説明

配線基板の製造方法

【課題】配線屈曲部のめっきレジストパターンの剥がれを抑制し高密度配線を安定して形成できる配線基板の製造方法を提供する。
【解決手段】絶縁層上に第1及び第2の配線導体4が屈曲部を有する幅w1が15μm以下の間隙を挟んで形成される配線基板の製造方法であって、絶縁層上に下地金属層を被着させる工程と、下地金属層上に第1及び第2の配線導体4に対応する部位の下地金属層を露出させるとともに間隙に対応する部位の下地金属層を覆うめっきレジストパターンを有するめっきレジスト層22を被着させる工程と、めっきレジスト層22から露出する下地金属層上にめっき金属層23を被着させる工程と、めっきレジスト層22を除去後、めっき金属層から露出する下地金属層を除去する工程とを含み、めっきレジストパターンは間隙に対応する部位の下地金属層を覆う幅w2が屈曲部に向けて拡がる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高密度配線基板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯型のゲーム機や通信機器に代表される電子機器の高機能化が進む中、それらに使用される配線基板にも高密度配線化が要求されている。従来、このような高密度な配線基板の配線形成には、周知のセミアディティブ法が好適に用いられる。セミアディティブ法は絶縁層表面に下地金属層を被着させた後に、下地金属層の表面に配線パターンに対応する開口部を有するめっきレジストパターンを被着させ、開口部内の下地金属層上に選択的に電解めっき層を形成した後、めっきレジストパターンを剥離するとともに電解めっき層から露出した下地金属層をエッチング除去することで配線を形成するものである。
【0003】
ところで、高密度配線化された配線基板においては、図5に示すように、屈曲部を伴った複数の細い帯状の配線導体14が互いに一定幅の狭い間隙を挟んで並設される場合がある。このように屈曲部を伴って一定の狭い間隙を挟んで並設された複数の細い帯状の配線導体14をセミアディティブ法により形成する場合、これらの配線導体14を形成するためのめっきレジストパターンは、配線導体14同士の間隙に対応する部位の下地金属層を屈曲部を伴った細い帯状のめっきレジストパターンで覆うことになる。
【0004】
ところが、配線導体14の幅が例えば15μm以下と細くなるとともに配線導体14同士の間隙が15μm以下と狭くなると、この配線導体14の間隙に対応する部位を被覆するめっきレジストパターンが下地金属層と密着する面積が小さくなり、めっきレジストパターンと下地金属層との間の密着力が小さなものとなってしまう。さらに、下地金属層上のめっきレジストパターンは、電解めっきの際にめっき液などにより膨潤する。そして、この膨潤により生じる応力はめっきレジストパターンの屈曲部付近に集中して作用する。その結果、めっきレジストパターンの屈曲部において、めっきレジストパターンが下地金属層から剥がれてしまいやすくなり、狭い間隙を挟んで並設された屈曲部を有する複数の細い帯状の配線導体14を安定して形成できないという問題が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−110942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、屈曲部を有するめっきレジストパターンの剥がれを抑制し、高密度な配線導体を安定して形成することができる配線基板の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明における配線基板の製造方法は、絶縁層上に、めっき金属層から成る第1の配線導体と第2の配線導体とが、屈曲部を有する幅が15μm以下の間隙を挟んで互いに隣接して形成されて成る配線基板の製造方法であって、絶縁層上に下地金属層を被着させる工程と、下地金属層上に、第1の配線導体および第2の配線導体に対応する部位の下地金属層を露出させるとともに間隙に対応する部位の下地金属層を覆うめっきレジストパターンを有するめっきレジスト層を被着させる工程と、めっきレジスト層から露出する下地金属層上にめっき金属層を被着させる工程と、めっきレジスト層を除去した後、めっき金属層から露出する下地金属層をエッチング除去する工程とを含み、めっきレジストパターンは、間隙に対応する部位の下地金属層を覆う幅が屈曲部近傍において屈曲部に向けて拡がっていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の配線基板の製造方法によれば、下地金属層上に被着された屈曲部を有するめっきレジストパターンの幅を、屈曲部近傍において屈曲部に向けて拡がるようにしたことから、屈曲部近傍におけるめっきレジストパターンと下地金属層との密着面積を増やして両者間の密着力を向上させることができる。これにより、めっき金属層を被着させて配線導体を形成する工程中にめっきレジストパターンの膨潤により生じる応力がめっきレジストパターンの屈曲部付近に集中しても、めっきレジストパターンが下地金属層から剥がれてしまうことを有効に防止することができ、高密度な配線導体を安定して形成することが可能な配線基板の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は本発明の配線基板の実施の形態の一例を示す概略断面図である。
【図2】図2は本発明の配線基板の実施の形態の一例を示す要部拡大平面図である。
【図3】図3(a)〜(c)は本発明の配線基板の製造方法の実施形態の一例を示す概略平面図および概略断面図である。
【図4】図4(d)〜(f)は本発明の配線基板の製造方法の実施形態の一例を示す概略平面図および概略断面図である。
【図5】図5は従来の配線基板の一例を示す要部拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明の配線基板の製造方法の実施形態の一例を図1〜図4を基にして詳細に説明する。
【0011】
図1に本例により製造される配線基板10の概略断面図を示す。配線基板10は、コア用の配線導体2が被着されたコア用の絶縁板1の両主面にビルドアップ用の絶縁層3とビルドアップ用の配線導体4とが複数層ずつ積層されて成り、さらにその上下面にソルダーレジスト層5が被着されている。
【0012】
コア用の絶縁板1は、例えばガラスクロスにエポキシ樹脂やビスマレイミドトリアジン樹脂等の熱硬化性樹脂を含浸させた電気絶縁材料から成り、直径が100〜300μm程度のスルーホール7が複数形成されている。コア用の絶縁板1の厚みは40〜300μm程度である。
【0013】
コア用の絶縁板1の上下面およびスルーホール7の内にはコア用の配線導体2が被着されている。コア用の配線導体2は、例えばコア用の絶縁板1の上下面では銅箔およびその上の銅めっき層から成り、スルーホール7の内部では銅めっき層から成る。
【0014】
ビルドアップ用の絶縁層3は、例えばエポキシ樹脂やポリイミド樹脂などの熱硬化性樹脂を含有する電気絶縁材料からなり、その上面から下面にかけて貫通するビアホール8が複数形成されている。絶縁層3の厚みは10〜50μm程度である。また、ビアホール8の直径は、30〜100μm程度である。
【0015】
ビルドアップ用の絶縁層3上およびビアホール8内には、ビルドアップ用の配線導体4が被着されている。ビルドアップ用の配線導体4は、例えば無電解銅めっき層およびその上の電解銅めっき層から成り、後述するセミアディティブ法で形成されている。配線基板10の上面中央部には、半導体素子の電極と接続される半導体素子接続パッド9が形成されているとともに、配線基板10の下面には外部回路基板の電極と接続される回路基板接続パッド11が形成されている。
【0016】
ソルダーレジスト層5はエポキシ樹脂やポリイミド樹脂などの熱硬化性樹脂を含有する電気絶縁材料から成る。配線基板10の上面側に設けられたソルダーレジスト層5には、最表層の配線導体4の一部を半導体素子の電極と接続される半導体素子接続パッド9として露出させる開口部が形成されており、下面側に設けられたソルダーレジスト層5には、最表層の配線導体4の一部を外部回路基板の電極と接続される回路基板接続パッド11として露出させる開口部が形成されている。
【0017】
次に、図2に配線導体4の要部拡大平面図を示す。本例の配線基板10においては図2に示すように、絶縁層3の表面に第1の配線導体4aと第2の配線導体4bとが屈曲部を伴って並設されている。これらの配線導体4a,4bの幅は15μm以下であり、配線導体4aと4bとの間隙w1は屈曲部近傍を除く部位では15μm以下で並設される。そして、配線導体4a,4bの幅は屈曲部近傍において屈曲部に向けて狭くなっている。このため、第1の配線導体4aと第2の配線導体4bとの屈曲部近傍の間隙は、屈曲部に向けて広くなっている。
【0018】
次に、本発明の配線基板の製造方法の一例について、図3(a)〜(c)および図4(d)〜(f)を基にして詳細に説明する。なお、本説明においては、配線導体の形成個所における製造方法を中心に説明する。また、図3(a)〜(c)および図4(d)〜(f)において図1および図2と同様の箇所には同様の符号を付して説明する。
【0019】
まず、図3(a)に示すように、コア用の絶縁板1を用意する。このようなコア用の絶縁板1は以下のようにして形成される。まず、ガラスクロスに熱硬化性樹脂を含浸させた絶縁板の上下両面に厚みが5〜35μm程度の銅箔が被着された両面銅張板を準備する。次に、両面銅張板にドリル加工やレーザ加工によりスルーホール(不図示)を穿孔する。次に、スルーホール内および上下の銅箔表面に無電解銅めっき層および電解銅めっき層を順次被着させる。無電解銅めっき層の厚みは0.1〜1μm程度、電解銅めっき層の厚みは5〜25μm程度とする。次に、電解銅めっき層が施されたスルーホールの内部に孔埋め樹脂を充填する。次に、孔埋め樹脂上および上下面の銅めっき層上に無電解銅めっき層および電解銅めっき層を順次被着する。無電解銅めっき層の厚みは0.1〜1μm程度、電解銅めっき層の厚みは5〜30μm程度とする。最後に、銅箔およびその上の銅めっき層を周知のサブトラクティブ法によりパターン加工する。
【0020】
次に、図3(b)に示すように、コア用の絶縁板1の表面にビルドアップ用の絶縁層3を被着するとともにビアホール(不図示)を形成する。コア用の絶縁板1の表面に絶縁層3を被着するには、例えば、未硬化の熱硬化性樹脂組成物を含有する樹脂フィルムを真空プレス機を用いてコア用の絶縁板1の表面に貼着した後、熱硬化させればよい。また、ビアホールの形成は、レーザ加工により行なえばよい。
【0021】
次に、図3(c)に示すように、ビルドアップ用の絶縁層3の表面に下地金属層21を被着させる。下地金属層21は、例えば厚みがおよそ1μmの薄い無電解銅めっきにより形成される。
【0022】
次に、図4(d)に示すように、下地金属層21上にめっきレジスト層22を被着する。なお、この例では、めっきレジスト層22は、上述した第1の配線導体4aおよび第2の配線導体4bに対応する部位の下地金属層21を露出させる開口パターン22a、22bを有しているとともにこれらの開口パターン22a、22bの間隙に対応する部位を覆う帯状のめっきレジストパターン22cを有している。このようなめっきレジスト層22は、感光性を有する樹脂フィルムを下地金属層21の表面に真空プレス機を用いて貼着するとともに上記パターンを有するように露光および現像処理することにより形成される。開口パターン22aと22bとは屈曲部を伴って並設されており幅が15μm以下である。また、めっきレジストパターン22cの屈曲部近傍を除く部位の幅w1は15μm以下である。そして、めっきレジストパターン22cは、その幅が屈曲部近傍において、屈曲部に向けて拡がっている。このようにめっきレジストパターン22cの幅が屈曲部近傍において、屈曲部に向けて拡がっていることから、屈曲部近傍におけるめっきレジストパターン22cと下地金属層21との密着面積を増やして両者間の密着力を向上させることができる。
【0023】
なお、めっきレジストパターン22cの幅が屈曲部近傍において拡がる割合は、屈曲部における幅が屈曲部近傍を除く部位の幅の2〜3割程度広くなっていることが好ましい。そして、ここでいう屈曲部近傍とは、屈曲部から開口パターン22aまたは22bの幅とめっきレジストパターン22cの幅との和の2倍程度の範囲を意味する。例えば屈曲部近傍を除く開口パターン22a、22bの幅が15μmで、めっきレジストパターン22cの屈曲部近傍を除く部位の幅w1が15μmの場合、めっきレジストパターン22cの幅は屈曲部近傍において屈曲部に向けて3〜5μm程度広くなっており、屈曲部における幅w2が18〜20μmとなる程度が好ましい。この場合、開口パターン22a、22bの幅が屈曲部近傍において屈曲部に向けて3〜5μm程度狭くなる。そして、この場合の屈曲部近傍とは、屈曲部から60μm程度の範囲を意味する。また、例えば屈曲部近傍を除く開口パターン22a、22bの幅が10μmで、めっきレジストパターン22cの屈曲部近傍を除く部位の幅w1が10μmの場合は、めっきレジストパターン22cの幅は屈曲部近傍において屈曲部に向けて2〜3μm程度広くなっており、屈曲部における幅w2が12〜13μmとなる程度が好ましい。この場合の屈曲部近傍とは、屈曲部から40μm程度の範囲を意味する。
【0024】
次に、図4(e)に示すように、めっきレジスト層22から露出した下地金属層21上に、電解銅めっき層23を被着させる。電解銅めっき層23の厚みは5〜30μm程度である。なお、電解銅めっき層23を被着させるには、周知の電解銅めっき液中で電解めっきのための電荷を下地金属層21から供給することにより、めっきレジスト層22から露出した下地金属層21上に電解銅めっき層23を析出させる方法が採用される。このとき、開口パターン22aと22bとの間のめっきレジストパターン22cは、その屈曲部近傍において屈曲部に向けて幅が広くなっており、それにより下地金属層21との密着力が向上していることから、電解銅めっき層23を被着させる際にめっき液等によりめっきレジストパターン22cが膨潤してその応力がめっきレジストパターン22cの屈曲部近傍に集中して作用したとしても、めっきレジストパターン22cが下地金属層21から剥がれてしまうことを有効に防止することができ、それにより高密度な配線導体を安定して形成することが可能となる。このとき、めっきレジストパターン22cの屈曲部における幅w2が屈曲部近傍を除く部位の幅w1の2割未満だけ広くなっている場合は、屈曲部近傍におけるめっきレジストパターン22cと下地金属層21との密着力が不足してめっきレジストパターン22cが下地金属層21から剥がれてしまう危険性が大きなものとなる。したがって、屈曲部におけるめっきレジストパターン22cの幅w2は屈曲部近傍を除く部位の幅w1の2割以上広いことが好ましい。また、めっきレジストパターン22cの幅が屈曲部に向けて拡がる位置が屈曲部から開口パターン22aまたは22bの幅とめっきレジストパターン22cの幅との和の2倍未満であると、屈曲部近傍におけるめっきレジストパターン22cと下地金属層21との密着力が不足してめっきレジストパターン22cが下地金属層21から剥がれてしまう危険性が大きなものとなる。したがって、めっきレジストパターン22cの幅が屈曲部に向けて広がる位置は、屈曲部から開口パターン22aまたは22bの幅とめっきレジストパターン22cの幅との和の2倍以上離れた位置であることが好ましい。
【0025】
次に、図4(f)に示すように、めっきレジスト層22を剥離除去した後、電解銅めっき層23の間から露出した下地金属層21をエッチングにより除去することで配線導体4を形成する。
【0026】
以後は、同様にしてビルドアップ用の絶縁層3、配線導体4を必要な層数だけ積層し、さらにその上に半導体素子接続パッド9が露出する開口部を有するソルダーレジスト層5を被着することで配線基板10が形成される。かくして、本発明の配線基板の製造方法によれば、屈曲部を有するめっきレジストパターンの剥がれを抑制し、高密度な配線導体を安定して形成可能な配線基板の製造方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0027】
3 絶縁層
4a 第1の配線導体
4b 第2の配線導体
10 配線基板
21 下地金属層
22 めっきレジスト層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層上に、めっき金属層から成る第1の配線導体と第2の配線導体とが、屈曲部を有する幅が15μm以下の間隙を挟んで互いに隣接して形成されて成る配線基板の製造方法であって、前記絶縁層上に下地金属層を被着させる工程と、前記下地金属層上に、前記第1の配線導体および第2の配線導体に対応する部位の前記下地金属層を露出させるとともに前記間隙に対応する部位の前記下地金属層を覆うめっきレジストパターンを有するめっきレジスト層を被着させる工程と、前記めっきレジスト層から露出する前記下地金属層上にめっき金属層を被着させる工程と、前記めっきレジスト層を除去した後、前記めっき金属層から露出する前記下地金属層をエッチング除去する工程とを含み、前記めっきレジストパターンは、前記間隙に対応する部位の前記下地金属層を覆う幅が前記屈曲部近傍において該屈曲部に向けて拡がっていることを特徴とする配線基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−70002(P2013−70002A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209311(P2011−209311)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(304024898)京セラSLCテクノロジー株式会社 (213)
【Fターム(参考)】