズよりも大きいものである。たとえば、凹部51の開口径は、貫通孔50の孔径の2倍以上である。
【0069】
そして、貫通孔50における非接着領域側の開口部50aすなわち筐体10の他面12側の開口部50aは、この凹部51の底部に開口している。この凹部51の開口形状は特に限定されるものではないが、図3(b)に示される例では、円形孔である貫通孔50よりも一回り大きな円形となっている。
【0070】
それによれば、第1の接着剤41を介した接着工程において、貫通孔50を介して非接着領域である筐体10の他面12まで、第1の接着剤41が流れ出したとしても、その接着剤41は凹部51に拡がって凹部51に貯められる。そのため、筐体10の他面12に第1の接着剤41が拡がるのを抑制できる。
【0071】
また、図3(a)に示されるように、貫通孔50における接着領域側の開口部50b、すなわち、貫通孔50における筐体10の一面11側の開口部50bが、当該貫通孔50の内部から外側に向かって広がるテーパ形状となっていることも、本実施形態の独自の構成である。
【0072】
それによれば、接着工程において、第1の接着剤41中に発生するガスが、この接着領域側の開口部50bのテーパ面に沿って当該開口部50b内に入りやすくなる。そのため、当該ガスは、当該開口部50bにトラップされやすくなり、ひいては、当該開口部50bから貫通孔50を介して排出されやすくなる。
【0073】
また、本実施形態では、第1の接着剤41を、熱伝導性を有するフィラーFを含有するものとしているが、本実施形態では、排出通路としての貫通孔50の通路面積を、フィラーFの平均粒径よりも小さいものとしている。
【0074】
このフィラーFは、上述したように銀や銅などの粒子であり、その平均粒径は、この種の一般的なフィラーを含有する接着剤と同様に定義づけられたものである。そして、このようなフィラーFが、互いに接触した状態で第1の接着剤41の硬化がなされることにより、熱伝導の経路が、第1の接着剤41中に形成される。
【0075】
そして、本実施形態によれば、貫通孔50の通路面積をフィラーFの平均粒径よりも小さくしているため、接着工程において、第1の接着剤41のフィラーFが、貫通孔50を通して排出されるのを防止し、ひいては、第1の接着剤41の熱伝導性の低下を防止することができる。
【0076】
また、この場合、接着工程において、第1の接着剤41中の樹脂成分のみが貫通孔50に流れ込み、フィラーFは貫通孔50に入り込まずに筐体10と基板20との間に残る。そのため、筐体10と基板20との間において、第1の接着剤41は、元来の第1の接着剤41におけるフィラーFの組成よりもフィラーリッチの状態となり、結果的に、第1の接着剤41の熱伝導性が向上することが期待される。
【0077】
また、第1の接着剤41中の樹脂成分のみを貫通孔50に流れ込ませることを、積極的に行うためには、排出通路である貫通孔50の内壁の表面を、貫通孔50以外の筐体10の表面よりも、第1の接着剤41に対する濡れ性に優れたものとすることが望ましい。具体的には、貫通孔50の内面に金属メッキを施したり、当該内面をブラスト処理などで粗化したりすればよい。
【0078】
(第3実施形態)
図4は、本発明の第3実施形態に係る電子装置の要部の構成を示す図であり、(a)は概略断面図、(b)は(a)の下方から視たときの筐体10の一面11の概略平面図である。
【0079】
本実施形態は、筐体10に設けた排出通路を上記貫通孔50に変えて溝60としたものであり、それ以外の部分は、上記図1の電子装置100と同様である。以下、上記第1実施形態との相違点を中心に述べることとする。図4(b)中、溝60には識別のため点ハッチングを施したが、これは断面を示すものではない。
【0080】
図4に示されるように、本実施形態では、排出通路60を、筐体10の一面11における接着領域から非接着領域まで延びるように形成された溝60として構成している。ここでは、非接着領域は、筐体10の一面11のうち接着領域の外側の部位であり、これら筐体10の一面11における接着領域および非接着領域は、具体的には、図4中の両端矢印の範囲や矩形破線にて示す通りのものである。
【0081】
このような溝60は、エッチングやプレス、型成形、切削などにより形成可能である。そして、本実施形態では、部品接続構造体を構成する筐体10と基板20とのうち筐体10において、排出通路としての溝60を、筐体10における上記接着領域から上記非接着領域まで、延長して設けている。
【0082】
そのため、筐体10と基板20との接着時において、第1の接着剤41の内部に残存する気体を、溝60を介して非接着領域まで移動させ、そこから外気に排出することができる。そのため、様々な種類の筐体10および基板20に対して、また、筐体10および基板20のサイズが大きくなって接着領域が拡大したとしても、第1の接着剤41の内部に気体がボイドとして残存するのを極力防止できる。
【0083】
ここで、本実施形態では、第1の接着剤41による接着工程は、特に特別な方法を採用しなくともよく、たとえば、筐体10と基板20との接着は、筐体10を地側、基板20を天側に位置させて行ってもよい。
【0084】
(第4実施形態)
図5は、本発明の第4実施形態に係る電子装置の要部の構成を示す図であり、(a)は概略断面図、(b)は(a)の下方から視たときの筐体10の一面11の概略平面図である。なお、図5(b)においても溝60には識別のため点ハッチングを施してある。本実施形態も、上記第3実施形態と同様に、排出通路を溝60としたものであり、ここでは、上記第3実施形態との相違点を中心に述べることとする。
【0085】
本実施形態では、第1の接着剤41は、樹脂成分中に熱伝導性を有するフィラーFを含有したものとしており、このフィラーFを含有する第1の接着剤41に適した溝60の構成を提供するものである。
【0086】
つまり、本実施形態における排出通路としての溝60は、その通路面積をフィラーFの平均粒径よりも小さいものとしている。それによれば、第1の接着剤41のフィラーFが溝60を通して排出されるのを防止し、ひいては、第1の接着剤41の熱伝導性の低下を防止できる。
【0087】
また、この場合も、第1の接着剤41による接着工程においては、毛細管現象などにより、溝60に沿って、第1の接着剤41中の樹脂成分が上記ガスとともに、流れだす。特に、本実施形態では、筐体10の一面11における接着領域から非接着領域に向かって低くなるように傾斜している。
【0088】
そのため、当該接着工程を、筐体10の一面11を天方向に向けた状態で行えば、第1の接着剤41中の樹脂成分が、当該傾斜に倣って溝60内に流れ出し、非接着領域まで排出されやすくなる。
【0089】
そのため、本実施形態においても、筐体10と基板20との間において、上記同様のフィラーリッチの状態となり、結果的に、第1の接着剤41の熱伝導性が向上することが期待される。
【0090】
なお、ここでは、図5に示されるように、筐体10の一面11の中央部が頂部となるように、ピラミッド状に突出することにより、当該一面11において上記傾斜が構成されている。また、筐体10の一面11における上記傾斜の構成は、当該ピラミッド形状以外にも、たとえば、筐体10の一面11を凸状の曲面とするものであってもよい。
【0091】
また、本実施形態においても、第1の接着剤41中の樹脂成分のみを溝60に流れ込ませることを、積極的に行うためには、排出通路である溝60の内面を、溝60以外の筐体10の表面よりも、第1の接着剤41に対する濡れ性に優れたものとすることが望ましい。具体的には、上記同様に、溝60の内面に金属メッキを施したり、当該内面を粗化処理したりすればよい。
【0092】
(第5実施形態)
図6(a)は、従来技術に基づいて本発明者が試作した比較例としての部品接続構造体の接着工程を示す工程図、図6(b)は、本発明の第5実施形態に係る部品接続構造体の接着工程を示す工程図である。本実施形態の接着工程は、上記貫通孔50に関する上記各実施形態の部品接続構造体を形成するにあたって、適用が可能である。
【0093】
上述したように、第1の接着剤41としては、シリコーン樹脂などよりなる室温硬化型の樹脂接着剤が採用可能である。具体的には、湿気硬化型のシリコーン接着剤が一般的である。このものは、室温で空気中の水分と化学反応して硬化し、室温で硬化するので使いやすく、接着性の点でも優れているという特性を有する。
【0094】
しかしながら、従来の部品接続構造体では、接着剤として、このような水分により硬化するものを用いることは困難であった。その理由は、図6(a)に示されるように、従来では、湿気硬化型の第1の接着剤41において、硬化時には表面側は水分(H2O)に触れて硬化するが、内部では水分が行き届かず、未硬化のままとなるためである。なお、図6(a)では、第1の接着剤41のうち硬化部分に点ハッチングを施し、未硬化部分にはハッチングを施していない。
【0095】
それに対して、本実施形態では、筐体10に貫通孔50が設けられているため、空気中の水分が、筐体10の他面12側から貫通孔50を通して、第1の接着剤41に供給される。そのため、水分により硬化する接着剤を第1の接着剤41として用いた場合であっても、第1の接着剤41の内部において硬化反応が行われ、第1の接着剤41全体を硬化させることができる。
【0096】
また、このとき、本実施形態の接着工程では、硬化反応により第1の接着剤41中に発生するガスは、貫通孔50を介して排出される。そのため、第1の接着剤41の内部に気体がボイドとして残存するのを極力防止できる。
【0097】
(第6実施形態)
図7は、本発明の第6実施形態に係る部品接続構造体の接着工程を示す工程図である。本実施形態の接着工程は、上記第1〜第4の各実施形態のうち上記貫通孔50に関する部品接続構造体を形成するにあたって、適用が可能である。
【0098】
本実施形態においても、第1の接着剤41として水分により硬化するものを用いる。このとき、本実施形態の接着工程では、図7に示されるように、筐体10の一面11に未硬化の第1の接着剤41を設ける前に、筐体10の一面11に水分を含む吸水部Kを設けておく。
【0099】
この吸水部Kは、たとえば、筐体10の一面11を湿らせた状態とすることにより構成してもよいし、吸水した樹脂の塗膜であってもよい。このように筐体10の一面11に水分を供給した後、湿気硬化型の第1の接着剤41を配置し、さらに、基板20を組み付ける。
【0100】
この状態で、第1の接着剤41は、吸水部Kからの水分により硬化し、筐体10と基板20とは接着される。また、このとき、硬化反応により第1の接着剤41中に発生するガスGは、貫通孔50を介して排出されるため、第1の接着剤41の内部に気体がボイドとして残存するのを極力防止できる。
【0101】
(第7実施形態)
図8は、本発明の第7実施形態に係る部品接続構造体の接着工程を示す工程図である。本実施形態の接着工程は、2液型の第1の接着剤41を用いるものであり、上記第1〜第4の各実施形態のうち上記貫通孔50に関する部品接続構造体を形成するにあたって、適用が可能である。
【0102】
2液型の接着剤は、一般に知られているように、エポキシ樹脂などよりなるものであり、主剤と硬化剤との反応により硬化するものである。本実施形態の第1の接着剤41は、主剤41aと硬化剤41bとの反応により硬化する。
【0103】
そして、本実施形態の接着工程では、筐体10の一面11に未硬化の第1の接着剤41を設ける工程において、図8に示されるように、筐体10の一面11に硬化剤41bを設け、次にその上に主剤41aを設ける。その後は、基板20を組み付ければ、2液41aおよび41bが反応することで第1の接着剤41が硬化し、筐体10と基板20とは接着される。
【0104】
このとき、硬化反応により第1の接着剤41中に発生するガスGは、貫通孔50を介して排出されるため、第1の接着剤41の内部に気体がボイドとして残存するのを極力防止できる。
【0105】
なお、筐体10の一面11に未硬化の第1の接着剤41を設ける工程では、図8の例とは逆に、筐体10の一面11に主剤41aを設けた後に、その上に硬化剤41bを設けてもよい。
【0106】
このように、本実施形態によれば、2液型の接着剤を第1の接着剤41として用いた場合において、主剤41aと硬化剤41bとを分けて配置したとしても、硬化時に発生するガスGは貫通孔50から排出されるため、適切な接着が行える。また、従来では、2液型の場合、主剤と硬化剤とを予め混合してから塗布を行っていたが、本実施形態では、混合することなく、主題と硬化剤とを別々に塗布しても接着が可能となる。
【0107】
なお、本第7実施形態および上記第5、第6実施形態のように、湿気硬化型の接着剤や2液型の接着剤を第1の接着剤41として用いる接着方法は、排出通路としての上記溝60を有する部品接続構造体(上記図4、図5参照)を形成する場合にも、適用できることは、改めて説明するまでもなく可能である。
【0108】
(第8実施形態)
図9において(a)、(b)、(c)は、それぞれ本発明の第8実施形態に係る第1の例としての電子装置の要部、第2の例としての電子装置の要部、第3の例としての電子装置の要部を示す概略断面図である。
【0109】
上述したように、第1の接着剤41の一部が貫通孔50に入り込んだ場合、第1の接着剤41の接着面積の増加により、密着性の向上や熱伝導性の向上が期待されるが、本実施形態は、貫通孔50の中へ、積極的に第1の接着剤41を入り込ませ、上記効果を促進する構成としたものである。
【0110】
つまり、図9に示されるように、本実施形態では、第1の接着剤41は、貫通孔50内から貫通孔50における非接着領域側の開口部50a、または、その近くまで、充填されている。これは、第1の接着剤41を介して筐体10と基板20とを組み付けるときの圧力や、毛細管現象などにより、硬化前の第1の接着剤41を貫通孔50に入り込ませることにより実現することができる。
【0111】
図9(a)に示される第1の例では、上記図1に示した貫通孔50において、貫通孔50内から貫通孔50における非接着領域側の開口部50aまで、すなわち貫通孔50の全体に、第1の接着剤41を入り込ませたものである。この場合、第1の接着剤41においては、アンカー効果による接着力の向上が期待できる。
【0112】
また、図9(b)に示される第2の例では、上記図3に示したような非接着領域の表面に設けられた凹部51を有する構成において、貫通孔50の全体に第1の接着剤41を入り込ませたものである。
【0113】
この場合も、上記アンカー効果による接着力向上が期待される。それとともに、貫通孔50における非接着領域側の開口部50aからはみ出した第1の接着剤41は、凹部51に収納されるため、非接着領域である筐体10の他面12に、第1の接着剤41がはみ出さないという利点がある。
【0114】
また、図9(c)に示される第3の例では、貫通孔50は、筐体10の一面11から筐体10の他面12に向かって真っ直ぐ延び途中で曲がって筐体10の側面13まで貫通する孔として構成している。つまり、この例では、筐体10の非接着領域は、筐体10の側面13である。
【0115】
この場合、第1の接着剤41は、貫通孔50における筐体10の一面11側の開口部50bから貫通孔50の曲がり部まで、入り込んで充填されている。この場合も、第1の接着剤41におけるアンカー効果による接着力の向上が期待できるとともに、筐体10の他面12に、第1の接着剤41がはみ出さないようにできる。
【0116】
ここで、これら図9(a)〜(c)の各例においても、上記図3に示されるものと同様に、貫通孔50における接着領域側の開口部50bが、当該貫通孔50の内部から外側に向かって広がるテーパ形状となっていてもよい。
【0117】
(他の実施形態)
なお、上記各実施形態では、部品接続構造体を構成する両部品である筐体10および基板20のうち、筐体10のみに上記排出通路50、60を設けたが、このような排出通路50、60は、基板20のみに同様に設けてもよいし、筐体10と基板20との両方に設けてもよい。
【0118】
また、上記各実施形態では、上記図1に示される電子装置100において、第1の接着剤41を介して接続された筐体10と基板20とが、部品接続構造体を構成する両部品10、20および接着剤41に相当したが、上記電子装置100において、第2の接着剤42を介して接続された基板20と電子部品30とが、部品接続構造体を構成するものであってもよい。
【0119】
この場合には、第2の接着剤42を挟む基板20と電子部品30との両方、もしくはいずれか一方において、上記各実施形態と同様の排出通路としての貫通孔50または溝60を設ければよい。また、この第2の接着剤42に関する部品接続構造体の製造方法についても、上記各実施形態に示した製造方法を適用してよい。
【0120】
図10は、この第2の接着剤42に関する部品接続構造体の場合において、電子部品30のみに排出通路としての貫通孔50を設けた例を示す概略断面図であり、また、図11は、同場合において、基板20のみに排出通路としての貫通孔50を設けた例を示す概略断面図である。
【0121】
図10では、上記電子装置100において、第2の接着剤42を介して接続された基板20と電子部品30とが部品接続構造体を構成しており、貫通孔50は、電子部品30の厚さ方向を貫通した孔とされている。つまり、この貫通孔50は、電子部品30の他面32のうち接着領域から非接着領域である電子部品30の一面31まで延長して設けられている。
【0122】
また、図11では、上記電子装置100において、第2の接着剤42を介して接続された基板20と電子部品30とが部品接続構造体を構成しており、貫通孔50は、基板20の厚さ方向に貫通した孔とされている。つまり、この貫通孔50は、基板20の他面22のうち第2の接着剤42が配置されている接着領域から第2の接着剤42が配置されていない非接着領域である基板20の一面21まで延長して設けられている。
【0123】
そして、これら図10および図11に示される各例においても、上述した貫通孔50と同様の作用により、第2の接着剤42の内部に気体がボイドとして残存するのを極力防止することができる。
【0124】
また、部品接続構造体とは、硬化により接着を行う接着剤を介して2個の部品同士が面接着されたものであればよいものである。そこで、たとえば、上記電子装置100において、第2の接着剤42を介した基板20と電子部品30との組み合わせ、および、第1の接着剤41を介した筐体10と基板20との組み合わせの両方が、部品接続構造体として構成されていてもよい。
【0125】
図12は、このような場合において、電子装置100における筐体10、基板20、電子部品30のすべてに対して、排出通路としての貫通孔50を設けた例を示す概略断面図である。
【0126】
なお、この場合、上記図11に示されるように基板20のみに貫通孔50を設けた構成でもよく、その場合には、第1の接着剤41については、基板20における第1の接着剤41の接着領域から非接着領域に延びる貫通孔50による効果が発揮され、第2の接着剤42については、基板20における第2の接着剤42の接着領域から非接着領域に延びる貫通孔50による効果が発揮される。
【0127】
また、図12において、貫通孔50を、基板20には設けずに電子部品30および筐体10のみに設けた構成であっても、第1および第2の接着剤41、42について、それぞれボイド残存防止効果が発揮される。
【0128】
また、上記電子装置100は、筐体10、基板20、電子部品30の3部品の積層構造であったが、上記電子装置100において当該3部品のどれか1つを省略して2部品とした構造や、筐体10の上に直接電子部品30を、接着剤を介して搭載した構成であってもよい。この場合にも、接着剤を介して接着された両部品の少なくとも一方に、上記したような排出通路を設ければ、同様の効果が期待される。
【0129】
また、排出通路としての貫通孔50としては、接着剤41、42に発生する上記ガスが通過できるものであるならば、多孔質の樹脂、セラミック、金属などのポーラス材料よりなるものであってもよい。図13は、ポーラス材料Pを用いた貫通孔50の種々の例を示す概略断面図である。
【0130】
図13(a)は、貫通孔50における接着領域側の開口部50b側の部位の一部を、ポーラス材料Pにより構成したものである。図13(b)は、貫通孔50における外周側の部位をポーラス材料Pにより構成したものである。図13(c)は、貫通孔50の全体をポーラス材料Pにより構成したものである。これらポーラス材料Pは、たとえば筐体10に埋め込むことにより、貫通孔50として構成される。
【0131】
また、上記各実施形態では、排出通路として貫通孔50と溝60とを示したが、排出通路としては、溝と貫通孔とを組み合わせたもの、たとえば、途中まで溝により構成され、排出側の残り部分が貫通孔により構成されたものであってもよい。さらに、排出通路としては、貫通孔や溝に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0132】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電子装置の構成を示す図であり、(a)は概略断面図、(b)は(a)の下視平面図である。
【図2】上記第1実施形態に係る第1の接着剤を介した筐体と基板との接着工程を示す工程図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る電子装置の要部の構成を示す図であり、(a)は概略断面図、(b)は(a)の下視平面図である。
【図4】本発明の第3実施形態に係る電子装置の要部の構成を示す図であり、(a)は概略断面図、(b)は(a)における筐体の一面の概略平面図である。
【図5】本発明の第4実施形態に係る電子装置の要部の構成を示す図であり、(a)は概略断面図、(b)は(a)における筐体の一面の概略平面図である。
【図6】(a)は、比較例としての部品接続構造体の接着工程を示す工程図、(b)は、本発明の第5実施形態に係る部品接続構造体の接着工程を示す工程図である。
【図7】本発明の第6実施形態に係る部品接続構造体の接着工程を示す工程図である。
【図8】本発明の第7実施形態に係る部品接続構造体の接着工程を示す工程図である。
【図9】(a)、(b)、(c)は、それぞれ本発明の第8実施形態に係る電子装置の第1の例の要部、第2の例の要部、第3の例の要部を示す概略断面図である。
【図10】電子部品のみに排出通路としての貫通孔を設けた例を示す概略断面図である。
【図11】基板のみに排出通路としての貫通孔を設けた例を示す概略断面図である。
【図12】電子装置における筐体、基板、電子部品のすべてに対して排出通路としての貫通孔を設けた例を示す概略断面図である。
【図13】ポーラス材料Pを用いた貫通孔50の種々の例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0133】
10…筐体、11…筐体の一面、12…筐体の他面、20…基板、30…電子部品、
41…第1の接着剤、41a…主剤、41b…硬化剤、42…第2の接着剤、
50…排出通路としての貫通孔、50a…貫通孔における非接着領域側の開口部、
50b…貫通孔における接着領域側の開口部、51…凹部、
60…排出通路としての溝、F…フィラー。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化により接着を行う接着剤(41、42)を介して両部品(10、20、30)対向させ、これら両部品(10〜30)同士を前記接着剤(41、42)により接着してなる部品接続構造体において、
前記両部品(10〜30)のうち少なくとも一方の部品には、前記接着剤(41、42)中の気体を外気に排出するための排出通路(50、60)が、当該少なくとも一方の部品の表面のうち前記接着剤(41、42)が配置されている領域である接着領域から前記接着剤(41、42)が配置されていない領域である非接着領域まで、延長して設けられていることを特徴とする部品接続構造体。
【請求項2】
前記排出通路は、前記接着領域から前記少なくとも一方の部品の内部を通って前記非接着領域まで貫通する貫通孔(50)であることを特徴とする請求項1に記載の部品接続構造体。
【請求項3】
前記両部品(10、20)の他方の部品(20)は、一方の部品(10)の一面(11)に前記接着剤(41)を介して接着されており、
前記一方の部品(10)の前記一面(11)のうち前記接着剤(41)が配置されている領域が前記接着領域であり、前記一方の部品(10)における前記一面(11)とは反対側の他面(12)が前記非接着領域であり、
前記排出通路としての前記貫通孔(50)は、前記一方の部品(10)の前記一面(11)から前記他面(12)に貫通する孔として構成されていることを特徴とする請求項2に記載の部品接続構造体。
【請求項4】
前記貫通孔(50)における前記非接着領域側の開口部(50a)は、当該非接着領域の表面に設けられ前記貫通孔(50)よりも大きな開口サイズを有する凹部(51)の底部に開口しているものであることを特徴とする請求項2または3に記載の部品接続構造体。
【請求項5】
前記貫通孔(50)における前記接着領域側の開口部(50b)は、当該貫通孔(50)の内部から外側に向かって広がるテーパ形状となっていることを特徴とする請求項2ないし4のいずれか1つに記載の部品接続構造体。
【請求項6】
前記接着剤(41)は、前記貫通孔(50)内から前記貫通孔(50)における前記非接着領域側の開口部(50a)まで充填されていることを特徴とする請求項2ないし5のいずれか1つに記載の部品接続構造体。
【請求項7】
前記排出通路は、前記接着領域から前記非接着領域まで前記少なくとも一方の部品の表面に形成された溝(60)であることを特徴とする請求項1に記載の部品接続構造体。
【請求項8】
前記接着剤(41)は、熱伝導性を有するフィラー(F)を含有したものであり、
前記排出通路(50、60)の通路面積が、前記フィラー(F)の平均粒径よりも小さいものであることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1つに記載の部品接続構造体。
【請求項9】
請求項3に記載の部品接続構造体を形成するための部品の接続方法であって、
前記他方の部品(20)を前記一方の部品(10)の前記一面(11)に未硬化の前記接着剤(41)を介して搭載し、前記一方の部品(10)の前記一面(11)を地方向に向け、前記一方の部品(10)の前記他面(12)を天方向に向けた状態で、前記接着剤(41)の硬化を行うことを特徴とする部品の接続方法。
【請求項10】
前記接着剤(41)として水分により硬化するものを用い、
前記接着剤(41)の硬化は、前記貫通孔(50)を介して前記接着剤(41)に水分を供給することにより行うことを特徴とする請求項9に記載の部品の接続方法。
【請求項11】
前記接着剤(41)として水分により硬化するものを用い、
前記一方の部品(10)の前記一面(11)に前記未硬化の前記接着剤(41)を設ける前に、前記一方の部品(10)の前記一面(11)に水分を供給しておくことを特徴とする請求項9に記載の部品の接続方法。
【請求項12】
前記接着剤(41)として主剤(41a)と硬化剤(41b)との反応により硬化する2液型接着剤を用い、
前記一方の部品(10)の前記一面(11)に前記未硬化の接着剤(41)を設けるときには、前記主剤(41a)および前記硬化剤(41b)の一方を設けた後、その上に他方を設けるようにすることを特徴とする請求項9に記載の部品の接続方法。
【請求項1】
硬化により接着を行う接着剤(41、42)を介して両部品(10、20、30)対向させ、これら両部品(10〜30)同士を前記接着剤(41、42)により接着してなる部品接続構造体において、
前記両部品(10〜30)のうち少なくとも一方の部品には、前記接着剤(41、42)中の気体を外気に排出するための排出通路(50、60)が、当該少なくとも一方の部品の表面のうち前記接着剤(41、42)が配置されている領域である接着領域から前記接着剤(41、42)が配置されていない領域である非接着領域まで、延長して設けられていることを特徴とする部品接続構造体。
【請求項2】
前記排出通路は、前記接着領域から前記少なくとも一方の部品の内部を通って前記非接着領域まで貫通する貫通孔(50)であることを特徴とする請求項1に記載の部品接続構造体。
【請求項3】
前記両部品(10、20)の他方の部品(20)は、一方の部品(10)の一面(11)に前記接着剤(41)を介して接着されており、
前記一方の部品(10)の前記一面(11)のうち前記接着剤(41)が配置されている領域が前記接着領域であり、前記一方の部品(10)における前記一面(11)とは反対側の他面(12)が前記非接着領域であり、
前記排出通路としての前記貫通孔(50)は、前記一方の部品(10)の前記一面(11)から前記他面(12)に貫通する孔として構成されていることを特徴とする請求項2に記載の部品接続構造体。
【請求項4】
前記貫通孔(50)における前記非接着領域側の開口部(50a)は、当該非接着領域の表面に設けられ前記貫通孔(50)よりも大きな開口サイズを有する凹部(51)の底部に開口しているものであることを特徴とする請求項2または3に記載の部品接続構造体。
【請求項5】
前記貫通孔(50)における前記接着領域側の開口部(50b)は、当該貫通孔(50)の内部から外側に向かって広がるテーパ形状となっていることを特徴とする請求項2ないし4のいずれか1つに記載の部品接続構造体。
【請求項6】
前記接着剤(41)は、前記貫通孔(50)内から前記貫通孔(50)における前記非接着領域側の開口部(50a)まで充填されていることを特徴とする請求項2ないし5のいずれか1つに記載の部品接続構造体。
【請求項7】
前記排出通路は、前記接着領域から前記非接着領域まで前記少なくとも一方の部品の表面に形成された溝(60)であることを特徴とする請求項1に記載の部品接続構造体。
【請求項8】
前記接着剤(41)は、熱伝導性を有するフィラー(F)を含有したものであり、
前記排出通路(50、60)の通路面積が、前記フィラー(F)の平均粒径よりも小さいものであることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1つに記載の部品接続構造体。
【請求項9】
請求項3に記載の部品接続構造体を形成するための部品の接続方法であって、
前記他方の部品(20)を前記一方の部品(10)の前記一面(11)に未硬化の前記接着剤(41)を介して搭載し、前記一方の部品(10)の前記一面(11)を地方向に向け、前記一方の部品(10)の前記他面(12)を天方向に向けた状態で、前記接着剤(41)の硬化を行うことを特徴とする部品の接続方法。
【請求項10】
前記接着剤(41)として水分により硬化するものを用い、
前記接着剤(41)の硬化は、前記貫通孔(50)を介して前記接着剤(41)に水分を供給することにより行うことを特徴とする請求項9に記載の部品の接続方法。
【請求項11】
前記接着剤(41)として水分により硬化するものを用い、
前記一方の部品(10)の前記一面(11)に前記未硬化の前記接着剤(41)を設ける前に、前記一方の部品(10)の前記一面(11)に水分を供給しておくことを特徴とする請求項9に記載の部品の接続方法。
【請求項12】
前記接着剤(41)として主剤(41a)と硬化剤(41b)との反応により硬化する2液型接着剤を用い、
前記一方の部品(10)の前記一面(11)に前記未硬化の接着剤(41)を設けるときには、前記主剤(41a)および前記硬化剤(41b)の一方を設けた後、その上に他方を設けるようにすることを特徴とする請求項9に記載の部品の接続方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−16659(P2009−16659A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−178495(P2007−178495)
【出願日】平成19年7月6日(2007.7.6)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月6日(2007.7.6)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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