説明

配向処理装置、配向処理方法及び液晶パネルの製造方法

【課題】湾曲液晶パネルにおいて、配向処理に伴う画質劣化を改善することができる配向処理装置を提供すること。
【解決手段】本発明の一態様に係る配向処理方法は、液晶パネル用基板1上に配向膜7を形成する工程と、液晶パネル用基板1を湾曲状態とした際に、配向膜7のラビング密度が略均一になるように、配向膜7にラビング処理を行う工程とを含む。ラビング処理では、伸曲面となる部分のほうが縮曲面となる部分よりもラビング密度が高くなるようにラビング条件を変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶パネルの製造に用いられる配向処理装置、配向処理方法及び液晶パネルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶パネル用基板には、表面に微細な一定方向の溝を持つことにより液晶を配向させる配向膜が形成されている。この様な微細な溝を持つ配向膜を形成するための表面処理としては、一般に表面に微細な毛が植毛された布材であるラビング布により配向膜表面をこするラビング処理が用いられる。
【0003】
湾曲液晶パネルにおいては、フラットパネル製造時と同様のラビング処理をした場合、ラビング密度の異常によるムラやドメイン不良が発生し、製品歩留りが低下する場合がある。
【0004】
また、湾曲液晶パネルでは、通常の平面液晶パネルに比べて画質の劣化が発生する。この様な画質劣化に対し、画質劣化の一つの原因であるギャップ変動を改善する方法が特許文献1に記載されている。
【特許文献1】特開2004−126197号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この特許文献1では、基板面内のギャップ変動を押さえることは可能であるが、基板表面に形成される配向膜に対して特別な処理を行っていない。このため、湾曲によって発生する配向膜の配向処理密度バラツキを原因とする画質劣化を改善することができない。
【0006】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、湾曲液晶パネルにおいて、配向処理に伴う画質劣化を改善することができる配向処理装置、配向処理方法及び液晶パネルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る配向処理方法は、基板上に配向膜を形成する工程と、前記基板を湾曲状態とした際に、前記配向膜のラビング密度が略均一になるように、前記配向膜にラビング処理を行う工程とを含む。
【0008】
本発明の他の態様に係る配向処理装置は、配向膜が形成された基板を湾曲状態にして載置することが可能な機構を有するステージと、ラビング布が表面に固定され、回転しながら前記基板の表面に接触されるラビングローラーと、前記基板を湾曲状態とした際に、前記配向膜のラビング密度が略均一になるように、前記配向膜にラビング条件を変更する制御機構とを備えるものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、湾曲液晶パネルの配向処理に伴う画質劣化を改善することができる配向処理装置、配向処理方法及び液晶パネルの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
実施の形態1.
本発明の実施の形態1に係る配向処理装置の構成について、図1〜3を参照して説明する。図1は、本実施の形態に係る配向処理装置の構成を示す図である。ここでは、製造される湾曲液晶パネルの曲面率がパネル全面で均一な場合について説明する。
【0011】
図1に示すように、本実施の形態に係る配向処理装置は、ラビングステージ2、ラビングローラー3を備える。ラビングステージ2は、液晶パネルを製造するための液晶パネル用基板1を載置した状態で移動可能に設けられている。なお、ラビングステージ2に載置された液晶パネル用基板1に対して、ラビングローラー3を相対的に移動させることも可能である。
【0012】
ラビングローラー3は、回転ローラー4、両面テープ5、ラビング布6を有する。回転ローラー4の表面には、両面テープ5により、ラビング布6が貼り付けられ固定されている。ラビング布6の表面には微細な毛が植毛されている。ラビングローラー3を回転させながら、液晶パネル用基板1(配向膜)の表面に接触させることによって、液晶分子を一定方向に並べる効果(配向効果)を得ることができる。
【0013】
図2は、ラビングローラー3の押し込み量を説明するための図である。図2に示すように、配向処理を行う場合には、ラビング布6の毛足を液晶パネル用基板1に対して押し込む。ラビング布6が液晶パネル用基板1により押し込まれる量を、押し込み量8とする。すなわち、押し込み量8は、ラビング布6の毛足の先端部から液晶パネル用基板1に接触する接触長さの最大値である。
【0014】
ここで、曲面率がパネル全面で均一な湾曲液晶パネルの製造時の配向処理方法について説明する。図3は、曲面率がパネル全面で均一な湾曲液晶パネルのセル状態の構成を示す図である。図3に示すように、液晶パネル20は、シール材14により貼り合わせられた一対の液晶パネル用基板1間に液晶15が挟持された構成を有する。液晶パネル20の反視認側には、バックライト16が配置されている。ここでは、液晶パネル20の中央部が視認側に凸となるように保持されている。液晶パネル20の曲面率は、パネル全面で均一であるものとする。
【0015】
液晶パネル20を構成する一対の基板の対向する面に、配向膜7が形成されている。一対の基板のうちバックライト16側に配置される基板は、配向膜7が形成される面が伸曲面9(凸面)になる。このような曲面率がパネル全面で均一な湾曲液晶パネルの作成時において、配向膜7が形成される面側が伸曲面9(凸面)になる基板をフラット液晶パネル作成時と同様のラビングを行うとラビング密度不足による微輝点不良やドメイン不良が発生する場合がある。
【0016】
本実施の形態においては、このラビング密度不足を補うために、ラビングローラー3の回転数を上げる、ラビングステージ2の移動速度を下げる、押し込み量8(ラビング布先端部の接触長さの最大値)を大きくするなどのパラメータ変更を行う。
【0017】
これにより、ラビング密度不足を解消し、微輝点不良、ドメイン不良等の発生を防止することができる。なお、このラビング密度不足は曲面率がより高い場合に顕著に起こる。この場合には、上記のパラメータ(ラビングローラー3回転数、ラビングステージ2移動速度、押し込み量8)のうちの複数を変更することができる。
【0018】
一方、一対の基板のうち視認側に配置される基板は、配向膜7が形成される面が縮曲面10(凹面)になる。この配向膜7が形成される面側が縮曲面10(凹面)になる基板をフラット液晶パネル作成時と同様のラビングを行うとラビング密度過剰によるムラ不良やドメイン不良が発生する場合がある。
【0019】
このラビング密度過剰を修正するために、ラビングローラー3の回転数を下げる、ラビングステージ2の移動速度を上げる、押し込み量8(ラビング布の毛足の先端部からの接触長さの最大値)を小さくなどのパラメータの変更を行う。
【0020】
これにより、ラビング密度過剰を修正し、ムラ不良、ドメイン不良等の発生を防止することができる。なお、この密度過剰は曲面率がより高い場合に顕著に起こるため、その場合には、上記のパラメータ(ラビングローラー3回転数、ラビングステージ2移動速度、押し込み量8)の複数を変更することができる。
【0021】
実施の形態2.
本発明の実施の形態2に係る配向処理方法について図4〜6を参照して説明する。ここでは、曲面率がパネル面内で不均一な湾曲液晶パネルの製造時の配向条件について説明する。図4は、曲面率がパネル面内で不均一な湾曲液晶パネルのセル状態の構成を示す図である。なお、本実施の形態において、配向処理を行う配向処理装置として図1に示したものと同様のものを用いることができる。
【0022】
図3に示す液晶パネルと同様に、図4に示すように、液晶パネル20は、シール材14により貼り合わせられた一対の液晶パネル用基板1間に液晶15が挟持された構成を有する。液晶パネル20の反視認側には、バックライト16が配置されている。ここでは、液晶パネル20の中央部が視認側に凸となるように保持されている。液晶パネル20の曲面率は、パネル面内で不均一であるものとする。
【0023】
図4に示す例では、液晶パネル20の中央部が曲面率の高い高曲面部11であり、周辺部が曲面率の低い低曲面部12である。液晶パネル20を構成する一対の基板の対向する面に、配向膜7が形成されている。一対の基板のうちバックライト16側に配置される基板は、配向膜7が形成される面が伸曲面9(凸面)になる。
【0024】
曲面率がパネル面内で不均一な湾曲液晶パネルの作成時においては、パネル内の曲面率の変化に応じてラビング条件を変動させる必要がある。図4において、配向膜7が形成される面側が伸曲面9(凸面)となる基板の高曲面部11においては、フラット液晶パネル作成時と同様のラビング処理を行うとラビング密度不足が発生する。
【0025】
本実施の形態においては、このラビング密度不足を補うために、ラビングローラー3の回転数を上げる、ラビングステージ2の移動速度を下げる、押し込み量8(ラビング布先端部の接触長さの最大値)を大きくするなどのパラメータ変更を行う。
【0026】
これにより、高曲面部11のラビング密度不足を解消することができる。また、このラビング密度不足がより顕著な場合には、上記パラメータ(ラビングローラー3の回転数、ラビングステージ2の移動速度、押し込み量8)の複数を変更することができる。
【0027】
図5に、本実施の形態に係る配向処理装置の構成の一例を示す。図5に示すように、ラビングステージ2には、ピンアップ機構13が設けられている。ピンアップ機構13は、液晶パネル用基板1をラビングステージ2上に載置した際に、液晶パネル用基板1の中央部近傍に配置される。ピンアップ機構13により液晶パネル用基板1の中央部を押し上げることにより、液晶パネル用基板1は上に凸の状態で保持される。
【0028】
このような状態でラビング処理を行うことにより、ラビングローラー3の各パラメータを変更することなく、液晶パネル用基板1の中央部近傍の押し込み量8を大きくすることができる。これにより、低曲面部12のラビング密度を変えずに、高曲面部11のラビング密度を増加させることができる。
【0029】
一方、一対の基板のうち視認側に配置される基板は、配向膜7が形成される面が縮曲面10(凹面)になる。配向膜7が形成された面側が縮曲面10(凹面)となる高曲面部11においては、フラット液晶パネル作成時と同様のラビング処理を行うとラビング密度過剰が発生する。
【0030】
このラビング密度過剰を修正するために、ラビングローラー3の回転数を下げる、ラビングステージ2の速度を上げる、押し込み量8(ラビング布先端部の接触長さの最大値)を小さくするなどのパラメータ変更を行う。
【0031】
これにより、ラビング密度過剰を修正することができる。なお、この密度過剰がより顕著な場合には、上記のパラメータ(ラビングローラー3回転数、ラビングステージ2移動速度、押し込み量8)の複数を変更することができる。
【0032】
図6に、本実施の形態に係る配向処理装置の構成の他の例を示す。図6に示すように、ラビングステージ2には、2つのピンアップ機構13が設けられている。ピンアップ機構13は、液晶パネル用基板1をラビングステージ2上に載置した際に、液晶パネル用基板1の周辺部の対向する2辺に配置される。ピンアップ機構13により液晶パネル用基板1の周辺部を押し上げることにより、液晶パネル用基板1は下に凸の状態で保持される。
【0033】
このような状態でラビング処理を行うことにより、ラビングローラー3の各パラメータを変更することなく、液晶パネル用基板1の中央部近傍の押し込み量8を小さくすることができる。これにより、低曲面部12のラビング密度を変えずに、高曲面部11のラビング密度を減少させることができる。
【0034】
以上説明したように、本発明によれば、湾曲液晶パネルにおける画質劣化を改善することができ、低コストで高い製造歩留を達成することができる配向処理装置、配向処理方法を得ることができる。なお、湾曲状態でラビング処理を行うとともに、ラビング条件を変更してもよい。また、低曲面部12においてはラビング密度の不足・過剰は発生しないため、フラット液晶パネル作成時と同様のラビングを行ってもよい。
【0035】
実施の形態3.
本発明の実施の形態3に係る上述した配向処理装置又は方法を用いて製造される湾曲液晶パネルの構成について、図7を参照して説明する。図7は、本実施の形態に係る湾曲液晶パネル200の構成を示す図である。なお、ここでは、液晶パネルの一例としてTFT(Thin Film Transistor)方式の液晶パネルについて説明する。ここでは、湾曲液晶パネルの曲面率がパネル全面で均一な場合について説明する。
【0036】
図7に示すように、湾曲液晶パネル200は、スイッチング素子基板210、カラーフィルタ基板220、液晶230を備える液晶セル240を有する。スイッチング素子基板210とカラーフィルタ基板220との間にはシール233が配置されており、両基板はシール233により貼り合わされている。スイッチング素子基板210とカラーフィルタ基板220との間は、図示しないスペーサによって維持されている。
【0037】
スイッチング素子基板210、カラーフィルタ基板220、シール233で形成される空間に液晶230が充填されている。液晶セル240の反視認側には、光源となるバックライト16が設けられている。本実施の形態では、カラーフィルタ基板220側が凸となる方向に所定の曲率に液晶セル240が湾曲されている。
【0038】
スイッチング素子基板210は、ガラス基板211、配向膜212、画素電極213、スイッチング素子214、絶縁膜215、端子216、トランスファ電極217等を備えている。ガラス基板211の一方の面上には、TFTからなるスイッチング素子214及びスイッチング素子214に信号を供給するための図示しない配線が形成されている。スイッチング素子214及び配線上には、これらを覆うように絶縁膜215が形成されている。
【0039】
スイッチング素子214には、画素電極213が接続されている。スイッチング素子214により、画素電極213に供給される電圧が制御される。画素電極213は、液晶230を駆動する電圧を印加する。複数の画素電極213が形成されている領域が表示領域となる。
【0040】
画素電極213の上層には、液晶230を配向させる配向膜212が形成されている。ガラス基板211の端部には、端子216及びトランスファ電極217が形成されている。端子216は、スイッチング素子214に供給される信号を外部から受けとる。また、トランスファ電極217は、端子216から入力された信号をカラーフィルタ基板220側に形成された共通電極に伝達する。また、ガラス基板211の他方の面には偏光板231が設けられている。
【0041】
カラーフィルタ基板220は、ガラス基板221、配向膜222、共通電極223、着色層224、遮光層225等を有している。ガラス基板221上には、着色層224及び遮光層225からなるカラーフィルタが形成されている。遮光層225は、着色層224間及び表示領域を囲む周辺領域に設けられている。着色層224及び遮光層225の上には、共通電極223が形成されている。
【0042】
共通電極223はスイッチング素子基板210上に形成された画素電極213との間に電界を生じ、液晶230を駆動する。共通電極223の上には、液晶230を配向させる配向膜222が形成されている。また、ガラス基板221の他方の面には、偏光板232が設けられている。偏光板232としては、偏光板231と同種の素材からなる偏光板が用いられる。
【0043】
また、スイッチング素子基板210とカラーフィルタ基板220とは、シール233を介して貼り合わされている。更に、トランスファ電極217と共通電極223は、トランスファ材234により電気的に接続されており、端子216から入力された信号が共通電極223に伝達される。また、湾曲液晶パネル200は、制御基板235、FFC(Flexible Flat Cable)236を備えている。制御基板235は、液晶セル240の駆動信号を生成する。FFC236は、制御基板235を端子216に電気的に接続する。
【0044】
湾曲液晶パネル200は、次のように動作する。例えば、制御基板235から駆動信号が入力されると、画素電極213及び共通電極223に駆動電圧が印加される。この印加された駆動電圧に合わせて、液晶230の分子の方向が変化する。そして、バックライト16の発する光がスイッチング素子基板210、液晶230及びカラーフィルタ基板220を介して外部へ透過或いは遮断されることにより、湾曲液晶パネル200に映像などが表示される。
【0045】
なお、この湾曲液晶パネル200は、一例であり他の構成でも良い。湾曲液晶パネル200の動作モードは、TN(Twisted Nematic)モードや、STN(Supper Twisted Nematic)モード、強誘電性液晶モードなどでもよい。また、駆動方法は、単純マトリックスやアクティブマトリックスなどでもよい。さらに、カラーフィルタ基板220に設けた共通電極223をスイッチング素子基板210側に設置して、画素電極213との間に横方向に液晶230に対して電界をかける横電界方式を用いた液晶パネルでも良い。
【0046】
次に、本実施の形態3における湾曲液晶パネルの製造方法について説明する。ここでは、1枚のマザー基板上に複数の液晶セルを形成する場合について説明するが、個々の液晶セルを別々に形成することも可能である。なお、液晶表示装置用基板であるスイッチング素子基板210及びカラーフィルタ基板220の製造方法については、一般的な方法を用いるため、簡単に説明する。
【0047】
スイッチング素子基板210は、ガラス基板211の一方の面に、成膜、フォトリソグラフィー法によるパターンニング、エッチングなどのパターン形成工程を繰り返し用いて、スイッチング素子214や画素電極213、端子216、トランスファ電極217を形成することにより製造される。また、カラーフィルタ基板220は、同様に、ガラス基板221の一方の面に着色層224や共通電極223を形成することにより製造される。
【0048】
続いて、図8を参照して、湾曲液晶パネル200の組み立て工程について説明する。図8は、本実施の形態に係る湾曲液晶パネル200の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【0049】
まず、基板洗浄工程において、画素電極213が形成されているスイッチング素子基板210を洗浄する(S1)。次に、配向膜材料塗布工程において、スイッチング素子基板210の一方の面に、例えば印刷法により配向膜212の材料となるポリイミドからなる有機膜を塗布し、ホットプレートなどにより焼成処理し乾燥させる(S2)。その後、配向膜材料の塗布されたスイッチング素子基板210に対して配向処理を行い、配向膜212を形成する(S3)。
【0050】
配向処理においては、実施の形態1で説明した配向処理方法を用いた配向処理工程を行う。すなわち、配向膜が形成される面が湾曲されることによって発生するラビング密度の不足・過剰を修正するために、ラビング処理の各パラメータ(ラビングローラー3の回転数、ラビングステージ2の移動速度、押し込み量8)のうちの1つ若しくは組み合わせを変更する。
【0051】
したがって、本実施の形態においては、配向膜212が形成される面が伸曲面となるスイッチング素子基板210では、ラビング密度不足を補うために、ラビングローラー3の回転数を上げる、ラビングステージ2の移動速度を下げる、押し込み量8を大きくするなどのパラメータ変更を行う。
【0052】
一方、配向膜222が形成される面が縮曲面となるカラーフィルタ基板220では、ラビング密度過剰を修正するために、ラビングローラー3の回転数を下げる、ラビングステージ2の移動速度を上げる、押し込み量8を小さくなどのパラメータの変更を行う。
【0053】
また、S1からS3と同様に、共通電極223が形成されているカラーフィルタ基板220についても、洗浄、有機膜の塗布、及び配向処理を行うことにより配向膜222を形成する。カラーフィルタ基板220の配向処理においても同様に、配向膜が形成される面が伸曲面であるか、縮曲面であるか、曲面率等に応じて各パラメータを変更する。これにより、湾曲液晶パネルにおける画質劣化を改善することができ、
【0054】
続いて、シールパターンを形成するシール塗布工程において、シール印刷を用いスイッチング素子基板210或いはカラーフィルタ基板220の一方の面に、シール233の塗布処理を行う(S4)。また、シール233には、例えばエポキシ系接着剤などの熱硬化型樹脂や紫外線硬化型樹脂を用いることができる。
【0055】
次に、トランスファ材塗布工程において、スイッチング素子基板210或いはカラーフィルタ基板220の一方の面にトランスファ材234の塗布処理を行う(S5)。そして、スペーサ散布工程において、スイッチング素子基板210或いはカラーフィルタ基板220の一方の面にスペーサを散布する(S6)。この工程は、例えば湿式法や乾式法によりスペーサを分散させることにより行われる。なお、この工程は、スイッチング素子基板210或いはカラーフィルタ基板220の一方の面に予め基板間の距離を決定する突起状の柱スペーサを形成しておくことにより、省略することも可能である。
【0056】
その後、貼り合わせ工程において、スイッチング素子基板210とカラーフィルタ基板220を貼り合わせる(S7)。続いて、シール硬化工程において、スイッチング素子基板210とカラーフィルタ基板220を貼り合わせた状態でシール233を完全に硬化させる(S8)。この工程は、例えばシール233の材質に合わせて熱を加えることや、紫外線を照射することにより行われる。なお、シール233は、後の液晶注入工程で、液晶230を注入するための液晶注入口を有するパターン形状とする。
【0057】
次に、湾曲液晶表示装置を得るために、湾曲が容易になる様に、ガラス基板211及びガラス基板221を削る薄型化研磨工程を行う(S9)。この工程は、例えば薬液を用いた化学研磨や研磨材により擦る物理研磨によりガラス基板表面を削ることにより行われる。
【0058】
次に、セル分断工程において、貼り合わせた基板を個別セルに分解する(S10)。そして、液晶注入工程において、液晶注入口から液晶を注入する(S11)。この工程は、例えば、液晶230を液晶注入口から真空注入により充填することにより行われる。更に、封止工程において、液晶注入口を封止する(S12)。この工程は、例えば光硬化型樹脂で封じ、光を照射することにより行われる。以上の様にして液晶セル240が製造される。
【0059】
以上のS7〜S12の貼り合わせから液晶封止までの工程については、通常の液晶注入口からの液晶注入方法を一例として説明した。しかし、別の液晶注入方法として、所謂、滴下注入方式を用いても構わない。滴下注入方式では、例えば、シール233を注入口の無いパターン形状とし、液晶230をスイッチング素子基板210或いはカラーフィルタ基板220の上に液滴状態で滴下する。そして、この滴下した液晶230を挟む様にスイッチング素子基板210とカラーフィルタ基板220を貼り合わせた後に、シール233を硬化させる。
【0060】
続いて、S12までに製造された液晶セル240に偏光板231、232を貼り付ける(S13)。最後に、制御基板実装工程において、制御基板235を実装し(S14)、液晶セル240を湾曲する様に変形された状態で筐体内に組み込み保持することによって湾曲液晶パネル200が完成する。
【0061】
以上説明した実施の形態3に係る湾曲液晶パネル200においては、上記の説明の通り、実施の形態1で説明した配向処理方法を用いた配向処理工程を行うことにより製造される。このため、スイッチング素子基板210の凸面側に形成された配向膜212、カラーフィルタ基板220の凹面側に形成された配向膜222に対して、それぞれに応じたラビング密度の過不足のない適切な条件で配向処理がなされる。これにより、湾曲した最終形状の状態で、配向処理のバランスが取れた湾曲液晶パネル200を得ることができ、画質劣化の無い液晶パネルを低コスト、高製造歩留で製造することができる。
【0062】
なお、実施の形態3においては、実施の形態1の配向処理方法を用いて製造した液晶パネルについて説明した。実施の形態1の配向処理方法に代えて、実施の形態2において説明した配向処理方法あるいは配向処理装置を用いることにより、曲面率がパネル面内で不均一な液晶パネルを製造した場合においても、同様の効果を得ることができる。なお、液晶パネルは、バックライト16側に凸状に湾曲されてもよいし、凹状に湾曲されていてもよい。また、湾曲箇所が複数箇所ある場合もある。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】実施の形態1に係る配向処理装置の構成を示す図である。
【図2】ラビングローラーの押し込み量を説明するための図である。
【図3】実施の形態1に係る湾曲液晶パネルのセル状態の構成を示す図である。
【図4】実施の形態2に係る湾曲液晶パネルのセル状態の構成を示す図である。
【図5】実施の形態2に係る配向処理装置の構成の一例を示す図である。
【図6】実施の形態2に係る配向処理装置の構成の他の例を示す図である。
【図7】実施の形態3に係る湾曲液晶パネルの構成を示す図である。
【図8】実施の形態3に係る湾曲液晶パネルの製造方法における組み立て工程を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0064】
1 液晶パネル用基板
2 ラビングステージ
3 ラビングローラー
4 回転ローラー
5 両面テープ
6 ラビング布
7 配向膜
8 押し込み量
9 伸曲面
10 縮曲面
11 高曲面部
12 低曲面部
13 ピンアップ機構
14 シール材
15 液晶
16 バックライト
20 液晶パネル
200 湾曲液晶パネル
210 スイッチング素子基板
211 ガラス基板
212 配向膜
213 画素電極
214 スイッチング素子
215 絶縁膜
216 端子
217 トランスファ電極
220 カラーフィルタ基板
221 ガラス基板
222 配向膜
223 共通電極
224 着色層
225 遮光層
230 液晶
231、232 偏光板
233 シール材
234 トランスファ材
235 制御基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に配向膜を形成する工程と、
前記基板を湾曲状態とした際に、前記配向膜のラビング密度が略均一になるように、前記配向膜にラビング処理を行う工程と、
を含む配向処理方法。
【請求項2】
前記ラビング処理においては、伸曲面となる部分のほうが縮曲面となる部分よりもラビング密度が高くなるようにラビング条件を変更することを特徴とする請求項1に記載の配向処理方法。
【請求項3】
前記ラビング条件は、ラビングローラーの回転速度、前記基板と前記ラビングローラーの相対移動速度、前記ラビングローラーの押し込み量の少なくとも1つであることを特徴とする請求項2に記載の配向処理方法。
【請求項4】
前記配向膜が形成された基板を湾曲状態に保持する工程をさらに備え、
前記基板を湾曲状態に保持して、前記配向膜をラビング処理することを特徴とする請求項1、2又は3に記載の配向処理方法。
【請求項5】
伸曲面となる部分を凸状態とし縮曲面となる部分を凹状態とするように、前記基板を湾曲状態に保持することを特徴とする請求項4に記載の配向処理方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の配向処理方法により、基板上の配向膜をラビング処理する工程を含む液晶パネルの製造方法。
【請求項7】
配向膜が形成された基板を湾曲状態にして載置することが可能な機構を有するステージと、
ラビング布が表面に固定され、回転しながら前記基板の表面に接触されるラビングローラーと、
前記基板を湾曲状態とした際に、前記配向膜のラビング密度が略均一になるように、前記配向膜にラビング条件を変更する制御機構と、
を備える配向処理装置。
【請求項8】
前記制御機構は、伸曲面となる部分のほうが縮曲面となる部分よりもラビング密度が高くなるようにラビング条件を変更することを特徴とする請求項7に記載の配向処理装置。
【請求項9】
前記ラビング条件は、前記ラビングローラーの回転速度、前記基板と前記ラビングローラーの相対移動速度、前記ラビングローラーの押し込み量の少なくとも1つであることを特徴とする請求項8に記載の配向処理装置。
【請求項10】
前記基板を湾曲状態に保持して、前記配向膜をラビング処理することを特徴とする請求項7、8又は9に記載の配向処理装置。
【請求項11】
伸曲面となる部分を凸状態とし、縮曲面となる部分を凹状態とするように、前記基板を湾曲状態に保持することを特徴とする請求項10に記載の配向処理方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate