説明

配管用吊り金具

【課題】同じ一つの配管用吊り金具によって管径の異なる管体を固定できること。
【解決手段】本体部11とバンド部材20からなり、本体部11は螺子棒に螺入する雌ネジ部材15が回動自在に設けられた天部12と、この天部12の両側縁部から略下方に延長する延長部14, 16からなる。バンド部材20は、塑性変形可能な金属製薄板帯状体からなり、その一方端部21が本体部11の一方の延長部14に固定される。バンド部材20の他方端部22には1又は2以上の係止部27をバンド部材20の長手方向に沿って複数列列設し、この係止部27に係止する係止受部17を本体部11の他方の延長部16に設ける。このバンド部材20を管体に巻き付け、複数列形成された係止部27, 27の何れかの列を本体部11の係止受部17, 17に係止させる。その後、雌ネジ部材15を螺子棒に螺入させて、螺子棒の先端部が管体を押圧し、同時に管体がバンド部材20によって固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管を固定するための吊り金具に関し、とりわけ異なる管径の管体に対しても同一の吊り金具で対応できるものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の配管用吊り金具としては、下記特許文献に記載のものを挙げることができる。
この配管用吊り金具は、建築構築物の天部等から吊下する螺子棒に螺入できる雌ネジ部材が設けられた吊り具と、この吊り具の下端部に連結された吊りバンドとから成るものである。
そして、この吊りバンドは、その下端中央部で蝶番によって開放自在で、配管をその内部に抱持して上端部同士をボルト・ナットで上記吊り具に固定できるものである。
【特許文献1】特開平10−122434号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来の配管用吊り金具においては、所定の外径の配管しか固定することができないものである。
そこで、本発明においては、同じ一つの配管用吊り金具において、管径の異なる管体をも吊り下げ固定することができるものを提供することをその課題としている。
また、配管の固定に際して、異なる外径の管体に対処するためには、管体を抱持する部材の長さを変更する必要があるため、これに応じた管体の固定方法を創案することも本発明の課題となる。
更には、配管を固定するに際して、より容易に都合よく作業が成され得ることも本発明の課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明の第1のものは、建築構築物の天部等から吊下される長尺状の螺子棒の先端部に取り付けられる配管用吊り金具であって、金属製の本体部と塑性変形可能な金属製薄板帯状体から成るバンド部材とからなり、本体部は上記螺子棒に螺入する雌ネジ部材が回動自在に設けられた天部を有し、この天部の一方の側縁部にはバンド部材の一方の端部が固定され、前記天部の他方の側縁部には略下方に延長する延長部を設け、バンド部材の自由端となる他方の端部にはバンド部材の長手方向と略直交する方向に設けた1又は2以上の係止部をバンド部材の長手方向に沿って複数列列設し、この係止部と係止する係止受部を上記本体部の延長部に設け、このバンド部材を配管に巻き付け、複数列形成された係止部の何れかの列を本体部の係止受部に係止させることにより、異なる配管の外径に適合させることができ、その後に、上記雌ネジ部材を螺子棒に螺入させて行くことによって配管が螺子棒の先端部により押圧され、同時に配管がバンド部材によって固定されることを特徴とする配管用吊り金具である。
【0005】
本発明の第2のものは、建築構築物の天部等から吊下される長尺状の螺子棒の先端部に取り付けられる配管用吊り金具であって、金属製の本体部と塑性変形可能な金属製薄板帯状体から成るバンド部材とからなり、本体部は上記螺子棒が螺入する雌ネジ部が設けられた天部を有し、この天部の一方の側縁部にはバンド部材の一方の端部が固定され、前記天部の他方の側縁部には略下方に延長する延長部を設け、バンド部材の自由端となる他方の端部にはバンド部材の長手方向と略直交する方向に設けた1又は2以上の係止部をバンド部材の長手方向に沿って複数列列設し、この係止部と係止する係止受部を上記本体部の延長部に設け、このバンド部材を配管に巻き付け、複数列形成された係止部の何れかの列を本体部の係止受部に係止させることにより、異なる配管の外径に適合させることができ、
その後に、上記雌ネジ部に螺子棒を螺入させて行くことによって配管が螺子棒の先端部により押圧され、同時に配管がバンド部材によって固定されることを特徴とする配管用吊り金具である。
【0006】
本発明の第3のものは、上記第1又は第2の発明において、バンド部材の自由端である他方の端部に把持部を形成したことを特徴とする配管用吊り金具である。
【0007】
本発明の第4のものは、上記第1乃至第3の発明において、本体部の一方の側縁部に固定されたバンド部材の一方の端部を、本体部と着脱自在に形成したことを特徴とする配管用吊り金具である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の第1のものにおいては、バンド部材が金属製薄板帯状体から形成され、塑性変形可能となっているために、異なる管径の管体に適合させ、その管体の外周面に沿って相応しく変形させることができる。
バンド部材の自由端部には、係止部がその長手方向に沿って複数列列設されているため、その内の何れか1列のものを選択して、本体部の延長部に形成された係止受部と係止することにより、異なる管径の管体に適合させることができる。
そして、管体をバンド部材が抱持して、係止部を本体部の係止受部に係止した後、本体部の天部に設けられた雌ネジ部材を回動させて螺子棒に螺入させて行くことによって、螺子棒の先端部が管体の上面部を押圧することとなり、この螺子棒の先端部とバンド部材との共働により管体が固定されることとなる。
【0009】
本発明の第2のものにおいても、上記第1の発明と同様の効果を発揮するものであるが、この第2の発明においては、本体部の天部に雌ネジ部を直接設け、この雌ネジ部が上記第1の発明のように、回動しないものである。雌ネジ部とは、例えばナット状のものを天部の貫通穴に溶接したものでもよいし、天部に直接雌ネジ穴を形成したものでもよい。
吊り金具を取り付ける長尺状の螺子棒は、それ自身が回動するタイプのものもあり、その場合には、雌ネジ部を回動させるのではなく、螺子棒の側を回動させることにより、螺子棒の先端を配管に当接させることができるからである。
従って、本発明の第2のものにおいては、本体部の天部に直接雌ネジ部を形成して、上記第1の発明と同様の機能と作用効果を持たせたものである。
【0010】
本発明の第3のものにおいては、上記効果に加えて、バンド部材の自由端である端部に把持部を形成したことにより、この把持部を手の指等で把持して、バンド部材を管体の外形に沿わせて変形させて行く際に、非常に変形させ易く、便利なものとなる。
また、バンド部材の係止部と本体部の係止受部との係止に際しても、この把持部を把持して容易に係止することができる。
【0011】
本発明の第4のものにおいては、本体部とバンド部材とを別体に形成したものであって、即ち、バンド部材の一方端部は本体部の一方の側縁部に固定されていなくとも、本発明を実施することができものである。
これにより、構成部材である本体部とバンド部材の複数サイズのものを別々に製作しておき、固定される配管の管径に対応させて、長さの異なる数種類のバンド部材から適当なものを選択し、或は大きさの異なる本体部を適宜選択することによって、より多数種類の管径の異なる管体にも対応することが可能となるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、添付図面と共に本発明に係る配管用吊り金具の実施形態について説明する。
図1は本発明の一実施形態を図示する斜視図であり、図2はその正面図、図3はその右側面図である。
本発明に係る配管用吊り金具10は、本体部11とバンド部材20とから成る。
【0013】
本体部11及びバンド部材20は、いずれも金属製であるが、バンド部材20は、塑性変形可能な薄板帯状体から成り、その略中央部長手方向には、長孔25を形成している。この長孔は、バンド部材20の変形を容易にするためである。しかし、この長孔25は、設けなくとも実施可能であり、任意のものである。
【0014】
本体部11は、その天部12とこの天部12の両側縁部からほぼ下方に延長する延長部14、16とから成り、略コ字形状を有する。
天部12の略中央部には貫通孔が形成され、この貫通孔の部分に6角ナットの如き形態を有する雌ネジ部材15が設けられ、この雌ネジ部材15は、天部12に回動自在に設けられている。
【0015】
バンド部材20の一方端部21は、本体部11の一方の延長部14に固定されている。またバンド部材20の自由端である他方端部22には、把持部23が設けられている。
この把持部23は、バンド部材20の他方端部22を外側方向に略直角に単に折曲した構成である。
【0016】
本体部11のもう一方の延長部16には、2つの係止受部17、17を設け、この係止受部17、17と対応するバンド部材20の位置には係止部27、27を設けている。
この実施形態では、この係止部27、27を長手方向と略直角方向に2個設け、これらの係止部27、27の列を長手方向に2列設けている。
これらの係止部27は、穴部から形成され、これに係止する係止受部17は、突起部から形成されている。即ち、この突起部に穴部を嵌合することにより両者が係止され得る。
【0017】
また、図からも解る通り、係止部27となる穴部の形状は、下方部分が大きく円形に形成され、上方部は細長い長方形に形成している。
これは、係止部27を係止受部17に嵌合する祭に、嵌め入れやすくするためにこのような形状に設計しているものである。
これらの係止部27と係止受部17とを相互に係止する祭に、上記把持部23を手の指で把持して行うことができる。
【0018】
管体を取り付ける際の手順は以下の通りである。
先ず、本体部11の天部12に設けられた雌ネジ部材15を、建築構築物の天部等から吊下された螺子棒(図示省略)の下端部から螺入し、螺子棒の先端部が本体部12下面から少し突出する程度まで螺合させる。
バンド部材20の端部の把持部23を手の指で把持して、管体(図示省略)の外周面に沿って、バンド部材20を巻き付け、バンド部材20の端部22に形成された係止部27、27を本体部11の係止受部17、17に係止するのである。
【0019】
上記した通り、係止受部17は、突起部からなり、係止部27は穴部から形成されているため、穴部を突起部に嵌合させればよい。
この状態で、更に雌ネジ部材15を螺子棒に螺入させて行くことにより、螺子棒の先端部が、管体の外表面に当接して、押圧する状態となる。
これにより管体は本発明に係る配管用吊り金具によって吊下げ、固定されるのである。
【0020】
この吊下げ、固定された状態を図4が図示している。
図4は管体を固定した状態の正面説明図である。
管体40は、その外周をバンド部材20によって囲繞され、且つ、螺子棒30の下端部31が固定される管体40の外周部上部を押圧して、固定した状態となる。
【0021】
固定する手順については、先に説明したが、この図から解る通り、吊下げ、固定される管体40は、その外径が異なるもの、例えば、仮想線で示した状態で固定可能なより大きい外径の管体をも本発明に係る同一サイズの吊り金具で固定することができるのである。
この異なる外径の管体を固定できる理由は、既に説明した通り、バンド部材20の一方の端部に、その長手方向に並んで形成された係止部の列の何れかを選択して、本体部11の係止受部17と係止させ、螺子棒30への雌ネジ部材15の螺入距離により実現されるものである。
このように本発明においては、雌ネジ部材15の螺入による螺子棒30の先端部31の押圧と、バンド部材20の長さ調整との共働により、異なる管径の配管を同一の吊り金具で固定することができるものである。
【0022】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明においては以下の通り設計変更が可能である。
まず、上記実施形態においては、本体部の天部に回動自在の雌ネジ部材を設けているが、この回動自在の雌ネジ部材の代わりに、天部に直接雌ネジ部を形成して実施することもできる。
【0023】
この種の吊り金具を取り付ける長尺状の螺子棒には、その螺子棒を回動させることができるものも存在しており、その場合には螺子棒の側を回動させることにより、螺子棒の先端部を配管に当接させることができるからである。
天部の略中央部に雌ネジ部を形成する際には、バーリング加工等を行い、雌ネジ部を刻設する長手方向の長さを長く形成することが望ましい。
或いは、天部の略中央部の穴部にナットを溶接着して構成することもできる。
【0024】
本体部の形状やサイズ等は、適宜設定することができる。
上記実施形態では、延長部を本体部の天部の両側縁部に形成したが、バンド部材が固定される側には、延長部は必ずしも設ける必要はなく、バンド部材を直接天部の一方の側縁部に固定して、延長部を形成しなくとも実施可能である。
【0025】
バンド部材を固定する一方の側を、本体部と分離して形成し、予め固定したものでなく、着脱自在に構成することもできる。
この場合には、本体部の側縁部から下方に延長する延長部をその側縁部の両側に形成することが好ましい。
この延長部を両側に設けることにより、バンド部材の把持部が形成された端部と同様に、バンド部材に穴部を形成して係止部とし、本体部のもう一方の側の延長部に係止受部として突起部を形成すればよく、これら両者を係止することにより両者を結合することができる。
【0026】
係止部と係止受部の構成も、上記穴部と突起部の組み合わせでなく、両者が適宜係止、或は係合できるものであれば、どのような構成でもよい。
バンド部材の長手方向長さや幅も自由に設計することができ、必要に応じて設定することができる。
バンド部材に設けた穴部からなる係止部の数も自由であり、それを設ける長手方向の列の数も自由に設計することができる。
【0027】
最後に、本発明に係る吊り金具は、横断面円形の管体ばかりでなく、角型管をも固定することもできるし、金属管ばかりでなく、クーラー配管等の金属管以外の管体をも固定できる。
更には複数の配管を同時に固定することもできるし、複数のケーブル等も固定することができる。
【0028】
そして、吊り下げるばかりでなく、水平方向或いは下から上方向に螺子棒を延長して、その先端部に固定することもできる。
また、施工する祭には、配管に当接して押圧する螺子棒の先端部にキャップを嵌め込んで実施することもできる。このキャップとしては、ゴム製や合成樹脂製等のものを利用することができ、その当接面を回転しないような構成のキャップとすることもできる。
以上、本発明は、簡易な構成にして、管径の異なる管体を同一の吊り金具により固定することができる極めて大きな効果を発揮するものを提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態に係る配管用吊り金具を図示する斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る配管用吊り金具を図示する正面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る配管用吊り金具を図示する右側面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る配管用吊り金具によって管体を固定した状態の正面説明図である。
【符号の説明】
【0030】
10 配管用吊り金具
11 本体部
12 天部
14、16 延長部
15 雌ネジ部材
17 係止受部
20 バンド部材
21、22 端部(バンド部材の)
23 把持部
27 係止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築構築物の天部等から吊下される長尺状の螺子棒の先端部に取り付けられる配管用吊り金具であって、
金属製の本体部(11)と塑性変形可能な金属製薄板帯状体から成るバンド部材(20)とからなり、
本体部(11)は上記螺子棒に螺入する雌ネジ部材(15)が回動自在に設けられた天部(12)を有し、この天部(12)の一方の側縁部にはバンド部材(20)の一方の端部(21)が固定され、前記天部(12)の他方の側縁部には略下方に延長する延長部(16)を設け、
バンド部材(20)の自由端となる他方の端部(22)にはバンド部材(20)の長手方向と略直交する方向に設けた1又は2以上の係止部(27, 27)をバンド部材(20)の長手方向に沿って複数列列設し、この係止部(27, 27)と係止する係止受部(17, 17)を上記本体部(11)の延長部(16)に設け、
このバンド部材(20)を配管に巻き付け、複数列形成された係止部(27, 27)の何れかの列を本体部(11)の係止受部(17, 17)に係止させることにより、異なる配管の外径に適合させることができ、
その後に、上記雌ネジ部材(15)を螺子棒に螺入させて行くことによって配管が螺子棒の先端部により押圧され、同時に配管がバンド部材(20)によって固定されることを特徴とする配管用吊り金具。
【請求項2】
建築構築物の天部等から吊下される長尺状の螺子棒の先端部に取り付けられる配管用吊り金具であって、
金属製の本体部(11)と塑性変形可能な金属製薄板帯状体から成るバンド部材(20)とからなり、
本体部(11)は上記螺子棒が螺入する雌ネジ部が設けられた天部(12)を有し、この天部(12)の一方の側縁部にはバンド部材(20)の一方の端部(21)が固定され、前記天部(12)の他方の側縁部には略下方に延長する延長部(16)を設け、
バンド部材(20)の自由端となる他方の端部(22)にはバンド部材(20)の長手方向と略直交する方向に設けた1又は2以上の係止部(27, 27)をバンド部材(20)の長手方向に沿って複数列列設し、この係止部(27, 27)と係止する係止受部(17, 17)を上記本体部(11)の延長部(16)に設け、
このバンド部材(20)を配管に巻き付け、複数列形成された係止部(27, 27)の何れかの列を本体部(11)の係止受部(17, 17)に係止させることにより、異なる配管の外径に適合させることができ、
その後に、上記雌ネジ部に螺子棒を螺入させて行くことによって配管が螺子棒の先端部により押圧され、同時に配管がバンド部材(20)によって固定されることを特徴とする配管用吊り金具。
【請求項3】
バンド部材(20)の自由端である他方の端部(22)に把持部(23)を形成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の配管用吊り金具。
【請求項4】
本体部(11)の一方の側縁部に固定されたバンド部材(20)の一方の端部(21)を、本体部(11)と着脱自在に形成したことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の配管用吊り金具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−78098(P2010−78098A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−249004(P2008−249004)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(504145537)有限会社三神製作所 (9)
【Fターム(参考)】