説明

配管用エルボカバー

【課題】従来の配管用エルボカバーは、各扇形取付板102a、102bの重合した2枚の下端部103a、103bをペンチ等で折り曲げ締め付けて取付け、該套嵌着作業を建物等の配管状態が種々異なる現場で行うため、熟練と体力を要し、作業者の技量差で取付けにバラつきを生じ、手数と時間を要して極めて効率が悪く、取付け不良クレームが多発する課題があった。
【解決手段】エルボ部1を配管12のエルボ部分15の外周に套嵌し、前面側の扇形取付板2a及び後面側の扇形取付板2bと各下端部3a、3bを管12の周囲に巻付け、扇形取付板2aの係合舌片4の先端4aを、扇形取付板2bの掛止係合部11下端の第1折畳部9と延長部6下端の間に挿入すると共に該先端4aを前記第2折畳部10の挿通孔8へ挿通し締付けて、係合舌片4の係合突起5と掛止係合部11の係合突起7とを掛止め係合し、もって、配管12のエルボ部分15の外周に配管用エルボカバーAを取付けるように備えた、配管用エルボカバーAにより課題を解決した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物・構築物等の各種配管、例えば冷暖房、各種プラント設備等の各種配管で、管の周面を断熱材で被覆し該断熱材の周面に板金製の長い筒状のラッキングカバーを嵌着した各種配管において、該配管のエルボ部分(主に直角曲折部のエルボ管継手部分)に套嵌着して該部分をカバーするために用いる板金製の配管用エルボカバーに係り、
該配管用エルボカバーの套嵌着作業を熟練を要せずに極めて効率的でバラつきなく強固かつ体裁良く行えるようにしたことを特徴とする配管用エルボカバーを発明・提供するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の板金製の配管用エルボカバーBは、前記のような各種配管のエルボ部分に套嵌着して該部分を被覆する海老殻に類似した形状のエルボ部101を設け、該エルボ部101の前後面の端縁部にそれぞれ扇形取付板102a、102bの上端部を一体的に固着して設けたものであり、
【0003】
各種配管12の周面を断熱材13で被覆し、該断熱材13の周面に板金製の長い筒状のラッキングカバー14を嵌着した各種配管12において、配管12のエルボ部分15の外周に前記エルボ部101を套嵌したのち、該エルボ部分15の内側で扇形取付板の狭長板状の下端部103a、103bを管の周囲に巻付けた状態で両端部を重合し、ペンチ等で折り曲げ締め付けて取付けるものである。
(図9、図10、図11参照)
【0004】
然るところ、上記従来の配管用エルボカバーは、上記のように、各扇形取付板102a、102bの重合した2枚の下端部103a、103bをペンチ等で折り曲げ締め付けてエルボ部分15の両方の管の周囲に強固に密着した状態に取付けるものであるが、その套嵌着作業は建物等の配管状態が種々異なる現場で、多くの場合無理な姿勢で行うため、かなりの熟練と体力が要求され、よって、作業者の技量によって取付け精度にバラつきが生じる大きな課題があり、特に、熟練作業者の確保が困難な近時において、取付け作業に手数と時間を要して極めて効率が悪い上に、取付け不良のクレームが多発する課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−324086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、配管用エルボカバーの、前面側の扇形取付板の下端部に係合突起を平行列設した係合舌片を備える一方、
後面側の扇形取付板の下端部に、延長部を三つ折りに折畳み加圧プレス加工で三重板密着状態とした掛止係合部を設け、配管用エルボカバーのエルボ部を配管のエルボ部分の外周に套嵌し、前面側及び後面側の扇形取付板と各下端部を管の周囲に巻付け、係合舌片の先端を掛止係合部下端の第1折畳部と延長部下端の間に挿入すると共に該先端を前記第2折畳部の挿通孔へ挿通し締付けて、係合舌片の係合突起と掛止係合部の係合突起とを掛止めして抜け外れない状態に係合し、もって、配管用エルボカバーを熟練不要のワンタッチで均一、強固かつ体裁好く取付けし得るように備えたことを特徴とする配管用エルボカバーを発明・提供することによって、上記従来の課題を有効に解決したものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、各種配管のエルボ部分に套嵌着して該部分をカバーする海老殻に類似した形状のエルボ部を設け、該エルボ部の前後面の下端縁部にそれぞれ扇形取付板の上端部を一体的に固着して設けたものである配管用エルボカバーにおいて、
【0008】
前面側の扇形取付板の下端部に短冊板状の係合舌片を突出形成し、該係合舌片表面の設定寸法間に抜き起しプレス加工で複数の係合突起を平行列設する一方、
【0009】
後面側の扇形取付板の下端部に前面側の扇形取付板の下端部よりも設定寸法長い延長部を形成し、該延長部表面中央部の設定寸法間に抜き起しプレス加工で複数の係合突起を平行列設すると共に最下位の係合突起の下方に挿通孔を平行形成し、
【0010】
前記延長部の基部を第1折畳部として扇形取付板の内面方向へ折畳むと共に、同延長部の前記挿通孔付近を第2折畳部として前記扇形取付板の外面方向へ折畳み、その三つ折りに折畳んだものを加圧プレス加工で三重板密着状態として掛止係合部を設けて成る配管用エルボカバーであり、
【0011】
該配管用エルボカバーのエルボ部を配管のエルボ部分の外周に套嵌し、前面側及び後面側の扇形取付板と各下端部を管の周囲に巻付け、係合舌片の先端を掛止係合部下端の第1折畳部と延長部下端の間に挿入すると共に該先端を前記第2折畳部の挿通孔へ挿通し締付けて、係合舌片の係合突起と掛止係合部の係合突起とを掛止め係合し、もって、配管のエルボ部分の外周に配管用エルボカバーを取付けるように備えたことを特徴とする、配管用エルボカバーによって課題を解決したものである。
【発明による効果】
【0012】
前面側の扇形取付板の下端部に係合突起を平行列設した係合舌片を備える一方、後面側の扇形取付板の下端部に、延長部を三つ折りに折畳み加圧プレス加工で三重板密着状態とした掛止係合部を設け、配管用エルボカバーのエルボ部を配管のエルボ部分の外周に套嵌し、前面側及び後面側の扇形取付板と各下端部を管の周囲に巻付け、係合舌片の先端を掛止係合部下端の第1折畳部と延長部下端の間に挿入すると共に該先端を前記第2折畳部の挿通孔へ挿通し締付けて、係合舌片の係合突起と掛止係合部の係合突起とを掛止めして抜け外れない状態に係合するようにしたので、配管状態が種々異なる現場での套嵌着作業を作業者の熟練を要せずに、ワンタッチでバラつきなく均一に、また強固かつ体裁好く取付けし得て、配管用エルボカバーの套嵌着作業効率を革期的に向上し得る優れた特徴がある。
【0013】
各種配管の配管用エルボカバーをエルボ部分に套嵌し、前面側の扇形取付板の係合舌片の先端を掛止係合部下端の第1折畳部と延長部下端の間に挿入すると共に該先端を前記第2折畳部の挿通孔へ挿通して、両扇形取付板を後面側の扇形取付板の管の周面に強く密着するように締付けると、係合舌片の複数の係合突起と掛止係合部の複数の係合突起とが、複数段階に掛止めして、容易に抜け外れない状態に係合するようにしたので、配管用エルボカバーを極めて強固かつ安定的に套嵌着し得る優れた効果がある。
【0014】
前記のように、前面側の扇形取付板の係合突起を、後面側の扇形取付板の下端部の内面側に位置する、掛止係合部下端の第1折畳部と延長部下端の間に挿入すると共に該先端を前記第2折畳部の挿通孔へ挿通し締付けて取付けるように備えたので、配管用エルボカバーに套嵌着した状態で、表面側には掛止係合部の下端部のラインの外には全くないため、スッキリとして外観体裁が極めて優れ、また、表面側に引掛って邪魔になるものを無くし得た優れた特徴がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は本発明実施例配管用エルボカバーの前面図である。(実施例1)
【図2】図2は図1の後面図である。(実施例1)
【図3】図3は図1の右側面図である。(実施例1)
【図4】図4は図1の前面側の扇形取付板の下端部の係合舌片の部分を拡大した正面図、平面図、右側面図、及び、X線断面一部拡大矢視図である。(実施例1)
【図5】図5は図1の後面側の扇形取付板の下端部を拡大した正面図、平面図、右側面図、及び、Y線断面一部拡大矢視図であり、前面側の扇形取付板の係合舌片の挿入位置を示す図である。(実施例1)
【図6】図6は図5の掛止係合部を展開した正面図、右側面図、三つ折りに折畳む説明図、及び、W線断面一部拡大矢視図である。(実施例1)
【図7】図7は図1の本発明実施例エルボカバーを配管のエルボ部分に套嵌着した状態の一部切断正面図である。(実施例1)
【図8】図8は図7のZ線断面一部拡大図である。(実施例1)
【図9】図9は従来例配管用エルボカバーの前面図である。なお、後面図は前面図と対称である。(従来例)
【図10】図10は図9の右側面図である。(従来例)
【図11】図11は従来例配管用エルボカバーの扇形取付板の両下端部を重合しペンチ等で折り曲げ締め付けて取付ける説明断面図である。(従来例)
【発明を実施するための形態】
【0016】
エルボ部の前後面に扇形取付板を固着して設けた配管用エルボカバーであり、
エルボ部前面側の扇形取付板の下端部に短冊板状の係合舌片を形成し、該係合舌片面の設定寸法間に抜き起しプレス加工で複数の係合突起を平行列設する一方、
後面側の扇形取付板の下端部に前面側の扇形取付板の下端部よりも設定寸法長い延長部を形成し、該延長部表面中央部の設定寸法間に抜き起しプレス加工で複数の係合突起を平行列設すると共に最下位の係合突起の下方に挿通孔を平行形成し、前記延長部の基部を第1折畳部として扇形取付板の内面方向へ折畳むと共に、同延長部の前記挿通孔付近を第2折畳部として前記扇形取付板の外面方向へ折畳み、その三つ折りに折畳んだものを加圧プレス加工で三重板密着状態として掛止係合部を設けて成る配管用エルボカバーである。
【実施例1】
【0017】
図1は本発明実施例配管用エルボカバーの前面図、図2は図1の後面図、図3は図1の右側面図、図4は図1の前面側の扇形取付板の下端部の係合舌片の部分を拡大した正面図、平面図、右側面図、及び、X線断面一部拡大矢視図、図5は図1の後面側の扇形取付板の下端部を拡大した正面図、平面図、右側面図、及び、Y線断面一部拡大矢視図、図6は図5の掛止係合部を展開した正面図、右側面図、三つ折りに折畳む説明図、及び、W線断面一部拡大矢視図、図7は図1の本発明実施例エルボカバーを配管のエルボ部分に套嵌着した状態の一部切断正面図、図8は図7のZ線断面一部拡大図である。
【0018】
Aは本発明実施例エルボカバー、1はエルボ部、2aは扇形取付板(前面側)、2bは扇形取付板(後面側)、3aは下端部(前面側扇形取付板)、3bは下端部(後面側扇形取付板)、4は係合舌片、5は平行列設した係合突起(係合舌片)、6は延長部、7は係合突起(延長部・掛止係合部)、8は挿通孔、9は第1折畳部、10は第2折畳部、11は掛止係合部、12は各種配管、配管、管、13は断熱材、14はラッキングカバー、15はエルボ部分である。
【0019】
本発明配管用エルボカバーAは、各種配管12のエルボ部分15に套嵌着して該部分をカバーする海老殻に類似した形状のエルボ部1を設け、該エルボ部1の前後面の下端縁部にそれぞれ扇形取付板2a、2bの上端部を一体的に固着して設けたものである配管用エルボカバーにおいて、
【0020】
エルボ部1前面側の扇形取付板2aの下端部3aに短冊板状の係合舌片4を形成し、該係合舌片4表面の設定寸法間に抜き起しプレス加工で複数の係合突起5を平行列設する一方、
【0021】
後面側の扇形取付板2bの下端部3bに前面側の扇形取付板2aの下端部3aよりも設定寸法長い延長部6を形成し、該延長部6表面中央部の設定寸法間に抜き起しプレス加工で複数の係合突起7を平行列設すると共に最下位の係合突起7の下方に挿通孔8を平行形成し、
【0022】
前記延長部6の基部を第1折畳部9として扇形取付板2bの内面方向へ折畳むと共に、同延長部6の前記挿通孔8付近を第2折畳部10として前記扇形取付板2bの外面方向へ折畳み、その三つ折りに折畳んだものを加圧プレス加工で三重板密着状態として掛止係合部11を設けて成る配管用エルボカバーAであり、
【0023】
該配管用エルボカバーAのエルボ部1を配管12のエルボ部分15の外周に套嵌し、前面側及び後面側の扇形取付板2a、2bと各下端部3a、3bを管12の周囲に巻付け、係合舌片4の先端4aを掛止係合部11下端の第1折畳部9と延長部6下端の間に挿入すると共に該先端4aを前記第2折畳部10の挿通孔8へ挿通し締付けて、係合舌片4の係合突起5と掛止係合部11の係合突起7とを掛止め係合し、もって、配管12のエルボ部分15の外周に配管用エルボカバーAを取付けるように備えたものである。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、主として建築物・構築物等の各種配管で、管の周面を断熱材で被覆し該断熱材の周面に板金製の長い筒状のラッキングカバーを嵌着した各種配管のエルボ部分(エルボ管継手部分)に套嵌着して用いる配管用エルボカバーであり、各種配管、断熱材、ラッキングカバー等の、径の大小、寸法の長短、素材の種類等を問わず汎用し得るものである。
【符号の説明】
【0025】
A 本発明実施例エルボカバー
1 エルボ部
2a 扇形取付板(前面側)
2b 扇形取付板(後面側)
3a 下端部(前面側扇形取付板)
3b 下端部(後面側扇形取付板)
4 係合舌片
4a 先端(係合舌片)
5 平行列設した係合突起(係合舌片)
6 延長部
7 係合突起(延長部・掛止係合部)
8 挿通孔
9 第1折畳部
10 第2折畳部
11 掛止係合部
12 各種配管、配管、管
13 断熱材
14 ラッキングカバー
15 エルボ部分
B 従来のエルボカバー
101 エルボ部
102a 扇形取付板(前面側)
102b 扇形取付板(後面側)
103a 下端部(前面側扇形取付板)
103b 下端部(後面側扇形取付板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各種配管のエルボ部分に套嵌着して該部分をカバーする海老殻に類似した形状のエルボ部を設け、該エルボ部の前後面の下端縁部にそれぞれ扇形取付板の上端部を一体的に固着して設けたものである配管用エルボカバーにおいて、
前面側の扇形取付板の下端部に短冊板状の係合舌片を突出形成し、該係合舌片表面の設定寸法間に抜き起しプレス加工で複数の係合突起を平行列設する一方、
後面側の扇形取付板の下端部に前面側の扇形取付板の下端部よりも設定寸法長い延長部を形成し、該延長部表面中央部の設定寸法間に抜き起しプレス加工で複数の係合突起を平行列設すると共に最下位の係合突起の下方に挿通孔を平行形成し、
前記延長部の基部を第1折畳部として扇形取付板の内面方向へ折畳むと共に、同延長部の前記挿通孔付近を第2折畳部として前記扇形取付板の外面方向へ折畳み、その三つ折りに折畳んだものを加圧プレス加工で三重板密着状態として掛止係合部を設けて成る配管用エルボカバーであり、
該配管用エルボカバーのエルボ部を配管のエルボ部分の外周に套嵌し、前面側及び後面側の扇形取付板と各下端部を管の周囲に巻付け、係合舌片の先端を掛止係合部下端の第1折畳部と延長部下端の間に挿入すると共に該先端を前記第2折畳部の挿通孔へ挿通し締付けて、係合舌片の係合突起と掛止係合部の係合突起とを掛止め係合し、もって、配管のエルボ部分の外周に配管用エルボカバーを取付けるように備えたことを特徴とする、
配管用エルボカバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−247402(P2011−247402A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−134481(P2010−134481)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(595024515)ヤマト工業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】