説明

配線材接合装置、及び配線材接合方法

【課題】ボンディングツール等を最終接合部の位置から移動させることなく、配線材を適切な位置で完全に切断すると共に、切断した配線材の第1接合予定部を接合可能位置に配置することができる配線材接合装置、及び配線材接合方法を提供する。
【解決手段】配線材接合装置は、複数の被接合部に接合した後の配線材30を、接合パッド(最終被接合部)に接合された最終接合部30c1よりも基端側の位置で完全に切断する切断刃131を有するカッター130と、上記切断により先端30dが形成された配線材30をその先端側に送り出して、配線材30のうち次に接合させる第1接合予定部30bを、接合可能位置(押圧面110bの直下)に配置する配線材送出手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線材接合装置、及び配線材接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤボンディング装置等の配線材接合装置は、線状または帯状をなす配線材を、配線対象品の被接合部(接合パッドなど)に接合すると共に、複数の被接合部間に配線材を架け渡し、複数の被接合部に配線材を接合した後に配線材を切断する。このような配線材接合装置として、様々なものが提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平3−102844号公報
【特許文献2】特開平9−27508号公報
【0004】
特許文献1には、超音波振動により第1被接合部及び第2被接合部(最終被接合部に相当)に配線材を接合するボンディングツールと、配線材が引き出されるコンジットと、配線材を部分的に切断(ハーフカット)するカッターとを有するボンディングヘッドを備える配線材接合装置が開示されている。この配線材接合装置では、ボンディングツールの超音波振動によって、配線材の第1接合予定部(先端部)を第1被接合部に接合した後、ボンディングヘッドを第2被接合部に移動させる際、配線材をコンジットから引き出しながらループを形成する。ボンディングヘッドを第2被接合部に移動させた後、ボンディングツールの超音波振動によって、配線材を第2被接合部に接合する。その後、カッターにより、配線材を部分的に切断(ハーフカット)する。
【0005】
次いで、ボンディングヘッドを上昇させて、配線材をコンジットから引き出した後、ボンディングヘッドを後方及び下方に移動させ、ボンディングツールにより、配線材のうち切断位置よりもコンジット側の部位を保持し固定する。この状態で、ボンディングヘッドを、さらに後方に移動させて、配線材を部分切断位置(ハーフカット位置)において完全に切り離す。これにより、ボンディングツールの押圧面の直下に、切断後の配線材の第1接合予定部(先端部)を配置させる。その後、上述の動作を繰り返すことで、次の第1被接合部及び第2被接合部に、配線材を接合する。
【0006】
また、特許文献2には、超音波振動により第1被接合部及び第2被接合部(最終被接合部に相当)に配線材を接合するボンディングツールと、配線材が送り出される供給筒と、配線材を挟んで保持するクランプつめとを有するボンディングヘッドを備える配線材接合装置が開示されている。この配線材接合装置でも、上述の特許文献1と同様にして、配線材を第1被接合部及び第2被接合部に接合する。
【0007】
その後、特許文献1とは異なり、ボンディングツールの押圧面で配線材のうち第2被接合部(最終被接合部に相当)に接合した部位を押圧しつつ、配線材を挟んで保持した状態のクランプつめを、ボンディングツールから遠ざかる方向に移動させる。このとき、配線材のうちボンディングツールで押圧固定された部位とクランプつめで保持固定された部位との間で、配線材を引きちぎる(破断する)。その後、破断した配線材を保持したクランプつめを、ボンディングツール側に移動させて、ボンディングツールの押圧面の直下に、破断後の配線材の第1接合予定部(先端部)を配置させる。その後、上述の動作を繰り返すことで、次の第1被接合部及び第2被接合部に、配線材を接合する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、特許文献1の配線材接合装置では、配線材を部分的に切断(ハーフカット)した後、次の接合に備えるべく、配線材の第1接合予定部をボンディングツールの押圧面の直下(接合可能位置)に配置させるために、ボンディングヘッドを後方に移動させなければならない。その後、配線材を部分切断位置(ハーフカット位置)において完全に切り離すために、さらに、ボンディングヘッドを後方に移動させなければならなかった。このように、特許文献1の配線材接合装置では、配線材の切断と切断した配線材の第1接合予定部を接合可能位置へ配置するために、ボンディングヘッドを、最終接合部の位置から後方へ大きく移動させなければならなかった。このため、配線対象品に、最終被接合部への接合位置からボンディングヘッド等を後方に移動可能とするためのスペースを確保しなければならず、製品(例えば、パワーモジュール等)の小型化の妨げになっていた。
【0009】
また、特許文献2の配線材接合装置では、配線材のうちボンディングツールで押圧固定された部位とクランプつめで保持固定された部位との間で、配線材を引きちぎる(破断させる)。このような破断方法では、配線材を一定の位置で破断させることが難しいため、配線材の破断位置のバラツキが大きくなる。このため、「最終接合部におけるテール長さ」(配線材の最終接合部から切断位置までの寸法をいう)のバラツキが大きくなり、これに伴って、次の「第1接合部におけるテール長さ」(配線材の第1接合部から先端までの寸法をいう)のバラツキも大きくなる。「最終接合部におけるテール長さ」(以下、「最終テール長さ」ともいう)が長くなると、配線材が接合パッド等から飛び出し、絶縁不良(短絡)が生じる虞があった。また、「第1接合部におけるテール長さ」(以下、「先頭テール長さ」ともいう)が短すぎる場合は、十分な接合面積を確保できず、接合不良が生じる虞があった。反対に、先頭テール長さが長すぎる場合は、配線材が接合パッド等から飛び出し、絶縁不良(短絡)が生じる虞があった。また、このような破断方法では、径の太い配線材や幅広の帯状配線材を破断させることができないため、適用できる配線材に制限があった。
【0010】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、ボンディングツール等を最終接合部の位置から移動させることなく、配線材を適切な位置で完全に切断すると共に、切断した配線材の第1接合予定部を接合可能位置に配置することができる配線材接合装置、及び配線材接合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
その解決手段は、線状または帯状をなす配線材を被接合部に接合すると共に、複数の上記被接合部間に上記配線材を架け渡し、複数の上記被接合部に上記配線材を接合した後に上記配線材を切断する配線材接合装置であって、上記配線材を上記被接合部に接合するボンディングツールであって、所定の接合可能位置に配置された上記配線材の接合予定部を上記被接合部に接合するボンディングツールと、複数の上記被接合部に接合した後の配線材を、最終の被接合部に接合された最終接合部よりも基端側の位置で完全に切断する切断刃を有するカッターと、上記切断により先端が形成された上記配線材をその先端側に送り出して、上記配線材のうち次に接合させる第1接合予定部を上記接合可能位置に配置する配線材送出手段と、を備える配線材接合装置である。
【0012】
本発明の配線材接合装置は、複数の被接合部に接合した後の配線材を、最終の被接合部に接合された最終接合部よりも基端側の位置で完全に切断する切断刃を有するカッターを備えている。従って、従来の配線材接合装置(特許文献1参照)と異なり、ボンディングツール等を最終接合部の位置から移動させることなく、配線材を完全に切断(ハーフカットでなく全切断)することができる。さらには、配線材を引きちぎる(破断させる)従来の装置(特許文献2参照)と異なり、配線材を一定の位置で切断することができる。これにより、最終テール長さのバラツキを小さくできるので、絶縁不良(短絡)等の不具合を抑制することができる。
【0013】
さらに、本発明の配線材接合装置は、切断により先端が形成された配線材をその先端側に送り出して、配線材のうち次に接合させる第1接合予定部を接合可能位置に配置する配線材送出手段を備えている。従って、従来の配線材接合装置(特許文献1参照)と異なり、ボンディングツール等を最終接合部の位置から移動させることなく、配線材の第1接合予定部を接合可能位置に配置することができる。これにより、被配線部材に、最終接合部の位置からボンディングヘッド等を後方に移動可能とするためのスペースが不要となるので、被配線部材(パワーモジュール等)の小型化を図ることも可能となる。
【0014】
さらに、上記の配線材接合装置であって、前記配線材送出手段は、前記配線材を所定量送り出して、上記配線材のうち前記先端から所定距離に位置する部位を前記第1接合予定部として、前記接合可能位置に配置する配線材送出手段である配線材接合装置とすると良い。
【0015】
本発明の配線材接合装置では、配線材送出手段により、配線材をその先端側に所定量送り出すことができる。ところで、この配線材は、切断刃で切断したことにより先端位置のバラツキが小さい。このため、容易に、この配線材のうち先端から所定距離に位置する部位を第1接合予定部として接合可能位置に配置することができる。つまり、接合可能位置に配置した配線材の第1接合予定部から先端までの長さのバラツキを小さくすることができる。従って、この第1接合予定部を接合することで、配線材の第1接合部から先端までの長さ(先頭テール長さ)のバラツキを小さくすることができる。これにより、配線材の接合不良や絶縁不良(短絡)を抑制することが可能となる。
【0016】
さらに、上記いずれかの配線材接合装置であって、前記配線材送出手段は、前記配線材の保持と非保持を切り替え可能なクランパと、上記クランパを、上記配線材を保持した状態で移動させて、上記配線材をその先端側に送り出すクランパ移動送出機構と、を備える配線材接合装置とすると良い。
【0017】
本発明の配線材接合装置では、配線材送出手段が、クランパとクランパ移動送出機構とを備えている。従って、クランパにより配線材を適切に保持して、配線材が無用に引き出されるのを防止することができる上、このクランパを移動させることで、配線材をその先端側に適切に送り出すことができる。
【0018】
さらに、上記いずれかの配線材接合装置であって、前記配線材送出手段は、モータで駆動され、上記モータの駆動量の制御により、上記配線材を所定量送り出す配線材送出手段である配線材接合装置とすると良い。
【0019】
本発明の配線材接合装置は、モータの駆動量の制御により、配線材を所定量送り出す配線材送出手段を備えている。従って、切断した配線材を、容易に所定量だけ、その先端側に送り出すことができる。
なお、モータとしては、ステッピングモータやサーボモータやリニアモータ等を例示できる。駆動量の制御としては、ステッピングモータやサーボモータの場合には、その回動量(回転角)の制御を挙げることができる。また、リニアモータの場合には、その移動量の制御を挙げることができる。
【0020】
他の解決手段は、線状または帯状をなす配線材を被接合部に接合すると共に、複数の上記被接合部間に上記配線材を架け渡し、複数の上記被接合部に上記配線材を接合した後に上記配線材を切断する配線材接合方法であって、所定の接合可能位置に配置された上記配線材の接合予定部を、上記被接合部に接合する接合段階と、上記配線材を次の被接合部にまで架け渡す架け渡し段階と、複数の上記被接合部に接合した後の配線材を、最終の被接合部に接合された最終接合部よりも基端側の位置で、切断刃で完全に切断する切断段階と、上記切断により先端が形成された上記配線材をその先端側に送り出して、上記配線材のうち次に接合させる第1接合予定部を上記接合可能位置に配置する配線材送出段階と、を備える配線材接合方法である。
【0021】
本発明の配線材接合方法では、複数の被接合部に接合した後の配線材を、最終の被接合部に接合された最終接合部よりも基端側の位置で完全に切断する。従って、従来の配線材接合方法(特許文献1参照)と異なり、ボンディングツール等を最終接合部の位置から移動させることなく、配線材を完全に切断することができる。さらには、配線材を引きちぎる(破断させる)従来の方法(特許文献2参照)と異なり、配線材を一定の位置で切断することができる。これにより、最終テール長さのバラツキを小さくできるので、絶縁不良(短絡)等の不具合を抑制することができる。
【0022】
さらに、本発明の配線材接合方法では、切断により先端が形成された配線材をその先端側に送り出して、配線材のうち次に接合させる第1接合予定部を接合可能位置に配置する。従って、従来の配線材接合方法(特許文献1参照)と異なり、ボンディングツール等を最終接合部の位置から移動させることなく、配線材の第1接合予定部を接合可能位置に配置することができる。これにより、被配線部材に、最終接合部の位置からボンディングヘッド等を後方に移動可能とするためのスペースが不要となるので、被配線部材(パワーモジュール等)の小型化を図ることも可能となる。
【0023】
さらに、上記の配線材接合方法であって、前記配線材送出段階では、前記配線材を所定量送り出し、上記配線材のうち前記先端から所定距離に位置する部位を前記第1接合予定部として、前記接合可能位置に配置する配線材接合方法とすると良い。
【0024】
本発明の配線材接合方法では、配線材送出段階において、配線材をその先端側に所定量送り出すことができる。ところで、この配線材は、切断刃で切断したことにより先端位置のバラツキが小さい。このため、容易に、この配線材のうち先端から所定距離に位置する部位を第1接合予定部として接合可能位置に配置することができる。つまり、接合可能位置に配置した配線材の第1接合予定部から先端までの長さのバラツキを小さくすることができる。従って、この第1接合予定部を接合することで、配線材の第1接合部から先端までの長さ(先頭テール長さ)のバラツキを小さくすることができる。これにより、配線材の接合不良や絶縁不良(短絡)を抑制することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
次に、本発明の実施形態について、図1〜図12を参照しつつ説明する。
(実施例1)
まず、本実施例1で配線したパワーモジュール10について説明する。パワーモジュール10は、図1に示すように、放熱板11と、この放熱板11上に配置されたIGBT15とダイオード17とを備えるパワーモジュールである。IGBT15とダイオード17とは、IGBT15の接合パッド15bとダイオード17の接合パッド17bとに接合された帯状の配線材30により、電気的に接続されている。なお、ダイオード17の直近には、壁部材19が隣接して配置されている。
【0026】
次に、本実施例1の配線材接合装置100について説明する。配線材接合装置100は、図2に示すように、ボンディングツール110、カッター130、及び配線材送出手段150を備えるヘッド部170と、配線材30が捲回されて収容されているスプール180を備える本体部190とを有している。なお、ヘッド部170は、本体部190に設けられたリニアモータ192等に接続されており、このリニアモータ192等の駆動により、X方向(図2において左右方向)、Y方向(図2において紙面に直交する方向)、及びZ方向(図2において上下方向)に移動可能とされている。
【0027】
ボンディングツール110は、配線材30を押圧する押圧面110bを有している。このボンディングツール110は、超音波振動を発生させる振動子113と、スプリング及び電磁コイルを有し、Z方向(図2において上下方向)に駆動するアクチュエータ115とに接続されている。このため、図5に示すように、アクチュエータ115の下方への駆動により、ボンディングツール110で配線材30の接合予定部30bを接合パッド15bに押圧しつつ、振動子113によりボンディングツール110を超音波振動させることで、配線材30の接合予定部30bを接合パッド15bに接合することができる。
【0028】
カッター130は、図2に示すように、その先端側に切断刃131を有しており、ボンディングツール110と配線材送出口151bを有するガイド151との間に設けられている。このカッター130は、ヘッド部170に設けられた図示しない駆動機構に接続されており、この駆動機構の駆動により、Z方向(図2において上下方向)に移動可能とされている。従って、ボンディングツール110で配線材30の接合予定部30cを接合パッド17b(最終被接合部)に接合した状態で、カッター130を下方に移動させることができる(図9参照)。これにより、配線材30を、接合パッド17bに接合された接合部30c1(最終接合部)よりも基端側(図9において右側)の所定位置で、切断刃131により完全に切断することができる。
【0029】
このように、本実施例1の配線材接合装置100では、従来の配線材接合装置(特許文献1参照)と異なり、ボンディングツール110等を最終接合部(接合部30c1)の位置から移動させることなく、配線材30を完全に切断することができる。さらには、切断刃131により配線材30を所定位置で切断するので、配線材を引きちぎる(破断させる)従来の装置(特許文献2参照)と異なり、配線材を一定の位置で切断することができる。これにより、接合パッド17b(最終被接合部)における最終テール長さTL2(図10参照)のバラツキを小さくすることができるので、配線材30の最終テール部30gが接合パッド17bからはみ出すことによる絶縁不良(短絡)等の不具合を防止することができる。
【0030】
配線材送出手段150は、図2に示すように、クランパ153と、このクランパ153をX方向(図2において左右方向)に移動させる第1リニアモータ154と、クランパ153をZ方向(図2において上下方向)に移動させる第2リニアモータ155とを有する。さらに、第1リニアモータ154及び第2リニアモータ155の駆動を制御する図示しない駆動制御装置と、スプール180から送り出される配線材30をボンディングツール110の押圧面110bの直下(接合可能位置)に導くガイド151とを有する。
【0031】
このうち、クランパ153は、Z方向に延びる棒状部材である。このクランパ153は、第1リニアモータ154の駆動により、配線材30が位置する方向(図2において右方向)に移動することで、クランパ153とガイド151の内壁面151bとの間に、配線材30を挟んで保持することができる。これにより、配線材30が無用に引き出されるのを防止することができる。反対に、第1リニアモータ154の駆動により、配線材30から離れる方向(図2において左方向)に移動することで、保持していた配線材30を離すことができる。これにより、配線材30が引き出されるのを許容することができる。
【0032】
この配線材送出手段150では、図11に示すように、クランパ153とガイド151の内壁面151bとの間に、カッター130での切断により先端30dが形成された配線材30を挟んで保持した状態で、第2リニアモータ155(クランパ移動送出機構)の駆動によりクランパ153を下方に移動させる。これにより、配線材30をその先端側に送り出して、配線材30の第1接合予定部30bを、ボンディングツール110の押圧面110bの直下(接合可能位置)に配置することができる。
【0033】
このように、本実施例1の配線材接合装置100では、従来の配線材接合装置(特許文献1参照)と異なり、カッターで配線材を切断(従来はハーフカット)した後、ボンディングツール110等を最終接合部の位置から移動させることなく、配線材30の第1接合予定部30bをボンディングツール110の押圧面110bの直下(接合可能位置)に配置することができる。従って、本実施例1のように、ダイオード17の直近に壁部材19が隣接して配置されており、ボンディングツール110等を最終接合部の位置から後方(図9〜図11において右側)へ移動させることが困難とされている場合でも、配線材30を一定の位置で完全に切断(ハーフカットではなく全切断)する(図9参照)と共に、切断した配線材30の第1接合予定部30bを接合可能位置に配置する(図11参照)ことができる。
【0034】
換言すれば、本実施例1の配線材接合装置100を用いることで、被配線部材(パワーモジュール10)に、最終接合部の位置からボンディングヘッド等を後方(図9〜図11において右側)に移動可能とするためのスペースを設ける必要がなくなるので、被配線部材の小型化を図ることが可能となる。具体的には、本実施例1においては、ダイオード17と壁部材19との間に、ボンディングヘッド110等を後方(図9〜図11において右側)に移動可能とするためのスペースを設けることなく、ダイオード17の直近に壁部材19を隣接して設けることで、パワーモジュール10を小型化することができた。
【0035】
さらに、本実施例1の配線材送出手段150では、第2リニアモータ155の駆動を制御する図示しない駆動制御装置により、第2リニアモータ155の下方への移動量を所定量(例えば、2mm)に制御する。これにより、ガイド151の内壁面151bとの間に配線材30を挟んで保持したクランパ153を、所定量(例えば、2mm)だけ下方に移動させて、配線材30をその先端側に所定量(例えば、2mm)だけ送り出すことができる。
【0036】
ところで、この配線材30は、切断刃131で切断したことにより先端位置のバラツキが小さい。このため、配線材30のうち先端30dから所定距離D(先頭テール長さTL1に一致する)に位置する部位を第1接合予定部30bとして、接合可能位置に配置することができる(図11参照)。つまり、接合可能位置に配置した配線材30の第1接合予定部30bから先端30dまでの長さDのバラツキを小さくすることができる。従って、この第1接合予定部30bを接合することで、配線材30の第1接合部30bから先端30dまでの長さ(先頭テール長さTL1)のバラツキを小さくすることができる(図5参照)。これにより、配線材30の接合不良や絶縁不良(短絡)を抑制することが可能となる。
【0037】
次に、本実施例1の配線材接合方法について、図3を参照して説明する。
まず、ステップS1において、リニアモータ192等の駆動により、ヘッド部170(を、IGBT15の接合パッド15b(第1被接合部)に向けて移動させる(図2,図4参照)。詳細には、ボンディングツール110等と共に、ボンディングツール110の押圧面110bの直下(接合可能位置)に配置された配線材30の接合予定部30bを、IGBT15の接合パッド15b(第1被接合部)上に移動させる(図4参照)。
【0038】
次いで、ステップS2に進み、ボンディングツール110等と共に、ボンディングツール110の押圧面110bの直下(接合可能位置)に配置された配線材30の接合予定部30bが、IGBT15の接合パッド15b(第1被接合部)上に配置されたか否かを判定する。具体的には、リニアモータ192等の駆動量が、所定の駆動量に達したか否かを判定する。
【0039】
ステップS2において、接合予定部30bが、IGBT15の接合パッド15b(第1被接合部)上に配置されたと判定されると、ステップS3に進み、配線材30の接合予定部30bを、IGBT15の接合パッド15b(第1被接合部)に接合する(図5参照)。具体的には、アクチュエータ115の下方への駆動により、ボンディングツール110で配線材30の接合予定部30bを接合パッド15bに押圧しつつ、振動子113によりボンディングツール110を超音波振動させることで、配線材30の接合予定部30bを接合パッド15bに接合する(図2、図5参照)。なお、このとき、クランパ153とガイド151の内壁面151bとの間で配線材30を挟んで保持し、接合時に配線材30が引き出されないようにしている。
なお、本実施例1では、ステップS3と後述するステップS5が接合段階に相当する。
【0040】
次いで、ステップS4に進み、リニアモータ192等の駆動により、ボンディングツール110等を有するヘッド部170を、ダイオード17の接合パッド17b(最終被接合部)に向けて移動させる。具体的には、図6に示すように、まず、ボンディングツール110等を有するヘッド部170を上昇させて、ガイド151の配線材送出口151bから配線材30を引き出す。なお、ヘッド部170を上昇させる前に、第1リニアモータ154の駆動により、ガイド151の内壁面151bとの間で配線材30を挟んで保持していたクランパ153を、配線材30から離れる方向(図6において左方向)移動させて、配線材30が引き出される状態としている。
【0041】
引き続き、ボンディングツール110等を有するヘッド部170を、ダイオード17の接合パッド17b(最終被接合部)が位置する方向(図6において右方向)に移動させると共に、下方に移動させることで、配線材30の接合予定部30cを、ダイオード17の接合パッド17b上へ移動させる(図7参照)。これにより、IGBT15の接合パッド15b(第1被接合部)とダイオード17の接合パッド17b(最終被接合部)との間に、配線材30を架け渡すことができる。
なお、本実施例1では、ステップS4が架け渡し段階に相当する。
【0042】
次に、ステップS5に進み、ボンディングツール110等と共に、配線材30の接合予定部30cが、ダイオード17の接合パッド17b(最終被接合部)上に配置されたか否かを判定する。具体的には、リニアモータ192等の駆動量が、所定の駆動量に達したか否かを判定する。
【0043】
ステップS5において、接合予定部30cが接合パッド17b(最終被接合部)上に配置されたと判定されると、ステップS6に進み、配線材30の接合予定部30cを、ダイオード17の接合パッド17b(最終被接合部)に接合する(図8参照)。具体的には、前述のステップS2と同様にして、配線材30の接合予定部30cを接合パッド17bに超音波接合する。なお、このとき、第1リニアモータ154の駆動により、クランパ153を配線材30の位置する方向(図8において右方向)に移動させて、クランパ153とガイド151の内壁面151bとの間で配線材30を挟んで保持し、接合時に配線材30が引き出されないようにしている。
【0044】
次に、ステップS7に進み、カッター130の切断刃131により、配線材30を完全に切断する。具体的には、図9に示すように、ボンディングツール110で配線材30の接合予定部30cを接合パッド17b(最終被接合部)に接合した状態で、カッター130を下方に移動させる。これにより、配線材30を、接合パッド17bに接合された接合部30c1(最終接合部)よりも基端側(図9において右側)の所定位置で、切断刃131により完全に切断することができる。その後、ステップS8に進み、ヘッド部170を上昇させる(図10参照)。
【0045】
このように、本実施例1では、従来の配線材接合方法(特許文献1参照)と異なり、ボンディングツール110等を最終接合部(接合部30c1)の位置から移動させることなく、配線材30を完全に切断することができる。さらには、切断刃131により配線材30を所定位置で切断するので、配線材を引きちぎる(破断させる)従来の方法(特許文献2参照)と異なり、配線材を一定の位置で切断することができる。これにより、接合パッド17b(最終被接合部)における最終テール長さTL2(図10参照)のバラツキを小さくすることができる。従って、配線材30の最終テール部30gが接合パッド17bからはみ出すことによる絶縁不良(短絡)等の不具合を抑制することができる。
なお、本実施例1では、ステップS7が切断段階に相当する。
【0046】
次に、ステップS9に進み、クランパ153とガイド151の内壁面151bとの間に、カッター130での切断により先端30dが形成された配線材30を挟んで保持した状態で、第2リニアモータ155(クランパ移動送出機構)の駆動によりクランパ153を下方に移動させる(図11参照)。これにより、配線材30をその先端側に送り出して、配線材30の第1接合予定部30bを、ボンディングツール110の押圧面110bの直下(接合可能位置)に、適切に配置することができる。
【0047】
このように、本実施例1では、従来の配線材接合方法(特許文献1参照)と異なり、カッターで配線材を切断(従来はハーフカット)した後、ボンディングツール110等を最終接合部の位置から移動させることなく、配線材30の第1接合予定部30bをボンディングツール110の押圧面110bの直下(接合可能位置)に配置することができる。従って、本実施例1では、ダイオード17の直近に壁部材19を隣接して配置することでパワーモジュールの小型化を図り、ボンディングツール110等を最終接合部の位置から後方(図9〜図11において右側)へ移動させることが困難とされている場合でも、配線材30を一定の位置で完全に切断する(図9参照)と共に、切断した配線材30の第1接合予定部30bを接合可能位置に配置する(図11参照)ことができる。
【0048】
特に、本実施例1では、第2リニアモータ155の下方への移動量を所定量(例えば、2mm)に制御することで、ガイド151の内壁面151bとの間に配線材30を挟んで保持したクランパ153を、所定量(例えば、2mm)だけ下方に移動させている。これにより、切断刃131で切断したことにより先端位置のバラツキが小さい配線材30を、その先端側に所定量(例えば、2mm)だけ送り出し、配線材30のうち先端30dから所定距離D(先頭テール長さTL1に一致する)に位置する部位を第1接合予定部30bとして、接合可能位置に配置することができる(図11参照)。従って、接合可能位置に配置した配線材30の第1接合予定部30bから先端30dまでの長さDのバラツキを小さくして、配線材30の先端30dを適切な位置に配置することができる。
なお、本実施例1では、ステップS9が配線材送出段階に相当する。
【0049】
次に、ステップSAに進み、パワーモジュール10にかかる配線材30の全ての接合が完了したか否かを判定する。具体的には、エンコーダ185(図2参照)により検出された配線材30の引き出し量が、所定量に達したか否かにより判定する。全ての接合が完了していない(No)と判定された場合には、再びステップS1に戻り、ヘッド部170を移動させて、ボンディングツール110、カッター130、及びガイド151等と共に、ボンディングツール110の押圧面110bの直下(接合可能位置)に配置された配線材30の接合予定部30bを、IGBT15の接合パッド15b(第1被接合部)上に配置する(図4参照)。
【0050】
その後、ステップS2において、接合予定部30bが、IGBT15の接合パッド15b(第1被接合部)上に配置されたと判定されると、ステップS3に進み、配線材30の接合予定部30bを、IGBT15の接合パッド15b(第1被接合部)に接合する(図4参照)。
【0051】
ところで、本実施例1では、前述のように、ステップS9において、接合可能位置に配置した配線材30の第1接合予定部30bから先端30dまでの長さD(図11参照)のバラツキを小さくすることができる。これにより、配線材30の第1接合部30bから先端30dまでの長さ(先頭テール長さTL1)のバラツキを小さくすることができる(図5参照)ので、配線材30の接合不良や絶縁不良(短絡)を抑制することが可能となる。
【0052】
その後、前述のように、ステップS4〜SAの処理を行い、ステップSAにおいて、パワーモジュール10にかかる配線材30の全ての接合が完了したと判定されるまで、ステップS1〜SAの処理を繰り返し行う。このようにして、配線材の接合を適切に行うことができる。
【0053】
(実施例2)
次に、実施例2の配線材接合装置200について説明する。配線材接合装置200は、図12に示すように、実施例1の配線材接合装置100と比較して、配線材送出手段が異なり、その他の部位は同様である。従って、ここでは、実施例1と異なる配線送出機構について説明し、その他については説明を省略する。
【0054】
本実施例2の配線送出機構250は、サーボモータ254と、サーボモータ254の駆動を制御する図示しない駆動制御装置と、サーボモータ254の回転軸254bに嵌合された第1ローラ255と、動力を有しない回転軸257と、この回転軸257に嵌合された第2ローラ258とを有する。第1ローラ255と第2ローラ257との間には、両者に接触して配線材30がZ方向(図12において上下方向)に通っている。従って、サーボモータ254の駆動により、その回転軸254bに嵌合された第1ローラ255を、図12において時計回りに回動させると、これに伴って第2ローラ258が回転軸257を中心に反時計回りに回動すると共に、配線材30をその先端側に送り出すことができる。
【0055】
特に、本実施例2の配線材送出手段250では、サーボモータ254の駆動を制御する図示しない駆動制御装置により、サーボモータ254の駆動量(回転角)を所定量に制御する。これにより、実施例1と同様に、切断刃131で切断したことにより先端位置のバラツキが小さい配線材30を、その先端側に所定長さ(例えば、2mm)だけ送り出すことができる。このため、実施例1と同様に、接合可能位置(ボンディングツール110の押圧面110bの直下)に配置した配線材30の第1接合予定部30bから先端30dまでの長さのバラツキを小さくすることができる。従って、この第1接合予定部30bを接合することで、配線材30の第1接合部30bから先端30dまでの長さ(先頭テール長さ)のバラツキを小さくすることができる。
【0056】
以上において、本発明を実施例1,2に即して説明したが、本発明は上記実施例等に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】実施例1にかかるパワーモジュール10の側面視概略図である。
【図2】実施例1にかかる配線材接合装置100の側面視概略図である。
【図3】実施例1にかかる配線材接合方法の流れを示すフローチャートである。
【図4】実施例1の配線材接合方法を説明する説明図である。
【図5】実施例1の第1の接合段階を説明する説明図である。
【図6】実施例1の架け渡し段階を説明する説明図である。
【図7】実施例1の架け渡し段階を説明する説明図である。
【図8】実施例1の第2の接合段階を説明する説明図である。
【図9】実施例1の切断段階を説明する説明図である。
【図10】実施例1の配線材接合方法を説明する説明図である。
【図11】実施例1の配線材送出段階を説明する説明図である。
【図12】実施例2にかかる配線材接合装置の側面視概略図である。
【符号の説明】
【0058】
10 パワーモジュール(製品)
15b 接合パッド(第1被接合部)
17b 接合パッド(最終被接合部)
30 配線材
30b 第1接合予定部(接合予定部)
30c 接合予定部
30b1 第1接合部
30c1 最終接合部
100 配線材接合装置
110 ボンディングツール
110b 押圧面
130 カッター
131 切断刃
150,250 配線材送出手段
151 ガイド
153 クランパ
155 第2リニアモータ(クランパ移動送出機構)
170 ヘッド部
254 サーボモータ
TL1 先頭テール長さ(第1接合部におけるテール長さ)
TL2 第2テール長さ(最終接合部におけるテール長さ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
線状または帯状をなす配線材を被接合部に接合すると共に、複数の上記被接合部間に上記配線材を架け渡し、複数の上記被接合部に上記配線材を接合した後に上記配線材を切断する配線材接合装置であって、
上記配線材を上記被接合部に接合するボンディングツールであって、所定の接合可能位置に配置された上記配線材の接合予定部を上記被接合部に接合するボンディングツールと、
複数の上記被接合部に接合した後の配線材を、最終の被接合部に接合された最終接合部よりも基端側の位置で完全に切断する切断刃を有するカッターと、
上記切断により先端が形成された上記配線材をその先端側に送り出して、上記配線材のうち次に接合させる第1接合予定部を上記接合可能位置に配置する配線材送出手段と、
を備える
配線材接合装置。
【請求項2】
請求項1に記載の配線材接合装置であって、
前記配線材送出手段は、
前記配線材を所定量送り出して、上記配線材のうち前記先端から所定距離に位置する部位を前記第1接合予定部として、前記接合可能位置に配置する配線材送出手段である
配線材接合装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の配線材接合装置であって、
前記配線材送出手段は、
前記配線材の保持と非保持を切り替え可能なクランパと、
上記クランパを、上記配線材を保持した状態で移動させて、上記配線材をその先端側に送り出すクランパ移動送出機構と、を備える
配線材接合装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の配線材接合装置であって、
前記配線材送出手段は、
モータで駆動され、上記モータの駆動量の制御により、上記配線材を所定量送り出す配線材送出手段である
配線材接合装置。
【請求項5】
線状または帯状をなす配線材を被接合部に接合すると共に、複数の上記被接合部間に上記配線材を架け渡し、複数の上記被接合部に上記配線材を接合した後に上記配線材を切断する配線材接合方法であって、
所定の接合可能位置に配置された上記配線材の接合予定部を、上記被接合部に接合する接合段階と、
上記配線材を次の被接合部にまで架け渡す架け渡し段階と、
複数の上記被接合部に接合した後の配線材を、最終の被接合部に接合された最終接合部よりも基端側の位置で、切断刃で完全に切断する切断段階と、
上記切断により先端が形成された上記配線材をその先端側に送り出して、上記配線材のうち次に接合させる第1接合予定部を上記接合可能位置に配置する配線材送出段階と、を備える
配線材接合方法。
【請求項6】
請求項5に記載の配線材接合方法であって、
前記配線材送出段階では、
前記配線材を所定量送り出し、上記配線材のうち前記先端から所定距離に位置する部位を前記第1接合予定部として、前記接合可能位置に配置する
配線材接合方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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