説明

配線構造及びその製造方法

【課題】配線間の絶縁性に優れ信頼性の高い配線構造及びその製造方法を提供する。
【解決手段】第1の絶縁膜と、第1の絶縁膜上に形成された配線と、第1の絶縁膜上及び配線上に形成された第2の絶縁膜とを有し、第1の絶縁膜と第2の絶縁膜との界面は、第1の絶縁膜と配線との界面よりも下に位置し、配線の下面の端部から離間している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線構造及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器に対する小型化、高性能化及び低価格化等の要求に伴い、半導体チップの微細化や多端子化とともに、半導体チップを搭載する回路基板の微細化、多層化及び電子部品の高密度実装化が進められている。特に、半導体チップの多端子化並びに端子の狭ピッチ化に伴い、多層回路基板にも微細配線化が求められている。
【0003】
多層プリント基板、LSIパッケージ基板、ウェーハレベルパッケージ、マルチチップパッケージ等の配線構造には、配線層間を絶縁する絶縁膜として、安価な有機樹脂膜(ポリイミド、フェノール系樹脂、エポキシ樹脂など)が用いられている。また配線としては、サブトラクティブ法やセミアディティブ法等、特に、サブトラクティブ法より微細配線化が可能なセミアディティブ法により形成した銅配線が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61−042997号公報
【特許文献2】特開2003−332483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、配線の狭ピッチ化に伴い、これまでには無かった絶縁耐圧などの問題が浮上してきている。セミアディティブ工法を用いた配線構造について本発明者等が鋭意検討を行ったところ、5μm幅以下程度の微細な配線を形成すると、HAST試験(高温高湿度絶縁試験)において配線間の絶縁抵抗が低下する絶縁不良が生じることが判明した。
【0006】
本発明の目的は、配線間の絶縁性に優れ信頼性の高い配線構造及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の一観点によれば、第1の絶縁膜と、前記第1の絶縁膜上に形成された配線と、前記第1の絶縁膜上及び前記配線上に形成された第2の絶縁膜とを有し、前記第1の絶縁膜と前記第2の絶縁膜との界面は、前記第1の絶縁膜と前記配線との界面よりも下に位置し、前記配線の下面の端部から離間している配線構造が提供される。
【0008】
また、実施形態の他の観点によれば、第1の絶縁膜上に、配線を形成する工程と、前記配線をマスクとして前記第1の絶縁膜をエッチングし、前記第1の絶縁膜に、前記配線の下面の端部を含む前記下面の一部を露出する開口部を形成する工程と、前記配線及び開口部が形成された前記第1の絶縁膜上に、前記開口部を埋め込み且つ前記配線を覆うように、第2の絶縁膜を形成する工程とを有する配線構造の製造方法が提供される。
【0009】
また、実施形態の更に他の観点によれば、第1の絶縁膜に、開口部を形成する工程と、前記開口部内を埋め込む犠牲膜を形成する工程と、前記第1の絶縁膜及び前記犠牲膜上に、下面の端部を含む前記下面の一部が前記犠牲膜上に位置するように、配線を形成する工程と、前記犠牲膜を選択的に除去し、前記開口部内に、前記配線の前記下面の前記一部を露出する工程と、前記配線及び開口部が形成された前記第1の絶縁膜上に、前記開口部を埋め込み且つ前記配線を覆うように、第2の絶縁膜を形成する工程とを有する配線構造の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
開示の配線構造及びその製造方法によれば、第1の配線と第2の配線との界面を、第1の絶縁膜と配線との界面よりも下に配置し且つ配線の下面の端部から離間するので、第1の絶縁膜と第2の絶縁膜との界面から配線の電界集中部分を離間することができる。また、第1の絶縁膜と第2の絶縁膜との界面を通る配線間のパスを長くすることができる。これにより、第1の絶縁膜と第2の絶縁膜との界面を介する絶縁破壊やリーク電流を抑制することができ、信頼性の高い配線構造を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、第1実施形態による配線構造を示す概略断面図である。
【図2】図2は、配線間の電界強度をシミュレーションにより求めた結果を示す図である。
【図3】図3は、参考例による配線構造を示す概略断面図である。
【図4】図4は、第1実施形態による配線構造の製造方法を示す工程断面図(その1)である。
【図5】図5は、第1実施形態による配線構造の製造方法を示す工程断面図(その2)である。
【図6】図6は、第1実施形態による配線構造の製造方法を示す工程断面図(その3)である。
【図7】図7は、第2実施形態による配線構造を示す概略断面図である。
【図8】図8は、第2実施形態による配線構造の製造方法を示す工程断面図(その1)である。
【図9】図9は、第2実施形態による配線構造の製造方法を示す工程断面図(その2)である。
【図10】図10は、第3実施形態による配線構造を示す概略断面図である。
【図11】図11は、第3実施形態による配線構造の製造方法を示す工程断面図(その1)である。
【図12】図12は、第3実施形態による配線構造の製造方法を示す工程断面図(その2)である。
【図13】図13は、第3実施形態による配線構造の製造方法を示す工程断面図(その3)である。
【図14】図14は、第4実施形態による配線構造を示す概略断面図である。
【図15】図15は、第4実施形態による配線構造の製造方法を示す工程断面図(その1)である。
【図16】図16は、第4実施形態による配線構造の製造方法を示す工程断面図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[第1実施形態]
第1実施形態による配線構造及びその製造方法について図1乃至図6を用いて説明する。
【0013】
図1は、本実施形態による配線構造を示す概略断面図である。図2は、配線間の電界強度をシミュレーションにより求めた結果を示す図である。図3は、参考例による配線構造を示す概略断面図である。図4乃至図6は、本実施形態による配線構造の製造方法を示す工程断面図である。
【0014】
はじめに、本実施形態による配線構造について図1を用いて説明する。
【0015】
絶縁膜10上には、配線22が形成されている。絶縁膜10は、配線22を形成する下地となる膜であり、基板上に形成された絶縁膜や、絶縁基板そのものが該当する。基板としては、特に限定されるものではないが、例えば、プリント基板、LSIパッケージ基板、半導体基板等が挙げられる。基板には、1層以上の配線層や機能素子が形成されていてもよい。絶縁膜10としては、特に限定されるものではなく、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜等の無機絶縁膜や、ポリイミド樹脂、フェノール系樹脂、エポキシ樹脂等の有機絶縁膜が挙げられる。配線22は、銅(Cu)等の低抵抗の金属材料により形成されている。
【0016】
絶縁膜10上及び配線22上には、絶縁膜26が形成されている。絶縁膜26は、配線22と更に上層に形成する配線(図示せず)との間を絶縁するための層間絶縁膜或いは配線22を保護するための保護膜である。絶縁膜26としては、特に限定されるものではなく、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜等の無機絶縁膜や、ポリイミド樹脂、フェノール系樹脂、エポキシ樹脂等の有機絶縁膜が挙げられる。
【0017】
絶縁膜10には、配線22の下面の端部(角部)を含む一部の領域を露出する開口部24が形成されており、絶縁膜26は、開口部24を埋め込み且つ配線22を覆うように形成されている。これにより、絶縁膜10と絶縁膜26との界面は、絶縁膜10と配線22との界面よりも下に位置し、配線22の下面の端部から離間している。そして、絶縁膜10と絶縁膜26との界面の端部は、配線の下面の端部から離間した場所において配線22の下面に接している。
【0018】
このように、本実施形態による配線構造では、絶縁膜10と絶縁膜26との界面が、配線22の下面の端部から離間している。そして、絶縁膜10と絶縁膜26との界面の端部は、配線22の端部から離間した場所において配線22に接している。絶縁膜10と絶縁膜26との界面をこのように配置しているのは、配線22間の絶縁耐圧を向上するためである。
【0019】
隣接する配線22間に電圧を印加すると、これら配線間に印加される電界は、配線22の端部(配線断面の角部)において集中する。
【0020】
図2は、配線間の電界強度をシミュレーションにより求めた結果を示す図である。図2のシミュレーションは、2μm幅の配線を2μm間隔で配置した配線間に3.5Vを印加した場合における配線間の電界強度分布を計算したものである。
【0021】
図2に示すように、配線間の電界強度は、配線の端部において最も大きい。このため、絶縁膜10と絶縁膜26との界面が配線22の端部に接している構造では、界面を介したなだれ放電が生じやすい。
【0022】
本願発明者等が検討を行ったところ、絶縁膜10と絶縁膜26との界面が配線22の端部に接している構造では、5μm幅程度以下の微細な配線構造において、配線間の絶縁抵抗が低下する絶縁不良が生じることが判明した。この結果は、HAST試験(高温高湿度絶縁試験)により得られたものである。
【0023】
絶縁不良が生じる原因の一つとして、配線間で電界の集中する部分(配線断面の角部)からのなだれ放電が挙げられる。別々に形成した絶縁膜10,26の界面は構造的に脆弱なため、絶縁膜10,26の界面が配線22の端部に位置すると、端部に集中した電界によって爆発的に絶縁破壊が生じることがある。また、界面は脆弱なだけではなく、界面が存在するだけで流動イオンそこに誘導されてリークパスになることもある。
【0024】
なお、絶縁膜10,26の界面が配線の端部に接している構造としては、例えば図3(a)に示すように、平坦な絶縁膜10上に配線22及び絶縁膜26が形成されている配線構造が挙げられる。或いは、例えば図3(b)に示すように、絶縁膜10,26の界面が配線22の底面よりも低くなっているが、配線22の端部に絶縁膜10,26の界面が位置している配線構造が挙げられる。
【0025】
一方、図2のシミュレーションにおいて、配線の下部における電界強度は、配線の端部における電界強度と比較して、対数値で最大0.8程度低くなる。したがって、絶縁膜10と絶縁膜26との界面を、配線22の端部から離間した配線22の下部において配線22に接するようにすることで、配線22間の絶縁耐圧を向上することができる。これにより、製品の信頼性を向上することができる。
【0026】
絶縁膜10と絶縁膜26との界面を、絶縁膜10と配線22との界面よりも下に配置し、配線の下面の端部から離間した場所において配線22の下面に接するように形成されていることには、絶縁膜10と絶縁膜26との界面を通る配線22間のパスを長くして絶縁耐圧を向上する効果もある。これは、界面に沿っての誘導電子などの影響によりリークする現象を効率よく防止できるからである。
【0027】
本発明者等の検討では、配線幅が2μm、配線高さが3μm、配線間隔が2μmの配線構造においては、開口部24の掘り込み量を配線22の高さの1/6程度以上、開口部24のサイドエッチング量を配線幅の1/4程度以上にすることで、絶縁耐圧の向上が認められた。ここで、開口部24の掘り込み量とは、絶縁膜10の表面からの開口部24の深さである。また、サイドエッチング量とは、配線22下が掘削される横方向のエッチング量(片側)である。
【0028】
一方、開口部24の掘り込み量及びサイドエッチング量を大きくしすぎると、製造過程において構造的に不安定となるため、開口部24の掘り込み量は配線22の高さの1/2程度以下、開口部24のサイドエッチング量は配線幅の1/3程度以下にすることが望ましい。
【0029】
配線幅や配線高さが変化した場合も、およそ上述の割合の寸法付近で設計することが望ましいと考えられる。ただし、ここに述べた寸法値や比の値は、本発明者等が行った検討結果の一例であり、配線の寸法、絶縁膜材料、製造方法等によっても変化するものである。開口部24の掘り込み量及びサイドエッチング量の設定にあたっては、それにより得られる絶縁耐圧向上の効果を考慮しつつ、適宜設定することが望ましい。
【0030】
次に、本実施形態による配線構造の製造方法について図4乃至図6を用いて説明する。
【0031】
まず、配線を形成する下地となる絶縁膜10が形成された基板(図示せず)を用意する。基板としては、特に限定されるものではないが、例えば、プリント基板、LSIパッケージ基板、半導体基板等が挙げられる。基板には、1層以上の配線層や機能素子が形成されていてもよい。絶縁膜10としては、特に限定されるものではなく、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜等の無機絶縁膜や、ポリイミド樹脂、フェノール系樹脂、エポキシ樹脂等の有機絶縁膜が挙げられる。絶縁膜10が形成された基板の代わりに、絶縁基板を用いてもよい。ここでは一例として、ポリイミド樹脂の絶縁膜10が形成された基板を用いるものとする。
【0032】
次いで、絶縁膜10上に、例えばスパッタ法又は真空蒸着法により、めっきシード層14を形成する。めっきシード層14としては、例えば、抵抗の低い銅(Cu)や銀(Ag)等を適用することができる。
【0033】
なお、絶縁膜10とめっきシード層14との間に、密着層(図示せず)を形成するようにしてもよい。密着層としては、例えば、チタン(Ti)、タングステン(W)、タンタル(Ta)のうち少なくともいずれか1つを含む合金や金属化合物を適用することができる。
【0034】
次いで、めっきシード層14上に、例えばスピンコート法又はロールコート法等により、フォトレジスト16を形成する。
【0035】
次いで、フォトレジストを露光・現像し、フォトレジスト16に、めっきシード層14に達する開口部18を形成する(図4(a))。
【0036】
次いで、電気めっき法により、めっきシード層14をシードとして、開口部18内にCu等のめっき金属を成長し、開口部18内に埋め込まれ、シード層14に接続された配線導体層20を形成する(図4(b))。配線導体層20の埋め込み高さは、必要に応じて適宜設定することができる。ここでは、例えば、めっきシード層14及び配線導体層20の総厚が3μmとなるように、めっきシード層14及び配線導体層20を形成するものとする。
【0037】
次いで、例えば、アセトン、イソプロピルアルコール(IPA)、N−メチルピロリドン(NMP)等の薬液を用いて洗浄し、フォトレジスト16を除去する(図5(a))。なお、フォトレジスト16は、アッシング等のドライプロセスを用いて除去してもよい。
【0038】
次いで、フォトレジスト16により覆われていた部分の余分なめっきシード層14を除去し、めっきシード層14及び配線導体層20の積層構造体よりなる配線22を形成する(図5(b))。ここでは、例えば、配線幅が2μmの配線22を、2μmの配線間隔で形成するものとする。
【0039】
めっきシード層14の除去には、例えば、過硫酸アンモニウム、硫酸カリウム等の薬液を用いたウェットエッチングを適用することができる。なお、めっきシード層14は、ドライエッチングにより除去してもよい。
【0040】
次いで、等方的な成分を含むエッチング手法により、配線22をマスクとして絶縁膜10をエッチングし、絶縁膜10に、配線22の下面の一部を露出する開口部24を形成する(図6(a))。
【0041】
例えば、エッチングガスとして酸素を用い、プロセス圧を300Pa、プラズマ出力を100W程度とした酸素プラズマエッチングを30分間程度行う。これにより、深さ1.2μm程度、サイドエッチング量0.6μm程度の開口部24を形成することができる。
【0042】
次いで、配線22及び開口部24が形成された絶縁膜10上に、配線22を覆い且つ開口部24を埋め込むように、絶縁膜26を形成する(図6(b))。例えば、スピンコート法等により絶縁膜形成用組成物を塗布した後、ホットプレート又はオーブンにより硬化処理前熱処理及び硬化処理を行い、絶縁膜26を形成する。熱処理及び硬化処理において、処理中の雰囲気は必要に応じて適宜選択することができ、例えば、大気雰囲気、窒素雰囲気、真空雰囲気等を適用することができる。絶縁膜26の厚さは、必要に応じて適宜設定することができる。
【0043】
絶縁膜26の構成材料は、配線間の絶縁性を維持できる材料であれば、有機系材料であっても無機系材料であってもよい。絶縁膜26の構成材料としては、例えば、ポリイミド樹脂、フェノール系樹脂、エポキシ樹脂等を適用することができる。
【0044】
絶縁膜形成用組成物の塗布方法も、特に限定されるものではなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、スピンコート法、ディップコート法、ニーダーコート法、カーテンコート法、ブレードコート法等を適用することができる。
【0045】
次いで、必要に応じて、例えば化学的機械的研磨(CMP)法により、絶縁膜26の表面を平坦化する。CMP法の代わりに、物理的な研削、研磨又は切削を適用してもよい。
【0046】
こうして、本実施形態による配線構造を形成する。
【0047】
このように、本実施形態によれば、下層絶縁膜と上層絶縁膜との界面を、下層絶縁膜と配線との界面よりも下に配置し且つ配線の下面の端部から離間するので、配線の電界集中部分から下層絶縁膜と上層絶縁膜との界面を離間することができる。また、第1の絶縁膜と第2の絶縁膜との界面を通る配線間のパスを長くすることができる。これにより、下層絶縁膜と上層絶縁膜との界面を介する絶縁破壊やリーク電流を抑制することができ、信頼性の高い配線構造を実現することができる。
【0048】
[第2実施形態]
第2実施形態による配線構造及びその製造方法について図7乃至図9を用いて説明する。図1乃至図6に示す第1実施形態による配線構造及びその製造方法と同様の構成要素には同一の符号を付し説明を省略し又は簡潔にする。
【0049】
図7は、本実施形態による配線構造を示す概略断面図である。図8及び図9は、本実施形態による配線構造の製造方法を示す工程断面図である。
【0050】
はじめに、本実施形態による配線構造について図7を用いて説明する。
【0051】
本実施形態による配線構造は、開口部24の側壁部分の形状が異なるほかは、基本的に第1実施形態による配線構造と同様である。本実施形態による配線構造では、開口部24内に配線22の下面がより確実に露出しており、絶縁膜10と絶縁膜26との界面が配線22の下面のより内側において配線22に接している。これにより、第1実施形態による配線構造と比較して、より絶縁耐圧を向上することができる。
【0052】
次に、本実施形態による配線構造の製造方法について図8及び図9を用いて説明する。
【0053】
まず、図4(a)乃至図5(b)に示す第1実施形態による配線構造の製造方法と同様にして、絶縁膜10上に、配線22を形成する(図8(a))。
【0054】
次いで、配線22をマスクとして絶縁膜10をエッチングし、絶縁膜10に開口部24を形成する(図8(b))。このエッチングには、第1実施形態の場合と同様の等方的な成分を含むエッチング条件を用いてもよいし、等方的な成分の少ない異方的なエッチング条件を用いてもよい。
【0055】
次いで、配線22をマスクとして絶縁膜10をエッチングして開口部24を更に広げ、開口部24内に配線22の下面の一部を露出する(図9(a))。このエッチングには、KOH(水酸化カリウム)水溶液やTMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)水溶液等を用いた等方的なウェットエッチングを用いる。ウェットエッチングでは、ドライエッチングの場合よりも等方性が強いエッチングができるため、配線22直下の絶縁膜10をより確実にエッチングすることができる。
【0056】
次いで、配線22及び開口部24が形成された絶縁膜10上に、配線22を覆い且つ開口部24を埋め込むように、絶縁膜26を形成する(図9(b))。
【0057】
こうして、本実施形態による配線構造を形成する。
【0058】
なお、本実施形態による配線構造の製造方法の他の利点として、開口部24の掘り込み量及びサイドエッチング量を別々に制御できることが挙げられる。
【0059】
開口部24の掘り込み量及びサイドエッチング量を大きくすることには絶縁耐圧を向上する効果があるが、その一方、開口部24のサイドエッチング量を大きくしすぎると、製造過程において配線22が不安定となり、配線22が倒れるなどの不具合が生じることがある。
【0060】
開口部24を形成する際のドライエッチングのステップにおいて異方性の強い条件を用いれば、開口部24のサイドエッチング量を増やすことなく、開口部24の掘り込み量を増加することができる。開口部24のサイドエッチング量は、等方的なウェットエッチングのステップにより制御することができる。したがって、ドライエッチングのステップとウェットエッチングのステップとを適宜組み合わせることにより、開口部24のサイドエッチング量を大きくしすぎることなく、開口部24の掘り込み量を大きくすることができ、絶縁耐圧を向上することができる。
【0061】
上記実施形態では、ドライエッチング及びウェットエッチングの2段階のエッチングを行ったが、ドライエッチングのステップは必ずしも必要はなく、ウェットエッチングのステップのみを行ってもよい。
【0062】
このように、本実施形態によれば、下層絶縁膜と上層絶縁膜との界面を、下層絶縁膜と配線との界面よりも下に配置し且つ配線の下面の端部から離間するので、配線の電界集中部分から下層絶縁膜と上層絶縁膜との界面を離間することができる。また、第1の絶縁膜と第2の絶縁膜との界面を通る配線間のパスを長くすることができる。これにより、下層絶縁膜と上層絶縁膜との界面を介する絶縁破壊やリーク電流を抑制することができ、信頼性の高い配線構造を実現することができる。
【0063】
[第3実施形態]
第3実施形態による配線構造及びその製造方法について図10乃至図13を用いて説明する。図1乃至図9に示す第1及び第2実施形態による配線構造及びその製造方法と同様の構成要素には同一の符号を付し説明を省略し又は簡潔にする。
【0064】
図10は、本実施形態による配線構造を示す概略断面図である。図11乃至図13は、本実施形態による配線構造の製造方法を示す工程断面図である。
【0065】
はじめに、本実施形態による配線構造について図10を用いて説明する。
【0066】
本実施形態による配線構造は、開口部24の側壁部分の形状が異なるほかは、基本的に第1実施形態による配線構造と同様である。本実施形態による配線構造では、開口部24内に配線22の下面がより確実に露出しており、絶縁膜10と絶縁膜26との界面が配線22の下面のより内側で配線22に接している。これにより、第1実施形態による配線構造と比較して、より絶縁耐圧を向上することができる。
【0067】
次に、本実施形態による配線構造の製造方法について図11乃至図13を用いて説明する。
【0068】
まず、フォトリソグラフィ及びドライエッチングにより、絶縁膜10の表面に、開口部24を形成する(図11(a))。なお、ここでは、絶縁膜10がシリコン酸化膜により形成されているものとする。シリコン酸化膜のエッチングには、例えば、CFガスを用いたプラズマエッチングを適用することができる。なお、図には、異方性エッチングによって開口部24を形成する場合を想定した形状を示しているが、開口部24の形成には等方性エッチングを用いてもよいし、ドライエッチングの代わりにウェットエッチングを用いてもよい。或いは、第2実施形態のような、ドライエッチングとウェットエッチングとの2段階のエッチングを行ってもよい。
【0069】
次いで、開口部24が形成された絶縁膜10上に、例えばスピンコート法により、例えば有機絶縁材料を堆積し、有機絶縁材料の絶縁膜30を形成する(図11(b))。
【0070】
なお、絶縁膜30は、絶縁膜10及び後工程で形成する配線22に対して選択的にエッチングしうる材料であれば、特に限定されるものではなく、必ずしも絶縁材料である必要もない。絶縁膜30は、配線22を形成する際の便宜のために形成しその後除去される膜であり、いわば犠牲膜である。また、絶縁膜10も、絶縁膜30に対して選択的にエッチングしうる材料であれば、シリコン酸化膜に限定されるものではない。
【0071】
次いで、絶縁膜30を、絶縁膜10の表面が露出するまでエッチバック或いはポリッシュバックし、絶縁膜30を開口部24内に選択的に残存させる(図12(a))。
【0072】
次いで、図4(a)乃至図5(b)に示す第1実施形態による配線構造の製造方法と同様にして、開口部24内に絶縁膜30が埋め込まれた絶縁膜10上に、配線22を形成する(図12(b))。この際、絶縁膜10と絶縁膜30との界面が、配線22の端部から離間した場所において配線22に接するように、開口部24のパターンに対して配線22を位置合わせする。
【0073】
次いで、酸素プラズマ処理、KOHやTMAH水溶液等を用いたウェット処理等により、絶縁膜30を絶縁膜10に対して選択的にエッチングする(図13(a))。これにより、開口部24内に配線22の下面が露出される。
【0074】
次いで、配線22及び開口部24が形成された絶縁膜10上に、配線22を覆い且つ開口部24を埋め込むように、絶縁膜26を形成する(図13(b))。
【0075】
こうして、本実施形態による配線構造を形成する。
【0076】
本実施形態による配線構造の製造方法では、配線22に影響を受けることなく、開口部24の掘り込み量及びサイドエッチング量をより確実に制御することができるため、絶縁膜10,26の界面を配線22の端部から確実に隔離することができる。
【0077】
このように、本実施形態によれば、下層絶縁膜と上層絶縁膜との界面を、下層絶縁膜と配線との界面よりも下に配置し且つ配線の下面の端部から離間するので、配線の電界集中部分から下層絶縁膜と上層絶縁膜との界面を離間することができる。また、第1の絶縁膜と第2の絶縁膜との界面を通る配線間のパスを長くすることができる。これにより、下層絶縁膜と上層絶縁膜との界面を介する絶縁破壊やリーク電流を抑制することができ、信頼性の高い配線構造を実現することができる。
【0078】
[第4実施形態]
第4実施形態による配線構造及びその製造方法について図14乃至図16を用いて説明する。図1乃至図13に示す第1乃至第3実施形態による配線構造及びその製造方法と同様の構成要素には同一の符号を付し説明を省略し又は簡潔にする。
【0079】
図14は、本実施形態による配線構造を示す概略断面図である。図15及び図16は、本実施形態による配線構造の製造方法を示す工程断面図である。
【0080】
はじめに、本実施形態による配線構造について図14を用いて説明する。
【0081】
本実施形態による配線構造は、配線22の端部の角が面取りされているほかは、基本的に第1実施形態による配線構造と同様である。配線22の端部の角を面取りすることにより、配線22の局所的な電界集中を防止し、配線間の絶縁耐圧を更に向上することができる。
【0082】
次に、本実施形態による配線構造の製造方法について図15及び図16を用いて説明する。
【0083】
まず、図4(a)乃至図5(b)に示す第1実施形態による配線構造の製造方法と同様にして、絶縁膜10上に、配線22を形成する(図15(a))。なお、本実施形態では、形成しようとする配線22のサイズよりも僅かに大きいサイズで配線22を形成する。配線22のサイズの増加分は、後工程における配線22のエッチング量に対応する。
【0084】
次いで、例えば図8(b)に示す第2実施形態による配線構造の製造方法と同様にして、配線22をマスクとして絶縁膜10をエッチングし、絶縁膜10に開口部24を形成する(図15(b))。
【0085】
次いで、TMAH水溶液やKOH水溶液と硫酸との混合液を用いたウェットエッチングを行い、配線22の表面を等方的にエッチングし、配線22の端部の角を面取りするとともに、配線22を出来上がり寸法に成形する(図16(a))。
【0086】
次いで、配線22及び開口部24が形成された絶縁膜10上に、配線22を覆い開口部24を埋め込むように、絶縁膜26を形成する(図16(b))。
【0087】
こうして、本実施形態による配線構造を形成する。
【0088】
このように、本実施形態によれば、下層絶縁膜と上層絶縁膜との界面を、下層絶縁膜と配線との界面よりも下に配置し且つ配線の下面の端部から離間するので、配線の電界集中部分から下層絶縁膜と上層絶縁膜との界面を離間することができる。また、第1の絶縁膜と第2の絶縁膜との界面を通る配線間のパスを長くすることができる。これにより、下層絶縁膜と上層絶縁膜との界面を介する絶縁破壊やリーク電流を抑制することができ、信頼性の高い配線構造を実現することができる。また、配線の端部の角を面取りすることにより、配線の局所的な部分における電界集中を抑えることができ、下層絶縁膜と上層絶縁膜との界面を介する絶縁破壊やリーク電流を更に抑制することができる。
【0089】
[変形実施形態]
上記実施形態に限らず種々の変形が可能である。
【0090】
例えば、上記実施形態では、1層の配線層を有する配線構造を示したが、配線層の層数は1層に限定されるものではなく、2層以上であってもよい。
【0091】
また、上記実施形態では、配線22をいわゆるセミアディティブ法により形成する例を示したが、配線22の形成方法はこれに限定されるものではない。配線22は、セミアディティブ法のみならず、サブトラクティブ法等の他の方法により形成してもよい。
【0092】
また、上記第4実施形態では、第2実施形態による配線構造及びその製造方法において配線22の面取りを行う例を示したが、第1又は第3実施形態による配線構造及びその製造方法に適用するようにしてもよい。
【0093】
また、上記実施形態では、配線の下面の端部の両方を露出するように開口部を形成したが、必ずしも両方の端部を露出する必要はない。配線間隔が狭く絶縁耐圧が問題となる部位に位置する端部を選択的に露出するようにしてもよい。
【0094】
また、上記実施形態に記載した構成材料、製造条件等は、一例を示したものにすぎず、当業者の技術常識等に応じて適宜修正や変更が可能である。
【0095】
以上の実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0096】
(付記1) 第1の絶縁膜と、
前記第1の絶縁膜上に形成された配線と、
前記第1の絶縁膜上及び前記配線上に形成された第2の絶縁膜とを有し、
前記第1の絶縁膜と前記第2の絶縁膜との界面は、前記第1の絶縁膜と前記配線との界面よりも下に位置し、前記配線の下面の端部から離間している
ことを特徴とする配線構造。
【0097】
(付記2) 付記1記載の配線構造において、
前記配線の前記下面に、前記第1の絶縁膜及び前記第2の絶縁膜が接している
ことを特徴とする配線構造。
【0098】
(付記3) 付記1又は2記載の配線構造において、
前記第1の絶縁膜と前記第2の絶縁膜との前記界面は、前記配線の前記下面の前記端部から離間した位置において前記配線の前記下面に接している
ことを特徴とする配線構造。
【0099】
(付記4) 付記1乃至3のいずれか1項に記載の配線構造において、
前記配線の前記下面の前記端部が面取りされている
ことを特徴とする配線構造。
【0100】
(付記5) 付記1乃至4のいずれか1項に記載の配線構造において、
前記第2の絶縁膜は、有機絶縁材料により形成されている
ことを特徴とする配線構造。
【0101】
(付記6) 第1の絶縁膜上に、配線を形成する工程と、
前記配線をマスクとして前記第1の絶縁膜をエッチングし、前記第1の絶縁膜に、前記配線の下面の端部を含む前記下面の一部を露出する開口部を形成する工程と、
前記配線及び開口部が形成された前記第1の絶縁膜上に、前記開口部を埋め込み且つ前記配線を覆うように、第2の絶縁膜を形成する工程と
を有することを特徴とする配線構造の製造方法。
【0102】
(付記7) 第1の絶縁膜に、開口部を形成する工程と、
前記開口部内を埋め込む犠牲膜を形成する工程と、
前記第1の絶縁膜及び前記犠牲膜上に、下面の端部を含む前記下面の一部が前記犠牲膜上に位置するように、配線を形成する工程と、
前記犠牲膜を選択的に除去し、前記開口部内に、前記配線の前記下面の前記一部を露出する工程と、
前記配線及び開口部が形成された前記第1の絶縁膜上に、前記開口部を埋め込み且つ前記配線を覆うように、第2の絶縁膜を形成する工程と
を有することを特徴とする配線構造の製造方法。
【0103】
(付記8) 付記6又は7記載の配線構造の製造方法において、
前記第2の絶縁膜を形成する工程の前に、前記配線の前記端部の角を面取りする工程を更に有する
ことを特徴とする配線構造の製造方法。
【0104】
(付記9) 付記6乃至8のいずれか1項に記載の配線構造の製造方法において、
前記開口部を形成する工程では、等方的なエッチング成分を含むエッチング条件を用いて前記第1の絶縁膜をエッチングする
ことを特徴とする配線構造の製造方法。
【0105】
(付記10) 付記9記載の配線構造の製造方法において、
前記開口部を形成する工程では、ドライエッチングにより前記第1の絶縁膜をエッチングする
ことを特徴とする配線構造の製造方法。
【0106】
(付記11) 付記9記載の配線構造の製造方法において、
前記開口部を形成する工程は、ウェットエッチングにより前記第1の絶縁膜を等方的にエッチングする工程を有する
ことを特徴とする配線構造の製造方法。
【0107】
(付記12) 付記11記載の配線構造の製造方法において、
前記第1の絶縁膜をエッチングする工程は、ドライエッチングにより前記第1の絶縁膜をエッチングする工程を更に有する
ことを特徴とする配線構造の製造方法。
【符号の説明】
【0108】
10,26,30…絶縁膜
14…めっきシード層
16…フォトレジスト膜
18…開口部
20…配線導体層
22…配線
24…開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の絶縁膜と、
前記第1の絶縁膜上に形成された配線と、
前記第1の絶縁膜上及び前記配線上に形成された第2の絶縁膜とを有し、
前記第1の絶縁膜と前記第2の絶縁膜との界面は、前記第1の絶縁膜と前記配線との界面よりも下に位置し、前記配線の下面の端部から離間している
ことを特徴とする配線構造。
【請求項2】
請求項1記載の配線構造において、
前記配線の前記下面に、前記第1の絶縁膜及び前記第2の絶縁膜が接している
ことを特徴とする配線構造。
【請求項3】
請求項1又は2記載の配線構造において、
前記第1の絶縁膜と前記第2の絶縁膜との前記界面は、前記配線の前記下面の前記端部から離間した位置において前記配線の前記下面に接している
ことを特徴とする配線構造。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の配線構造において、
前記配線の前記下面の前記端部が面取りされている
ことを特徴とする配線構造。
【請求項5】
第1の絶縁膜上に、配線を形成する工程と、
前記配線をマスクとして前記第1の絶縁膜をエッチングし、前記第1の絶縁膜に、前記配線の下面の端部を含む前記下面の一部を露出する開口部を形成する工程と、
前記配線及び開口部が形成された前記第1の絶縁膜上に、前記開口部を埋め込み且つ前記配線を覆うように、第2の絶縁膜を形成する工程と
を有することを特徴とする配線構造の製造方法。
【請求項6】
第1の絶縁膜に、開口部を形成する工程と、
前記開口部内を埋め込む犠牲膜を形成する工程と、
前記第1の絶縁膜及び前記犠牲膜上に、下面の端部を含む前記下面の一部が前記犠牲膜上に位置するように、配線を形成する工程と、
前記犠牲膜を選択的に除去し、前記開口部内に、前記配線の前記下面の前記一部を露出する工程と、
前記配線及び開口部が形成された前記第1の絶縁膜上に、前記開口部を埋め込み且つ前記配線を覆うように、第2の絶縁膜を形成する工程と
を有することを特徴とする配線構造の製造方法。
【請求項7】
請求項5又は6記載の配線構造の製造方法において、
前記開口部を形成する工程では、等方的なエッチング成分を含むエッチング条件を用いて前記第1の絶縁膜をエッチングする
ことを特徴とする配線構造の製造方法。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−84842(P2013−84842A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224924(P2011−224924)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】