説明

部品発注管理のためのコンピュータ/システム

【課題】生産すべき製品に変更が生じたとき、変更の前後で共通して使用する部品は流用することを前提とし、新たな生産に必要な部品とその数量を速やかに特定して発注処理を行うことを支援するコンピュータ・システムを提供する。
【解決手段】生産計画に沿って部品の発注を管理するコンピュータ・システムであって、製品の機種に応じて機種の生産に必要な複数の部品およびそれぞれの部品の所要量を展開し、部品発注済の第1の機種から第2の機種への生産変更が入力されると、第1の機種と第2の機種について展開した部品およびその所要量とを比較し、第2の機種の生産に必要な所要量と第1の機種の生産に必要な所要量との差分を算出する機能と、第2の機種の生産に必要な部品およびその所要量を差分に連携させてディスプレイ画面に表示する機能と、を実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、生産計画に沿って生産に必要な部品を発注するためのコンピュータ・システムに関し、特に部品発注が終了した機種を他の機種に生産変更する場合に、両機種に共通する部品を流用しつつ、速やかに必要部品の調達に対応するためのコンピュータ・システムに関する。
【背景技術】
【0002】
生産計画に沿って必要な部品を発注するシステムにおいては、部品を使用する生産工場における在庫量を適正範囲に抑制するため、まとめて注文した部品を複数の時期に分けて分散納品する形態で発注が行われている。このように納品をずらす時間を納品リードタイムと呼ぶ。
【0003】
特許文献1には、生産の進捗を加味して部品発注を行うことが記載されている。また、特許文献2には、部品発注と納入指示を別のタイミングで行うことが記載されている。
【0004】
このように部品を使用するメーカーでの在庫量が適正になるように発注および納品を管理していても、部品の発注を終えた機種について、仕様変更、設計変更などが発生して、実質的に他機種に変更されるなどの場合、直ちにこの機種の部品を発注する必要が生じる。
【0005】
このとき、変更前の機種について発注済の部品の管理または処分に手間がかかることになる。発注済の部品のうち、新たな生産に使用可能な共通部品は、新たな生産にそのまま流用するのが効率的であるが、数千から数万の部品から構成される自動車などにおいては、新たな生産に必要な部品を発注するに際して、流用可能な共通部品の特定、数量の過不足の把握、発注タイミングおよび納品タイミングの設定など、煩雑で大きな時間を要する作業が発生する。
【特許文献1】特許第3680264号
【特許文献2】特開2002-333915
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、この発明は、生産すべき製品に変更が生じたとき、変更の前後で共通して使用することができる部品は流用することを前提として、新たな生産に必要な部品とその数量を速やかに特定して発注処理を行うことを支援するコンピュータ・システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、生産計画に沿って部品の発注を管理するコンピュータ・システムに関し、このシステムは、製品の機種に応じて該機種の生産に必要な複数の部品およびそれぞれの部品の所要量を展開する機能と、部品発注済の第1の機種から第2の機種への生産変更が入力されることに応じて、前記第1の機種について前記展開手段が展開した部品およびその所要量と、前記第2の機種について前記展開手段が展開した部品およびその所要量とを比較し、前記第1の機種と前記第2の機種のそれぞれの部品について、前記第2の機種の生産に必要な所要量と前記第1の機種の生産に必要な所要量との差分を算出する機能と、前記第2の機種の生産に必要な部品およびその所要量を前記差分に連携させてディスプレイ画面に表示する機能と、を実現するようプログラムされている部品発注管理コンピュータ・システム。
【0008】
この発明によると、生産すべき製品の機種が変更されたとき、変更前後の製品の共通部品および差異部品とその必要数量についての整理を迅速に実行することができ、新しい製品についての部品発注を迅速に実行することができる。
【0009】
この発明の一形態では、ディスプレイ画面は、各部品の部品番号に関連して搬入予定日、搬入場所および数量を変更可能に表示するフィールドを含む。
【0010】
共通部品についてこのようなフィールドが表示されるので、ユーザは画面上から必要な修正を入力し、生産計画と部品の納入タイミング、搬入場所などを連携させることができる。
【0011】
この発明のもう一つの形態では、ディスプレイ画面は、前記第2の機種の生産に必要な部品と前記第1の機種の生産に必要な部品とを部品番号を索引として一覧表示し、部品ごとに第2の機種の生産に必要な量を示すフィールド、第1の機種の生産に必要な量を示すフィールド、第2の機種の生産に必要な量と第1の機種の生産に必要な量との差分を示すフィールド、前記連携の処理の状況を示すフィールドとを含む。
【0012】
このようなフィールドが画面に表示されるので、ユーザは追加注文の必要な差分を画面上で把握し、搬入場所、納品タイミングなどの連携処理の状況を把握することができるので、迅速に無駄なく部品発注の管理を行うことができる。
【0013】
この発明の一形態では、ディスプレイ画面は、前記差分がプラスである部品だけを表示するモードと、全部品を表示するモードとを切り替えるモード選択ボタンを備える。これにより、追加発注の対象となる部品だけを表示することができるので、迅速に発注処理を行うことができる。
【0014】
また、この発明の一形態では、第1の機種の部品のうち前記第2の機種に不要な部品については前記差分をマイナスで表示する。このようにすることにより、不要になった部品についての対応を迅速に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に図面を参照して、この発明の実施形態を説明する。図1は、この発明の部品発注管理のためのコンピュータ・システムの一実施例の機能ブロック図である。このコンピュータ・システムは、ホスト・コンピュータと、このホスト・コンピュータに社内ネットワークで接続する複数のクライエント・コンピュータから構成され、ユーザは、クライエント・コンピュータからホスト・コンピュータに接続して、データを閲覧し、データを入力し、部品の発注処理を実行することができる。
【0016】
ホスト・コンピュータは、プロセッサ(CPU)、プロセッサに作業領域を与えるランダムアクセスメモリ(RAM)、大容量のデータを保存する磁気ディスク装置などの外部記憶装置を備える。クライエント・コンピュータは、汎用のパーソナルコンピュータでもよく、端末専用の機能を限定したコンピュータであってもよい。クライエント・コンピュータは、プロセッサ(CPU)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、コンピュータ・プログラムおよびデータを保存する不揮発性の記憶装置、キーボード、マウスなどの入力装置、データを表示するディスプレイ装置などを備える。
【0017】
図1を参照すると、部品発注管理システムの実行形態は大きく分けて2つある。一つは、製品の生産計画を管理するコンピュータ・システムから送られてくる計画発注データ11に応答する形態であり、もう一つは、スポット注文、調整注文などの突発的な注文データ13に応答する形態である。この発明は、後者の形態における部品発注管理に関する。
【0018】
調整注文とは、すでになされている注文に対してなんらかの調整を行う注文をいう。たとえば所定数の機種Bを生産するに必要な部品の発注処理が完了している状態において、機種Bを機種Aに変更する形態がある。また、部品の発注処理が完了した機種Bが設計変更されて機種Aとなる形態がある。
【0019】
図2の流れ図を合わせて参照しながら、この発明の実施形態を説明する。生産計画の管理システム(図示しない)に生産予定されていた機種Bを機種Aに変更することが登録され、そのデータが部品発注管理システムに入れられることに応じて(101)、部品発注管理システムの所要量展開機能19は、新たな機種Bをデータベースを参照して部品に展開し、その所要量を算出する(103)。
【0020】
計算パターン選択機能21は、発注の形態に応じて、長期発注用の計算パターン、週間発注用の計算パターン、搬入指示用の計算パターン、調整注文の差分計算パターンなど、複数の計算パターンをもっている。この実施例では、調整注文の差分計算パターンが選択される。発注計算機能23は、選択された計算パターンにしたがって、発注のための計算を実行する。この実施例では、図2のステップ105において、既に発注済みの機種Bの部品および発注済みの量と新たな機種Aの部品およびその所要量との差分を算出する。図2の上部に示すように、この演算は、ホスト・コンピュータがバックグラウンドで実行し、データベースに登録する(106)。
【0021】
ホスト・コンピュータは、リレーショナル・データベース15を備えている。このデータベースは、スケジュール管理のためのカレンダー15a、機種の一覧テーブル15b、部品を納入する取引先に関するデータを記録する取引先テーブル15c、機種と関連づけられた部品に関するデータを記録する部品テーブル15d、およびこの部品テーブルに関連づけられた従属情報のテーブル15eを備えている。
【0022】
部品テーブル15dは、たとえば次のフィールドを備えており、部品番号ごとに一つのレコードを構成する。
【0023】
1)部品番号
2)部品名称
3)関係する機種1のコード
4)機種1での使用数
5)関係する機種2のコード
6)機種2での使用数
7)取引先コード
8)従属情報テーブルへのリンク先
【0024】
関係する機種が複数あるときは、それぞれの機種に対応してコードのフィールドおよび使用数のフィールドが設けられる。また、一つの部品について取引先が複数あるときは、これに対応する数の取引先コード・フィールドが設けられる。
【0025】
部品テーブル15dの取引先コードのフィールドは、取引先テーブル15cに含まれる取引先コード・フィールドとリレーションが設定されている。部品テーブル15dを機種コードで検索することにより、その機種に必要とされる部品およびその所要量をすべて抽出することができる。
【0026】
ユーザは、部品発注管理システムのクライエント・コンピュータから発注連携画面を起動させる(107)。図3は、この画面の一例を示す。工場コード201、処理コード203、処理ナンバー205、および手配コード207(任意入力)のフィールドに該当するコードを入力すると(109)、データデータベース15が検索され(111)、図3に示されるように所要量の差分データを含むデータが画面に表示される(115)。処理コードおよび処理ナンバーは、今回の機種Bから機種Aに生産変更がなされたことに伴う部品発注処理に付けられたコードである。手配コードは対象となる取引先のコードである。
【0027】
図3の画面には、手配コード207に対して取引先のコードを指定した場合には、指定した一つの取引先218についての発注データが表示される。該当する機種の生産台数209が表示され、機種Aのコード211、および機種Bのコード213が表示されている。部品番号219ごとに2行に分けて数量が表示されている。1行目は、機種Aおよび機種Bについて1台当たりの使用数221、223であり、部品テーブル15dから読み出されたデータである。2行目は、1台当たりの使用数に生産数量209をかけた値、すなわち所要量が表示される。
【0028】
画面のフィールド225には、発注予定数が表示される。発注予定数は生産する機種Aについての部品の所要量(1)から変更前の機種Bについての部品の所要量(2)を差し引いた値である。画面では、4つの部品について示されており、1番目の部品については、機種Aでの所要量が5であり、機種Bでの所要量が0であるので、発注予定数は、5となる。2番目の部品については機種Aでの所要量が0であり、機種Bでの所要量が5であるので、発注予定数はマイナス5となる。3番目の部品については、機種Aでの所領量が10であり、機種Bでの所要量が5であるので、発注予定数は、5となる。4番目の部品については、機種Aでの所要量が0で機種Bでの所要量が5なので、発注予定数はマイナス5となる。
【0029】
図3の画面では、2つの機種の間で差分が生じる部品だけを表示しているが、画面上部の全数/差分ボタン257をクリックすることにより、機種Aおよび機種Bの全部品を表するモードに切り替えることができる。
【0030】
発注連携のフィールド227は、発注連携処理が完了していないものについて、今回発注連携対象として選択された場合にチェック印が表示され、発注連携処理が完了し単品発注ボタン261がクリックされると、チェック印は表示されなくなる。発注連携済み区分のフィールド229には、発注連携が完了した部品について「済み」の語が表示される。一度発注連携を行った部品に関して、再度発注連携を行うことはできない。発注連携とは、部品テーブル15dに関係する従属情報テーブルから読み込まれた搬入日231、搬入場所233について、ユーザが妥当性を確認し、必要な修正を入力して発注内容を確定することをいう。画面に表示されている部品についてこれらの確認作業が終わり、単品発注ボタン261がクリックされると、画面に表示されている全部品について発注内容が確定する。
【0031】
画面上部に設けられた全明細選択ボタン253は、発注連携フィールド227のチェックボックスを一括してオンにして全部品について発注連携作業を行うためのものである。全選択解除ボタン255は、このような一括選択をオフにするためのものである。一括指定・搬入場所フィールド215は、画面に表示される全部品について搬入場所を一括指定するためのもので、このフィールドに搬入場所を入力すると、全部品について同じ搬入場所が設定される。
【0032】
一括指定・搬入日のフィールド217は、画面に表示される全部品の搬入日を同じ日時に一括して設定するためのもので、このフィールドに入力し、搬入日時一括変換ボタン259をクリックすると、それぞれの部品の搬入日、搬入時刻のフィールド231にこの日時が設定される。フィールド231には、初期状態では従属情報テーブル15eから読み出された日時が表示されている。
【0033】
このようにして、搬入条件に変更があるときは、搬入日、時刻の変更を入力し(図2、117)、搬入場所の変更があるときは、その変更を入力して(119)、発注連携が確定される(121)。
【0034】
発注連携が完了すると、図1にもどって、部品発注管理システムの管理資料発行機能29、伝票発行機能31を用いて、管理資料を発行し、伝票を発行する。
【0035】
以上にこの発明の実施例を説明したが、この発明はこのような実施例に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】部品発注管理システムの全体的な構成を示す機能ブロック図。
【図2】機種変更にともなう部品発注調整のプロセスを示す流れ図。
【図3】実施例のシステムでディスプレイ装置に表示される画面の一例を示す図。
【符号の説明】
【0037】
15 機種・部品・取引先データベース
19 所要量展開機能
21 計算パターン選択機能
23 発注計算機能

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生産計画に沿って部品の発注を管理するコンピュータ・システムであって、該コンピュータ・システムは、
製品の機種に応じて該機種の生産に必要な複数の部品およびそれぞれの部品の所要量を展開する機能と、
部品発注済の第1の機種から第2の機種への生産変更が入力されることに応じて、前記第1の機種について前記展開手段が展開した部品およびその所要量と、前記第2の機種について前記展開手段が展開した部品およびその所要量とを比較し、前記第1の機種と前記第2の機種とのそれぞれの部品について、前記第2の機種の生産に必要な所要量と前記第1の機種の生産に必要な所要量との差分を算出する機能と、
前記第2の機種の生産に必要な部品およびその所要量を前記差分に連携させてディスプレイ画面に表示する機能と、
を実現するようプログラムされている部品発注管理コンピュータ・システム。
【請求項2】
前記ディスプレイ画面は、各部品の部品番号に関連して搬入予定日、搬入場所および数量を変更可能に表示するフィールドを含む請求項1に記載のコンピュータ・システム。
【請求項3】
前記ディスプレイ画面は、前記第2の機種の生産に必要な部品と前記第1の機種の生産に必要な部品とを部品番号を索引として一覧表示し、部品ごとに第2の機種の生産に必要な量を示すフィールド、第1の機種の生産に必要な量を示すフィールド、第2の機種の生産に必要な量と第1の機種の生産に必要な量との差分を示すフィールド、前記連携の処理の状況を示すフィールドとを含む、請求項1または2に記載のコンピュータ・システム。
【請求項4】
前記ディスプレイ画面は、前記差分がプラスである部品だけを表示するモードと、全部品を表示するモードとを切り替えるモード選択ボタンを備える請求項3に記載のコンピュータ・システム。
【請求項5】
前記第1の機種の部品のうち前記第2の機種に不要な部品については前記差分をマイナスで表示するよう構成した、請求項3に記載のコンピュータ・システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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