説明

酢顆粒の製造方法及び酢顆粒、酢顆粒付き海苔

【課題】固結することなく安定した品質で製造することを可能とし、少量の白飯であっても容易に酢めしを作れ、無駄に材料を消費することのない酢顆粒を提供することにある。
【解決手段】
酢顆粒の製造方法は、酢を、8〜18重量%とし、クエン酸とリンゴ酸との配合比率が1〜3:1〜3の酸味料を、45〜55重量%とし、アスパルテームとスクラロースとの配合比率が10〜30:1〜5の甘味料を、1〜5重量%とし、食塩を、25〜35重量%とし、二酸化ケイ素を、0.1〜5重量%とし、酢に、リンゴ酸、アスパルテーム、スクラロース、食塩を混合して酢調味料を作成し、その酢調味料を、熱風により攪拌し、湯水を噴霧することで造粒した後、二酸化ケイ素とクエン酸とを添加し、混合することを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酢調味料として用いるのに好適な酢顆粒の製造方法と酢顆粒、酢顆粒付き海苔に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から酢を調味料として用いた酢めしには、酢に砂糖と食塩とを混ぜ合わせた「合わせ酢」を白飯に混ぜて作る方法が一般的に行われているが、各種調味料を混ぜ合わせて合わせ酢を作った後、この合わせ酢を白飯と好適に混ぜ合わせるには、人の手によるバラツキが発生し、合わせ酢や酢めしを常に安定した品質で提供することは困難であった。そのため、これらを不要とする顆粒状調味料を食品に添加する方法が知られている(特許文献1)。
また、白飯に合せ酢等を入れ、冷風をかけながら混合攪拌し、酢飯調合を行う自動混合装置も知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−303937号公報
【特許文献2】特開平10−201437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、酢を主成分とする調味料を顆粒状にした酢顆粒の製造は、これら調味料を混入し、攪拌する方法では調味料が固結してしまい、顆粒状に精製することが困難であった。
他にも、酢めしを自動的に作る装置を用いた場合においては、酢めしの攪拌や冷却に関する条件等を決める必要もあった。
【0005】
そこで、本発明は、固結することなく安定した品質で製造することを可能とし、少量の白飯であっても容易に酢めしを作れ、無駄に材料を消費することのない酢顆粒を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、酢を主成分とし、クエン酸、リンゴ酸、アスパルテーム、スクラロース、食塩、二酸化ケイ素を含有する酢顆粒の製造方法であって、前記酢を、8〜18重量%とし、前記クエン酸と前記リンゴ酸との配合比率が1〜3:1〜3の酸味料を、45〜55重量%とし、前記アスパルテームと前記スクラロースとの配合比率が10〜30:1〜5の甘味料を、1〜5重量%とし、前記食塩を、25〜35重量%とし、前記二酸化ケイ素を、0.1〜5重量%とし、前記酢に、前記リンゴ酸、前記アスパルテーム、前記スクラロース、前記食塩を混合して酢調味料を作成し、その酢調味料を、熱風により攪拌し、湯水を噴霧することで造粒した後、前記二酸化ケイ素と前記クエン酸とを添加し、混合することにある。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の酢顆粒の製造方法によって製造されたことを特徴とする酢顆粒にある。
【0008】
請求項3に記載の発明は、還元麦芽糖水飴、デキストリン、昆布エキスを配合した液体を、海苔表面に塗布した後、請求項2に記載の酢顆粒を前記海苔表面に付着させた酢顆粒付きの海苔にある。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、これら調味料を一度に混合すると固結してしまい、混合して顆粒状にすることができなかったが、固結することなく、均一な顆粒状の酢調味料を製造することが可能となった。
請求項2に記載の発明によれば、合わせ酢や酢めしを、人の手により作る必要がないため、安定した品質で提供することが可能となる。また、白飯が少量の場合でも、容易に合わせ酢を作ることが可能であり、無駄に材料を消費することがない。他にも、自動混合装置を使用しないため、酢めしの攪拌・冷却に関する条件等を決める必要もなく、安価に短時間で製造することができ、製造コストを低く抑えることが可能となる。
請求項3に記載の発明によれば、海苔に付着させることに好適で、酢めしの味を出すことが可能であるため、白飯に巻くだけで容易に手巻き寿司を作ることができる。特に、各種調味料を海苔表面に塗布した場合は、各種調味料の比重の違いから均一に付着させることは困難であるため、味のバラツキを生じていたが、顆粒状にしたことによって均一に付着し、味のバラツキを生じることがない。
また、白飯が少量の場合であっても、手巻き寿司を作ることが可能である。加えて、手がベタ付かないため、手巻き寿司を作ることが容易である。そのため、手巻き寿司を食べる機会が増え、結果として海苔の消費拡大に繋がる。
他にも、酢めしの自動混合装置を使用しないため、これらの製造に関する諸条件等を決める必要がなく、安価に短時間で手巻き寿司を製造することができ、製造コストを低く抑えることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0011】
本発明の酢顆粒の製造方法では、酢を8〜18重量%、クエン酸及びリンゴ酸を45〜55重量%、アスパルテーム及びスクラロースを1〜5重量%、食塩を25〜35重量%、二酸化ケイ素を0.1〜5重量%、の割合で使用する。
【0012】
このうち、主成分である酢については、8〜18重量%を使用し、その中でも12〜14重量%での使用が好ましい。8重量%以下の場合は、酢味が薄くなり、18重量%以上の場合は、酢味が強すぎるからである。
【0013】
また、酸味料であるクエン酸とリンゴ酸とを混合し、その配合比率を1〜3:1〜3とすることにより、これらクエン酸やリンゴ酸に加えて、酒石酸やフマル酸、コハク酸等を用いることに比べ、酸味の増強を可能とした。その中でも、これらの配合比率は、1:1での使用が好ましい。この配合比率から外れると、酸味のバランスが崩れて酢めし味の再現が難しくなるからである。また、この酸味料は、45〜55重量%の中でも48〜52重量%としての使用が好ましい。45重量%以下の場合は酸味が足りなくなり、55重量%以上の場合は、酸味が強すぎるからである。
【0014】
次に、アスパルテームとスクラロースとを混合した甘味料は、その配合比率を10〜30:1〜5とした。その中でも、これらの配合比率は、17:3での使用が好ましい。この配合比率から外れ、アスパルテームが多い場合(スクラロースが少ない場合)は、先味の強さが際立ち、反対に、アスパルテームが少ない場合(スクラロースが多い場合)は、後味の強さが際立つからである。そのため、何れも砂糖と類似する甘味が再現できないことから、甘味のバランスが崩れて酢めし味の再現が困難となった。この甘味料は、1〜5重量%の中でも1〜3重量%としての使用が好ましい。
【0015】
ここで、甘味を増強させるために砂糖の使用も検討したが、配合量には上限があることや、砂糖の配合を多くすると時間の経過と共に固結の問題が発生することから、砂糖を使用しないこととした。その結果、これらアスパルテームやスクラロースの他に、アセスルファムカリウム、キシリトール、ステビア抽出物、カンゾウ抽出物等を用いることを検討したが、上述のように、アスパルテームの甘味は先味が強く、後味が弱いことが特徴であり、スクラロースの甘味は、後味が強いことが特徴であるため、これらを併用して甘味の持続を再現した。他の甘味料であるアセスファムカリウム、キシリトール、ステビア抽出物、カンゾウ抽出物は、味の特徴が砂糖と異なるため、本実施に於いて不適であった。これらのことから、固結することがなく、少量で砂糖に類似する甘味を再現可能とすることに加え、この甘味を増強するものとしてアスパルテームとスクラロースとを混合したものが最適であった。
【0016】
また、食塩については、25〜35重量%を使用した。この25重量%を下回る場合は、塩味が薄くなり、反対に35%重量を上回る場合では、塩味が強くなるからである。
【0017】
次に、固結防止剤として、二酸化ケイ素を使用しているが、これは他にもクエン酸カルシウムや、炭酸カルシウム、ショ糖脂肪酸エステルを検討したが、これらのうち、二酸化ケイ素が固結防止剤としての効果に最も優れているため、0.1〜5重量%を使用することとした。この0.1重量%を下回る場合は、固結防止効果が殆どない。反対に、5%重量を上回る場合では、固結防止剤としての効果に変化がなく、それ以上は不要であった。なお、この固結防止剤は、0.1〜5重量%の中でも0.1〜1重量%としての使用が好ましい。
【0018】
そして、酢顆粒の製造方法は、以下のように行われる。まず初めに、先述した割合で酸味料であるリンゴ酸と、アスパルテーム及びスクラロースとからなる甘味料と、酢と、食塩とを加えた酢調味料を作成する。そして、この酢調味料の温度が、約50℃以下となるように熱風を当てて攪拌した後、85℃以上の湯水を噴霧する。その後、熱風を当て、酢調味料を乾燥させることで造粒され、これに二酸化ケイ素とクエン酸とを添加し、混合することで酢顆粒が精製される。
ここで、クエン酸には、従来から一水和物の結晶のクエン酸と、水分の少ない無水物のクエン酸とが存在するが、一水和物の結晶のクエン酸に比べ、固結の原因となる水分がより少ないため無水物のクエン酸を用いた。この無水物のクエン酸は、溶解温度が150℃と熱風の温度より高温であるが、他の調味料に比べ50℃前後から溶解が始まるため、造粒の過程で他の調味料と固結してしまい酢顆粒の精製に影響を及ぼすことから、造粒した後に添加し、混合することとした。
【0019】
また、酢顆粒の海苔表面への付着は、以下のように行われる。まず初めに、海苔を250℃±50℃にて焙焼を行う。次に、海苔の表面側は手の触れる面であるため、水飴を配合した昆布エキス主体の液を味付けローラにて塗布した。これに対し、裏面側には還元麦芽糖水飴、デキストリンを配合した昆布エキス主体の液を味付けローラにて同様に塗布した。
ここで、使用した昆布エキスは、昆布エキスの中でも粘度の高いものを使用しており、何れの昆布エキス主体の液も、海苔1枚の片面に対して0.1〜1.0gを塗布した。これら昆布エキス主体の液が、0.1gを下回る場合は、昆布の味が薄くなった。反対に、1.0gを上回る場合に於いては、海苔に液が付き過ぎてしまい、海苔表面に凹凸ができてしまうとともに、ベタ付きの原因にもなった。なお、昆布エキス主体の液は、0.1〜1.0gの中でも0.2〜0.5gの使用が最適であった。
【0020】
そして、昆布の粘り成分であるアルギン酸の性質を利用して、海苔の裏面側に酢顆粒を付着させた。この時の酢顆粒の大きさは、16メッシュ(目開き1.22mm)を全通したものが最適であった。そして、この酢顆粒が、海苔1枚当たりに0.1gを下回る場合は酢めし味が弱くなってしまい、反対に、1.0gを上回る場合は酢めし味が強すぎるため、酢顆粒は、海苔1枚当たりに0.1〜1.0gを付着させた。但し、この中でも0.3〜7gの付着が好ましい。
これらの後、海苔を160℃±50℃で乾燥させることで、表面に酢顆粒が付いた海苔が製造される。
【0021】
上記の如く、酢顆粒の製造方法は、酢を、8〜18重量%とし、クエン酸とリンゴ酸との配合比率が1〜3:1〜3の酸味料を、45〜55重量%とし、アスパルテームとスクラロースとの配合比率が10〜30:1〜5の甘味料を、1〜5重量%とし、食塩を、25〜35重量%とし、二酸化ケイ素を、0.1〜5重量%とし、酢に、リンゴ酸、アスパルテーム、スクラロース、食塩を混合して酢調味料を作成し、その酢調味料を、熱風により攪拌し、湯水を噴霧することで造粒した後、二酸化ケイ素とクエン酸とを添加し、混合することを特徴としている。
その結果、これら調味料を一度に混合すると固結してしまい、混合して顆粒状にすることができなかったが、固結することなく、均一な顆粒状の酢調味料を製造することが可能となった。
【0022】
また、請求項1に記載の酢顆粒の製造方法によって製造されたことを特徴とする酢顆粒とした。
その結果、合わせ酢や酢めしを、人の手により作る必要がないため、安定した品質で製造することが可能となる。また、白飯が少量の場合でも、容易に合わせ酢を作ることが可能であり、無駄に材料を消費することがない。他にも、自動混合装置を使用しないため、酢めしの攪拌・冷却に関する条件等を決める必要もなく、安価に短時間で製造することができ、製造コストを低く抑えることが可能となる。
【0023】
他にも、還元麦芽糖水飴、デキストリン、昆布エキスを配合した液体を、海苔表面に塗布した後、請求項2に記載の酢顆粒を海苔表面に付着させた酢顆粒付きの海苔とした。
その結果、海苔に付着させることに好適で、酢めしの味を出すことが可能であるため、白飯に巻くだけで容易に手巻き寿司を作ることができる。特に、各種調味料を海苔表面に塗布した場合は、各種調味料の比重の違いから均一に付着させることは困難であるため、味のバラツキを生じていたが、顆粒状にしたことによって均一に付着し、味のバラツキを生じることがない。
また、白飯が少量の場合であっても、手巻き寿司を作ることが容易に可能である。加えて、手がベタ付かないため、手巻き寿司を作ることが容易である。そのため、手巻き寿司を食べる機会が増え、結果として海苔の消費拡大に繋がる。
他にも、酢めしの自動混合装置を使用しないため、これらの製造に関する諸条件等を決める必要がなく、安価に短時間で手巻き寿司を製造することができ、製造コストを低く抑えることが可能となる。
【0024】
なお、本発明の酢顆粒の構成は、上記実施形態の態様に何ら限定されるものではなく、酢顆粒を食品に使用するものであれば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で必要に応じて適宜変更することができる。
例えば、酢顆粒を、白飯に用いても良く、適宜変更可能である。この場合に於いても、酢めしの味を出すことが可能で、各種調味料を白飯に塗布した場合、各種調味料の比重の違いから、白飯に均一に付着することができないため、味のバラツキを生じていたが、顆粒状にしたことにより均一に付着し、味のバラツキを生じることがない。また、白飯が少量の場合であっても、酢めしを作ることが容易に可能である。他にも、酢めしの自動混合装置を使用しないため、これらの製造に関する諸条件等を決める必要がなく、安価に短時間で酢めしを製造することができ、製造コストを低く抑えることが可能となる。
【0025】
また、各種調味料については、液体状や粉体状等のものを用いても良く、酢顆粒の製造過程で固結することなく、安定した品質で製造可能とするものであれば適宜変更可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酢を主成分とし、クエン酸、リンゴ酸、アスパルテーム、スクラロース、食塩、二酸化ケイ素を含有する酢顆粒の製造方法であって、
前記酢を、8〜18重量%とし、
前記クエン酸と前記リンゴ酸との配合比率が1〜3:1〜3の酸味料を、45〜55重量%とし、
前記アスパルテームと前記スクラロースとの配合比率が10〜30:1〜5の甘味料を、1〜5重量%とし、
前記食塩を、25〜35重量%とし、
前記二酸化ケイ素を、0.1〜5重量%とし、
前記酢に、前記リンゴ酸、前記アスパルテーム、前記スクラロース、前記食塩を混合して酢調味料を作成し、その酢調味料を、熱風により攪拌し、湯水を噴霧することで造粒した後、前記二酸化ケイ素と前記クエン酸とを添加し、混合することを特徴とする酢顆粒の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の前記酢顆粒の製造方法によって製造されたことを特徴とする酢顆粒。
【請求項3】
還元麦芽糖水飴、デキストリン、昆布エキスを配合した液体を、海苔表面に塗布した後、請求項2に記載の酢顆粒を前記海苔表面に付着させたことを特徴とする酢顆粒付きの海苔。

【公開番号】特開2011−147359(P2011−147359A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−9396(P2010−9396)
【出願日】平成22年1月19日(2010.1.19)
【出願人】(399070871)株式会社浜乙女 (1)
【Fターム(参考)】