説明

配線基板

【課題】 セラミック焼結体からなる絶縁板の貫通孔内に配置された貫通導体が絶縁板の主面から突出するのを抑制することができる配線基板を提供する。
【解決手段】 セラミック焼結体からなり、厚み方向に貫通する貫通孔2を有する絶縁板1と、貫通孔2内に配置されて、側面が貫通孔2の内側面に接合された貫通導体3とを備える配線基板であって、貫通孔2の内側面と貫通導体3の側面との間に、平面視で貫通導体3の側面に沿った環状の空隙4が形成されている配線基板である。貫通導体3の熱膨張を空隙4によって吸収することができるため、貫通導体3の長さ方向の膨張を抑制して、貫通導体3の絶縁板1からの突出を抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、厚み方向に貫通する貫通孔を有する絶縁板と、この絶縁板を厚み方向に貫通する貫通孔内に配置されて側面が貫通孔の内側面に接合された貫通導体とを備え、貫通導体を介して絶縁板の上下面の配線導体等の導体が互いに電気的に接続された配線基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品搭載用等に使用される配線基板として、セラミック焼結体からなり、主面(上面や下面)に配線導体が形成された絶縁板と、その絶縁板を厚み方向に貫通する貫通孔と、貫通孔内に配置された貫通導体(いわゆるビア導体)とを備えたものが用いられている。絶縁板の上下面の配線導体は、貫通孔が形成された位置で上下に重なり合う部分を有し、この部分で貫通導体を介して上下に電気的に接続されている。
【0003】
このような配線基板は、例えば絶縁板の上面の配線導体に電子部品の電極や電子部品の電気検査を行なうためのプローブが接続され、下面の配線導体が回路基板等の外部電気回路基板に接続される。そして、絶縁板の上面の薄膜配線等の配線導体と、貫通導体と、絶縁板の下面の配線導体とを介して、電子部品が外部電気回路と電気的に接続され、信号の送受や、電子部品に対する電気的な検査等が行なわれる。
【0004】
貫通導体は、セラミック焼結体からなる絶縁層の所定位置にレーザ加工によって開口が円形状等の貫通孔を形成し、この貫通孔内に銀−パラジウム等の金属ペーストを充填した後、金属ペーストを加熱して貫通孔の内側面に金属材料として接合させることによって形成されている。貫通導体は、貫通孔内に充填された金属ペーストによって形成されているので、その側面の全面と貫通孔の内側面の全面とが互いに接合し合っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−69653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような配線基板においては、絶縁板と貫通導体との熱膨張率に差がある(貫通導体の方が大きい)ため、例えば配線基板に電子部品を実装する際に加わる熱や、検査のために電子部品を加温する際に繰り返し加わる熱等によって貫通導体が膨張し、基板の表面(主面)から突出しやすいという問題点があった。このような貫通導体の突出が生じると、貫通導体の端面と、この貫通導体(端面)上の配線導体(薄膜配線等)との界面に剪断応力等の応力が生じ、この応力によって貫通導体と配線導体との間にクラックが入り、断線が発生する可能性がある。
【0007】
本発明は上記従来の技術の問題点に鑑みて完成されたものであり、その目的は、セラミック焼結体からなる絶縁板の貫通孔内に配置された貫通導体が絶縁板の表面から突出するのを抑制することができる配線基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の配線基板は、セラミック焼結体からなり、厚み方向に貫通する貫通孔を有する絶縁板と、前記貫通孔内に配置されて、側面が前記貫通孔の内側面に接合された貫通導体とを備える配線基板であって、前記貫通孔の内側面と前記貫通導体の側面との間に、平面
視で前記貫通導体の側面に沿った環状の空隙が形成されていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の配線基板は、上記構成において、複数の前記空隙が、前記貫通孔の長さ方向に配列されていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の配線基板は、上記構成において、前記貫通孔の内側面に、該内側面の全周にわたる溝状の凹部が形成されており、該凹部によって、前記貫通孔の内側面と前記貫通導体の側面との間の前記空隙が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の配線基板によれば、上記構成を備え、貫通孔の内側面と貫通導体の側面との間に、平面視で貫通導体の側面に沿った環状の空隙が形成されていることから、この空隙によって、絶縁板に比べて大きく膨張する貫通導体の膨張を吸収することができる。そのため、貫通導体が絶縁板の主面からの突出が抑制された配線基板を提供することができる。このような配線基板によれば、例えば、貫通導体の突出に伴う貫通導体と貫通導体上の配線導体との間に生じる応力を小さく抑えて、貫通導体と貫通導体上の薄膜配線の間にクラックが発生することを抑制できる。
【0012】
また、本発明の配線基板は、上記構成において、複数の空隙が、貫通孔の長さ方向に配列されている場合には、貫通孔の長さ方向に沿って、より効果的に貫通導体の膨張を吸収して、熱応力を緩和することができる。したがって、この場合には、より一層信頼性の高い配線基板を提供することができる。
【0013】
また、本発明の配線基板は、上記構成において、貫通孔の内側面に、この内側面の全周にわたる溝状の凹部が形成されており、凹部によって、貫通孔の内側面と貫通導体の側面との間の空隙が形成されている場合には、貫通孔を形成する際に、同時に凹部を形成しておくことによって、容易に上記の空隙を形成することができる。したがって、この場合には、貫通導体の絶縁板からの突出、およびこの突出に起因する貫通導体と配線導体との間の断線を抑制することができるとともに、生産性も良好な配線基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(a)は本発明の配線基板の実施の形態の一例を示す上面図であり、(b)は(a)のA−A線における断面図である。
【図2】本発明の配線基板の実施の形態の他の例を模式的に示す上面図である。
【図3】(a)および(b)はそれぞれ本発明の配線基板の実施の形態の他の例を示す断面図である。
【図4】本発明の配線基板の実施の形態の他の例における貫通孔の内側面を示す斜視図である。
【図5】本発明の配線基板の実施の形態の他の例における貫通孔の内側面を示す斜視図である。
【図6】本発明の配線基板の実施の形態の他の例における要部を示す要部拡大断面図である。
【図7】(a)および(b)はそれぞれ本発明の配線基板の実施の形態の他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の配線基板を添付の図面を参照しつつ詳細に説明する。図1(a)は本発明の配線基板の実施の形態の一例を示す上面図であり、(b)は(a)のA−A線における断面図である。図1において、1は絶縁板,2は貫通孔,3は貫通導体,4は空隙,5は配線
導体である。絶縁板1に形成された貫通孔2内に貫通導体3が配置され、貫通導体3の側面が貫通孔2の内側面に接合されて配線基板が基本的に形成され、絶縁板1の上下の配線導体5が貫通導体3を介して電気的に接続されている。
【0016】
絶縁板1は、酸化アルミニウム質焼結体や窒化アルミニウム質焼結体,ムライト質焼結体,ガラスセラミック焼結体,ガラス母材中に結晶成分を析出させた結晶化ガラスまたは雲母やチタン酸アルミニウム等の微結晶焼結体からなる、金属材料とほぼ同等の精密な機械加工が可能なセラミック材料(いわゆるマシナブルセラミックス)等のセラミック焼結体により形成されている。
【0017】
絶縁板1は、例えば酸化アルミニウム質焼結体からなる場合であれば、次のようにして製作することができる。すなわち、酸化アルミニウムおよび酸化ケイ素等の原料粉末に適当な有機バインダおよび有機溶剤を添加混合して作製したスラリーをドクターブレード法やリップコータ法等のシート成形技術でシート状に成形することによってセラミックグリーンシートを作製して、その後、セラミックグリーンシートを切断加工や打ち抜き加工によって適当な形状および寸法とするとともに、これを約1300〜1500℃の温度で焼成することによって製作することができる。
【0018】
絶縁板1は、例えば四角板状や円板状等であり、例えば上面が、実装や電気チェックを行なう電子部品(図示せず)を搭載(電子部品を配線基板に電気的および機械的に接続して電子装置とするための実装、または電子部品に対して電気的なチェックを施すための一時的な載置)するための部位として使用される。電子部品としては、ICやLSI等の半導体集積回路素子およびLED(発光ダイオード)やPD(フォトダイオード),CCD(電荷結合素子)等の光半導体素子を含む半導体素子,弾性表面波素子や水晶振動子等の圧電素子,容量素子,抵抗器,半導体基板の表面に微小な電子機械機構が形成されてなるマイクロマシン(いわゆるMEMS素子)等の種々の電子部品が挙げられる。
【0019】
絶縁板1は、例えば図2に示すように複数の貫通孔2および貫通導体3が配列された、広い面積の電子部品である、シリコンウエハ等の半導体基板に多数の半導体集積回路素子が縦横の並びに配列形成された半導体素子(図示せず)等に対応するような広い面積のものであってもよい。なお、図2は、本発明の配線基板の実施の形態の他の例を模式的に示す上面図である。図2において図1と同様の部位には同様の符号を付している。
【0020】
図1および図2に示す例において、絶縁板1の上面および下面に、それぞれ配線導体5が形成されている。配線導体5は、例えば電子部品と電気的に接続されて、この電子部品に対する信号の送受や、電子部品に対する電気的なチェックを行なうためのプローブを接続するための端子として機能する。絶縁板1の上下面の配線導体5は、絶縁板1を厚み方向に貫通する貫通導体3を介して互いに電気的に接続されている。
【0021】
配線導体5と電子部品との電気的な接続は、例えば配線導体5の所定部分に電子部品の電極(図示せず)をはんだ等の導電性接続材を介して接合することによって行なわれる。この場合、配線導体5について、例えば図1および図2に示したように貫通導体3の端面を覆う円形状等の比較的大きなパターンで(いわゆる接続パッドとして)形成しておいて、はんだの接合面積をより広くして、電子部品に対する電気的な接続の信頼性を向上させるようにしてもよい。
【0022】
配線導体5は、例えば、銅や銀,パラジウム,金,白金,ニッケル,コバルト,タングステン,モリブデン,マンガン,チタン等の金属材料またはこれらの金属材料の合金材料からなる。
【0023】
配線導体5は、例えばタングステンからなる場合であれば、タングステンの粉末を有機溶剤およびバインダとともに混練して作製したタングステンの金属ペーストを、絶縁板1となるセラミックグリーンシートの主面にスクリーン印刷法等の方法で所定パターンに塗布し、その後、セラミックグリーンシートと同時焼成することによって形成することができる。また、配線導体5は、銅やチタン,ニッケル等の金属材料をスパッタリング法やめっき法等の薄膜形成法によって絶縁板1の主面から貫通導体3の端面にかけて被着させることによって形成することもできる。貫通導体3の形成方法については後述する。
【0024】
貫通孔2は、例えば、セラミック焼結体からなる絶縁板1にドリル加工等の機械的な孔あけ加工や、炭酸ガスレーザ,YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)レーザ等のレーザ光の照射による孔あけ加工(レーザ加工)を施すことによって形成されている。貫通孔2について、(未焼成の上記セラミックグリーンシートの状態ではなく)セラミック焼結体からなる絶縁板1に孔あけ加工を施して形成した場合には、焼成時の収縮に起因する寸法精度の低下の影響を受けない。そのため、この場合には、絶縁板1における貫通孔2の位置精度を高くする上で有利である。
【0025】
貫通孔2は、例えば、直径が200μm〜700μm程度の円形状であり、この貫通孔2の内側に貫通導体3が配置されている。貫通孔2は、円形状に限らず、楕円形状や四角形状,角を円弧状に成形した四角形状等の形状でもかまわない。
【0026】
貫通導体3は、例えば、銅や銀,パラジウム,金,白金,ニッケル,コバルト,タングステン,モリブデン,マンガン等の金属材料またはこれらの金属材料の合金材料からなる。貫通導体3は、例えば上下の配線導体5等の、絶縁板1の上下にそれぞれ配置される導体の間を電気的に接続するためのものであるため、貫通導体3の電気抵抗を低く抑えることを考慮すれば、貫通導体3を形成する金属材料としては銅または銀が特に適している。
【0027】
貫通導体3は、例えば銀や銅の粉末を有機溶剤およびバインダとともに混練して作製した導体ペーストを貫通孔2内に真空吸引を併用したスクリーン印刷法等の方法で埋め込んだ後、この導体ペーストを絶縁板1とともに加熱することによって、貫通孔2内に充填させることができる。この場合、貫通導体3を形成する金属材料に、絶縁板1(貫通孔2の内側面)に対する密着性を向上させること等のためにガラス成分を添加してもよい。
【0028】
このような配線基板において、例えば、絶縁板1の上面の配線導体5に電子部品(図示せず)の電極や電子部品の電気検査を行なうためのプローブ(図示せず)が接続され、下面の配線導体5が回路基板等の外部電気回路基板(図示せず)に接続される。そして、絶縁板1の上面の配線導体5と、貫通導体3と、絶縁板1の下面の配線導体5とを介して、電子部品が外部電気回路と電気的に接続され、信号の送受や、電子部品に対する電気的なチェック等が行なわれる。なお、電子部品に対する電気的なチェックは、例えば半導体集積回路素子の集積回路が正常に作動するか否かの検査である。
【0029】
この場合には、半導体基板(シリコンウエハ等)に形成された多数の半導体集積回路素子に対して、個片に切断する前に一括して検査を行なうために、例えば図1に示したような配線基板が、半導体基板と同じ程度の大きさの母基板に配列形成されたものが使用される。この場合の配線基板(多数個配列された配線基板)は、いわゆるプローブカードとして使用することができる。
【0030】
本発明の配線基板において、貫通孔2の内側面と貫通導体3の側面との間に平面視で環状の空隙4が形成されている。空隙4は、例えば、貫通孔2の内側面に設けられた凹部や凸部によって貫通導体3が貫通孔2の内側面の全面に接合することが妨げられ、貫通導体3の側面と貫通孔2の内側面との間に非接合の部分が生じることによって形成されている

【0031】
空隙4は、セラミック焼結体からなる絶縁板1に比べて熱膨張係数が大きい貫通導体3の熱膨張を吸収するためのものである。絶縁板1に比べて大きく膨張しようとする貫通導体3の熱膨張を、空隙4によって吸収することができる。そのため、貫通導体3の長さ方向の膨張を抑制することができ、貫通導体3の側面と貫通孔2との接合面に作用する熱応力を抑制して、貫通導体3の剥がれを抑制することができる。この熱膨張を有効に吸収するため、空隙4は、貫通孔2の内側面の全周にわたって形成されている。空隙4は、図1および図2に示した例では貫通孔2の内側面を1周する環状であるが、らせん状(平面視で環状)(いわゆるねじ溝状等)であってもよい。
【0032】
このような配線基板によれば、貫通導体3の絶縁板1(具体的には貫通孔2の内側面)からの剥離が抑制されているため、貫通導体3を介した絶縁板1の上下面の配線導体5間の電気的な接続の信頼性を高くする上で有効な配線基板とすることができる。
【0033】
空隙4は、緩衝層貫通導体3の熱膨張を吸収する上では合計の体積が大きいほど好ましいが、大きくしすぎると、貫通孔2の内側面と貫通導体3の側面との間の接合面積が小さくなって、貫通導体3と貫通孔2との間の接合強度自体が低くなる可能性がある。空隙4は、このような条件を考慮して、貫通導体3の熱膨張を効果的に吸収する上では、貫通導体3の体積に対して、合計で10〜40%程度の体積に設定すればよい。
【0034】
例えば、絶縁板1が酸化アルミニウム質焼結体(熱膨張係数が約7×10−6/℃)からなり、貫通導体3を形成する導体材料が、熱膨張係数が約8〜20×10−6/℃程度の上記の金属材料(銅や銀等)からなる場合であれば、空隙4は、貫通導体3の体積に対して合計で3〜15%程度の体積に設定すればよい。
【0035】
また、空隙4は、合計の体積が同じであれば、貫通孔2(内側面)と貫通導体3(側面)との接合強度を確保できる範囲で、両者の接合面のより広い範囲に配置されていることが好ましい。例えば、上記のような条件で空隙4を貫通導体3の体積に対して3〜15%程度の体積で形成した場合であれば、貫通孔2と貫通導体3との接合面積に対して約10〜40%程度の面積になるように空隙4を形成すればよい。
【0036】
空隙4は、図1に示した例では、縦断面の形状が四角形状(長方形状)であるが、台形状や円弧状,楕円弧状,三角形状またはこれらの形状を組み合わせた形状でもよく、不定形状でもよい。また、空隙4が複数であって、互いに異なる形状であってもよい。
【0037】
空隙4は、貫通孔2と貫通導体3との間に外気中の水分等の腐食成分が侵入することを防ぐために、配線基板の外表面に露出しないようにすること、つまり空隙4が絶縁基板1の上面や下面に達しないようにすることが好ましい。
【0038】
本発明の配線基板において、例えば図3に示すように、複数の空隙4が、貫通孔2の長さ方向に配列されている場合には、貫通孔2の長さ方向に沿って、より効果的に貫通導体3の膨張を吸収して、熱応力を緩和することができる。したがって、この場合には、より一層信頼性の高い配線基板を提供することができる。なお、図3(a)および(b)は、それぞれ本発明の配線基板の実施の形態の他の例を示す断面図である。図3において図1と同様の部位には同様の符号を付している。
【0039】
図3(a)は、比較的大きな2つの空隙4を上下に、平面視で円形状の貫通孔2と貫通導体3との境界に沿って環状に形成した例である。この場合には、個々の空隙においてより効果的に貫通導体3の熱膨張を吸収することができる。また後述するような方法で空隙
4を形成する場合の形成が容易で配線基板としての生産性を高くする上で有利である。
【0040】
図3(b)は、比較的小さな多数の環状の空隙4を貫通孔の長さ方向に配列した例である。この場合には、貫通孔2の長さ方向に沿って、部分的に偏ることなく貫通導体3の熱膨張を吸収する効果をより有効に得ることができる。
【0041】
このような空隙4は、例えば、貫通孔2の内側面に溝状の凹部6を形成しておいて、この凹部6内に貫通導体3となる導体ペーストが充填されないようにすることによって、形成することができる。
【0042】
本発明の配線基板において、例えば図4に示すように、貫通孔2の内側面に、この内側面の全周にわたる溝状の凹部6が形成されており、凹部6によって、貫通孔2の内側面と貫通導体3の側面との間の空隙4が形成されている場合には、貫通孔2を形成する際に、同時に凹部6を形成しておくことによって、容易に上記の空隙4を形成することができる。したがって、この場合には、貫通導体3が貫通孔2の内側面から剥がれることを抑制することができるとともに、生産性も良好な配線基板を提供することができる。なお、図4は、本発明の配線基板の実施の形態の他の例における貫通孔2の縦断面を示す斜視図である。図4において貫通導体3等は省略している。また、図4において図1と同様の部位には同様の符号を付している。
【0043】
貫通孔2の内側面に、この内側面の全周にわたる溝状の凹部6を形成するには、例えばドリル加工やレーザ加工(炭酸ガスやYAG等のレーザ加工)により貫通孔2を形成した後、貫通孔2の直径よりも小さい円盤上のドリルを挿入し、このドリルで貫通孔2の内側面に溝形成加工(いわゆるOリング溝加工と同様の加工)を行なえばよい。この場合、ドリルを、先端が円軌道を描くように回転させて加工することで貫通孔2内に凹部6となる溝を形成することができる。
【0044】
また、絶縁板1を複数の絶縁層(図示せず)を積層して形成し、この絶縁層に形成する貫通孔2の内径(太さ)を上下で異ならせるようにして形成することもできる。この内径の差に応じて上下の絶縁層の間で貫通孔2の内側面に段差が生じ、この段差によって凹部6が形成される。
【0045】
このように凹部6を形成しておいて、その後、貫通孔2内の凹部6以外の部分に、前述したような導体ペーストを充填して焼成すれば、貫通孔2との間に空隙が形成された貫通導体3を形成することができる。
【0046】
また、凹部6によって有効な空隙4を形成するために(凹部6が導体3で充填されてしまうことを抑制するために)は、凹部6の深さ(貫通孔2の内側面における開口から外側の先端までの距離)が100μm以上であることが好ましい。
【0047】
この場合、凹部6内に導体ペーストが入り込むことをより効果的に防ぐために、例えば導体ペーストの粘度を、1rpmによる測定時に50〜400Pa・s程度に高くしておいて
、導体ペーストが凹部6内に入り込みにくくなるようにしておけばよい。
【0048】
また、例えば図5に示すように、貫通孔2の内側面に、らせん状に、溝状の凹部6が形成されており、凹部6によって、貫通孔2の内側面と貫通導体3の側面との間の空隙4が形成されている場合にも、貫通孔2を形成する際に、同時に凹部6を形成しておくことによって、容易に上記の空隙4を形成することができる。したがって、この場合にも、貫通導体3が貫通孔2の内側面から剥がれることを抑制することができるとともに、生産性も良好な配線基板を提供することができる。なお、図5は、本発明の配線基板の実施の形態
の他の例における貫通孔2の縦断面を示す斜視図である。図5において貫通導体3等は省略している。また、図5において図1と同様の部位には同様の符号を付している。
【0049】
貫通孔2の内側面に、らせん状に溝状の凹部6を形成するには、例えば上記のようにドリル加工等の方法で貫通孔2を形成した後、貫通孔2内にねじ切り加工用のタップを挿入し、めねじを形成する要領で貫通孔2の内側面に対して、らせん状に溝加工を施せばよい。上記の方法でらせん状に凹部6が形成されている場合には、上下の凹部6の間の間隔を一定にすることも容易であり、凹部6が形成されている部分において、貫通導体3の熱膨張を空隙4によって吸収する効果を偏りなく得ることができる。また、貫通孔2の内側面に、貫通孔2の長さ方向の全部に凹部6を形成することも容易である。そのため、配線基板としての生産性を高くする上で有利である。
【0050】
なお、らせん状の凹部6は、貫通孔2の長さ方向の全部において形成されていてもよく、一部のみにおいて形成されていてもよい。また、例えば凹部6の加工の容易性や作業性等を考慮して、上記の、貫通孔6の内側面の全周にわたる溝状の凹部6と、らせん状の凹部6とが併用されていても(つまり、凹部6が、環状のものとらせん状のものとを含んでいても)よい。
【0051】
このように凹部6を形成しておいて、その後、貫通孔2内の凹部6以外の部分に、前述したような導体ペーストを充填して焼成すれば、貫通孔2との間に空隙が形成された貫通導体3を形成することができる。
【0052】
なお、この場合にも、凹部6の深さが100μm以上であることが好ましい。また、導体
ペーストの粘度を、例えば1rpmによる測定時に50〜400Pa・s程度に高くしておい
て、導体ペーストが凹部6内に入り込みにくくなるようにしておけばよい。
【0053】
また、本発明の配線基板は、上記構成において、例えば図6に示すように、凹部6について、絶縁板1の一方の主面Aに近い側の内面6aが、凹部6の開口部分から先端部分にかけて一方の主面Aに近付く方向に傾斜または湾曲している場合には、重力によって貫通孔2内に充填される金属ペーストが、傾斜または湾曲した内面6a側には入り込みにくい。そのため、より一層確実に、貫通孔2の内側面と貫通導体3の側面との間に空隙4を形成することができる。したがって、この場合には、製作が容易な、上記構成を備える配線基板を提供することができる。なお、図6は、本発明の配線基板の実施の形態の他の例における要部を示す要部拡大断面図である。図6において図1と同様の部位には同様の符号を付している。
【0054】
図6に示す例において、上側の凹部6は、縦断面が三角形状であり、絶縁板1の一方の主面A(上面)に近い側の内面6aが傾斜している例である。この場合には導体充填時に、主面A側から導体ペーストを充填することによって、凹部6の全体にペーストが充填されることなく、空隙4を形成することができる。また、図6に示す例において、下側の凹部6は、絶縁板1の一方の主面A(上面)に近い側の内面6aが下側に湾曲している例である。この場合には、導体ペーストを充填した際に、内面6aが湾曲していない凹部6よりもより確実に空隙4を形成できる。
【0055】
凹部6について、図6に示すような形状とするには、ドリル加工、炭酸ガスやYAGレーザ加工で貫通孔を形成した後、主面に対して傾いた円盤を備えたドリルを挿入し円軌道を描くように加工することで凹部6aの様な溝を加工することができる。
【0056】
なお、本発明は上述の実施の形態の例および実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば種々の変更は可能である。例えば、図7(a)に示すよ
うに、絶縁基板1の第1主面に薄膜導体層7と樹脂絶縁層8とを交互に積層するとともに、薄膜導体層7を接続パッドに電気的に接続させて、薄膜導体層7のうち最表面に露出する部位を半導体素子等の電子部品に対して接続するようにしてもよい。この場合には、電子部品の電極の微細化に対応して、微細な接続用の導体を配線基板に形成することができる。
【0057】
また、例えば図7(b)に示すように、貫通孔2の内側面の全周にガラス層等を帯状等(平面視で環状等)に被着させて複数の凸状部9を貫通孔2の長さ方向に配列して形成し、この凸状部9の間に導体ペーストが充填されないようにして形成することもできる。
【0058】
なお、図7(a)および(b)は、それぞれ本発明の配線基板の実施の形態の他の例における要部を示す要部拡大断面図である。図7において図1と同様の部位には同様の符号を付している。
【実施例】
【0059】
酸化アルミニウム質焼結体からなるセラミック基板に直径が約700μmで長さが約3000
μmの貫通孔をレーザ加工で形成し、この貫通孔の内側に、後述する空隙を形成する部分を除いて導体ペースト(銀ペースト)を充填し、約900℃で加熱して貫通導体を形成して
、実施例の配線基板を100個作製した。また、この導体ペーストを貫通孔内に、空隙を形
成せずに充填して比較例の配線基板を100個作製した。実施例および比較例の各配線基板100個について、加速試験として温度サイクル試験(−45℃〜+125℃、1000サイクル)の
後、絶縁基板主面からの貫通導体の突出の有無を金属顕微鏡を用いて外観によって確認した。
【0060】
なお、空隙は、機械加工によって、上下(貫通孔の長さ方向)の寸法が約250μmで深
さが約100μmの溝状(平面視で環状)の凹部を貫通孔の内側面に、上下に2つ並べて形
成しておき、この凹部内に導体ペーストが入らないように導体ペーストの粘度を300Pa
・s程度に調整した後、一方の主面側から貫通孔内に、凹部を除いて導体ペーストを充填して形成した。
【0061】
実施例の配線基板および比較例の配線基板に対し、260℃の耐熱試験(加熱時間10分)
をヒーターブロックを用いて実施した。その結果、実施例の配線基板では貫通導体と貫通導体上部の薄膜配線の間での断線は確認されなかった。
【0062】
また、実施例の配線基板では貫通導体の絶縁板からの剥がれが見られなかった。
【0063】
これに対し、比較例の配線基板では1個の配線基板において2つの貫通導体に、他の1個の配線基板において1つの貫通導体に、それぞれ貫通導体の剥がれに伴って貫通導体にクラックが発生していた。なお、断線の有無等は、電気回路の断線および短絡の有無を測定する測定器(いわゆるオープン/ショートチェッカー)を用いて確認し、併せて目視による観察を行なった。
【0064】
以上の結果により、本発明の配線基板における、貫通導体の突出、および貫通導体の突出に起因する貫通導体と配線導体との間の剥がれを抑制する効果を確認することができた。
【符号の説明】
【0065】
1・・・絶縁板
2・・・貫通孔
3・・・貫通導体
4・・・空隙
5・・・配線導体
6・・・凹部
7・・・薄膜導体層
8・・・樹脂絶縁層
9・・・凸状部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック焼結体からなり、厚み方向に貫通する貫通孔を有する絶縁板と、前記貫通孔内に配置されて、側面が前記貫通孔の内側面に接合された貫通導体とを備える配線基板であって、前記貫通孔の内側面と前記貫通導体の側面との間に、平面視で前記貫通導体の側面に沿った環状の空隙が形成されていることを特徴とする配線基板。
【請求項2】
複数の前記空隙が、前記貫通孔の長さ方向に配列されていることを特徴とする請求項1記載の配線基板。
【請求項3】
前記貫通孔の内側面に、該内側面の全周にわたる溝状の凹部が形成されており、該凹部によって、前記貫通孔の内側面と前記貫通導体の側面との間の前記空隙が形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の配線基板。
【請求項4】
前記貫通孔の内側面に、らせん状に、溝状の凹部が形成されており、該凹部によって、前記貫通孔の内側面と前記貫通導体の側面との間の前記空隙が形成されていることを特徴とする請求項1記載の配線基板。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−94833(P2012−94833A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−198394(P2011−198394)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】