説明

配管洗浄時における洗浄時間算出方法、パラメータ値算出方法、および洗浄設計支援方法

【課題】設計段階における配管構造の洗浄性の予測を可能とする洗浄設計支援方法を提供する。
【解決手段】上記課題を解決するための洗浄設計支援方法は、洗浄対象とする配管構造をモデリングする工程と、モデリングした前記配管構造に対して洗浄剤を流入させた際の流速分布を求める工程と、前記配管構造において洗浄性予測対象とする箇所の流速を抽出する工程と、抽出された流速を含む複数のパラメータ値を、洗浄係数Kを算出するために立てられた数式に代入する工程と、算出された洗浄係数Kにより、洗浄前に洗浄性予測対象とする箇所に存在する汚れD0に対する洗浄後に洗浄性予測対象とする箇所に残存する汚れDの割合として表される相対残存率Rを除算して、目標とする洗浄効果を得るために必要とされる洗浄時間tを算出する工程とから成ることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管洗浄時における洗浄時間を算出する方法、並びに前記洗浄時間以外のパラメータ値を算出する方法、およびこれらの方法を利用して設計される配管の洗浄性を算出する洗浄設計支援方法に係り、特に食品や薬品等の製造プロセスに使用される設備の配管類を定置洗浄する際に、洗浄装置に設定される洗浄条件の選定に好適な方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品や薬品等の製造工場において特に、液体製品を製造するプロセスでは、微生物汚染や不要成分の付着等を防止するために、製品を移送した後の配管類は工程毎、あるいは定期的に洗浄されている。配管類の洗浄は汚れの種類や洗浄の目的等に応じて検討され、薬剤洗浄・殺菌処理が施され、適正な衛生管理がなされるようにその方法が考慮されている。なお、ここでいう汚れとは、製品移送後に残存するものや、不当な場所に存在するものを指し、汚染物質のみを指すものでは無い。
【0003】
ここで、配管類の汚れと洗浄条件の関係は定性的には知られている。例えば、Jenningsによる洗浄実験では、汚れが落ちる条件としてレイノルズ数を50000程度以上とするという事が報告されている。しかしながら、配管類の汚れと洗浄条件の関係は定量的に明確ではないため、その洗浄条件は経験的に定められてきた。近年、製造工程における配管類の洗浄は、分解洗浄では無く、いわゆる定置洗浄(CIP)が行われることが多い。このため、洗浄時間や洗浄液等の洗浄条件を作業者の経験等で定める場合には、安全性が考慮され、条件設定が過剰なものとなってしまうと共に、汚れの残存率等にもバラツキが生ずることとなるといった問題が生じていた。
【0004】
このような実状を鑑み、配管類の定置洗浄を自動で行う洗浄装置や方法が種々提案されており、例えば特許文献1や特許文献2に開示されている技術を挙げることができる。ここで、特許文献1に開示されている技術は特に、洗浄液による洗浄を行った後に、リンス液により洗浄液を洗い流す際の技術であり、リンス液の無駄と洗浄液の残存を防止することに関するものである。そして、特許文献2に開示されている技術は、使用後の洗浄液を人体等に無害なものとして、洗浄後の洗い流しといった手間を省くという技術に関するものである。
【特許文献1】特開2001−161264号公報
【特許文献2】特開2005−52803号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1、2に開示されているような技術を用いることによれば確かに、定量的に、バラツキの無い洗浄を行うことが可能となると考えられる。しかし、上記技術ではいずれも、洗浄対象とする配管類に複数のセンサ類を設けると共に、実際に洗浄を実施しなければ、その洗浄時間や汚れの残存率を把握することができないという問題があった。このため、限られた時間内に配管類の洗浄を行わなければ成らない場合には、洗浄液の濃度や流速、および温度等のパラメータの設定は、過剰なものとせざるを得ない。また、実際に洗浄を実施しなければその洗浄性も知ることができないために、施設完成後でなければ洗浄装置の選定の可否等を検討することができなかった。
【0006】
そこで本発明では、与えられた配管構造の洗浄を行う際に必要とされる複数のパラメータの中から選択した1のパラメータに対する任意の選択値、および既知の値として設定された他のパラメータに基づいて、前記1のパラメータに対する選択値を得るために必要とされる未知のパラメータを得ることのできる配管洗浄における洗浄時間算出方法、ならびにパラメータ値算出方法を提供すると共に、これらの算出方法を利用し、配管構造の設計段階における洗浄性の予測を可能とする洗浄設計支援方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係る配管洗浄における洗浄時間算出方法は、配管内部に洗浄剤を流し込み、当該流し込んだ洗浄剤の作用により前記配管内部に付着した汚れを洗浄する際に、目標とする洗浄効果を得るために必要とされる洗浄時間を算出する方法であって、前記配管の洗浄効率を示す洗浄係数を求める数式5を立て、
【数5】

数式5に対して前記洗浄剤の流速、温度、濃度を代入すると共に前記洗浄係数と前記洗浄剤の流速、温度、濃度との関係により予め求められた各パラメータのそれぞれを底とする洗浄係数の対数A1からA3、および入力値に対して一義的に定められる補正値A0、A4を代入して洗浄係数を算出する工程と、算出された洗浄係数により、洗浄前の配管に存在する汚れに対する洗浄後に配管に残存する汚れの割合として表される相対残存率を除算して、目標とする洗浄効果を得るために必要とされる洗浄時間を算出する工程とを有することを特徴とする。
【0008】
また、上記目的を達成するための本発明に係る配管洗浄におけるパラメータ値算出方法は、配管内部に洗浄剤を流し込み、当該流し込んだ洗浄剤の作用により前記配管内部に付着した汚れを洗浄する際に、定められた時間で目標とする洗浄効果を得るために必要とする洗浄剤のパラメータ値を算出する方法であって、洗浄時間として与えられた値により、洗浄前の配管に存在する汚れに対する洗浄後に配管に残存する汚れの割合として表される相対残存率を除算して得られる洗浄係数を求める工程と、この洗浄係数を数式6に代入すると共に洗浄剤の流速、温度、濃度のうちから選択した2つのパラメータ、並びに前記洗浄剤の流速、温度、濃度と前記洗浄係数との関係により予め求められた、各パラメータのそれぞれを底とする洗浄係数の対数A1からA3、および入力値に対して一義的に定められる補正値A0、A4を代入し、
【数6】

前記洗浄剤の流速、温度、濃度のうちから選択されなかった1つのパラメータの値を算出する工程とを有することを特徴とする。
【0009】
また、上記目的を達成するための本発明に係る洗浄設計支援方法は、洗浄対象とする配管構造をモデリングする工程と、モデリングした前記配管構造に対して洗浄剤を流入させた際の流速分布を求める工程と、前記配管構造において洗浄性予測対象とする箇所の流速を抽出する工程と、前記洗浄性予測対象とする箇所の洗浄効率を示す洗浄係数を求める数式7を立て、
【数7】

数式7に対して前記洗浄剤の流速、温度、濃度を代入すると共に前記洗浄係数と前記洗浄剤の流速、温度、濃度との関係により予め求められた各パラメータのそれぞれを底とする洗浄係数の対数A1からA3、および入力値に対して一義的に定められる補正値A0、A4を代入して洗浄係数を算出する工程と、算出された洗浄係数により、洗浄前に洗浄性予測対象とする箇所に存在する汚れに対する洗浄後に洗浄性予測対象とする箇所に残存する汚れの割合として表される相対残存率を除算して、目標とする洗浄効果を得るために必要とされる洗浄時間を算出する工程とから成ることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る洗浄設計支援方法は、洗浄対象とする配管構造をモデリングする工程と、モデリングした前記配管構造に対して洗浄剤を流入させた際の流速分布を求める工程と、前記配管構造において洗浄性予測対象とする箇所の流速を抽出する工程と、前記洗浄性予測対象とする箇所の洗浄時間として与えられた値により、洗浄前に洗浄性予測対象とする箇所に存在する汚れに対する洗浄後に洗浄性予測対象とする汚れの割合として表される相対残存率を除算して得られる洗浄係数を求める工程と、この洗浄係数と前記抽出した流速を数式8に代入すると共に洗浄剤の温度、濃度のうちからいずれか一方のパラメータ、並びに前記洗浄剤の流速、温度、濃度と前記洗浄係数との関係により予め求められた、各パラメータのそれぞれを底とする洗浄係数の対数A1からA3、および入力値に対して一義的に定められる補正値A0、A4を代入し、
【数8】

前記洗浄剤の温度、濃度のうちから選択しなかった他方のパラメータの値を算出する工程とを有することを特徴とするものであっても良い。
【発明の効果】
【0011】
上記のような配管洗浄における洗浄時間算出方法によれば、配管洗浄に用いる洗浄剤として選択された洗浄剤のパラメータにより、所望する洗浄効果を得るために必要とされる洗浄時間の算出を容易に行うことができる。また、上記のような配管洗浄におけるパラメータ値算出方法によれば、洗浄時間と、洗浄剤の流速、温度、濃度のうちから選択したいずれか2つのパラメータ値に基づいて、他の1つのパラメータ値を算出することが可能となる。
【0012】
また、上記のような洗浄設計支援方法によれば、シミュレーションにより洗浄性予測箇所を流れる洗剤の流速を導き出し、この流速を配管洗浄時のパラメータの1つとして洗浄時間の算出を行うため、配管構成の細部(例えば分岐管等)の洗浄が終了するまでの時間を、設計段階で算出することが可能となる。また、予め定めた洗浄時間と、シミュレーションにより導かれた流速に基づいて、洗浄剤における温度、または濃度を定める場合には、設計段階において設定されたポンプ等により吐出される洗浄剤の流速により、設定時間内に洗浄を終了させるために必要とされる洗浄剤のパラメータ値を算出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の配管洗浄時における洗浄時間算出方法、パラメータ値算出方法、および洗浄設計支援方法に係る実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0014】
まず、図6を参照して、本発明の洗浄設計支援方法を実施するためのシステム構成について説明する。
【0015】
本実施形態に係る洗浄設計支援方法は、実機を備えること無く、パーソナルコンピュータ(以下、PCと称す)10等のモニタ24上で洗浄性を予測することを可能とする。このため、システム構成としては例えば、PC10を構成する本体12と、モニタ24、及びキーボード26やマウス28等の入力手段30を有することを基本とする。
【0016】
前記本体12には少なくとも、CPU(Central Processing Unit)14、ハードディスク18、主メモリ16、表示メモリ20、及びインターフェース22等が構成要素として備えられている。そして、これらの構成要素は、バスを介して相互に接続されることで、構成要素間における各種データの受渡しが可能となるように構成されている。
【0017】
前記CPU14は、詳細を後述するハードディスク18や主メモリ16、表示メモリ20等に記憶されたプログラム等の制御や、データの計算、加工等を行う演算手段である。すなわち、ハードディスク18や主メモリ16等に記憶されたデータ等を受け取り、演算、加工した上でモニタ24に出力したり、再度ハードディスク18等に書き込む処理を行うのである。
【0018】
前記ハードディスク18は、記憶手段の1つであり、磁性体を被覆等したディスクと磁気ヘッドとによって構成され、一般的には容量の大きなプログラムやデータを記憶する際に利用されることが多い。本実施形態の場合、CADなどの設計ソフトやその他の描画ソフト、設計ソフトや描画ソフトにより描かれたモデルと連係可能な流体解析ソフト、およびこれらのソフトを総括可能なシミュレーションソフト等の基本ソフトの他、実験モデルを利用して取得した各種実験データ、並びにそのデータを利用した加工データ等が記憶されていれば良い。
【0019】
前記主メモリ16も記憶手段の1つである。ハードディスク18等の外部記憶手段との違いは、その構成要素として半導体素子が利用されていることである。そして、記録方法として電気的な手法が採られることより、データの読み出し及び書き込みを高速に行うことができ、CPU14から直接的にその実行を図ることができるという特徴を持つ。このため、一般的には、PC10を動作させるための基本プログラムや、一次的なデータの記憶に利用されることが多い。
【0020】
前記表示メモリ20は、前記主メモリ16の補助的な役割を担うメモリであり、本実施形態の場合は、表示手段としてのモニタ24に表示する画像データや数値データの配置や順番等を一時的に記憶するための記憶手段とすることができる。
【0021】
前記インターフェース22は本実施形態の場合、PC10における本体12と、表示手段としてのモニタ24、及び入力手段30としてのキーボード26やマウス28等との間での情報のやり取りを仲介するハードウェアインターフェースを示すものとする。
【0022】
次に、上記のような構成のシステム(PC10)を利用した配管洗浄における洗浄性の予測(洗浄時間の算出、洗浄剤のパラメータ値算出)の方法について説明する。
【0023】
上記のようなシステムではまず、構成された配管における洗浄性の予測を行う箇所のモデリングを行う。洗浄予測箇所のモデリングは、ハードディスク18に記憶されたCADソフト等を起動し、これを利用して新規に描いても良いし、配管構成に関する設計図面等が記憶されている場合にはこれを利用し、該当箇所を抜き出すようにしても良い。図2は、主管とこれに接続形成された分岐管を有する流路のモデルを示すものである。
【0024】
洗浄予測箇所のモデリングが終了した後、流体解析ソフト等、設計モデルに応じたシミュレーションを行うソフトを起動させる。シミュレーションソフトには、図4に示すように一次パラメータグループ入力スレッド54と、二次パラメータグループ入力スレッド56とを構成し、一次パラメータグループ入力スレッド54に入力された内容に基づくシミュレーションにより二次パラメータグループ入力スレッド56に入力するパラメータが導き出されるようにすると良い。シミュレーションソフトの構成をこのようなものとすることにより、シミュレーションに基づいて得られるデータに従ったフィードバック解析を行うことが可能となり、洗浄性予測の初期時において知りえない分岐管52内部の流速等を実験する事無しに得ることができるようになるからである。
【0025】
一次パラメータグループ入力スレッド54には、情報の1つとして知りえる主管50の流路における洗浄剤の流速(主管流速)、洗浄剤の温度(洗浄温度)、洗浄剤の種類(洗浄剤)、洗浄剤の濃度(洗浄剤濃度)、及び洗浄対象とする汚れの種類(対象汚れ種)等の入力項目が設けられている。
【0026】
そして、二次パラメータグループ入力スレッド56には、一次パラメータグループ入力スレッド54入力後のシミュレーションにより導き出すことができる洗浄性予測箇所の平均流速(予測箇所平均流速)、洗浄性予測箇所における配管壁面近傍の流速(予測箇所せん断力)、洗浄性予測箇所における洗浄効率(洗浄係数)等の入力項目の他、所望する洗浄時間を予め定めるための入力項目を設けるようにすると良い。なお、図4に示す形態では、平均流速とせん断力とを区別して入力項目としているが、分岐管52内部の流速分布は複雑となるため、入力項目として平均流速のみを使用するようにしても良い。
【0027】
また、洗浄係数は、洗浄結果とそれに要した洗浄時間とから求めることができるが、洗浄に用いる洗浄剤の流速や温度、濃度等のパラメータ値の変化と洗浄係数の変化との関係を予め求めておくことで、各パラメータの値に基づいて算出することも可能となる。例えば、実験値に基づいて洗浄係数を導き出す場合は、数式9によれば良い。
【数9】

ここで、Kは洗浄係数、tは洗浄時間、Rは汚れの相対残存率、Dは洗浄前に存在する汚れ、Dは洗浄後に残存する汚れを示す。つまり、洗浄係数Kを算出するには、相対残存率Rを洗浄時間tで除算すれば良い。
【0028】
一方、洗浄剤の流速、温度、および濃度といったパラメータ値から洗浄係数Kを導き出す場合には、数式10によれば良い。
【数10】

ここで、Vは洗浄剤の流速(せん断力)、Tは洗浄剤の温度、Cは洗浄剤のアルカリ濃度(濃度)を示し、A1からA3は実験により求まる対数であり、A0、A4は、計算により算出される洗浄係数Kと、実験値に基づいて定められる洗浄係数Kとを比較した場合における補正値である。
【0029】
A1からA3について詳細に説明すると、図7から図9に示すように、流速、温度、濃度についての変化量と、洗浄係数Kの変化量とをそれぞれ実験により導きだし、これをKに関する指数関数としてグラフに示すことにより導き出すことができる数値であり、各パラメータを底とする洗浄係数Kの対数である。また、A0、A4について詳細に説明すると、数式11によって導き出されるK’の値と、各パラメータを数式11に代入する数値と一致させた実験値におけるKとを比較した場合に生ずる両者の誤差を補正するための値(A0は乗数項の補正値、A4は加数項の補正値)であり、例えば洗浄剤の種別毎に一義的に定めておけば良い。
【数11】

【0030】
このようにして、洗浄係数Kを、実験値や計算値からそれぞれ導き出すことが可能となるように、各データをデータベース化してハードディスク18等に保存しておくことにより、数式10に対する洗浄剤のパラメータ値の入力から、洗浄に要する洗浄時間を算出することの他、洗浄時間の入力から洗浄剤のパラメータ値を算出することも可能となる。
【0031】
つまり、数式10により洗浄係数Kを算出した場合には、数式9におけるKに計算値を代入し、汚れの相対残存率Rとして所望する値を入力することで、設定されたパラメータ値において所望する洗浄結果を得るための洗浄時間tを算出することができる。一方、相対残存率R、及びこの洗浄結果を得るための洗浄時間tを予め定めた場合には、数式9に基づいて洗浄係数Kを導き出すことができる。その後、洗浄剤におけるパラメータ値の中から算出したいパラメータ値以外のパラメータ値、例えば流速Vを求めたい場合には、温度T、および濃度Cについて数式10に入力することで流速Vを算出することができる。
【0032】
算出された洗浄時間等の結果は、洗浄パターン毎にデータ保存し、データベース化することで、図5に示すようにグラフとして視認可能に表示するようにしても良い。
【0033】
以下、本発明の洗浄設計支援方法を上記システムを利用して実施する際の流れについて図1を参照して説明する。
【0034】
まず、設計ソフト等を起動させて洗浄性予測箇所のモデリングを行う(ステップ110:(図2参照))。次に、流体解析、シミュレーションソフトを起動し、一次パラメータグループ入力スレッド54内の入力項目を入力する(ステップ110(図4参照))。一次パラメータの入力終了後、シミュレーションの実行により、モデリングされた配管内部の流速ベクトルを出力する(ステップ120〜140:(図3参照))。シミュレーションによって導きだされた洗浄性予測箇所の流速(平均流速またはせん断力)を数式10に代入して洗浄係数Kを算出する(ステップ150)。算出された洗浄係数Kはモニタ24に出力される(ステップ160)。その後、算出された洗浄係数Kに基づいて洗浄性予測箇所の洗浄時間が数式9に基づいて算出される(ステップ170)。その後、洗浄時間tは、視覚的に読み取れる数値として、モニタ24等の表示手段に表示される(ステップ180)。
【0035】
洗浄時間の出力が終了した後、洗浄性予測を行う箇所のモデル変更がある場合には、再びステップ100に戻り、洗浄時間の算出が成される。一方、モデル変更が無い場合には終了する(ステップ190)。
【0036】
上記実施形態では、洗浄性予測箇所のモデリングをし、一次パラメータの入力を行い、シミュレーションにより二次パラメータを得ることで洗浄係数Kや洗浄時間tを算出する旨記載した。しかしながら、モデリング後、二次パラメータである洗浄係数Kや洗浄時間tを与え、洗浄剤の温度T、濃度Cを入力することで洗浄性予測箇所に必要とされる流速Vを算出し、シミュレーションにより主管流速を導き出すようにしても良い。なお、洗浄剤の温度T、濃度Cは、主管50と分岐管52との間で変化が無いので、シミュレーションをしない場合でも、数式10に基づいて算出することができる。
【0037】
上記のような洗浄設計支援方法を実施することによれば、配管構造の設計段階における洗浄性の予測を行うことができ、配管洗浄用に採用するポンプの選定や洗浄剤の選定等を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係る洗浄設計支援方法を実施する際の流れを示すフローチャートである。
【図2】設計ソフト等による配管モデルのモデリング例を示す図である。
【図3】モデリングしたモデルに対する流体解析の例を示す図である。
【図4】配管経路の洗浄性予測を行う際のパラメータ入力画面の一例を示す図である。
【図5】洗浄性を予測した複数のデータに基づいて表示されるグラフの例を示す図である。
【図6】線上設計支援方法を実施する際に利用するシステムの構成例を示す図である。
【図7】洗浄剤における流速の変化量と洗浄係数の変化量との関係を示すグラフである。
【図8】洗浄剤における温度の変化量と洗浄係数の変化量との関係を示すグラフである。
【図9】洗浄剤における濃度の変化量と洗浄係数の変化量との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0039】
10………PC、12………本体、14………CPU、16………主メモリ、18………ハードディスク、20………表示メモリ、22………インターフェース、24………モニタ、26………キーボード、28………マウス、30………入力手段、50………主管、52………分岐管、54………一次パラメータグループ入力スレッド、56………二次パラメータグループ入力スレッド。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管内部に洗浄剤を流し込み、当該流し込んだ洗浄剤の作用により前記配管内部に付着した汚れを洗浄する際に、目標とする洗浄効果を得るために必要とされる洗浄時間を算出する方法であって、
前記配管の洗浄効率を示す洗浄係数を求める数式1を立て、
【数1】

数式1に対して前記洗浄剤の流速、温度、濃度を代入すると共に前記洗浄係数と前記洗浄剤の流速、温度、濃度との関係により予め求められた各パラメータのそれぞれを底とする洗浄係数の対数A1からA3、および入力値に対して一義的に定められる補正値A0、A4を代入して洗浄係数を算出する工程と、
算出された洗浄係数により、洗浄前の配管に存在する汚れに対する洗浄後に配管に残存する汚れの割合として表される相対残存率を除算して、目標とする洗浄効果を得るために必要とされる洗浄時間を算出する工程とを有することを特徴とする配管洗浄時における洗浄時間算出方法。
【請求項2】
配管内部に洗浄剤を流し込み、当該流し込んだ洗浄剤の作用により前記配管内部に付着した汚れを洗浄する際に、定められた時間で目標とする洗浄効果を得るために必要とする洗浄剤のパラメータ値を算出する方法であって、
洗浄時間として与えられた値により、洗浄前の配管に存在する汚れに対する洗浄後に配管に残存する汚れの割合として表される相対残存率を除算して得られる洗浄係数を求める工程と、
この洗浄係数を数式2に代入すると共に洗浄剤の流速、温度、濃度のうちから選択した2つのパラメータ、並びに前記洗浄剤の流速、温度、濃度と前記洗浄係数との関係により予め求められた、各パラメータのそれぞれを底とする洗浄係数の対数A1からA3、および入力値に対して一義的に定められる補正値A0、A4を代入し、
【数2】

前記洗浄剤の流速、温度、濃度のうちから選択されなかった1つのパラメータの値を算出する工程とを有することを特徴とする配管洗浄時におけるパラメータ値算出方法。
【請求項3】
洗浄対象とする配管構造をモデリングする工程と、
モデリングした前記配管構造に対して洗浄剤を流入させた際の流速分布を求める工程と、
前記配管構造において洗浄性予測対象とする箇所の流速を抽出する工程と、
前記洗浄性予測対象とする箇所の洗浄効率を示す洗浄係数を求める数式3を立て、
【数3】

数式3に対して前記洗浄剤の流速、温度、濃度を代入すると共に前記洗浄係数と前記洗浄剤の流速、温度、濃度との関係により予め求められた各パラメータのそれぞれを底とする洗浄係数の対数A1からA3、および入力値に対して一義的に定められる補正値A0、A4を代入して洗浄係数を算出する工程と、
算出された洗浄係数により、洗浄前に洗浄性予測対象とする箇所に存在する汚れに対する洗浄後に洗浄性予測対象とする箇所に残存する汚れの割合として表される相対残存率を除算して、目標とする洗浄効果を得るために必要とされる洗浄時間を算出する工程とから成ることを特徴とする洗浄設計支援方法。
【請求項4】
洗浄対象とする配管構造をモデリングする工程と、
モデリングした前記配管構造に対して洗浄剤を流入させた際の流速分布を求める工程と、
前記配管構造において洗浄性予測対象とする箇所の流速を抽出する工程と、
前記洗浄性予測対象とする箇所の洗浄時間として与えられた値により、洗浄前に洗浄性予測対象とする箇所に存在する汚れに対する洗浄後に洗浄性予測対象とする汚れの割合として表される相対残存率を除算して得られる洗浄係数を求める工程と、
この洗浄係数と前記抽出した流速を数式4に代入すると共に洗浄剤の温度、濃度のうちからいずれか一方のパラメータ、並びに前記洗浄剤の流速、温度、濃度と前記洗浄係数との関係により予め求められた、各パラメータのそれぞれを底とする洗浄係数の対数A1からA3、および入力値に対して一義的に定められる補正値A0、A4を代入し、
【数4】

前記洗浄剤の温度、濃度のうちから選択しなかった他方のパラメータの値を算出する工程とを有することを特徴とする洗浄設計支援方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−296109(P2008−296109A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−143395(P2007−143395)
【出願日】平成19年5月30日(2007.5.30)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】