説明

配管洗浄用袋体及び配管洗浄方法

【課題】高い収縮性を有し、耐久性に優れた配管洗浄用袋体を得る。
【解決手段】配管洗浄用袋体1は、圧縮空気が供給されるバッグ部2と、そのバッグ部2に接続されるホース部3とからなる。バッグ部2は、縦断面が長円状を呈し、先絞りとなる後端が開口するゴム製の内バッグと、その内バッグと略同じ形状を有して内バッグを外側から被覆し、先細りとなる後端が開口するポリエステル製の外バッグと、その外バッグと略同じ形状を有し、外バッグを外側から被覆し、先細りとなる後端が開口するポリエステル製の最外バッグとからなる三重構造となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中に埋設された水道管等の配管の内面を洗浄するために用いられる配管洗浄用袋体と、当該袋体を用いた配管洗浄方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
地中に埋設した水道管等の配管内面を洗浄する方法として、例えば特許文献1に開示の如く、空気で膨らむ掃除具を利用した洗浄方法が知られている。この掃除具は、ゴム製の袋体の外周に金網を被覆してなり、洗浄方法は、折り畳んだ状態の掃除具を枝管を介して配管内に挿入し、圧縮空気を充填して掃除具を膨らませた後、配管内に水を流して掃除具を配管内で摺動させるものである。これにより、配管の内面に圧接される金網が水垢や錆等の異物を剥ぎ取ることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平4−66630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記掃除具は、外周に金網が被覆されるため収縮性は高くなく、圧縮空気を抜いた状態でも嵩張ってしまう。一般に水道管では、洗浄を行う配管に接続される枝管の呼び径は大きいものでも100mmと細くなっているため、配管の呼び径が300mmを超える場合、これに対応する大きさの掃除具では、収縮させても枝管への挿入が困難となる。よって、掃除具が使用できる配管の呼び径は75mm〜300mmにとどまっている。
また、金網越しに露出する内側の袋体が損傷するおそれがあり、耐久性にも問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、呼び径が300mmを超える配管であっても枝管を介して洗浄に使用できる高い収縮性を有し、而も耐久性に優れた配管洗浄用袋体と、その袋体を用いた配管洗浄方法とを提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、地中に埋設された配管内に挿入され、圧縮流体の供給によって膨らんで配管の内面を圧接し、配管内での流体の供給によって配管内を摺動して内面を洗浄する配管洗浄用袋体であって、圧縮流体が供給されるゴム製の内バッグと、その内バッグの全周を覆い、繊維質材料、樹脂材料、ゴム材料のうちの何れかで形成される少なくとも1つの外バッグとからなる多重構造としたことを特徴とするものである。
請求項2に記載の発明は、請求項1の構成において、内バッグに、配管内での摺動方向で全長に亘って等径となる筒状部を、配管の内径の1/2以上の長さで形成したことを特徴とするものである。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2の構成において、最外の外バッグを着脱可能としたことを特徴とするものである。
上記目的を達成するために、請求項4に記載の発明は、地中に埋設された配管内に、請求項1乃至3の何れかに記載の配管洗浄用袋体を挿入し、当該配管洗浄用袋体の内バッグに圧縮流体を供給して膨らませた後、配管内に流体を供給して配管洗浄用袋体を配管内で摺動させることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
請求項1及び4に記載の発明によれば、配管洗浄用袋体に高い収縮性が得られるため、呼び径が300mmを超える配管であっても細い枝管を通して配管の洗浄に使用できる。また、内バッグは外部に露出しないため、好適な耐久性が維持できる。
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の効果に加えて、内バッグに筒状部を形成したことで、配管洗浄用袋体が傾いて停止したり摺動速度が低下したりすることがなく、配管内での良好な摺動性が得られる。
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は2の効果に加えて、最外の外バッグを着脱可能としたことで、損傷した最外の外バッグを簡単に交換でき、配管洗浄に係る作業性が良好となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】配管洗浄用袋体の全体図である。
【図2】A部拡大図である。
【図3】配管洗浄用袋体の断面図である。
【図4】ホース部の拡大断面図である。
【図5】配管洗浄方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1に例示する配管洗浄用袋体(以下単に「袋体」という。)1は、圧縮空気が供給されるバッグ部2と、そのバッグ部2に接続されるホース部3とからなる。
まずバッグ部2は、図2に示すように、縦断面が長円状を呈し、先絞りとなる後端(ここでは図1の右側を前方、左側を後方とする。)が開口するゴム製の内バッグ4と、その内バッグ4と略同じ形状を有して内バッグ4を外側から被覆し、先細りとなる後端が開口するポリエステル製の外バッグ5と、その外バッグ5と略同じ形状を有し、外バッグ5を外側から被覆し、先細りとなる後端が開口するポリエステル製の最外バッグ6とからなる三重構造となっている。
また、内バッグ4の外面中央には、前後方向で全長に亘って等径となる筒状部7が形成されている。この筒状部7の前後方向の長さは、洗浄する配管の内径の1/2以上となっている。
【0010】
次に、ホース部3は、図3,4に示すように、後端にホースニップル9を接続して後述するエアホースが接続可能な高圧ホース8を有しており、この高圧ホース8の前端にバッグ部2が接続されている。ここでは各バッグ4〜6の開口端部は外側のバッグほど高圧ホース8の端部を長く覆うように形成されており、各バッグ4〜6の開口端部を高圧ホース8に重ねて外装し、外側から3つの固定バンド12〜14を巻回して接続する構造となっている。
【0011】
すなわち、3つのバッグ4〜6の開口端部が重なる前方部分では、先に外バッグ5の外側から固定リング10をカシメ固定した上で、同じ前後位置で最外バッグ6の外側から大径の固定バンド12を緊締し、2つのバッグ5,6の開口端部が重なる中間部分では、先に外バッグ5の外側から固定リング11をカシメ固定した上で、同じ前後位置で最外バッグ6の外側から中径の固定バンド13を緊締し、さらに、最外バッグ6の開口端部のみとなる後方部分では、小径の固定バンド14を緊締するものである。15は、高圧ホース8の前端に挿入されて固定リング10,11のカシメ時に高圧ホース8の圧潰を防ぐ芯金である。
【0012】
また、高圧ホース8には、ワイヤー16が挿入されている。このワイヤー16は、高圧ホース8の補強用で、後端はホースニップル9の端部際で、前端は高圧ホース8の前方で夫々両端に固着されたワイヤー止め17,17によって高圧ホース8の軸心で保持されている。ここでは各ワイヤー止め17の内側でワイヤー16に外装された複数のワッシャー18,18・・により、ワイヤー止め17による高圧ホース8の閉塞を防止している。さらに、高圧ホース8の前端には、内バッグ4の開口端部を内側から押さえるスリーブ19がカシメ固定されて、内バッグ4の軸方向へのずれを抑制している。
【0013】
こうして高圧ホース8にワイヤー16を挿入したことで、配管洗浄の実施の際に、エアホースを引っ張って配管内で袋体1を引き戻す際や、配管内での袋体1の摺動時にエアホースが引っ掛かったりした際に高圧ホース8に引っ張り荷重が加わっても、ワイヤー16がこれを負担して高圧ホース8の伸びや座屈を防止できる。よって、高圧ホース8の強度が確保される。
【0014】
以上の如く構成された袋体1を用いた配管洗浄方法を以下に説明する。
図5において、20は、地中に埋設され、洗浄対象の配管となる本管(上水道管)で、上流側(図5の左側)と下流側とには、夫々仕切弁21,21が設けられている。また、22,22は本管20から分岐する枝管で、夫々補修弁23を介して消火栓24が設けられるが、上流側の枝管22では、消火栓を取り外して中継管25が接続されている。
一方、袋体1においては、ホースニップル9にエアホース26の一端を接続し、エアホース26の他端をポンプ27に接続する。28は圧力計である。
【0015】
まず、仕切弁21,21を閉じて本管20内の水圧を抜き、ポンプ27の運転を停止して袋体1を収縮させた状態で、点線で示すように中継管25に袋体1を差し込み、枝管22から本管20内に袋体1を突出させる。ここで、袋体1はゴム及びポリエステル繊維で形成されているため、収縮性が高く、細い枝管22でも支障なく挿入することができる。
この状態で、ポンプ27を吐出運転してエアホース26を介して袋体1に圧縮空気を供給する。すると、圧縮空気が高圧ホース8から内バッグ4内に吹き出し、内バッグ4を膨らませる。これにより、外バッグ5及び最外バッグ6も追従して膨らみ、外バッグ5及び最外バッグ6越しに筒状部7が本管20の内面に圧接する。供給圧が所定値に達すると、ポンプ27の吐出運転を停止する。
【0016】
そして、上流側の仕切弁21を開いて本管20内に水を流しながら、下流側の消火栓24から水を排出し、水圧によって点線で示すように袋体1を下流側へ移動させる。このとき袋体1は、最外バッグ6が内バッグ4によって本管20の内面に押し付けられた状態で摺動するため、最外バッグ6によって内面の水垢や錆等が剥ぎ取られ、水と一緒に下流側へ移動する。特にここでは、筒状部7が外バッグ5及び最外バッグ6越しに本管20の内面を押圧しているので、袋体1が傾いて停止したり摺動速度が低下したりすることがなく、本管20内をスムーズに摺動する。
【0017】
袋体1が本管20の下流端部に達すると、水は下流側の枝管22から消火栓24を介して排出される。これにより、除去された水垢や錆等も外部へ排出される。
その後、上流側の仕切弁21を閉じてポンプ27を吸込運転させると、内バッグ4内の空気が吸い込まれて外部に排出されるため、袋体1は収縮する。ここでエアホース26を引っ張ると、袋体1を上流側へ移動させて枝管22及び中継管25を介して抜き取ることができる。
【0018】
この洗浄により、本管20の内面に摺接する最外バッグ6が損傷したりしても、外バッグ5によって内バッグ4が保護されているため、内バッグ4の損傷は防止できる。なお、この外バッグ5は袋体1が膨らんだ際の形状を保持する役割も果たしている。さらに、固定バンド12〜14を取り外すことで最外バッグ6のみを交換すれば、袋体1の再使用が可能となる。この交換は外バッグ5が損傷した場合も同様に行える。従って、損傷時に限らず、例えば洗浄する本管20の材質や異物の付着状況等を考慮して、材質や硬度等が異なる最外バッグ6を付け替えて使用するといった対応も可能となる。
【0019】
このように、上記形態の袋体1及び配管洗浄方法によれば、袋体1を、圧縮空気が供給されるゴム製の内バッグ4と、その内バッグ4の全周を覆い、ポリエステルで形成される外バッグ5及び最外バッグ6とからなる多重構造としたことで、高い収縮性が得られるため、呼び径が300mmを超える本管20であっても細い枝管22を通して本管20の洗浄に使用できる。また、内バッグ4は外部に露出しないため、好適な耐久性が維持できる。
【0020】
特にここでは、内バッグ4に、本管20内での摺動方向で全長に亘って等径となる筒状部7を、本管20の内径の1/2以上の長さで形成しているので、袋体1が傾いて停止したり摺動速度が低下したりすることがなく、本管20内での良好な摺動性が得られる。
また、最外バッグ6を着脱可能としているので、損傷した最外バッグ6を簡単に交換でき、配管洗浄に係る作業性が良好となる。
【0021】
なお、袋体は三重構造に限らず、内バッグを1つの外バッグのみで覆った二重構造としたり、逆に内バッグを3つ以上の外バッグで覆った四重以上の構造としたりしても差し支えない。また、外バッグの材質も、ポリエステル以外の他の繊維質材料が使用できるし、繊維質材料に限らず樹脂材料やゴム材料も使用できる。よって、上記形態では、最外の外バッグのみを繊維質材料として内側の外バッグをゴム製としたり、2つの外バッグを何れもゴム製や合成樹脂製としたりすることも可能である。さらに、最外の外バッグは、配管内面の洗浄能力を高めるために、内側のバッグよりも硬度の高いゴムを使用したり、ゴムや合成樹脂の表面に溝や凹凸等を付与したりすることも考えられる。
【0022】
その他、ホース部の形態も、ワイヤーを省略したり、高圧ホースをなくしてエアホースを直接バッグ部と連結したり等、適宜変更可能である。また、エアホースを接続した状態で配管内を摺動させる形態に限らず、先の特許文献1に開示のように、圧縮流体の供給後はエアホースを取り外してバッグ部のみを摺動させる形態であっても、本願発明の袋体は採用可能である。
そして、配管洗浄の対象も、上水道管に限らず、下水道管や工業用配水管等の他の配管であっても差し支えないし、袋体に供給される圧縮流体としては、圧縮空気以外に窒素やヘリウム等の不活性ガスも使用できる。
【0023】
一方、配管洗浄方法も上記形態に限らず適宜変更可能である。例えば上記形態では、袋体が本管の下流端部に達して上流側の仕切弁を閉じた後、ポンプを吸込運転して袋体を収縮させているが、単にポンプの運転を停止させる手順としてもよい。この場合も袋体は高い収縮性によって水圧で容易に収縮し、枝管及び中継管を介して抜き取ることができる。
【符号の説明】
【0024】
1・・配管洗浄用袋体、2・・バッグ部、3・・ホース部、4・・内バッグ、5・・外バッグ、6・・最外バッグ、7・・筒状部、8・・高圧ホース、12〜14・・固定バンド、16・・ワイヤー、20・・本管、21・・仕切弁、22・・枝管、25・・中継管、26・・エアホース、27・・ポンプ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に埋設された配管内に挿入され、圧縮流体の供給によって膨らんで前記配管の内面を圧接し、前記配管内での流体の供給によって前記配管内を摺動して前記内面を洗浄する配管洗浄用袋体であって、
前記圧縮流体が供給されるゴム製の内バッグと、その内バッグの全周を覆い、繊維質材料、樹脂材料、ゴム材料のうちの何れかで形成される少なくとも1つの外バッグとからなる多重構造としたことを特徴とする配管洗浄用袋体。
【請求項2】
前記内バッグに、前記配管内での摺動方向で全長に亘って等径となる筒状部を、前記配管の内径の1/2以上の長さで形成したことを特徴とする請求項1に記載の配管洗浄用袋体。
【請求項3】
最外の前記外バッグを着脱可能としたことを特徴とする請求項1又は2に記載の配管洗浄用袋体。
【請求項4】
地中に埋設された配管内に、請求項1乃至3の何れかに記載の配管洗浄用袋体を挿入し、当該配管洗浄用袋体の内バッグに圧縮流体を供給して膨らませた後、前記配管内に流体を供給して前記配管洗浄用袋体を前記配管内で摺動させることを特徴とする配管洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−16110(P2011−16110A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−163997(P2009−163997)
【出願日】平成21年7月10日(2009.7.10)
【出願人】(595108572)クロダイト工業株式会社 (7)
【出願人】(591270556)名古屋市 (77)
【Fターム(参考)】