説明

部材接合構造

【課題】異種材にも対応可能な部材接合構造を提供する。
【解決手段】互いに連なる孔5,6がそれぞれ穿設してあり且つ面接触するように重ねた板状の第1、第2の被接合部材1,2と、これら被接合部材1,2の孔5,6に連なるねじ孔7が形成してあり且つ第2の被接合部材2とは真反対に位置するように第1の被接合部材1に当接する締結部材3と、第1、第2の被接合部材1,2の孔5,6に差し込まれ且つ締結部材3に螺合したボルト4とを備え、摩擦熱と塑性流動によりボルト4に由来する材料を、締結部材3のねじ孔7のねじ溝に入り込ませ且つ第2の被接合部材2に同化させて、第1、第2の被接合部材1,2を接合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は部材接合構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
接合すべき部材を溶融させずに相互に接続する方法として摩擦撹拌接合がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この技法では、被接合部材を重ね合わせた被接合物を、裏当て部材である支持ツールに載せたうえ、被接合物に接合ツールを回転させながら押し付け、摩擦熱と塑性流動により軟化した材料を撹拌して同化させる。
【0004】
次いで、接合ツールを被接合物から離して材料が同化した部位を硬化させ、被接合部材を相互に接合する。
【0005】
接合ツールは、円柱状のショルダ部と、当該ショルダ部に同軸に連なり且つツール先端へ向けて突出する短円筒状でショルダ部よりも外径が小さいピン部とを備えている。
【特許文献1】特開2004−136365号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら特許文献1の手法では、例えば鋼とアルミニウム合金とのように、硬さや軟化温度などの物性が著しく違う異種材の接合には対応できない。
【0007】
本発明は上述した実情に鑑みてなしたもので、異種材にも対応可能な部材接合構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、互いに連なる補助部材挿入用の孔がそれぞれ穿設してあり且つ面接触するように重ねた第1、第2の被接合部材と、第2の被接合部材とは真反対に位置するように第1の被接合部材に当接し且つ補助部材係合部位が第1、第2の被接合部材の孔に連なる締結部材と、頭部が第2の被接合部材に当接し且つ軸部が第1、第2の被接合部材の孔に差し込まれて締結部材に係合された補助部材とを備え、摩擦熱と塑性流動により補助部材に由来する材料を、第2の被接合部材に同化させた構成を採る。
【0009】
請求項2に記載の発明では、互いに連なるボルト挿入用の孔がそれぞれ穿設してあり且つ面接触するように重ねた第1、第2の被接合部材と、第2の被接合部材とは真反対に位置するように第1の被接合部材に当接し且つボルト螺着部位が第1、第2の被接合部材の孔に連なる締結部材と、頭部が第2の被接合部材に当接し且つ軸部が第1、第2の被接合部材の孔に差し込まれて締結部材に螺合されたボルトとを備え、摩擦熱と塑性流動によりボルトに由来する材料を、第2の被接合部材に同化させた構成を採る。
【0010】
請求項3に記載の発明では、互いに連なる補助部材挿入用の孔がそれぞれ穿設してあり且つ面接触するように重ねた第1、第2の被接合部材と、第2の被接合部材とは真反対に位置するように第1の被接合部材に当接し且つ補助部材が入り得る孔が第1、第2の被接合部材の孔に連なる締結部材と、頭部が第2の被接合部材に当接し且つ軸部が第1、第2の被接合部材の孔に差し込まれて締結部材の孔に入った補助部材とを備え、摩擦熱と塑性流動により補助部材に由来する材料を、締結部材に同化させた構成を採る。
【0011】
請求項4に記載の発明では、互いに連なるボルト挿入用の孔がそれぞれ穿設してあり且つ面接触するように重ねた第1、第2の被接合部材と、第2の被接合部材とは真反対に位置するように第1の被接合部材に当接し且つねじ孔が第1、第2の被接合部材の孔に連なる締結部材と、頭部が第2の被接合部材に当接し且つ軸部が第1、第2の被接合部材の孔に差し込まれて締結部材に螺合されたボルトとを備え、摩擦熱と塑性流動によりボルトに由来する材料を、締結部材に同化させた構成を採る。
【0012】
請求項5に記載の発明では、互いに連なる補助部材挿入用の孔がそれぞれ穿設してあり且つ面接触するように重ねた第1、第2の被接合部材と、第2の被接合部材とは真反対に位置するように第1の被接合部材に当接し且つ補助部材が入り得る孔が第1、第2の被接合部材の孔に連なる締結部材と、頭部が第2の被接合部材に当接し且つ軸部が第1、第2の被接合部材の孔に差し込まれて締結部材の孔に入った補助部材とを備え、摩擦熱と塑性流動により補助部材に由来する材料を、締結部材の孔の周囲を覆うように形作った構成を採る。
【0013】
請求項6に記載の発明では、互いに連なるボルト挿入用の孔がそれぞれ穿設してあり且つ面接触するように重ねた第1、第2の被接合部材と、第2の被接合部材とは真反対に位置するように第1の被接合部材に当接し且つねじ孔が第1、第2の被接合部材の孔に連なる締結部材と、頭部が第2の被接合部材に当接し且つ軸部が第1、第2の被接合部材の孔に差し込まれて締結部材に螺合されたボルトとを備え、摩擦熱と塑性流動によりボルトに由来する材料を、締結部材のねじ孔の周囲を覆うように形作った構成を採る。
【0014】
請求項7に記載の発明では、互いに連なる補助部材挿入用の孔がそれぞれ穿設してあり且つ面接触するように重ねた第1、第2の被接合部材と、第2の被接合部材とは真反対に位置するように第1の被接合部材に当接し且つ補助部材が係合し得る孔が第1、第2の被接合部材の孔に連なる第1の締結部材と、第1の被接合部材とは真反対に位置するように第2の被接合部材に当接し且つ補助部材が入り得る孔が第1、第2の被接合部材の孔に連なる第2の締結部材と、第2の締結部材の孔に入り且つ第1、第2の被接合部材の孔に差し込まれて第1の締結部材の孔に係合された補助部材とを備え、摩擦熱と塑性流動により補助部材に由来する材料を、第1、第2の締結部材の孔の内周面に密着するように形作った構成を採る。
【0015】
請求項8に記載の発明では、互いに連なるボルト挿入用の孔がそれぞれ穿設してあり且つ面接触するように重ねた第1、第2の被接合部材と、第2の被接合部材とは真反対に位置するように第1の被接合部材に当接し且つねじ孔が第1、第2の被接合部材の孔に連なる第1の締結部材と、第1の被接合部材とは真反対に位置するように第2の被接合部材に当接し且つねじ孔が第1、第2の被接合部材の孔に連なる第2の締結部材と、第1、第2の締結部材に螺合され且つ第1、第2の被接合部材の孔に差し込まれたボルトとを備え、摩擦熱と塑性流動によりボルトに由来する材料を、第1、第2の締結部材のねじ孔の内周面に密着するように形作った構成を採る。
【発明の効果】
【0016】
本発明の部材接合構造によれば、下記のような優れた効果を奏し得る。
【0017】
(1)請求項1に記載の発明では、摩擦熱と塑性流動によって補助部材を、第2の被接合部材に同化させるので、第1、第2の被接合部材が異種材であっても、両部材を効率よく且つ確実に接続することができる。
【0018】
(2)請求項2に記載の発明では、摩擦熱と塑性流動によってボルトを、第2の被接合部材に同化させるので、第1、第2の被接合部材が異種材であっても、両部材を効率よく且つ確実に接続することができる。
【0019】
(3)請求項3に記載の発明では、摩擦熱と塑性流動によって補助部材を、締結部材に同化させるので、第1、第2の被接合部材が異種材であっても、両部材を効率よく且つ確実に接続することができる。
【0020】
(4)請求項4に記載の発明では、摩擦熱と塑性流動によってボルトを、締結部材に同化させるので、第1、第2の被接合部材が異種材であっても、両部材を効率よく且つ確実に接続することができる。
【0021】
(5)請求項5に記載の発明では、摩擦熱と塑性流動によって補助部材を、締結部材に係合させるので、第1、第2の被接合部材が異種材であっても、両部材を効率よく且つ確実に接続することができる。
【0022】
(6)請求項6に記載の発明では、摩擦熱と塑性流動によってボルトを、締結部材に係合させるので、第1、第2の被接合部材が異種材であっても、両部材を効率よく且つ確実に接続することができる。
【0023】
(7)請求項7に記載の発明では、摩擦熱と塑性流動によって補助部材を、第2の締結部材に密着させるので、第1、第2の被接合部材が異種材であっても、両部材を効率よく且つ確実に接続することができる。
【0024】
(8)請求項8に記載の発明では、摩擦熱と塑性流動によってボルトを、第2の締結部材に密着させるので、第1、第2の被接合部材が異種材であっても、両部材を効率よく且つ確実に接続することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0026】
図1は本発明の部材接合構造の第1の例であり、請求項1、2に対応している。
【0027】
この部材接合構造は、面接触するように重ねた板状の第1、第2の被接合部材1,2と、第2の被接合部材2とは真反対に位置するように第1の被接合部材1に当接する締結部材3と、ボルト4とを備えている。
【0028】
ボルト4と第2の被接合部材2は、アルミニウム合金を素材としている。
【0029】
第1、第2の被接合部材1,2には部材厚み方向に貫通する孔5,6が、同軸に穿設してある。
【0030】
締結部材3には部材厚み方向に貫通するねじ孔7が、前記第1、第2の被接合部材1,2の孔5,6と同軸に位置するように穿設してある。
【0031】
上記ねじ孔7は、部材厚み方向へ貫通しないねじ穴であってもよく、締結部材3としては、ナットや袋ナットを利用することができる。
【0032】
図1(a)に示すように、ボルト4は、その頭部が第2の被接合部材2に当接し、軸部が第1、第2の被接合部材1,2の孔5,6に差し込まれ、締結部材3のねじ孔7に螺合されている。
【0033】
つまり、ボルト4と締結部材3によって、第1、第2の被接合部材1,2を相互に係止することができる。
【0034】
締結部材3は、第1の被接合部材1に溶接などの手法により予め固着しておいてもよい。
【0035】
図1(d)に示すように、ボルト4に由来する材料は摩擦熱と塑性流動によって、締結部材3のねじ孔7内周面、及び第1の被接合部材1の孔5内周面のそれぞれに密着し且つ第2の被接合部材2に同化するように形作られ、ボルト4が第1、第2の被接合部材1,2を接合している。
【0036】
ボルト4を上述したような形状とする際には、裏当て部材8と接合ツール9を用いる。
【0037】
裏当て部材8と接合ツール9は、アルミニウム合金よりも硬く且つ軟化温度が高い鋼を素材としている。
【0038】
接合ツール9は、短円柱状のピン部10を円柱状のショルダ部11の先端面に同軸に連ねた形をしており、また、裏当て部材8は、ボルト4が螺合された締結部材3を受ける役割をする。
【0039】
締結部材3が裏当て部材8に保持されている状態で、ボルト4の頭部に接合ツール9を回転させながら押し付けると、図1(b)に示すように、ボルト4が摩擦熱と塑性流動により軟化する。
【0040】
この後、図1(c)に示すように、ボルト4に由来する材料が、ねじ孔7のねじ溝に入り込み且つ第1の被接合部材1の孔5に密着し、第2の被接合部材2に同化する。
【0041】
更に、図1(d)に示すように、接合ツール9をボルト4から引き離して、第2の被接合部材2に同化したボルト4の塑性流動部位、及び孔5やねじ孔7に密着したボルト4の塑性流動部位を硬化させると、第1、第2の被接合部材1,2の接合が完了する。
【0042】
つまり、第1の被接合部材1の素材が、鋼などのアルミニウム合金とは物性が著しく違う異種材であっても、第1、第2の被接合部材1,2を効率よく且つ確実に接合することができる。
【0043】
また、第1の被接合部材1の素材がボルト4と同じアルミニウム合金であれば、ボルト4に由来する材料が第1の被接合部材1に同化する。
【0044】
この他に、第2の被接合部材2に対して第1の被接合部材1が薄手である場合、第1の被接合部材1に締結部材3を溶接などの手法で予め固着しておけば、締結部材3によってボルト4に加わる剪断力が分散され、第1、第2の被接合部材1,2に互いにずれる方向への力が働いてもボルト4が破断せず、第1の被接合部材1の剥離も防止できる。
【0045】
図2は本発明の部材接合構造の第2の例であり、請求項1、2に対応し、図中、図1と同一の符号を付した部分は同一物を表している。
【0046】
この部材接合構造は、面接触するように重ねた板状の第1、第2の被接合部材1,2と、第2の被接合部材2とは真反対に位置するように第1の被接合部材1に当接する締結部材12と、ボルト4とを備えている。
【0047】
締結部材12には、前記第1、第2の被接合部材1,2の孔5,6に連なるねじ穴13と、当該ねじ穴13の開口とは反対向きに突き出るねじ軸14とが設けてある。
【0048】
図2(a)に示すように、ボルト4は、その頭部が第2の被接合部材2に当接し、軸部が第1、第2の被接合部材1,2の孔5,6に差し込まれ、締結部材12のねじ穴13に螺合されている。
【0049】
つまり、ボルト4と締結部材12によって、第1、第2の被接合部材1,2を相互に係止することができる。
【0050】
締結部材12は、第1の被接合部材1に溶接などの手法により予め固着しておいてもよい。
【0051】
図2(b)に示すように、ボルト4に由来する材料は摩擦熱と塑性流動によって、締結部材12のねじ穴13内周面、及び第1の被接合部材1の孔5内周面のそれぞれに密着し且つ第2の被接合部材2に同化するように形作られ、ボルト4が第1、第2の被接合部材1,2を接合している。
【0052】
ボルト4を上述したような形状とする際には、裏当て部材15と接合ツール9を用いる。
【0053】
裏当て部材15と接合ツール9は、アルミニウム合金よりも硬く且つ軟化温度が高い鋼を素材としている。
【0054】
裏当て部材15は、ボルト4が螺合された締結部材12を受ける役割をする。
【0055】
締結部材12が裏当て部材15に保持されている状態で、ボルト4の頭部に接合ツール9を回転させながら押し付けると、ボルト4が摩擦熱と塑性流動により軟化する。
【0056】
この後、ボルト4に由来する材料が、ねじ穴13のねじ溝に入り込み且つ第1の被接合部材1の孔5に密着し、第2の被接合部材2に同化する。
【0057】
更に、図2(b)に示すように、接合ツール9をボルト4から引き離して、第2の被接合部材2に同化したボルト4の塑性流動部位、及び孔5やねじ穴13に密着したボルト4の塑性流動部位を硬化させると、第1、第2の被接合部材1,2の接合が完了する。
【0058】
つまり、第1の被接合部材1の素材が、鋼などのアルミニウム合金とは物性が著しく違う異種材であっても、第1、第2の被接合部材1,2を効率よく且つ確実に接合することができる。
【0059】
また、第1の被接合部材1の素材がボルト4と同じアルミニウム合金であれば、ボルト4に由来する材料が第1の被接合部材1に同化する。
【0060】
図3は本発明の部材接合構造の第3の例であり、請求項3、4に対応している。
【0061】
この部材接合構造は、面接触するように重ねた板状の第1、第2の被接合部材16,17と、第2の被接合部材17とは真反対に位置するように第1の被接合部材16に当接する締結部材18と、ボルト19とを備えている。
【0062】
第1の被接合部材16、締結部材18、並びにボルト19はアルミニウム合金を素材としている。
【0063】
第1、第2の被接合部材16,17には部材厚み方向に貫通する孔20,21が、同軸に穿設してある。
【0064】
締結部材18には部材厚み方向に貫通するねじ孔22が、前記第1、第2の被接合部材16,17の孔20,21と同軸に位置するように穿設してある。
【0065】
図3(a)に示すように、ボルト19は、その頭部が第2の被接合部材17に当接し、軸部が第1、第2の被接合部材16,17の孔20,21に差し込まれ、締結部材18のねじ孔22に螺合されている。
【0066】
つまり、ボルト19と締結部材18によって、第1、第2の被接合部材16,17を相互に係止することができる。
【0067】
締結部材18は、第1の被接合部材16に溶接などの手法により予め固着しておいてもよい。
【0068】
図3(d)に示すように、ボルト19に由来する材料は摩擦熱と塑性流動によって、第2の被接合部材17の孔21内周面に密着し且つ第1の被接合部材16と締結部材18に同化するように形作られ、ボルト19が第1、第2の被接合部材16,17を接合している。
【0069】
ボルト19を上述したような形状とする際には、裏当て部材23と接合ツール9を用いる。
【0070】
裏当て部材23と接合ツール9は、アルミニウム合金よりも硬く且つ軟化温度が高い鋼を素材としている。
【0071】
接合ツール9は、短円柱状のピン部10を円柱状のショルダ部11の先端面に同軸に連ねた形をしており、また、裏当て部材23は、ボルト19の頭部を受ける役割をする。
【0072】
ボルト19の頭部が裏当て部材23に保持されている状態で、ボルト19の軸部に接合ツール9を回転させながら押し付けると、図3(b)に示すように、ボルト19が摩擦熱と塑性流動により軟化する。
【0073】
この後、図3(c)に示すように、ボルト19に由来する材料が、第2の被接合部材17の孔21に密着し、第1の被接合部材16と締結部材18に同化する。
【0074】
更に、図3(d)に示すように、接合ツール9をボルト19から引き離して、締結部材18と第1の被接合部材16に同化したボルト19の塑性流動部位、及び孔21に密着したボルト19の塑性流動部位を硬化させると、第1、第2の被接合部材16,17の接合が完了する。
【0075】
つまり、第2の被接合部材17の素材が、鋼などのアルミニウム合金とは物性が著しく違う異種材であっても、第1、第2の被接合部材16,17を効率よく且つ確実に接合することができる。
【0076】
また、第2の被接合部材17の素材がボルト19と同じアルミニウム合金であれば、ボルト19に由来する材料が第2の被接合部材17に同化する。
【0077】
ねじ孔22が穿設してある締結部材18とボルト19との組み合わせは、これらの部材によって第1、第2の被接合部材16,17を相互に係止できるという利点がある。
【0078】
これに対し、最終的にはボルト19は締結部材18に固定されることになるので、締結部材18とボルト19に代えて、第2の被接合部材17に当接可能な頭部を有する軸体、及び単なる孔が穿設してある締結部材の組み合わせも選択肢となり得る。
【0079】
図4は本発明の部材接合構造の第4の例であり、請求項5、6に対応している。
【0080】
この部材接合構造は、面接触するように重ねた板状の第1、第2の被接合部材24,25と、第2の被接合部材25とは真反対に位置するように第1の被接合部材24に当接する締結部材26と、ボルト27とを備えている。
【0081】
ボルト27はアルミニウム合金を素材としている。
【0082】
第1、第2の被接合部材24,25には部材厚み方向に貫通する孔28,29が、同軸に穿設してある。
【0083】
締結部材26には部材厚み方向に貫通するねじ孔30が、前記第1、第2の被接合部材24,25の孔28,29と同軸に位置するように穿設してある。
【0084】
図4(a)に示すように、ボルト27は、その頭部が第2の被接合部材25に当接し、軸部が第1、第2の被接合部材24,25の孔28,29に差し込まれ、締結部材26のねじ孔30に螺合されている。
【0085】
つまり、ボルト27と締結部材26によって、第1、第2の被接合部材24,25を相互に係止することができる。
【0086】
締結部材26は、第1の被接合部材24に溶接などの手法により予め固着しておいてもよい。
【0087】
図4(c)に示すように、ボルト27に由来する材料は摩擦熱と塑性流動によって、締結部材26のねじ孔30の周囲を覆うように形作られ、ボルト27が第1、第2の被接合部材24,25を接合している。
【0088】
ボルト27を上述したような形状とする際には、裏当て部材31と接合ツール32を用いる。
【0089】
裏当て部材31と接合ツール32は、アルミニウム合金よりも硬く且つ軟化温度が高い鋼を素材としている。
【0090】
接合ツール32は、円柱状の形をしており、裏当て部材31は、ボルト27の頭部を受ける役割をする。
【0091】
ボルト27の頭部が裏当て部材31に保持されている状態で、ボルト27の軸部に接合ツール32を回転させながら押し付けると、ボルト27が摩擦熱と塑性流動により軟化する。
【0092】
この後、図4(b)に示すように、ボルト27に由来する材料が、締結部材26のねじ孔30の周囲を覆う。
【0093】
更に、図4(c)に示すように、接合ツール32をボルト27から引き離して、ねじ孔30の周囲を覆っているボルト27の塑性流動部位を硬化させると、第1、第2の被接合部材24,25の接合が完了する。
【0094】
つまり、第1の被接合部材24の素材と第2の被接合部材25の素材が、著しく違う異種材であっても、第1、第2の被接合部材24,25を効率よく且つ確実に接合することができる。
【0095】
ねじ孔30が穿設してある締結部材26とボルト27との組み合わせは、これらの部材によって第1、第2の被接合部材24,25を相互に係止できるという利点がある。
【0096】
これに対し、最終的にはボルト27は締結部材26に固定されることになるので、締結部材26とボルト27に代えて、第2の被接合部材25に当接可能な頭部を有する軸体、及び単なる孔が穿設してある締結部材の組み合わせも選択肢となり得る。
【0097】
図5は本発明の部材接合構造の第5の例であり、請求項7、8に対応している。
【0098】
この部材接合構造は、面接触するように重ねた板状の第1、第2の被接合部材33,34と、第2の被接合部材34とは真反対に位置するように第1の被接合部材33に当接する第1の締結部材35と、第1の被接合部材33とは真反対に位置するように第2の被接合部材34に当接する第2の締結部材36と、ボルト37とを備えている。
【0099】
ボルト37はアルミニウム合金を素材としている。
【0100】
第1、第2の被接合部材33,34には部材厚み方向に貫通する孔38,39が、同軸に穿設してある。
【0101】
第1、第2の締結部材35,36には部材厚み方向に貫通するねじ孔40,41が、前記第1、第2の被接合部材33,34の孔38,39と同軸に位置するように穿設してある。
【0102】
図5(a)に示すように、ボルト37は、その頭部が第2の締結部材36に当接し、軸部が第1、第2の被接合部材33,34の孔38,39に差し込まれ、第1、第2の締結部材35,36のねじ孔40,41に螺合されている。
【0103】
つまり、ボルト37と第1、第2の締結部材35,36によって、第1、第2の被接合部材33,34を相互に係止することができる。
【0104】
第1、第2の締結部材35,36は、第1、第2の被接合部材33,34に溶接などの手法により予め固着しておいてもよい。
【0105】
図5(c)に示すように、ボルト37に由来する材料は摩擦熱と塑性流動によって、第1、第2の被接合部材33,34の孔38,39内周面、及び第1、第2の締結部材35,36のねじ孔40,41内周面にそれぞれ密着し且つ第2の締結部材36のねじ孔40の周囲を覆うように形作られ、ボルト37が第1、第2の被接合部材33,34を接合している。
【0106】
ボルト37を上述したような形状とする際には、裏当て部材8と接合ツール9を用いる。
【0107】
裏当て部材8と接合ツール9は、アルミニウム合金よりも硬く且つ軟化温度が高い鋼を素材としている。
【0108】
接合ツール9は、短円柱状のピン部10を円柱状のショルダ部11の先端面に同軸に連ねた形をしており、また、裏当て部材8は、ボルト37が螺合された第1の締結部材35を受ける役割をする。
【0109】
第1の締結部材35が裏当て部材8に保持されている状態で、ボルト37の頭部に接合ツール9を回転させながら押し付けると、ボルト37が摩擦熱と塑性流動により軟化する。
【0110】
この後、図5(b)に示すように、ボルト37に由来する材料が、ねじ孔40,41のねじ溝に入り込み且つ第1、第2の被接合部材33,34の孔38,39に密着し、第2の締結部材36のねじ孔41の周囲を覆う。
【0111】
更に、図5(c)に示すように、接合ツール9をボルト37から引き離して、ねじ孔41の周囲を覆っているボルト37の塑性流動部位、及び孔38,39やねじ孔40,41に密着したボルト37の塑性流動部位を硬化させると、第1、第2の被接合部材33,34の接合が完了する。
【0112】
つまり、第1の被接合部材33の素材と第2の被接合部材34の素材が、著しく違う異種材であっても、第1、第2の被接合部材33,34を効率よく且つ確実に接合することができる。
【0113】
ねじ孔41が穿設してある締結部材36とボルト37との組み合わせは、これらの部材によって第1、第2の被接合部材33,34を相互に係止できるという利点がある。
【0114】
これに対し、最終的にはボルト37は締結部材36に固定されることになるので、第1、第2の締結部材35,36とボルト37に代えて、第2の被接合部材25に当接可能な頭部を有する軸体、及び単なる孔が穿設してある第1、第2の締結部材の組み合わせも選択肢となり得る。
【0115】
なお、本発明の部材接合構造は、上述した実施の形態のみに限定されるものではなく、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲において変更を加え得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明の部材接合構造は、様々な部品の接合組付工程に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】本発明の部材接合構造の第1の例の施工手順を示す概念図である。
【図2】本発明の部材接合構造の第2の例の施工手順を示す概念図である。
【図3】本発明の部材接合構造の第3の例の施工手順を示す概念図である。
【図4】本発明の部材接合構造の第4の例の施工手順を示す概念図である。
【図5】本発明の部材接合構造の第5の例の施工手順を示す概念図である。
【符号の説明】
【0118】
1 第1の被接合部材
2 第2の被接合部材
3 締結部材
4 ボルト(補助部材)
5 孔
6 孔
7 ねじ孔(補助部材係合部位)
12 締結部材
13 ねじ穴(補助部材係合部位)
16 第1の被接合部材
17 第2の被接合部材
18 締結部材
19 ボルト(補助部材)
20 孔
21 孔
22 ねじ孔
24 第1の被接合部材
25 第2の被接合部材
26 締結部材
27 ボルト(補助部材)
28 孔
29 孔
30 ねじ孔
33 第1の被接合部材
34 第2の被接合部材
35 第1の締結部材
36 第2の締結部材
37 ボルト
38 孔
39 孔
40 ねじ孔
41 ねじ孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに連なる補助部材挿入用の孔がそれぞれ穿設してあり且つ面接触するように重ねた第1、第2の被接合部材と、第2の被接合部材とは真反対に位置するように第1の被接合部材に当接し且つ補助部材係合部位が第1、第2の被接合部材の孔に連なる締結部材と、頭部が第2の被接合部材に当接し且つ軸部が第1、第2の被接合部材の孔に差し込まれて締結部材に係合された補助部材とを備え、摩擦熱と塑性流動により補助部材に由来する材料を、第2の被接合部材に同化させたことを特徴とする部材接合構造。
【請求項2】
互いに連なるボルト挿入用の孔がそれぞれ穿設してあり且つ面接触するように重ねた第1、第2の被接合部材と、第2の被接合部材とは真反対に位置するように第1の被接合部材に当接し且つボルト螺着部位が第1、第2の被接合部材の孔に連なる締結部材と、頭部が第2の被接合部材に当接し且つ軸部が第1、第2の被接合部材の孔に差し込まれて締結部材に螺合されたボルトとを備え、摩擦熱と塑性流動によりボルトに由来する材料を、第2の被接合部材に同化させたことを特徴とする部材接合構造。
【請求項3】
互いに連なる補助部材挿入用の孔がそれぞれ穿設してあり且つ面接触するように重ねた第1、第2の被接合部材と、第2の被接合部材とは真反対に位置するように第1の被接合部材に当接し且つ補助部材が入り得る孔が第1、第2の被接合部材の孔に連なる締結部材と、頭部が第2の被接合部材に当接し且つ軸部が第1、第2の被接合部材の孔に差し込まれて締結部材の孔に入った補助部材とを備え、摩擦熱と塑性流動により補助部材に由来する材料を、締結部材に同化させたことを特徴とする部材接合構造。
【請求項4】
互いに連なるボルト挿入用の孔がそれぞれ穿設してあり且つ面接触するように重ねた第1、第2の被接合部材と、第2の被接合部材とは真反対に位置するように第1の被接合部材に当接し且つねじ孔が第1、第2の被接合部材の孔に連なる締結部材と、頭部が第2の被接合部材に当接し且つ軸部が第1、第2の被接合部材の孔に差し込まれて締結部材に螺合されたボルトとを備え、摩擦熱と塑性流動によりボルトに由来する材料を、締結部材に同化させたことを特徴とする部材接合構造。
【請求項5】
互いに連なる補助部材挿入用の孔がそれぞれ穿設してあり且つ面接触するように重ねた第1、第2の被接合部材と、第2の被接合部材とは真反対に位置するように第1の被接合部材に当接し且つ補助部材が入り得る孔が第1、第2の被接合部材の孔に連なる締結部材と、頭部が第2の被接合部材に当接し且つ軸部が第1、第2の被接合部材の孔に差し込まれて締結部材の孔に入った補助部材とを備え、摩擦熱と塑性流動により補助部材に由来する材料を、締結部材の孔の周囲を覆うように形作ったことを特徴とする部材接合構造。
【請求項6】
互いに連なるボルト挿入用の孔がそれぞれ穿設してあり且つ面接触するように重ねた第1、第2の被接合部材と、第2の被接合部材とは真反対に位置するように第1の被接合部材に当接し且つねじ孔が第1、第2の被接合部材の孔に連なる締結部材と、頭部が第2の被接合部材に当接し且つ軸部が第1、第2の被接合部材の孔に差し込まれて締結部材に螺合されたボルトとを備え、摩擦熱と塑性流動によりボルトに由来する材料を、締結部材のねじ孔の周囲を覆うように形作ったことを特徴とする部材接合構造。
【請求項7】
互いに連なる補助部材挿入用の孔がそれぞれ穿設してあり且つ面接触するように重ねた第1、第2の被接合部材と、第2の被接合部材とは真反対に位置するように第1の被接合部材に当接し且つ補助部材が係合し得る孔が第1、第2の被接合部材の孔に連なる第1の締結部材と、第1の被接合部材とは真反対に位置するように第2の被接合部材に当接し且つ補助部材が入り得る孔が第1、第2の被接合部材の孔に連なる第2の締結部材と、第2の締結部材の孔に入り且つ第1、第2の被接合部材の孔に差し込まれて第1の締結部材の孔に係合された補助部材とを備え、摩擦熱と塑性流動により補助部材に由来する材料を、第1、第2の締結部材の孔の内周面に密着するように形作ったことを特徴とする部材接合構造。
【請求項8】
互いに連なるボルト挿入用の孔がそれぞれ穿設してあり且つ面接触するように重ねた第1、第2の被接合部材と、第2の被接合部材とは真反対に位置するように第1の被接合部材に当接し且つねじ孔が第1、第2の被接合部材の孔に連なる第1の締結部材と、第1の被接合部材とは真反対に位置するように第2の被接合部材に当接し且つねじ孔が第1、第2の被接合部材の孔に連なる第2の締結部材と、第1、第2の締結部材に螺合され且つ第1、第2の被接合部材の孔に差し込まれたボルトとを備え、摩擦熱と塑性流動によりボルトに由来する材料を、第1、第2の締結部材のねじ孔の内周面に密着するように形作ったことを特徴とする部材接合構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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