説明

配線板、およびその製造方法

【課題】インクジェット印刷法により配線パターンおよび抵抗体を基板の上に形成する場合の制御を容易にすることができる配線板および配線板の製造方法を提供する。
【解決手段】基材12の表面に第1多孔膜部14および第2多孔膜部16が形成されている。第1多孔膜部14および第2多孔膜部16には、インクジェット印刷法により、同じ組成の導電体の微粒子を含むペーストが同一の印刷制御により供給されて配線パターン18または抵抗体20が形成される。ここで、第2多孔膜部16のペーストの拡散率は第1多孔膜部14のペーストの拡散率の1.5倍以上となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線板、およびその製造方法に関し、特に配線板の性能を改善するとともに、その製造を容易にするための改良に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器の小型化・軽量化に伴い、配線板の薄型化・高密度化が進んでいる。また、特に情報通信分野や情報処理分野において使用される電子機器に対しては、高機能化の要求も強い。このため、電子機器を高機能化するための部品を搭載するのに十分な実装面積を配線板に確保する必要性が高まっている。そして、このような要求に応えるために、表面実装部品(SMD:Surface Mount Device)の微小化、端子の狭ピッチ化、配線のファインパターン化、並びに部品を基板表面に高密度に実装するための表面実装技術(SMT:Surface Mount Technology)の採用等についての検討がなされてきた。
【0003】
これらの技術による改良にかかわらず、電子機器の高機能化の要求に対応するために、能動素子(チップ部品)の部品点数はますます増大している。そして、それに伴って、電気的調整を行う受動素子(キャパシタ、インダクタ、およびレジスタ)の部品点数も増大している。受動素子の実装面積は、配線板の半分以上を占める場合もあり、このことが、電子機器の小型化および高機能化の障害となっている。
【0004】
そこで、受動素子の機能を配線板に内蔵させる技術が注目されている。この技術によれば、小型化が容易になることの他に、以下に列挙するような効果を達成することができる。第1に、受動素子である表面実装部品と配線板とを接続するはんだ接合部を使用する必要がなくなり、信頼性が向上する。第2に、回路設計の自由度が増す。第3に、受動素子を内蔵化することにより、受動素子をより効果的な位置に形成することが可能となる。第4に、配線長の短縮が可能となり、結果として、寄生容量が低減されて電気特性が向上する。第5に、受動素子を表面実装する必要性がなくなることから低コスト化が図れる。
【0005】
そして、配線板に受動素子を内蔵させる技術の一例として、特許文献1には、樹脂および導電体を含むインク(ペースト)を使用して、配線パターンを形成する場合と同様にインクジェット印刷法により基板の上に抵抗体素子を形成し、これにより抵抗体素子を配線の内部に組み込む技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−165708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、インクジェット印刷法を用いた場合、吐出するインクの粘度が100mPa・s程度になると、ノズルが詰まる可能性がある。また、吐出するインクに含まれる粒子がミクロンオーダーのサイズのものであっても、ノズルが詰まる可能性がある。その結果、ペーストを安定的に吐出しながら抵抗体を形成することが困難である。
さらには、抵抗体を形成するためのペーストと、配線パターンを形成するためのペーストの組成が異なるために、各ペーストの材料特性に合わせてインクジェットヘッドの駆動制御を行う必要があり、処理が複雑になるという問題がある。
【0008】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、インクジェット印刷法により配線パターンおよび抵抗体を基板の上に形成する場合の制御を容易にすることができる配線板および配線板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、絶縁体材料からなる基材と、
前記基材の表面に形成された第1多孔膜部と、
前記基材の表面に形成された、前記第1多孔膜部とは導電体の粒子を含むペーストの拡散率が異なる第2多孔膜部と、
前記第1多孔膜部に形成された、導電体の粒子を主たる材料とする配線パターンと、
前記第2多孔膜部に形成された、導電体の粒子を主たる材料とする抵抗体とを具備する配線板を提供する。
【0010】
本発明の好ましい形態の配線板においては、前記導電体の粒子の平均粒径が30nm以下である。
【0011】
本発明の別の好ましい形態の配線板においては、前記第2多孔膜部は、少なくとも前記基材の面方向への前記ペーストの拡散率が前記第1多孔膜部よりも大きい。
【0012】
本発明のさらに別の好ましい形態の配線板においては、前記第2多孔膜部は、前記ペーストの拡散率が前記第1多孔膜部の1.5倍以上である。
【0013】
本発明のさらに別の好ましい形態の配線板においては、前記導電体の粒子が、金、銀および銅よりなる群から選択された少なくとも1種を含む。
【0014】
本発明のさらに別の好ましい形態の配線板においては、前記第1多孔膜部の厚みが、前記第2多孔膜部の厚みよりも小さい。
【0015】
また、本発明は、絶縁体材料からなる基材の表面に第1多孔膜部を形成する工程a、
前記基材の表面に、前記第1多孔膜部とは導電体の粒子を含むペーストの拡散率が異なる第2多孔膜部を形成する工程b、
前記第1多孔膜部に、導電体の粒子を含むペーストを供給して配線パターンを形成する工程c、並びに
前記第2多孔膜部に、導電体の粒子を含むペーストを供給して抵抗体を形成する工程dを含む配線板の製造方法を提供する。
【0016】
本発明の好ましい形態の配線板の製造方法においては、前記第1多孔膜部に供給される導電体の粒子を含むペーストの組成と、前記第2多孔膜部に供給される導電体の粒子を含むペーストの組成とが同じである。
【0017】
本発明の別の好ましい形態の配線板の製造方法においては、前記配線パターンの単位長さあたりに供給される前記ペーストの分量と、前記抵抗体の単位長さあたりに供給されるペーストの分量とが同じである。
【0018】
本発明のさらに別の好ましい形態の配線板の製造方法においては、前記第1多孔膜部および前記第2多孔膜部に所定の溶媒を供給して、前記第1多孔膜部および前記第2多孔膜部の厚みを減ずる工程eを含む。
【0019】
本発明のさらに別の好ましい形態の配線板の製造方法においては、前記第1多孔膜部に所定の溶媒を供給して、前記第1多孔膜部の厚みを減ずる工程fを含む。
【0020】
本発明のさらに別の好ましい形態の配線板の製造方法においては、前記第1多孔膜部および前記第2多孔膜部に前記導電体の粒子を含むペーストがインクジェット印刷法により供給される。
【0021】
本発明のさらに別の好ましい形態の配線板の製造方法においては、インクジェット印刷法により、前記導電体の粒子を含むペーストを、前記第1多孔膜部および前記第2多孔膜部の吹き付け予定ポイントに、その並びの順番通りに吹き付けて、前記配線パターンまたは前記抵抗体を形成する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、基板の上に配線パターンを形成するために使用するペーストと、基板の上に抵抗体を形成するために使用するペーストとを同一の組成のペーストとし、かつインクジェット印刷法によりペーストを供給するための印刷制御を同一として、配線パターンと抵抗体とを形成することができる。したがって、配線パターンに抵抗体が組み込まれた配線板の製造が極めて容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態1に係る配線板の概略構成を示す断面図である。
【図2】同上の配線板の前駆体の概略構成を示す断面図である。
【図3】同上の配線板に配線パターンを形成するときの手順を示す断面図であり、(a)はペーストを第1多孔膜部に供給した直後の状態、(b)はペーストが第1多孔膜部の内部に拡散した状態を示す。
【図4】同上の配線板に抵抗体を形成するときの手順を示す断面図であり、(a)はペーストを第2多孔膜部に供給した直後の状態、(b)はペーストが第2多孔膜部の内部に拡散した状態を示す。
【図5】ペーストをインクジェット印刷法により同上の配線板の各多孔膜部に供給する手順を説明するための、ペースト供給部位の模式図である。
【図6】本発明の実施の形態2に係る配線板の概略構成を示す断面図である。
【図7】本発明の実施の形態3に係る配線板の概略構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
《実施の形態1》
図1に、本発明の実施の形態1に係る配線板の概略構成を断面図により示す。図1に示すように、配線板10は、絶縁体材料から構成された基材12を備えている。
基材12の表面には、第1多孔膜部14および第2多孔膜部16が設けられている。第1多孔膜部14には、配線パターン18が形成され、第2多孔膜部16には、抵抗体20が形成される。
【0025】
基材12は、例えばポリイミドからなる有機フィルムから構成することができる。そのほか、基材12は、ポリアミドおよびポリエチレンテレフタレート等の有機フィルムから構成することもできる。基材12の厚みは例えば25μmとすることができるが、特に限定されない。また、基材12は、有機フィルムのようなフレキシブルな材料に限らず、熱硬化性樹脂やセラミックのようなリジッドな絶縁体材料から構成することもできる。
【0026】
第1多孔膜部14および第2多孔膜部16は、少なくとも有機溶剤に可溶性の多孔膜から構成されるのが好ましい。これにより、後に示すように、第1多孔膜部14および第2多孔膜部16の空孔を潰して、導電性、特に配線パターン18の導電性を上げることができる。第1多孔膜部14は、例えば熱可塑性樹脂であるポリエーテルイミド系樹脂を主成分として構成することができる。第2多孔膜部16もまた、熱硬化性樹脂であるアミドイミド系樹脂を主成分として構成することができる。第1多孔膜部14および第2多孔膜部16は、連通性を有する多数の微小な空孔を含んでいる。
【0027】
第1多孔膜部14は、平均孔径を例えば2〜6μmとすることができる。空隙率は、70〜75%とすることができる。また、膜厚は、例えば25μmとすることができるが、特に限定されない。ここで、第1多孔膜部14においては、空孔は、基材12の厚み方向に面方向よりも緊密につながるように形成されており、基材12の面方向への繋がり性は比較的小さくなっている。
第2多孔膜部16は、平均孔径を例えば0.5〜1μmとすることができる。空隙率は、75〜80%とすることができる。また、膜厚は、例えば25μmとすることができるが、特に限定されない。ここで、第2多孔膜部16は、空孔の繋がり性が、基材12の面方向および厚み方向の両方において第1多孔膜部14よりも大きくなっている。
【0028】
図2に、基材12、第1多孔膜部14、および第2多孔膜部16のみからなる配線板10の前駆体を示す。この前駆体は、配線パターン18を形成すべき部分の基材12の表面に第1多孔膜部14の素材であるポリエーテルイミド系樹脂の多孔膜を貼り付け、抵抗体20を形成すべき部分の基材12の表面に第2多孔膜部16の素材であるアミドイミド系樹脂の多孔膜を貼り付けて構成されている。
【0029】
図3に、第1多孔膜部14に配線パターン18を形成する手順を示す。まず、同図(a)に示すように、インクジェットノズル22から導電体の粒子を含むペースト24が第1多孔膜部14に向かって吹き付けられる。そして、同図(b)に示すように、第1多孔膜部14の表面に付着したペースト24は、第1多孔膜部14の内部に浸透する。このとき、第1多孔膜部14の面方向へのペースト24の拡散率は比較的小さい。このため、ペースト24は、第1多孔膜部14の面方向にはあまり拡散せず、主に厚み方向に拡散する。
【0030】
図4に、第2多孔膜部16に抵抗体20を形成する手順を示す。まず、同図(a)に示すように、インクジェットノズル22から導電体の粒子を含むペースト24が第2多孔膜部16に向かって吹き付けられる。ここで、第2多孔膜部16に吹き付けられるペースト24の組成は、第1多孔膜部14に吹き付けられるペースト24の組成と同じである。また、抵抗体20を形成するようにペースト24を第2多孔膜部16に吹き付る吹き付け制御(印刷制御)は、配線パターン18を形成するようにペースト24を第1多孔膜部14に吹き付る吹き付け制御と全く同様に行われる。つまり、抵抗体20の単位長さあたりにインクジェットノズル22が第2多孔膜部16にペースト24を吹き付ける回数および1回の吹きつけの分量は、配線パターン18の単位長さあたりにインクジェットノズル22が第1多孔膜部14にペースト24を吹き付ける回数および1回の吹きつけの分量と同じである。
【0031】
そして、図4(b)に示すように、第2多孔膜部16の表面に付着したペースト24は、第2多孔膜部16の内部に浸透する。このとき、ペースト24は、第2多孔膜部16の面方向および厚み方向の両方に、第1多孔膜部14におけるよりも広く拡散する。
【0032】
ペースト24に含まれる導電体の粒子は、平均粒径を30nm以下とするのが好ましい。このように、ナノオーダーの導電体の粒子を使用することにより、インクジェットノズル22におけるつまりの発生を抑えて安定的に配線パターン18および抵抗体20を形成することができる。導電体の粒子は、銀から構成することができるほか、金および銅から構成することもできる。ペースト24の分散媒には、テトラデカン、トルエン、水およびエタノール等を使用することができる。
【0033】
また、第2多孔膜部16におけるペースト24の拡散率は、第1多孔膜部14におけるペースト24の拡散率の1.5倍以上とするのが好ましい。例えば第2多孔膜部16における面方向および厚み方向の拡散率をそれぞれ第1多孔膜部14の1.22(≒1.50.5)倍以上とすることで、第2多孔膜部16におけるペースト24の拡散率を、第1多孔膜部14におけるペースト24の拡散率の1.5倍以上とすることができる。第2多孔膜部16におけるペースト24の拡散率を第1多孔膜部14におけるペースト24の拡散率の1.5倍以上とすることによって、第2多孔膜部16においては、ペースト24に含まれている導電体の粒子が互いに接触し難くなる。その結果、導電体の粒子の繋がりの度合いに差が生じ、抵抗率は、103〜106倍に高くなる。
【0034】
第1多孔膜部14および第2多孔膜部16におけるペースト24の拡散率の調節は、各多孔膜部の材質、厚みおよび空孔の繋がり性を調節することによって制御することができる。
【0035】
以上のようにして、ペースト24を第1多孔膜部14および第2多孔膜部16に付着させ、拡散させた後、ペースト24を含んだ第1多孔膜部14および第2多孔膜部16を所定温度(例えば220℃)で加熱する。これにより、ペースト24の分散媒が揮発されるとともに、導電体の粒子が焼結される。その結果、第1多孔膜部14には配線パターン18が形成され、第2多孔膜部16には抵抗体20が形成される。
【0036】
ここで、インクジェット印刷法により第1多孔膜部14および第2多孔膜部16にペースト24を供給する場合は、図5に示すように、連なった各ポイントP1〜P10にペースト24を吹き付けて、配線パターン18または抵抗体20を形成する。ところが、各ポイントP1〜P10に、その並びの順番通りにペースト24を吹き付けると、そのペースト24が配線パターン18等の幅方向に滲んでしまう。そこで、通常は、何個おきかの各ポイント(例えば、ポイントP1、P4、P7およびP10)にペースト24を吹き付け、次に1つずつ位置をずらした各ポイント(例えば、ポイントP2、P5およびP8)にペースト24を吹き付け、その次にさらに1つずつ位置をずらした各ポイント(例えば、ポイントP3、P6およびP9)にペーストを吹き付ける、というようにして、配線パターン18等を形成するのが通常である。つまり、通常は、何回かに分けてペースト24を吹き付けるように、インクジェットヘッドの往復が繰り返される。
【0037】
これに対して、配線板10の形成においては、第1多孔膜部14および第2多孔膜部16にペースト24が吹き付けられるので、ペースト24の配線パターン18等の幅方向への滲みを抑えることができる。このため、上述した通常の方法によらずに、ペースト24を、各ポイントP1〜P10に、その並びの順番通りに吹き付けて配線パターン18または抵抗体20を形成することができる。したがって、配線パターン18および抵抗体20の形成を効率よく行うことができ、生産性を向上させることができる。
【0038】
次に、第1多孔膜部14および第2多孔膜部16の素材である多孔膜の作製方法を説明する。第1多孔膜部14の素材である多孔膜は、例えばポリエーテルイミド系樹脂をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に溶解させた溶液を、表面を平滑にしたステンレス鋼製のベルト等の膜作製用基盤の上に流し込んで付着させ、凝固させた後、上記基盤から剥離することにより作製することができる。このとき、均質なスポンジ状の多孔構造を得るために、水溶性ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン)をポリエーテルイミド系樹脂の溶液に添加する。そして、上記基盤から剥離された膜に水を供給することにより、水溶性ポリマーを抽出し、空孔を形成する。このとき、その水溶性ポリマーの種類や添加量を変えることによって、多孔膜部の平均孔径および空隙率を所望の値に調整することができる。
また、第2多孔膜部16の素材である多孔膜も、例えばアミドイミド系樹脂をNMPに溶解させた溶液を使用して、第1多孔膜部14の場合と同様にして作製することができる。
【0039】
次に、本実施の形態1の配線板に係る実施例を説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
《実施例1》
厚みが25μmである、ポリイミドから構成された基材12(東レ・デュポン(株)製のカプトン)の表面にポリエーテルイミド系樹脂からなる多孔膜(ダイセル化学工業(株)製)を貼り付けて、第1多孔膜部14を形成した。その膜厚は25μmとし、空孔の径は2μmとし、空隙率は70%とした。
また、基材12の表面にアミドイミド系樹脂からなる多孔膜(ダイセル化学工業(株)製)を貼り付けて、第2多孔膜部16を形成した。その膜厚は25μmとし、空孔の径は0.5μmとし、空隙率は80%とした。
【0040】
これらの第1多孔膜部14および第2多孔膜部16に対して、ペースト24の分散媒として使用したテトラデカンが基材12の面方向に拡散する拡散率を調べる試験を行った。試験方法は、気温23.2℃の下で1回あたり1μLの分散媒を滴下し、その染みの径を10分後に測定するようにして行った。それぞれ、10回あたりの平均値を算出したところ、第1多孔膜部14においては上記分散媒の染みの径は7.09mmであったのに対して、第2多孔膜部16においては上記分散媒の染みの径は9.27mmであった。この結果によれば、第2多孔膜部16の面方向の拡散率は、第1多孔膜部14の面方向の拡散率の1.31(≒9.27÷7.09)倍であるということができる。また、両者の厚み方向の拡散率の倍率も同程度であるものと推定される。したがって、第2多孔膜部16の拡散率は、第1多孔膜部14の拡散率の1.72倍であるものと推定される。
【0041】
次に、粒子径が3〜7nm(平均粒子径5nm)である銀粒子を、テトラデカンからなる分散媒に分散させてペースト24を調製した。このとき、ペースト24における銀粒子の含有量は59.5重量%であった。ペースト24の粘度は7.5mPa・sであり、比重は1.8であり、硬化温度は215℃であった。。そのペースト24を、インクジェット印刷装置により第1多孔膜部14および第2多孔膜部16に供給した後、220℃の温度で銀粒子を焼結させて、配線パターン18および抵抗体20を形成した。
【0042】
以上の処理により、第1多孔膜部14には、厚みが15μm、線幅が90μmの配線パターン18が形成された。この配線パターン18の抵抗率は3.1mΩ・cmであった。一方、第2多孔膜部16には、厚みが25μm、線幅が130μmである抵抗体20が形成された。この抵抗体20の抵抗率は1.4kΩ・cmであった。
このように、本実施例によれば、インクジェット印刷法により、配線パターン18を形成するのに使用するのと同じ組成のペースト24を使用して、配線パターン18を形成するときと同じ印刷制御で抵抗体20を形成することができた。したがって、極めて簡便に、絶縁体材料からなる基材12に、配線パターン18と抵抗体20とを形成することができた。
【0043】
なお、実施の形態1および実施例1においては、第1多孔膜部14および第2多孔膜部16の素材として、ポリエーテルイミド系樹脂およびアミドイミド系樹脂を使用したが、これに限られるものではなく、公知の樹脂材料を適宜使用することができる。
【0044】
《実施の形態2》
次に、本発明の実施の形態2を説明する。図6に、実施の形態2の配線板の概略構成を断面図により示す。
実施の形態2は、実施の形態1を改変したものであり、その基本的構成は実施の形態1と同様である。したがって、以下に、実施の形態1とは異なる部分を主に説明する。
【0045】
図6に示すように、実施の形態2の配線板10Aにおいては、第1多孔膜部14Aおよび第2多孔膜部16Aは、所定の溶媒(有機溶剤)により処理されて厚みが減縮されている。
【0046】
ここで、第1多孔膜部14Aおよび第2多孔膜部16Aの処理には、NMP(N−メチル−2−ピロリドン)を使用することができる。ポリエーテルイミド系樹脂およびアミドイミド系樹脂等からなる実施の形態1の第1多孔膜部14および第2多孔膜部16にNMP等の所定の溶媒を含浸させると膜の構造体が溶解し、その空孔部分がなくなり、厚みおよび幅が小さくなる。その結果、配線パターン18Aおよび抵抗体20Aは、表面が第1多孔膜部14Aまたは第2多孔膜部16Aから突出する。
【0047】
このように、配線パターン18Aおよび抵抗体20Aを、第1多孔膜部14Aまたは第2多孔膜部16Aの表面から突出させることによって、特に配線パターン18Aと他部材との接触抵抗を小さくすることができる。また、特に配線パターン18Aにおいては、第1多孔膜部14Aの表面よりも上に位置して、導通に寄与する導電体の粒子の量が増大するので、導通抵抗も小さくなる。
したがって、配線パターン18の良好な導通性を得ることができる。
【0048】
なお、抵抗体20Aについては、導電体の粒子が面方向に拡散されているために、厚み方向に圧縮されても抵抗率はそれほど下がらず、所望の抵抗値を維持することが可能である。
【0049】
《実施の形態3》
次に、本発明の実施の形態3を説明する。図7に、実施の形態3の配線板の概略構成を断面図により示す。
実施の形態3は、実施の形態2を改変したものであり、その基本的構成は実施の形態2と同様である。したがって、以下に、実施の形態2とは異なる部分を主に説明する。
【0050】
図7に示すように、実施の形態3の配線板10Bにおいては、第1多孔膜部14Bのみが所定の溶媒により処理されて、厚み方向に圧縮されている。一方、第2多孔膜部16Bは、所定の溶媒により処理されずに、実施の形態1の第2多孔膜部16と同様の状態となっている。これにより、第1多孔膜部14Bの厚みL1は、第2多孔膜部16Bの厚みL2よりも小さくなっている。
【0051】
その結果、配線パターン18Bのみが第1多孔膜部14Bの表面から突出されて、配線パターン18Aの導通性が良好となっている。一方、抵抗体20Bは、第2多孔膜部16Bの厚みが維持されているので、導電体の粒子が面方向にも厚み方向にも拡散されたままとなっており、所望の抵抗値をより容易に達成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の配線板、及び配線基板の製造方法によれば、抵抗体を形成するためのペーストの粘度調整やインクジェット駆動装置の駆動波形の調整を、配線パターンを形成する場合と同様にすることができる。したがって、抵抗体を形成するためのペーストを安定して吐出するための煩雑な調整が不必要となり、簡便に配線パターンと印刷抵抗体とを有する配線板を得ることができる。
【符号の説明】
【0053】
10 配線板
12 基材
14 第1多孔膜部
16 第2多孔膜部
18 配線パターン
20 抵抗体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁体材料からなる基材と、
前記基材の表面に形成された第1多孔膜部と、
前記基材の表面に形成された、前記第1多孔膜部とは導電体の粒子を含むペーストの拡散率が異なる第2多孔膜部と、
前記第1多孔膜部に形成された、導電体の粒子を主たる材料とする配線パターンと、
前記第2多孔膜部に形成された、導電体の粒子を主たる材料とする抵抗体とを具備する配線板。
【請求項2】
前記導電体の粒子の平均粒径が30nm以下である請求項1記載の配線板。
【請求項3】
前記第2多孔膜部は、少なくとも前記基材の面方向への前記ペーストの拡散率が前記第1多孔膜部よりも大きい請求項1または2記載の配線板。
【請求項4】
前記第2多孔膜部は、前記ペーストの拡散率が前記第1多孔膜部の1.5倍以上である請求項1〜3のいずれかに記載の配線板。
【請求項5】
前記導電体の粒子が、金、銀および銅よりなる群から選択された少なくとも1種を含む請求項1〜4のいずれかに記載の配線板。
【請求項6】
前記第1多孔膜部の厚みが、前記第2多孔膜部の厚みよりも小さい請求項1〜5のいずれかに記載の配線板。
【請求項7】
絶縁体材料からなる基材の表面に第1多孔膜部を形成する工程a、
前記基材の表面に、前記第1多孔膜部とは導電体の粒子を含むペーストの拡散率が異なる第2多孔膜部を形成する工程b、
前記第1多孔膜部に、導電体の粒子を含むペーストを供給して配線パターンを形成する工程c、並びに
前記第2多孔膜部に、導電体の粒子を含むペーストを供給して抵抗体を形成する工程dを含む配線板の製造方法。
【請求項8】
前記第1多孔膜部に供給される導電体の粒子を含むペーストの組成と、前記第2多孔膜部に供給される導電体の粒子を含むペーストの組成とが同じである請求項7記載の配線板の製造方法。
【請求項9】
前記配線パターンの単位長さあたりに供給される前記ペーストの分量と、前記抵抗体の単位長さあたりに供給されるペーストの分量とが同じである請求項7または8記載の配線板の製造方法。
【請求項10】
前記第1多孔膜部および前記第2多孔膜部に所定の溶媒を供給して、前記第1多孔膜部および前記第2多孔膜部の厚みを減ずる工程eを含む請求項7〜9のいずれかに記載の配線板の製造方法。
【請求項11】
前記第1多孔膜部に所定の溶媒を供給して、前記第1多孔膜部の厚みを減ずる工程fを含む請求項7〜9のいずれかに記載の配線板の製造方法。
【請求項12】
前記第1多孔膜部および前記第2多孔膜部に前記導電体の粒子を含むペーストがインクジェット印刷法により供給される請求項7〜11のいずれかに記載の配線板の製造方法。
【請求項13】
インクジェット印刷法により、前記導電体の粒子を含むペーストを、前記第1多孔膜部および前記第2多孔膜部の吹き付け予定ポイントに、その並びの順番通りに吹き付けて、前記配線パターンまたは前記抵抗体を形成する請求項12記載の配線板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−251446(P2010−251446A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−97767(P2009−97767)
【出願日】平成21年4月14日(2009.4.14)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】