説明

配管用内視鏡装置

【課題】ガス管などの配管中に90度エルボのようなきつい屈曲した箇所があっても円滑に通過可能であり、また、排水管などの配管の曲管部分を円滑に通過可能で使い勝手の良好な配管用内視鏡装置を提供することにある。
【解決手段】挿入部材10の先端にカメラ25と白色発光ダイオード26を内装したカメラヘッド20を取り付け、配管の内部を撮影した画像が表示されるモニター本体1を挿入部材10の後端に接続すると共にカメラヘッド20とモニター本体1とを接続するリード線27を挿入部材10に内装するように設けた配管用内視鏡装置Sであって、挿入部材10は、モニター本体1に着脱可能に設けた密着巻きの第1コイルバネ11の先端部に、カメラヘッド20を一端部に取り付けた第2コイルバネ15の他端部を固定し、第2コイルバネ15の線径を第1コイルバネ11の線径よりも細くして当該コイルバネ15が柔軟性を有するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス管、水道管、排水管などの配管の内部の状態を検査するための内視鏡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
配管用内視鏡装置は、ケーブルの先端に取り付けたカメラヘッドを検査対象のガス管や排水管などの管内へ挿入し、カメラヘッドによって撮影される静止画や動画をモニター部に表示させることにより内部の腐食状況や詰まり具合などを検査するのに使用される。
【0003】
特許文献1には、剛性が比較的大きい長尺のコイルバネの先端にカメラと照明用光源を内装したカメラヘッドを取り付け、カメラヘッドと画像表示部を備えた装置本体とを該コイルバネ内に挿入した伝送手段を介して接続し、コイルバネを回転手段と推進手段によって推進することができるようにした管内検査装置が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、柔軟性を有する長尺の挿入部の基端に操作部を設けた内視鏡本体と、所定の大きさのコイルバネとからなり、それら内視鏡本体とコイルバネとが弾性を有する合成樹脂製のシーラント(接着剤)によって所定間隔ごとに固着されている内視鏡装置が開示されている。
【0005】
ところで、配管には、直線部分だけでなく複数の曲管部分が含まれているのが通常であり、カメラヘッドが先端に取り付けられたケーブルを複数の曲管部分を通過させて移動させるのは困難であった。このため、上記文献のようにケーブルに代えてコイルバネを用いた内視鏡装置が提案されている。特許文献1では、剛性が比較的大きい均一なコイルバネを使用しているので曲管部分が緩やかな曲がり状態であれば通過に支障はないであろうが、90度エルボのようなきつい屈曲状態の場合には円滑に通過させるのが容易ではないと思われる。特許文献2においては、コード状の内視鏡本体とコイルバネとがシーラントにより固着されているが、長期間使用中にシーラントの弾力性が失われることや、内視鏡本体からコイルバネが剥離する状態が生じることが想定されるため、配管内への挿入し易さが低下するという虞がある。
【0006】
また、トイレなどの排水管では管内に流されるトイレットペーパーの一部や便器に落ちた髪の毛が、管内に挿入される内視鏡装置のコイルバネのコイル部の間に挟まり或いは巻きついてしまう。このような状態の場合にはコイルバネが撓みにくくなるため、使い勝手が悪くなる。しかも、それらを除去する面倒な作業を要することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−33824号公報
【特許文献2】特開2009−53360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、ガス管などの配管中に90度エルボのようなきつい屈曲状態がある場合でも円滑に通過可能であり、また、排水管などの配管の曲管部分を円滑に通過可能で使い勝手の良好な配管用内視鏡装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために請求項1に記載した発明は、長尺の挿入部材の先端にカメラと照明用光源を内装したカメラヘッドを取り付け、そのカメラにより配管の内部を撮影した画像が表示されるモニター本体を該挿入部材の後端に接続すると共に前記カメラヘッドと該モニター本体とを接続する電線を該挿入部材に内装するように設けた配管用内視鏡装置であって、
前記挿入部材は、前記モニター本体に着脱可能に設けられた長尺の密着巻きの第1コイルバネの先端部に、前記カメラヘッドを一端部に取り付けた短い長さの第2コイルバネの他端部を固定し、その第2コイルバネの線径を第1コイルバネの線径よりも細くして第2コイルバネが柔軟性を有するように設けられたことを特徴とする。
【0010】
同様の目的を達成するために請求項2に記載した発明は、長尺の挿入部材の先端にカメラと照明用光源を内装したカメラヘッドを取り付け、そのカメラにより配管の内部を撮影した画像が表示されるモニター本体を該挿入部材の後端に接続すると共に前記カメラヘッドと該モニター本体とを接続する電線を該挿入部材に内装するように設けた配管用内視鏡装置であって、
前記挿入部材は、前記モニター本体に着脱可能に設けられた剛性を有する長尺のケーブルの先端部に所定長さの密着巻きの第1コイルバネを取付け、その第1コイルバネの先端部に、前記カメラヘッドを一端部に取り付けた短い長さの第2コイルバネの他端部を固定し、その第2コイルバネの線径を第1コイルバネの線径よりも細くして第2コイルバネが柔軟性を有するように設けられたことを特徴とする。
【0011】
同様の目的を達成するために請求項3に記載した発明は、請求項1又は2に記載の配管用内視鏡装置において、前記第2コイルバネの他端部が第1コイルバネの先端部の外周に螺着されていることを特徴とするものである。
【0012】
第2コイルバネは、その他端部を第1コイルバネの先端部の外周に螺着されることにより簡易に固定を施される。
【0013】
同様の目的を達成するために請求項4に記載した発明は、請求項1から3の何れかに記載の配管用内視鏡装置において、前記第2コイルバネが、その一端部と他端部を密着巻きに夫々形成され、その中間部を密着巻きにしないで隙間を生ずるように形成されていることを特徴とするものである。
【0014】
この配管用内視鏡装置によれば、第2コイルバネの中間部を密着巻きにしないで隙間を生ずるように形成されていることと、第2コイルバネの線径を第1コイルバネの線径よりも細くして柔軟性を有するように設けられていることの相乗効果により挿入部材の先端側が曲がり易くなるため、ガス管などの配管中に90度エルボのようなきつい屈曲状態がある場合でも円滑に通過させることが可能である。
【発明の効果】
【0015】
(請求項1の発明)
この配管用内視鏡装置は、配管に挿入する挿入部材全体を長尺の第1コイルバネとその先端部に固定した第2コイルバネの2つのコイルバネで構成し、第2コイルバネの線径を第1コイルバネの線径よりも細くして柔軟性を有するように設けているので、特に鉄製ガス管などの配管中に90度エルボのようなきつい屈曲状態が複数個所にある場合でもカメラヘッドを円滑に通過させ移動させることができて、使い勝手が良好である。
加えて、カメラヘッドとモニター本体とを接続する電線がコイルバネで保護されているので、電線が配管内部の突部等により損傷される虞がない。
【0016】
(請求項2の発明)
この配管用内視鏡装置は、配管に挿入する挿入部材を長尺のケーブルと、そのケーブルの先端部に固定した第1コイルバネ及び第2コイルバネの2つのコイルバネで構成し、第2コイルバネの線径を第1コイルバネの線径よりも細くして柔軟性を有するように設けているので、特に下水道などの排水管の曲管部分がある場合でもカメラヘッドを円滑に通過させ移動させることができて、使い勝手が良好である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る第1実施例の配管用内視鏡装置の説明図
【図2】モニター本体の正面図
【図3】カメラヘッド部分を拡大して示す縦断面図
【図4】本発明に係る第2実施例の配管用内視鏡装置の説明図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の最良の形態例を図面に基づいて説明する。
【0019】
(実施例1)
図1に示すように、本発明に係る第1実施例の配管用内視鏡装置Sは、長尺の挿入部材10の先端にカメラヘッド20を取り付け、検査対象の配管の内部を撮影した画像が表示されるモニター本体1を挿入部材10の後端に接続すると共に該カメラヘッド20とモニター本体1とを接続する電線としてのリード線27を挿入部材10に内装するように設けた概要構成とされている。この内視鏡装置Sは、特に鉄製ガス管などの配管の途中に90度エルボのようなきつい屈曲状態が複数個所にある場合に適するものである。
【0020】
図2に示すように、モニター本体1は、後記カメラ25で撮影される静止画・動画を表示する3.5型TFTカラー液晶を採用した表示部2と、保存・選択ボタン3、静止画撮影ボタン4、録画ボタン5、充電可能なバッテリー((図示せず))等を備えた小型で携帯可能な公知の構造とされている。6は後記挿入部材10をコネクター12を介して接続するための接続口である。
【0021】
挿入部材10は、第1コイルバネ11の後端部11bに取り付けられたコネクター12を上記モニター本体1の接続口6に着脱可能に設けている。第1コイルバネ11は、線径φ1.41〜φ2.4mm、この実施例ではφ2mmの線材を用いて外径9mmの大きさで長尺の約11mの長さの密着巻きに形成されている。そして、第1コイルバネ11の先端部11aの外周には、後記カメラヘッド20を一端部15aに取り付けた短い長さの、ここでは約12cmの長さの第2コイルバネ15の他端部15bを螺合により固定されている。
【0022】
第2コイルバネ15は、線径φ1.0〜φ1.4mm、この実施例ではφ1.2mmの線材を用いて外径10.6mmの大きさに形成されていて、第1コイルバネの線径(φ2mm)よりも細くして柔軟性を有するように設けられている。また、第2コイルバネ15の一端部15aと他端部15bについては密着巻きに夫々形成され、その中間部については密着巻きにしないで、0.1〜0.3mm程度の隙間15cを生ずるように形成されている。
【0023】
図3に示すように、カメラヘッド20は、外径24mmの大きさでほぼ球形に形成されたヘッド本体21の前端側21aにレンズ22を装着し、内部空間21bに公知の撮像素子等からなる電子回路部(図示せず)が内装されたカメラ25と照明用光源である複数個の白色発光ダイオード(LED)26が収められている。27はカメラヘッド20とモニター本体1とを接続するためのリード線である。このリード線27には、カメラ25の信号線と白色発光ダイオード26の電源供給線が含まれる。前記内部空間21bに連通するように所定深さに形成された取り付け孔21cには、リング28を内側に嵌めた第2コイルバネ15の一端部15aが嵌着されている。30は第2コイルバネ15とリング28との間、及び第1コイルバネ11と第2コイルバネ15との間に端部を夫々挟んで固定されたステンレス製メッシュ材で筒型に形成されたブレードである。このブレード30は、第2コイルバネ15が曲がって伸びるときに当該コイルバネ15の伸びを一定量以上伸びないように抑制することにより、リード線27を保護するために設けられている。
【0024】
これにより、配管に挿入する挿入部材10を第1コイルバネ11とその先端部11aに固定した第2コイルバネ15の2つのコイルバネで構成し、特に鉄製ガス管などの配管中に90度エルボのようなきつい屈曲状態が複数個所にあってもカメラヘッドを円滑に通過させ移動させることができる本発明に係る第1実施例の配管用内視鏡装置Sが構成される。
【0025】
つぎに、第1実施例の配管用内視鏡装置Sの作用について述べる。
まず、配管用内視鏡装置Sの挿入部材10を図示しない鉄製ガス管などの配管内へ挿入する。先頭のカメラヘッド20は、配管途中に90度エルボのような屈曲状態の箇所があっても、柔軟性を有する第2コイルバネ15が適宜撓んで柔軟性を有するため円滑に通過することが可能である。
そして、挿入部材10を順次送り込んでカメラヘッド20を所望箇所まで移動させてから、或いは移動中にモニター本体1の静止画撮影ボタン4、録画ボタン5等を適宜操作することにより静止画や動画を撮影することができる。
撮影される静止画や動画は、手元にあるモニター本体1の表示部2にリアルタイムに表示及び保存されるので、配管内部の腐食状況や詰まり具合などを簡単に検査・調査することができる。
【0026】
(実施例2)
図4に示す本発明に係る第2実施例の配管用内視鏡装置Sは、配管に挿入する挿入部材40を長尺のケーブル45と、そのケーブル45の先端部45aに固定した第1コイルバネ及び第2コイルバネの2つのコイルバネで構成されていて、特に下水道の排水管などの配管の途中に曲管部分がある場合に適するものである。
【0027】
この内視鏡装置Sの第2コイルバネから先頭のカメラヘッドの構成については、前記第1実施例の配管用内視鏡装置Sの構成に準ずる。このため、第2コイルバネから先頭のカメラヘッドに関しては、第1実施例の配管用内視鏡装置Sの説明に用いた符号をそのまま流用して図面に付し、その説明を省略する。
【0028】
ケーブル45は、剛性を有し長尺の、ここでは約15mの長さのものを採用し、その後端部45bにコネクター46を取付け、モニター本体1の接続口6にコネクター46を介して着脱可能に設けられている。ケーブル45の先端部45aには、所定長さ、ここでは約25cmの長さの密着巻きの第1コイルバネ11の後端部11bを接続金具50によって一体状に取付けている。
【0029】
詳しくは、第1コイルバネ11の後端部11bの内方にスリーブ51を嵌め、その状態にて後端部11bを接続金具50の大径部50bに嵌着している。ケーブル45の先端部45aは接続金具50の中心穴50aに通されている。ケーブル45の芯線は、前記リード線27と接続され、或いはそれをリード線27に代えて用いることもできる。
【0030】
以上により、配管に挿入する挿入部材40をケーブル45と、ケーブル45の先端部45aに固定した第1コイルバネ11及び第2コイルバネ15の2つのコイルバネで構成し、排水管などの配管の途中に曲管部分があってもカメラヘッド20を円滑に通過させ移動させることができる本発明に係る第2実施例の配管用内視鏡装置Sが構成される。
【0031】
第2実施例の配管用内視鏡装置Sの作用については、上述した第1実施例の配管用内視鏡装置Sの作用に準ずるので、その説明を省略する。
【符号の説明】
【0032】
・・・本発明に係る第1実施例の配管用内視鏡装置
1・・・モニター本体
10・・・挿入部材
11・・・第1コイルバネ
15・・・第2コイルバネ
15c・・・隙間
20・・・カメラヘッド
25・・・カメラ
26・・・白色発光ダイオード(照明用光源)
27・・・リード線(電線)
・・・本発明に係る第2実施例の配管用内視鏡装置
40・・・挿入部材
45・・・ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺の挿入部材の先端にカメラと照明用光源を内装したカメラヘッドを取り付け、そのカメラにより配管の内部を撮影した画像が表示されるモニター本体を該挿入部材の後端に接続すると共に前記カメラヘッドと該モニター本体とを接続する電線を該挿入部材に内装するように設けた配管用内視鏡装置であって、
前記挿入部材は、前記モニター本体に着脱可能に設けられた所定長さの密着巻きの第1コイルバネの先端部に、前記カメラヘッドを一端部に取り付けた短い長さの第2コイルバネの他端部を固定し、その第2コイルバネの線径を第1コイルバネの線径よりも細くして第2コイルバネが柔軟性を有するように設けられたことを特徴とする配管用内視鏡装置。
【請求項2】
長尺の挿入部材の先端にカメラと照明用光源を内装したカメラヘッドを取り付け、そのカメラにより配管の内部を撮影した画像が表示されるモニター本体を該挿入部材の後端に接続すると共に前記カメラヘッドと該モニター本体とを接続する電線を該挿入部材に内装するように設けた配管用内視鏡装置であって、
前記挿入部材は、前記モニター本体に着脱可能に設けられた剛性を有する長尺のケーブルの先端部に所定長さの密着巻きの第1コイルバネを取付け、その第1コイルバネの先端部に、前記カメラヘッドを一端部に取り付けた短い長さの第2コイルバネの他端部を固定し、その第2コイルバネの線径を第1コイルバネの線径よりも細くして第2コイルバネが柔軟性を有するように設けられたことを特徴とする配管用内視鏡装置。
【請求項3】
前記第2コイルバネの他端部が第1コイルバネの先端部の外周に螺着されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の配管用内視鏡装置。
【請求項4】
前記第2コイルバネが、その一端部と他端部を密着巻きに夫々形成され、その中間部を密着巻きにしないで隙間を生ずるように形成されていることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の配管用内視鏡装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−132970(P2012−132970A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−282706(P2010−282706)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(591124400)アサダ株式会社 (8)
【出願人】(305021650)有限会社近藤研究所 (4)
【Fターム(参考)】