説明

配置形態によって決定される機能性を有する被覆ステント及び該被覆ステントを作製する方法

本発明は、例示的実施形態において、シリコーンステントと金属ステントの両方の優れた特性の多くを組合せ、その一方、望ましくない特性を排除するステントを提供するものである。特に、本発明による主な目的は、ステントのある領域の相対的な硬度/軟度をステントの他の領域における相対的な硬度/軟度と異ならせて、更なる患者の快適さと圧縮力に対する耐性をもたらすことができる一群のステントを提供することにある。例示的実施形態は、目標とする管腔と直接接触する被覆表面積の大きさを制限するようにして被覆されるステントを提供するものである。特に、ステントの骨格の外面が被膜の外面から持上げられるようにして内側に被覆される被覆ステントが、提供されている。このため、繊毛作用は、部分的にしか制限されず、粘膜繊毛による除去作用は、著しく悪影響を受けることがない。さらに、被膜自体が、細菌、菌類、又は他の微生物が、具体的には被膜、一般的にはステントを侵すことがないように、抗付着特性を有している。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、管腔閉塞の防止を対象とする医療装置に関し、さらに詳細には、機能性が骨格とそれに付随する間隙の配置形態の変化によって決定されるステント、これらのステントを作製するための方法、並びにこれらのステントを良性及び悪性の両方の疾患の治療に利用するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ステントは、管腔を開いて保持し、狭窄、外部圧迫、又は内部の障害物による閉塞を防ぐために管又は通路に挿入される装置である。具体的に、ステントは、通常、冠状動脈内において血管を開いて保持するのに用いられ、それらのステントは、腎臓からの排液を維持するために尿管内に挿入され、膵臓癌又は胆管癌に対して胆管に挿入され、あるいは狭窄又は癌に対して食道に挿入されることも多い。血管並びに血管以外の管腔へのステント留置は、著しく発展してきたが、残念ながら、患者の解剖学的構造の種々の部分に適したステントを作製する技術に関しては、大きな制限が依然として残っている。
【0003】
歴史的に、変動する特性を有するステントを提供するために、当該ステントは、望まれる各特性に対して少なくとも1つの材料を対応させるようにして、多数の材料から作製されねばならなかった。その結果、これらのステントの多くは、例えば、異なる形状記憶を有する2つ以上の金属から織られている。しかし、残念ながら、編組みステントは、時期尚早な老朽化を受け易い。さらに、多数の材料種を単一ステントに含ませるので、ステントの表面領域に沿って、一貫しない特性が生じることがある。これは、ステントが1つの理由又は他の理由からすでに閉塞されている血管又は血管以外の管腔に配置されるとき、特に望ましくない。ステントは、いくつかの領域ではより剛性であると共に、他の領域ではより可撓性であることが必要である。
【0004】
加えて、医療装置の企業は、骨格の上皮形成を防ぐために、ステントを少なくとも部分的に覆う必要性を把握している。しかし、殆どの被覆ステントは、特に狭窄組織の近くで皺寄せされ易いエラストマー製の被膜を有している。これは、付加的な組織の肉芽形成をもたらすことがある。
【0005】
加えて、ステントの端部は、そのステントを適所に留置するのを補助する肉芽組織の形成を促すために、露出される傾向にある。金属ステントの場合、金属と組織の直接的な接触は、組織の肉芽形成を促進するが、ガルバニ電流も、望ましくない副産物として生成される。このような直流は、組織の肉芽形成に間接的な影響を及ぼし、流体の流れ機構に直接的な影響を及ぼすことになる。
【0006】
さらに、多くの医療装置の企業は、肺、胃腸、及び末梢血管の徴候部分に対して、不十分にしか適合しない心臓血管用ステントを用いるようにしているので、管腔における解剖学的に異なる個所の多くは、ステント設計において考慮されていない。例えば、心臓血管用ステントの心臓血管の脈動とそれに付随する半径方向力の要件は、反復される咳き込み中の気管のような緊密に収縮する管腔の要件とは、大きく異なっている。前者用に開発されたステントが後者に適用されると、そのステントは、厳しい条件下では役に立たなくなり、その弾性、従って、気道の開通性を確保する能力を喪失する傾向にある。血管以外の管腔も、流体と粒状物質の除去を容易にするために繊毛上皮を有する傾向にある。一般的な原理として、もし被覆ステントが繊毛のある管腔用に特別に設計されていないなら、外側の被膜が繊毛を損傷し、人体の自然な除去機能を阻むことになるだろう。さらに、被膜は、それ自体、通常、優先的に親水性ポリマーから作製され、これによって、粘液の生成及び/又は流体の停滞をもたらすことがある。管腔を通る流体又は材料の停滞は、ステント再狭窄又は微生物感染のような付加的な合併症を引き起こす可能性がある。
【0007】
従って、単一の基材から、網組みではなく、型抜きされる一方、その表面領域に沿って変動する特性を有し得る治療ステントが、現在、必要とされている。さらに、相対的な硬度、軟度、可撓性、剛性、及び半径方向力が、材料の考慮事項というよりも配置形態の考慮事項の関数として、変更され得るような治療ステントが必要とされている。特に、多数の区域に分割され、1つの区域に所定の特性を有し、あるいは隣接区域に著しく異なる特性を有することも可能であり、一般的には解剖学的な管腔、具体的には個別の患者の特定の管腔の輪郭形状に適合され得るステントが必要とされている。さらに、目標とする管腔と直接接触する被覆表面積の大きさを制限するように被覆されるステントが必要とされている。特に、好ましくは、ステントの骨格の外面が被膜の外面から持上げられるように、内側に被覆される被覆ステントが必要とされている。このために、繊毛の機能は、部分的にしか制限されず、粘膜繊毛の除去作用は、著しく悪影響を受けることがない。また、被膜であって、それ自体が抗付着性を有するか、又は抗付着剤と複合体を生成し、これによって、細菌、菌類、又は他の微生物が、具体的には被膜、一般的にはステントを侵さないようにする被膜も、必要とされている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の主な目的は、シリコーンステント及び金属ステントの両方の優れた特性の多くを組み合わせ、その一方、望ましくない特性を排除する、本発明の例示的実施形態によるステントを提供することにある。特に、本発明による好ましい実施形態の目的は、容易に設置されるステントであって、さらに代替的実施形態において、取外し可能であるステントを提供することにある。さらに、本発明のこの実施形態によるステントは、材料の感染を引き起こすことがなく、感染を低減させることが可能であるとよい。従って、本発明による好ましい実施形態の主な目的は、永久的及び一時的な使用の両方に適すると共に、挿入、再位置決め、及び取外しが容易であるプロテーゼを提供することにある。
【0009】
本発明の好ましい実施形態の主な目的は、好ましくは、単一材料から型抜きされるとよく、半径方向に圧縮されたときに、その軸方向の作用長さを維持することができるステントを提供することにある。この目的を達するために、このステントは、管腔組織を悪化させることがあり得る縫目を有していない。特に、本発明によるステントは、そのステントの外形と共に、その間隙を成形する工具を用いて、形成されている。
【0010】
本発明の例示的実施形態のさらに他の目的は、良性及び悪性の疾患の治療に適応され、かつ医師が悪性の閉塞を治療する手法を改良することができるステントを提供することにある。
【0011】
本発明のさらに他の目的は、経済的でかつ日常的な目的に適するステント及びそのステントを設置する方法を提供することにある。さらに、このステントは、最小限の体内移行しか呈せず、最小限の組織の肉芽しか生じることがなく、展開後に短縮せず、粘膜繊毛による除去作用についても、問題にならないだろう。
【0012】
本発明による例示的実施形態のさらに他の目的は、優れた内径/外径比、優れた動的拡張を伴う半径方向力を有すると共に、悪性及び良性の疾患を有する小児及び成人の患者に用いられるのに適するプロテーゼを提供することにある。
【0013】
本発明による例示的ステントの主な目的は、ステントのある領域の相対的な硬度/軟度をステントの他の領域における相対的な硬度/軟度と異ならせて、更なる患者の快適さと半径方向力に対する耐性をもたらすことができる一群のステントを提供することにある。
【0014】
例示的実施形態による更なる目的は、可撓性、耐久性、及び/又は適切な設置を促進する新規の間隙構成を有する一群のステントを提供することにある。
【0015】
本発明の好ましい実施形態のさらに他の目的は、とりわけ、ステントの取外しのために、ステントの終端の近くに複数の開口も画成する上記の利点を有する自己拡張性ステントを提供することにある。
【0016】
本発明の好ましい実施形態による更なる目的は、移植部位における繊毛の破損を可能な限り抑制するプロテーゼを提供することにある。この及び他の目的を促進するために、好ましいプロテーゼは、患者の管腔と接触する支柱の表面が被膜の表面の上方に持上げられ、これにより、繊毛が移動し、繊毛を有する上皮の自由な流動作用を可能にするように、ポリウレタンにて内側が被覆されるようになっている。
【0017】
本発明の更なる他の目的、特徴、及び利点は、添付の図面と関連させた以下の詳細な説明から明らかになるだろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明によるステントの好ましい実施形態は、ステントの上皮形成を防ぎ、また時期尚早な伸張と短縮を生じることなく、所望の移植箇所に係合することができるステントを提供するものである。また、このステントは、半径方向の圧縮を受ける間、その軸方向の長さを保持するようになっている。
【0019】
このステントは、好ましくは、本質的にNi、C、Co、Cu、Cr、H、Fe、Nb、O、Ti及びそれらの組合せからなる群から選択される複合材料から、形成されている。この複合材料は、一般的に、圧縮管に成形され、ステントは、この管からエッチングされ、ステントに所望の外形を与える適切な成形装置によって成形されている。合成環(synthetic collar)技術及び生体外評価技術の両方が、作用力を角度の付いた構造によって吸収される変形の仕事に変換し、これによって、過剰な骨格応力と時期尚早な材料疲労、及び早められる老朽化を防ぐ本発明によるステントの著しい能力が、判明することになる。
【0020】
ステント技術分野における当業者であれば、もし本出願が知らされたなら、本発明に適合するステントを他の方法によって製造することも可能であろうが、このようなステントを作製する好ましい方法は、以下の通りである。前述したように、複合材料が選択され、そこから、素材が形成される。この素材は、好ましくは、レーザエッチングされ、このエッチング加工は、通常、可視記録顕微鏡を用いて、精度が検証される。支柱厚み、セグメント角度、区域配置などを確実にするために、寸法測定が行なわれる。さらに、ステントは、好ましくは、ステントの外側寸法の所望の輪郭を実質的に有する成形工具によって、成形されている。
【0021】
ステントが特定の管腔の寸法に合せて賦形される場合、ステント成形の前に、目標となる管腔の光学的写真撮像及び/又は光学的ビデオ撮像がなされるとよい。次いで、ステントの対応する区域とコネクタ領域の配置形態が、その目標となる管腔の必要条件に従って、エッチングされ、かつ成形されるとよい。例えば、もしステントが、実質的にD字状の管腔と、これに加えて、端部区域よりも軟質であることが必要とされる中間区域を有する気管用に設計されるのであれば、ステントは、それらの仕様に合わせて、設計されることが可能であろう。図1を特に参照すれば、ステントの異なるゾーンに異なる特性を与えるために、角度α、β、δ、ε、及びγが変更されるとよいことが、分かるだろう。具体的に、もし特定の患者の気管の輪郭形状が光学的に取得され、適切な寸法が与えられるなら、その患者に特有のプロテーゼが設計されることが可能であろう。これらの技術は、血管以外の他の管腔に適用され得るが、患者の特定の輪郭形状が遺伝や生活様式のような種々の要因の関数である血管の用途に極めて適している。
【0022】
異なる形状記憶材料を用いてステントの領域を変化させるのと違って、本発明によるステントは、無数の特性の組合せを得ることができることに、注目すべきである。何故なら、ステント技術におけるエッチング及び成形段階中又は成形後処理及び研摩工程中に、角度、セグメント長さ、及びセグメント厚みを変化させることによって、多数の区域及び1つの区域内の多数のセグメントを変更させることができるからである。さらに、区域間のコネクタの配置形態を変更することにより、更なる機能が達成されてもよい。
【0023】
本発明による例示的ステント10が、図1〜図3に示されている。これらの図は、好ましい間隙の配置形態を示している。図示されていないが、これらの好ましい例に対する許容され得る代替例である幅広い種類の間隙の配置形態、すなわち、2、3の例を挙げれば、U、V、W、Z、S及びX字状の配置形態もある。
【0024】
また、ステント10は、記憶金属から形成され、好ましくは、そこにレーザエッチングされる独自の幾何学的に配置された間隙を有している。しかし、等価ではなくても、単一体のステントに間隙を形成する他の従来の手法が検討され、用いられてもよく、それらの手法は、当業者の一連の技術内に含まれるだろう。
【0025】
しかし、このことは、間隙の配置形態の変更がステントの機能性に影響を与えるという知識が、現在、当技術分野において知られていることを意味しない。これは、どのように強調しても、強調しすぎることはない。それどころか、本発明者らは、間隙の配置形態、幅、及び長さと、捩れ応力及び半径方向力に対する相対的な耐性との間の相関関係を見出した。実際、ステント10は、この管腔装置の長軸に対して直角に延在する周方向の帯域を有している、といえる。これらの帯域は、一般的に、区域(zone)と呼ばれる。コネクタ50が、これらの帯域を互いに接続している。コネクタ50は、ステントの機能性を調整するための付加的な手段である。具体的に、コネクタ50は、実質的にU字状の部材を画成している。しかし、コネクタ50は、2、3の例を挙げれば、U、V、W、Z、S及びX字状のような他の配置形態を画成することも可能である。図1に特に示されるように、δ、ε、及びγは、形状が異なり、このステントの対応する領域は、機能が異なっている。また、図1から、医師が取外しを容易にするためにステントに縫合糸を通すのを可能にする少なくとも1つ、好ましくは、複数の糸穴ψも、分かるだろう。これらの糸穴は、好ましくは、約200μmから300μmの間であるが、目標とする部位の必要性に適合するように、これらの値より小さくても、大きくてもよい。好ましい縫合糸が4−0の場合、好ましい糸穴の大きさは、約350μmである。この医療器具は、予め縫合糸が通されていてもよいし、又はユーザが移植後に縫合糸を供給してもよい。
【0026】
図2に特に示されるような標準的な配置において、実質的にU字状のコネクタは、好ましくは、2つの脚部材52,56と交差部材54とを備え、この交差部材54は、脚部材52,56と接続し、それらに対して、好ましくは、90 °の角度で直交して延在している。本発明から実質的に逸脱することなく、代替的な角度が設けられてもよいことに留意しなければならない。本発明者らは、もし交差部材54及び/又は脚部材52,56の長さ、及び/又は交差部材54と脚部材52,56が交差する角度γを変更すれば、ステント10の相対的な硬度/軟度、半径方向力、及び/又は可撓性が変更され得ることを、見出した。角度γは、90°よりも小さい種々の鋭角又は90°よりも大きい種々の鈍角に変更されてもよい。この漸増する変化は、それに対応して、ステント10の一部の特性を変化させることになる。その結果、ステント10の異なる区域に異なる剛性が与えられ、患者の快適さを改良し、また、例えば、気道ステントの場合、管腔の開通性を容易にすることが可能となる。さらに、種々の解剖学的管腔は、異なる程度のステント剛性を必要とすることがある。その結果、本発明によるステント10は、その医療器具から種々のレベルの構造的な支持を必要とする患者の解剖学的構造内の種々の管腔に対して適切な輪郭を描くように、厳格な仕様に合わせて、作製されるようにすることが可能となる。
【0027】
図3を参照すると、本発明によるステントによって与えられる改良された能力が示されている。コネクタ50とそのコネクタ50が介在する区域との間の距離を調整することによって、ステントが歪みに反応する様式が変更され得るようになっている。非制限的な例によれば、もしコネクタ40が1つの区域に他の区域よりも近接して配置されるなら、ステントは、より少なく撓み、より大きい半径方向力に耐えることができるだろう。あるいは、もしコネクタが区域間で等距離に配置されるなら、ステントは、より大きく撓み、より小さい半径方向力にしか耐えることができないだろう。これらの差は、中立的に位置するコネクタ40に対する相対的な差であることに、留意されたい。この挙動は、距離の関数であり、その結果、区域の中間点と各区域の先端との間のコネクタの配置に対して、連続的に変化することになる。さらに、区域を互いに接続するコネクタ40の数を変更することによって、機能性に影響を及ぼすことが可能である。具体的に、区域を接続するコネクタの数が少なくなるほど、ステントは、より大きい捩り可撓性を有することになる。一般的に、コネクタの数を多くした場合、逆の結果が成立するだろう。
【0028】
コネクタ50と同様の目的を果たすコネクタ40は、脚部材42,46を所定角度δで接続する交差部材44を有している。前述したように、この新規の方法によって得られるステントの場合、形態が機能をもたらすので、角度α、β、δ、及びγの大きさを変更することによって、ステント特性が変更される可能性がある。さらに、前述した脚の全て又は個々の脚の長さを個別に変更することによって、付加的なステントの特性が得られる。このシステムの長所は、所望の特性がステントを成形する前に決定され、一定の成形パラメータ内に保つことによって、ステントは、所望の機能性が結果的に得られることを確実にしながら、成形、襞寄せ、送達、及び展開され得ることにある。これは、血管及び血管以外の管腔の両方が独自の輪郭を有するという事実に照らした場合に、重要である。結果的に、本発明による方法及び装置は、一般的には解剖学的な組織、具体的には特定の患者の解剖学的構造に合せて、プロテーゼを調整する能力をもたらすことになる。
【0029】
U字状コネクタ40,50は、それぞれ、交差部材と少なくとも2つの脚部材とを有している。本発明者らは、もし脚部材の長さを増減し、及び/又は交差部材の長さを増減し、及び/又は交差部材と脚部材が交差する角度を変更すれば、ステントの機能性に影響を及ぼすことを見出した。具体的に、脚部材の長さが短くなるほど、ステントのその部分における有効な可撓性が小さくなる。特に図3に注目すると、単なる例示にすぎないが、もしステント10の捩り可撓性の量を減少させたい場合、脚42,46が図示されているよりも長くなり、脚42と46及び交差部材44によって形成される角度δがそれぞれ90°よりもわずかに大きくするように、コネクタ40を変更しなければならないだろう。あるいは、交差部材44の長さは、同様に、ステントの機能性に影響を及ぼすことが可能である。ステントは、交差部材44を短くすることによって、より剛性にされてもよく、又は交差部材44を長くすることによって、より可撓性にされてもよい。脚の長さ、交差部材の長さ、角度の変更、及びコネクタの形状と数の組合せによって、患者の解剖学的構造内の特定の管腔に適合する能力が、ステントに与えられることに、留意すべきである。その結果、一般的には特定の解剖学的管腔、具体的には個々の患者の解剖学的管腔に合わせて調整され得る形状に適応する医療プロテーゼが得られる。
【0030】
好ましい実施形態において、種々のステント機能性を達成するように、間隙の配置形態の変更とU字状の接続部材の調整がなされている。ステント自体の捩れ性を伴うステント骨格又は間隙素地の剛性は、主に、これらの変更の関数である。例示的実施形態において、ステントの相対的な可撓性は、撓みと捩れ性の大きさに基づいて、軟質、中間、又は硬質と評価され得るものである。ステントの捩れ性及び撓みが小さいと、そのステントは、より硬質と評価されることになる。
【0031】
比較的大きな捩れ性と半径方向の可撓性とを有する本発明による例示的ステントは、軟質と評価されるだろう。軟質と評価された例示的ステントは、圧縮された状態(すなわち、レーザエッチングされる3mmチューブに収縮された状態)において、U字状コネクタ間の距離が約4.5μmである。さらに、交差部材の長さは、好ましくは、約1.0μmである。脚部材の長さは、好ましくは、約1.5μmである。加えて、脚部材は、ステント骨格の残りに装着される足をさらに備えていてもよい。この足は、約0.25μmの標準長さから調整され、ステントの特性をさらに調整することが可能となっている。加えて、変動に対して同様の能力を有する実質的に矩形の部材が、U字状のコネクタ内に組み込まれる。実質的に矩形の部材の寸法を変更させる変動因子とその結果は、脚長さの寸法的な変更によって明らかにされたものと同様である。
【0032】
一例として、どのようにも制限すると解釈されるべきではないが、軟度指数又は相対的な可撓性は、前述した種々の長さを延ばすことによって、増大させることが可能である。例えば、U字状コネクタの脚と交差部材の長さを延ばすことによって、可撓性が増大することになる。しかし、好ましいステントの実施形態において、U字部材間の距離と間隙間の距離に関して、長さと軟度との間に逆の相関関係が存在している。この間隙寸法の帰結としての相対的な軟度/硬度の指数は、本発明の好ましい実施形態の新規の態様である。経験に基づく概括的な法則として、鋭角にすると共に、脚長さを長くするほど、可撓性が大きくなる。逆に、脚長さを短くし、鈍角の大きさを大きくするほど、剛性が大きくなる。非制限的な例によれば、90°よりも大きい角度で交差部材から離れる短い脚を有するU字状コネクタは、90°よりも小さい角度で交差部材から離れる長い脚を有するU字状コネクタと比較して、剛性が極めて高く、捩れ応力に対する耐性が極めて大きい。
【0033】
長さと間隔の差異に加えて、間隙が、まさにそれら自体の性質によって、ステントに新規の機能性を与える種々の形状を画成してもよい。しかし、機能性の変化は、形状自体の関数というよりも、むしろ種々の形状の寸法的な差異の関数である。従って、前述の段落で述べた寸法的な差異が、変動する間隙の配置形態によってステントに与えられる機能性を確定することに留意することが重要である。当業者が、本発明を知らされた後、一部の寸法パラメータを一定に保持することによって、一部の機能性の基準を満足させるように、多数の間隙の配置形態を考えることが可能であるのは、この理由による。
【0034】
また、図1〜図3は、本発明による選択的実施形態において設けられる被膜を示している。被膜100は、好ましくは、ステント上に堆積され、薄膜を形成することができるポリウレタンのような安定したポリマー材料から構成されている。この薄膜は、好ましくは、ステントに焼付けられるとき、ポリマー内の疎水性の部分が優先的に外方に向けられ、親水性の部分が優先的に内方に向けられるように、層を形成している。相対的な水親和性は、ユーザによって望まれる特性に依存して、変更されてもよいことに留意すべきである。例えば、移植片が粘液を収集する意図で呼吸システムに配置される場合、被膜100は、外面に優先的に疎水性を有するか又は部分的に親水性を有すると、より適切であろう。さらに、被膜100の水親和性を調整することによって、表面自由エネルギーや電荷密度のような物理化学パラメータが、一般的には生物膜の生成、及び微生物の付着及び細胞外ポリマーによって媒介される配位子結合現象に対して、実質的なバリアをもたらすことになる。しかし、潤滑性並びに微生物に対する付加的なバリアをもたらすために、当技術分野において知られている付加的な抗付着剤が施されてもよい。例えば、本発明による好ましい被膜100は、表面を常に湿らせ、粘液停滞並びに微生物の付着を防ぐのを確実にするために、親水性かつ吸湿性であってもよい。
【0035】
所望の被膜表面の特性とは無関係に、本発明による好ましいステントは、図3に印200として示されるように、ステントの骨格が被膜100の表面の上方に約1Åから106Åだけ持上げられるように、ステントの内腔が内側から被覆されている。このような構造の主な機能の1つは、ステント支柱間の繊毛の運動を可能にすることによって、繊毛の作用を促進することにある。
【0036】
ステントは、好ましくは、ステントを設ける段階と、最初にそのステントをポリマー材料によって噴霧し、支柱を被覆する段階と、ステントの内側を被覆する段階とを含む多段階プロセスによって、被覆される。これらの段階は、逆にされてもよいが、噴霧する段階の後に内側を被覆する段階が続くと、好ましい。特に、ステントは、そのステントの内径がポリマー材料によって被覆され、非多孔性被膜100を形成するので、ステントの形状を維持するために、中空の型内に配置される。被膜100は、シートの形態又は付加的な噴霧によって設けられ得るが、好ましい実施形態は、シートの形態である。シートは、一般的に、ポリマーの側鎖の適切な配向を容易にし、所望の部分(親水性及び/又は疎水性)が管腔に面するのを確実にするので、好ましい。ポリマーの層がステントの内径内に導入されると、温度が調整されたバルーン又は他の装置が、ステントの内径とバルーンとの間にポリマーの層を挟んで、移植される。バルーンが、膨張され、約200°Fから400°Fの温度に加熱され、ポリマーをステントに焼付ける。種々のブランドポリウレタン(例えば、カーディオテック・インターナショナル(Cardiotech International)によって製造されるクロノフレックス(Cronoflex(登録商標))のような好ましいポリマーが、このような用途に適しているが、他のポリマーが、用いられてもよい。
【0037】
本発明は、その精神又は本質的な特性から逸脱することなく、他の特定の形態で実施されてもよい。ここに記載した実施形態は、あらゆる点において、例示にすぎず、制限的ではないと、考えられるべきである。従って、本発明の範囲は、前述の説明よりは、むしろ、添付の請求項の範囲によって示される。請求項の等価物の意味及び範囲内に含まれる変更は、全て、それらの請求項の範囲内に包含されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の好ましい実施形態による被膜を有するステントの複数の区域を示す偏光顕微鏡の画像である。
【図2】図1の偏光顕微鏡の画像の代替的斜視図である。
【図3】図1に示される例示的区域の間隙の拡大斜視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の解剖学的構造の一部内に配置される医療器具において、
骨格であって、前記骨格は、実質的に円筒状の部材を画成するように構成され、前記円筒部材は、遠位端と近位端とを有し、それらの間を長手方向に延在し、前記器具の長手方向の延在部に沿って貫通する内腔を形成し、前記骨格は、角度の付いた幾何学的パターンを有する支柱を備える内面と外面とを有し、前記角度は、前記器具が目標とする管腔の輪郭形状と一致し、圧力が前記器具の前記長手方向の延在部の種々の点に沿って加えられたとき、前記器具が望ましくなく短縮又は伸張しないように、前記医療器具の相対的な可撓性を決定するような骨格、
を備えていることを特徴とする医療器具。
【請求項2】
前記骨格は、前記支柱及び前記支柱間の領域の両方の少なくとも一部が被覆されるように、前記骨格に結合される被膜をさらに備え、前記被膜は、前記医療器具が前記患者の解剖学的構造の所望の部分に設置されたとき、前記医療器具に上皮が形成されるのを防ぐのに十分な厚みを有していることを特徴とする、請求項1に記載の医療器具。
【請求項3】
前記被膜は、実質的に疎水性であることを特徴とする、請求項2に記載の医療器具。
【請求項4】
前記被膜は、実質的に親水性であることを特徴とする、請求項2に記載の医療器具。
【請求項5】
前記被膜は、実質的に吸湿性であることを特徴とする、請求項3に記載の医療器具。
【請求項6】
前記被膜は、実質的に吸湿性であることを特徴とする、請求項4に記載の医療器具。
【請求項7】
少なくとも1つの支柱は、そこを貫通する開口(φ)を画成していることを特徴とする、請求項1に記載の医療器具。
【請求項8】
前記少なくとも1つの開口は、縫合糸が通るのに十分な直径の糸穴を画成していることを特徴とする、請求項7に記載の医療器具。
【請求項9】
前記糸穴の直径は、少なくとも300μmであることを特徴とする、請求項8に記載の医療器具。
【請求項10】
前記被膜は、前記医療器具の屈曲又は半径方向の拡張を妨げないようになっていることを特徴とする、請求項2に記載の医療器具。
【請求項11】
前記被膜は、前記骨格の内面から外側に向かって前記医療器具に結合されていることを特徴とする、請求項10に記載の医療器具。
【請求項12】
前記被膜は、前記骨格の外面から内側に向かって前記医療器具に結合されていることを特徴とする、請求項11に記載の医療器具。
【請求項13】
前記被膜は、前記骨格の外面から内側に向かって前記医療器具に結合されていることを特徴とする、請求項2に記載の医療器具。
【請求項14】
前記骨格の外面の前記被覆された支柱は、前記医療器具の前記支柱間の前記被覆された領域に対して持ち上がっていることを特徴とする、請求項13に記載の医療器具。
【請求項15】
前記被覆された支柱は、前記医療器具の前記支柱間の前記被覆された領域に対して、1Åから106Åだけ、持ち上がっていることを特徴とする、請求項14に記載の医療器具。
【請求項16】
前記被覆された支柱が前記支柱間の前記被覆された領域に対して持ち上げられる相対的な大きさは、移植部位における繊毛作用を可能にするのに十分であることを特徴とする、請求項14に記載の医療器具。
【請求項17】
前記骨格の配置形態の寸法は、前記医療器具の捩じれを決定するものであることを特徴とする、請求項1に記載の医療器具。
【請求項18】
前記骨格は、記憶可能合金から形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の医療器具。
【請求項19】
前記骨格は、電解研摩されていることを特徴とする、請求項18に記載の医療器具。
【請求項20】
前記骨格の長手方向の広がりに沿って、貫通する開口を画成する複数のフランジをさらに備えていることを特徴とする、請求項1に記載の医療器具。
【請求項21】
前記幾何学的なパターンの部分に結合されるコネクタをさらに備え、前記コネクタは、交差部材と前記交差部材から延在する複数の脚部材とを備えていることを特徴とする、請求項1に記載の医療器具。
【請求項22】
前記コネクタは、その脚から延在する矩形の戻り止めをさらに備えていることを特徴とする、請求項21に記載の医療器具。
【請求項24】
前記脚部材の長さと、前記脚が前記交差部材から延在する角度の大きさが、前記医療器具の相対的な可撓性を決定していることを特徴とする、請求項21に記載の医療器具。
【請求項25】
前記脚部材が前記交差部材から延在する角度は、90°よりも大きいことを特徴とする、請求項23に記載の医療器具。
【請求項26】
比較的剛性であることを特徴とする、請求項25に記載の医療器具。
【請求項27】
前記脚部材が前記交差部材から延在する角度は、90°よりも小さいことを特徴とする、請求項25に記載の医療器具。
【請求項28】
比較的可撓性であることを特徴とする、請求項26に記載の医療器具。
【請求項29】
付加的な遠位端をさらに備え、前記医療器具は、実質的にY字状をなしていることを特徴とする、請求項1に記載の医療器具。
【請求項30】
少なくとも1つの支柱は、そこを貫通する開口を画成していることを特徴とする、請求項29に記載の医療器具。
【請求項31】
前記少なくとも1つの開口は、縫合糸が通るのに十分な直径の糸穴を画成していることを特徴とする、請求項30に記載の医療器具。
【請求項32】
前記糸穴の直径は、少なくとも300μmであることを特徴とする、請求項31に記載の医療器具。
【請求項33】
前記器具の前記長手方向の延在部に沿って、前記骨格は、幾何学的なパターンを形成していることを特徴とする、請求項29に記載の医療器具。
【請求項34】
前記骨格は、前記骨格に結合される被膜をさらに備え、前記被膜は、前記医療器具が前記患者の解剖学的構造の所望の部分に設置されたとき、前記医療器具に上皮が形成されるのを防ぐのに十分な厚みを有していることを特徴とする、請求項33に記載の医療器具。
【請求項35】
前記骨格の配置形態の寸法は、前記医療器具の捩じれを決定するものであることを特徴とする、請求項34に記載の医療器具。
【請求項36】
前記骨格は、記憶可能合金から形成されていることを特徴とする、請求項35に記載の医療器具。
【請求項37】
前記骨格は、電解研摩されていることを特徴とする、請求項35に記載の医療器具。
【請求項38】
前記骨格の遠位端と近位端の近くに、貫通する開口を画成する複数のフランジをさらに備えていることを特徴とする、請求項34に記載の医療器具。
【請求項39】
前記幾何学的なパターンの部分に結合されるコネクタ部材をさらに備え、前記コネクタは、交差部材と前記交差部材から延在する複数の部材とを備えていることを特徴とする、請求項29に記載の医療器具。
【請求項40】
前記コネクタは、その脚から延在する矩形の戻り止めをさらに備えていることを特徴とする、請求項38に記載の医療器具。
【請求項41】
前記脚部材の長さと、前記脚が前記交差部材から延在する角度の大きさは、前記医療器具の相対的な可撓性に積極的に寄与していることを特徴とする、請求項39に記載の医療器具。
【請求項42】
前記脚部材が前記交差部材から延在する角度は、90°よりも大きいことを特徴とする、請求項41に記載の医療器具。
【請求項43】
比較的剛性であることを特徴とする、請求項42に記載の医療器具。
【請求項44】
前記脚部材が前記交差部材から延在する角度は、90°よりも小さいことを特徴とする、請求項41に記載の医療器具。
【請求項45】
比較的可撓性であることを特徴とする、請求項44に記載の医療器具。
【請求項46】
医療器具を被覆する方法において、
内径と外径を有する型を設けるステップと、
骨格を備える医療器具を設けるステップであって、前記骨格は、実質的に円筒状の部材を画成するように構成され、前記円筒部材は、遠位端と近位端とを有し、それらの間を長手方向に延在し、前記器具の長手方向の延在部に沿って貫通する内腔を形成し、前記骨格は、角度の付いた幾何学的パターンを有する支柱を備える内面と外面とを有し、前記角度は、前記器具が目標とする管腔の輪郭形状と一致し、圧力が前記器具の前記長手方向の延在部の種々の点に沿って加えられたとき、前記器具が望ましくなく短縮又は伸張しないように、前記医療器具の相対的な可撓性を決定するようなステップと、
前記医療器具を前記型の前記内径内に挿入するステップと、
ポリマーを前記医療器具の内面に塗布するステップと、
前記ポリマーに熱を加えることによって、前記ポリマーを前記ステントに焼付けるステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項47】
ポリマーを前記医療器具の外面に塗布するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
付加的な遠位端をさらに備え、前記医療器具は、実質的にY字状をなすことを特徴とする、請求項46に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−506518(P2007−506518A)
【公表日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−528181(P2006−528181)
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【国際出願番号】PCT/US2004/031304
【国際公開番号】WO2005/030086
【国際公開日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【出願人】(505156226)アルヴィオラス,インコーポレイテッド (15)
【Fターム(参考)】