説明

配線部材の固定構造

【課題】配線固定用に別の部材を必要とせず、組み立てが簡単であり、配線の固定状態が容易に解除されることがない配線部材の固定構造を提供する。
【解決手段】メンブレンシート3に、先端に穴3bを有する帯状凸部3aと先端に膨大部3dを有する柱状凸部3cとを互いに近接する位置に形成し、前記帯状凸部3aを弾性変形させて前記穴3bを前記膨大部3dを通過させて膨大部3dに係止された状態とし、この状態で前記柱状凸部3cと帯状凸部3aの間に配置された配線部材5の一部を前記帯状凸部aが保持するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は電子機器に係わり、特に、その配線部材の固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の配線部材の固定構造の例を図5に示す。図5に示す操作パネル8は電子機器の前面に配置され、操作つまみや表示部を保持しているものであるが、図5にはボスの部分のみ示している。プリント基板4は操作パネル8の背後に配置され、プリント基板4の前面側にゴム製のメンブレンシート9が配置されている。そして、プリント基板4とメンブレンシート9によりメンブレンスイッチが構成されている。
【0003】
薄板板金製の配線固定板10はメンブレンシート9およびプリント基板4と共にビス11により操作パネル8に締着されている。配線固定板10を配線部材5、5を巻くように曲げて、配線部材5、5が固定される。
【0004】
上記した図5に示す従来の配線部材の固定構造では、配線固定板10等配線固定のために特別の部品を必要として部品点数が多くなり、配線固定板10を締着したり、加工するなどの工程が増える等製造コストが増大するという問題があった。
【0005】
実開平6−80326号公報に開示された配線収束固定部材は、ロ字形状が自然状態で開いた形となる樹脂製の配線収束固定部材の一面を両面テープで固定板に接着し、配線を配線収束固定部材の中に入れた後、配線収束固定部材の開いた部分に形成された係止部を係止させて、配線収束固定部材で配線を束ねて固定する。
【0006】
上記実開平6−80326号公報に開示された配線収束固定部材は、やはり、配線収束固定部材等配線固定のために特別の部品を必要として部品点数が多くなり、配線収束固定部材を両面テープで固定板に接着したりするなどの工程が増える等製造コストが増大するという問題があった。
【0007】
配線の固定を解除する場合は両面テープを剥がすことになるが両面テープは剥がすことにより接着力が落ちて再度配線を固定する場合は新しい両面テープを使用する必要が生じる。また、両面テープは剥がれることもあり、樹脂製の配線収束固定部材の係止部の係止状態が外れる恐れがあるという問題があった。
【特許文献1】実開平6−80326号公報、段落0009〜段落0011、図1、図2
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明は上記した点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、配線固定用に特別の部材を必要とせず、組み立てが簡単であり、配線の固定状態が容易に解除されることのない配線部材の固定構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の配線部材の固定構造は、メンブレンシートに、先端に穴を有する帯状凸部と先端に膨大部を有する柱状凸部とを互いに近接する位置に形成し、前記帯状凸部を弾性変形させて前記穴を前記膨大部を通過させて膨大部に係止された状態とし、この状態で前記柱状凸部と帯状凸部の間に配置された配線部材の一部を前記帯状凸部が保持するように構成したものである。
【0010】
また、この発明の配線部材の固定構造は、メンブレンシートに、先端に穴を有する帯状凸部を形成し、前記帯状凸部と近接位置に配置されるように操作パネルに先端に膨大部を有する柱状凸部を形成し、前記帯状凸部を弾性変形させて前記穴を前記膨大部を通過させて膨大部に係止された状態とし、この状態で前記柱状凸部と帯状凸部の間に配置された配線部材の一部を前記帯状凸部が保持するように構成したものである。
【発明の効果】
【0011】
この発明の配線部材の固定構造によると、配線固定用に特別の部材を必要とせず、組み立てが簡単であり、配線の固定状態が容易に解除されることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
【実施例1】
【0013】
以下この発明を実施するための最良の形態を実施例に即して説明する。図1はこの発明の実施例1である配線部材の固定構造を示す断面図、図2は同配線部材の固定構造の他の状態を示す断面図である。図1および図2に示すプリント基板4に設けられた対向する導体パターンと、ゴム製のメンブレンシート3の椀形形状部3eの内部に形成された凸部3fに付設され、椀形形状部が弾性変形することにより前記導体パターン同士を導通させる導体膜によりメンブレンスイッチが構成されている。
【0014】
図6に従来の電子機器の操作パネル内部に配置される部材の位置関係を示す。図6に示す操作パネル8はプッシュスイッチ作動用つまみ2を押し込み可能に保持している。操作パネル8とその背後に配置されるプリント基板4はメンブレンシート9を挾持している。メンブレンシート9は配線部材の固定のための機能を有していなが、実施例1ではこのように操作パネルとプリント基板の間に配置されるメンブレンシート3が配線部材の固定のために利用にされる。
【0015】
図1および図2に示すメンブレンスイッチを作動させるプッシュスイッチ作動用つまみ2は、その押圧部2aが操作パネル1の前側に配置されており、押圧部2aの中心に対して対称位置に2つのリブ2b、2bが後方に向けて延びるように形成されている。リブ2b、2bの外側には夫々凹み2c、2cが形成されている。さらに、押圧部2aの中心位置から後方に延びるように軸2dが形成されている。
【0016】
操作パネル1のつまみ取付け用穴の周囲には奥側に延びる係合部1aが形成されている。係合部1aの中間位置で前記リブ2b、2の夫々の凹み2c、2cと対応する位置に傾斜面1b、1bが形成され、さらに傾斜面1b、1bの後方に段差1c、1cが形成されている。
【0017】
上記つまみを操作パネル1に組み付けるときは、つまみ2を操作パネル1のつまみ取付け用穴に押し込むと、リブ2b、2bは係合部1aの傾斜面1b、1bに押されて弾性変形して傾斜面1b、1bを乗り越える。そして、段差1c、1cがリブ2b、2bの凹み2c、2cの奥側の縁を越えるとリブ2b、2bは元に戻り段差1c、1cが凹み2c、2cの奥側の縁を係止するようになる。
【0018】
このようにつまみ2が押し込まれた後の自然状態では、つまみ2の軸2dがメンブレンシート3の弾力に押されつまみ2が突出位置にあり、図1および図2に示すように、段差1c、1cが凹み2c、2cの奥側の縁を係止している。このとき、プリント基板の対向する導体パターンは導通していない。つまみ2を指で押すと、つまみ2の軸2dはメンブレンシート3を変形させメンブレンシート3の凸部3fに設けられた導体膜がプリント基板の対向する導体パターンを導通させる。
【0019】
メンブレンシート3には先端に穴3bを有する帯状凸部3aと、先端に膨大部3dを有する柱状凸部3cとが近接して設けられている。図2に示すように、帯状凸部3aと柱状凸部3cとの間に配線部材5、5を配置し、帯状凸部3aを弾性変形させて穴3bを膨大部3dを越えるように柱状凸部3cに押し込むと、配線部材5、5は膨大部3dに押さえられて固定される。なお、帯状凸部3aを複数設け、配線部材を複数箇所で固定してもよい。
【0020】
このように配線部材5、5の固定作業は極めて簡単であり、メンブレンシート3はゴム弾性部材であるために容易に抜けることはない。そして、メンブレンシート3の単体部品の他に別部品を必要としないので部品点数も少ない。
【実施例2】
【0021】
図3はこの発明の実施例2である配線部材の固定構造を示す断面図、図4は同配線部材の固定構造の他の状態を示す断面図である。この例では、メンブレンシート7には先端に穴7bを有する帯状凸部7aが設けられており、実施例1の柱状凸部3cは形成されていない。メンブレンシート7の他の構成は実施例1のメンブレンシート3と同様である。
【0022】
また、操作パネル6のボス6dの先端には先端に膨大部6fを有する柱状凸部6eが形成されている。他の構成は実施例1のメンブレンシート3と同様であり、さらに、実施例1と同じプッシュスイッチ作動用つまみ2が用いられる。そして、操作パネル6の柱状凸部6eはメンブレンシート7の帯状凸部7aと近接した位置に配置される。
【0023】
図4に示すように、帯状凸部7aと柱状凸部6eとの間に配線部材5、5を配置し、帯状凸部7aを弾性変形させて穴7bを操作パネル6の膨大部6fを越えるように柱状凸部6eに押し込むと、配線部材5、5は膨大部6fに押さえられて固定される。この例では実施例1と同様の効果を奏し、また、柱状凸部6eの剛性が大きいため、組み付け作業がさらに簡単となる。
【0024】
実施例は以上のように構成されているが発明はこれに限られず、例えば、柱状凸部の膨大部の形状をフック形状としてもよい。フック形状とすることによりメンブレンシートの帯状凸部をさらに確実に固定できる。また、帯状凸部の形状を逆L字形状ではなく、直線形状してもよい。このようにすることにより、メンブレンシートを型から抜き出す作業が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】この発明の実施例1である配線部材の固定構造を示す断面図である。
【図2】同配線部材の固定構造の他の状態を示す断面図である。
【図3】この発明の実施例2である配線部材の固定構造を示す断面図である。
【図4】同配線部材の固定構造の他の状態を示す断面図である。
【図5】従来の配線部材の固定構造の例を示す断面図である。
【図6】従来の電子機器の操作パネル内部の部材の位置関係を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0026】
1 操作パネル、1a 係合部、1b 傾斜面、1c 段差
2 プッシュスイッチ作動用つまみ、2a 押圧部、2b リブ 2c 凹み2d 軸 3 メンブレンシート、3a 帯状凸部、3b 穴、3c 柱状凸部、3d 膨大部
3e 椀形形状部、3f 凸部
4 プリント基板
5 配線部材
6 操作パネル、6d ボス、6e 柱状凸部、6f 膨大部
7 メンブレンシート、7a 帯状凸部、7b 穴、
8 操作パネル
9 メンブレンシート
10 配線固定板
11 ビス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メンブレンシートに、先端に穴を有する帯状凸部と先端に膨大部を有する柱状凸部とを互いに近接する位置に形成し、前記帯状凸部を弾性変形させて前記穴を前記膨大部を通過させて膨大部に係止された状態とし、この状態で前記柱状凸部と帯状凸部の間に配置された配線部材の一部を前記帯状凸部が保持するように構成した配線部材の固定構造。
【請求項2】
メンブレンシートに、先端に穴を有する帯状凸部を形成し、前記帯状凸部と近接位置に配置されるように操作パネルに先端に膨大部を有する柱状凸部を形成し、前記帯状凸部を弾性変形させて前記穴を前記膨大部を通過させて膨大部に係止された状態とし、この状態で前記柱状凸部と帯状凸部の間に配置された配線部材の一部を前記帯状凸部が保持するように構成した配線部材の固定構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−27828(P2010−27828A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−186792(P2008−186792)
【出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【出願人】(000003595)株式会社ケンウッド (1,981)
【Fターム(参考)】