説明

配線基板及び配線基板の製造方法

【課題】より高速な信号伝送を行うこと。
【解決手段】本発明の配線基板は、側壁導電層3と、ランド4とを具備している。側壁導電層3は、基板1に開口されたスルーホール2の側壁に形成されている。ランド4は、側壁導電層3に接続された導電層であり、配線に使用される必要最小限の部分であるランド部分11だけが基板1の表面に形成されている。本発明では、ランド4のうちのランド部分11以外の不要部分12が削除される。このため、ランド4のうちの、配線に使用される必要最小限の部分だけを残し、不要な部分を削除することにより、ランド4による配線容量のうちの、不要な配線容量を減らすことができる。これにより、本発明では、配線抵抗Rと配線容量Cの掛け算で表される「時定数」を充分に小さくすることができ、信号の立ち上がり又は立下りの速度を上げることができるため、より高速な信号伝送を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板及び配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
配線基板の一形態として、基板にスルーホールが開口されたタイプがある。この配線基板は、基板と、側壁導電層と、ランドとを具備している。側壁導電層は、基板に開口されたスルーホールの側壁に沿って延び、基板の表面に達する導電層である。ランドは、基板の表面に形成され、側壁導電層に接続された導電層である。ランド上には、例えばビアを介して信号線が接続される。
【0003】
この信号線により信号を高速で伝送する場合、その信号の反射だけでなく、信号のレベルが切り替わったときの立ち上がり(又は立下り)の速度も考慮しなければならない。
【0004】
信号の立ち上がり(又は立下り)の速度は、配線抵抗Rと配線容量Cの掛け算で表される「時定数」により物理的に決まる。従って、信号伝送の高速化を実現しようとする場合、配線抵抗を下げるか、配線容量を減らすことにより対応を行う必要がある。一般的には、配線容量を減らすことにより対応を行う。
【0005】
配線基板に関連する技術として、特開平10−51137号公報、特開昭60−257585号公報には、スルーホール、側壁導電層及びランドを分割して、2以上の配線パターンを形成する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−51137号公報
【特許文献2】特開昭60−257585号公報
【特許文献3】特開2003−273273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特開平10−51137号公報、特開昭60−257585号公報に記載された技術では、ランドの最小径が制限されている条件において電子機器の高密度化、高集積化を実現するために、ランドと共に、スルーホール及び側壁導電層を分割している。
【0008】
しかし、近年では、高密度化、高集積化が更に進み、スルーホールの径が小さくなっているため、単に、ランドを分割するだけでは、配線容量を充分に減らすことはできない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下に、発明を実施するための形態で使用される符号を括弧付きで用いて、課題を解決するための手段を記載する。この符号は、特許請求の範囲の記載と発明を実施するための形態の記載との対応を明らかにするために付加されたものであり、特許請求の範囲に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0010】
本発明の配線基板は、側壁導電層(3)と、ランド(4)とを具備している。側壁導電層(3)は、基板(1)に開口されたスルーホール(2)の側壁に形成された導電層である。ランド(4)は、側壁導電層(3)に接続された導電層であり、基板(1)の表面に形成されている。
【0011】
側壁導電層(3)は、スルーホール(2)の側壁に沿って延びる第1側壁導電層(3−1)と第2側壁導電層(3−2)とを有する。第1側壁導電層(3−1)は、基板(1)の表面に達し、ランド(4)に接続されている。第2側壁導電層(3−2)は、第1側壁導電層(3−1)に接続され、基板(1)の表面に達しない。この第2側壁導電層(3−2)は、ランド(4)の不要部分(12)が削除されるときに形成される。
【0012】
本発明によれば、本発明では、ランド(4)のうちのランド部分(11)以外の不要部分(12)が削除される。このため、ランド(4)のうちの、配線に使用される必要最小限の部分だけを残し、不要な部分を削除することにより、ランド(4)及び側壁導電層(3)による配線容量のうちの、不要な配線容量を減らすことができる。このため、配線抵抗Rと配線容量Cの掛け算で表される「時定数」を充分に小さくすることができ、信号の立ち上がり(又は立下り)の速度を上げることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、高速な信号伝送を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1A】図1Aは、本発明の第1実施形態による配線基板の構成を示す上面図である。
【図1B】図1Bは、図1AのA−A’断面図である。
【図2】図2は、本発明の第1実施形態による配線基板の製造方法を示すフローチャートである。
【図3A】図3Aは、図2のスルーホール開口工程(S1)、側壁導電層形成工程(S2)、ランド形成工程(S3)を説明するための断面図である。
【図3B】図3Bは、図2のランド形成工程(S3)を説明するための上面図である。
【図3C】図3Cは、図2の不要部分削除工程(S4)を説明するための断面図である。
【図3D】図3Dは、図2の不要部分削除工程(S4)を説明するための上面図である。
【図3E】図3Eは、図2の不要部分削除工程(S4)を説明するための断面図である。
【図3F】図3Fは、図2の穴うめ工程(S5)を説明するための断面図である。
【図3G】図3Gは、図2のビア形成工程(S11)、信号線配線工程(S12)を説明するための断面図である。
【図3H】図3Hは、図3Dと異なる方法で不要部分を削除した場合における配線基板の上面図である。
【図4A】図4Aは、本発明の第2実施形態による配線基板の構成を示す上面図である。
【図4B】図4Bは、図4AのB−B’断面図である。
【図5】図5は、本発明の第2実施形態による配線基板の製造方法を示すフローチャートである。
【図6A】図6Aは、図5のスルーホール開口工程(S1)、側壁導電層形成工程(S2)、ランド形成工程(S3)を説明するための断面図である。
【図6B】図6Bは、図5のランド形成工程(S3)を説明するための上面図である。
【図6C】図6Cは、図5の不要部分削除工程(S4)を説明するための断面図である。
【図6D】図6Dは、図5の不要部分削除工程(S4)を説明するための上面図である。
【図6E】図6Eは、図5の穴うめ工程(S5)を説明するための断面図である。
【図6F】図6Fは、図5の第1配線層形成工程(S21)、プレーン形成工程(S22)を説明するための断面図である。
【図6G】図6Gは、図5のビア形成工程(S23)、信号線配線工程(S24)、第2配線層形成工程(S25)を説明するための断面図である。
【図7A】図7Aは、本発明の第3実施形態による配線基板の構成を示す上面図である。
【図7B】図7Bは、図7AのC−C’断面図である。
【図8】図8は、本発明の第3実施形態による配線基板の製造方法を示すフローチャートである。
【図9A】図9Aは、図7のスルーホール開口工程(S1)、側壁導電層形成工程(S2)、ランド形成工程(S3)を説明するための断面図である。
【図9B】図9Bは、図7の不要部分削除工程(S4)を説明するための断面図である。
【図9C】図9Cは、図7の不要部分削除工程(S4)を説明するための上面図である。
【図9D】図9Dは、図7の穴うめ工程(S5)を説明するための断面図である。
【図9E】図9Eは、図7のランド部分削除工程(S31)を説明するための断面図である。
【図9F】図9Fは、図7の信号線配線工程(S32)を説明するための断面図である。
【図10】図10は、本発明の第3実施形態による配線基板の作用・効果を説明するための上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照して、本発明の実施形態による配線基板について詳細に説明する。
【0016】
(第1実施形態)
図1Aは、本発明の第1実施形態による配線基板の構成を示す上面図である。図1Bは、図1AのA−A’断面図である。本発明の第1実施形態による配線基板は、基板1と、側壁導電層3と、第1ランド4と、第2ランド5と、絶縁物6と、ビア7と、信号線8とを具備している。
【0017】
側壁導電層3は、基板1に開口されたスルーホール2の側壁に沿って延びる導電層である。側壁導電層3は、第1ブロック(以下、第1側壁導電層3−1と称する)と、第1側壁導電層3−1に接続された第2ブロック(以下、第2側壁導電層3−2と称する)とを含んでいる。第1側壁導電層3−1は、基板1の表面に達している。第2側壁導電層3−2は、基板1の表面に達しない。
【0018】
第1ランド4は、側壁導電層3に接続された導電層であり、配線に使用される必要最小限の部分であるランド部分11だけが基板1の表面に形成されている。第1側壁導電層3−1は、ランド部分11に接続されている。第2側壁導電層3−2は、第1ランド4のうちのランド部分11以外の不要部分(後述)が削除されるときに形成される。
【0019】
第2ランド5は、基板1の表面に形成され、ランド部分11に接続される導電層である。
【0020】
絶縁物6は、第1側壁導電層3−1と、第2側壁導電層3−2と、基板1が削られた部分13とを覆う穴埋め材である。絶縁物6としては、樹脂が用いられる。
【0021】
ビア7は、第2ランド5上に形成されている。信号線8は、ビア7上に形成されている。なお、図では絶縁層を省略してある。実際には信号線8と基板1との間には絶縁層(図示せず)が存在する。
【0022】
図2は、本発明の第1実施形態による配線基板の製造方法を示すフローチャートである。
【0023】
(ステップS1;スルーホール開口工程)
まず、図3Aに示されるように、基板1が用意される。基板1には、スルーホール2が開口される。
【0024】
(ステップS2;側壁導電層形成工程)
次に、図3Aに示されるように、スルーホール2の側壁に沿って延びる導電層である側壁導電層3が形成される。例えば、側壁導電層3としては、銅、アルミニウムなどの金属が使用される。
【0025】
(ステップS3;ランド形成工程)
次に、図3A及び図3Bに示されるように、基板1の表面には、側壁導電層3に接続された導電層である第1ランド4と、第1ランド4に接続された導電層である第2ランド5とが形成される。例えば、第1ランド4、第2ランド5としては、銅、アルミニウムなどの金属が使用される。
【0026】
(ステップS4;不要部分削除工程)
次に、図3Cに示されるように、ドリルが操作されることにより、第1ランド4のうちのランド部分11以外の不要部分12が削除される。ランド部分11は、第1ランド4のうちの、配線に使用される必要最小限の部分であり、第2ランド5に接続されている。不要部分12は、第1ランド4のうちの、配線に使用されない部分である。図3Dに示される例では、ドリルの位置をずらしながら4回操作することにより、不要部分12が削除される。
【0027】
図3Eに示されるように、ドリルにより不要部分12が削除されたときに、基板1が削られると共に、側壁導電層3のうちの、不要部分12に接する部分が削られる。このとき、側壁導電層3は、第1側壁導電層3−1と、第1側壁導電層3−1に接続された第2側壁導電層3−2とにより構成される。第1側壁導電層3−1は、基板1の表面に達し、ランド部分11に接続されている。第2側壁導電層3−2は、不要部分12に接する部分が削除されるときに形成される。このため、第2側壁導電層3−2は、基板1の表面に達しない。
【0028】
本実施形態では、不要部分12と、側壁導電層3のうちの、不要部分12に接する部分とをドリルにより削除しているが、エッチングやレーザー加工により削除してもよい。
【0029】
(ステップS5;穴うめ工程)
次に、図3Fに示されるように、ドリルにより不要部分12が削除されたときに基板1が削られた部分13が形成される。この部分13と、第2側壁導電層3−2と第1側壁導電層3−1に接して樹脂である絶縁物6が充填される。これにより、第1側壁導電層3−1と、第2側壁導電層3−2と、基板1が削られた部分13とが絶縁物6で覆われる。
【0030】
(ステップS11;ビア形成工程)
次に、図3Gに示されるように、第2ランド5上には、ビア7が形成される。なお、図3Gでは、図1Bと同様に絶縁層を省略してある。
【0031】
(ステップS12;信号線配線工程)
次に、図3Gに示されるように、ビア7上には、信号線8が形成される。
【0032】
以上の工程により、図1Aの構造を得ることができる。図1Aの構造に限らず、例えば図3Hのようにすることもできる。この場合は、ステップS4の不要部分削除工程において、ドリルの位置を少しずつずらしながら不要部分12を切除することで、図3Hの構造を得ることができる。この場合でも、図3Hにおける、A−A’断面は図3Eから図3Gのようになっている。
【0033】
[作用1−1]
不要部分削除工程(ステップS4)を実施する理由について説明する。
【0034】
信号線により信号を高速で伝送する場合、その信号の反射だけでなく、信号のレベルが切り替わったときの立ち上がり(又は立下り)の速度も考慮しなければならない。信号の立ち上がり(又は立下り)の速度は、配線抵抗Rと配線容量Cの掛け算で表される「時定数」により物理的に決まる。従って、信号伝送の高速化を実現しようとする場合、配線抵抗を下げるか、配線容量を減らすことにより対応を行う必要がある。一般的には、配線容量を減らすことにより対応を行う。
【0035】
例えば、特開平10−51137号公報、特開昭60−257585号公報に記載された技術では、ランドの最小径が制限されている条件において電子機器の高密度化、高集積化を実現するために、ランドと共に、スルーホール及び側壁導電層を分割している。しかし、近年では、高密度化、高集積化が更に進み、スルーホールの径が小さくなっているため、単に、ランドを分割するだけでは、配線容量Cを充分に減らすことはできない。
【0036】
これに対して、本発明の第1実施形態による配線基板では、不要部分削除工程(ステップS4)を実施することにより、ランド4のうちのランド部分11以外の不要部分12が削除される。この工程において、ランド4のうちの、配線に使用される必要最小限の部分だけを残し、不要な部分を削除することにより、ランド4による配線容量のうちの、不要な配線容量を減らすことができる。
【0037】
[作用1−2]
不要部分削除工程(ステップS4)において、側壁導電層3のうちの、ランド部分11に接続された第1側壁導電層3−1以外の部分(第2側壁導電層3−2)を全て削除しない理由について説明する。
【0038】
まず、特開平10−51137号公報、特開昭60−257585号公報に記載された技術では、ランドと共に、スルーホール及び側壁導電層が分割されたとき、側壁導電層は2以上のブロックに分割される。このとき、ブロック間に余計な容量が発生してしまう。
【0039】
これに対して、本発明の第1実施形態による配線基板では、不要部分削除工程(ステップS4)を実施することにより、側壁導電層3のうちの、不要部分12に接する部分が削除される。この工程において、側壁導電層3の不要部分12に接する部分だけ削り、側壁導電層3を分割しないことにより、側壁導電層3に対する余計な容量が発生しない。
【0040】
[効果1]
このように、本発明の第1実施形態による配線基板によれば、不要部分削除工程(ステップS4)を実施することにより、ランド4による配線容量のうちの、不要な配線容量を減らすことができ、側壁導電層3に対する余計な容量が発生しない。これにより、時定数を充分に小さくすることができ、信号の立ち上がり(又は立下り)の速度を上げることができるため、より高速な信号伝送を行うことができる。
【0041】
(第2実施形態)
絶縁物6上に信号線が存在する場合、配線容量が変わってしまう。そこで、本発明の第2実施形態による配線基板では、第1実施形態における穴うめ工程(ステップS5)の後に、シールド用のプレーンを配置する工程などが追加される。第2実施形態では、第1実施形態と重複する説明について省略する。
【0042】
図4Aは、本発明の第2実施形態による配線基板の構成を示す上面図である。図4Bは、図4AのB−B’断面図である。本発明の第2実施形態による配線基板は、基板1と、側壁導電層3と、第1ランド4と、第2ランド5と、絶縁物6と、導電層20、21と、第1プレーン22と、ビア7と、信号線24と、他の信号線25と、第2プレーン26とを具備している。即ち、本発明の第2実施形態による配線基板は、第1実施形態における信号線8に代えて、導電層20、21、第1プレーン22、信号線24、他の信号線25、第2プレーン26を具備している。なお、図4Bでは、基板1と第2プレーン26との間に存在する絶縁層を省略してある。
【0043】
導電層21は、ランド部分11と第2ランド5上に形成されている。
【0044】
第1プレーン22は、基板1の上方(即ち、導電層20上)と絶縁物6上とに形成されたシールド用の配線層である。
【0045】
ビア7は、導電層21上に形成され、信号線24は、ビア7上に形成されている。他の信号線25は、プレーン22の上方に形成されている。
【0046】
第2プレーン26は、信号線24及び他の信号線25の上方に形成されたシールド用の配線層である。
【0047】
図5は、本発明の第2実施形態による配線基板の製造方法を示すフローチャートである。
【0048】
(ステップS1;スルーホール開口工程)
まず、図6Aに示されるように、基板1が用意される。基板1には、スルーホール2が開口される。
【0049】
(ステップS2;側壁導電層形成工程)
次に、図6Aに示されるように、スルーホール2の側壁には、導電層である側壁導電層3が形成される。
【0050】
(ステップS3;ランド形成工程)
次に、図6A及び図6Bに示されるように、基板1の表面には、側壁導電層3に接続された第1ランド4と、第1ランド4に接続された第2ランド5と、第1ランド4に接続された導電層20とが形成される。例えば、導電層20としては、銅、アルミニウムなどの金属が使用される。
【0051】
(ステップS4;不要部分削除工程)
次に、図6Cに示されるように、ドリルが操作されることにより、第1ランド4のうちのランド部分11以外の不要部分12が削除される。ランド部分11は、第1ランド4のうちの、配線に使用される必要最小限の部分であり、第2ランド5に接続されている。不要部分12は、第1ランド4のうちの、配線に使用されない部分であり、導電層20に接続されている。図6Dに示される例では、ドリルの位置をずらしながら4回操作することにより、不要部分12が削除される。
【0052】
図6Eに示されるように、ドリルにより不要部分12が削除されたときに、基板1が削られると共に、側壁導電層3のうちの、不要部分12に接する部分が削られる。このとき、側壁導電層3は、第1側壁導電層3−1と、第1側壁導電層3−1に接続された第2側壁導電層3−2とにより構成される。第1側壁導電層3−1は、基板1の表面に達し、ランド部分11に接続されている。第2側壁導電層3−2は、不要部分12に接する部分が削除されるときに形成される。このため、第2側壁導電層3−2は、基板1の表面に達しない。
【0053】
本実施形態では、不要部分12と、側壁導電層3のうちの、不要部分12に接する部分とをドリルにより削除しているが、エッチングやレーザー加工により削除してもよい。
【0054】
(ステップS5;穴うめ工程)
次に、図6Eに示されるように、ドリルにより不要部分12が削除されたときに基板1が削られた部分13が形成される。この部分13は、第2側壁導電層3−2に接し、第1側壁導電層3−1と第2側壁導電層3−2と共に露出している。このため、第1側壁導電層3−1と、第2側壁導電層3−2と、基板1が削られた部分13上には、樹脂である絶縁物6が形成される。これにより、第1側壁導電層3−1と、第2側壁導電層3−2と、基板1が削られた部分13とが絶縁物6で覆われる。
【0055】
(ステップS21;第1プレーン形成工程)
次に、図6Fに示されるように、基板1の上方(即ち、導電層20上)と絶縁物6上には、シールド用の第1プレーン22が形成される。このとき、第1プレーン22との高さを合わせるために、ランド部分11と第2ランド5上には、導電層21が形成される。例えば、導電層21としては、銅、アルミニウムなどの金属が使用され、第1プレーン22には、めっきが使用される。
【0056】
(ステップS22;ビア形成工程)
次に、図6Gに示されるように、導電層21上には、ビア7が形成される。
【0057】
(ステップS23;信号線配線工程)
次に、図6Gに示されるように、ビア7上には、信号線24が形成される。第1プレーン22上には、第1の絶縁層(図示しない)を介して他の信号線25が形成される。
【0058】
(ステップS24;第2プレーン形成工程)
次に、図6Gに示されるように、信号線24及び他の信号線25の上方には、第2の絶縁層(図示しない)を介してシールド用の第2プレーン26が形成される。例えば、第2プレーン26には、めっきが使用される。
【0059】
[作用2]
第1プレーン形成工程(ステップS21)を実施する理由について説明する。
【0060】
一般的に、信号線の直下にプレーンがあれば、その部分にリターンパス(帰還電流経路)ができるが、側壁導電層上に形成された絶縁物の上方に信号線が存在する場合、その部分でプレーンがないので、帰還電流は絶縁物の直下の側壁導電層に沿って流れる。そのため、その部分だけ信号線の特性が狂う。特に高速信号の場合、絶縁物上を3回程度跨いで配線するだけで、配線容量が変わってしまい、高速信号の信号特性が満足できなくなる場合もある。
【0061】
そこで、特開2003−273273号公報に記載された技術では、絶縁層(上述の例では、第1、2の絶縁層に相当)の厚みを変えることにより、理想的な信号特性を実現している。
【0062】
これに対して、本発明の第2実施形態による配線基板では、第1プレーン形成工程(ステップS21)を実施することにより、側壁導電層3と電気的に接続しなければならない最低限の場所(ランド部分11周辺)を避けるように、基板1の上方(導電層20上)と絶縁物6とが第1プレーン22で覆われる。この工程において、絶縁物6の直下の側壁導電層3に対してプレーンで覆われる面積(プレーン面積)が広がることにより、絶縁物6上に信号線が存在しても、配線容量を維持でき、高速信号の信号特性を満足できる。
【0063】
また、本発明の第2実施形態による配線基板では、基板1の上方(導電層20上)と絶縁物6とが第1プレーン22で覆われることにより、第1、2の絶縁層の厚みを変えなくても、理想的な信号特性を実現している。
【0064】
[効果2]
このように、本発明の第2実施形態による配線基板によれば、絶縁物6上に信号線が配線される場合でも、第1プレーン形成工程(ステップS21)を実施することにより、第1実施形態における効果に加えて、高速信号の信号特性を満足できる。そのため、第1ランド4が小型になり、且つ、プレーン面積が広がることにより、そのエリアに配線できる信号線の密度が上がり、より小型の製品を作ることが可能となる。
【0065】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態による配線基板では、第1実施形態に対して安価に作成するために、ビア7上ではなく、基板1上に信号線を配線する。第3実施形態では、第1、2実施形態と重複する説明について省略する。
【0066】
図7Aは、本発明の第3実施形態による配線基板の構成を示す上面図である。図7Bは、図7AのC−C’断面図である。本発明の第3実施形態による配線基板は、基板1と、側壁導電層3と、第1ランド4(以下、ランド4と称する)と、絶縁物6と、信号線31と、他の信号線32〜35とを具備している。即ち、本発明の第3実施形態による配線基板は、第1実施形態における第2ランド5、ビア7、信号線8に代えて、信号線31、他の信号線32〜35を具備している。
【0067】
信号線31は、基板1の表面に形成され、側壁導電層3に接続されている。
【0068】
他の信号線32〜35は、絶縁物6の表面、基板1の表面に形成されている。
【0069】
図8は、本発明の第3実施形態による配線基板の製造方法を示すフローチャートである。
【0070】
(ステップS1;スルーホール開口工程)
まず、図9Aに示されるように、基板1が用意される。基板1には、スルーホール2が開口される。
【0071】
(ステップS2;側壁導電層形成工程)
次に、図9Aに示されるように、スルーホール2の側壁には、導電層である側壁導電層3が形成される。
【0072】
(ステップS3;ランド形成工程)
次に、図9Aに示されるように、基板1の表面には、側壁導電層3に接続されたランド4と、ランド4に接続された導電層20とが形成される。
【0073】
(ステップS4;不要部分削除工程)
次に、図9Bに示されるように、ドリルが操作されることにより、ランド4のうちのランド部分11以外の不要部分12が削除される。ランド部分11は、ランド4のうちの、配線に使用される必要最小限の部分である。不要部分12は、第1ランド4のうちの、配線に使用されない部分であり、導電層20に接続されている。図9Cに示される例では、ドリルの位置をずらしながら4回操作することにより、不要部分12が削除される。
【0074】
図9Dに示されるように、ドリルにより不要部分12が削除されたときに、基板1が削られると共に、側壁導電層3のうちの、不要部分12に接する部分が削られる。このとき、側壁導電層3は、第1側壁導電層3−1と、第1側壁導電層3−1に接続された第2側壁導電層3−2とにより構成される。第1側壁導電層3−1は、基板1の表面に達し、ランド部分11に接続されている。第2側壁導電層3−2は、不要部分12に接する部分が削除されるときに形成される。このため、第2側壁導電層3−2は、基板1の表面に達しない。
【0075】
本実施形態では、不要部分12と、側壁導電層3のうちの、不要部分12に接する部分とをドリルにより削除しているが、エッチングにより削除してもよい。
【0076】
(ステップS5;穴うめ工程)
次に、図9Dに示されるように、ドリルにより不要部分12が削除されたときに基板1が削られた部分13が形成される。この部分13は、第2側壁導電層3−2に接し、第1側壁導電層3−1と第2側壁導電層3−2と共に露出している。このため、第1側壁導電層3−1と、第2側壁導電層3−2と、基板1が削られた部分13上には、樹脂である絶縁物6が形成される。これにより、第1側壁導電層3−1と、第2側壁導電層3−2と、基板1が削られた部分13とが絶縁物6で覆われる。
【0077】
(ステップS31;ランド部分削除工程)
次に、図9Eに示されるように、研磨により導電層20とランド部分11とが削除される。
【0078】
(ステップS32;信号線配線工程)
次に、図9Fに示されるように、基板1の表面には、第1側壁導電層3−1に接続された信号線31が形成される。絶縁物6の表面、基板1の表面には、他の信号線32〜34が形成される。
【0079】
本実施形態では、基板1上にパターンが形成される配線方式だが、例えば基板1の表面にレーザーなどで溝を掘って、そこにパターンを形成するような埋め込み型の配線方式でもよい。
【0080】
[作用3]
ランド部分削除工程(ステップS31)と信号線配線工程(ステップS32)とを実施する理由について説明する。
【0081】
一般的に、信号線の幅に比べてランドの径は数倍以上大きいので、ランドがある層で配線を行うと、あまり配線密度を上げられない。
【0082】
これに対して、本発明の第3実施形態による配線基板では、不要部分削除工程(ステップS4)を実施することにより、ランド4のうちの不要部分12が削除され、側壁導電層3のうちの、不要部分12に接する部分が削除される。そこで、ランド部分削除工程(ステップS31)と信号線配線工程(ステップS32)とを実施することにより、ランド部分11が削除されて、第1側壁導電層3−1に接続された信号線31が形成される。この場合、図10に示されるように、信号線31と他の信号線32〜35とが同じ層で配線が行われる場合、信号線31、他の信号線32〜35の間隔はランドの半径よりも狭くすることが可能である。
【0083】
[効果3]
このように、本発明の第3実施形態による配線基板によれば、ランド部分削除工程(ステップS31)と信号線配線工程(ステップS32)を実施することにより、第1実施形態における効果に加えて、配線密度を上げることができる。これにより、更に高密度のパターンを形成でき、製品の更なる小型化も実現できる。
【符号の説明】
【0084】
1 基板、
2 スルーホール、
3 側壁導電層、
3−1 第1側壁導電層、
3−2 第2側壁導電層、
4 第1ランド、
5 第2ランド、
6 絶縁物、
7 ビア、
8 信号線、
11 ランド部分、
12 不要部分、
13 部分、
20 導電層、
21 導電層、
22 第1プレーン、
24 信号線、
25 他の信号線、
26 第2プレーン、
31 信号線、
32〜35 他の信号線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に開口されたスルーホールの側壁に形成された導電層である側壁導電層と、
前記側壁導電層に接続され、前記基板の表面に形成された導電層であるランドと
を具備し、
前記側壁導電層は、
前記スルーホールの側壁に沿って延びて前記基板の表面に達し、前記ランドに接続された第1側壁導電層と、
前記第1側壁導電層に接続され、前記スルーホールの側壁に沿って延びて前記基板の表面に達しない第2側壁導電層と
を有する配線基板。
【請求項2】
前記側壁導電層を覆う絶縁物
を更に具備する請求項1に記載の配線基板。
【請求項3】
前記ランド上に形成されたビアと、
前記ビア上に形成された信号線と
を更に具備する請求項2に記載の配線基板。
【請求項4】
前記基板と前記絶縁物上に形成されたシールド用の第1プレーン
を更に具備する請求項3に記載の配線基板。
【請求項5】
前記第1プレーンの上方に形成された他の信号線と、
前記信号線及び前記他の信号線の上方に形成されたシールド用の第2プレーンと
を更に具備する請求項4に記載の配線基板。
【請求項6】
基板にスルーホールを開口する工程と、
前記スルーホールの側壁に導電層である側壁導電層を形成する工程と、
前記側壁導電層に接続された導電層であるランドを前記基板の表面に形成する工程と、
前記ランドの配線に使用されない不要部分と、前記側壁導電層の前記不要部分に接する部分とを削除する工程と
を具備し、
前記削除する工程により、前記側壁導電層には、
前記スルーホールの側壁に沿って延びて前記基板の表面に達し、前記ランドに接続された第1側壁導電層と、
前記第1側壁導電層に接続され、前記スルーホールの側壁に沿って延びて前記基板の表面に達しない第2側壁導電層と
が形成される配線基板の製造方法。
【請求項7】
前記側壁導電層を絶縁物で覆う工程
を更に具備する請求項6に記載の配線基板の製造方法。
【請求項8】
前記ランド上にビアを形成する工程と、
前記ビア上に信号線を形成する工程と
を更に具備する請求項7に記載の配線基板の製造方法。
【請求項9】
前記基板と前記絶縁物上にシールド用の第1プレーンを形成する工程
を更に具備する請求項8に記載の配線基板の製造方法。
【請求項10】
前記第1プレーンの上方に他の信号線を形成する工程と、
前記信号線及び前記他の信号線の上方にシールド用の第2プレーンを形成する工程と
を更に具備する請求項9に記載の配線基板の製造方法。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図3C】
image rotate

【図3D】
image rotate

【図3E】
image rotate

【図3F】
image rotate

【図3G】
image rotate

【図3H】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6A】
image rotate

【図6B】
image rotate

【図6C】
image rotate

【図6D】
image rotate

【図6E】
image rotate

【図6F】
image rotate

【図6G】
image rotate

【図7A】
image rotate

【図7B】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9A】
image rotate

【図9B】
image rotate

【図9C】
image rotate

【図9D】
image rotate

【図9E】
image rotate

【図9F】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2011−204733(P2011−204733A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−67894(P2010−67894)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】