説明

配線基板及びその製造方法

【課題】 本発明は、基板から密着層が剥離し難い配線基板及びその製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】 基板上に密着層15を形成し、密着層15の上に配線層を形成する。密着層15は窒化NiCu合金により形成される。基板は基板本体11と、基板本体11上に形成した絶縁層13を含むこととしてもよい。また、配線層は、密着層15上に形成したシード層16と、シード層16上に形成した配線19及び配線パターン18を含むこととしてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板及びその製造方法に関し、特に、配線層と絶縁層との間に密着層が設けられた配線基板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のCu配線基板において、基板本体上に形成される絶縁層とその上に形成されるCu配線層との間に密着層が設けられる場合が多い(例えば、特許文献1参照)。密着層は、絶縁層とCu配線層の両方に対して良好な密着性を有する材料で形成される。そのような材料として、例えばCuNのような金属材料が用いられる。密着層を設けることにより、基板本体からCu配線層が剥がれないように固定することができる。
【0003】
基板本体上に形成する絶縁層とて樹脂材料が用いられることが多い。用いられる樹脂の種類によっては、CuNで形成した密着層であっても、密着強度が不十分な場合がある。密着層の密着強度が不十分であると、CuN密着層と樹脂絶縁層との間で剥離が生じ、CuN密着層と共にCu配線層が剥離してしまうおそれがある。そこで、密着層をNiCu合金で形成して、樹脂絶縁層と密着層との間の密着性を改善することが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−218516号公報
【特許文献2】特開2009−188324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2で提案されたように密着層をNiCu合金で形成して絶縁層と密着層との間の密着性を改善した場合でも、絶縁層を形成する樹脂の種類によっては密着性が不十分であり、密着層の剥離が生じることがある。
【0006】
本発明は上述の問題点に鑑みなされたものであり、絶縁層に対する密着層の密着強度が向上された配線基板及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一観点によれば、基板と、該基板上に形成された密着層と、該密着層上に形成された配線層とを有し、前記密着層は、窒化NiCu合金により形成されたことを特徴とする配線基板が提供される。
【0008】
また、本発明の他の観点によれば、表面が絶縁樹脂よりなる基板を準備し、該基板上に、窒化NiCu合金により密着層を形成し、該密着層上に配線層を形成することを特徴とする配線基板の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、基板と配線層との間に設けられた密着層が基板から剥離することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態による配線基板の一部の断面図である。
【図2】絶縁層形成工程を示す図である。
【図3】密着層形成工程を示す図である。
【図4】シード層形成工程を示す図である。
【図5】レジスト膜形成工程を示す図である。
【図6】配線及び配線パターン形成工程を示す図である。
【図7】レジスト膜除去工程を示す図である。
【図8】シード層及び密着層除去工程を示す図である。
【図9】密着層のピール強度を示すグラフである。
【図10】Arガス雰囲気への窒素ガスの添加量を変えてスパッタリング法で窒化NiCu合金を形成したときの窒化NiCu合金の組成を示すグラフである。
【図11】窒素ガスの添加量を変えたときの窒化NiCu合金中の窒素含有量の変化を示すグラフである。
【図12】サブトラクティブ法により配線を形成する工程において、基板を準備する工程を示す図である。
【図13】サブトラクティブ法により配線を形成する工程において、密着層及びシード層を形成する工程を示す図である。
【図14】サブトラクティブ法により配線を形成する工程において、Cuめっき層を形成する工程を示す図である。
【図15】サブトラクティブ法により配線を形成する工程において、レジスト膜を形成する工程を示す図である。
【図16】サブトラクティブ法により配線を形成する工程において、Cuめっき層の不要な部分を除去する工程を示す図である。
【図17】サブトラクティブ法により配線を形成する工程において、レジスト膜を除去する工程を示す図である。
【図18】デュアルダマシン法により配線を形成する工程において、基板を準備する工程を示す図である。
【図19】デュアルダマシン法により配線を形成する工程において、密着層及びシード層を形成する工程を示す図である。
【図20】デュアルダマシン法により配線を形成する工程において、Cuめっき層を形成する工程を示す図である。
【図21】デュアルダマシン法により配線を形成する工程において、Cuめっき層の不要な部分を除去する工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態による配線基板の一部の断面図である。本発明の一実施形態による配線基板10は、基板本体11と、パッド12と、絶縁層13と、密着層15と、シード層16と、配線パターン18と、配線19とを有する。シード層16、配線パターン18及び配線19は配線層に相当する。
【0013】
基板本体11の上には、パッド12及び絶縁層13が形成され。基板本体11としては、例えば、コア付きビルドアップ基板やコアレス基板等を用いることができる。パッド12は、基板本体11の上面11Aに設けられる。パッド12は、基板本体11に設けられた配線及びビア(図示せず)と電気的に接続されている。
【0014】
絶縁層13は、基板本体11の上面11A上に形成されている。絶縁層13にはビア孔21(開口部)が形成されており、ビア孔21の底部でパッド12の上面が露出している。ビア孔21は、配線パターン18の一部となるビア23を形成するために設けられた開口部である。絶縁層13としては、例えば、エポキシ樹脂やポリイミド樹脂等の絶縁樹脂材料が用いられる。
【0015】
なお、基板本体11自体が例えばエポキシ樹脂やポリイミド樹脂のような絶縁性樹脂材料で形成されている場合は、絶縁層13を形成する必要はない。そのような場合は、絶縁層13は基板本体11に含まれていると解釈できる。したがって、基板本体11が絶縁性樹脂材料で形成されている場合は基板本体11が基板に相当し、基板本体11上に絶縁層13が形成されている場合は基板本体11と絶縁層13との組み合わせが基板に相当する。このような基板の上に密着層15が形成される。
【0016】
本実施形態では、密着層15は、配線パターン18及び配線19の形成領域に対応する部分の絶縁層13の上面13A、ビア孔21の内面となる絶縁層13の面、及びビア孔21の底部に露出したパッド12の上面に設けられている。密着層15は、絶縁層13とシード層16との間に配置される。密着層15は、シード層16に対して密着性がよく、且つ絶縁層13に対しても密着性がよい材料で形成される。なお、上述のように基板本体11として例えばエポキシ樹脂基板を用いる場合は、絶縁層13は形成されず、基板本体11の上に直接密着層15が形成される。
【0017】
本実施形態において、密着層15は、窒化NiCu合金により形成される。すなわち、密着層15は、NiCu合金に窒素を含有させた材料により形成された薄膜である。窒化NiCu合金より形成する密着層15に含まれるNiの含有率は、例えば、20wt%以上とすることが好ましい。これにより、密着層15と絶縁層13との間の密着性を向上させることができる。絶縁層13とシード層16との間に配置する密着層15を、Niの含有率が20wt%以上の窒化NiCu合金を用いることにより、絶縁層13と密着層15との間の密着性が向上するため、絶縁層13から密着層15が剥がれ難くなる。
【0018】
また、窒化NiCu合金に含まれるNiの含有率は、例えば、20wt%以上75wt%以下(20wt%〜75wt%)の範囲内で設定することが好ましい。このように、窒化NiCu合金に含まれるNiの含有率を20wt%〜75wt%の範囲内に設定することにより、絶縁層13から密着層15が剥がれ難くなる。さらに、例えば、シード層16としてCu層を用いた場合に、不要な部分のシード層16を除去するために使用するCu用エッチング液(例えば、硫酸系水溶液)を用いて、窒化NiCu合金により形成され密着層15をエッチングして除去することができる。
【0019】
なお、窒化NiCu合金に含まれるNiの含有率が75wt%を超えた場合、Cu用エッチング液を用いてNi−Cu合金層15を除去することが難しい。窒化NiCu合金に含まれるNiの含有率を20wt%〜75wt%の範囲内で設定した場合、窒化NiCu合金により形成される密着層15の厚さは、例えば、30nm〜100nmであることが好ましい。
【0020】
ここで、本実施形態によるに密着層15には窒素が含有されており、密着層15は窒化NiCu合金により形成されている。本発明者は、密着層15の材料としてNiCu合金に窒素を含有させることで、樹脂層13に対する密着層15の密着強度をさらに改善することができることを新たに発見した。NiCu合金に対する窒素の含有率は、0.5〜5.0atoms%であることが好ましい。窒素以外のNi及びCuの重量比率は、Ni:Cu=1:2とすることが好ましい。
【0021】
シード層16は、密着層15の上面を覆うように設けられる。シード層16は、電解めっき法により配線パターン18及び配線19を形成する際の給電層として機能する。シード層16としては、例えば、Cu層を用いることができる。シード層16としてCu層を用いる場合、シード層16の厚さは、例えば、300nm〜500nmとすることが好ましい。
【0022】
なお、配線パターン18及び配線19を電解めっき法以外の成膜方法で形成する場合には、給電層としてのシード層16は不要であり、密着層15上に配線層として配線パターン18及び配線19を直接形成することとしてもよい。
【0023】
配線パターン18は、ビア23と、ビア23の上部と一体的に構成された配線24とを含む。ビア23は、ビア孔21に形成されたシード層16上に設けられる。配線24は、ビア23及びシード層16上に設けられる。配線パターン18の材料としては、例えば、Cuが用いられる。配線パターン18は、密着層15及びシード層16を介して、パッド21と電気的に接続される。
【0024】
配線19は、配線パターン18から離間した位置に配置されたシード層16の上面に設けられている。配線19の材料としては、例えば、Cuを用いられる。
【0025】
本実施形態による配線基板では、絶縁層13とシード層16との間に配置する密着層15を形成する材料として、窒素の含有率が0.5atoms%以上5.0atoms%以下(0.5〜5.0atoms%)のNiCu合金を用いることにより、絶縁層13と密着層15との間の密着性が向上するため、絶縁層13から密着層15が剥がれ難くなる。
【0026】
また、密着層15に含まれるNiの含有率を20wt%〜75wt%の範囲内で設定することにより、絶縁層13から密着層15が剥がれ難くなると共に、例えば、Cu用エッチング液(例えば、硫酸系水溶液)を用いて、密着層15をエッチングして除去することができる。
【0027】
次に、上述の配線基板の製造方法について、図2〜図8を参照しながら説明する。図2〜図8は、図1に示す配線基板10の製造工程を示す図である。この製造工程では、アディティブ法によりCu配線を形成する。
【0028】
まず、図10に示す絶縁層形成工程では、周知の方法により、基板本体11の上面11Aに、パッド12と、開口部21を有した絶縁層13とを順次形成する。その後、Arプラズマにより、絶縁層13の上面13A及び開口部21を形成する部分の絶縁層13の面を清浄化する(水分等を除去する)。
【0029】
基板本体11としては、例えば、コア付きビルドアップ基板やコアレス基板等の基板を用いることができる。パッド12は、例えば、サブトラクティブ法やセミアディティブ法等により形成することができる。また、パッド12の材料としては、例えば、Cuを用いることができる。絶縁層13は、例えば、パッド12が形成された基板本体11の上面11Aに、エポキシ樹脂やポリイミド樹脂等からなる半硬化状態の絶縁樹脂シートを貼り付け、半硬化状態の絶縁樹脂シートを硬化させることで形成する。ビア孔21は、例えば、レーザ加工法により形成する。
【0030】
続いて、図3に示す密着層形成工程において、絶縁層13の上面13Aと、ビア孔21を形成する部分の絶縁層13の面及びパッド12の上面とを覆うように、窒化NiCu合金により密着層15を形成する。
【0031】
密着層15を窒素の含有率が0.5〜5.0atoms%のNiCu合金により形成することにより、絶縁層13と密着層15との間の密着性が向上する。具体的には、絶縁層13に対する密着層15のピール強度が0.5kgf/cm以上となるため、絶縁層13から密着層15が剥離することを防止できる。
【0032】
なお、窒化NiCu合金層15に含まれるNiの含有率は、例えば、20wt%〜75wt%の範囲内で設定することが好ましい。窒化NiCu合金に含まれるNiの含有率を20wt%〜75wt%の範囲内に設定することにより、絶縁層13から密着層15が剥がれ難くなくなると共に、シード層16の不要な部分を除去する際に使用するCu用エッチング液(例えば、硫酸系水溶液)を用いて、密着層15の不要な部分(配線パターン18及び配線19の形成領域以外の部分に形成された密着層15)を除去することができる。これにより、シード層16の不要な部分と、密着層15の不要な部分とを別々のエッチング液を用いて除去する必要がなくなるため、配線基板10の製造コストの増加を抑制することができる。
【0033】
密着層15に含まれるNiの含有率を20wt%〜75wt%の範囲内で設定した場合、窒化NiCu合金で形成される密着層15の厚さを、例えば、30nm〜100nmとすることができる。
【0034】
密着層15は、例えば、スパッタリング法により形成されることが好ましい。スパッタリング法を用いて窒化NiCu合金の密着層15を形成することにより、密着層15(窒化NiCu合金)に含まれる窒素及びNiの含有率を精度よく所望の割合に設定することができる。例えば、スパッタリング法により使用するNiCu合金ターゲットのNi含有率を33wt%とすることで、上述の比率Ni:Cu=1:2を達成することができる。
【0035】
次いで、図4に示すシード層形成工程では、密着層15の上面を覆うように、シード層16w形成する。シード層16は、例えば、スパッタ法により形成することが好ましい。スパッタ法を用いてシード層16を形成することにより、密着層15を形成する際に使用するスパッタ装置を用いてシード層16を形成することができる。シード層16の材料としては、例えば、Cuを用いることができる。シード層16をCuで形成した場合、シード層16の厚さは、例えば、300nm〜500nmとすることが好ましい。
【0036】
次いで、図5に示すレジスト膜形成工程において、シード層16の上面に、開口部27A,27Bを有するレジスト膜27を形成する。開口部27Aは、配線パターン18の形成領域に対応する部分のシード層16の上面が露出するように形成される。開口部27Bは、配線19の形成領域に対応する部分のシード層16の上面が露出するように形成される。例えば、レジスト膜27のL/S=12/12μmとし、厚さを25μmとすることが好ましい。
【0037】
次いで、図6に示す配線及び配線パターン形成工程において、シード層16を給電層として用いる電解めっき法により、開口部27A,27Bで露出された部分のシード層16上にめっき膜(例えば、Cuめっき膜)を形成することで、ビア23及び配線24を有する配線パターン18と配線19とを同時に形成する。この段階では、配線パターン18は、密着層15及びシード層16を介して、配線19と電気的に接続されている。配線19,24の厚さは、例えば、20μmとすることが好ましい。
【0038】
次いで、図7に示すレジスト膜除去工程において、図6に示すレジスト膜27を除去する。次いで、図8に示すシード層及び密着層除去工程において、配線パターン18及び配線19の形成領域以外の領域に形成されたシード層16及び密着層15の部分(シード層16の不要な部分及び密着層15の不要な部分)を除去する。
【0039】
具体的には、シード層16としてCu層を用いると共に、密着層15に含まれるNiの含有率を20wt%〜75wt%とした場合、シード層16の不要な部分及び密着層15の不要な部分を、Cu用エッチング液(例えば、硫酸系水溶液)を用いることで同時に除去することができる。
【0040】
以上の工程により、本実施形態による配線基板10が形成される。
【0041】
次に、上述の密着層15の密着性を確認するために行なった実験結果について説明する。本発明者は、上述の製造方法で絶縁層13の上に密着層15を形成し、ピール試験を行なった。密着層15をスパッタリング法で形成する際のArガス雰囲気に窒素ガスを添加してNiCu合金に窒素を含有させた。Arガス雰囲気中に添加する窒素ガスを0%〜20%までの間で変えてサンプルを作成し、ピール試験を行なった。ピール強度は、幅1cmの密着層15を絶縁層13から引き剥がすために必要な力(kgf/cm)で表した。図9は密着層15のピール強度を示すグラフである。
【0042】
図9からわかるように、窒素ガスを添加しない(0%)ときの密着層15のピール強度は0.24kgf/cmと低い値であった。Arガス雰囲気に窒素ガスを添加するとピール強度は上昇し、窒素ガスを5%添加したときのピール強度は0.76kgf/cmにまで上昇した。窒素ガスを7.7%添加したときに、ピール強度は最大の9.1kgf/cmとなった。窒素ガスの添加量をさらに増やすとピール強度は下がり、窒素ガスの添加量が15%となると、ピール強度は0.28kgf/cmまで低下した。
【0043】
ここで、実際の製品で剥離が生じないピール強度を調べた結果、ピール強度が0.5kgf/cm以上あれば密着層の剥離はほとんど無くなり、実用上問題がないことがわかった。図9のグラフから、ピール強度が0.5kgf/cm以上となるのは、窒素ガスの添加量が2.5%以上12.5%以下(2.5%〜12.5%)までの範囲であることがわかった。そこで、Arガス雰囲気への窒素ガスの添加量を2.5%から12.5%としたときに、密着層15として形成された窒化NiCu合金の窒素含有量を調べた。
【0044】
図10は、Arガス雰囲気への窒素ガスの添加量を変えてスパッタリング法で窒化NiCu合金を形成したときの窒化NiCu合金の組成を示すグラフである。Arガス雰囲気への窒素ガスの添加量が0%のとき(すなわち、窒素ガスを添加しないとき)のNiCu合金中のNiは32atoms%であり、Cuは68atoms%であった。Arガス雰囲気に窒素ガスを添加すると、窒素を含有するNiCu合金、すなわち窒化NiCu合金を形成することができた。窒素ガスの添加量を増やすと、窒化NiCu合金に含有された窒素の量も増加した。
【0045】
図11は、図10における窒素含有量の部分の縦軸を拡大したグラフである。窒素の含有量がよくわかるようにしたものである。すなわち、図11のグラフは、Arガス雰囲気への窒素ガスの添加量を変えてスパッタリング法で窒化NiCu合金を形成したときの窒化NiCu合金に含まれる窒素の含有量を示すグラフである。図11のグラフから、Arガス雰囲気への窒素ガスの添加量を2.5%〜12.5%としたときの窒化NiCu合金の窒素含有量は、1atoms%以上5atoms%以下(1atoms%〜5atoms%)であることがわかった。したがって、窒化NiCu合金の窒素含有量が1atoms%〜5atoms%の範囲であれば、窒化NiCu合金で形成された密着層15のピール強度は0.5kgf/cm以上となることがわかった。すなわち、密着層15を形成する窒化NiCu合金の窒素含有量を1atoms%〜5atoms%の範囲とすることで、密着層15のピール強度を0.5kgf/cm以上とすることができ、密着層15の剥離を確実に防止することができる。
【0046】
上述の配線基板10の製造工程では、アディティブ法によりCu配線を形成しているが、サブトラクティブ法やダマシン法を用いてCu配線を形成することとしてもよい。
【0047】
図12〜図17はサブトラクティブ法により基板上に密着層を介してCu配線を形成する工程を示す図である。図12〜図17において、図2〜図8に示す構成部品と同等な部品には同じ符号を付す。
【0048】
図12及び図13に示す工程において、絶縁膜13上に密着層15及びシード層16を形成する工程は、図2〜図4に示す工程と同じであり、その説明は省略する。密着層15は上述のように窒化NiCu合金で形成される。サブトラクティブ法では、絶縁膜13に密着層15及びシード層16を形成した後に、図14に示すめっき層形成工程において、シード層16の全面にCuめっき層30を電解めっき法により形成する。このCuめっき層30の一部が配線パターン18及び配線19となる。
【0049】
Cuめっき層30を形成したら、次に図15に示すレジストパターニング工程において、Cuめっき層の上にレジスト27を形成し、レジスト27に開口27Cを形成する。開口27Cは配線パターン18及び配線19が形成される領域以外の領域においてCuめっき層30が露出するように形成される。
【0050】
続いて、図16に示すめっき層除去工程において、開口27Cで露出したCuめっき層30をエッチングにより除去する。エッチング液として、例えば塩化第二銅溶液を用いる。この時、Cuめっき層30の下にあるシード層16及び密着層15も同時にエッチングにより除去することができる。レジスト27で覆われためっき層30の部分が残り、この部分が配線パターン18及び配線19となる。そして、図17に示すレジスト除去工程においてレジスト27を除去し、配線パターン18及び配線19が形成された配線基板10が完成する。
【0051】
図18〜図21はデュアルダマシン法により基板上に密着層を介してCu配線を形成する工程を示す図である。図18〜図21において、図2〜図8に示す構成部品と同等な部品には同じ符号を付す。
【0052】
図18において、絶縁膜13上に密着層15及びシード層16を形成する工程は、図2〜図4に示す工程と同じであり、その説明は省略する。ただし、デュアルダマシン法では、絶縁膜13の配線パターン18及び配線19が形成される領域に配線溝13A,13Bが形成される。配線溝13Aは配線パターン18が形成される領域であり、配線溝13Bは配線19が形成される領域に相当する。
【0053】
続いて、図19に示すように、配線溝13A,13Bの内面を含む絶縁膜13の表面に窒化NiCu膜よりなる密着層15及びシード層16を形成する。そして、図20に示すように、電解めっき法によりシード層16の上にCuめっき層40を形成し、配線溝13A,13Bの中にCuめっき層40を充填する。そして、図21に示すように、絶縁層13の表面に形成されたCuめっき層40を化学機械研磨(CMP)により除去し、且つシード層16及び密着層15をエッチングにより除去する。これにより、配線溝13A,13Bの中にCuめっき層40が残り、この部分が配線パターン18及び配線19となる。
【0054】
上述の本実施形態による配線基板及びその製造方法によれば、絶縁層13とシード層16との間に配置する密着層15として窒素を含有したNiCu合金層を形成することにより、窒素を含有しないNiCu合金で形成した密着層よりも絶縁層13に対する密着層15のピール強度を増大することができる。密着層15の窒素含有量を1atoms%以上5atoms%以下とすることで、窒化NiCu合金により形成する密着層15のピール強度は0.5kg/cm以上となり、実用上十分なピール強度となるため、絶縁層13からの密着層15の剥離を防止することができる。
【0055】
また、密着層15を形成する窒化NiCu合金に含まれるNiの含有率を20wt%以上75wt%以下の範囲に設定することにより、例えば、シード層16としてCu層を用いた場合、Cu用エッチング液を用いてシード層16の不要な部分と密着層15の不要な部分とを同一工程で除去することができる。これにより、配線基板10の製造コストの増加を抑制することができる。
【0056】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明はかかる特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0057】
10 配線基板
11 基板本体
11A,13A 上面
12 パッド
13 絶縁層
15 密着層
16 シード層
18 配線パターン
19,24 配線
21 ビア孔
23 ビア
27 レジスト膜
27A,27B,27C 開口部
30,40 Cuめっき層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
該基板上に形成された密着層と、
該密着層上に形成された配線層と
を有し、
前記密着層は、窒化NiCu合金により形成されたことを特徴とする配線基板。
【請求項2】
請求項1記載の配線基板であって、
前記窒化NiCu合金の窒素含有量は、1atoms%以上5atoms%以下であることを特徴とする配線基板。
【請求項3】
請求項1又は2記載の配線基板であって、
前記配線層は、前記密着層の上に形成されたシード層を含むことを特徴とする配線基板。
【請求項4】
請求項3記載の配線基板であって、
前記シード層はCuにより形成され、前記密着層に含まれるNiの含有率は20wt%以上75wt%以下であることを特徴とする配線基板。
【請求項5】
請求項1乃至3のうちいずれか一項記載の配線基板であって、
前記基板は、基板本体と該基板本体の表面に形成された樹脂絶縁層とを含むことを特徴とする配線基板。
【請求項6】
表面が絶縁樹脂よりなる基板を準備し、
該基板上に、窒化NiCu合金により密着層を形成し、
該密着層上に配線層を形成する
ことを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項7】
請求項6記載の配線基板の製造方法であって、
前記密着層の形成は、窒素を添加した雰囲気中でNiCu合金をターゲットとしてスパッタリング法により行うことを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項8】
請求項7記載の配線基板の製造方法であって、
前記雰囲気はArガス雰囲気であり、該Arガス雰囲気への窒素の添加量を2.5%以上12.5%以下とすることを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項9】
請求項6乃至8のうちいずれか一項記載の配線基板の製造方法であって、
前記配線層の形成は、前記密着層上にCuシード層を形成してから該Cuシード層上にCu配線層を形成することを含み、
前記密着層を形成するNiCu合金のNiの含有率を20wt%以上75wt%以下とし、
前記配線層が形成されない領域において、前記配線層をエッチングで除去する際に同時に前記密着層をエッチングして除去することを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項10】
請求項6乃至9のうちいずれか一項記載の配線基板の製造方法であって、
前記基板の準備は、基板本体上に樹脂により絶縁層を形成することを含むことを特徴とする配線基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2011−61113(P2011−61113A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−211368(P2009−211368)
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【出願人】(000190688)新光電気工業株式会社 (1,516)
【Fターム(参考)】