説明

配管のシール構造体

【課題】 構造が簡素でコスト低減を図ることができ、かつ均一なシール性を確保でき、さらに装脱着が容易であることを課題とする。
【解決手段】 流体を流す配管1の一端側と被挿着部材2とを該被挿着部材の継手部でシールする配管のシール構造体であり、配管の一端側にはリング状の第1の鍔部1aが設けられ、被挿着部材の継手部周辺には、外側方向に延出するリング状の第2の鍔部2aが設けられ、第1の鍔部を被挿着部材に押圧するようにOリング4が配管の外周部に設けられ、筒状の締結具5がOリングを第1の鍔部側に押圧するように配管の外周部に設けられ、第2の鍔部を固定するように固定具6が配管の外周部に設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家庭及び業務用燃料電池の水道・給湯器、自動車用燃料電池、例えばヒートポンプ方式のエコ給湯器、及び半導体・液晶製造装置、化学プラントのガス、給油、純水、食品製造、医薬品製造、化粧品製造等の流体を流す配管の継手部をシールするための配管のシール構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ホースニップルの外周面に螺旋補強ホースを挿着し、この螺旋補強ホースの外周に、ホースニップルへ向けて常時押圧する緊締バンドを取り付けたホース締め付け具が知られている(特許文献1)。
【0003】
また、自動車用配管等の流体配管連結具に樹脂チューブを接続する樹脂チューブの接続構造及び接続方法に関する技術で、チューブ接続部と熱可塑性樹脂チューブとゴム弾性バンドとを備え、ゴム弾性バンドに特徴を有した樹脂チューブの接続側端部に嵌め付けられた樹脂チューブの接続構造体が知られている(特許文献2)。
【0004】
更に、弾性ホースを自動車のエンジンやフューエルタンク等の回りに配設される配管機器に接続する際に使用されるホース端部の接続構造体及びその接続方法に関する技術で、ホース接続用管状部と、弾性ホースと、接着剤層と、締結対とを具備したホース端部の接続構造体が知られている(特許文献3)。
【特許文献1】特開2001−50454号公報
【特許文献2】特開2004−239412号公報
【特許文献3】特開平7−317981号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術においては、構造が複雑でコスト高を招いたり、あるいは配管とホースニップル等の被挿着部材とのシール性を十分確保できず、さらには装脱着に時間がかかる等の問題があった。
【0006】
本発明は上記事情を考慮してなされたもので、極めて構造が簡素でコスト低減を図ることができ、かつ配管の一端の鍔部から均等に加圧して均一なシール性を確保でき、さらに装脱着が容易な配管のシール構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る配管のシール構造体は、流体を流す配管の一端側と被挿着部材とを該被挿着部材の継手部でシールする配管のシール構造体であり、前記配管の一端側にはリング状の第1の鍔部が設けられ、前記被挿着部材の継手部周辺には、外側方向に延出するリング状の第2の鍔部が設けられ、前記被挿着部材の継手部に前記配管の第1の鍔部側が挿着された状態で、第1の鍔部を被挿着部材に押圧するようにOリングが配管の外周部に設けられ、前記被挿着部材の継手部に前記配管の第1の鍔部側が挿着された状態で、筒状の締結具が前記Oリングを第1の鍔部側に押圧するように配管の外周部に設けられ、前記被挿着部材の継手部に前記配管の第1の鍔部側が挿着された状態で、前記第2の鍔部を固定するように固定具が配管の外周部に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、極めて構造が簡素でコスト低減を図ることができ、かつ配管の一端の鍔部から均等に加圧して均一なシール性を確保でき、さらに装脱着が容易な配管のシール構造体が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の配管のシール構造体について更に詳しく説明する。
本発明において、Oリングの材質としては、例えばニトリルゴム、スチレンブタジエンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム等の弾性体が挙げられる。また、特に耐薬品性を要求される場合には、及び前記弾性体にフッ素樹脂であるFEPやPFA、PTFEを被覆した材質が挙げられる。
【0010】
本発明において、配管の材質としては、樹脂、金属、ゴムのいずれかが挙げられる。樹脂としては、例えば四ふっ化エチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂、四ふっ化エチレン樹脂、四ふっ化エチレン−六ふっ化プロピレン共重合樹脂、四ふっ化エチレン−エチレン共重合樹脂、ふっ化ビニリデン樹脂等のふっ素樹脂、あるいは架橋ポリエチレン樹脂、ポリエステルポリ塩化ビニール樹脂、アセタール樹脂アクリル樹脂、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルサルフォン、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイドが挙げられる。金属としては、例えばステンレス鋼,銅,銅合金,アルミニウム,アルミニウム合金、チタン、チタン合金が挙げられる。ゴムとしては、例えばシリコーンゴム、フッ素ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、アクリルニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴムが挙げられる。
【0011】
次に、本発明の配管のシール構造体について説明する。なお、本実施例は下記に述べることに限定されない。
(実施例)
図1、図2及び図3を参照する。ここで、図1は、ガス管を被装着部材である電磁弁の継手部に装着した状態の配管のシール構造体の説明図である。図2は、図1の配管のシール構造体の一構成であるクランパーと配管との関係を示す概略的な斜視図である。図3は、ガス管を電磁弁の継手部に装着する前の状態を示す説明図である。
【0012】
図1中の符番1は流体を流す配管としてのフッ素樹脂製のガス管であり、一端側にリング状の第1の鍔部1aが形成されている。ここで、第1の鍔部1aは例えば圧縮成形により形成できるが、その形成方法は問わない。ガス管1の第1の鍔部1a側は、電磁弁2の開口部(継手部)3に挿着されている。ここで、第1の鍔部1aの外径dは、継手部3の内径Dより約0.2mm小さく設定されている(図3参照)。電磁弁2の継手部3の周辺には、外側方向に延出するリング状の第2の鍔部2aが形成されている。
【0013】
ガス管1の外周部には、ガス管1の第1の鍔部1aを電磁弁2側に押圧するようにニトリルゴムからなるOリング4が設けられている。ガス管1の外周部には、Oリング4をガス管1の第1のつば部1a側に押圧するように金属製の筒状の締結具5が配置されている。この締結具5のOリング4とは反対側の端部に、外径が第2の鍔部2aと略同形状の第3の鍔部5aが形成されている。
【0014】
ガス管1の外周部には、電磁弁2の第2の鍔部2a及び締結具5の第3の鍔部5aを固定するように金属製のクランパー6が設けられている。クランパー6は、図2に示すように、第2の鍔部2a及び第3の鍔部5aの夫々の一部が嵌め込まれる開口部6aを有している。クランパー6の先端は末広がりの形状でかつ板バネのような機能を有しており、配管1にセットする際には先端が次第に広がり、配管1にセットされて第2の鍔部2a及び第3の鍔部5aの夫々の一部が開口部6aに装着された後は先端が自然に狭まるようになっている。
【0015】
配管1と電磁弁2との装着前の状態は、図3に示すようにOリング4が圧縮されずに断面形状が円形を保った形状になっている。図3の状態から矢印Xのように配管1が電磁弁2の継手部3に装着されると、Oリング4が図1に示すように圧縮されて、配管1の外周部と電磁弁2と締結具5間の領域に納まるようになっている。なお、図3において、配管1の第1の鍔部1aの端面から締結具5の第3の鍔部5aの内側の端面までの距離をL、電磁弁2の開口部3の深さ方向の距離をLとした場合、Oリング4に約8〜30%の圧縮を与えるようにLの長さはLより短く設定している。なお、図3中の符番7,8は夫々継手部3のシール面である。
なお、Oリング4や締結具5は、通常、ガス管1の第1の鍔部1aを成形等により形成する前にガス管1に挿着しておくが、必ずしもこれに限定されない。
【0016】
上記実施例に係る配管のシール構造体は、ガス管1の一端側にリング状の第1の鍔部1aが設けられ、電磁弁2の継手部周辺にリング状の第2の鍔部2aが設けられ、第1の鍔部1aを電磁弁2に押圧するようにOリング4がガス管1の外周部に設けられ、外径が前記第2の鍔部2aに対応したリング状の第3の鍔部5aを有した筒状の締結具5が、Oリング4を第1の鍔部側に押圧するようにガス管1の外周部に設けられ、更に第2・第3の鍔部2a,5aを固定するようにクランパー6がガス管1の外周部に設けられた構成になっている。
【0017】
こうした構成において、ガス管1の第1の鍔部1aでは、クランパー6の押圧が締結具5を介してOリング4に伝達されて電磁弁2のシール面7及び第1の鍔部1aが電磁弁2のシール面8の夫々に接触が均一に行われ、その結果、配管1と電磁弁2とのシール性を高めることができる。
【0018】
また、次のような効果も有する。
1)クランパー6はワンタッチでガス管1に装着して第2の鍔部2a及び第3の鍔部5aを固定でき、かつワンタッチでガス管1から外すことができるので、作業時間を短縮することができる。
2)ガス管1の一端部の第1の鍔部1aは、シール面8の全面に接圧するので、シール性を高めることができる。
【0019】
下記表1は、上記ガス管の材質,寸法,Oリング規格,材質及びクランパーの商品名を示す。下記表2は、ガス管がPTFE管“タイプA”のエアー漏れの有無の実施結果を示す。下記表3,4は、ガス管が架橋ポリエチレン管“タイプB”のエアー漏れの有無の実施結果を示す。
【表1】

【0020】
【表2】

【0021】
【表3】

【0022】
【表4】

【0023】
下記表5は、ガス管がPVDF管“タイプC”のエアー漏れの有無の実施結果を示す。下記表6は、“タイプB”の鍔部のフレアー加工品をエアー圧6kg/cmG加圧下の状態で引き抜き強度の実施結果を示す。下記表7は、“タイプB”の鍔部の接着加工品をエアー圧6kg/cmG加圧下の状態で引き抜き強度の実施結果を示す。表8は、“タイプB”の鍔部の融着加工品の引き抜き強度試験の実施結果を示す。
【表5】

【0024】
【表6】

【0025】
【表7】

【0026】
【表8】

【0027】
なお、本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。具体的には、上記例では、締結具の第3の鍔部の径が被挿着部材の第2の鍔部の径と略同形状である場合について述べたが、これに限らず、締結具に第3の鍔部が無い筒状体である場合でもよい。また、締結具は、例えば図4に示すように、配管の外周部に取り付けられる環状のリング部材9aと配管の外周部に取り付けられる筒状の部材9bからなる場合でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、ガス管を被装着部材である電磁弁の継手部に装着した状態のシール構造体の説明図。
【図2】図2は、図1のシール構造体の一構成であるクランパーと配管との関係を示す説明図。
【図3】図3は、配管は電磁弁の継手部に装着する前の状態を示す説明図。
【図4】図4は、図1のシール構造体の一構成である締結具の変形例を示す断面図。
【符号の説明】
【0029】
1…ガス管(配管)、1a…第1の鍔部、2…被挿着部材、2a…第2の鍔部、3…開口部(継手部)、4…O−リング、5,9…締結具、5a…第3の鍔部、6…固定具、7,8…シール面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を流す配管の一端側と被挿着部材とを該被挿着部材の継手部でシールする配管のシール構造体であり、
前記配管の一端側にはリング状の第1の鍔部が設けられ、
前記被挿着部材の継手部周辺には、外側方向に延出するリング状の第2の鍔部が設けられ、
前記被挿着部材の継手部に前記配管の第1の鍔部側が挿着された状態で、第1の鍔部を被挿着部材に押圧するようにOリングが配管の外周部に設けられ、
前記被挿着部材の継手部に前記配管の第1の鍔部側が挿着された状態で、筒状の締結具が前記Oリングを第1の鍔部側に押圧するように配管の外周部に設けられ、
前記被挿着部材の継手部に前記配管の第1の鍔部側が挿着された状態で、前記第2の鍔部を固定するように固定具が配管の外周部に設けられていることを特徴とする配管のシール構造体。
【請求項2】
前記Oリングの材質は、ニトリルゴム、スチレンブタジエンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、及び前記ゴムにフッ素樹脂を被覆した材質の内いずれかであることを特徴とする請求項1記載の配管のシール構造体。
【請求項3】
前記配管の材質は、樹脂、金属、ゴムのいずれかであることを特徴とする請求項1記載の配管のシール構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−216196(P2009−216196A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−61544(P2008−61544)
【出願日】平成20年3月11日(2008.3.11)
【出願人】(000211156)中興化成工業株式会社 (37)
【Fターム(参考)】