説明

配線基板、それを用いた半導体装置、およびその製造方法

【課題】半導体チップをワイヤボンドする配線基板の接続箇所でのショートを防止する。
【解決手段】複数の配線パターン8が表面に形成されたFPC5などの配線基板において、配線パターン8のランド9の部分を覆う絶縁性のカバーレイ12が設けられたことを特徴とする。ランド9どうしのショートが起こらない構造である。半導体チップ3をワイヤボンドする際には、ワイヤ13の接続部にてカバーレイを貫通して接続を行なえばよいので、接続対象でないランド9やそれに続く配線部11とショートすることがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板、それを用いた半導体装置、およびその製造方法に関し、特に半導体チップを配線基板にワイヤボンドする技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図5(a)(b)は従来の半導体装置の概略構成を示す平面図および断面図である。金属ベース1上に、ダイボンド剤2により半導体チップ3が固着されるとともに、貼付けテープ4によりFPC(Flexible Printed Circuit)5が固着されている。
【0003】
半導体チップ3には外部に信号を取り出す目的でパッド6が設けられている。FPC5は、ベースフィルム7上に複数の配線パターン8が形成されたものである。配線パターン8の各々は、一方の端部がワイヤボンド用のランド9、他方の端部が外部接続端子部10、その間が配線部11となっている。ランド9は、密度を高く配置するために、列状に配置されるのでなく面状に分散して配置され、外部接続端子部10はフィルム端部に列状に配置されている。フィルム7上の所定部分、ここではランド9が配置された領域と外部接続端子部10が配置された領域とを除いた部分は、片面に接着剤が塗布されたカバーレイ12が熱圧着されることで覆われている。
【0004】
半導体チップ3のパッド6とFPC5のランド9とはワイヤ13により接続されている。図示を省略するが、半導体チップ3やワイヤ13を保護するために、その周辺を囲う部品が取り付けられている。
【0005】
ところがこのような半導体装置では、ランド9が上記のように列状でなく面状の配置となっていることから、ワイヤ13は短いものと長いものとが混在しており、長いワイヤ13については、ランド9に対する入射角が小となるとともに垂れが発生しやすく、接続対象でない別のランド9や、別のランド9に続く配線部11が近傍にあるときに、ショートを起こしてしまうことがある。
【0006】
ショートの防止については、FPCではないプリント配線基板であるが、配線パターンよりも高さが高いソルダーレジスト(絶縁体)を設けることで、ワイヤが垂れたり変形したりしてもソルダーレジストに接触するだけで、他の配線に接触しないようにしたものがある(特許文献1)。
【特許文献1】特許第2993480号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のワイヤボンドでは、上述したように、半導体チップ3のパッド6とFPC5のランド9とを接続するワイヤ13がランド9側の接続点付近で垂れたときに、接続対象でない別のランド9や配線部11とのショートが発生することがあるという問題があった。
【0008】
接続対象でない別のランド9や配線部11を遠ざけられればショートの発生を抑えることができるが、半導体装置の小型化に伴ってランド9の配置密度が高くなる傾向にあり、近付けて配置せざるを得なくなっている。また長いワイヤ13では、ランド9に対する入射角が小になることから、垂れの許容量も小となり、ショートが発生しやすい。
【0009】
特許文献1の方法は、配線と配線との間にソルダーレジストを設けるため配線密度が高くできないという問題がある。
本発明は上記問題を解決するもので、半導体チップをワイヤボンドする配線基板の接続箇所でのショートを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の配線基板は、複数の配線パターンが表面に形成された配線基板において、前記配線パターンのワイヤ接続用端子部分を覆う絶縁性のカバーレイが設けられたことを特徴とする。ワイヤ接続用端子どうしのショートが起こらない構造である。
【0011】
本発明の半導体装置の製造方法は、上記の配線基板を用いた半導体装置の製造方法であって、前記配線基板の配線パターンのワイヤ接続用端子に半導体チップをワイヤボンドする際に、ワイヤの接続部をカバーレイを貫通させて前記ワイヤ接続用端子に接続することを特徴とする。ワイヤの接続は必要な箇所でのみカバーレイを貫通して行なうので、接続対象でない別のワイヤ接続用端子や、別のワイヤ接続用端子に続く配線部とショートすることがない。
【0012】
本発明の半導体装置は上記の配線基板に半導体チップをワイヤボンドしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の配線基板は、配線パターンのワイヤ接続用端子部分をカバーレイで覆ったものであり、この配線基板に半導体チップをワイヤボンドして半導体装置を製造する際には、ワイヤの接続部にてカバーレイを貫通して接続を行うので、接続対象でない別のワイヤ接続用端子や配線部がいかに近接していても、つまり高密度であっても、ショートすることがない。全面的にショートを防止する構造としながらも、必要な箇所では接続させるのである。
【0014】
したがって、配線基板においては、ワイヤ接続用端子の配置や配線部の引き回しの自由度が高まる。これは、配線の最小線幅、最小間隔が小さくなっても同様である。またワイヤ接続用端子をカバーレイで覆っていることから、配線基板を取り扱うときにワイヤ接続用端子に直接触れることがなく、カバーレイの表面を清浄化する工程を取り入れることもできるので、ワイヤ接続用端子の表面の汚染や状態変化が原因となるワイヤボンド不良がなくなるとともに、配線基板を取り扱う部材の材質や清浄さに対する制限が緩和される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら具体的に説明する。
図1は本発明の一実施形態における半導体装置の概略構成を示す。図1(a)は同半導体装置の平面図、図1(b)は同半導体装置の図1(a)におけるB−B線での断面図である。
【0016】
金属ベース1上に、ダイボンド剤2により半導体チップ3が固着されるとともに、貼付けテープ4によりFPC5が固着されている。
半導体チップ3には外部に信号を取り出すためのパッド6が一対の対辺のそれぞれに沿って設けられている。FPC5は、ベースフィルム7上に複数の配線パターン8が形成されたもので、中央に開口部5aを有している。配線パターン8の各々は、一方の端部がワイヤボンド用のランド9、他方の端部が外部接続端子部10、その間が配線部11となっている。
【0017】
ランド9は、密度を高く配置するために、半導体チップ3の前記一対の対辺に沿う方向に列状に配置されるだけでなく、それと交わる方向にフィルム端部側へ分散されて、面状に配置されている。外部接続端子部10は、半導体チップ3のもう一対の対辺に沿う方向に列状にフィルム端部に配置されている。ベースフィルム7上の所定部分は絶縁性のカバーレイ12で覆われている。
【0018】
半導体チップ3のパッド6とFPC5のランド9とはワイヤ13により接続されている。ワイヤ13は、上述したようにランド9が面状の配置となっているため、短いものと長いものとが混在している。図1(b)では、理解を容易にするためにワイヤ13の一部のみ図示している。図示を省略するが、半導体チップ3やワイヤ13を保護するために、その周辺を囲う部品が取り付けられている。
【0019】
この半導体装置が、先に図5を用いて説明した従来のものと相違するのは、FPC5においてカバーレイ12によって覆われているのが、外部接続端子部10が配列された領域を除くベースフィルム7および配線パターン8の上である点である。ランド9に接続したワイヤ13の接続部はカバーレイ12を貫通している。
【0020】
材料の具体例を示すと、金属ベース1は熱伝導率の高い銅素材の上にニッケルめっきを施したものであり、ベースフィルム7はポリイミドであり、配線パターン8は銅であり、ワイヤ13は4Nと呼ばれる99.99%純度の金であるが、これに限定される訳ではない。カバーレイ12はワイヤ13にて貫通できる絶縁性の有機物材料、たとえばポリウレタンで形成される。
【0021】
上記の半導体装置の製造方法を説明する。
まず、FPC5を作製する。図2(a)に示すように、中央に開口部7aを有するベースフィルム7上に複数の配線パターン8を形成する。そのためには、ベースフィルム7と金属箔(図示せず)とが貼り合わされた2層の基材を用意し、金属箔側にエッチングレジストを塗布し、露光、現像を行って、配線パターン8となす所定部分にエッチングレジストを残し、そのエッチングレジストをマスクとして金属箔のエッチングを行い、エッチングレジストを剥離する。形成された配線パターン8の表面には電解めっき等の方法でめっきを施す。
【0022】
図2(b)に示すように、外部接続端子部10が配列された領域を除くベースフィルム7および配線パターン8の上をカバーレイ12で被覆する。そのためには、外部接続端子部10が配列された領域を避けて、上述した絶縁性の有機物材料を厚みが小さくかつ一定になるように塗布またはスプレーする。
【0023】
このようにして作製されたFPC5を用いて半導体装置を製造する。図3(a)に示すように、金属ベース1の所定の箇所に貼付けテープ4を貼り付ける。この貼付けテープ4は、常温で接着性を示す接着剤であってカバーテープ(図示せず)上に剥離可能に保持されたものを用意し、金属ベース1上に転写したうえでカバーテープを剥がす。
【0024】
図3(b)に示すように、金属ベース1上にFPC5を位置決めして置き、このFPC5上に樹脂等でできた加圧部材を当てて加圧することにより、前記金属ベース1に対してFPC5を先の貼付けテープ4を介して接着する。
【0025】
この際には、FPC5の表面にカバーレイ12が存在しているため、加圧部材がランド9に直接触れることはなく、ランド9の表面は保護されることになり、加圧部材の材質や清浄さに対する制限の緩和も可能である。FPC5の貼り付け後に表面を清浄化する工程を取り入れることもできる。後段のワイヤボンドにおいても、ランド9の表面の汚染や圧痕が付く状態変化が原因での接続不良がなくなる。
【0026】
図3(c)に示すように、金属ベース1上であってFPC5の開口部5aから露出している露出部に半導体チップ3をダイボンドする。そのためには、金属ベース1の露出部にダイボンド剤2(図1参照)を塗布し、ウエハより個片化されダイシングシート(図示せず)に保持されている半導体チップ3を、ダイシングシートの裏側から突き上げつつコレット(図示せず)で真空吸着し、そのコレットで金属ベース1上へ運び、ダイボンド剤2に押し付け、その後にダイボンド剤2を熱硬化させることにより、前記金属ベース1に対して半導体チップ3をダイボンド剤2を介して強固に接着させる。
【0027】
図4に示すように、半導体チップ3のパッド6とFPC5のランド9とをワイヤボンドする。そのためには、半導体チップ3とFPC5とが載った金属ベース1(図3参照)を加熱しながら、キャピラリ14内に挿通したワイヤ13の先端に放電によってイニシャルボール(図示せず)を形成し、そのイニシャルボールを半導体チップ3のパッド6に押し付けて熱と超音波の作用で接合し、その状態で、キャピラリ14を、ワイヤ13を繰り出しながら上昇させ、接続対象のランド9へ向けて円弧状に下降させる。そしてキャピラリ14の先端のワイヤ13をカバーレイ12に押し付け、そのまま貫通させて、ランド9に接合させる。
【0028】
この際には、カバーレイ12を上記のように厚みを小さくかつ一定としているので、またランド9にめっきを施しているので、安定して接合が行える。カバーレイ12自体は、ワイヤ13を押し付けられた部分のみ局所的に熱と超音波の作用で裂け、それ以外の部分は元の状態のままである。ワイヤ13がランド9に接合したら、キャピラリ14を上昇させ、その上昇途中でワイヤ13をつかんで引きちぎる。これによりキャピラリ14は図示したように先端からワイヤ13が出た初期状態となる。
【0029】
この動作を所定の接続数だけ繰り返して、半導体チップ3とFPC5とのワイヤボンドを完了させる。上記のようにFPC5のランド9は面状に配置されているので、接続する順序に注意して、既に接続されたワイヤ13とキャピラリ14との干渉が起こらないようにする。長いワイヤ13は、上記のように接続対象のランド9に対する入射角が小となり、また形状が安定しにくく垂れが発生しやすいのであるが、垂れても単にカバーレイ12と接触するだけであり、接続対象でない別のランド9や、別のランド9に続く配線部11が手前側にあってもショートを起こすことはない。
【0030】
ワイヤボンドの完了後に、半導体チップ3やワイヤ13を保護するために、その周辺を囲う部品を取り付け、半導体装置として完成させる。
なお、この実施の形態では、FPC5の基材は2層であるとしたが、最上層が金属箔であってその金属箔をパターニング後にカバーレイ12で被覆できるのであれば、何層であってもよい。
【0031】
貼付けテープ4を接着剤層が1層のものであるとしたが、FPC5を金属ベース1に接着さえできればよいのであって、基材の両側に接着剤層がある3層のものとしてもよいし、テープ状でなくてペーストであってもよい。接着剤層は常温で接着性を示すとしたが、熱可塑性のもので加熱によって接着性を示すものであってもよい。
【0032】
カバーレイ12は外部接続端子部10が配列された領域以外を一様に覆うとしたが、ランド9が配置された領域のみ上述の材料にて薄く均一に被覆し、他の領域は従来と同様に片面に接着剤が塗布されたフィルムを熱圧着するなどとしてもよい。
【0033】
ワイヤボンドでは、半導体チップ3のパッド6にイニシャルボールを接合したあと、それにつながるワイヤ13をFPC5のランド9に接続するとしたが、FPC5のランド9にイニシャルボールを接合したあと、それにつながるワイヤ13を半導体チップ3のパッド6に接続するとしてもよいし、両者が混在していてもよい。
【0034】
要するに、FPC5のランド9をカバーレイ12で被覆し、ワイヤボンドでそのカバーレイ12を貫通してランド9との接合を行うということである。
以上、FPC5について説明してきたが、FPCに限定されるものではなく、リジッド基板等であっても最表面の配線がワイヤ方向に近接して配置されるものには適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の配線基板およびそれを用いた半導体装置の製造方法は、ランドの配置密度の高い小型の半導体装置の製造に特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施形態における半導体装置の概略構成図
【図2】図1の半導体装置を構成する配線基板の製造工程図
【図3】図2の配線基板を用いて図1の半導体装置を製造する前半工程図
【図4】図2の配線基板を用いて図1の半導体装置を製造する後半工程図
【図5】従来の半導体装置の概略構成図
【符号の説明】
【0037】
3 半導体チップ
5 FPC(配線基板)
8 配線パターン
9 ランド(ワイヤ接続用端子)
12 カバーレイ
13 ワイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の配線パターンが表面に形成された配線基板において、前記配線パターンのワイヤ接続用端子部分を覆う絶縁性のカバーレイが設けられた配線基板。
【請求項2】
請求項1記載の配線基板を用いた半導体装置の製造方法であって、前記配線基板の配線パターンのワイヤ接続用端子に半導体チップをワイヤボンドする際に、ワイヤの接続部をカバーレイを貫通させて前記ワイヤ接続用端子に接続する半導体装置の製造方法。
【請求項3】
請求項1記載の配線基板に半導体チップをワイヤボンドした半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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