説明

配管開閉弁

【課題】ネジの切られた非回転の弁棒と係合するヨークスリーブの回転により、弁棒に弁体の開閉用推力を与える配管開閉弁において、構造が簡潔で点検を容易とする新規な配管開閉弁を提供する。
【解決手段】ヨークスリーブとヨークが係合するネジ係合部を正ネジとし、ヨークスリーブのヨークスリーブ中心軸下方部と弁棒が係合するネジ係合部を逆ネジにすることにより、配管開閉弁上部の駆動部を開閉弁の開放方向に回転させると、固定された弁棒はヨークスリーブに逆ネジでネジ係合されていることにより上方向に移動し開閉弁は開状態となる。ヨークとの回転接続部をネジ係合構造にすることにより、ヨークスリーブを固定するための面圧が加わる部位及びすべり板を不要とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヨークに回動自在に装着されたヨークスリーブを有する配管開閉弁に関し、特に原子力発電プラントの高線量環境で使用されるのに好適な配管開閉弁であって、弁棒側が回転せず弁棒とネジ係合するヨークスリーブ側が回転することにより、弁棒に弁の開閉用推力すなわち上下に移動させる力を与える開閉弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
開閉弁は、構成基本要素として、弁棒、弁箱、弁座、弁体を有し、弁体を上下に移動させることにより流路を開閉させる。図6に従来の開閉弁の模式図を示す。開閉弁15の上部に設置される駆動部1から回転を伝達させることによりヨークスリーブ2が回転し、ヨークスリーブ2とネジ係合された弁棒3が上下に移動し、弁棒3の先端に設置される弁体6が弁箱4中の弁座5に対して開閉する構成となっている。
【0003】
開閉弁には、ネジの切られた弁棒を回転させながら弁体を弁座に押付けて開閉する方式と、弁棒を回転させず、弁棒のネジと係合するヨークスリーブ側を回転させて弁棒の上下の動きのみで開閉する方式がある。
【0004】
図7に示すように、ヨークスリーブ2を回転させる方式においては、ヨーク9に対してヨークスリーブ2の位置が上下に動かないようにヨークスリーブ2の上側をロックナット10、下側をヨークスリーブ2の凸部22で固定し、ヨークスリーブ2の回転により弁棒3を上方向に引き上げて開閉弁を開き、弁棒3を下方向に押し下げて開閉弁を閉じる。11はヨークスリーブ2とヨーク9の間に設けられたすべり板である。
【0005】
図8A、8Bは弁棒3の回転を止める機構を示したものである。図6に示すヨークスリーブ2の下方位置で、ヨークスリーブ2と弁体6を連結する弁棒3に平板状の回り止め12が設置される。弁棒3に割りピン13で固定された回り止め12がヨーク9に接触することにより弁棒3の回転を拘束している。これにより、回り止め12は弁棒3の回転を拘束しながら、弁棒3と共に上下方向に移動可能な構造となっている。
【0006】
開閉弁を開くときは、ヨークスリーブ2を回転させると弁棒3を引き上げる方向に切られたネジにより弁棒3は引き上げられる。その反作用でヨークスリーブ2は弁棒3によって下方に引っ張られ、ヨークスリーブ2に固定されたロックナット10がヨーク9の上面に押付けられ、ヨーク9上面に圧縮荷重が作用する。開閉弁を閉じるときは、弁棒3が下方向に押下げられると、反作用でヨークスリーブ2には弁棒3によって上方向に押し上げる力が生じ、ヨークスリーブ2下部の凸部がヨークスリーブ2を上方に押上げる。このように開閉弁の開閉時は、ヨークスリーブ2に上下方向の力が作用し、ヨークスリーブ2に設置されたロックナット10及びヨークスリーブ2の下部凸部22がヨーク9を押付けながら摺動するため、円滑な回転となるように両者の間に座金状の部品であるすべり板11を挟むことが一般的である。このすべり板11は、開閉弁の開閉時に面圧を受けながら摺動するため、長時間使用に対して潤滑剤がきれやすく、金属面どうしの摺動のため摩耗が生じやすい。そのため開閉弁の正常な動作を保証するためには定期的な点検保守作業が重要になってくる。これは特に原子力発電プラントのような高線量環境においては重要であり、摩耗劣化しにくく保守点検作業の容易な開閉弁が求められている。
【0007】
一方、特許文献1には、小型の仕切弁において開閉動作の省力化のために、弁棒が弁体とネジ係合して弁体を上下動させるとともに、弁棒下部が弁箱と逆ネジでネジ係合し、速やかに開閉動作を行う構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−156629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記のようなヨークスリーブを使用する開閉弁において、部品間に挟まれて圧縮荷重を受けながら回転することにより摩耗が生じやすいすべり板を省いて摩耗劣化を防止し、開閉弁の点検作業を容易にするとともに、摩耗による弁開閉時の回転機能低下の点検頻度を少なくすることによりコスト低減を図ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、弁箱内で弁座に対し弁体を開閉する弁棒と、弁棒を開閉駆動する駆動部と、弁箱外部に設けたヨークを有し、ヨークに回転自在に支持されるヨークスリーブに係合するとともにヨークに対し非回転に支持された弁棒を有する配管開閉弁において、ヨークスリーブとヨークの間にネジ係合部を設け、ヨークスリーブの中心軸下部にヨークスリーブと弁棒とのネジ係合部を設け、ヨークスリーブとヨークの間のネジ係合部と、ヨークスリーブと弁棒とのネジ係合部を互いに逆ネジの関係に設定したことを特徴とする。
【0011】
また、配管開閉弁において、ヨークスリーブと係合するヨークの一部をヨーク本体と別体ヨークとして形成し、ヨークスリーブと別体ヨークをヨーク本体に対し着脱自在に固定されたことを特徴とする。
【0012】
また、配管開閉弁において、別体ヨークとネジ係合した前記ヨークスリーブは、ヨーク本体に設けた通し穴を通して、ヨーク本体に接続されたことを特徴とする。
【0013】
また、配管開閉弁において、ヨークスリーブとヨークの間のネジ係合部のネジピッチを、ヨークスリーブと弁棒の間のネジ係合部のネジピッチより小さくしたことを特徴とする。
【0014】
また、配管開閉弁において、ヨークスリーブはリモート操作部材により遠隔操作されて回転駆動されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、弁棒を開閉駆動する駆動部と、弁箱外部に設けたヨークを有し、ヨークに回転自在に支持されるヨークスリーブに係合するとともに前記ヨークに非回転に支持された弁棒を有する配管開閉弁において、ヨークスリーブとヨークの間にネジ係合部を設け、ヨークスリーブの中心軸下部にヨークスリーブと弁棒とのネジ係合部を設け、ヨークスリーブとヨークの間のネジ係合部と、ヨークスリーブと弁棒とのネジ係合部を互いに逆ネジの関係に設定したことにより、弁体の開閉動作の際に、ヨークとヨークスリーブの間で面圧を受けながら摺動するすべり板を省くことができ、配管開閉弁の構成が簡潔となり、目視、分解点検が容易でかつ点検頻度も少なくしてコスト低減を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明実施例の全体構成を示す模式図である。
【図2】本発明の実施例1のヨークスリーブ部を示す模式図である。
【図3】図2におけるBB線矢視図である。
【図4】本発明の実施例1の弁開閉時の状態を示す模式図である。
【図5】本発明の実施例2を示す模式図である。
【図6】従来の開閉弁を示す模式図である。
【図7】従来の開閉弁のヨークスリーブ部を示す模式図である。
【図8A】従来の開閉弁の弁棒回り止め構造の平面図である。
【図8B】従来の開閉弁の弁棒回り止め構造の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の実施例を図面について説明する。
【実施例1】
【0018】
図1は開閉弁の開閉操作をリモート操作部材としてエクステンションロッド7を介して行う開閉弁15の全体構成を示している。配管14に設置された開閉弁を開閉弁上部の駆動部1よりエクステンションロッド7を介して遠隔で開閉操作を行う仕組みとなっている。エクステンションロッド7は高温環境で配管等の熱膨張を吸収するため端部にユニバーサルジョイント8を設け屈曲可能な構造としている。図2は図1のヨークスリーブ部の詳細を示したものである。図3は図2のBB線矢視図である。
【0019】
ヨーク9は開閉弁15の弁箱上部に固定され、ヨーク9の上部中心の鉛直方向ネジ穴Aに、円筒状のヨークスリーブ2がネジ係合している。またヨークスリーブ2の下面中央のネジ穴Bに弁棒3がネジ係合されている。図1のエクステンションロッド7は開閉弁15上部に設置されており、開閉弁15の開閉を遠隔で行う際の動力伝達に用いられる。ヨークスリーブ2とエクステンションロッド7はユニバーサルジョイント8によって結合されている。ヨークスリーブ2はエクステンションロッド7からの動力を弁棒3に伝達し、開閉弁15の開閉を行う弁体が先端に取り付けられた弁棒3を上下方向に移動させる。
【0020】
ヨークスリーブ2と弁棒3はネジ穴Bと正ネジ17によってネジ係合している。また、ヨークスリーブ2はヨーク9のネジ穴Aと逆ネジ16でネジ係合している。ヨークスリーブ2とヨーク9とのネジは、ヨークスリーブ2と弁棒3のネジとは互いに逆ネジの関係に形成する。
【0021】
図4により開閉弁の開動作について説明する。図4ではヨークスリーブ2と弁棒3の駆動前後の位置関係を示す。図4左側に示す開閉弁の開動作時は、ヨークスリーブ2がヨーク9と係合するネジ16により上方向に移動し、同時に弁棒3もヨークスリーブ2と係合するネジ17により上方向に移動して、図4右側に示す弁全開時の状態となる。
【0022】
また、開閉弁の閉動作時は上記と反対のプロセスでヨークスリーブ2と弁棒3が下方向に移動する。
【0023】
実施例1は、上記の構成により開閉弁の開閉時に面圧を受けながら摺動するすべり板を含む部位をなくし、ネジ係合に置き換えることができる。従って、すべり板のないヨークスリーブ構造は構造が簡素化されるため摩耗劣化が防止されるとともに、点検が容易になり、かつ点検頻度を少なくして保守コストを低減することができる。
【実施例2】
【0024】
図5は、実施例2の開閉弁構造を示す。図5において図2と同一部分については同一記号で示し、その構成についての説明は省略する。
【0025】
実施例2はヨーク9を図5中のヨーク9aとヨーク9bの2つの部品に分けて構成したものである。ヨーク9bとヨークスリーブ2はネジ16でネジ係合されている。ヨーク9aにはヨークスリーブ2が接触しない程度のギャップを有する通し穴18をあけ、ヨークスリーブ2を通している。ヨーク9aとヨーク9bは通しボルト19で固定する。通し穴18は別体として設けたヨーク9bを支持するものであり、省略することができる。
【0026】
実施例2は、実施例1と同様に面圧を受けながら摺動するすべり板をなくすことができ、点検が容易になり点検頻度を少なくすることができる。その効果に加えて、ヨークを2つの部品に分けることによりヨークスリーブとネジ係合するヨーク部分を小さくできる。従って弁棒3とヨークスリーブ2とヨーク9bを一体の小ユニットとして分解できるため、ネジ部の位置調整が難しい実施例1に較べて分解組み立て性が向上し、実施例1よりも保守点検作業が容易となる。
【実施例3】
【0027】
実施例1、実施例2におけるヨーク9とヨークスリーブ2、弁棒3とヨークスリーブ2はネジ係合によって結合されている。ここで、ヨーク9とヨークスリーブ2のネジのピッチを弁棒3とヨークスリーブ2のピッチより小さくする。使用されるねじは、一般的には送りねじとして使用されるメートル台形ねじであり、そのピッチは当該JIS規格(JIS B 0216)で優先して使用するよう規定されているピッチである。ここで、本実施例では、ヨーク9とヨークスリーブ2のねじピッチを、例えばJIS規格に規定されている非優先の小さなピッチ(優先のピッチの1/2程度)を採用する等小さくする。
【0028】
このように、ヨーク9とヨークスリーブ2のピッチを小さくすることにより、開閉弁開閉時にヨークスリーブの上下方向の移動量が小さくなり、エクステンションロッドの変位量を抑えることができ、エクステンションロッドへの負荷を少なくすることができる。加えて、ヨークスリーブ自体の小型化を図ることができる。
【符号の説明】
【0029】
1:駆動部
2:ヨークスリーブ
3:弁棒
4:弁箱
5:弁座
6:弁体
7:エクステンションロッド
8:ユニバーサルジョイント
9、9a、9b:ヨーク
14:配管
15:開閉弁
16:正ネジ
17:逆ネジ
18:通し穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁箱内で弁座に対し弁体を開閉する弁棒と、前記弁棒を開閉駆動する駆動部と、前記弁箱外部に設けたヨークを有し、ヨークに回転自在に支持されるヨークスリーブに係合するとともに前記ヨークに対し非回転に支持された前記弁棒を有する配管開閉弁において、
前記ヨークスリーブと前記ヨークの間にネジ係合部を設け、前記ヨークスリーブの中心軸下部にヨークスリーブと前記弁棒とのネジ係合部を設け、前記ヨークスリーブとヨークの間のネジ係合部と、前記ヨークスリーブと弁棒とのネジ係合部を互いに逆ネジの関係に設定したことを特徴とする配管開閉弁。
【請求項2】
請求項1に記載の配管開閉弁において、前記ヨークスリーブと係合する前記ヨークの一部を前記ヨーク本体と別体ヨークとして形成し、前記ヨークスリーブと別体ヨークを前記ヨーク本体に対し着脱自在に固定されたことを特徴とする配管開閉弁。
【請求項3】
請求項2に記載の配管開閉弁において、前記別体ヨークとネジ係合した前記ヨークスリーブは、前記ヨーク本体に設けた通し穴を通して、前記ヨーク本体に接続されたことを特徴とする配管開閉弁。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の配管開閉弁において、前記ヨークスリーブとヨークの間のネジ係合部のネジピッチを、前記ヨークスリーブと弁棒の間のネジ係合部のネジピッチより小さくしたことを特徴とする配管開閉弁。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の配管開閉弁において、前記ヨークスリーブはリモート操作部材により遠隔操作されて回転駆動されることを特徴とする配管開閉弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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