説明

配線基板及び配線基板の製造方法

【課題】パネルサイズが大きく、厚みが薄く、ランド残り幅が微小な配線基板であっても、パネルサイズでの位置合せで位置合せ精度を満足可能であり、また歩留まりを向上させることが可能な配線基板及び配線基板の製造方法を提供する。
【解決手段】端部に設けられた製品外領域と、この製品外領域の内側に設けられ製品となるシートが複数配置された製品領域と、を有する配線基板であって、この配線基板とフォトマスクとを位置合せするための位置合わせ用ガイドが、前記製品領域であって、前記配線基板の横方向二等分線に対して対称になる位置または縦方向二等分線に対して対称となる位置に、形成される配線基板。また、この配線基板を用いる配線基板の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は配線基板及び配線基板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やパーソナルコンピュータをはじめとする電子機器では、サイズの小型化が進んでおり、これに伴って、電子機器に用いられる配線基板には微細化とともに高精度化が求められている。例えば、配線層が6層であっても、厚さ0.3mm以下であること、また、ランド径と層間接続孔径との差が60μm以下(即ち、ランド残り幅が片側30μm以下)といったものが求められている。このように、ランド残り幅が微小な配線基板では、層間接続用の貫通孔や非貫通孔と、配線基板の導体パターンであるランドとが、ランド残り幅以上に位置ずれを起こすと、ランドから層間接続孔が飛び出してしまう、いわゆるランド切れを生じ、歩留まり低下に繋がる問題がある。
【0003】
このような高精細化が進む一方で、コストの抑制は前提となっており、そのためには、配線基板を製造する際に、できるだけ多くのシート(製品サイズの配線基板)を1枚のワークサイズの配線基板に集約して一括処理するのが有利である。しかしながら、配線基板のワークサイズが拡大すると、寸法変動の影響が拡大し、層間接続孔と導体パターンとの位置合せが難しくなる問題がある。
【0004】
配線基板の製造工程における、構成材料の熱膨張係数の相違による寸法変化や吸湿による寸法変化に対しては、位置合わせ用ガイドの部分を除いて積層することにより多層化し、露出した位置合わせ用ガイドを用いて位置合せする方法が開示されている(特許文献1)。また、配線基板の機械的加工時の応力または熱履歴によって生じる伸縮による寸法変化に対して、配線基板側に本尺を、フォトマスク側に副尺を設け、ノギスの原理で、位置ずれ量を確認できるようにすることによって、位置合せを容易にする方法が開示されている(特許文献2)。また、位置合わせ用ガイドにレジストが残留してカメラで認識し難くなることに対しては、複数の貫通孔で構成した位置合わせ用ガイドを用いる方法が開示されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−005335号公報
【特許文献2】特開2000−151066号公報
【特許文献3】特開2010−080985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、層間接続孔と導体パターンとの位置合せが難しくなる要因としては、種々のものがあり、特に、近年要求されるような、厚みが薄くかつ多層の配線層を有する配線基板では、導体パターン形成や多層化の工程を繰り返し行ううちに、熱履歴による寸法変化や取り扱いによるダメージ等により配線基板の端部が変形することによって、端部の製品外領域に設けられた位置合わせ用ガイドの位置や形状が変化することによる要因も大きい。特許文献1〜3の方法では、位置合わせ用ガイドを配線基板の端部に配置するため、このような問題に対しては、十分に対応できない問題がある。また、特許文献3の方法では、パネルサイズの配線基板に配置された複数のシートごとに、位置合わせ用ガイドを配置し、シートごとに位置合せを行って露光するものであるため、工数が増加し、コストアップに繋がる問題がある。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、パネルサイズが大きく、厚みが薄く、ランド残り幅が微小な配線基板であっても、パネルサイズでの位置合せで位置合せ精度を満足可能であり、また歩留まりを向上させることが可能な配線基板及び配線基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下のものに関する。
(1) 端部に設けられた製品外領域と、この製品外領域の内側に設けられ製品となるシートが複数配置された製品領域と、を有する配線基板であって、この配線基板とフォトマスクとをパネルサイズで一括して位置合せするための位置合わせ用ガイドが、前記製品領域に設けられる配線基板。
(2) 上記(1)において、位置合わせ用ガイドが、製品となるシート同士の間隙に設けられる配線基板。
(3) 上記(1)または(2)において、位置合わせ用ガイドが、配線基板の横方向二等分線に対して対称になる位置または縦方向二等分線に対して対称となる位置に形成される配線基板。
(4) 上記(1)から(3)の何れかにおいて、位置合わせ用ガイドが、製品領域を縦方向2等線及び横方向二等分線によって4つの領域に分割したときの各領域内に、それぞれ1個ずつ配置される配線基板。
(5) 上記(1)から(4)の何れかの配線基板を用いて、感光性ドライフィルムが設けられた配線基板上に、パターンを露光するのに使用するフォトマスクを位置合せする配線基板の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によって、パネルサイズが大きく、厚みが薄く、ランド残り幅が微小な配線基板であっても、パネルサイズでの位置合せで位置合せ精度を満足可能であり、また歩留まりを向上させることが可能な配線基板及び配線基板の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の配線基板の平面図である。
【図2】本発明の配線基板の平面図である。
【図3】従来の配線基板の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の配線基板の実施形態の一例としては、図1及び2に示すように、端部に設けられた製品外領域2と、この製品外領域2の内側に設けられ製品となるシート4が複数配置された製品領域3と、を有する配線基板1が挙げられる。
【0012】
本発明における製品外領域とは、配線基板の端部に設けられるシートが配置されていない余白となる領域をいい、シートの状態とする際には切り離される領域である。一般的には、配線基板の各製造工程で用いられる各種のガイド等が設けられたり、ハンドリングやチャッキング等による取り扱いの際に用いられる。配線基板の端部とは、製品外領域の中でも配線基板の外形近傍の領域をいい、製品領域を取り囲むように形成される。
【0013】
製品領域とは、製品外領域の内側に設けられ、製品となるシートが配置された領域をいい、シートが複数の場合は、シートとシートの間に設けられる余白(即ち、シート同士の間隙。)を含む。シートとは、出荷する際の配線基板としての最終形態をいう。本発明における配線基板とは、製造工程における形態をいい、いわゆるワークパネルとも言われるものであり。
【0014】
位置合わせ用ガイドとは、感光性ドライフィルムが表面に設けられた配線基板と、導体パターン用のパターンを露光するのに使用するフォトマスクとを、位置合せするために用いられるものをいう。例えば、配線基板に設けた層間接続孔とフォトマスクとの位置合せを行う際に、配線基板とフォトマスクの両者に設けられ、両者が位置合せされることにより、配線基板とフォトマスクとの位置合せが可能になる。配線基板に設けられる位置合わせ用ガイドとしては、貫通孔や非貫通孔の他、配線基板の表面に設けた窓穴等の導体パターン等を用いることができる。フォトマスク側に設けられる位置合わせ用ガイドとしては、配線基板側の位置合わせ用ガイドに対応する形状としたものを用いることができる。なお、窓穴とは、いわゆるコンフォーマル工法で用いられる、レーザ加工の際のマスクとなるものをいう。
【0015】
図1及び2に示すように、配線基板の製品領域3には、配線基板1とフォトマスクとをパネルサイズで一括して位置合せするための位置合わせ用ガイド5が設けられる。なお、位置合わせ用ガイド5は、図2に示すように、全て製品領域内に設ける必要はなく、例えば、配線基板1の縦横何れかの端部の製品外領域2が、比較的幅広で、製品領域3に近い部分では、ダメージや変形等が生じ難い場合には、位置合わせガイドの一部を製品外領域2に配置してもよい。
【0016】
ここで、パネルサイズとは、配線基板の製造工程において、生産効率や取り扱い性の面から、所定の個数のシートを集めて配置したサイズをいう。配線基板1の製品領域3は、端部の製品外領域2の内側に設けられており、製品となるシート4が配置されていることから、通常、製造工程でハンドリングやチャッキング等の対象ではないため、取り扱いによるダメージは受け難い。また、多層化のための熱プレスの際にも均一に成形されるため変形等を生じ難い。このため、位置合わせ用ガイド5が、製品領域3に設けられることによって、配線基板1自体のダメージや変形による本来の位置(設計通りの位置)からのずれが生じ難い。したがって、近年要求されるような、厚みが薄くかつ多層の配線層を有する配線基板であっても、パネルサイズでの高精度な位置合せが可能になり、パネルサイズが大きく、厚みが薄く、ランド残り幅が微小な配線基板であっても、パネルサイズでの位置合せで位置合せ精度を満足可能であり、また歩留まりを向上させることが可能な配線基板及び配線基板の製造方法を提供することができる。
【0017】
図1及び2に示すように、位置合わせ用ガイドは、製品となるシート同士の間隙に設けられるのが望ましい。製品内領域に、複数のシートが配置される場合は、シートとシートとの間にルータやダイシングで加工して分離するための余白が設けられる。このような余白を利用して、この領域に位置合わせ用ガイドを設けることにより、製品となるシート内には位置合わせ用ガイドを配置する必要がなく、またわざわざ位置合わせ用ガイドを設けるために余白を拡大する必要もないので、パネルサイズの配線基板におけるシートの取り数を減らすこともない。したがって、パネルサイズでの作業を確保しつつ、位置合わせ精度を向上させることができる。
【0018】
図1及び2に示すように、位置合わせ用ガイドは、配線基板1の横方向二等分線6に対して対称になる位置または縦方向二等分線7に対して対称となる位置に形成されるのが望ましい。配線基板1の横方向二等分線6とは、配線基板1を、横方向(図1及び2における水平方向)を二等分する線をいう。縦方向二等分線7とは、配線基板1を縦方向(図1及び2における垂直方向)を二等分する線をいう。シート4が配置される製品領域3は、通常は、配線基板1の横方向二等分線6及び縦方向二等分線7の両方に対称となるように形成される。このため、位置合わせ用ガイド5が、配線基板1の横方向二等分線6に対して対称になる位置または縦方向二等分線7に対して対称となる位置に形成されることにより、位置合せの際に、配線基板の全体に亘って、位置ずれの偏りが生じ難くすることが可能になる。
【0019】
図1に示すように、位置合わせ用ガイドが、製品領域を縦方向2等線及び横方向二等分線によって4つの領域に分割したときの各領域内に、それぞれ1個ずつ配置されるのが望ましい。これにより、4個の位置合わせ用ガイドが、縦横に四等分された製品領域のそれぞれに配置されるため、それぞれの製品領域についての位置ずれを抑制することが可能になる。
【0020】
本発明の配線基板の製造方法は、上述したような位置合わせガイドを有する配線基板を用い、感光性ドライフィルムは設けられた配線基板上に、パターンを露光するのに使用するフォトマスクを位置合せする。したがって、パネルサイズが大きく、厚みが薄く、ランド残り幅が微小な配線基板であっても、パネルサイズでの位置合せで位置合せ精度を満足可能であり、また歩留まりを向上させることが可能になる。
【実施例】
【0021】
以下、図1及び2を用いて、本発明の実施例について説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0022】
(実施例1)
パネルサイズが縦600mmで横500mm、シートサイズが縦80mmで横110mm、板厚が0.3mmの配線基板を48枚用意した。この配線基板は、内層に4層の配線層を有しており、表層は銅箔と層間接続のために形成した銅めっきで全面が覆われている。配線基板1のワーク内には、24枚(縦6枚×横4枚)のシートが配置されている。シートとシートの間隙は、使用するルータビット(直径2mm)を考慮し、縦横ともに2mmの幅に設定されている。また、この配線基板では、ランド径と層間接続孔用の非貫通孔径との差が60μm以下(即ち、ランド残り幅が片側30μm以下)に設定されており、この仕様の非貫通孔が、1シート当りで約1,000個、パネルサイズ当りで約24,000個設けられている。
【0023】
図1に示すように、配線基板1とフォトマスクとをパネルサイズで一括して位置合せするための位置合わせ用ガイド5を、内層の導体パターンを基準として、製品領域3のシート4とシート4の間隙に設けた。位置合わせガイド5は、ドリルで形成した貫通孔で形成されており、この貫通孔の直径は1mmとし、シート4とシート4の間隙の幅(2mm)よりも小さくした。また、位置合わせ用ガイド5は、配線基板1の横方向二等分線6に対して対称になる位置及び縦方向二等分線7に対して対称となる位置に形成されており、製品領域3を縦と横に四等分した各領域内にそれぞれ1個ずつ、合計4個配置した。
【0024】
準備した配線基板上に感光性ドライフィルムをラミネートした後、導体用のパターンを露光するためのフォトマスクを、配線基板に設けた位置合わせガイドを用いて位置合せし、露光、現像を行った。その後、エッチング、ドライフィルム剥離を行い、層間接続用の非貫通孔のランドを含む導体パターンを形成した。
【0025】
パネルサイズの48枚の配線基板について、製品領域の四隅と中央の5点について、層間接続用の非貫通孔と、配線基板の導体パターンであるランドとが、ランド残り幅以上に位置ずれを起こし、ランドから層間接続孔が飛び出してしまう、いわゆるランド切れを生じていないか、外観検査装置を用いて検査した。その結果、ランド切れの発生は皆無であった。
【0026】
(実施例2)
図2に示すように、配線基板1の上下の製品外領域2が、上下ともに55mmと比較的幅広で、製品領域3に近い部分では、ダメージや変形等が生じ難いため、2個の位置合わせ用ガイド5を製品外領域2に、2個の位置合わせ用ガイド5を製品領域3に配置した。また、位置合わせ用ガイド5は、配線基板1の横方向二等分線6に対して対称になる位置及び縦方向二等分線7に対して対称となる位置に形成した。これ以外は、実施例1と同様にして配線基板1を準備した。
【0027】
実施例1と同様にして、層間接続用の非貫通孔のランドを含む導体パターンを形成した後、実施例1と同様にして、ランドを含む導体パターンの外観検査を行った。その結果、ランド切れの発生は皆無であった。
【0028】
(比較例)
図3に示すように、配線基板1の四隅の端部に近い製品外領域2に、4個の位置合わせ用ガイド5をそれぞれ配置した。これら4個の位置合わせ用ガイド5は、配線基板1のダメージや変形を生じた領域9に位置していた。これ以外は、実施例1と同様にして配線基板1を準備した。
【0029】
実施例1と同様にして、層間接続用の非貫通孔のランドを含む導体パターンを形成した後、実施例1と同様にして、ランドを含む導体パターンの外観検査を行った。その結果、約3%のシートでランド切れが発生した。
【符号の説明】
【0030】
1:配線基板のワークパネル
2:製品外領域
3:製品領域
4:シート
5:位置合わせ用ガイド
6:横方向二等分線
7:縦方向二等分線
8:(シート同士の)間隙
9:ダメージや変形を生じた領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端部に設けられた製品外領域と、この製品外領域の内側に設けられ製品となるシートが複数配置された製品領域と、を有する配線基板であって、この配線基板とフォトマスクとをパネルサイズで一括して位置合せするための位置合わせ用ガイドが、前記製品領域に設けられる配線基板。
【請求項2】
請求項1において、位置合わせ用ガイドが、製品となるシート同士の間隙に設けられる配線基板。
【請求項3】
請求項1または2において、位置合わせ用ガイドが、配線基板の横方向二等分線に対して対称になる位置または縦方向二等分線に対して対称となる位置に形成される配線基板。
【請求項4】
請求項1から3の何れかにおいて、位置合わせ用ガイドが、製品領域を縦方向2等線及び横方向二等分線によって4つの領域に分割したときの各領域内に、それぞれ1個ずつ配置される配線基板。
【請求項5】
請求項1から4の何れかの配線基板を用いて、感光性ドライフィルムが設けられた配線基板上に、パターンを露光するのに使用するフォトマスクを位置合せする配線基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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