説明

配管接続構造

【課題】小型化を図ることができる配管接続構造を提供する。
【解決手段】コネクタ10は、筒状の一端から筒内部にパイプ体50が挿入され、パイプ体50の先端筒部51が他端から飛び出した状態でパイプ体50を係止し、筒状の他端から外周面に樹脂チューブ40の拡径部42を外装させて拡径部42を係止する。シール部材30は、コネクタ10の他端の端面より軸方向外側であって、コネクタ10の他端の端面とパイプ体50の外周面と樹脂チューブ40の拡径部42の内周面とにより囲まれる空間60に配置され、パイプ体50の外周面と該外周面に対向する拡径部42の内周面とに径方向に挟まれることによりパイプ体50の外周面および拡径部42の内周面との間にてシールする。さらに、コネクタ10の内周面のうち他端側とパイプ体50の外周面とは、当接した状態またはシール部材30を介在せずに隙間を有する状態で配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイプ体と樹脂チューブをコネクタによって接続する配管接続構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、パイプ体と樹脂チューブをコネクタによって接続する配管接続構造として、例えば、特開2001−141156号公報(特許文献1)および特開2002−122281号公報(特許文献2)に記載されたものがある。これらは、部品点数を少なくすると共に、小型化を図ることができるコネクタが適用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−141156号公報
【特許文献2】特開2002−122281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、さらに小型化を図ることができる配管接続構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、
筒状のパイプ体と、
筒状に形成されたチューブ本体部と、前記チューブ本体部の一端開口側に一体的に設けられ前記チューブ本体部の内径より拡径した内径に形成され且つ前記パイプ体の先端筒部の外径よりも大きな内径に形成された拡径部と、を有する樹脂チューブと、
筒状に形成され、前記筒状の一端から筒内部に前記パイプ体が挿入され、前記パイプ体の前記先端筒部が前記筒状の他端から飛び出した状態で前記パイプ体を係止し、前記筒状の他端から前記筒状の外周面に前記樹脂チューブの前記拡径部を外装させて前記拡径部を係止するコネクタと、
前記コネクタの前記他端の端面より軸方向外側であって、前記コネクタの前記他端の端面と前記パイプ体の外周面と前記樹脂チューブの前記拡径部の内周面とにより囲まれる空間に配置され、前記パイプ体の外周面と該外周面に対向する前記拡径部の内周面とに径方向に挟まれることにより前記パイプ体の外周面および前記拡径部の内周面との間にてシールするシール部材と、
を備え、
前記コネクタの内周面のうち前記他端側と前記パイプ体の外周面とは、当接した状態または前記シール部材を介在せずに隙間を有する状態で配置されている。
【0006】
本発明によれば、シール部材が、コネクタの他端の端面より軸方向外側であって、コネクタの他端の端面とパイプ体の外周面と樹脂チューブの拡径部の内周面とにより囲まれる空間に配置されている。そして、シール部材は、パイプ体の外周面とコネクタの内周面との間に介在しないようにしている。ここで、従来の配管接続構造においては、シール部材が、パイプ体の外周面とコネクタの内周面との間に配置され、両者に対してシールする構造となっている。これに対して、本発明によれば、上述したようにシール部材を配置することで、コネクタの内径をパイプ体の外径とほぼ同一に設定することができる。従って、コネクタの外径を小さくすることができる。そして、シール部材がパイプ体の外周面と樹脂チューブの拡径部の内周面との対向空間に配置されているため、十分なシール性能を有する。このように、本発明によれば、配管接続部位において径方向の小型化を図りつつ、パイプ体と樹脂チューブとの接続部位において確実にシールすることができる。
【0007】
また、前記コネクタの前記他端の端面には、凹状または凸状に形成されたコネクタ側係合部を有し、前記シール部材の一端の端面には、前記コネクタ側係合部に嵌り合うように凸状または凹状に形成されたシール部材側係合部を有するようにしてもよい。
ここで、本発明の配管接続構造における接続工程は、次のように行われる。まず、コネクタの他端の端面にシール部材を配置する。続いて、樹脂チューブの拡径部をコネクタの他端側からコネクタの外周面に外装する。その後に、パイプ体をコネクタの筒内部に挿入して、終了する。
【0008】
樹脂チューブの拡径部をコネクタの他端側からコネクタの外周面に外装する際に、シール部材がコネクタに対して位置決めされていないと、シール部材の位置ずれが生じるおそれがある。場合によっては、シール部材が樹脂チューブの拡径部の内周面全周に亘って当接していないおそれがある。しかし、本発明のように、コネクタ側係合部とシール部材側係合部とが嵌り合うようにすることで、確実にコネクタに対してシール部材を位置決めすることができる。これにより、樹脂チューブを嵌め込む際に、シール部材がずれることを防止できる。
【0009】
また、前記コネクタ側係合部および前記シール部材側係合部は、環状に形成されるようにしてもよい。これにより、確実に、コネクタに対してシール部材を位置決めすることができる。
【0010】
ここで、上述したように、本発明の配管接続構造における接続工程において、樹脂チューブをコネクタの外周側に嵌め込むことが行われる。そして、樹脂チューブの拡径部の内周面とのシール性を確保するために、シール部材は樹脂チューブの拡径部の内周面に当接している。そのため、樹脂チューブの拡径部をコネクタの外周側に嵌め込む際には、シール部材が樹脂チューブとの摩擦力によってコネクタの外周面と樹脂チューブの拡径部の内周面との間に噛み込むおそれがある。そうすると、シール部材が位置ずれを起こし、最終的に取り付けられた状態において、確実なシール性能を発揮できないおそれがある。
【0011】
そこで、前記コネクタの前記他端の端面のうち外縁部および前記シール部材の前記一端の端面のうち外縁部は、前記コネクタの軸方向に直交する平面状に形成され、前記コネクタの前記他端の端面の外径は、前記シール部材の前記一端の端面の外径に対して同一にまたは小さく設定され、前記コネクタの前記他端の端面のうち外縁部と前記シール部材の前記一端の端面のうち外縁部は、当接するようにするとよい。
【0012】
これにより、樹脂チューブの拡径部をコネクタの外周側に嵌め込む際に、シール部材の一端の端面のうち外縁部がコネクタの他端の端面の外縁部に規制され、シール部材がコネクタの外周面と樹脂チューブの拡径部の内周面との間に噛み込むことを確実に防止できる。
【0013】
また、前記拡径部は、前記チューブ本体部との接続部位において階段状に形成されて奥端面を有し、前記シール部材は、前記コネクタの前記他端の端面および前記奥端面に当接するようにしてもよい。
これにより、コネクタおよび樹脂チューブに対してシール部材を確実に位置決めすることができる。さらに、シール部材は、パイプ体の外周面および樹脂チューブの拡径部の内周面との間でのシール力に加えて、コネクタの他端の端面と樹脂チューブの拡径部の奥端面との間でのシール力を発揮する。これにより、シール性能をより向上することができる。
【0014】
また、前記コネクタの内周面のうち前記他端側は、前記パイプ体を前記コネクタに挿入する際に前記パイプ体の外周面をガイドするようにしてもよい。このことは、シール部材が、パイプ体の外周面とコネクタの内周面のうち他端側との間に介在していないことをより明確化することを意味する。これにより、上述したように、配管接続構造として小型化を図ることができると共に、パイプ体をコネクタに挿入する際に挿入しやすさが向上する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第一実施形態:配管接続完了状態を示す図である。
【図2】第一実施形態:樹脂チューブ40の軸方向断面図である。
【図3】第一実施形態:コネクタ10の正面図である。
【図4】図3の右側面図である。
【図5】図3の左側面図である。
【図6】図3の背面図である。
【図7】図4のA−A断面図である。
【図8】図4のB−B断面図である。
【図9】図3のC−C断面図である。
【図10】図3のD−D断面図である。
【図11】図3のE−E断面図である。
【図12】第一実施形態:シール部材30の軸方向断面図である。
【図13】第一実施形態:配管接続構造の接続工程を示す図であり、(a)はシール部材配置工程、(b)は樹脂チューブ接続工程、(c)はパイプ体挿入工程を示す。
【図14】第二実施形態:コネクタ110の軸方向断面図である。
【図15】第二実施形態:シール部材130の軸方向断面図である。
【図16】第二実施形態:配管接続完了状態を示す図である。
【図17】第三実施形態:コネクタ210の軸方向断面図である。
【図18】第三実施形態:配管接続完了状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の配管接続構造を具体化した実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0017】
<第一実施形態>
(配管接続構造の概要説明)
第一実施形態の配管接続構造の概要について、図1を参照して説明する。図1は、パイプ体50と樹脂チューブ40とをコネクタ10を介して接続する配管接続構造における接続完了状態を示す図である。図1に示すように、配管接続構造は、筒状のパイプ体50と、チューブ本体部41と拡径部42とを有する樹脂チューブ40と、筒状のコネクタ10と、環状のシール部材30とを備えて構成される。
【0018】
コネクタ10の一端(図1の右側)から筒内部にパイプ体50を挿入して、コネクタ10は、パイプ体50の先端筒部51がコネクタ10の筒状の他端(図1の左側)から飛び出した状態で、パイプ体50を係止する。一方、コネクタ10の他端(図1の左側)から筒状の外周面に樹脂チューブ40の拡径部42を外装させて、コネクタ10は、拡径部42を係止する。
【0019】
このとき、コネクタ10の他端の端面より軸方向外側(図1の左側)であって、コネクタ10の他端の端面(樹脂チューブ側端面)とパイプ体50の外周面と樹脂チューブ40の拡径部42の内周面とにより囲まれる空間60が形成される。この空間60に、環状のシール部材30が配置されている。シール部材30は、パイプ体50の外周面とパイプ体50の外周面に対向する樹脂チューブ40の拡径部42の内周面とに径方向に挟まれることによりパイプ体50の外周面および樹脂チューブ40の拡径部42の内周面との間にてシールする。そして、コネクタ10の内周面のうち他端側の部分とパイプ体50の外周面とは、当接した状態またはシール部材30を介在せずに隙間を有する状態で配置されている。
【0020】
(配管接続構造の各構成部材の説明)
以下、各構成部材について詳細に説明する。まず、パイプ体50について図1を参照して説明する。パイプ体50は、金属または樹脂により筒状に形成されている。パイプ体50は、当該パイプ体50の先端に位置する先端筒部51と、先端筒部51の基端に位置し先端筒部51の外径Dp1よりも大きな外径Dp2に形成された環状係止突部52とを有する。
【0021】
続いて、樹脂チューブ40について、図2を参照して説明する。図2は、樹脂チューブ40をコネクタ10に外装する前の状態における軸方向断面図である。樹脂チューブ40は、円筒状に形成されたチューブ本体部41と、チューブ本体部41の一端開口側(図2の右側)に一体的に設けられチューブ本体部41の内径Dh1より拡径した内径Dh2を有する円筒状に形成され、且つ、パイプ体50の先端筒部51の外径Dp1よりも大きな内径Dh2に形成された拡径部42とを有して構成される。この樹脂チューブ40の拡径部42は、チューブ本体部41との接続部位において階段状に形成されて奥端面42aを有する形状をなしている。この奥端面42aは、樹脂チューブ40の軸方向に直交する平面状に形成されている。
【0022】
続いて、コネクタ10について、図3〜図11を参照して説明する。コネクタ10は、全体として筒状に形成されている。コネクタ10は、樹脂により形成されている。このコネクタ10は、コネクタ本体部11とパイプ体係止部21とを一体的に形成して構成される。
【0023】
コネクタ本体部11は、筒状に形成され、コネクタ本体部11の内周面は軸方向にDc1となる円筒状に形成されている。コネクタ本体部11の筒内部にパイプ体50の先端筒部51が挿入できるように、コネクタ本体部11の内径Dc1は、パイプ体50の先端筒部51の外径Dp1と同一または外径Dp1よりも僅かに大きく形成されている。コネクタ本体部11の内周面は、パイプ体50の先端筒部51を挿入する際にパイプ体50の先端筒部51のガイドとしての機能を発揮する。
【0024】
コネクタ本体部11の外周面には、軸方向に複数の環状鋭突起12が形成されている。なお、本実施形態においては2個の環状鋭突起12を図示しているが、1個でもよいし、3個以上であってもよい。環状鋭突起12による樹脂チューブ40の係止力に応じて適宜変更されるものである。
【0025】
そして、環状鋭突起12が形成されているコネクタ本体部11の外周面には、樹脂チューブ40の拡径部42を圧入により外装し、環状鋭突起12により樹脂チューブ40の抜けを規制している。さらに、コネクタ本体部11のチューブ側端面13のうち外縁部(径方向外側縁部を意味する)は、コネクタ10の軸方向に直交する平面状に形成されている。このコネクタ本体部11のチューブ側端面13の外径Dc2は、シール部材30のコネクタ側端面31の外径Ds2と同一または外径Ds2よりも僅かに小さく形成されている。また、コネクタ本体部11のチューブ側端面13の外径Dc2は、樹脂チューブ40の拡径部42が挿入可能となるように、樹脂チューブ40の拡径部42の内径Dh2と同一または僅かに小さく形成されている。
【0026】
さらに、コネクタ本体部11のチューブ側端面13には、凹溝14が形成されている。凹溝14は、本実施形態においては、チューブ側端面13の全周に亘って環状に形成されている。この凹溝14は、シール部材30の位置決め効果を奏する。凹溝14は、周方向において断続的な凹部としてもよいが、環状であることが位置決め効果をより効果的に発揮できる。
【0027】
パイプ体係止部21は、全体としては筒状に形成されている。このパイプ体係止部21は、パイプ体50の先端筒部51および環状係止突部52を挿入する開口筒部22を有すると共に、パイプ体50の環状係止突部52に対して軸方向に係止することでパイプ体50をコネクタ10に係止することができる。パイプ体係止部21は、開口筒部22と、一対の内方係止爪部23,23と、一対の操作爪24,24と、切欠溝部25とを備えて構成される。開口筒部22は、パイプ体50の環状係止突部52が挿入可能な内径を有している。
【0028】
一対の内方係止爪部23,23は、開口筒部22の奥側(図3,図8の左側)に設けられ、開口筒部22の内周面よりも径方向内方に突出している。一対の内方係止爪部23,23は、パイプ体50の先端筒部51の外径Dp1よりも大きく、かつ、パイプ体50の環状係止突部52の外径Dp2よりも小さく形成されている。従って、パイプ体50がパイプ体係止部21の開口筒部22から挿入された場合に、内方係止爪部23,23は、パイプ体50の先端筒部51を通過させた後に、パイプ体50の環状係止突部52に対して軸方向に係合する。ここで、一対の内方係止爪部23,23は、その先端側が開口筒部22に対して径方向外方に弾性変形可能となるように開口筒部22に支持されている。そして、一対の内方係止爪部23,23の内側面は、開口筒部22側から奥側に向かって、滑らかに縮径する形状に形成されている。従って、パイプ体50の環状係止突部52によって軸方向に押し当てられることで、一対の内方係止爪部23,23の先端側が径方向外方に弾性変形して、環状係止突部52を通過可能とする。
【0029】
一対の操作爪24,24は、それぞれの内方係止爪部23,23の基端部からそれぞれ外部に延在して、それぞれの内方係止爪部23,23に一体的に設けられている。一対の操作詰め24,24は、平行となるように形成されている。一対の操作爪24,24を相互に近づけるように操作すると、一対の内方係止爪部23,23の先端側が径方向外方に弾性変形する。つまり、一対の操作爪24,24を上記のように操作することで、パイプ体50の環状係止突部52と一対の内方係止爪部23,23との軸方向の係止が解除され、パイプ体50をコネクタ10から離脱することができるようになる。
【0030】
切欠溝部25は、一対の内方係止爪部23,23の軸方向奥側(図3,図8の左側)に形成されており、一対の内方係止爪部23,23を通過したパイプ体50の環状係止突部52が位置決めされる。この切欠溝部25にパイプ体50の環状係止突部52が位置すると、切欠溝部25の奥側(図3,図8の左側)に位置するコネクタ本体部11のパイプ挿入側端面15に対してパイプ体50の環状係止突部52が軸方向に係合する状態となる。また、切欠溝部25にパイプ体50の環状係止突部52が位置すると、切欠溝部25の開口筒部22側に位置する一対の内方係止爪部23,23に対してパイプ体50の環状係止突部52が軸方向に係合する状態となる。つまり、パイプ体50の環状係止突部52が切欠溝部25に位置する状態で、パイプ体50はコネクタ10に対して位置決めされる。
【0031】
シール部材30について図12を参照して説明する。シール部材30は、ゴムまたは樹脂により円環状に形成される。シール部材30の軸方向断面形状は、矩形状に対して一端面から突起を有する形状に形成されている。シール部材30は、内径Ds1および外径Ds2を有する形状に形成されている。このシール部材30の内径Ds1は、パイプ体50の先端筒部51の外径Dp1よりも僅かに小さく形成され、且つ、コネクタ10のコネクタ本体部11の内径Dc1より僅かに小さく形成されている。これにより、シール部材30の内周面は、パイプ体50の先端筒部51の外周面に確実に当接する。
【0032】
また、シール部材30の外径Ds2は、樹脂チューブ40の拡径部42の内径Dh2より僅かに大きく形成され、且つ、コネクタ10のコネクタ本体部11のチューブ側端面13の外径Dc2と同一または僅かに大きく形成されている。さらに、シール部材30における図12の右端面の内縁部(径方向内方縁部)および外縁部(径方向外方縁部)は、シール部材30の軸方向に直交する平面状に形成されている。一方、シール部材30における図12の左端面の外縁部は、湾曲した面取りが形成されている。これは、樹脂チューブ40の拡径部42を挿入しやすくするためである。
【0033】
そして、シール部材30の図12の右端面のうち径方向中央部において、軸方向に向かって突出する突起32が形成されている。この突起32は、周方向全体に亘って環状に形成されている。突起32の径方向幅は、突起32がコネクタ本体部11の凹溝14に嵌合できるように、コネクタ本体部11の凹溝14の径方向幅と同程度且つ同径位置に形成されている。なお、凹溝14を周方向に断続的に形成した場合には、突起32を凹溝14に対応する位相にて断続的に形成することになる。
【0034】
(配管接続工程)
次に、上述した各構成部材10,30,40,50の配管接続工程について、図13(a)(b)(c)を参照して説明する。まず、図13(a)に示すように、コネクタ10のコネクタ本体部11のチューブ側端面13に、シール部材30を同軸上に配置する。このとき、コネクタ本体部11の凹溝14にシール部材30の突起32が嵌合するようにして、シール部材30をコネクタ10に対して位置決めする。環状の突起32が環状の凹溝14に嵌合することによって、シール部材30はコネクタ10に対して径方向に対してずれないように位置決めされる。
【0035】
続いて、図13(a)の状態におけるシール部材30を配置したコネクタ10に対して、シール部材30を配置している側、すなわち図13(b)の左側から、樹脂チューブ40の拡径部42を外装する。このとき、樹脂チューブ40の拡径部42の内径Dh2は、シール部材30の外径Ds2よりも小さいため、樹脂チューブ40の拡径部42の内周面がシール部材30の外周面に当接しながら、樹脂チューブ40がシール部材30の外周面に外装される。このとき、シール部材30の突起32がコネクタ本体部11の凹溝14に嵌合しているため、樹脂チューブ40の拡径部42をシール部材30の外周面に装着する際に、シール部材30が位置ずれを生じることを防止できる。従って、シール部材30は、図13(b)に示す状態を維持できる。
【0036】
また、樹脂チューブ40の拡径部42の内径Dh2は、コネクタ本体部11の環状鋭突起12の外径よりも小さく形成されている。従って、樹脂チューブ40の拡径部42は、塑性変形しながら環状鋭突起12を通過する。これにより、コネクタ本体部11の環状鋭突起12は、樹脂チューブ40の拡径部42に対して軸方向に係止する力を発揮し、コネクタ10に樹脂チューブ40が軸方向に係止される。このとき、樹脂チューブ40の拡径部42の奥端面42aは、シール部材30の端面に当接した状態となっている。つまり、シール部材30は、コネクタ本体部11のチューブ側端面13と樹脂チューブ40の拡径部42の奥端面42aとにより軸方向に挟まれて配置されている。
【0037】
続いて、図13(b)の状態に対して、図13(c)に示すように、パイプ体50をコネクタ10のパイプ体係止部21の開口筒部22側から挿入する。パイプ体50をコネクタ10の筒内部に挿入すると、パイプ体50の環状係止突部52がコネクタ10の一対の内方係止爪部23,23に対して軸方向に係合する。さらに、パイプ体50を図13(c)の左側に挿入することで、一対の内方係止爪部23,23の先端側が径方向外方に弾性変形して、パイプ体50の環状係止突部52を通過可能とする。そして、パイプ体50は、図13(c)に示す位置まで進む。ここで、パイプ体50の先端筒部51は、コネクタ本体部11の内周面にガイドされながら進行していく。
【0038】
そうすると、パイプ体50の環状係止突部52が、コネクタ10のコネクタ本体部11のパイプ挿入側端面15と、パイプ体係止部21の一対の内方係止爪部23,23とに対して軸方向両方向に係止され、コネクタ10に対して位置決めされる。この状態において、パイプ体50の先端筒部51の先端側は、コネクタ本体部11のチューブ側端面13よりも軸方向外方に飛び出した状態となる。つまり、パイプ体50の先端筒部51の先端側は、シール部材30が配置されている軸方向位置まで進行し、シール部材30の内周面に当接する。
【0039】
つまり、シール部材30は、コネクタ10のコネクタ本体部11のチューブ側端面13より軸方向外側(図13(a)の左側)であって、コネクタ本体部11のチューブ側端面13と、パイプ体50の外周面と、樹脂チューブ40の拡径部42の内周面と、樹脂チューブ40の拡径部42の奥端面42aとにより囲まれる空間60に配置されていることになる。そして、シール部材30は、パイプ体50の外周面とパイプ体50の外周面に対向する樹脂チューブ40の拡径部42の内周面とに径方向に挟まれることにより、パイプ体50の外周面および樹脂チューブ40の拡径部42の内周面との間にてシールする。さらに、シール部材30は、コネクタ本体部11のチューブ側端面13と樹脂チューブ40の拡径部42の奥端面42aとにより軸方向に挟まれることにより、コネクタ本体部11のチューブ側端面13と樹脂チューブ40の拡径部42の奥端面42aとの間にてシールする。従って、確実なシール性能を発揮する。
【0040】
特に、シール部材30の突起32がコネクタ本体部11の凹溝14に嵌合することにより、樹脂チューブ40を外装する際にコネクタ10に対するシール部材30の位置ずれが生じないようにできるため、シール部材30の位置ずれによるシール性能の低下を防止できる。つまり、確実なシール性能を発揮できる。
【0041】
上述した配管接続構造によれば、シール部材30が、空間60に配置されていると共に、コネクタ10のコネクタ本体部11の内周面とパイプ体50の外周面とが、シール部材30を介在せずに位置している。後者について具体的には、コネクタ10のコネクタ本体部11の内周面とパイプ体50の外周面とは、当接した状態、または、シール部材30を介在せずに隙間を有する状態で配置されている。
【0042】
これにより、コネクタ10のコネクタ本体部11の内径Dc1をパイプ体50の先端筒部51の外径Dp1とほぼ同一に設定することができる。従って、コネクタ10の外径を小さくすることができる。従って、本実施形態によれば、配管接続部位において径方向の小型化を図りつつ、パイプ体50と樹脂チューブ40との接続部位において確実にシールすることができる。
【0043】
さらに、本実施形態によれば、コネクタ10のコネクタ本体部11のチューブ側端面13のうち外縁部およびシール部材30のうちコネクタ本体部11に対向する端面のうち外縁部は、コネクタ10の軸方向に直交する平面状に形成され、コネクタ10のコネクタ本体部11のチューブ側端面13の外径Dc2は、シール部材30の当該端面の外径Ds2に対して同一にまたは小さく設定され、コネクタ10のコネクタ本体部11のチューブ側端面13のうち外縁部とシール部材30の当該端面のうち外縁部は、大部分において当接するようにしている。これにより、樹脂チューブ40の拡径部42をコネクタ10のコネクタ本体部11の外周側に嵌め込む際に、シール部材30の端面のうち外縁部がコネクタ本体部11のチューブ側端面13の外縁部に規制され、シール部材30がコネクタ本体部の外周面と樹脂チューブ40の拡径部42の内周面との間に噛み込むことを確実に防止できる。なお、シール部材30の外縁部は、コネクタ本体部11のチューブ側端面13に当接していない部分が僅かに存在しているが、僅かであるためほとんど影響はない。
【0044】
<第一実施形態の変形態様>
第一実施形態において、シール部材30に突起32を形成し、コネクタ本体部11のチューブ側端面13に凹溝14を形成したが、凹凸を逆に設けても良い。つまり、シール部材30に凹溝を形成し、コネクタ本体部11のチューブ側端面13に突起を形成するようにしてもよい。この場合も上記と同様の効果を奏することができる。ただし、成型状の観点から、シール部材30の材料としてゴム材料を用いた場合には、ゴム材料の微小な凹溝を形成することは、樹脂に凹溝を形成する場合に比べて容易ではない。そこで、コネクタ10に凹溝を形成する方がより成型しやすい。
【0045】
また、第一実施形態においては、樹脂チューブ40の拡径部42の奥端面42aをシール部材30に当接するものとしたが、これに限られるものではない。すなわち、シール部材30を樹脂チューブ40の拡径部42の奥端面42aに対して離間した位置に配置してもよい。ただし、第一実施形態にて説明したように、シール部材30を樹脂チューブ40の拡径部42の奥端面42aに当接することにより、よりシール性能を向上することができると共に、シール部材30の軸方向の位置決め効果も有する。
【0046】
<第二実施形態>
第二実施形態の配管接続構造について、図14〜図16を参照して説明する。第一実施形態と同一構成については同一符号を付して説明を省略する。図14に示すように、第二実施形態におけるコネクタ110のコネクタ本体部111のチューブ側端面113の形状および外周面のうちチューブ側端面13側の端部が、第一実施形態と相違する。すなわち、チューブ側端面113は、環状鋭突起12のテーパを延長した形状をなしている。そして、チューブ側端面113の外径は、シール部材130の外径より、第一実施形態に比べてさらに小さくしている。
【0047】
さらに、図15に示すように、第二実施形態においては、シール部材130のうち突起32を形成する端面のうち外縁部に、もう一つの環状の突起132が形成されている。この突起132の内周面は、先端側に向かって拡径するテーパ状に形成されている。具体的には、突起132の内周面は、コネクタ110のコネクタ本体部111の外周面のうちチューブ側端面113側の端部のテーパ状に対応する形状に形成されている。
【0048】
このような形状とすることで、図16に示すように、シール部材130をコネクタ本体部111のチューブ側端面113に当接した場合に、シール部材130の突起132がコネクタ本体部111の外周面の端部のテーパ面に当接した状態となる。つまり、シール部材130の突起32,132が、コネクタ本体部111に対して径方向に係合することになる。これにより、シール部材130がコネクタ本体部111に対して径方向への位置決め効果をより発揮する。従って、樹脂チューブ40をシール部材130およびコネクタ本体部111に外装する際に、シール部材130がコネクタ本体部111に対して位置ずれを生じることを防止できる。
【0049】
<第三実施形態>
第三実施形態の配管接続構造について、図17〜図18を参照して説明する。第一実施形態と同一構成については同一符号を付して説明を省略する。図17に示すように、第三実施形態におけるコネクタ210は、第一実施形態の凹溝14を形成しない形状としている。また、シール部材230は、図18に示すように、円形状とし、弾性変形により楕円形状に変形している。この場合、小型化については、第一実施形態と同様の効果を奏する。
【符号の説明】
【0050】
10:コネクタ、 11:コネクタ本体部、 12:環状鋭突起
13:チューブ側端面、 14:凹溝、 15:パイプ挿入側端面
21:パイプ体係止部、 22:開口筒部、 23:内方係止爪部
24:操作爪、 25:切欠溝部
30:シール部材、 31:コネクタ側端面、 32:突起
40:樹脂チューブ、 41:チューブ本体部、 42:拡径部、 42a:奥端面
50:パイプ体、 51:先端筒部、 52:環状係止突部、 60:空間
110:コネクタ、 111:コネクタ本体部、 113:チューブ側端面
130:シール部材、 132:突起
210:コネクタ、 230:シール部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のパイプ体と、
筒状に形成されたチューブ本体部と、前記チューブ本体部の一端開口側に一体的に設けられ前記チューブ本体部の内径より拡径した内径に形成され且つ前記パイプ体の先端筒部の外径よりも大きな内径に形成された拡径部と、を有する樹脂チューブと、
筒状に形成され、前記筒状の一端から筒内部に前記パイプ体が挿入され、前記パイプ体の前記先端筒部が前記筒状の他端から飛び出した状態で前記パイプ体を係止し、前記筒状の他端から前記筒状の外周面に前記樹脂チューブの前記拡径部を外装させて前記拡径部を係止するコネクタと、
前記コネクタの前記他端の端面より軸方向外側であって、前記コネクタの前記他端の端面と前記パイプ体の外周面と前記樹脂チューブの前記拡径部の内周面とにより囲まれる空間に配置され、前記パイプ体の外周面と該外周面に対向する前記拡径部の内周面とに径方向に挟まれることにより前記パイプ体の外周面および前記拡径部の内周面との間にてシールするシール部材と、
を備え、
前記コネクタの内周面のうち前記他端側と前記パイプ体の外周面とは、当接した状態または前記シール部材を介在せずに隙間を有する状態で配置されていることを特徴とする配管接続構造。
【請求項2】
請求項1において、
前記コネクタの前記他端の端面には、凹状または凸状に形成されたコネクタ側係合部を有し、
前記シール部材の一端の端面には、前記コネクタ側係合部に嵌り合うように凸状または凹状に形成されたシール部材側係合部を有する配管接続構造。
【請求項3】
請求項2において、
前記コネクタ側係合部および前記シール部材側係合部は、環状に形成される配管接続構造。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項において、
前記コネクタの前記他端の端面のうち外縁部および前記シール部材の前記一端の端面のうち外縁部は、前記コネクタの軸方向に直交する平面状に形成され、
前記コネクタの前記他端の端面の外径は、前記シール部材の前記一端の端面の外径に対して同一にまたは小さく設定され、
前記コネクタの前記他端の端面のうち外縁部と前記シール部材の前記一端の端面のうち外縁部は、当接する配管接続構造。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項において、
前記拡径部は、前記チューブ本体部との接続部位において階段状に形成されて奥端面を有し、
前記シール部材は、前記コネクタの前記他端の端面および前記奥端面に当接する配管接続構造。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか一項において、
前記コネクタの内周面のうち前記他端側は、前記パイプ体を前記コネクタに挿入する際に前記パイプ体の外周面をガイドする配管接続構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−13200(P2012−13200A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−152856(P2010−152856)
【出願日】平成22年7月5日(2010.7.5)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】