説明

配線板

【課題】発熱部品を実装した配線板において、放熱特性を向上させ、かつ、第1金属層と第3金属層の熱膨張率差が大きい場合にも、熱膨張率差による樹脂絶縁層の熱応力を低減し、金属層と樹脂絶縁層との密着性を向上させ、回路のインダクタンスを小さくする。
【解決手段】第1金属層3と第2金属層5が導電性接着剤層で一体化されている。第2金属層5と第3金属層7は樹脂絶縁層6で一体化されている。第2金属層5は、電気配線部分を備えており、電気配線部分の上には電気絶縁樹脂層を介して他の電気配線部分を構成する1以上の第4金属層38が一体化されている。第2金属層5を流れる電流の方向と第4金属層38を流れる電流の方向とが逆方向になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発熱素子を実装した構成においても、放熱特性が高く、かつ、金属層と樹脂絶縁層との密着性が良好である配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器に搭載する配線板は、電子機器の軽薄短小化に伴う微細配線・高密度実装の技術が求められる一方で、発熱に対応する高放熱の技術も求められている。特に、各種制御・操作に大電流を使用する自動車などにおける電子回路では、導電回路の抵抗に起因する発熱やパワー素子からの発熱が非常に多く、配線板の放熱特性は高レベルであることが必須となってきている。
【0003】
その対策として、例えば、図1(b)において、熱伝導率が4W/m・K以上の樹脂絶縁層6の両面に一体化した第1金属層3及び第3金属層7を銅−モリブデン合金で構成した配線板がある(特許文献1の図1)。この構成は、第1金属層3が低熱膨張金属である銅−モリブデン合金で構成されているため、第1金属層3にパワー素子などの発熱部品を実装した場合でも、半田部のクラックを抑制することができる。また、第1金属層3と第3金属層7を同じ材質としているため、半田付リフロー工程などの熱処理を行なった場合でも、樹脂絶縁層6に熱応力が発生することがない。
【0004】
しかしながら、第3金属層7を放熱板として使用するときは、加工性がよく、かつ、安価なアルミニウムを使用することが一般的である。この場合、第1金属層3の熱膨張率(銅−モリブデン合金の場合、約9ppm/℃)と第3金属層7の熱膨張率(アルミニウムの場合、約24ppm/℃)の差が大きくなる。このため、半田付リフロー工程などの熱処理を行なった場合に、樹脂絶縁層6に熱応力が発生し、金属層と樹脂絶縁層との密着性が低下するという問題がある。
【0005】
一方、低温焼成絶縁基体と、セラミックを含有する中間層と、ろう材を介して金具が取り付けられてなる配線板において、各層の熱膨張率を特定し、ろう付け時における金具の密着強度を向上させる技術がある(特許文献2)。しかしながら、前記セラミックを含有する中間層やろう材等と比較して弾性率が約1/1000と小さい樹脂絶縁層を配置した配線板では、樹脂絶縁層の熱応力が非常に大きくなるため、更なる改良が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−82370号公報
【特許文献2】特許第2525870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、樹脂絶縁層を介して一体化した第1金属層と第3金属層で両表面が構成され、少なくとも第1金属層が電気配線の機能を有する配線板において、放熱特性を向上させ、かつ、第1金属層と第3金属層の熱膨張率差が大きい場合にも、熱膨張率差による樹脂絶縁層の熱応力を低減し、金属層と樹脂絶縁層との密着性を向上させ、しかも回路のインダクタンスを小さくすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するために、本発明に係る配線板は、厚み0.5mm以上の第1金属層と、第2金属層と、厚み1mm以上の第3金属層がこの順に配置され、少なくとも第1金属層が電気配線の機能を有する配線板において、第1金属層と第2金属層が導電性接着剤層で一体化され、第2金属層と第3金属層は樹脂絶縁層で一体化されている。そして、第1金属層の熱膨張率をα1、第2金属層の熱膨張率をα2、第3金属層の熱膨張率をα3としたとき、α1とα3の差が10ppm/℃以上であるときに、α1<α2<α3の関係になるように設定される。さらに、第2金属層の厚みが第1金属層の厚みの20%以上であることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る他の配線板は、上記請求項1において、第2金属層が少なくとも2層以上配置されている。そして、前記第2金属層同士は導電性接着剤層で一体化されており、前記第2金属層の合計厚みが第1金属層の厚みの20%以上であることを特徴とする。第2金属層の合計厚みは、第1金属層の厚みより厚くてもよい。好ましくは、導電性接着剤層、樹脂絶縁層それぞれを介して隣接する金属層同士の熱膨張率の差を8ppm/℃以下になるように設定する。
【0010】
上記請求項1〜4のいずれかの配線板において、好ましくは、第2金属層の熱伝導率を、第1金属層の熱伝導率より大きく設定する。そして、第1金属層の熱伝導率が150W/m・K以上であり、前記樹脂絶縁層の熱伝導率が4W/m・K以上である。
【0011】
本発明の配線板において、好ましくは、第2金属層を直流電源の一方の極性の出力端子に電気的に接続する。また第2金属層の上に複数の第1金属層を、導電性接着剤層を用いて一体化する。そして複数の第1金属層の上に、複数の発熱素子のうちの対応する1つの発熱素子が半田付け接続して、複数の発熱素子を第2金属層とそれぞれ電気的に接続する。
【0012】
本発明の配線板において、好ましくは、第2金属層を直流電源の一方の極性の出力端子に電気的に接続する。そして第1金属層の上には、複数の発熱素子をそれぞれ半田付け接続して、複数の発熱素子を第2金属層とそれぞれ電気的に接続する。
【0013】
なお配線板には、第2金属層を直流電源の一方の極性の出力端子に電気的に接続し、第2金属層の上に第1金属層を導電性接着剤層を用いて一体化し、第1金属層の上に1つの発熱素子を半田付け接続して構成した素子ユニットを、電気的に絶縁した状態で複数個配置してもよい。
【0014】
本発明の配線板において、好ましくは、第2金属層を、第1金属層が一体化される部分と電気配線部分とから構成する。また配線部分の上には電気絶縁樹脂層を介して他の電気配線部分を構成する1以上の第4金属層を一体化する。そして第2金属層を流れる電流の方向と第4金属層を流れる電流の方向とが逆方向になるように発熱素子と第4金属層とを電気的接続手段を介して接続する。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る配線板においては、第1金属層と第3金属層の間に第2金属層を配置したので、導電性接着剤層や樹脂絶縁層で熱伝導が阻害されることが少なくなり、第2金属層を介した第1金属層と第3金属層の熱伝導性は確保され、放熱特性を向上することができる。このとき、第1金属層の厚みを0.5mm以上、第3金属層の厚みを1mm以上とする。これにより、充分な放熱特性を確保することができる。
【0016】
電気配線の機能を有する第1金属層上にパワー素子等の発熱部品を実装する場合、当該パワー素子の熱膨張率は4ppm/℃程度である。一方、パワー素子直下の第1金属層が銅である場合、熱膨張率は17ppm/℃程度である。パワー素子の発熱と発熱停止による、冷熱サイクルを繰り返すと、両者の熱膨張率の差に起因して、両者を接合している半田部に応力が集中し、半田部にクラックが発生して接続信頼性が低下する。この対策として、パワー素子直下の第1金属層に、銅−モリブデン合金などの低熱膨張金属(熱膨張率:7〜10ppm/℃程度)を使用することにより、半田部のクラックを抑制することができる。
【0017】
一方、第3金属層を放熱板として使用するときは、加工性がよく、かつ、安価なアルミニウムを使用することが一般的である。この場合、アルミニウムの熱膨張率(20〜24ppm/℃)と前記低熱膨張金属の熱膨張率の差が10ppm/℃以上と非常に大きくなる。このため、半田付リフロー工程などの熱処理を行なった場合に、樹脂絶縁層に熱応力が発生し、金属層と樹脂絶縁層との密着性が低下する。第1金属層の厚みが0.5mm以上、第3金属層の厚みが1.0mm以上の場合には、前記熱応力が大きくなり、金属層と樹脂絶縁層との密着性が大幅に低下する。
【0018】
しかし、本発明に係る配線板においては、第1金属層の熱膨張率をα1、第2金属層の熱膨張率をα2、第3金属層の熱膨張率をα3としたとき、α1<α2<α3の関係になるように設定したので、第1金属層と第3金属層の熱膨張率の差が第2金属層で緩和され、樹脂絶縁層にかかる熱応力を低減することができる。このとき、第2金属層の厚みを、第1金属層の厚みの20%以上とする。第2金属層の厚みが20%未満の場合、第2金属層の強度が低くなり、樹脂絶縁層にかかる熱応力を低減する効果が充分に得られない。
【0019】
上記の構成とすることにより、第1金属層と第3金属層の熱膨張率の差が10ppm/℃以上であっても、樹脂絶縁層にかかる熱応力を低減し、金属層と樹脂絶縁層との密着性を高めることができる。
【0020】
本発明に係る他の配線板は、上記の構成において、第1金属層と第3金属層の間に第2金属層を少なくとも2層以上配置する。そして、前記第2金属層同士は導電性接着剤層で一体化されている。第1金属層と第3金属層の間に2層以上配置した第2金属層の間でも第3金属層に向かって熱膨張率を大きくすれば、第1金属層と第3金属層の熱膨張率の差を徐々に緩和させることができ、樹脂絶縁層にかかる熱応力をさらに低減できる。また、樹脂絶縁層で熱伝導が阻害されることがさらに少なくなり、放熱特性をさらに向上することができる。ここで、第1〜第3金属層において、導電性接着剤層や樹脂絶縁層を介して隣接する金属層の熱膨張率の差を8ppm/℃以下になるように設定することが好ましい。第2金属層が導電性接着剤層を介して2層以上存在する場合は、当該金属層間の熱膨張率差も8ppm/℃以下にすることが好ましい。
【0021】
このとき、第2金属層の合計厚みを第1金属層の厚みの20%以上とする。第2金属層の合計厚みが20%未満の場合、第2金属層の強度が低くなり、樹脂絶縁層にかかる熱応力を低減する効果が充分に得られない。第2金属層の合計厚みを第1金属層の厚みより厚く設定することにより、放熱効果は一層大きくなる。
【0022】
さらに、第2金属層の熱伝導率を、第1金属層の熱伝導率より大きく設定することにより、放熱効果は大きくなる。また、第1金属層の熱伝導率が150W/m・K以上、樹脂絶縁層の熱伝導率が4W/m・K以上であることが好ましい。
【0023】
本発明の配線板にパワートランジスタ等の発熱素子を実装する場合には、第2金属層を直流電源の一方の極性の出力端子に電気的に接続することができる。その上で第2金属層の上に複数の第1金属層を、導電性接着剤層を用いて一体化する。そして複数の第1金属層の上に、複数の発熱素子のうちの対応する1つの発熱素子が半田付け接続して、複数の発熱素子を第1金属層を介して第2金属層とそれぞれ電気的に接続する。このようにすると第2金属層を熱応力の緩和手段として利用するだけでなく、第2金属層を配線として利用することができるので、配線のための部材を省略することができる。特に第2の金属層上に複数の第1金属層を一体化すると、1つの第2金属層から複数の第1金属層を介して複数の発熱素子に電力を供給することができる。第1金属層の材料の価格が高い場合には、各発熱素子に対して個別に第1金属層を設けるのが好ましい。しかしながら第1金属層を価格の安い材料によって形成する場合には、複数の発熱素子に対して1つの第1金属層を設ければよい。この場合には、使用する1つの第1金属層の大きさを複数の発熱素子を実装できる大きさにすればよい。このようにすると部品点数を減らすことができる。また第2金属層を複数の発熱素子に対して兼用する上記構成は、直流を交流に変換するインバータのブリッジ回路の一部や、交流を直流に変換する整流回路のブリッジ回路の一部を構成する場合に使用することができる。
【0024】
また配線板には、第2金属層を直流電源の一方の極性の出力端子に電気的に接続し、第2金属層の上に第1金属層を、導電性接着剤層を用いて一体化し、第1金属層の上に1つの発熱素子を半田付け接続して構成した素子ユニットを、電気的に絶縁した状態で複数個配置してもよい。このような複数の素子ユニットを設けると、直流―直流コンバータ等の電力変換回路も配線板上に簡単に構成することができる。
【0025】
また第2金属層を、第1金属層が一体化される部分と電気配線部分とから構成した場合には、配線部分の上に電気絶縁樹脂層を介して他の電気配線部分を構成する1以上の第4金属層を一体化するのが好ましい。そして第2金属層を流れる電流の方向と第4金属層を流れる電流の方向とが逆方向になるように発熱素子と第4金属層とを電気的接続手段を介して接続すれば、第2金属層を流れる電流によって発生する磁束と、第4金属層を流れる電流によって発生する磁束とが打ち消しあうように作用するため、回路のインダクタンスを小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】(a)は本発明の実施の形態に係る配線板断面図、(b)は従来の配線板断面図である。
【図2】本発明の他の実施の形態に係る配線板断面図である。
【図3】複数の発熱素子を実装する場合の他の実施の形態の配線板の要部の斜視図である。
【図4】複数の発熱素子を実装する場合の更に他の実施の形態の配線板の要部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明を実施する具体的な形態は、例えば、図1(a)に示すような構成が望ましい。厚み0.5mm以上の第1金属層3と、第2金属層5と、厚み1mm以上の第3金属層7がこの順に配置されている。少なくとも第1金属層3は電気配線の機能を有する。電気配線の機能を有する第1金属層3には、発熱素子1が半田2により実装される。そして、第1金属層3と第2金属層5が導電性接着剤層4で一体化されている。第2金属層5と第3金属層7は樹脂絶縁層6で一体化されている。さらに、第1金属層3の熱膨張率をα1、第2金属層5の熱膨張率をα2、第3金属層7の熱膨張率をα3としたとき、α1とα3の差が10ppm/℃以上であるときに、α1<α2<α3の関係になるように設定される。また、第2金属層5の厚みが第1金属層の厚みの20%以上である。
【0028】
本発明を実施する他の具体的な形態は、例えば、図2に示すような構成である。厚み0.5mm以上の第1金属層3と、第2金属層15、25と、厚み1mm以上の第3金属層7がこの順に配置されている。少なくとも第1金属層3は電気配線の機能を有する。電気配線の機能を有する第1金属層3には、発熱素子1が半田2により実装される。そして、第1金属層3と第2金属層15が導電性接着剤層4で一体化されている。前記第2金属層15、25同士も導電性接着剤層14で一体化されている。第2金属層25と第3金属層7は樹脂絶縁層6で一体化されている。さらに、第1金属層3の熱膨張率をα1、第2金属層15、25の熱膨張率をα21、α22、第3金属層7の熱膨張率をα3としたとき、α1とα3の差が10ppm/℃以上であるときに、α1<α21<α22<α3の関係になるように設定される。また、第2金属層5の厚みが第1金属層の厚みの20%以上である。
【0029】
第1金属層と第3金属層の熱膨張率の差が10ppm/℃未満の場合は、樹脂絶縁層にかかる熱応力が小さいため、第2金属層を配置して熱応力を緩和する効果が小さい。一方、前記熱膨張率の差が10ppm/℃以上の場合においては、第2金属層を配置して、熱応力を緩和する効果が大きく現れる。さらに、前記熱膨張率の差が15ppm/℃以上の場合は、第1金属層と第3金属層の間に第2金属層を2層以上配置して、第1金属層と第3金属層の熱膨張率の差を徐々に緩和させることにより、樹脂絶縁層にかかる熱応力をさらに低減できる。このとき、それぞれ隣接する金属層の熱膨張率の差を8ppm/℃以下になるように設定することが好ましい。
【0030】
上記のような構成は、例えば、一般的に行なわれている積層板や多層板の製造法を適用することができる。すなわち、積層板の製造法のように、各材料を所定の構成に配置して加熱加圧成形により一体化できる。また、多層板の製造法のように、所定の構成単位毎に加熱加圧成形により順次一体化してもよい。そして、所定の発熱素子1を、所定形状に回路加工した第1金属層3上の実装領域に、半田リフロー等の手段により実装する。
【0031】
第1金属層の熱膨張率を7〜10ppm/℃とすると、半田接続信頼性が良好となるので好ましい。例えば、銅/モリブデン、銅/インバー、銅/タングステン、銅/クロムなどの銅合金を使用することができる。その中でも銅/クロム合金は、安価であり、かつ、銅/モリブデン合金と同等の接続信頼性が維持できるので好ましい。これら銅合金の電気伝導率は、銅に比べると劣るものの実用上の支障はない。また、アルミニウムとセラミック粒子の複合材であるアルミニウム合金などでもよい。前記アルミニウム合金の電気伝導率は、銅合金に比べると劣るものの実用上の支障はない。
【0032】
また、第1金属層の熱伝導率を150W/m・K以上とすると、放熱特性が向上するので好ましい。さらに、第1金属層の厚みが0.5mm以上であれば、放熱特性を向上できるが、銅合金のような複合材料は、銅に比べて強度や価格が高いことから、加工性やコストを考慮して適宜設定することができる。
【0033】
第2金属層の熱膨張率を、第1金属層と第3金属層の中間値とすると、樹脂絶縁層にかかる熱応力が低減できるので好ましい。例えば、SUSや銅を使用することができる。その中でも銅は、 熱伝導率が394W/m・Kと大きく、さらに放熱特性を向上できるので好ましい。さらに、第2金属層の合計厚みが第1金属層の厚みの20%以上であれば、熱応力の緩和と放熱特性を向上できるが、第2金属層の合計厚みを第1金属層の厚みよりも厚くすると、さらに放熱特性を向上できるので好ましい。
【0034】
第3金属層を放熱板として使用するときは、アルミニウムやアルミニウム合金を使用することができる。アルミニウムやアルミニウム合金は、加工性が良い、コストが低い、錆びない、熱伝導率が高いという利点から放熱板として非常に適している。さらに、第3金属層の厚みが1mm以上であれば、強度や放熱特性が確保できるが、2〜3mm程度が一般的に使用されている。また、第3金属層の形状は、単なる平板でもよいが、冷却効率を高めるために、厚みを4〜10mm程度とし、樹脂絶縁層と接する反対面に冷却フィンのような形状を施すこともできる。
【0035】
導電性接着剤層は、半田や銀ろう材、銅ろう材などの比較的融点が低い金属を使用することができる。これらの金属で第1金属層と第2金属層を接着すれば、第1金属層と第2金属層の間の導電性が優れるとともに、熱伝導が促進されるので、放熱特性は非常に優れる。また、金属粒子を含有する樹脂接着剤を使用してもよい。例えば、エポキシ樹脂中に銅粒子を添加した導電性樹脂ペーストなどである。特に、電気抵抗の非常に小さい導電性樹脂ペーストであれば、第1金属層と第2金属層の間の導電性が良好となるとともに、熱伝導性も良好となるので好ましい。
【0036】
導電性接着剤層の形成は、次の工程で実施することができる。導電性接着剤層が半田などの低融点金属の場合は、第1金属層と第2金属層の間に導電性接着剤層を形成して第1金属層と第2金属層を一体化した後、後述する樹脂絶縁層を形成する。また、導電性接着剤層が導電性樹脂ペーストなどの場合は、後述する樹脂絶縁層を形成して第2金属層と第3金属層を一体化した後、第1金属層と第2金属層の間に導電性接着剤層を形成して第1金属層と第2金属層を一体化してもよいし、前記樹脂絶縁層を形成する際に同時に形成して一体化してもよい。
【0037】
樹脂絶縁層の厚みは、それぞれの層の厚みを150μm以下とすると、樹脂絶縁層で熱伝導が阻害されることが少なく、放熱特性を向上できるので好ましい。また、樹脂絶縁層の熱伝導率を4W/m・Kとすると、放熱特性を向上できるので好ましい。
【0038】
樹脂絶縁層を構成するシート状繊維基材は、ガラス繊維や有機繊維で構成された織布や不織布である。前記シート状繊維基材に含浸する熱硬化性樹脂は、フェノール樹脂やエポキシ樹脂に高熱伝導性の無機充填材を添加することで製造することができる。特に、高熱伝導率が要求される樹脂絶縁層とする場合には、例えば、以下のような樹脂組成を使用する。
【0039】
すなわち、無機充填材を含有し(式1)で示す分子構造のエポキシ樹脂モノマを配合したエポキシ樹脂組成物を採用する。前記無機充填材は、熱伝導率20W/m・K以上であって、樹脂固形分100体積部に対し50〜250体積部の量で絶縁層中に存在するようにする。
【化1】

【0040】
上記(式1)で示す分子構造のエポキシ樹脂モノマは、ビフェニル骨格あるいはビフェニル誘導体の骨格をもち、1分子中に2個以上のエポキシ基をもつエポキシ化合物全般である。エポキシ樹脂モノマの硬化反応を進めるために、硬化剤を配合する。硬化剤は、例えば、アミン化合物やその誘導体、酸無水物、イミダゾールやその誘導体、フェノール類又はその化合物や重合体などである。また、エポキシ樹脂モノマと硬化剤の反応を促進するために、硬化促進剤を使用することができる。硬化促進剤は、例えば、トリフェニルホスフィン、イミダゾールやその誘導体、三級アミン化合物やその誘導体などである。
【0041】
上記硬化剤や硬化促進剤を配合したエポキシ樹脂組成物に配合する熱伝導率20W/m・K以上の無機充填材は、金属酸化物又は水酸化物あるいは無機セラミックス、その他の充填材であり、例えば、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、窒化チタン、酸化亜鉛、炭化タングステン、アルミナ、酸化マグネシウム等の無機粉末充填材、合成繊維、セラミックス繊維等の繊維質充填材、着色剤等である。これら無機充填材は2種類以上を併用してもよい。
【0042】
無機充填材は、樹脂固形分100体積部に対し50〜250体積部の量となるように配合する。前記無機充填材の熱伝導率と配合量の下限値は、樹脂絶縁層の熱伝導率を4W/m・K以上にする場合に必要である。また、エポキシ樹脂組成物に配合する無機充填材が少ないと、無機充填材をエポキシ樹脂組成物中に均一に分散させることが難しくなる。熱伝導性の確保と共にこの点においても、無機充填材配合量の下限値の規定は重要である。一方、無機充填材の配合量を多くすると、エポキシ樹脂組成物の粘性が増大して取り扱いが難しくなるので、無機充填材配合量の上限値は、このような観点から規定する。
【0043】
尚、無機充填材の熱伝導率が30W/m・K以上であれば、樹脂絶縁層の熱伝導率をさらに高くできるので好ましい。また、無機充填材は、その形状が、粉末(塊状、球状)、短繊維、長繊維等いずれであってもよいが、平板状のものを選定すると、高熱伝導率の無機充填材自身が樹脂中で積み重なった状態で存在することになり、樹脂絶縁層の厚み方向の熱伝導性をさらに高くできるので好ましい。上記エポキシ樹脂組成物には、そのほか必要に応じて難燃剤や希釈剤、可塑剤、カップリング剤等を配合することができる。
【0044】
樹脂絶縁層の形成は、上記エポキシ樹脂組成物を必要に応じ溶剤に希釈してワニスを調製しこれをシート状繊維基材に含浸し、加熱乾燥して半硬化状態にしたプリプレグを準備する。そして、これらを加熱加圧成形して樹脂絶縁層とする。前記加熱加圧成形に当っては、第3金属層−前記プリプレグ−第2金属層の順序で配置して積み重ね、これらを加熱加圧成形により一体化する。
【0045】
エポキシ樹脂組成物を溶剤に希釈してワニスを調製する場合、溶剤の配合・使用が、エポキシ樹脂硬化物の熱伝導性に影響を与えることはない。
【0046】
図3は、上記図1(a)に示した構造を利用して複数(図3に示したものは3個)の発熱素子31を実装する場合の実施の形態の具体的な構成の一例を示している。図3は、本発明の配線板の要部を切り取ってクローズアップして描いたものであり、実際の配線板は更別の配線や部品が実装されることになる。なお図3に示した実施の形態においては、図1に示した構造を構成する部材と同じ部材には、図1に付した符号の数に30の数を加えた数を符号として付して材質等の詳細な説明は省略する。図3の実施の形態では、配線板にパワートランジスタ等の発熱素子31を実装する場合に、第2金属層35が図示しない直流電源の一方の極性の出力端子(プラス端子及びマイナス端子の一方)に電気的に接続される。図3においては、第2の金属層35は第3金属層37と実質的に同じ大きさを有している。そして第2金属層35の上には、複数(3つ)の第1金属層33が導電性接着剤層34を介して接合されている。3つの第1金属層33の上には、それぞれ発熱素子31が半田32によって接合されている。このような発熱素子31は、外装ケースの底壁部が金属によって形成されて電気的な端子を構成しており、外装ケースの底壁部と対向する上壁部に他の電気的な端子が設けられているタイプの部品である。したがって発熱素子31を第1金属層33に半田32によって直接接続するだけで、第1金属層33と発熱素子31とは機械的に電気的にも接続される。そして発熱素子31は、半田32、第1金属層33及び導電性接着剤層34を介して第2導電層35と電気的に接続される。その結果、本実施の形態によれば、第2金属層35を熱応力の緩和手段として利用するだけでなく、第2金属層35を配線として利用することができる。
【0047】
また本実施の形態では、第2金属層35を、第1金属層33が一体化される(接続される)部分35Aと電気配線部分35Bとから構成されている。そしてこの配線部分35Bの上には、エポキシ樹脂などの電気絶縁樹脂層39を介して他の電気配線部分を構成する3つの第4金属層38が配置されて配線板に一体化されている。第4金属層38は、例えば図示しない3つの出力端子に3つの発熱素子31をそれぞれ電気的に接続する機能を果たす。この例では、第4金属層38は、CuまたはCu合金によって形成されている。電気絶縁樹脂層39は、隣り合う2つの第4金属層38の間、隣り合う2つの第1金属層33の間及び隣り合う第1金属層33と第4金属層38との間にも存在して、これら金属層間の電気的絶縁を図っている。また発熱素子31と第4金属層38とはワイヤボンディングからなる電気的接続手段40によって電気的に相互に接続されている。図3中には、矢印で示すように、電流が流れる方向を示してある。この例では、第2金属層35→導電性接着剤層34→3つの第1金属層33→半田32→3つの発熱素子31→電気的接続手段40→3つの第4金属層38の経路で電流が流れている。その結果、第2金属層35を流れる電流の方向と第4金属層38を流れる電流の方向とが逆方向になっている。その結果、第2金属層35を流れる電流によって発生する磁束と、第4金属層38を流れる電流によって発生する磁束とが打ち消しあうように作用するため、回路のインダクタンスが小さくなっている。
【0048】
本実施の形態のように、第2の金属層35上に複数の第1金属層33を一体化すると、1つの第2金属層35から複数の第1金属層33を介して複数の発熱素子31に電力を供給することができる。第1金属層33の材料の価格が高い場合には、図3の実施の形態のように、各発熱素子31に対して個別に第1金属層33を設けるのが好ましい。しかしながら図4に示すように、第1金属層33′を価格の安い材料によって形成する場合には、複数の発熱素子31に対して1つの第1金属層33′を設ければよい。この場合には、1つの導電性接着剤層34′により1つの第2金属層35と2つの第1金属層33′とが、機械的に且つ電気的に接続されるので、部品点数を減らすことができる。図3及び図4に示す構成は、1つの第2金属層35に3つの発熱素子31が電気的に接続されているので、直流−三相交流インバータモジュールのブリッジ回路の一部や、半導体三相整流回路モジュールのブリッジ回路の一部を構成する場合に利用することができる。
【0049】
また例えば図3に示す構造において、第2金属層35を個別の第1金属層33に対応させて分離し、分離した複数の第2金属層を電気的に絶縁するようにして複数の素子ユニットを構成するようにしもよい。このような複数の素子ユニットを配線板に設ければ、直流−直流コンバータ等の他の電力変換回路も配線板上に少ない部品点数で構成することができる。
【0050】
また上記図3及び図4の実施の形態において、図2に示すように、第2金属層を2層以上の構造としてもよいのは勿論である。
【実施例】
【0051】
以下、本発明に係る実施例を示し、本発明について詳細に説明する。尚、以下の実施例および比較例において、「部」とは「質量部」を意味する。また、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、本実施例に限定されるものではない。
【0052】
実施例に使用する材料仕様は以下の通りである。
【0053】
(a)エポキシ樹脂ワニスa;エポキシ樹脂モノマ成分としてビフェニル骨格をもつエポキシ樹脂モノマ(ジャパンエポキシレジン製「YL6121H」,エポキシ当量175)100部を用意し、これをメチルイソブチルケトン(和光純薬製)100部に100℃で溶解し、室温に戻した。前記「YL6121H」は、既述の分子構造式(式1)において、R=−CH3,n=0.1であるエポキシ樹脂モノマと分子構造式(式1)において、R=−H,n=0.1であるエポキシ樹脂モノマを等モルで含有するエポキシ樹脂モノマである。
【0054】
硬化剤として1,5−ジアミノナフタレン(和光純薬製「1,5−DAN」,アミン当量40)22部を用意し、これをジメチルホルムアミド(和光純薬製)100部に100℃で溶解し、室温に戻した。
【0055】
上記のエポキシ樹脂モノマ溶液と硬化剤溶液を混合・撹拌して均一なワニスにし、さらに無機充填材としてアルミナ(電気化学工業製「DAW−10」,平均粒子径:10μm,熱伝導率30W/m・K,粒子形状:球状)425部(樹脂固形分100体積部に対し100体積部に相当)を加えて混練し、エポキシ樹脂ワニスaを調製した。
【0056】
(b)エポキシ樹脂ワニスb;エポキシ樹脂ワニスa中の無機充填材であるアルミナ(電気化学工業製「DAW−10」,平均粒子径:10μm,熱伝導率30W/m・K,粒子形状:球状)を540重量部(樹脂固形分100体積部に対し185体積部に相当)を加えて混練する以外はエポキシ樹脂ワニスaと同様にしてエポキシ樹脂ワニスbを調製した。
【0057】
(c)プリプレグa;エポキシ樹脂ワニスaを、厚み100μmのガラス不織布に含浸し加熱乾燥して厚み120μmのプリプレグを得た。
【0058】
(d)プリプレグb;エポキシ樹脂ワニスbを、厚み100μmのガラス不織布に含浸し加熱乾燥して厚み120μmのプリプレグを得た。
【0059】
実施例1
図1(a)の構成材料として、下記の材料を準備した。
【0060】
1)第1金属層3:銅/インバー合金(厚み0.5mm、熱膨張率10ppm/℃、熱伝導率90W/m・K)
2)第2金属層5:SUS304(厚み0.1mm、熱膨張率17ppm/℃、熱伝導率14W/m・K)
3)第3金属層7:アルミニウム合金4032(厚み1.0mm、熱膨張率20ppm/℃、熱伝導率150W/m・K)
4)樹脂絶縁層6:プリプレグa
第1金属層上に導電性接着剤として銀ろう材を塗布(厚み200μm)し、その上に第2金属層を重ねた状態で、加熱炉の中へ置き、銀ろう材が溶ける所定温度まで加熱することで、第1金属層と第2金属層を一体化した。
【0061】
次に、図1(a)の構成となるように、第3金属層−プリプレグa1枚−(第1金属層を一体化した第2金属層)の順序で配置して積み重ね、これらを加熱加圧成形して一体化し、厚み1.84mmの積層板を得た。加熱加圧成形は、温度175℃、圧力6MPaの条件で90分間加熱加圧の条件で行った。そして、前記積層板の第1金属層を所定形状に回路加工して、配線板とした。樹脂絶縁層の熱伝導率は、3W/m・Kである。
【0062】
実施例1で得た配線板について、素子発熱温度、剥離面積率および半田接続信頼性を測定した結果を、金属層や樹脂絶縁層の構成と共に表1にまとめて示す。測定は、以下に示す方法による。
【0063】
熱膨張率:配線板から5×10mmの板状試料を切り出し、TMA測定にて30℃〜260℃の範囲における平面方向の熱膨張率を測定した。
【0064】
熱伝導率:各金属層や樹脂絶縁層の厚さ方向の熱伝導を、熱流計法(JIS−A1412準拠)にて測定した。
【0065】
素子発熱温度:所定形状に回路加工した第1金属層に発熱素子(セラミックヒータチップ)を半田付し、第3金属層を冷却フィンにて冷却し、一定温度に保つ。発熱素子に80Wの電力を入力し、入力2分後の素子温度を測定した。
【0066】
剥離面積率:所定形状に加工した配線板を最高温度260℃のリフロー炉で60秒間熱処理を行なった。その後、超音波探傷器にて配線板の上部から観察し、金属と樹脂界面の剥離面積を測定した。そして、(剥離面積/配線板の全面積)×100を剥離面積率(%)とした。
【0067】
実施例2
実施例1において、第2金属層として銅(厚み0.1mm、熱膨張率17ppm/℃、熱伝導率394W/m・K)を使用する以外は実施例1と同様にして配線板を得た。第2金属層の熱伝導率を大きくしたことにより、素子発熱温度が低減し、放熱特性が向上した。
【0068】
実施例3
実施例2において、第3金属層としてアルミニウム1100(厚み1.0mm、熱膨張率24ppm/℃、熱伝導率220W/m・K)を使用する以外は実施例2と同様にして配線板を得た。第3金属層の熱伝導率を高くしたことにより、素子発熱温度が低減し、放熱特性が向上した。
【0069】
実施例4
実施例3において、第1金属層として銅/モリブデン合金(厚み0.5mm、熱膨張率9ppm/℃、熱伝導率150W/m・K)を使用する以外は実施例3と同様にして配線板を得た。第1金属層の熱伝導率を高くしたことにより、素子発熱温度が低減し、放熱特性が向上した。
【0070】
実施例5
実施例4において、樹脂絶縁層としてプリプレグbを使用する以外は実施例4と同様にして配線板を得た。樹脂絶縁層の熱伝導率は、4W/m・Kである。樹脂絶縁層の熱伝導率を高くしたことにより、素子発熱温度が低減し、放熱特性が向上した。
【0071】
実施例6
実施例5において、第2金属層として銅(厚み0.6mm、熱膨張率17ppm/℃、熱伝導率394W/m・K)を使用する以外は実施例5と同様にして配線板を得た。第2金属層を厚くしたことにより、素子発熱温度が低減し、放熱特性が向上した。
【0072】
実施例7
実施例6において、第1金属層として銅/クロム合金(厚み0.5mm、熱膨張率10ppm/℃、熱伝導率180W/m・K)を使用する以外は実施例6と同様にして配線板を得た。第1金属層の熱伝導率を高くしたことにより、素子発熱温度が低減し、放熱特性が向上した。
【0073】
比較例1
実施例1において、第2金属層を配置しないこと以外は実施例1と同様にして配線板を得た。比較例1においては、第2金属層が配置されていないので、第1金属層と第3金属層の熱膨張率の差によって、樹脂絶縁層に熱応力がかかり、金属と樹脂の界面が広範囲で剥離が発生している。また、素子発熱温度が大きくなり、放熱特性が大幅に悪化した。
【0074】
比較例2
実施例4において、第1金属層として銅/モリブデン合金(厚み0.4mm、熱膨張率9ppm/℃、熱伝導率150W/m・K)を使用する以外は実施例4と同様にして配線板を得た。比較例2においては、第1金属層の厚みが薄いので、樹脂絶縁層にかかる熱応力が小さくなるため、第2金属層を配置しても、あまり応力緩和をする効果がない。また、素子発熱温度が大きくなり、放熱特性が悪化した。
【0075】
比較例3
実施例4において、第3金属層としてアルミニウム1100(厚み0.5mm、熱膨張率24ppm/℃、熱伝導率220W/m・K)を使用する以外は実施例4と同様にして配線板を得た。比較例3においては、第3金属層の厚みが薄いので、樹脂絶縁層にかかる熱応力が小さくなるため、第2金属層を配置しても、あまり応力緩和をする効果がない。また、素子発熱温度が大きくなり、放熱特性が悪化した。
【0076】
比較例4
実施例4において、第2金属層として銅(厚み0.05mm、熱膨張率が17ppm/℃、熱伝導率394W/m・K)を使用する以外は実施例4と同様にして配線板を得た。比較例4においては、第2金属層の厚みが第1金属層の20%未満であるので、第1金属層と第3金属層の熱膨張率の差を緩和する効果が小さくなり、金属と樹脂の界面に剥離を発生している。また、素子発熱温度が大きくなり、放熱特性が大幅に悪化した。
【0077】
比較例5
実施例4において、第1金属層として銅/クロム合金(厚み0.5mm、熱膨張率10ppm/℃、熱伝導率180W/m・K)を使用し、第2金属層として銅/モリブデン合金(厚み0.1mm、熱膨張率が9ppm/℃、熱伝導率150W/m・K)を使用すること以外は実施例4と同様にして配線板を得た。比較例5においては、第2金属層の熱膨張率が第1金属層の熱膨張率より大きいので、第2金属層と第3金属層の熱膨張率の差によって、金属と樹脂の界面が広範囲で剥離を発生している。また、剥離に伴って素子発熱温度が大きくなり、放熱特性が大幅に悪化した。
【0078】
比較例6
実施例4において、第3金属層として銅(厚み1.0mm、熱膨張率が17ppm/℃、熱伝導率394W/m・K)を使用する以外は実施例4と同様にして配線板を得た。比較例6においては、第1金属層と第3金属層の熱膨張率の差が10ppm/℃未満であるので、樹脂絶縁層にかかる熱応力が小さくなるため、第2金属層を配置しても、あまり応力緩和をする効果がない。なお、第3金属層として銅を使用した場合は、アルミニウムやアルミニウム合金を使用した場合に比べ、コストが高い、錆びる、軽量化できないという問題があり、放熱板として適していない。
【0079】
実施例2〜7、比較例1〜6の配線板についても、実施例1と同様に特性を測定し、結果を表1〜2に示した。
【表1】

【表2】

【0080】
上記表に示したように、本発明に係る実施例においては、第1金属層の熱膨張率をα1、第2金属層の熱膨張率をα2、第3金属層の熱膨張率をα3としたとき、α1とα3の差が10ppm/℃以上であるときに、α1<α2<α3の関係になるように設定し、かつ、第2金属層の厚みが第1金属層の厚みの20%以上としたので、放熱特性が向上し、剥離面積率を抑えられていることが理解できる(実施例1〜8と比較例1〜6との対比)。
【符号の説明】
【0081】
1、31 発熱素子
2、32 半田
3、33、33′ 第1金属層
4、14、34、34′ 導電性接着剤層
5、15、25、35 第2金属層
6、36 樹脂絶縁層
7、37 第3金属層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚み0.5mm以上の第1金属層と、第2金属層と、厚み1mm以上の第3金属層がこの順に配置され、少なくとも第1金属層が電気配線の機能を有する配線板において、
第1金属層と第2金属層が導電性接着剤層で一体化され、第2金属層と第3金属層は樹脂絶縁層で一体化されており、
第1金属層の熱膨張率をα1、第2金属層の熱膨張率をα2、第3金属層の熱膨張率をα3としたとき、α1とα3の差が10ppm/℃以上であるときに、α1<α2<α3の関係になるように設定され、
第2金属層の厚みが第1金属層の厚みの20%以上であり、
前記第2金属層が直流電源の一方の極性の出力端子に電気的に接続されており、
前記第2金属層の上に複数の前記第1金属層が前記導電性接着剤層を用いて一体化されており、
前記複数の第1金属層の上には、複数の発熱素子のうちの対応する1つの前記発熱素子が半田付け接続されていて、前記複数の発熱素子が前記第2金属層とそれぞれ電気的に接続されており、
前記第2金属層は、前記第1金属層が一体化される部分と電気配線部分とを備えており、
前記電気配線部分の上には電気絶縁樹脂層を介して他の電気配線部分を構成する1以上の第4金属層が一体化されており、
前記第2金属層を流れる電流の方向と前記第4金属層を流れる電流の方向とが逆方向になるように前記発熱素子と前記第4金属層とが電気的接続手段を介して接続されていることを特徴とする配線板。
【請求項2】
厚み0.5mm以上の第1金属層と、第2金属層と、厚み1mm以上の第3金属層がこの順に配置され、少なくとも第1金属層が電気配線の機能を有する配線板において、
第1金属層と第2金属層が導電性接着剤層で一体化され、第2金属層と第3金属層は樹脂絶縁層で一体化されており、
第1金属層の熱膨張率をα1、第2金属層の熱膨張率をα2、第3金属層の熱膨張率をα3としたとき、α1とα3の差が10ppm/℃以上であるときに、α1<α2<α3の関係になるように設定され、
第2金属層の厚みが第1金属層の厚みの20%以上であり、
前記第2金属層が直流電源の一方の極性の出力端子に電気的に接続され、
前記第2金属層の上に前記第1金属層が前記導電性接着剤層を用いて一体化され、
前記第1金属層の上に1つの発熱素子が半田付け接続されて構成された素子ユニットが、電気的に絶縁された状態で複数個配置されており、
前記第2金属層は、前記第1金属層が一体化される部分と電気配線部分とを備えており、
前記電気配線部分の上には電気絶縁樹脂層を介して他の電気配線部分を構成する1以上の第4金属層が一体化されており、
前記第2金属層を流れる電流の方向と前記第4金属層を流れる電流の方向とが逆方向になるように前記発熱素子と前記第4金属層とが電気的接続手段を介して接続されていることを特徴とする配線板。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−9896(P2012−9896A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−208883(P2011−208883)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【分割の表示】特願2007−287304(P2007−287304)の分割
【原出願日】平成19年11月5日(2007.11.5)
【出願人】(000001203)新神戸電機株式会社 (518)
【Fターム(参考)】