説明

配管サポート材及びこれを用いた配管支持構造

【課題】断熱保温材の圧潰・変形を生じさせず、固定強度及び断熱機能を維持し得る配管サポート材及びこの配管サポート材を用いた配管支持構造を提供することを目的とする。
【解決手段】発泡体からなる断熱保温材8で覆われた配管7を建屋壁面等に配管支持具6によって支持する際に使用される配管サポート材1であって、マット状発泡材シートを開環筒状体10に成形してなり、上記配管支持具6による支持部において、上記断熱保温材8の周囲に装着され、配管支持具6と断熱保温材8との間に介在される状態で上記支持がなされるものであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷房・暖房等の空調設備、冷凍・冷蔵設備、更には上水道設備等における冷媒、温水、冷水、更にはスチーム等の流体を流通させる配管を建屋の壁面や天井面、天井裏等(以下、壁面等と言う)に配管施工する際に、配管支持部に使用される配管サポート材及びこの配管サポート材を用いた配管支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような設備においては、上記各種流体を流通させる為の配管が建屋の壁面等に配管施工される。そして、これら配管は、放熱、吸熱、結露更には凍結防止の為に断熱保温材で覆われた状態で配管施工される。近時、このような断熱保温材としては、断熱性に優れ、安価に入手し易く、また軽量であること等から、樹脂系発泡体やゴム系発泡体が広く用いられている。特許文献1には、このような断熱保温材を用いたパイプカバーが開示されている。また、特許文献2には、断熱材で覆われたエアコン配管の壁面等への配管支持構造について開示されている。
【0003】
特許文献2に開示された配管支持構造は、断熱材で覆われたエアコン配管を合成樹脂等の成型体からなる筒状保護カバー内に収納し、この保護カバーを建屋の壁面に取付けられたホルダーにて支持させんとするものである。このような配管支持構造は、一般家屋等のように外観の見映が重視されるような用途に使用されるものであるが、前記のような設備を備える産業施設、商業施設或いは公共施設等の配管施工においては、特許文献1に開示されたような断熱材で覆われた配管を、各種チャンネル材等に直接支持させ、これをUボルトその他の固定治具で締結固定することが一般的になされる。図4はこのような配管支持構造の一例を示している。
【0004】
図4は、銅管等からなる冷媒流通用配管100をゴム系発泡体からなる断熱保温材(保冷材)101によって覆い、これを建屋の壁面等に取付けられたL型チャンネルからなる支持金具102に支持させ、Uボルト103及びナット104で締結して包持固定した例を示している。この例は、断熱保温材101によって覆うことにより、配管100中を流れる冷媒の温度上昇を防ぐものであるが、断熱保温材の結露を防止したり、温水の温度低下を防いだり、更には上下水の凍結を防止したりする為に同様の配管支持構造が採用される。
【特許文献1】特開平9−152090号公報
【特許文献2】特開平9−210410号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
而して、上記のような配管支持構造にあっては、図のように支持金具102及びUボルト103による締結・包持部分で、自重や締結力により断熱保温材101に圧潰・変形部分101a、101bが生じる。このような圧潰・変形部分101a、101bでは保温機能が低下すると共に結露現象が生じる。圧潰・変形を少なくする為、締結強度を弱くすることもなされるが、所定の固定強度が得られなくなり、配管構造全体の安定性に欠けることにもなる。特に、独立気泡の発泡体は優れた断熱性を発揮することから、上記断熱保温材として好ましく採用されているが、特有の柔軟弾性を有し、その為、上記のような圧潰・変形が発生し易く、その抜本的な改善が望まれるところであった。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、断熱保温材の圧潰・変形を生じさせず、固定強度及び断熱機能を維持し得る配管サポート材及びこの配管サポート材を用いた配管支持構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明に係る配管サポート材は、発泡体からなる断熱保温材で覆われた配管を建屋壁面等に配管支持具によって支持する際に使用される配管サポート材であって、マット状発泡材シートを開環筒状体に成形してなり、上記配管支持具による支持部において、上記断熱保温材の周囲に装着され、配管支持具と断熱保温材との間に介在される状態で上記支持がなされるものであることを特徴とする。
【0008】
本発明においては、請求項2の発明のように、前記配管を覆う断熱保温材がゴム系の発泡体の場合に、前記マット状発泡材シートを樹脂系の発泡体とし、当該樹脂系の発泡体の発泡倍率を5〜20とすることが望ましい。また、請求項3の発明のように、前記マット状発泡材シートの厚みを5〜15mmとすることが望ましい。更に、請求項4の発明のように、前記開環筒状体における開環端部近傍の内面に両面接着テープを貼着することもできる。
【0009】
請求項5の発明は、配管支持構造であって、発泡体からなる断熱保温材で覆われた配管を、請求項1乃至4のいずれかに記載の配管サポート材を介し、配管支持具によって建屋壁面等に支持させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明に係る配管サポート材或いは請求項5の発明に係る配管サポート材を用いた配管支持構造によれば、配管支持具による支持部において、配管を覆う断熱保温材と配管支持具との間に、配管サポート材が介在されるから、配管サポート材の緩衝材的作用によって荷重が分散され、前記のような断熱保温材の圧潰・変形が生じにくく、保温機能が低下したり結露現象が生じたりする懸念がない。しかも、断熱保温材と配管サポート材とは発泡体同士の接触となるから、相互の馴染み性が良く且つ断熱性も同等に近く、断熱保温材の圧潰・変形の防止に効果的であると共に接触界面での結露も発生する懸念がない。そして、圧潰・変形が少なくなることから、配管支持具による取付力(締結力)を強くすることができ、強固な配管固定がなされる。また、配管サポート材が、マット状発泡材シートを開環筒状体に成形してなるものであるから、開環部分を押し拡げるだけで、断熱保温材の周囲への装着が簡易になし得、現場施工での取扱い性にも優れる。
【0011】
また、請求項2の発明のように、前記配管を覆う断熱保温材がゴム系の発泡体の場合に、前記マット状発泡材シートを樹脂系の発泡体(ポリスチレンフォーム、ポリエチレンフォーム等)とすれば、ゴム系発泡体に比べてこれら樹脂系の発泡体の方が若干硬質であるから、上記圧潰・変形の防止により効果的である。また、当該樹脂系発泡体の発泡倍率を5〜20とすれば、この特性が有効に発現される。因みに、発泡倍率が5未満の場合、上記断熱保温材とは断熱性において差が生じ、接触界面で結露が発生し易くなる。発泡倍率が20を超えると、柔らかさが増し、上記緩衝材的機能が低下する傾向となる。
【0012】
更に、請求項3の発明のように、マット状発泡材シートの厚みを5〜15mmとすれば、上記同様断熱保温材の圧潰・変形の防止機能がより有効に発現される。因みに、厚みが5mm未満の場合、上記緩衝材的機能が低下する傾向となり、20mmを超えると、上記圧潰・変形の防止機能はより向上するが、マット状発泡材シートを開環筒状体に成形する際の成形性が悪くなる傾向となり、更には、嵩高くなる為、配管支持具も大型化することにもなる。また、請求項4の発明のように、前記開環筒状体における開環端部近傍の内面に両面接着テープが貼着されておれば、剥離紙を剥がして断熱保温材に本配管サポート材を接着固定させることができ、現場施工において、配管サポート材が脱落することはなく、特に、垂直部分での施工に好適であり、現場施工の効率化に寄与する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に本発明の最良の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図1は本発明の配管サポート材の一例を示す斜視図、図2は同配管サポート材を用いた配管支持構造を示す部分縦断正面図、図3は図2におけるX−X線断面図を示す。
【実施例】
【0014】
図1に示す配管サポート材1は、発泡倍率が5〜20のポリプロピレンフォーム、ポリスチレンフォーム或いはポリエチレンフォーム等の樹脂系発泡体を厚み5〜15mm(好ましくは8〜10mm)にスライスして、或いは成型加工によって方形のマット状シートを得、これを図のような開環筒状体10に熱成形して得られたものである。その軸方向長さL及び周方向長さDは適用される配管及び断熱保温材の径等によって異なるが、100mm<L<350mm、150mm<D<350mm程度が好ましいとされる。そして、上記開環筒状体10の開環端部10a、10aの近傍内面に両面接着テープ2、2が貼着されている。
【0015】
上記配管サポート材1を用いて、冷媒配管等を建屋の壁面等に配管施工する例について述べる。図2、図3に示すように、建屋壁面等(不図示)には、吊ボルト3、3と、その下端に水平に固定されたL型チャンネル材の支持金具4とよりなる所謂ダクターが垂下されている。支持金具4には、Uボルト5(図例では2個)が取付け可能とされており、この吊ボルト3、3、支持金具4及びナット5aを含むUボルト5により配管支持具6が構成される。冷媒配管7は銅管等からなり、ゴム系発泡体(例えば、アメリカ・アームストロング社製アーマフレックス、日商エアロ株式会社製エローフレックス、イタリア・リソランテ・ケーフレックス社製K−FLEX等であり、かさ比重40〜95kg/m)からなる断熱保温材8により全体が覆われている。
【0016】
上記のように断熱保温材8によって覆われた冷媒配管7を上記配管支持具6によって配管施工する場合、配管サポート材1の上記開環端部10a、10aの近傍内面に貼着されている両面接着テープ2、2の剥離紙を剥がし、開環端部10a、10aを押し拡げるようにして、配管支持具6による支持部位の断熱保温材8の周囲に配管サポート材1を被せるように装着する。この装着状態では、両面接着テープ2、2により、断熱保温材8と配管サポート材1とが接着固定化されるから、配管施工作業時に配管7を立てたり、傾けたりしても、配管サポート材1がずれたり、脱落したりすることがなく、所定の位置に維持される。
【0017】
次いで、上記のように下準備された冷媒配管7を、配管サポート材1の開環部分が上向きになるよう配管サポート材1の装着部分をして上記支持金具4の上に載置する。そして、Uボルト5を配管サポート材1の周体に包持させ、ナット5aにて支持金具4に締結固定する。順次このような締結固定を行い、冷媒配管7を所定の位置に配管施工を行う。配管支持具6による取付構造においては、配管サポート材1が、支持金具4及びUボルト5と断熱保温材8との間に介在され、上記締結強度を大とすると、図2に示すように、支持金具4での支持部分やUボルト5の包持部分で配管サポート材1が多少圧潰・変形するが、配管サポート材1の分散荷重による緩衝材的機能により、断熱保温材8にまで圧潰・変形が及ぶことがなく、強固な支持がなされながらも、保温機能が低下したり結露現象が生じたりすることがない。特に、配管サポート材1が樹脂系発泡体よりなるから、ゴム系発泡体よりなる断熱保温材8との組み合わせにより、このような特性がより好適に発現される。
【0018】
尚、配管支持具6の形態としては、図例のようなダクターに限らず、垂直壁面に水平に取付けられるものや、配管を垂直壁面に沿って垂直に支持するもの等公知のものが採用され得る。また、固定具としては、Uボルト5に代え、適宜バンドやインシュロック等も採用し得ることは言うまでもない。更に、冷媒配管の配管施工について述べたが、温水、冷水、スチーム、上下水等保温が必要な配管にも適用することが可能で、これにより同様の効果が得られる。また、両面接着テープ2を開環端部10aの近傍内面に貼着しておけば、上記のように配管施工の効率化を図る上で有効であるが、開環筒状体10を押し拡げた際の復元弾力によっても、安定した装着維持がなされるから、両面接着テープ2はコスト等を勘案して適宜採択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の配管サポート材の一例を示す斜視図である。
【図2】同配管サポート材を用いた配管支持構造を示す部分縦断正面図である。
【図3】図2におけるX−X線断面図である。
【図4】従来の配管支持構造の例を示す図2と同様図である。
【符号の説明】
【0020】
1 配管サポート材
10 開環筒状体
10a 開環端部
2 両面接着テープ
6 配管支持具
7 配管
8 断熱保温材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡体からなる断熱保温材で覆われた配管を建屋壁面等に配管支持具によって支持する際に使用される配管サポート材であって、
マット状発泡材シートを開環筒状体に成形してなり、上記配管支持具による支持部において、上記断熱保温材の周囲に装着され、配管支持具と断熱保温材との間に介在される状態で上記支持がなされるものであることを特徴とする配管サポート材。
【請求項2】
請求項1に記載の配管サポート材において、
前記配管を覆う断熱保温材がゴム系の発泡体からなり、前記マット状発泡材シートが樹脂系の発泡体からなり、当該樹脂系の発泡体の発泡倍率が5〜20であることを特徴とする配管サポート材。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の配管サポート材において、
前記マット状発泡材シートの厚みが5〜15mmであることを特徴とする配管サポート材。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の配管サポート材において、
前記開環筒状体における開環端部近傍の内面に両面接着テープが貼着されていることを特徴とする配管サポート材。
【請求項5】
発泡体からなる断熱保温材で覆われた配管を、請求項1乃至4のいずれかに記載の配管サポート材を介し、配管支持具によって建屋壁面等に支持させることを特徴とする配管支持構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−147024(P2007−147024A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−344846(P2005−344846)
【出願日】平成17年11月30日(2005.11.30)
【出願人】(591235430)ウチヤマコーポレーション株式会社 (2)
【Fターム(参考)】