説明

配管ラインの定置洗浄方法

【課題】主流配管から閉塞部内へ流入する洗浄液の滞留を防ぎ、かつ閉塞部内の洗浄効率を高め、配管ライン全体の効率的な洗浄を行うことが可能な配管ラインの定置洗浄方法を提供する。
【解決手段】主流配管12から分岐された閉塞部14を有する配管ライン10を定置洗浄する方法であって、主流配管12から閉塞部14へ流入する洗浄液に対し、閉塞部14内で気泡を供給し、閉塞部14の内部で気液混合流を生成することを特徴とする。また、このような方法では前記気泡の供給は、断続的または供給量を変化させながら行うことが望ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管ラインの定置洗浄方法であって、特に食品・飲料品工場等のプロセスに用いられる配管ラインの定置洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品工場、飲料工場等では、生産品種切り替え時や操業終了時等に、その製造設備や機器類を洗浄している。近年では特に、配管やタンク等は、洗浄時における分解を不要としたCIP(Cleaning In Place:定置洗浄)により洗浄が行われることが多い。
【0003】
一般的なCIP装置は、洗浄剤タンク、送液ポンプ、加熱装置および洗浄溶液の自動切換弁等から構成されている。CIP装置では、製品製造時に生産品を流していた設備や機器類などの配管類を洗浄するために洗浄剤を、洗浄後の洗浄剤を洗い流すために清水をそれぞれ流すこととなる。
【0004】
洗浄対象となる配管類には、温度や圧力、流量等を示す計器類や、排水用配管、及び将来的な増設用や一時的に使用しない配管などが接続された分岐管としての閉塞部が存在することがある。こうした閉塞部では、洗浄液の滞留が生じやすい。このように洗浄液の滞留が生じやすい箇所では、配管内に付着した汚れの洗浄不足や、洗浄後の洗浄液の残留といった自体が生じやすく、仮に生じた場合には、次回の製品生産時に製造される製品の品質に、多大な悪影響を及ぼす虞がある。
【0005】
こうした洗浄液の滞留が生じやすい箇所での洗浄不足、洗浄液の残留といった事態を生じさせないため、CIPでの配管ラインの洗浄は、洗浄時間、すすぎ時間等を過剰に設定しており、従来の定置洗浄におけるコスト上昇、製品製造効率低下の要因になっていた。
【0006】
洗浄不足の解消を図るための手段として、気液混合(気液二層)流による洗浄を挙げることができる。このような技術は、例えば特許文献1、特許文献2に開示されており、いずれもその洗浄性の良さを実証している。
【特許文献1】2002−357377号公報
【特許文献2】2006−181450号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献に記載されているような気液混合流を用いたCIPによれば確かに、配管ライン全体としての洗浄効率は向上すると考えられる。しかし、気液混合流により主流配管を流れる洗浄液に乱流を生じさせた場合であっても、閉塞部へ流れ込む大きな流れの割合や方向に大差は生じない。このため、主流配管内部の洗浄が完了した後に閉塞部の洗浄を持続しなければならないといった構図を変えることはできないと考えられる。
【0008】
そこで本発明では、主流配管から閉塞部内へ流入する洗浄液の滞留を防ぎ、かつ閉塞部内の洗浄効率を高め、主流配管の洗浄に要する時間との差を縮め、配管ライン全体の効率的な洗浄を行うことが可能な配管ラインの定置洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明に係る配管ラインの定置洗浄方法は、主流配管から分岐された閉塞部を有する配管ラインを定置洗浄する方法であって、前記主流配管から前記閉塞部へ流入する洗浄液に対し、前記閉塞部内先端部で気泡を供給し、前記閉塞部の内部で気液混合流を生成することを特徴とする。
【0010】
また、上記のような特徴を有する配管ラインの定置洗浄方法では、前記気泡の供給は、断続的または供給量を変化させながら行うようにすると良い。このようにして気泡を供給することで、閉塞部内に気泡が滞留してしまうといった事を防止することができ、高い洗浄効果を維持することが可能となる。
【0011】
さらに、上記のような特徴を有する配管ラインの定置洗浄方法では、前記閉塞部内へ供給した気泡が、前記主流配管へ向かうように前記気泡を吐出することが望ましい。このように気泡を供給することで、エアリフト効果により、閉塞部内から主流配管側へ向かう流れが促される。よって閉塞部内での洗浄液の滞留を抑制すると共に閉塞部内での洗浄液の流速を向上させることができ、洗浄効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0012】
上記のような特徴を有する配管ラインの定置洗浄方法によれば、閉塞部に直接気泡を供給することで、閉塞部に流入した洗浄液の流れに局部的な乱れを生じさせることができる。このため、洗浄液の混合・攪拌が促進されると共に、気泡の破裂や気泡内への洗浄液の流れ込みに伴って気液界面で生じるせん断力の影響により、閉塞部内壁面に付着した汚れが剥離しやすくなる。よって、閉塞部における洗浄液および汚れ成分の残留リスクが減少し、閉塞部の洗浄時間と主流配管の洗浄時間との差を縮めることができ、短い時間で効率的に配管ライン全体の洗浄を完了することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の配管ラインの洗浄方法に係る実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
まず、図1を参照して、本発明の配管ラインの洗浄方法を実施するための配管ラインと、本発明の配管ラインの洗浄方法を実施するために必要とする配管ライン、および装置について説明する。
【0014】
本発明を実施するための配管ライン10は、例えば図1に示すように、主流配管12と、当該主流配管12から分岐された閉塞部14を有する。主流配管12は、図示しない洗浄剤タンク、送液ポンプ、洗浄液加熱装置等に接続された配管であり、図1は、その一部を部分的に示すものである。閉塞部14は、主流配管12の側方に接続された短管である。
【0015】
閉塞部14には、例えば計器類(具体的には不図示)が設けられており、配管ライン10の外部に、閉塞板22を介して、外部表示手段24を備えている(計器類が設けられていない場合は、閉塞板22により端部を閉塞されている)。
【0016】
また、閉塞部14には、エア配管32を介してコンプレッサー等の気泡供給手段30が接続されている。閉塞部14におけるエア配管32の接続位置については、厳密に定める必要性は低いが、閉塞部14における閉塞板22寄り(先端側)に、主流配管12における洗浄液の流れ方向と逆向きに吐出口を向けて配置されると良い。閉塞部22に対する洗浄液の流れは、主流配管12における洗浄液の流れ方向から、閉塞部14と主流配管12との間のエッジ部16において剥離を生じさせ、閉塞部14へ流入する洗浄液は主流配管12における洗浄液の流れ方向に置かれた壁面18に当たることとなる。壁面18に当たった洗浄液は、閉塞部14の先端側へ流れ込むが、閉塞板22により閉塞されているために押し戻される形となり、壁面20側に位置し、閉塞部14への流入時に剥離を生じさせた部分へと流れ込む。壁面20側へ流れ込んだ洗浄液は、主流配管12へと押し戻されることとなる。
【0017】
このため、流れに勢いがある壁面18側にて気液混合流を生成するよりも、巻き込みによる滞留が生じやすい壁面20側へ洗浄液が流れる際に気液混合流を生成した方が、高い洗浄効果を期待することができると考えられるからである。
【0018】
また、気泡の供給を閉塞部14の先端部で行うことにより、閉塞板22と壁面18,20との間の隅部の洗浄性を特に向上させることができる。
また、望ましくは、エア配管32の吐出口を主流配管12側へ向けるなど、供給された気泡が、主流配管12へ向けて流れるような配置形態とすると良い。こうすることにより、エアリフト効果で、閉塞部14内部から主流配管12へ向かう流れを生じさせることができ、閉塞部14内部での洗浄液の滞留を防止することができる。また、閉塞部14内部における洗浄液の流れが促進されるため、洗浄効果の向上も期待することができる。
【0019】
エア配管32には、フィルタ26やバルブ28が設けられている。フィルタ26は、閉塞部14に流入した洗浄液に対して供給する気泡の大きさを定めるものであり、当該フィルタ26の変更(口径の変更)により、供給する気泡の平均的な大きさを変えることができる。バルブ28は、前記フィルタ26を通過する気体の量、すなわち閉塞部14に流入した洗浄液へ供給する気体の量を調整するためのものである。
【0020】
このような構成の配管ライン10では、主流配管12の端部側から、濃度や温度を調整された洗浄液が、主流配管12の内部へと供給される。主流配管12と閉塞部14を構成する短管との接続部では、エッジ部16を洗浄液が通過する際に剥離が生じ、洗浄液は壁面18へ衝突するように流れ込む。閉塞部14へ流れ込んだ洗浄液は、閉塞板22により進行を阻まれ、流入時に剥離を生じさせた壁面20側へと流れ込む。壁面20側へ流れこんだ洗浄液は、エッジ部16付近に滞留しつつ、主流配管12側へ流れ込むこととなる。
【0021】
本実施形態では、主流配管12から閉塞部14へと流入した洗浄液に対し、気泡を供給する。気泡の供給はまず、閉塞部へ供給する気泡の大きさを定め、定めた大きさの気泡を供給可能な口径を有するフィルタをエア配管における吐出口近傍に配置する。次に、気泡供給手段30を稼動させ、閉塞部14内へ供給する気体(エア)の量を定め、気体の供給量に応じてバルブ28を開放する。
【0022】
このようにして閉塞部14内へ流入した洗浄液に供給された気泡は、洗浄液の流れに局部的な乱れを発生させ、洗浄液の混合・攪拌を促進する。また、気泡の破裂や気泡に対する液体の流れ込み等に伴って気液界面で生じるせん断力によって、閉塞部14に付着した汚れが剥離しやすくなる。さらに、洗浄液の滞留が生じやすい閉塞部14に対して、主流配管12側へ流れ出るように気泡を供給することで、エアリフト効果も得ることができ、閉塞部14から主流配管12へ向けた流れを促すことができ、これによっても洗浄効率が向上する。
【0023】
また、気泡を含みつつ閉塞部14から主流配管12へと戻された洗浄液は、閉塞部14の下流側に位置する主流配管12の洗浄性向上に寄与することとなる。
上記のように、本実施形態に係る配管ラインの定置洗浄方法では、閉塞部14に流入した洗浄液に直接気泡を供給して気液混合流とすることで、閉塞部14の内面の洗浄性を局所的に向上させることができる。また、閉塞部14に対して直接供給する気泡が、主流配管12へ向かうようにすることで、エアリフト効果を奏することができ、主流配管12へ向かう洗浄液、主流配管12から閉塞部14へ流れ込む洗浄液双方の流速を向上させることができる。
【0024】
このように、閉塞部14内面の洗浄性を局所的に向上させることにより、主流配管12の洗浄時間と、閉塞部14の洗浄時間との差を縮めることができる。よって、配管ライン10全体の洗浄時間を短縮することができる。
【0025】
次に、本発明の配管ラインの定置洗浄方法に係る第2の実施形態について説明する。なお、本実施形態に係る配管ラインの定置洗浄方法を実施するための配管ラインは、上記第1の実施形態を説明する上で紹介した配管ライン10と同一のもので良い。
【0026】
本実施形態に係る配管ラインの定置洗浄方法と、第1の実施形態に係る配管ラインの定置洗浄方法との相違点は、エア配管32を介して閉塞部14へ行う気泡の供給を断続的、あるいはその量を変化させながら行うという点にある。
【0027】
閉塞部14に対する気泡の供給を断続的、あるいはその量を変化させながら行うようにすることで、気泡が閉塞部14内で滞留することを防ぐことが可能となる。よって、気泡の滞留による洗浄効率の低下が無くなり、結果として高い洗浄効果を持続することが可能となる。
その他の作用効果については、上述した第1の実施形態に係る配管ラインの定置洗浄方法と同様である。
【0028】
次に、本発明の配管ラインの定置洗浄方法に係る第3の実施形態について説明する。なお、本実施形態に係る配管ラインの定置洗浄方法を実施するための配管ラインは、上記第1の実施形態を説明する上で紹介した配管ライン10と同一のもので良い。
【0029】
本実施形態に係る配管ラインの定置洗浄方法と、第1、第2の実施形態に係る配管ラインの定置洗浄方法との相違点は、閉塞部14に加え、主流配管12に対しても気泡を供給するようにした点にある。
【0030】
主流配管12に対して気泡を供給することで、主流配管12を流れる洗浄液が気液混合流となるため、主流配管12における洗浄効率が向上し、主流配管12の洗浄完了までの時間が短縮されることとなる。また、閉塞部14へ流入した洗浄液(気液混合流)に対しても直接的に気泡を供給し、閉塞部14内の洗浄液の流れを促進させるため、単純に主流配管12のみに気泡を供給して気液混合流を生成し、配管ライン10全体の洗浄を行う場合に比べ、閉塞部14の洗浄性も高いということができる。
【0031】
よって、本実施形態に係る配管ラインの定置洗浄方法では、主流配管12、閉塞部14共にその洗浄効率を向上させることができ、配管ライン10全体の洗浄時間を短縮することが可能となる。なお、その他の作用効果については、上述した第1の実施形態に係る配管ラインの定置洗浄方法や、第2の実施形態に係る配管ラインの定置洗浄方法と同様である。
【0032】
また、上記それぞれの実施形態で説明した配管ラインの定置洗浄方法ではいずれも、主流配管12や閉塞部14を構成する配管のサイズ、洗浄液の流速等に応じて、フィルタ26の口径や、気体供給量を選択的に切り替えることを可能とすると良い。このようなフィルタ26の変更や、バルブ28の開閉によっても、洗浄効率の多寡が生じ、最適値を定めることもできるからである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の配管ラインの定置洗浄方法を実施するための配管ラインの構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0034】
10………配管ライン、12………主流配管、14………閉塞部、16………エッジ部、18………壁面、20………壁面、22………閉塞板、24………外部表示手段、26………フィルタ、28………バルブ、30………気泡供給手段、32………エア配管。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主流配管から分岐された閉塞部を有する配管ラインを定置洗浄する方法であって、
前記主流配管から前記閉塞部へ流入する洗浄液に対し、前記閉塞部内先端部で気泡を供給し、
前記閉塞部の内部で気液混合流を生成することを特徴とする配管ラインの定置洗浄方法。
【請求項2】
前記気泡の供給は、断続的または供給量を変化させながら行うことを特徴とする請求項1に記載の配管ラインの定置洗浄方法。
【請求項3】
前記閉塞部内へ供給した気泡が、前記主流配管へ向かうように前記気泡を吐出することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の配管ラインの定置洗浄方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−142752(P2009−142752A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−322753(P2007−322753)
【出願日】平成19年12月14日(2007.12.14)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】