説明

配管内への塗料投入方法及び配管内壁の塗装方法

【課題】主管の内壁の塗装時に主管から枝分かれした支管内への塗料の入り込み量を低減して、塗料の有効利用を図れるようにした配管内への塗料投入方法及び配管内壁の塗装方法を提供すること。
【解決手段】主管11と該主管に枝分れする複数の支管12〜17を有する配管10内に塗料Tを投入する方法において、支管の端部を蓋18により閉塞した状態で、主管の一方の端部からイジェクタ50によって強制排気を行うと共に、主管の他方の端部に塗料を投入した後、支管の端部を開放し、更に当該開放した支管の端部に空気圧を加えて支管内に入り込んだ塗料を主管内に押し戻す。これにより、支管内への塗料の入り込み量を低減して、塗料の有効利用を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、配管内への塗料投入方法及び配管内壁の塗装方法に関するもので、更に詳細には、例えばビル等の構造物に既設された水道管、排水管あるいはガス管等の配管の内壁面を補修する配管内への塗料投入方法及び配管内壁の塗装方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ビル等の構造物に既設された水道管、排水管あるいはガス管等の配管は、主管と該主管に枝分かれする複数の支管とから構成されている。そのため、従来では、配管内壁の塗装方法として、例えば塗料供給装置(ライニングマシン)とコンプレッサとを用いて、例えばエポキシ樹脂と硬化剤とを混合した塗料を圧縮空気と共に配管内に投入、移動させることで、配管内壁に塗膜を形成する塗装方法が採用されている(例えば、特許文献1参照)。また、この種の塗装方法の一つとして、配管の一端に真空ポンプに接続される真空タンクを接続して、負圧により塗料を移動させて配管内壁を塗装する方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。この方法は、特にライニングマシンが故障等により使用不能な場合には特に有効な塗装方法である。
【特許文献1】特開2004−25143号公報(段落番号0022、図2)
【特許文献2】特許第3160354号公報(特許請求の範囲、図1、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許第3160354号公報に記載の技術においては、主管内に必要な量の塗料を投入しても、一部が支管内に入り込むため、主管全てに塗料が投入されず、結果として塗料を必要以上に多く使用する問題が生じる。それだけではなく、支管内に入り込む塗料の量は支管内の塗料に必要な量よりも多いため、余分な塗料は廃棄しなければならず、その分塗料の無駄が生じるばかりか、コストが嵩むという問題があった。
【0004】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたのもので、主管の内壁の塗装時に支管内への塗料の入り込み量を低減して、塗料の有効利用を図れるようにした配管内への塗料投入方法及び配管内壁の塗装方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、請求項1記載の配管内への塗料投入方法は、主管と該主管に枝分れする複数の支管を有する配管内に塗料を投入する方法であって、 上記支管の端部を閉塞した状態で、上記主管の一方の端部から強制排気を行うと共に、主管の他方の端部に塗料を投入した後、上記支管の端部を開放し、更に当該開放した支管の端部に空気圧を加えて支管内に入り込んだ塗料を上記主管内に押し戻す、ことを特徴とする。この場合、上記主管の他方の端部に塗料を投入した後、支管の端部の開放前に、塗料を投入した主管端部を閉塞する方が好ましい(請求項2)。
【0006】
請求項1,2記載の発明において、支管の端部に空気圧を加える際、主管の端部は強制排気を行ってもよく、あるいは、強制排気を止めて開放した状態のいずれであってもよい。
【0007】
請求項1記載の発明によれば、支管の端部を閉塞した状態で、主管の一方の端部から強制排気を行うと共に、主管の他方の端部に塗料を投入した後、支管の端部を開放して、当該開放した支管の端部に空気圧を加えて支管内に入り込んだ塗料を主管内に押し戻すことができる。この場合、支管の端部の開放前に、塗料を投入した主管端部を閉塞することにより、主管の端部からの強制排気による吸引力を開放した支管端部に集中して、支管内に入り込んだ塗料を主管内に押し戻すことができる(請求項2)。
【0008】
また、請求項3記載の発明は、請求項2記載の配管内への塗料投入方法において、上記各支管の端部を開放し、空気圧を加えた後に再び閉塞し、塗料を投入した主管端部を再び開放して空気圧を加える、ことを特徴とする。
【0009】
このように構成することにより、支管から押し戻されて塗料投入側の主管端部付近に逆流した塗料を主管内に移動することができる。
【0010】
また、請求項4記載の配管内への塗料投入方法は、主管と該主管に枝分れする複数の支管を有する配管内に塗料を投入する方法であって、上記支管の端部を、該支管の直径に対して2.5%〜15%の貫通孔を有する蓋で閉塞した状態で、上記主管の一方の端部から強制排気を行うと共に、主管の他方の端部に塗料を投入する、ことを特徴とする。この場合、上記支管の直径が20mmに対して、上記貫通孔の直径を0.5mm〜3mmとすることができる(請求項5)。
【0011】
このように構成することにより、各支管の端部は僅かに外気と連通された状態で、主管の一方の端部から強制排気を行うと共に、主管の他方の端部に塗料を投入するので、支管内への塗料の入り込みを阻止することができる。ここで、貫通孔の直径を支管の直径に対して2.5%〜15%{支管の直径が20mmに対して、貫通孔の直径0.5mm〜3mm}とした理由は、貫通孔の直径が支管直径に対して2.5%{支管直径が20mmの場合に対して、貫通孔の直径が0.5mm}より小さいと、外気との連通が不十分となり、塗料が支管内に入り込んでしまい、また、貫通孔の直径が支管直径に対して15%{支管直径が20mmの場合に対して、貫通孔の直径が3mm}より大きいと、強制排気に必要な力が非常に大きくなり、強制排気装置によっては主管内を塗料が移動しなくなり、作業効率上適当でないからである。
【0012】
なお、請求項4記載の発明において、強制排気時に支管内に適当な量の外気を導入できるものであれば、貫通孔を有する蓋に代えてメッシュを有するものであってもよい。この場合、メッシュの開口率を貫通孔の直径0.5mm〜3mmに相当する開口率とする必要があり、例えば支管の直径は一般に20mmであるので、メッシュの開口率は0.62%〜2.25%とすればよい。
【0013】
また、請求項6記載の発明は、請求項1ないし5のいずれかに記載の配管内への塗料投入方法において、上記強制排気にイジェクタを用いることを特徴とする。
【0014】
このように構成することにより、強制排気に真空ポンプ等の専用の装置を用いることなく、通常の塗装作業に使用されるエアコンプレッサ等のパイプライニングに必要な設備のみで強制排気を行うことができる。
【0015】
また、請求項7記載の配管内壁の塗装方法は、請求項1ないし6のいずれかに記載の配管内への塗料投入方法を用いて配管内に塗料を投入した後、上記主管の一方の端部に整形用ボールを投入し、更に空気圧を加えて該整形用ボールを配管内で移動させることにより配管内壁を塗装することを特徴とする。
【0016】
このように構成することにより、塗料が投入された主管内に整形用ボールを投入し、空気圧を加えて該整形用ボールを主管及び支管からなる配管内で移動させることにより配管内壁を塗装することができる。
【0017】
また、請求項8記載の配管内壁の塗装方法は、請求項1ないし6のいずれかに記載の配管内への塗料投入方法を用いて配管内に塗料を投入した後、支管端部を開放して塗料を投入後、上記主管の一方の端部に整形用ボールを投入し、更に空気圧を加えて該整形用ボールを配管内で移動させることにより配管内壁を塗装することを特徴とする。この場合、上記開放された支管の端部に塗料を投入する際、主管を強制排気するか、又は支管端部に空気圧を加える方が好ましい(請求項9)。
【0018】
このように構成することにより、配管内に塗料を投入した後に、支管端部を開放して塗料を投入し、その後に主管の一方の端部に整形用ボールを投入して空気圧を加えて該整形用ボールを配管内で移動させることにより配管内壁を塗装することができる。この場合、開放された支管の端部に塗料を投入する際、主管を強制排気するか、又は支管端部に空気圧を加えることにより、整形用ボールの配管内での移動を円滑にすることができる(請求項8)。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、次のような優れた効果が得られる。
【0020】
(1)請求項1記載の発明によれば、主管内に投入された塗料が支管内に入り込んだ場合でも、支管内に入り込んだ塗料を主管内に押し戻すことができるので、塗料の無駄を省くことができると共に、塗料の有効利用を図ることができる。
【0021】
(2)請求項2記載の発明によれば、主管の端部からの強制排気による吸引力を開放した支管端部に集中して、支管内に入り込んだ塗料を主管内に押し戻すことができるので、上記(1)に加えて、更に吸引力が弱くても塗料の主管への押し戻しを効率良く行うことができ、動力の省力化を図ることができる。
【0022】
(3)請求項3記載の発明によれば、支管から押し戻されて塗料投入側の主管端部付近に逆流した塗料を主管内に移動することができるので、上記(1),(2)に加えて、更に塗料を均一に主管内に投入することができる。
【0023】
(4)請求項4,5記載の発明によれば、各支管の端部は僅かに外気と連通された状態で、主管の一方の端部から強制排気を行うと共に、主管の他方の端部に塗料を投入するので、支管内への塗料の入り込みを阻止することができるので、塗料の無駄を省くことができると共に、塗料の有効利用を図ることができる。
【0024】
(5)請求項6記載の発明によれば、強制排気に真空ポンプ等の専用の装置を用いることなく、通常の塗装作業に使用されるエアコンプレッサ等のパイプライニングに必要な設備のみで強制排気を行うことができるので、塗装設備を簡略化する事ができると共に、塗装作業を容易にすることができる。
【0025】
(6)請求項7記載の発明によれば、塗料が投入された主管内に整形用ボールを投入し、空気圧を加えて該整形用ボールを主管及び支管からなる配管内で移動させることにより配管内壁を塗装することができるので、上記(1)〜(5)に加えて、更に配管内壁の塗装を効率よく行うことができる。
【0026】
(7)請求項8記載の発明によれば、配管内に塗料を投入した後に、支管端部を開放して塗料を投入し、その後に主管の一方の端部に整形用ボールを投入して空気圧を加えて該整形用ボールを配管内で移動させることにより配管内壁を塗装することができるので、上記(1)〜(5)に加えて、更に配管内壁の塗装を効率よく行うことができる。この場合、開放された支管の端部に塗料を投入する際、主管を強制排気するか、又は支管端部に空気圧を加えることにより、整形用ボールの配管内での移動を円滑にすることができるので、更に配管内壁の塗装を効率よく行うことができる(請求項9)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下に、この発明の最良の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0028】
図1は、この発明に係る配管内壁の塗装装置の一例を示す概略構成図である。
【0029】
上記塗装装置は、主管11と、この主管11から枝分かれされる複数例えば第1〜第5の支管12〜16とからなる水道用の配管10の場合に適用できるように構成されている。
【0030】
上記塗装装置は、上記主管11の一方の端部に着脱可能に連結される塗料貯留ホッパ40と、主管11の他方の端部に着脱可能に連結される強制排気手段であるイジェクタ50と、各支管12〜16の端部に着脱可能に装着される塗料受止め手段20と、この塗料受止め手段20を介して各支管12〜16の開口部に着脱可能に連結する供給管31〜35と、これら供給管31〜35を介して各支管12〜16内に空気圧例えば圧縮空気を供給するコンプレッサ60と、各供給管31〜35に介設されて圧縮空気の供給圧を調整する圧力調整弁V1〜V5(圧力調整手段)及び供給圧を検出する圧力計71〜75(圧力検出手段)を具備してなる。
【0031】
また、コンプレッサ60は圧縮空気供給管36を介して上記イジェクタ50の一次側に接続されており、圧縮空気供給管36には圧力調整弁V6と圧力計76(圧力検出手段)が介設されている。
【0032】
なお、上記主管11の開口部には、上記ホッパ40を取り外した状態で、整形用ボール例えば発泡シリコン製のボールにて形成されるピグ80が挿入可能になっている(図7参照)。
【0033】
また、主管11の開口部及び各支管12〜16の開口部に装着された上記塗料受止め手段20には、必要に応じて上記供給管31〜35と選択的に回収ホース90が着脱可能に連結されるように構成されている(図3参照)。
【0034】
上記塗料受止め手段20は、図2に示すように、主管11及び各支管12〜16(図面では支管12で代表する)の開口部に螺合する主管11の内径と略同径の通路21を有する大径管体22と、この大径管体22の開口部22aに螺合する通路21より小径の通路23を有する小径管体24とからなり、圧縮空気は通過するが、ピグ80の通過を阻止し得るように構成されている。また、支管12〜17に装着される塗料受止め手段20の小径管体24の開口部24a外周には、各供給管31〜35の先端部に装着されたワンタッチ式のカプラ25が着脱可能に連結されると共に(図2(b)参照)、留め具26をもって回収ホース90が着脱可能に連結されるように構成されている(図3参照)。
【0035】
上記のように構成される塗装装置によれば、上記支管12〜16の端部を閉塞した状態で、上記主管11の一方の端部からイジェクタ50によって強制排気を行うと共に、主管11の他方の端部に連結されるホッパ40から塗料を投入した後、支管12〜16の端部を開放し、更に当該開放した支管12〜16の端部に空気圧を加えて支管12〜16内に入り込んだ塗料を主管11内に押し戻して、主管11全体に塗料を投入することができる。
【0036】
また、この発明に係る塗装装置によれば、上述のようにして、主管11内に塗料を投入した後、主管11の端部からホッパ40を取り外した状態で、ピグ80を主管11内に投入(挿入)し、空気圧を加えてピグ80を配管10内で移動させて配管内壁を塗装することができる。
【0037】
以下に、この発明に係る配管内への塗料投入方法及び配管内壁の塗装方法について、図4ないし図8を参照して説明する。
【0038】
<塗料投入方法A>
塗料投入方法Aは、図4に示すように、まず、各支管12〜16の端部を蓋18で閉塞した状態で、主管11の一方の端部からイジェクタ50によって強制排気を行うと共に、主管11の他方の端部に塗料Tを投入した後、支管12〜16のうちの塗料投入側に近い支管12の端部を開放し、更に当該開放した支管12の端部に空気圧を加えて支管12内に入り込んだ塗料Tを主管11内に押し戻す。
【0039】
この場合、主管11の他方の端部に塗料Tを投入した後、支管12の端部の開放前に、塗料Tを投入した主管端部を、図4において二点鎖線で示すように、蓋18で閉塞する方が好ましい。これにより、支管12の端部からの空気圧を開放した支管端部に集中して、支管12内に入り込んだ塗料Tを主管11内に押し戻すことができる。
【0040】
また、支管12〜16の端部に空気圧を加える際、主管11の端部は強制排気を行ってもよく、あるいは、強制排気を止めて開放した状態のいずれであってもよい。ただ、強制排気を行う場合には、イジェクタ50内に塗料Tが入り込む虞があるので、イジェクタ50の空気圧を調整するなどしてイジェクタ50内への塗料Tの入り込みを阻止する必要がある。一方、強制排気を止めて開放した状態では、強制排気による気流がないので、塗料Tが逆流して投入端部に戻る虞があるので、予め主管11の塗料投入端部を閉塞する必要がある。
【0041】
上記のようにして、塗料投入側に近い順の支管12〜16の端部を順次開放し、開放した支管12〜16の端部に空気圧を加えて支管12〜16内に入り込んだ塗料Tを主管11内に押し戻す。
【0042】
なお、支管12〜16のうち塗料投入側から離れた位置のものには塗料Tの入り込みのないものもある。したがって、空気圧を加えて入り込んだ塗料Tを主管11内に押し込むべき支管と、そうでないものを区別する必要がある。このような区別の方法の1つとして、塗料Tを投入する配管の図面及び配管内に投入する塗料Tの量により判断する方法が挙げられる。また、別の区別の方法として、塗料Tを投入後、投入端部から最も近い支管端部より開放して空気圧を加えた際、その圧力計71〜75の動きを見て判別する。つまり、塗料Tが入り込んでいるなら空気圧投入と同時に圧力が上昇し、塗料Tが押し戻されると圧力が低下し、塗料Tが入り込んでいないと圧力上昇が鈍く或いは無くなるので、この状態を見て判別(区別)する。この判別方法において、ある支管で塗料Tが入り込んでないと判断すれば、それより遠い位置の支管に塗料Tの入り込みは無いと判断する。
【0043】
<塗料投入方法B>
塗料投入方法Bは、図5(a)に示すように、まず、各支管12〜16の端部を蓋18で閉塞した状態で、主管11の一方の端部からイジェクタ50によって強制排気を行うと共に、主管11の他方の端部に塗料Tを投入した後、支管12〜16の端部の開放前に、塗料Tを投入した主管端部を蓋18で閉塞し、支管12〜16のうちの塗料投入側に近い支管12の端部を開放し、更に当該開放した支管12の端部に空気圧を加えて支管12内に入り込んだ塗料Tを主管11内に押し戻す。その後、各支管12〜16の端部を開放し、空気圧を加えた後に再び閉塞し(図5(b)参照)、塗料Tを投入した主管端部を再び開放して空気圧を加える(図5(c)参照)。これにより、支管12から押し戻されて塗料投入側の主管端部付近に逆流した塗料Tを主管11内に移動することができる。
【0044】
上記のようにして、塗料投入側に近い順の支管12〜16の端部を順次開放し、開放した支管12〜16の端部に空気圧を加えて支管12〜16内に入り込んだ塗料Tを主管11内に押し戻す。
【0045】
<塗料投入方法C>
塗料投入方法Cは、図6に示すように、支管12〜16の端部を直径0.5mm〜3mmの貫通孔19を有する蓋18Aで閉塞した状態で、主管11の一方の端部からイジェクタ50によって強制排気を行うと共に、主管11の他方の端部に塗料Tを投入する方法である。なお、支管12〜16及び主管11は、一般に直径20mmのものが使用されている。なお、支管12〜16の直径に関係なく、支管12〜16の直径に対して、貫通孔19の直径を2.5%〜15%としてもよい。
【0046】
このようにすることにより、各支管12〜16の端部は僅かに外気と連通された状態で、主管11の一方の端部から強制排気を行うと共に、主管11の他方の端部に塗料Tを投入するので、支管12〜16内への塗料Tの入り込みを阻止することができる。
【0047】
なお、強制排気時に支管12〜16内に適当な量の外気を導入できるものであれば、貫通孔19を有する蓋18Aに代えてメッシュを有するものであってもよい。この場合、メッシュの開口率を貫通孔19の直径0.5mm〜3mmに相当する開口率とする必要があり、例えば支管の直径は一般に20mmであるので、メッシュの開口率は0.62%〜2.25%とすればよい。
【0048】
<塗装方法>
次に、この発明に係る配管内壁の塗装方法について説明する。
【0049】
上記配管内への塗料投入方法A〜Cを用いて配管内に塗料Tを投入した後、図7に示すように、主管11の塗料投入側端部にピグ80を投入した後、更に空気圧を加えてピグ80を配管内で移動させることにより配管内壁を塗装する。また、図8に示すように、主管11の塗料投入側端部にピグ80を投入した後、支管端部を開放して塗料Tを投入し、その後、更に空気圧を加えてピグ80を配管内で移動させることにより配管内壁を塗装する。この場合、開放された支管12〜16の端部に塗料Tを投入する際、イジェクタ50によって主管11を強制排気するか、又は支管端部に空気圧を加える方が好ましい。
【0050】
なお、各支管12〜16を塗装する場合は、例えば、選択された支管端部に必要な量の塗料Tを投入した後、該支管の開口部にピグ80を投入すると共に、空気圧を加える一方、選択された他の1つの主管11又は支管端部の開口を僅かに開放し、かつ、残りの支管端部の開口を閉止又は空気圧より小さな圧力の空気圧を供給することにより、ピグ80を主管11及び支管12〜16内を往復移動させて、配管内壁を塗装することができる。
【0051】
この発明に係る配管内壁の塗装方法によれば、塗料Tが投入された主管内にピグ80を投入し、空気圧を加えてピグ80を配管(主管11,支管12〜16)内で移動させることにより配管内壁を塗装することができる。
【0052】
また、主管11を強制排気するか、又は支管端部に空気圧を加えることにより、ピグ80の配管内での移動を円滑にすることができる。
【実施例】
【0053】
以下に、この発明に係る配管内への塗料投入方法の評価試験について説明する。
【0054】
実験に当って、実際の配管を想定して、図9に示すように、直径20mmのパイプを組み立て、試験用配管とする。この場合、主管Pの長さ:6m、支管同士の間隔:1m、塗料投入側から最も遠い支管P4から強制排気端部200までの長さ:2mとする。また、主管Pを地面に対して平行(X方向)に配置し、塗料投入端部100に最も近い支管P1は、地面に対して垂直(Z方向)にし、2番目に近い支管P2は、地面に対して平行(Y方向)にし、また、3番目,4番目に近い支管P3,P4も支管P2と同様に、地面に対して平行(Y方向)にしてある。
【0055】
<比較例1>
上記のように組み立てられた配管の各支管端部を閉塞して、強制排気を行いながら、塗料投入端部100から塗料を投入した。このときの塗料の投入量は1600gであった。この投入量は、長さ6mの主管P内全てに塗料を投入するには十分な量であった。
【0056】
しかし、実際には、塗料は支管P4を過ぎた箇所(塗料投入端部100より410cm)で止まってしまい、それ以遠に塗料は投入されなかった。
【0057】
一方、支管P1,P2,P3には多くの塗料が入り込んでいることが判った。その量は、表1に示すとおりである。
【表1】

【0058】
支管P4には殆ど塗料は入り込んでいなかったが、支管P1,P2,P3に入り込んだ塗料は、内壁に付着しているだけでなく、支管そのものを閉塞していることが支管端部を開放しての観察により判った。この傾向は特に支管P2,P3で顕著であった。
【0059】
なお、支管P1の閉塞は殆どなかった。これは支管P1が地面に対して垂直(Z方向)に配置されているためと推測される。
【0060】
<比較例2>
上記のようにして塗料投入端部100から塗料を投入し、その後、塗料投入端部を閉塞した後、支管P1,P2,P3各々について端部を開放し、強制排気端部200のイジェクタを再び作動させて、支管P1,P2,P3内に入り込んだ塗料を主管内に押し戻そうと試みたが、殆ど効果はなかった。
【0061】
<実施例1>
上記比較例2において、強制排気端部200のインジェクタを外し支管端部に空気圧を加えたところ、支管P1,P2,P3内の塗料は押し戻され、主管全てに塗料を投入することができた。
【0062】
このときの支管P2,P3の状態は表2に示すとおりである。
【表2】

【0063】
加圧後も支管P1,P2,P3内に残っている塗料と、ピグ80を用いて配管内を塗装した。
【0064】
塗料投入端部100と支管P2を残して他は全て閉塞し、塗料投入端部100よりピグ80を投入後、空気圧を加え、ピグ80を支管P2に移動させることで支管P2の内壁を塗装した。支管P3も同様の手順で塗装を行った。
【0065】
なお、塗料の入り込みの少ない支管P1、入り込みのなかった支管P4については、各支管端部より塗料(200〜300g程度)及びピグ80を投入後、その端部及び強制排気端部200を残して閉塞し、空気圧を加えてピグ80を各支管端部から強制排気端部200に移動させることで塗装を行った。
【0066】
<実施例2>
上記と同様に試験用配管を組み立て、各支管端部を閉塞し、強制排気を行いながら塗料投入端部より塗料を投入する。このとき、各支管端部の閉塞用の蓋18A(図6参照)に直径0.5mmの貫通孔19をあけ、外気とある程度の通気を可能にした。
【0067】
その結果、表3に示すような結果が得られ、各支管P1〜P4に入り込む塗料の量は減少し、主管全てに塗料を投入することができた。その後、各支管端部より塗料(200〜300g程度)及びピグ80を投入後、その端部及び強制排気端部200を残して閉塞し、空気圧を加えてピグ80を各支管端部から強制排気端部200に移動させることで、各支管内に塗料を塗装することができた。
【表3】

【0068】
上記試験を行った後に支管端部を開放して観察したところ、支管P1〜P4に入り込んだ塗料は内壁に付着しているのみで、支管そのものを閉塞していないことが判った。
【0069】
なお、貫通孔19の直径を大きくすることで、上記試験結果と同等かそれ以上の効果が得られたが、貫通孔19の直径が3mmを超えると、塗料の主管内への投入そのものがイジェクタの能力不足により困難になった。したがって、貫通孔19の直径は、0.5mm〜3mmの範囲であることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】この発明に係る配管内壁の塗装装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】この発明における塗料受止め手段の装着前の状態を示す断面図(a)及び装着状態を示す断面図(b)である。
【図3】この発明における回収ホースの連結状態を示す断面図である。
【図4】この発明に係る配管内の塗料投入方法を示す概略断面図である。
【図5】この発明に係る配管内の塗料投入方法の別の形態の手順を示す概略断面図である。
【図6】この発明に係る配管内の塗料投入方法の更に別の形態を示す概略断面図である。
【図7】この発明に係る配管内壁の塗装方法を示す概略断面図である。
【図8】この発明に係る配管内壁の塗装方法を示す概略断面図である。
【図9】試験用配管を示す概略斜視図である。
【符号の説明】
【0071】
10 配管
11 主管
12〜17 支管
18,18A 蓋
19 貫通孔
50 イジェクタ
60 コンプレッサ
80 ピグ(整形用ボール)
T 塗料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主管と該主管に枝分れする複数の支管を有する配管内に塗料を投入する方法であって、
上記支管の端部を閉塞した状態で、上記主管の一方の端部から強制排気を行うと共に、主管の他方の端部に塗料を投入した後、上記支管の端部を開放し、更に当該開放した支管の端部に空気圧を加えて支管内に入り込んだ塗料を上記主管内に押し戻す、ことを特徴とする配管内への塗料投入方法。
【請求項2】
請求項1記載の配管内への塗料投入方法において、
上記主管の他方の端部に塗料を投入した後、支管の端部の開放前に、塗料を投入した主管端部を閉塞する、ことを特徴とする配管内への塗料投入方法。
【請求項3】
請求項2記載の配管内への塗料投入方法において、
上記各支管の端部を開放し、空気圧を加えた後に再び閉塞し、塗料を投入した主管端部を再び開放して空気圧を加える、ことを特徴とする配管内への塗料投入方法。
【請求項4】
主管と該主管に枝分れする複数の支管を有する配管内に塗料を投入する方法であって、
上記支管の端部を、該支管の直径に対して2.5%〜15%の貫通孔を有する蓋で閉塞した状態で、上記主管の一方の端部から強制排気を行うと共に、主管の他方の端部に塗料を投入する、ことを特徴とする配管内への塗料投入方法。
【請求項5】
請求項4記載の配管内への塗料投入方法において、
上記支管の直径が20mmに対して、上記貫通孔の直径を0.5mm〜3mmとする、ことを特徴とする配管内への塗料投入方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の配管内への塗料投入方法において、
上記強制排気にイジェクタを用いることを特徴とする、配管内への塗料投入方法。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の配管内への塗料投入方法を用いて配管内に塗料を投入した後、上記主管の一方の端部に整形用ボールを投入し、更に空気圧を加えて該整形用ボールを配管内で移動させることにより配管内壁を塗装することを特徴とする、配管内壁の塗装方法。
【請求項8】
請求項1ないし6のいずれかに記載の配管内への塗料投入方法を用いて配管内に塗料を投入した後、支管端部を開放して塗料を投入後、上記主管の一方の端部に整形用ボールを投入し、更に空気圧を加えて該整形用ボールを配管内で移動させることにより配管内壁を塗装することを特徴とする、配管内壁の塗装方法。
【請求項9】
請求項8記載の配管内壁の塗装方法において、
上記開放された支管の端部に塗料を投入する際、主管を強制排気するか、又は支管端部に空気圧を加える、ことを特徴とする配管内壁の塗装方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−229691(P2007−229691A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−58248(P2006−58248)
【出願日】平成18年3月3日(2006.3.3)
【出願人】(303013811)日軽パネルシステム株式会社 (47)
【Fターム(参考)】