説明

配送システム

生物活性物質に対する配送システムを提供する。特に、生物活性化合物、所望の風味、配送能力を有するチョコレート製品を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は従来の媒体中に均一に分散することが困難である生物活性粉末の配送法、および油脂系配送システムにおける液体(水溶液を含む)の配送法を含む生物活性物質に対する配送システムに関する。
【0002】
本発明はまた、望ましい風味と官能性の他、均一に分布した生物活性物質成分を有するチョコレート製品を提供する。
【背景技術】
【0003】
文書、行動または知識項目が参照されるか議論される本明細書で、この参照および議論は文書、行動または知識項目またはその任意の組み合わせが優先日付である、一般に入手可能である、公知の内容である、一般常識の一部である、または本明細書が係わるいかなる問題を解決する試みにも関連することが公知であることを承認するものではない。
【0004】
経口投与の後に臨床的に妥当な血中濃度を与える配合の指定は、薬物分子の開発および商品化の主要な里程標である。
【0005】
経口ルートは胃酸に耐え、酵素の攻撃に耐性があり、消化管(GI)膜を通って吸収されるこれらの薬物の最も一般的で便利な薬物投与ルートである。薬物を経口投与する場合、薬物が血流中へ吸収され、所望に薬学的効果を発揮するために使用される前に、複雑な一連の出来事が起こらなければならない、配送システムからの放出、消化管腔内での溶解および腸管粘膜を通る浸透を決めるために重要な役割を果たすので、薬物の化学的性質および配合物の性質および組成が重要なキーとなる。
【0006】
GI管の機能は食物および他の栄養物の消化と吸収である。GI管の自然のプロセスが薬物吸収に影響を及ぼす。GI管内容物のpHと酵素、食品、胆汁塩、油脂および微生物叢の存在が全て薬物吸収に影響すると思われる。殆どの薬物はGI管の内容物と身体の残りの部分とを分離する脂質膜を通る受動拡散により吸収されるが、天然起源物質に類似するある分子は特別な機構により能動的に輸送される。
【0007】
胃はGI管における吸収の主要な領域ではなく、吸収の主な場所は小腸である。胃は1日の間に劇的に容積を変え、塩酸と胃液との濃度を変えて数ミリリットルから1リットル以上の間で容積が変わる量の液体を含み得るので、胃もまた薬物吸収の点で重要である。胃の内容物の容積は、胃の中の薬物の濃度を決定する。薬物または用量形式が胃の中に滞留する時間は、吸収の多くの特徴を決定する。薬物の吸収がGI管でより少ない場合、薬物の移動速度は吸収が始まるまでの遅延を決定する。薬物が胃の環境に鋭敏である場合、鋭敏度が吸収前の分解の量を決定する。胃は液体を固体より早く空にする。胃の内容物の小腸への移送速度は、消化管内の酸、油脂、浸透圧およびアミノ酸に鋭敏な受容体の活性によって遅延し、胃から到着する物質によって刺激される。酸と油脂は胃を空にすることを遅くする。固体または液体、酸またはアルカリ、水性または油性等の用量形式の性質が胃を空にすることに影響する。
【0008】
有効な吸収に必要な競合する生理化学および臨床薬学問題のために、胃腸管は配合者に薬学的な難問を提示する。液体の形である薬物のみがGI管から吸収されるというのが一般則である。従って剤型の選択は経口薬物の作用および効能に重要である。例えば、経口投与後の水不溶性、親油性薬物の吸収は一般に低く、消化管の水性環境中への溶解度が低いためにきわめて変わり易い。
【0009】
親油性薬物、溶解度係数が高い化合物および酸性薬物も消化管脂質膜を透過し刺激を与えるので、吐き気等の副作用を減らすためには食物と一緒に取らなければならない。親油性薬物および栄養物が示す生物利用能の変化は、必要な用量を予測することができないためにそれらの医薬としての使用を制限してきた。ヒトや動物に対して用量が予測できるならば、これらの親油性栄養物および薬物の有用性は大きく増すものと思われる。
【0010】
製造中に各ユニットが同じ薬物用量を有するように、製剤中に薬物が均一に分散されることが重要である。ある種の粉末は、液体と接触すると小さな「だま」を作るので均一に分布することが困難である。これらの「だま」は混合中に破壊することが非常に困難であり、得られた製剤では薬物がパッチ状に分散する。分散を助ける乳化剤等の他の賦形剤を使用することにより、この問題を克服することが可能である。
ココアバターおよびチョコレート
様々な植物資源から得られる油脂は食物および菓子の用途に広く使用されている。これらの中にはココアバター、パーム油およびパーム核油、ココナッツ油、ピーナッツ油、大豆油、綿実油、ひまわり油、イリッペバターおよびシアバターがある。それぞれの油脂は異なったトリグリセリド構成、すなわち個々の油脂酸の存在と組み合わせの割合、およびトリグリセリドのグリセロール骨格の位置で特徴付けられる。これは一方では異なった溶融プロファイル、および異なった温度で存在する固体と液体油脂との割合となる。これらの油脂は食品に必要な機能性(主としてテクスチャー)を与え、その融点特性に応じて重要な口当たりと官能効果を示す(例えば清涼感またはワックス感)。
【0011】
30〜37℃の範囲で鋭い溶融曲線を有し、体温付近(35〜37℃)で溶ける油脂は望ましい官能性を与える。この望ましい特性はココアバターで見出され、チョコレート製品の例外的な口当たりと官能性を提供する。ココアバターの異なった分画は異なった融点を有する。しかしながら、ココアバターは全体として典型的にその油脂の60〜70%が25℃で固体であり、温度が32〜33℃に上昇すると存在する個体油脂の割合は10%未満に下がる。37〜38℃でこの数字はゼロに近い(Kattenberg、H.R.、 Manufacturing Confectioner、1981年1月)。
【0012】
ココアバターはトリグリセリドと微量成分の多成分混合液である。約85%のココアバターは丁度3種のトリグリセリド:POP、POSおよびSOSで構成され、大文字はグリセロールベースに結合した油脂酸を示す(Pはパルミチン酸、Sはステアリン酸、O はオレイン酸)。正確な組成は成長条件等の因子に依存する。
【0013】
ココアバターはまた、液体油脂を冷却するといくつかの異なった型で結晶する非常に複雑な結晶性を有する。
【0014】
− ガンマ型、融点17℃、不安定
− アルファ型、融点21〜22℃、不安定
− ベータ基本型、融点27〜29℃、不安定
− ベータ型、融点34〜35℃、安定
従って、チョコレート製造中の目的は、製品を凝固させるために冷却する前にマトリックス中のココアバターが最も安定なベータ型であることを確実にすることである。これを制御できないと、最終製品の色が悪く、油脂が不安定でテクスチャー性が悪くなる。
【0015】
ココアバターを(例えば)ミルクまたはバター油脂と組み合わせ、融点プロファイルと任意の特定の温度で存在する固体または液体油脂の割合を変化させることができる。ミルク油脂とバター油脂はココアバターと相溶性のある数少ない油脂の中の2つである。例えば、ココアバター中に対する82/28のミルク油脂ブレンド中に存在する液体油脂の割合は、純粋なココアバターで30℃で約35%にすぎないのに比べて、30℃で約75%に達し得る。20℃では純粋なココアバターには約15%の液体油脂が存在するにすぎないが、ココアバターミルク油脂ブレンドではこの価のほぼ2倍である(約30%;Chocolate, Cocoa and Confectionary ‐ Science and Technology、Bernard W. Minifie著、1999年、第4版、p85‐110、Aspen Publications)。
【0016】
生理温度におけるココアバターの溶融プロファイルにより、ココアバターを座薬の基剤とすることができる。
【0017】
ココアバター同等品(CBE)は、パームおよびシェア油、イリッペ(ボルネオ脂またはテンカワン油)、沙羅双樹油、シェア油、kokum gurgi油およびマンゴー核油である。CBEはココアバターに化学的および物理的にきわめて近く、ココアバターと比較して耐熱性が改善される等の利点を有する。
【0018】
ココアバター特有の溶融性に類似する溶融特性に変化させるために、ある油脂(例えばパーム油)は化学的に修飾される(水素添加、相互エステル化)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
しかしながら、これらの修飾油脂は溶融性、従って望ましい官能性を得ることはない。このような修飾油脂はよりワックス的であり、純ココアバターより低い官能品質を与える。
風味付きチョコレート
チョコレートに薬物を添加すると、チョコレートに不快な風味、例えば望ましくない苦味を与える。従って、粉っぽい風味をマスクするためにチョコレートに風味剤を添加する必要があることが多い。
【0020】
しかしながら、水溶性化合物を添加すると水の活性と商品寿命を乱す一方、親油性化合物を添加するとチョコレートの柔らかく、安定した官能性を妨害するので、チョコレートへ風味剤を添加するには努力を要する。チョコレートがごく少量の水溶性材料のみと相溶性であるので、ワインと風味剤をチョコレートへ添加することは困難である。わずか1〜2%の量の水がチョコレートの流動性を変化させるので、成形性、テクスチャー、口当たりおよび風味が損なわれる。
【0021】
ポリフェノールを含む市販チョコレート製品のいくつかの試みは、不快な風味のために売り上げを引き寄せることができなかった。従って、本当の風味、特にワイン風味のチョコレートを提供する、チョコレートに風味を付ける方法が必要である。
液体薬物とチョコレート
チョコレートと多くの液体との非相溶性のため、液体である薬物を配送するためにチョコレートを使用することも困難である。従って、チョコレートベースシステム中で液体薬物を配送することができる配送システムが必要になる。
【0022】
粉末を均一に分散させることのできる薬物配送法も必要である。さらに、これを達成し、溶解性プロファイルも改善し溶解度を増す、または吸収または生物利用能を損なわない薬物配送システムも非常に有益である。
【課題を解決するための手段】
【0023】
驚くべき発見は、典型的に「だま」を作るか、または乳化剤が必要であるために今まで取り扱いが困難であった生物活性粉末が、ココアバターまたはチョコレートと相溶性である類似の脂質(例えばココアバター代替品、ココアバター同等品、ココアバター置換品)を含む薬物配送システムを用いて容易に、均一に分散することである。生物活性粉末とココアバターまたは等価の脂質の組み合わせは、溶解性、溶解度、および配送、輸送、吸収、生物利用能および生物活性成分の効力等の薬物動態パラメーターを含む生理化学的性質を改善する利点を有する。また、胃の表面層に対する腐食的損傷を制限し、親油性生物活性化合物の分解をもたらす蛋白質分解、加水分解または類似の作用を低減し得る。
【0024】
さらに、生物活性物質が封入によりチョコレート製品中に取り込まれることが見出されたが、これはチョコレート製品中で液体薬物を配送するために特に有用である。
さらに、ワイン風味が改善され、均等に分布したフェノール性粉末を含むチョコレート製品を製造することも可能である。
【0025】
本発明の第1の態様によれば、生物活性粉末と、ココアバター、ココアバター同等品、ココアバター代替品、ココアバター置換品、ココアバター分画、ココアバター改良品、30〜37℃の範囲で鋭い溶融曲線を有し、35〜37℃の範囲で溶融する他の脂質、チョコレートおよびその混合液と混合し得る他の脂質でなる群より選ばれた脂質とを含み、生物活性粉末が実質的に均一に配送システム中に分布した生物活性粉末に対する薬物配送システムが提供される。
【0026】
好ましい実施態様では、薬物配送システムがより容易にチョコレート等のココア製品中に取り込まれるように、脂質はココアバター、ココアバター同等品またはココアバター分画(ステアリン酸等)である。
【0027】
第1の態様には生物活性粉末の配送法も含まれ、その方法は生物活性粉末をココアバター、ココアバター同等品、ココアバター代替品、ココアバター置換品、ココアバター分画、ココアバター改良品、30〜37℃の範囲で鋭い溶融曲線を有し、35〜37℃の範囲で溶融する他の脂質、チョコレートおよびその混合液と混合し得る他の脂質でなる群より選ばれた脂質と組み合わせる工程を有し、生物活性粉末は脂質中に実質的に均等に分布している。
【0028】
本発明の第1の態様にはさらにココアバター、ココアバター同等品、ココアバター代替品、ココアバター置換品、ココアバター分画、ココアバター改良品、30〜37℃の範囲で鋭い融点を有し、35〜37℃の範囲で溶融する他の脂質、チョコレートおよびその混合液と混合し得る他の脂質でなる群から選ばれた脂質の、生物活性粉末を含む配合物の製造における使用が含まれ、生物活性粉末は配合物中に実質的に均等に分布している。
【0029】
本明細書で用いる用語「30〜37℃の範囲の鋭い溶融曲線」は、この温度範囲でチョコレートまたはココアバターの溶融曲線と類似した溶融曲線を有する脂質を指す。
本明細書で用いる用語「実質的に均一に分布」とは、組成物の任意の部分を試験した場合、生物活性粉末の含有量が治療用製品に対して通常許容される公差の範囲で他の部分の含有量と類似しているように、できるだけ一致するような生物活性粉末の分布を指す。現時点でチョコレート製品に対する特定の基準はないが、錠剤等の治療用製品に対し独立した偏差公差の標準がある。
【0030】
当業者はどの脂質がチョコレートと混合可能であるかを知っており、従ってミルク油脂またはバター油脂等を本発明で使用することができる。これらの脂質には、チョコレート中でココアバターの結晶構造を乱さない脂質が含まれる。より多量では非相溶性であるが、これらの脂質には結晶構造を妨げずに特定の量で使用し得る脂質も含まれる。本発明で使用できない脂質は、チョコレートと非相溶性である脂質、すなわち結晶構造を乱し、「曇り(白い被覆)」を生じる脂質である。
【0031】
ある実施態様では、所望の用量を達成するために、生物活性粉末のココアバター中への分散を助けるためにミルク油脂を使用することができる。ミルク油脂はココアバターと相溶性であり、ココアバターと混合して通常の製品貯蔵温度(18〜20℃)でより多くの液体油脂を提供する。このようなミルク油脂/ココアバター混合液は、体温で口中および腸内で液体から固体プロファイルへ迅速に変わり得る能力を維持すると思われる。
【0032】
当業者は、本発明が約4〜37℃の温度範囲にわたってきわめて温度依存の溶解度を有する、または脂質系配合物中で高い溶解エントロピーを有する親油性生物活性粉末の投与に有用であることを認識し得ると思われる。このような化合物の例にはCoQ10、ビタミンAおよびその誘導体、ビタミンEおよびその誘導体、ビタミンKおよびその誘導体が含まれるが、それに限定されない。本発明の薬物配送システムの重要な特徴は、配合物中に存在する結晶化または沈殿親油性生物活性粉末が、生理温度(37℃)に少なくとも約10分間曝された後、速やかに再溶解する能力である。これにより、親油性生物活性粉末が溶解し、生理温度約37℃を有するヒトまたは動物による親油性活性粉末の吸収を改善することが保障される。従って、本発明は標準の柔らかいゲルカプセルの問題である沈殿薬物の再溶解の必要性を除くことができる。本発明が生物利用能を増加する、および/またはより変動しないようにすることが期待される。例えば、脂肪性食物と一緒に投与された場合、メベンダゾール等のある薬物の生物利用能が改善される。
【0033】
もちろん、親水性生物活性粉末は本発明の配送システム中に分散するが溶解しない。これらの親水性生物活性粉末は、投与後に胃の水性環境中に溶解する。
【0034】
本発明の第1の態様は生物活性粉末を含むココア製品を提供するが、生物活性粉末はココアバター、ココアバター同等品、ココアバター代替品、ココアバター置換品、ココアバター分画、ココアバター改良品、30〜37℃の範囲で鋭い溶融曲線を有し、35〜37℃の範囲で溶融する他の脂質、チョコレートおよびその混合液と混合し得る他の脂質でなる群より選ばれた脂質中に分散し、生物活性粉末はココア製品中に実質的に均一に分散している。
ココア製品がチョコレートであることが好ましい。
【0035】
チョコレートの油脂が多く水分が少ない環境は、脂質をチョコレート成分の残りに添加する前に、ある種の生物活性粉末が選ばれた脂質と組み合わされることを必要とする。これにより、親油性生物活性化合物が適度に可溶化され、実質的に均等に分布されることを保障する。
【0036】
本発明の第1の態様はまた、生物活性粉末を含むチョコレート製品の製造法を提供し、その方法は:
・ まず、粉末が実質的に均等に脂質中に分布するまで生物活性粉末をココアバター、ココ アバター同等品、ココアバター代替品、ココアバター置換品、ココアバター分画、ココ アバター改良品、30〜37℃の範囲で鋭い溶融曲線を有し、35〜37℃の範囲で溶 融する他の脂質、チョコレートおよびその混合液と混合し得る他の脂質で組み合わせる 工程と;
・ 脂質混合液が実質的に均一にチョコレート製品中に分散するまで、他のチョコレート成 分と組み合わせる工程と、を有する。
【0037】
チョコレート製品のポリフェノール含有量を、チョコレート成分中の糖の一部として低血糖インデックス糖および高フェノール糖を添加することにより増加することができる。このような糖の例は国際特許出願第2005/117608号に開示されている。
当業者は、ある生物活性粉末が温度感受性であり、従って混合液の温度が高すぎないことを保障するためにチョコレート製造プロセスに注意を払わなければならないことを理解し得ると思われる。例えば、あるブラックチョコレートの製造では、機械的エネルギー導入の結果、温度が60℃を超えることがある。
【0038】
本明細書で用いる用語「生物活性粉末」とは、粉末の形で入手し得る生物活性効果を有する全ての物質であり、医薬品、栄養物、栄養剤、薬草抽出物、ビタミン、植物化学物質および健康補助剤を含むがそれに限定されない。このような生物活性粉末にはブドウ皮ポリフェノール、アスピリンおよびユビキノール、レチノール、トコフェロール、メベンダゾールおよびセファクロル一水和物等の他の吸収されにくい医薬化合物が含まれるが、それに限定されない。生物活性粉末がココア、サトウキビ、サトウダイコン、ブドウ、ワインおよびその混合液起源のポリフェノールであることが好ましい。
【0039】
生物活性粉末中の化合物はその遊離型、塩、アナログ、誘導体、プロドラッグ、水和物および錯体を含む、がそれに限定されない任意の適当な型であり得る。さらに、生物活性粉末は本発明の選ばれた脂質と相互作用し得る。このような相互作用の例は錯体化、共有結合および水素結合である。この相互作用により、溶解性、溶解度および配送、輸送、吸収、生物利用能および効能を含む薬物動態パラメーターが改善される。
【0040】
本発明の第1の態様はまた、親油性生物活性粉末の生物利用能改善法を提供するが、その方法は生物活性粉末が実質的に均一に脂質中に分散するまで親油性生物活性粉末と、ココアバター、ココアバター同等品、ココアバター代替品、ココアバター置換品、ココアバター分画、ココアバター改良品、30〜37℃の範囲で鋭い溶融曲線を有し、35〜37℃の範囲で溶融する他の脂質、チョコレートおよびその混合液と混合し得る他の脂質でなる群から選ばれた脂質とを組み合わせる工程を有する。
【0041】
本発明の第1の態様はまた、生物活性粉末の分解レベルを最小にする方法を提供するが、その方法は生物活性粉末が実質的に均一に脂質中に分散するまで、生物活性粉末と、ココアバター、ココアバター同等品、ココアバター代替品、ココアバター置換品、ココアバター分画、ココアバター改良品、30〜37℃の範囲で鋭い溶融曲線を有し、35〜37℃の範囲で溶融する他の脂質、チョコレートおよびその混合液と混合し得る他の脂質でなる群から選ばれた脂質とを組み合わせて投与する工程を有する。
【0042】
本発明の第1の態様はまた、生物活性物質と胃の表面層との相互作用を最小にする方法を提供し、その方法は生物活性粉末と、ココアバター、ココアバター同等品、ココアバター代替品、ココアバター置換品、ココアバター分画、ココアバター改良品、30〜37℃の範囲で鋭い溶融曲線を有し、35〜37℃の範囲で溶融する他の脂質、チョコレートおよびその混合液と混合し得る他の脂質でなる群から選ばれた脂質とを組み合わせて投与する工程を有し、生物活性粉末は実質的に均一に脂質中に分散している。
【0043】
本発明の第2の態様によれば、ポリフェノール等の生物活性物質をココア製品中に取り込む方法が提供され、その方法は:
・ 生物活性物質を浸透液と組み合わせる工程と;
・ 生物活性液混合液を封入体中に浸透する工程と;
・ 浸透された封入体をココア製品と組み合わせる工程、とを有する。
【0044】
本発明の第2の態様はまた、生物活性物質の生物利用能を改善する方法を提供し、その方法は:
・ 生物活性物質を浸透液と組み合わせる工程と;
・ 生物活性液混合液を封入体中に浸透する工程と;
・ 浸透された封入体をココア製品と組み合わせる工程と、を有する。
【0045】
本発明の第2の態様はまた、生物活性物質の分解レベルを最小にする方法を提供し、その方法は:
・ 生物活性物質を浸透液と組み合わせる工程と;
・ 生物活性液混合液を封入体中に浸透する工程と:
・ 浸透された封入体をココア製品と組み合わせる工程、とを有する。
【0046】
本発明の第2の態様はまた、生物活性物質と胃の表面層との相互作用を最小にする方法を提供し、その方法は:
・ 生物活性物質を浸透液と組み合わせる工程と;
・ 生物活性液混合液を封入体中に浸透する工程と;
・ 浸透された封入体をココア製品と組み合わせる工程と、を有する。
【0047】
浸透液は、封入体中へ吸収される生物活性物質に対する任意の適当な溶媒でよい。典型的な的な例にはアルコール、非アルコール性飲料およびブドウ皮抽出液である。液体が低い水活性とpHを有するアルコール系液体であるブドウ皮抽出液が好ましい。ブドウ皮抽出液が生菌数に悪影響を及ぼさないことも考慮される。薬物溶液または薬物複合体も浸透混合液に含まれる。ある範囲の天然および合成化合物も、さらに溶媒を必要とせず浸透混合液として使用し得る。
【0048】
浸透液がさらに風味を有することも好ましい。
【0049】
風味は最終製品で強調されるに望ましい特定の特徴とプロファイルに依存する。風味はアルコール、単糖、多糖、ポリデキストロース、ポリデキストリン、デキストリン、ポリオール、デンプン、プロピレングリコール、植物油、トリグリセリドまたは他の適当なベース/単体でもよい。ベース/担体は生物活性化合物が配送されるに適していることに基づいて選ばれ、必要に応じて適当な抗酸化剤、食用酸、保湿剤または保存剤をも含み得る。
【0050】
非アルコール浸透混合液を、ワインを非アルコール/脱アルコール液に置き換えて使用できる。さらに、チョコレート中の封入体の味と配送性を改善するために、ある範囲の非アルコールまたは脱アルコール風味を浸透混合液に添加することができる。封入体の風味はチョコレート製品全体の風味を増大することができる。
【0051】
浸透混合液と生物活性物質の生物利用能を、製薬食品化学で公知であり、生物活性化合物の生理化学性質によって選ばれる界面活性剤、可溶化剤、有機酸および乳化剤を含むがそれに限定されない様々な化合物によって増大し得る。封入体による浸透混合液の取り込みを、界面活性剤および可溶化剤等の様々な化合物を用いて改善することもできる。
【0052】
封入体は任意の適当な吸収性物質であり得る。典型的な例には乾燥果物(カラント、レーズン、クランベリー、スルタナ、サンマスカット)、凍結乾燥果実、乾燥果実ペースト、果実ピューレ、押し出し果実粒子、パフ穀粒、ベーク穀粒封入体、穀物加工食品、および穀物分画(ふすま等)、および合成代替品(耐性デンプン、長時間放出医薬マトリックス、例えばジュレット、ジュリルおよびミクロ結晶セルロース被覆ミクロ粒子)が含まれる。多くの場合、封入体のサイズは製造装置のサイズ、例えば沈殿装置および沈殿ヘッドのサイズに対応する必要がある。
【0053】
好ましい実施態様では、浸透液がココア製品の構造を破壊することを避けるため、封入体はココア製品に添加する前に乾燥される。封入体を生物活性化合物の性質に適した任意の既知の方法または温度を用いて乾燥することができる。その例には凍結乾燥、ヒートポンプ空気対流、伝導、真空乾燥および太陽乾燥が含まれる。乾燥温度、方法および条件は生物活性化合物によって変わり得る。例えば、熱感受性生物活性化合物はより低い温度で乾燥する。
【0054】
本明細書で用いる用語「生物活性物質」とは、生物効果を有する全ての化合物を指し、医薬品、栄養物、栄養剤、薬草抽出物、ビタミン、植物化学物質および健康補助剤が含まれるがそれに限定されない。このような生物活性物質にはブドウ皮ポリフェノール、アスピリン、およびユビキノール、レチノール、トコフェロール、メベンダゾールおよびセファクロル一水和物等の吸収されにくい医薬化合物が含まれるが、それに限定されない。
【0055】
生物活性物質がココア、サトウキビ、サトウダイコン、糖蜜、ブドウ、果実(ベリー、石果、梨果、熱帯果実、ジュース)、植物(球根、根、塊茎、葉、幹)、薬草、スパイス、ビーン、豆類、穀粒(オオムギ、ソバ、コーン、アワ、カラスムギ、コメ、ライムギ、モロコシ、コムギ)、ナッツ(アーモンド、ビンロウの実、カシューナッツ、ハシバミの実、ピーナッツ、ピカンの実、クルミの実)、オイルシード、植物油、茶、コーヒー、ビール、リンゴ酒用種子およびその混合液を含む範囲の起源由来のポリフェノールであることが好ましい。
【0056】
浸透液中、従って封入物体中のポリフェノール含有量を、低血糖インデックス糖および高フェノール糖を浸透液に添加することによって増加することができる。このような糖の例は国際特許出願第2005/117608号に開示されている。
【0057】
生物活性物質中の化合物は、その遊離型、塩、アナログ、誘導体、プロドラッグ、水和物および錯体を含むが、それに限定されない任意の適当な型であり得る。さらに、生物活性物質は本発明の選ばれた浸透液と相互作用し得る。このような相互作用の例は錯体化、共有結合および水素結合である。この相互作用は溶解性、溶解度および配送、輸送、吸収、生物利用能および効力等の薬物動態パラメーターを改善することになる。
【0058】
封入体を任意の方法を用いて浸透混合液と共に浸透することができる。典型的には、浸透期間中に絶えず混合しながら容器中で封入体を浸透混合液と混合する。使用し得る他の方法はクライオバックである。
【0059】
この方法は液体をチョコレート混合液中へ取り込む困難を避け、チョコレートの得られた品質に対する液体の影響を最小にする。
【0060】
封入体はまた、摂取した場合に舌上で風味が飛び出すという利点を与え、ココア製品を摂取した場合の全体的な風味を増大する。真のワインが封入体中に浸透するので、このことはワイン風味に関して特に有利である。
【0061】
本発明の第3の態様によれば、
(a)ココアバター、ココアバター同等品、ココアバター代替品、30〜37℃の範囲で鋭い溶融曲線を有し、35〜37℃の範囲で溶融する他の脂質、チョコレートおよびその混合液と混合し得る他の脂質でなる群より選ばれた脂質中に分散したチョコレート、風味およびブドウポリフェノールを含み、生物活性粉末が実質的に均一にワイン風味チョコレート中に分布するワイン風味チョコレートと;
(b)ワイン、ブドウポリフェノールおよび風味を含む液体混合液を浸透した封入体を含むワイン風味封入体、を有するワインチョコレート製品が提供される。
ワインチョコレート製品はブロックチョコレートまたは封入体で被覆されたチョコレートの形である。ワインチョコレート製品はその中心に封入体が充填されたチョコレートと、ブロック状に成形された風味充填剤の形でもよく、各ピップはほぼ同じポリフェノール含有量を有する。封入体は他の食品(ビスケットまたはスナックバー等)中に含まれ、チョコレート内に被覆されても良い。
【0062】
本発明の第3の態様は、ヒトに本発明に記載のワインチョコレート製品を投与することを含むポリフェノールのヒトの血液中への吸収を促進する方法も提供する。
本発明の第3の態様は、ヒトに本発明に記載のワインチョコレート製品を投与することを含むヒトの血管の健康を推進する方法も提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0063】
本発明の様々な実施態様/態様を、以下の非限定実施例を参照して説明する。
(実施例1)
本実施例は、生物活性粉末としてのポリフェノールを含む市販チョコレート製品を製造するための、本発明の使用を説明する。
カラントの浸透
浸透混合液:以下の混合液(25リットル)は25バッチのカラント(各バッチ5kg)を浸透するに十分であった。
・ ワイン20リットル(シラーズ、メルロー、ピノノワール等の赤ワイン、ポート、マス カット、マルサラ、ボトリチス等の強化ワイン、シャルドネ、ソービニョンブラン、リ ースリング等の白ワイン、および発砲ワイン)
・ Vinlife(登録商標)(Tarac Technologies)ブドウ皮抽出 物(液体)5リットル
・ 風味125ml
室温で上記を大きなプラスチック容器内でよく混合し、ブドウ皮抽出液と風味とがワインとよく混合したことを確認する。
【0064】
カラントの浸透:5kgの小さい乾燥カラントを25本のプラスチックタブ(蓋付き、サイズ15〜20リットル)それぞれの中に秤量し、1リットルの浸透混合液を加える。金属製または木製攪拌器でよく混ぜ、全てのカラントが混合液で被覆されたことを確認する。タブの上に蓋を置き、緩やかに回しながら振盪して再度混合する。密封した各タブを室温で30分間静置し、回しながら振盪して再度混合する。これを30分間繰り返し、タブを冷却室(±5℃)に終夜保存する。必要であれば翌朝タブを取り出し、一つずつ混合し、30分間静置して再度混合する。風味付き調質チョコレートを添加する必要がある場合、各タブを濾過し、濾液を廃棄する。表面の液体をできるだけ除去するため、フィルター中の浸透カラントをよく振る。浸透カラントを乾燥ラック上に広げ、温室(40℃)中に置いて空気をカラント上に終夜流す。
ブドウ種子粉末と風味を含むチョコレートの調製
「表」

コンチェに正しい順番で加え、チョコレートの平均粒径が20μ以下(18〜20μの範囲)になるまで40℃で12〜16時間練る。チョコレートはココアバターに対するミルク油脂の0.13を有する。
【0065】
種子粉末の調製(チョコレート0.5トンバッチあたり):2.25kgのVinlife(登録商標)(Tarac Technologies)ブドウ種子粉末を秤量し、5kgの溶融(45℃)ココアバターに加える。攪拌しながらゆっくり加え、粉末が実質的に均一にココアバター内に分散したことを確認する。攪拌中に気泡が入るのを避けるが、粉末がココアバター中に十分分散したことを確認する。
【0066】
種子粉末のチョコレートへの添加:ココアバター/ブドウ種子粉末混合液を練りサイクルの最後の時間にコンチェに加える。ココアバター/ブドウ種子粉末混合液の残りを容器から洗い出すために、さらに5kgの溶融ココアバターを使用する。
【0067】
次にチョコレートにワイン様の風味を付ける。チョコレート中の真の単一種ワイン風味は、風味を増強するばかりでなく、通常以上の量のポリフェノールが健康増進のために添加された場合の苦味を低減する働きをする範囲の風味を添加することにより増強される。風味化学の当業者は、風味、口当たりおよび他の官能性を改善するために風味のどの混合液を使用し得るか知っていると思われる。
浸透カラントのチョコレートへの添加
濾過し液切りしたカラント(約5.0〜5.5kg)を40kgの風味を付け調質したチョコレートと混合した。カラントの均一な分布を保障するため、混合液をよく混合する必要がある。
【0068】
次にカラント/チョコレート混合液を成形し冷却する。
【0069】
ワインとココアバター中に分散した水溶性ポリフェノールを浸透した乾燥カラントまたは果実を使用することにより、チョコレート等の食物への添加で典型的に経験する困難を克服することができる。ワイン風味を使用することで味をさらに改善し、ポリフェノール含有量、抗酸化剤およびACE阻害活性を増強して独自の風味の製品を製造できる。
【0070】
上記の条件でワインおよび水溶性ポリフェノール抽出物の双方を乾燥果実等の担体に取り込むことにより、水の活性および水分量が増加したにもかかわらず浸透製品が保存される。さらに、優れた官能特性と25℃での安定な商品寿命を有する製品が得られる。
(実施例2)
本実施例はフェノール増強ミルクチョコレートにおける抗酸化剤レベルを調べた。
方法
6片の対照ミルクチョコレート(1片は約100gのブロックの各列から取った)の抗酸化能、および12片のフェノール増強ミルクチョコレート(第1および第3、第2および第4列から交互に取った2片)を分析のために選んだ。チョコレートは Cool Health Pty Ltd.から提供された。チョコレートを実施例1に従って調製した。重さ各1.7〜2gの試料を正確に秤量し、50mLチューブに加えた。20mLのヘプタンを加えてチョコレート試料を脱脂した。試料を遠心分離し、ヘプタンを流し出した。試料を換気フード中に広げて放置し、痕跡量のヘプタンを除去した。抗酸化剤を20mL分の80%メタノールで2回抽出したが、最初は2時間、2回目は終夜の抽出であった。1次および2次抽出液を一緒にし、水で5倍に希釈後にABTS法を用いて二重に分析した。
「表」

考察
対照チョコレートの抗酸化剤量はグラムあたり1.578±0.039mgカテキン当量(平均±標準偏差)であった。フェノール増強チョコレートの抗酸化剤量はグラムあたり1.961±0.142mgカテキン当量であった。フェノール増強試料(試料片3、2)の1つは他のものよりかなり高かった。この試料片を分析から除外した場合、残りの11個の試料片の結果はグラムあたり1.924±0.062カテキン当量であった。このことは、対照チョコレートと比較して21.2%の増加である。
(実施例3)
本実施例は赤ワインポリフェノールのココアバター中への分散を調べる。
【0071】
ブドウ果実粉末(Vinlife(登録商標)、Tarac Technolories(オーストラリア)より購入)は水性環境中へ分散することが困難で、これは親油性および親水性材料の複雑な混合液を含む多くの粉末で共通の現象である。「だま化」と「フィッシュアイ化」を生じ、粉末が配送材料中へ均一に分散することが困難になり、その結果チョコレート等の製品中へ均一に分散しない。ブドウ種子粉末は、有益な治療効果を有する多くのポリフェノールを含む。
【0072】
ココアバターを溶融し、40〜45℃に保った。これにココアバターmlあたり400mgの割合でブドウ種子粉末を加えた。穏やかに攪拌すると、粉末は直ちに分散し、ココアバター中に「溶けた」。次にココアバター混合液(10ml)を1kgの典型的なダークチョコレート調合物に加え、緩やかに攪拌して混合した。これにより、理論的には各100gのチョコレートに400mgの生物活性粉末が配送された。次にチョコレートを成形し、冷却した。
【0073】
製品の口当たりについて粉末粒子の効果を特に重視して、その製品の官能特性を評価した。粉末粒子は口当たりに関して官能特性になんらの影響もないことが見出された。
【0074】
チョコレート(100g)を10個に等分し、それぞれに存在するブドウ種子粉末のレベルを分析した。その結果は、試料中に存在する生物活性粉末のレベルの平均値(範囲)が10gあたり38.5(35.6〜42.8)mgであることを示し、マトリックス中で生物活性材料の均一な分散を示した。
(実施例4)
本実施例は乾燥カラント中の赤ワインポリフェノールの封入体を検討する。
方法
レギュラーシラーズ赤ワインの等量(アルコール重量あたり約12.5%重量%)でなる液体浸透ミックス、および抗酸化剤とポリフェノールの高い市販ブドウ皮抽出液(Vinlife(登録商標)、Tarac Technologies、オーストラリア)に、浸透ミックスmLあたり20mgの粉末の割合でブドウ種子粉末(Vinlife(登録商標))を補充した。
【0075】
この浸透ミックス(20〜25mL)を100gの乾燥カラントに添加し、20℃で24時間、緩やかに混合して受動的に浸透させた。サンプリングを定期的に行い、カラント中への浸透速度を測定した。典型的には、半分の浸透ミックスが4〜5時間以内にカラント中へ浸透し、24時間で約90〜95%の浸透ミックスがカラントに取り込まれた。
【0076】
濾過し部分的に乾燥した浸透カラントが典型的なチョコレートマトリックス(ダークまたはミルクチョコレート配合物)中に取り込まれたとき、組織または取り扱い性の観点からチョコレートの性質に有害な影響はなかった。
【0077】
さらに、抗酸化剤浸透カラントを含むチョコレートの味と品質保持は優れていた。
カラントを分析し、結果を以下の表に示す。
「表」

(実施例5)
本実施例は別な浸透液調製を示す。
【0078】
以下の混合液(25リットル)は約125kgのカラント(封入体)に浸透するに十分であった。浸透混合液成分の比率は、使用したワイン風味によって変わり得る。相当量の過剰の残液がなく封入体に最大に浸透させるためには、封入体に対する浸透混合液の量をバランスする必要がある。
「表」

全ての成分を大きな容器中で室温で混合し、ブドウ皮/種子抽出液と風味とがワインとよくブレンドされることを保障するため、ゆっくりと攪拌した。
次に浸透混合液を封入体(カラント)と適当な容器中で組み合わせ、完全に混合し易いように容器を回転させた(例えばタンブリングにより)。浸透混合液を封入体中へ規則的に回転(機械的または手動)しながら一定時間(例えば24時間)浸透させ、最適の風味、味および配送性を与えた。
【0079】
次に濾過前に封入体を30分静置し、乾燥棚に置く前に滲出させた。空気を封入体に48時間流して封入体を温室(37〜40℃)で乾燥した。
風味の強度と封入体中の生物活性物質の濃度をあげるため、上記プロセスを繰り返すことができる。
(実施例6)
目的の投与する生物活性物質が粉末でない場合、封入体をチョコレートブロック中に分散する代わりに封入体をチョコレートで被覆することが好ましい。これらのチョコレート「ドロップ」を錠剤と同様な方法で摂取することができるが、全体的により楽しい体験をすることが好ましい。
浸透混合液
以下の混合液(25リットル)が125kgのサンマスカットまたはその他の適当なサイズの乾燥果実に浸透するに十分であった。
「表」

さらに特徴と単一ワインの風味をサンマスカットに浸透させるため、風味をこの混合液中で使用した。
【0080】
上記成分をすべて、室温で大きなプラスチック容器に加えた。ブドウ皮抽出液と風味をワインとを確実に十分ブレンドするため、混合液を大きなスプーンまたは類似するものでゆっくり攪拌した。混合液を浸透の直前に調製した。
サンマスカット浸透
混合しやすいように回転できる適当な数の適当な容器の間に、サンマスカットを均等に分けた。サンマスカットの塊を手で壊した。浸透混合液を容器間に均等に分け、よく混合するために容器を10回回転すると、サンマスカットの塊がなくなった。サンマスカットに確実に均一に浸透させるため、容器を一定間隔で回転した。容器を定期的に回転しない場合、過剰量の浸透混合液が残り、サンマスカットに取り込まれない。容器を18℃〜25℃で終夜放置した。
【0081】
翌日、各容器をよく混合するために再度回転し、30分間静置した。サンマスカットを濾過し、表面の液体をできるだけ除去するために絞った。ドラム中に過剰量の浸透混合液がある場合のみ、濾過と絞りが必要である。次にサンマスカットを乾燥棚上に均等に広げた。棚を温室(37〜40℃)に置き、空気を45〜48時間サンマスカット上に流した。サンマスカットはよく乾燥し、表面水分がなく、自由流動であまりべとつかなかった。
サンマスカットのチョコレートによる被覆
ベースチョコレート(ブドウ種子および/または皮抽出液を含むように、実施例1に記載のように調製)を、浸透に使用したワインに対応する風味付けをした。風味を添加すると、チョコレートの「濃厚化」を生じる。この場合、各500kgバッチに1.5kgを越えない(より多くない)PGPRを加え、粘度を下げるためによく混合する。いくつかの風味を添加する場合、それぞれを別個に加えなければならない。フィンコーターにポンプ注入する前に、チョコレートと風味混合物とを高速剪断ミキサーで少なくとも10〜15分混合した。チョコレートを40〜45℃に保ち、一定速度で攪拌した。
【0082】
チョコレートの薄い層をフィンコーターベルト上に噴霧した。これにより「掴む」ための中心が得られ、転がりやすくなり、中心がベルトから滑り落ちることを防止した。サンマスカットの塊をフィンコーターに移す前に壊した。
【0083】
被覆を比率0.5で行ったが、これはチョコレートの量が侵透サンマスカットの全重量の50%に等しいことを意味する。例えば、80kgの侵透サンマスカットは40kgのチョコレートを使用し、最終製品の総重量120kgが得られる。
【0084】
チョコレートで被覆後、「ワイン滴」を通常の平鍋に移し、ココア粉末を振り掛けることができる(すなわち、40kgの製品に500gのココア粉末を加えた)。均等な被覆を保障するため、鍋を適当な速さで10分間動かした。
(実施例7)
本実施例では、標準のチョコレート製造法で製造したチョコレート製品中の生物活性粉末の分散を調べた。
チョコレートの調製
「表」

ココア液とココアバターとを溶融し、コンチェに加えブレンドした。コンチェの運転中にキャスター糖、全クリーム粉ミルクおよび50%レシチンを順番に加え、各成分が次の成分を加える前によくブレンドされていることを確認した。所望の粒径が得られるまで、混合物を練り合わせた(5時間)。残りのレシチン、天然バニラおよびPGPRを加え、成分がよく混ざるまでコンチェを運転した。次に、コンチェを運転しながらブドウ種子粉末をチョコレート混合物に直接加えた。成分がよくブレンドするまで練りを続けた。
【0085】
次にチョコレートをコンチェから取り出し、100gのブロックに成形した。1ブロックのチョコレートをランダムに選び、6個の同じ塊に砕いた。確立した活性酸素吸収能力(ORAC)分析を用いて、これらの試料片それぞれの抗酸化能を評価した。
ORAC試験法
6個の試料をORAC分析に供した。ブドウ皮はよく知られた抗酸化剤である。チョコレート全体に実質的に均一に分散した場合、ORAC試験は同じ技術で製造した6個のチョコレートバッチ間で当然一致する。
【0086】
試料をすり潰し、約50mgを5mlのメタノール中に溶解した。試料を渦流攪拌し、30分間超音波処理し、5分間遠心した(1900RCF)。上澄を集め、乾燥した。試料を10mg/mLでメタノールに再溶解した。分析した試料は以下の通りであった。
・ 試料A − 赤ワインチョコレートバッチ1
・ 試料B − 赤ワインチョコレートバッチ2
・ 試料C − 赤ワインチョコレートバッチ3
・ 試料D − 赤ワインチョコレートバッチ4
・ 試料E − 赤ワインチョコレートバッチ5
・ 試料F − 赤ワインチョコレートバッチ6
この研究で用いたORAC分析は、37℃における2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド(AAPH)で誘発したペルオキシルラジカルに対する試験試料中の抗酸化剤消去活性を測定した。蛍光プローブとしてフルオレッセインを使用した。試料の親水性ORAC値を測定した。
【0087】
AWA(アセトン:水:酢酸=70:29.5:0.5)により逐次希釈し、初期スクリーンからの概略抗酸化能に依存する、試料に関連する濃度で出発する4回測定で試料をORAC法を用いて分析した。
【0088】
緑茶抽出物が正の対照として含まれ、抽出物を試料調製と同様に調製した。緑茶メタノール抽出物を燐酸緩衝液(pH7.4)中に直接溶解し、AWAを燐酸緩衝液で置き換えた以外は他の試料と同様に分析した。ビタミンEの水溶性アナログであるトロロクスを参照標準試料として使用した。AWA中で100、50.25および12.5μMで調製したトロロクス標準試料からトロロクス標準曲線を得た。
【0089】
20μL試料/標準試料/対照/ブランク(AWA)、10μlフルオレッセイン(6×10-7M)、および170μlAAPH(20mM)を各ウエルに加えた。負荷後直ちに、プレートを37℃に予熱したプレートリーダーに移し、1分間間隔で蛍光を35回測定した。蛍光測定値を溶媒ブランクウエルと対比した。トロロクス濃度と蛍光減衰曲線下のネット面積との間の回帰式を用いて最終ORAC値を計算し、グラムあたりの試料のトロロクスμmol当量(TE)として表現した。
結果と考察
「表」

結論
メタノールで抽出した場合、試料のORAC値は122μmolTE/gの高い価から77μmolTE/gの低い価の範囲であった。かなり大きい範囲は、ブドウ種子粉末の分散が不均一であり、標準のチョコレート製造法と技術を用いた場合は一致しないことを明らかに示した。
【0090】
通常の方法では、チョコレートブロック中の各ピップが同じ用量の生物活性物質を含むように均一に分布させることができなかった。この一致する均一な分布がなければ、対象に正確な用量の生物活性物質を与え、矛盾のない治療効果を得ることは不可能である。
(実施例8)
本実施例は別な封入体浸透技術を示す。
【0091】
その方法は、カラントまたはサンマスカット等の封入体の浸透混合液による浸透手段として真空を利用する。
・ 適当なプラスチックバッグに正確な重量の封入体を入れる。バッグに正確な容積の浸透混合液を添加する(通常20%)。
・ 液体がバッグから漏れないことを確認し、バッグを真空包装機に入れる。
・ バッグの内容物が真空で封入されるように機械を運転する。
・ バッグを取り出し、最適条件下(18〜22℃)で24時間保存する。
・ 封入体をバッグから取り出し、できるだけ多くの過剰の液体を除去するために浸透封入体をフィルター中でよく振る。濾液を捨てる。浸透封入体を乾燥棚上に広げ、空気をカラント上に流しながら温室(40℃)内に終夜置く。
【0092】
本発明の説明とクレームで用いられる用語“含む”および用語の形“含む”は、いかなる変法または追加を除外するようにクレームされた本発明を制限するものではない。
【0093】
本発明の変更と追加は当業者に容易に明らかになると思われる。このようなの変更と追加は本発明の範囲であると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物活性粉末と、ココアバター、ココアバター同等品、ココアバター代替品、ココアバター置換品、ココアバター分画、ココアバター改良品、30〜37℃の範囲で鋭い溶融曲線を有し、35〜37℃の範囲で溶融する他の脂質、チョコレートおよびその混合液と混合し得る他の脂質でなる群より選ばれた脂質とを含み、生物活性粉末が配送システム中に実質的に均一に分散していることを特徴とする薬剤配送システム。
【請求項2】
脂質がココアバター、ココアバター同等品、ミルク脂肪およびその混合物でなる群より選ばれることを特徴とする請求項1記載の配送システム。
【請求項3】
チョコレート混合物に添加する前に生物活性粉末が脂質中へ分散されることを特徴とする、請求項1記載の薬物配送システムを含む生物活性粉末が均一に分散されたチョコレート製品。
【請求項4】
生物活性粉末と、ココアバター、ココアバター同等品、ココアバター代替品、ココアバター置換品、ココアバター分画、ココアバター改良品、30〜37℃の範囲で鋭い溶融曲線を有し、35〜37℃の範囲で溶融する他の脂質、チョコレートおよびその混合液と混合し得る他の脂質でなる群より選ばれた脂質とを、生物活性粉末が実質的に均一に脂質中へ分散するまで組み合わせる工程を有することを特徴とする、生物活性粉末の配送法。
【請求項5】
生物活性粉末が実質的に均一に配合物中に分布していることを特徴とする、生物活性粉末を含む配合物の製造における、ココアバター、ココアバター同等品、ココアバター代替品、ココアバター置換品、ココアバター分画、ココアバター改良品、30〜37℃の範囲で鋭い溶融曲線を有し、35〜37℃の範囲で溶融する他の脂質、チョコレートと混合し得る他の脂質でなる群より選ばれた脂質の使用。
【請求項6】
生物活性粉末が実質的に均一にココアバター、ココアバター同等品、ココアバター代替品、ココアバター置換品、ココアバター分画、ココアバター改良品、30〜37℃の範囲で鋭い溶融曲線を有し、35〜37℃の範囲で溶融する他の脂質、チョコレートおよびその混合液と混合し得る他の脂質でなる群より選ばれた脂質中に分散していることを特徴とする、生物活性粉末の均一な分布を有するココア製品。
【請求項7】
(a)まず、生物活性粉末と、ココアバター、ココアバター同等品、ココアバター代替品、ココアバター置換品、ココアバター分画、ココアバター改良品、30〜37℃の範囲で鋭い溶融曲線を有し、35〜37℃の範囲で溶融する他の脂質、チョコレートおよびその混合液と混合し得る他の脂質を含む脂質でなる群より選ばれた脂質とを、粉末が実質的に均一に脂質中へ分布するまで組み合わせる工程と;
(b)脂質混合物が実質的に均一にチョコレート製品中に分散するまで脂質混合物と他のチョコレート成分とを組み合わせる工程と、
を有することを特徴とする生物活性粉末を有するチョコレート製品の製造法。
【請求項8】
生物活性粉末が実質的に均一に脂質中に分散するまで、生物活性粉末と、ココアバター、ココアバター同等品、ココアバター代替品、ココアバター置換品、ココアバター分画、ココアバター改良品、30〜37℃の範囲で鋭い溶融曲線を有し、35〜37℃の範囲で溶融する他の脂質、チョコレートおよびその混合液と混合し得る他の脂質でなる群より選ばれた脂質とを組み合わせる工程を有することを特徴とする、親油性生物活性粉末の生物利用能の改善方法。
【請求項9】
生物活性粉末が実質的に均一に脂質中に分散するまで、生物活性粉末と、ココアバター、ココアバター同等品、ココアバター代替品、ココアバター置換品、ココアバター分画、ココアバター改良品、30〜37℃の範囲で鋭い溶融曲線を有し、35〜37℃の範囲で溶融する他の脂質、チョコレートおよびその混合液と混合し得る他の脂質でなる群より選ばれた脂質とを組み合わせて投与する工程を有することを特徴とする、生物活性粉末の分解レベルを最小にする方法。
【請求項10】
(a)生物活性物質と浸透液とを組み合わせる工程;
(b)生物活性液混合物を封入体中に浸透する工程と;
(c)浸透した封入体とココア製品とを組み合わせる工程と、
を有することを特徴とする生物活性物質をココア製品中に取り込む方法。
【請求項11】
生物活性物質の風味をマスクするために浸透液が風味を有することを特徴とする請求項10記載の方法。
【請求項12】
封入体が乾燥果実。凍結乾燥果実、乾燥果実ペースト、果実ピューレ、押し出し果実粒子、パフ穀粒、ベーク穀粒封入体、加工穀物および穀物分画、合成代替品およびそれらの混合物でなる群より選ばれることを特徴とする請求項10記載の方法。
【請求項13】
工程(b)が浸透後に乾燥工程を有することを特徴とする請求項10記載の方法。
【請求項14】
(a)生物活性粉末がワイン風味チョコレート中に実質的に均一に分布する、ココアバター、ココアバター同等品、ココアバター代替品、ココアバター置換品、ココアバター分画、ココアバター改良品、30〜37℃の範囲で鋭い溶融曲線を有し、35〜37℃の範囲で溶融する他の脂質、チョコレートおよびその混合液と混合し得る他の脂質でなる群より選ばれた脂質中に分散したチョコレート、風味およびポリフェノール粉末を含むワイン風味チョコレートと;
(b)ワイン、ポリフェノールおよび風味を含む液体混合物が浸透した封入体を有するワイン風味封入体と、
を有することを特徴とするワインチョコレート製品。
【請求項15】
ワイン風味封入体がワイン風味チョコレートで個別に被覆されていることを特徴とする請求項14記載のワインチョコレート製品。
【請求項16】
ワイン風味チョコレートがブロックに成形され、それぞれのピップが治療用製品に対する典型的な公差内で実質的に同じポリフェノール含有量を有することを特徴とする請求項14記載のワインチョコレート製品。
【請求項17】
封入体がワイン風味チョコレートの中心に充填され、ワイン風味充填物がブロックに成形され、各ピップがほぼ同じポリフェノール含有量を有することを特徴とする請求項14記載のワインチョコレート製品。
【請求項18】
ヒトに請求項14記載のワインチョコレート製品を投与することを特徴とする、ポリフェノールのヒトの血液中への吸収を増進する方法。
【請求項19】
ヒトに請求項14記載のワインチョコレート製品を投与することを特徴とする、ヒトの血管の健康増進法。

【公表番号】特表2008−542305(P2008−542305A)
【公表日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−513871(P2008−513871)
【出願日】平成18年6月2日(2006.6.2)
【国際出願番号】PCT/AU2006/000761
【国際公開番号】WO2006/128253
【国際公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(506381821)ホリズン サイエンス ピーティーワイ リミテッド (7)
【Fターム(参考)】