説明

配管位置決め装置

【課題】製作が容易で、コスト安となると共に、作業性に優れたマンホール等の立坑に下水道管等の配管を固定する際に使用する配管位置決め装置を提供する。
【解決手段】配管位置決め装置30は、枠1に、2つの接触板2,2を備えており、この枠1の上下方向に移動可能な移動板3と、この移動板3から横穴の進行方向、即ち移動板3の板面から垂直方向に調節可能な配管置台4とを有している。移動板3には、枠1に設けられた2本のボルト5a,5bが、移動板3に設けられた2本のナット6a,6bに各々螺合している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンホール等の立坑に下水道管等の配管を固定する際に使用する配管位置決め装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、マンホールに下水道管を固定する場合には、図9に示すように、マンホール50に下水道管40の直径よりも大きな横穴41を開け、この横穴41と下水道管40との隙間42に楔43を打ち込んで仮固定し、レーザー水準器等を使用して位置決めした後、隙間42を埋めて固定していた。この場合、位置決めした後の土砂の埋め戻し作業で、楔43が外れてしまい、下水道管40が下方に落ちてしまうことがあった。
【0003】
また、下水道管の敷設工事に使用される配管位置決め装置として、水平器を装着したアーチ状本体の上梁部に、上下移動用ハンドルにより上下移動する昇降軸を螺嵌すると共に、横移動用ハンドルにより横移動する支持部を装設し、両柱部の下部に上下伸縮用ハンドルにより上下伸縮する伸縮脚を嵌設し、かつ、昇降軸の下端に、管用ベルトを巻き上げてパイプを締め付けるベルト調節器を装設した管固定体を回動自在に連設し、管固定体の対向側面の下縁を弧状にしたものが、知られている(特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】特開平9−41471号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述したとおり、楔を使用したものでは、土砂の埋め戻し作業時に楔が外れないようにする必要がある。万一、楔が外れた場合には、位置決め及び埋め戻し作業を最初からやり直す必要があるため、施工コストが高くなっていた。また、上記特許文献1に記載の配管位置決め装置は、横穴に設置されて、敷設される下水道管の位置決めを行うために使用されるものであり、マンホール等の立坑に入れるには大き過ぎ、仮に入れることができたとしても、下水道管の一端の外周を保持するためにはマンホールの内側に下水道管の一端を20センチ程度突出させなければならず、下水道管を固定した後に、この突出した部分を切断する作業が必要となるため作業性が悪くなり、コスト高となるため、マンホール内で下水道管を位置決めする場合には適していなかった。
【0006】
本発明は上記点に鑑み、製作が容易で、コスト安となると共に、作業性に優れたマンホール等の立坑に下水道管等の配管を固定する際に使用する配管位置決め装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、配管位置決め装置の発明であって、コンクリート等からなる立坑に開けられた横穴の壁面と接触可能な2つの接触板を備えた枠と、該枠の上下方向に移動可能な移動板と、該移動板から前記横穴の進行方向に延びる配管置台とを有し、前記配管置台にはナットが溶接されており、該ナットが移動板に溶接されているボルトに螺合することによって、配管置台が前後方向に移動して下水道管の端部の位置決めがなされ、前記2つの接触板の間隔を設置される下水道管の外径とほぼ同一の長さにすることによって、下水道管の横ぶれを防ぎ、前記移動板を上下方向に移動させることによって設置される下水道管の上下方向の位置決めがなされることに特徴を有する。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、移動板の上下方向の移動は、枠に設けられた2本のボルトと、移動板に設けられた2本のナットとによってなされることに特徴を有する。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明では、配管位置決め装置の発明であって、コンクリート等からなる立坑に開けられた横穴の壁面と接触可能な2つの接触板を備えた枠と、該枠の上下方向に移動可能な移動板と、該移動板から前記横穴の進行方向に延びる配管置台とを有し、前記配管置台にはナットが溶接されており、該ナットが移動板に溶接されているボルトに螺合することによって、配管置台が前後方向に移動して下水道管の端部の位置決めがなされ、前記2つの接触板の間隔を設置される下水道管の外径とほぼ同一の長さにすることによって、下水道管の横ぶれを防ぎ、前記移動板を上下方向に移動させることによって設置される下水道管の上下方向の位置決めがなされることに特徴を有するので、部品点数の少ないコンパクトな構成であるにも関わらず、立坑に開けられた横穴に下水道管等を配設する際に確実に位置決めすることができる。
【0010】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、移動板の上下方向の移動は、枠に設けられた2本のボルトと、移動板に設けられた2本のナットとによってなされることに特徴を有するので、ボルトとナットという安価な部品によって、位置決め時における上下方向の微調整を簡易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の配管位置決め装置を正面方向から見た場合の斜視図であり、図2は、背面方向から見た場合の斜視図である。図3は、本発明の配管位置決め装置の左側面図である。これらの図を用いて本発明の配管位置決め装置30を説明する。配管位置決め装置30は、枠1に、2つの接触板2,2を備えている。この2つの接触板2,2の間隔は、設置される下水道管の外径とほぼ同一の長さとなっており、設置される下水道管の横ぶれを防いでいる。そして、枠1には、この枠1の上下方向に移動可能な移動板3と、この移動板3から横穴の進行方向、即ち移動板3の板面から垂直方向に調節可能な配管置台4とを有している。
【0012】
移動板3には、枠1に設けられた2本のボルト5a,5bが、移動板3に設けられた2本のナット6a,6bに各々螺合しているので、2本のボルト5a,5bの頭を右回転又は左回転させることによって、移動板3の上下方向の移動(調節)がなされるのである。尚、2本のボルト5a,5bの端部に当接するように、下部が、板7b,7bによって塞がれた円筒管7a,7aが枠に溶接されており、この円筒管7a,7aは、ナット6a,6bよりも大きな穴となっており、後述する抜け止め片70aによってボルト5a,5bの抜け止めをしている。したがって、2本のボルト5a,5b自体は、右回転又は左回転させても上下方向に移動することはなく、移動板3がボルト5a,5bに沿って上下方向に移動するのである。
【0013】
配管置台4の円弧状の本体4aにはナット8が溶接されており、このナット8の端部にはボルト9が挿入可能な穴が開けられた配管端部位置決め板10が溶接されている。この配管端部位置決め板10に、設置される下水道管等の配管の端部を当接させることによって、配管の端部の位置決めがなされるのである。そして、配管置台4のナット8が、移動板3に溶接されているボルト9に螺合している。したがって、配管置台4を右回転又は左回転させることによって、ボルト9に沿って配管置台4の前後方向の移動(調節)がなされるのである。尚、配管置台4は、立坑に配設される下水道管等の配管の大きさに合わせて交換することができ、本体4aの円弧の形状は配管の直径に合わせて変更される。
【0014】
図4は、枠1を背面方向から見た斜視図である。枠1は、長方形状の平板1aと側板1bとが組み合わされてなるものであり、側板1bの上部にはボルト5a,5bが挿通可能な穴12,12が開けられている。また、平板1aには、立坑に開けられた横穴の壁面と接触可能な接触板2,2が溶接されている。この接触板2,2の近傍の平板1aと側板1bの角部に,下部が板7b,7bによって塞がれた円筒管7a,7aが溶接されている。
【0015】
図5は、移動板3の平面図である。移動板3は、平板3aの両端部に枠1に設けられた2本のボルト5a,5bと螺合する2本のナット6a,6bが溶接されており、平板3aの中央部分には、ボルト9が溶接されている。
【0016】
図6は、配管置台4の正面図である。配管置台4は、円弧状の本体4aにはナット8が溶接されており、このナット8の端部にはボルト9が挿入可能な穴が開けられた配管端部位置決め板10が溶接されている。そして、配管置台4のナット8が、移動板3に溶接されているボルト9に螺合するのである。
【0017】
図7は、ボルト5a,5bの平面図と、円筒管7aの斜視図である。ボルト5a,5bは、上述したように、移動板3の2本のナット6a,6bに各々螺合するものであり、移動板3の上下方向の高さの調節を行い、マンホール等の立坑の横穴に設置される下水道管等の配管の上下方向の位置を決めるものであるため、長尺なボルトを使用する。また、円筒管7aは、抜け止め溝70aがボルト5a,5bの溝50a,50bに対応する位置に設けられており、この抜け止め溝70aに金属クリップ等を差し込むことによって、ボルト5a,5bの抜け止めをしている。
【0018】
次に図8を使用して、本発明の配管位置決め装置30によって、マンホール等の立坑50の横穴に下水道管40等の配管を設置する手順を説明する。
第1に、立坑50の下方に設けられた横穴に本発明の配管位置決め装置30を設置し、2本の木棒32の一端を枠1に当て、木棒32の他端を立坑50の壁に当てて突っ張らせることで配管位置決め装置30を固定し、配管端部位置決め板10を前後方向に移動させることで、設置される下水道管の端部の位置決めが行われる。
第2に、レーザー水準器33を立坑50の底板34にセットする。
第3に、下水道管40と立坑50の横穴との隙間に耐震用接続部材31を設置する。
第4に、下水道管40を横穴に挿入し、下水道管40の内壁を配管位置決め装置30の配管置台4に当接させる。この時、接触板2,2の間隔は、設置される下水道管40の外径とほぼ同じ長さにしているので、設置される下水道管40の横ぶれが防止される。
第5に、配管位置決め装置30の2本のボルト5a、5bを回して下水道管40を上下方向に移動させ、レーザー水準器33に合わせて、位置決めを行う。
第6に下水道管40の反対側の端部に次の下水道管40をつなぎ、レーザー水準器33で位置決めされた高さで土を埋め戻して下水道管40が固定される。
第7に2本の木棒32を外して配管位置決め装置30を取り除く。
【0019】
尚、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の実施形態をとることができることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明の配管位置決め装置は、マンホール等の立坑の横穴に下水道管等の配管を設置する際の位置決めに使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の配管位置決め装置を正面方向から見た場合の斜視図。
【図2】本発明の配管位置決め装置を背面方向から見た場合の斜視図。
【図3】本発明の配管位置決め装置の左側面図。
【図4】枠を背面方向から見た斜視図。
【図5】移動板の平面図。
【図6】配管置台の正面図。
【図7】ボルトの平面図と円筒管の斜視図。
【図8】本発明の配管位置決め装置の使用例を示す図。
【図9】従来の楔による位置決め方法を示す図
【符号の説明】
【0022】
1 枠
2 接触板
3 移動板
4 配管置台
5a,5b,9 ボルト
6a,6b,8 ナット
7a 円筒管
7b 板
10 配管端部位置決め板
12 穴
30 配管位置決め装置
40 下水道管
41 横穴
42 隙間
43 楔
50 立坑

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート等からなる立坑に開けられた横穴の壁面と接触可能な2つの接触板を備えた枠と、該枠の上下方向に移動可能な移動板と、該移動板から前記横穴の進行方向に延びる配管置台とを有し、前記配管置台にはナットが溶接されており、該ナットが移動板に溶接されているボルトに螺合することによって、配管置台が前後方向に移動して下水道管の端部の位置決めがなされ、前記2つの接触板の間隔を設置される下水道管の外径とほぼ同一の長さにすることによって、下水道管の横ぶれを防ぎ、前記移動板を上下方向に移動させることによって設置される下水道管の上下方向の位置決めがなされることを特徴とする配管位置決め装置。
【請求項2】
移動板の上下方向の移動は、枠に設けられた2本のボルトと、移動板に設けられた2本のナットとによってなされることを特徴とする請求項1に記載の配管位置決め装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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