説明

酵母におけるオリゴマンノースまたはヒト様グリカンを担持するタンパク質の産生およびその使用

ヒトにおける糖タンパク質のプロセッシングに類似する一連の酵素反応を、細胞株が行うことを可能にする遺伝子組み換えされたグリコシル化経路を有する細胞株が開発されてきた。これらの設計された宿主において発現される組換えタンパク質は糖タンパク質を産生し、その糖タンパク質は、そのヒト対応物に、実質的に同一でないにしても、より類似している。下等真核生物は、通常N−グリカンを含有する高マンノースを産生するものであって、単細胞や多細胞の菌類を包含するが、ヒトグリコシル化経路に沿ってO−グリカン又は他の構造を作製するために修飾される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、下等真核生物における糖タンパク質の産生及びタンパク質のグリコシル化の工学の分野、具体的には発現されるオリゴマンノース又はヒト化O−グリカンを有する酵母における糖タンパク質の産生の分野に関する。本発明は、更に、ペプチド鎖におけるセリン又はスレオニンへのN−アセチルガラクトサミンの転移に関与する酵素をコードする遺伝子を含む新規な宿主細胞と、特に治療剤として有用な糖タンパク質の産生とに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
治療用ヒト組換えタンパク質を産生することの可能性によって、種々の異なる疾患の患者の治療に大きな変革がもたらされてきた。幾つかのタンパク質(例えばグリコシル化されないインスリン)は、原核生物の宿主(例えば大腸菌)内に産生され得る。大部分の治療用タンパク質は、ペプチド配列内の特異的なアミノ酸への糖残基の付加によって修飾されることを必要とする。このグリコシル化は、タンパク質の正確な折り畳み、長い循環半減期、そして多くの場合タンパク質の最適な活性のために必要であり得る。現在、グリコシル化タンパク質は、治療用タンパク質の世界的な年間売上高の60%以上を担っている。哺乳類細胞は、ヒト様グリコシル化を伴うタンパク質を産生し得るが、グリコシル化異種産物形成に関する低生産性等の他の短所、及びウィルス汚染のリスクを有する。酵母細胞は、産業的な発酵のための確固たる生物であり、明確な培地中で高密度に培養され得る。
【0003】
酵母において産生する糖タンパク質のグリコシル化表現型は、多くのマンノース残基を有するオリゴ糖を特徴とする。ピキア属のN−結合グリカンは、8マンノース残基と14マンノース残基との間(Man8−14GlcNAcGlcNAc)を含む高マンノース型のほとんど(約85%)であるが、一方で残りは一層より大きいものであり得、30超のマンノース残基を含み得る(Man>30GlcNAcGlcNAc)。しかし、後者の型でさえ、サッカロミセスセレビジエ(S. cerevisiae)(Man>50GlcNAcGlcNAc)において産生されるタンパク質に認められるN−グリカンより非常に小さい。ピキア属において産生されるタンパク質におけるO−結合グリカンについては、ほとんどよく検討されていない。糖鎖に最高5個のマンノース残基を有するO−結合グリカンが記述されてきた。これらの全てはα1,2結合であったし、そしてそれらはリン酸化され得る。
【0004】
近年では、GlycoFiという名の米国に拠点を置く会社が、特定の菌株において発現されるタンパク質における唯一の明確なヒト型のN−結合グリカンを産生するために遺伝子組み換えされた多くのPichia pastoris株を商業化するために組織された。N−結合グリカンは、前述のパラメータにとって重要である。しかし、酵母において発現されるタンパク質におけるO−グリカンをヒト化しようする観点からの試みはなかった。多くの生物学的機能(例えば炎症の間の血管内皮に対する白血球の付着)は、O−グリカンによって仲介される。それ故、定義されたヒト様O−グリカン表現型を有する組換えタンパク質は、治療効果、大部分は糖鎖自体に限定される効果を有し得るものと考えられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、ヒト化O−結合グリカンを産生し得る真核細胞に対する要求が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の要旨
酵母において産生される糖タンパク質におけるN−結合マンノース及びO−結合マンノースの存在は、ワクチンの抗原に結合する場合、例えばウィルス、細菌及び癌細胞に存在する抗原に対して高められた免疫応答を引き起こす目的で免疫系の特異的なターゲティングのために利用され得る。これは、ヒト免疫系の特定の細胞におけるマンノース結合レセプターの存在によって達成され得る。マンノース結合レセプターとしては、マクロファージマンノースレセプター(MMR;CD206)が挙げられ、それは、システインリッチ(CR)ドメイン、フィブロネクチンタイプIIリピート(FNII)を含むドメイン及び複数のC型レクチン様糖認識ドメイン(CTLD)を含む細胞外領域、膜貫通領域及び短い細胞質尾部から構成される4つの哺乳類エンドサイトーシスレセプターのファミリーの内で最初に発見されたものであった。前記ファミリーとしてはまた、ホスホリパーゼA2レセプター、Endo180及びDEC205(CD205)が挙げられるが、MMR及びEndo180だけは、Ca2+に依存する方法で炭水化物に結合するする能力を有する。それらは全てI型タンパク質であって、複数のCTLDを含む。細胞間接着分子(ICAM)−3と相互作用するレセプターとして最初に記述され、それ故に樹状細胞特異的ICAM−3−グラッビング非インテグリン(dendritic cell−specific ICAM−3−grabbing nonintegrin;DC―SIGN;CD209)と名づけられた、高マンノース構造を結合する別のレセプターは、樹状細胞におけるII型タンパク質である。MMR及びDC−SIGNの両方は、MHCの発現及びその後のT細胞の活性化をもたらすエンドサイトーシス経路内に内在性抗原を導く能力を有する。MMR又はDC−SIGNに特異的な抗体は、腫瘍関連抗原に結合すると、両MHCクラスI及びII制限T細胞反応を刺激することが示されている。更に近年、O−グリカン又はN−グリカンのいずれか或いは両方を含むオボアルブミン(OVA)は、酵母(Pichia pastoris)において発現される場合、OVA特異的CD4T細胞分裂反応の誘導に対して非マンノシル化OVAよりも効力があったことが示された。
【0007】
しかし、特異性抗原に対する免疫応答を高めるため以外の治療用途に定められる糖タンパク質について、多くのマンノース残基を有するオリゴ糖を特徴とする非ヒトグリコシル化表現型はヒトにおいて望ましくない免疫応答を誘発し、それは低い治療効果につながる。
【0008】
従って、本発明は、アジュバント又はワクチンとして使用され得るマンノース残基を含む融合タンパク質を提供するものである。更に、本発明はまた、ヒト化糖タンパク質を発現する、遺伝子組み換えされた細胞を提供する。
【0009】
一態様において、本発明は、第2のポリペプチドに結合する第1のポリペプチドを含む融合ポリペプチドを提供する。第1のポリペプチドはマンノシル化される。マンノシル化によって、第1のポリペプチドが1個以上のマンノース残基を含むことが意味される。例えば、1つのグリカンにつき2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20個以上のマンノース残基である。任意に、第1のポリペプチドはハイパーマンノシル化(hypermannosylated)されている。マンノース残基はN−結合又はO−結合である。
【0010】
第1のポリペプチドはムチンポリペプチドである。ムチンとしては、例えば、PSGL−1、MUC1、MUC2、MUC3a、MUC3b、MUC4、MUC5a、MUC5b、MUC5c、MUC6、MUC10、MUC11、MUC12、MUC13、MUC15、MUC16、MUC17、CD34、CD43、CD45、CD96、GlyCAM−1、MAdCAM又はそのフラグメントが挙げられる。ポリペプチドはモノマーである。或いは、ポリペプチドはダイマーである。好ましくは、ポリペプチドは、例えばP−セレクチン糖タンパク質リガンド−1ポリペプチドである。ポリペプチドとしては、P−セレクチン糖タンパク質リガンド−1の細胞外部分等の少なくともP−セレクチン糖タンパク質リガンド−1の領域が挙げられる。或いは、第1のポリペプチドは、アルファ1−酸性糖タンパク質(即ちオロソムコイド又はAGP)又はその一部等のアルファ糖タンパク質である。
【0011】
第2のポリペプチドは少なくとも免疫グロブリンポリペプチドの領域を含む。例えば、第2のポリペプチドは、F領域やFab領域等の重鎖の免疫グロブリンポリペプチドの領域を含む。
【0012】
本発明のマンノシル化融合ポリペプチドはアジュバント組成物内に調製され得る。アジュバント組成物は、Gal1,2Galエピトープを担持するポリペプチドを更に含み得る。
【0013】
任意に、マンノシル化融合ポリペプチドは更に抗原を含む。抗原は、例えば、ウィルス、細菌又は菌類である。例えば、抗原は、C型肝炎、HIV、B型肝炎、パピローマウィルス、マラリア、結核、単純ヘルペスウィルス、クラミジア又はインフルエンザ或いはその生物学的要素(例えばペプチド、タンパク質、脂質・炭水化物、ホルモン又はその組み合わせ)である。或いは、抗原は、腫瘍関連抗原(例えば乳房、肺、大腸、前立腺、膵臓、子宮頸部又は黒色腫の腫瘍関連抗原)である。任意に、抗原は、マンノシル化融合ポリペプチドに作動可能に結合する。例えば、抗原は、抗原に共有結合する。或いは、それは、アジュバントポリペプチドに非共有結合的に会合する。
【0014】
本発明は、更に、融合ポリペプチドをコードする単離した核酸と、この単離した核酸を含むベクターと、このベクターを含む細胞とに関する。ベクターは、更に、抗原ポリペプチドをコードする核酸を含む。好ましくは、融合ポリペプチドをコードする核酸は酵母細胞において発現される。例えば、細胞は、Pichia pastoris、Pichia finlandica、Pichia trehalophila、Pichia koclamae、Pichia membranaefaciens、Pichia opuntiae、Pichia thermotolerans、Pichia salictaria、Pichia guercuum、Pichia pyperi、Pichia stiptis、Pichia methanolica、ピキア種、Saccharomyces cerevisiae、サッカロミセス種、Hansenulapolymorpha、クルイヴェロマイシス種、Candida albicans、Aspergillus nidulans又はTrichoderma reeseiである。一実施形態において、本発明は、少なくとも免疫グロブリンポリペプチド(例えば重鎖)の領域に作動可能に結合するP−セレクチン糖タンパク質リガンド−1ポリペプチドをコードする核酸構築体又はその部分のアルファ1−酸性糖タンパク質を含む酵母細胞に関する。
【0015】
本発明はまた、免疫化の方法を特徴とする。被験体は、本発明に記載のマンノシル化融合ポリペプチド及び抗原を、それを必要とする被験体に投与することによって免疫化される。抗原は、抗原に共有結合する。或いは、それは、アジュバントポリペプチドに非共有結合的に会合する。更なる一態様において、本発明は、癌を患っている又は癌を発症するリスクがある困窮した被験体を同定すること、及び本発明に記載のマンノシル化融合ポリペプチド及び腫瘍関連抗原を被験体に投与することによって、被験体における癌の症候を予防又は緩和する方法を含む。例えば、被験体は、黒色腫、乳癌、肺癌、大腸癌、前立腺癌、膵臓癌、子宮頸癌を患っている又は発症するリスクがある。癌を患っている又は癌を発症するリスクがある被験体は、特定の病気のための当該技術分野で周知の方法によって同定される。
【0016】
更なる一態様において、本発明は、ヒトにおけるO−結合糖タンパク質のプロセッシングに類似する一連の酵素反応を細胞株が行うことを可能にする遺伝子組み換えされたグリコシル化経路を有する細胞株を提供する。これらの設計された宿主において発現される組換えタンパク質は糖タンパク質を産生し、その糖タンパク質は、そのヒト対応物に、実質的に同一でないにしても、より類似している。下等真核生物は、通常少なくとも5個のマンノース残基を有するO−グリカンを産生する。細胞は、Pichia pastoris、Hansenulapolymorpha、Pichia stiptis、Pichia methanolica、ピキア種、クルイヴェロマイシス種、Candida albicans、Aspergillus nidulans及びTrichoderma reesei等の単細胞及び多細胞の菌類であり、これらはヒトグリコシル化経路に沿ってO−グリカン又は他の構造を作製するために修飾される。これは、菌株の工学及び/又は選択を併用して達成され得るものであって、その菌株は、菌体糖タンパク質に特有の望ましくない複雑構造を作製する特定の酵素を発現しないか、活性が望まれる場合に菌類に存在する条件下で最適な活性を有するために選択される外来性の酵素を発現するか、若しくは最適活性が達成される場合は細胞小器官を、遺伝子組み換え真核生物が、「ヒト様」糖タンパク質を産生するために必要とされる複数の外来性の酵素を発現する場合はその組み合わせを標的とするかのいずれかである。望ましくない複雑構造としては、高マンノース構造が挙げられる。高マンノース構造によって、1つのオリゴ糖鎖につき8個以上のマンノース残基が意味される。
【0017】
細胞は、1つ以上の外来性のN−アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼを発現するために設計される。任意に、外来性の酵素は、細胞の小胞体又はゴルジ装置に標的化される。
【0018】
任意に、真核微生物のグリコシル化経路は、(a)外来性のグリコシル化酵素をコードする少なくとも2つの遺伝子を含むDNAライブラリーを作成すること;(b)前記ライブラリーで微生物を形質転換して少なくとも2つの異なる外来性のグリコシル化酵素を発現する遺伝的に混合した個体群を生じること;(c)所望のグリコシル化表現型を有する微生物を前記個体群から選択すること、によって修飾される。好ましい一実施形態において、DNAライブラリーは、タンパク質局在配列、及びグリコシル化に関連する触媒活性をそれぞれコードするキメラ遺伝子を含む。前記方法を用いて修飾される生物は、哺乳類(特にヒト)と類似又は同一のグリコシル化パターンを有する糖タンパク質を産生するために有用である。
【0019】
特に定義されない限り、本明細書において用いられる全ての技術的及び科学的な用語は、本発明が帰属する当該技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと同様又は同等の方法及び材料が本発明の実施又は試験に使用され得るが、適切な方法及び材料は以下に記載される。本明細書に言及される全ての刊行物、特許出願、特許及び他の参照は、それらの全体が参考として援用される。コンフリクトの場合には、定義を含めた本明細書が優先するだろう。更に、材料、方法及び実施例は、例証を示すだけであって、制限を意図するものではない。
【0020】
本発明の他の特徴及び効果は、以下の詳細な説明から、そして請求項から明らかであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
発明の詳細な説明
本明細書に記載される方法及び組換え下等真核生物株は、「ヒト化糖タンパク質」を作製するために使用される。組換え下等真核生物は、高マンノース構造の産生に関与する1つ以上の酵素を発現し得ない下等真核生物を設計してヒト様糖を産生するために必要とされる酵素を発現させることによって作製される。本明細書で用いられる下等真核生物は、単細胞菌類又は糸状菌類である。本明細書で用いられる「ヒト化糖タンパク質」とは、それに結合した、ヒトムチン及びムチン様タンパク質(下記参照)に一般に発現されるO−グリカン、及び合成中間体(それも有用であり、in vitroで更に操作され得る)を有するタンパク質をいう。これは、ヒトムチン又はムチン様タンパク質、即ちタンパク質がグリコシル化される部位の生物に存在する条件下で最適活性を有するように選択される酵素におけるO−グリカンの産生に関与する種々のグリコシルトランスフェラーゼのクローニングによって、若しくは活性が要求される細胞小器官に酵素を標的化することによって達成される。更に、幾つかの酵母内在性マンノシルトランスフェラーゼは、挿入されたグリコシルトランスフェラーゼと内在性のグリコシルトランスフェラーゼとの間の競合を回避するためにノックアウト又はノックダウンされ得る。本発明はまた、酵母において産生される糖タンパク質において発現される多くのマンノース残基がヒト免疫系におけるマンノースレセプターの標的化に有用である方法を提供する。従って、別の一態様において、本発明はまた、マンノシル化、N−結合又はO−結合のいずれか、或いはその両方の融合タンパク質も提供するものである。
【0022】
O−結合グリカンは、通常セリン又はスレオニン残基を介してペプチド鎖に結合する。O−結合グリコシル化は、本来の翻訳後の事象であって、タンパク質転移のためのオリゴ糖前駆体を必要としない。O−結合グリカンの最も一般的な型は、最初のGalNAc残基(又はTnエピトープ)を含み、これらは一般にムチン型グリカンと呼ばれる。他のO−結合グリカンとしては、グルコサミン、キシロース、ガラクトース、フコース、又はSer/Thr残基に結合した最初の糖であるマンノースが挙げられる。O−結合糖タンパク質は、通常は、一般にN−グリカンより比較的分岐が少ない2分岐であるO−グリカンを担持する巨大タンパク質(200kDa超)である。グリコシル化は、一般に高密度クラスターで生じ、質量全体に対して50〜80%をももたらし得る。O−結合グリカンは、非常に不均一な傾向があり、それ故、そのコア構造によって一般に分類される。伸長されないO−GlcNAc群はリン酸化状態に関連があることが最近示され、そしてダイナミックなプロセッシングは細胞内の細胞シグナル伝達事象に関するものであった。O−結合グリカンは、大部分の分泌細胞及び組織において一般的である。それは、哺乳類の卵子の周囲の透明帯内に高濃度で存在し、精子レセプター(ZP3糖タンパク質)として機能し得る。また、O−結合グリカンは、血液生成、炎症反応機序及びABO血液抗原の形成にも関与する。
【0023】
O−結合グリカンの伸長及び終結は、幾つかのグリコシルトランスフェラーゼによって実施される。1つの注目すべきコア構造は、抗原特性を有するGalβ(1−3)GalNAc(コア1)配列である。O−結合グリカンの終結は、通常Gal、GlcNAc、GalNAc、Fuc又はシアル酸を含む。コアGalβ(1−3)GalNAcの非常に一般的な修飾は、モノシアリル化、ジシアリル化又はトリシアリル化である。あまり一般的ではないが、広く分布するO−結合6糖構造は、シアル酸と同様にβ(1−4)結合Gal及びβ(1−6)結合GlcNAcを含む。
ヒト化糖タンパク質の産生
好ましくは、ムチン又はムチン様型融合タンパク質に位置する可能なN−グリカンへの免疫原性応答を防止するために、N−グリカン高マンノース構造の作製に関与する1つ以上の酵素を発現しない真核生物菌株が用いられる。これらの菌株は、設計され得るか、若しくはPichia pastorisのハイパーマンノシル化−マイナス(OCH1)突然変異体等の、酵母において既に記載された多くの突然変異体の内の1つであり得る。
【0024】
前記菌株は1度に1つの酵素に設計され得るか、若しくは潜在的に有用な酵素をコードする遺伝子のライブラリーが作製され得、そして最適活性を有する酵素を有するか又は最も「ヒト様」な糖タンパク質を産生するそれらの菌株が選択され得る。
【0025】
酵母及び糸状菌類の両方が、細胞内のもの及び分泌されたものの両方の組換えタンパク質の産生のために正常に使用されてきた(Cereghino, J. L. and J. M. Cregg 2000 FEMS Microbiology Reviews 24(1): 45 66;Harkki, A.,et al.1989 Bio−Technology 7(6):596;Berka, R. M.,et al.1992 Abstr.Papers Amer. Chem.Soc.203:121−BIOT;Svetina, M.,et al.2000 J.Biotechnol. 76(2 3):245 251)。
【0026】
酵母及び菌類におけるグリコシル化はヒトにおけるものとは非常に異なるが、幾つかの一般的なエレメントは共有される。N−グリコシル化の第1段階(新生タンパク質へのコアオリゴ糖構造の転移)は、酵母、菌類、植物及びヒト等の全ての真核生物に高度に保存される。しかし、コアオリゴ糖の次のプロセッシングは、酵母において著しく異なり、幾つかのマンノース糖の付加を伴う。このステップは、ゴルジ(例えばOCH1、MNT1、MNN1等)内にあるマンノシルトランスフェラーゼによって触媒作用を引き起こされ、マンノシルトランスフェラーゼによって逐次的にコアオリゴ糖にマンノース糖が付加される。その結果生じる構造はヒト型タンパク質の産生のために望ましくないものであり、従ってマンノシルトランスフェラーゼ活性を低下又は除去することが望ましい。マンノシルトランスフェラーゼ活性(例えばoch1突然変異体又はmnn9突然変異体)が不十分なS.cerevisiaeの突然変異体は、非致死性で、且つ酵母の糖タンパク質のオリゴ糖においてマンノース含有量の低下を示すことが示されている。また、マンノシルホスフェートトランスフェラーゼ等の他のオリゴ糖プロセッシング酵素は、宿主の特定の内在性グリコシル化パターンに応じて除去されなければならないかもしれない。望ましくない内在性グリコシル化反応の低下後、複合体O−グリカンの形成が宿主システムに設計される。これは、幾つかの酵素及び糖ヌクレオチド輸送体の安定した発現を必要とする。更に、成熟グリコシル化構造の逐次的プロセッシングが確実にされるような方法でこれらの酵素の位置を決めなければならない。
【0027】
本明細書に記載される方法は、糖タンパク質、特にヒトにおいて治療的に使用される糖タンパク質の産生に有用である。かかる治療用のタンパク質は、通常は、注射、経口、肺内又は他の手段で投与される。
【0028】
ペプチド配列におけるセリン又はスレオニンへのGalNAcの最初の付加は、UDP−GalnAc−ポリペプチドN−アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ(ppGalnAcTs)によって実施される。14種のppGalNAcTsが現在まで同定され、その内10種がヒトにおいて同定された。異なるppGalNAcTsは組織において異なって発現されると思われ、多少の重複や他と比べてより遍在的な発現が認められる。更に、個々のppGalNAcTsは、異なるペプチド基質特異性を有すると思われる。ppGalNAcT1は隣接したグリコシル化残基によって高度に阻害されるが、一方で隣接するペプチド残基はその活性に軽微な影響を及ぼすと思われ、従ってppGalNAcT1がペプチドの初期グリコシル化の原因となることが示唆される。コア1構造はβ1,3−ガラクトシル基転移酵素(C1β3GalT)によって作製される。今日まで、C1β3GalT酵素をコードする1種のみの遺伝子がクローニングされている。C1β3GalTは哺乳類において遍在的に発現し、その活性にシャペロンを必要とすることが示されている。コア2構造は、コア1に対するβ1,6−結合におけるGlcNAcの付加によって作製される。3つのコア2N−アセチルグルコサミン転移酵素(C2GnTs)がクローニングされている。C2GnT−Iは広範囲に発現する。特に、それは脾臓において高度に発現し、B細胞において強い発現を示す。C2GnT−II転写物は、ムチン産生性臓器(例えば大腸、小腸、気管及び胃)において高度に発現する。また、この酵素はコア4分岐活性を有することが示されたが、それはC2GnT−Iについて認められない。3番目のC2GnT(C2GnT−III)はクローニングされているが、C2GnT−Iのように主にコア2分岐活性を有する。ノーザンブロット解析によってこの酵素の転写物が胸腺において高度に発現することが明らかにされたが、一方で他の臓器において検出できたのは低レベルのものだけであった。コア3はC3GnT−VIによって合成され、それによって最も内部のGalNAcに対してβ1,3−結合におけるGlcNAcが付加される。従って、この酵素はC1β3GalTと競合する。コア3構造は、ペプチド結合GalNAcに対するβ1,6−結合におけるGlcNAcの付加によって、4型に伸長する。酵母細胞内の上述の酵素の発現によって、異なるコア構造が作製され得る。
【0029】
O−グリカン末端決定基はヒト糖タンパク質においてさえ更に変化する。大部分の血清糖タンパク質及び膜糖タンパク質は、モノシアル酸付加コア1構造又はジシアル酸付加コア1構造を発現する。しかし、例えば血液型(ABH)抗原及びルイス抗原におけるより長いO−グリカン末端が認められ得る。例外的に、かかる構造は、例えば、白血球に発現し且つ活性化血管内皮細胞に存在するP−セレクチンと相互作用するP−セレクチン糖タンパク質リガンド−1(PSGL−1)におけるシアル化ルイスx(SLe)等の、造血系の種々の細胞に存在する。また、O−グリカンはα1,4結合GlcNAc(グリカンのこの群に固有の構造)を発現し得る。末端決定基は多くの場合ラクトサミン(LacNAc)に発現するか、若しくは分岐繰り返しLacNAc単位(i及びI抗原)にまで発現する。3糖類コア(コア2及び4)の両方の分枝は伸長され得るが、C6−分枝はC3−分枝に亘って一般に好まれる。上述した末端決定基の産生の原因となるグリコシルトランスフェラーゼの遺伝子は、クローニングされており、それ故にヒト様O−グリカンの産生を促進するために酵母細胞内に挿入され得る。
【0030】
本明細書に記載される方法は、広範囲にわたる下等真核生物(例えば、Hansenula polymorpha、Pichia stiptis、Pichia methanolica、ピキア種、クルイヴェロマイシス種、Candida albicans、Aspergillus nidulans、Trichoderma reesei等)のグリコシル化パターンを設計するために用いることができる。Pichia pastorisが例えば使用される。他の下等真核生物と同様に、P. pastorisはERにおけるManGlcNAc構造を生じる。上記の通りに修飾される酵母細胞において産生される糖タンパク質は、ヒト様O−グリカンを発現する。しかし、選択されたタンパク質はまた、1つ以上のN−グリコシル化部位を含むことができる。産生された糖タンパク質における高マンノースN−グリカンの発現を回避するために、既存のManGlcNAc構造をハイパーマンノシル化する菌類の能力を除去することが重要である。これは、ハイパーマンノシル化しない菌類について選択すること、或いはかかる菌類を遺伝子操作することのいずれかによって達成され得る。
【0031】
このプロセスに関与する遺伝子はPichia pastorisにおいて同定されており、そしてこれらの遺伝子の突然変異を作製することによって「望ましくない」グリコフォームの産生を低下させることが可能である。かかる遺伝子は、他の下等真核生物(例えばCandida Albicans、Pichia angusta又はS.cerevisiae)において認められる既存のマンノシルトランスフェラーゼ(例えばOCH1、MNN4、MNN6,MNN1)に対する相同性によって、或いは宿主株に突然変異を起こさせ、そしてマンノシル化が除去された又は低下した表現型について選択することによって同定され得る。或いは、関連した生物における特定の表現型を補完することができる。例えば、前記遺伝子又はP. pastorisにおける1,6−マンノシルトランスフェラーゼ活性をコードする遺伝子を得るためには、次のステップを実施する。S.cerevisiaeのOCH1突然変異体は温度感受性であって、昇温状態での成長が遅いものである。従って、P. pastorisのDNA又はcDNAライブラリーを有するS.cerevisiaeのOCH1突然変異体を補完することによって、P. pastorisのOCH1の作動可能ホモログを同定することができる。S.cerevisiaeのかかる突然変異体は、例えばスタンフォード大学のウェブサイトでサッカロミセスゲノムの結合を参照することで見つけることができ、商業的に入手可能である。昇温状態で正常な成長表現型を示す突然変異体は、P. pastorisDNAライブラリーで形質転換された後、P. pastorisのOCH1ホモログを担持すると考えられる。かかるライブラリーは、適切な制限酵素でP. pastorisの染色体DNAを部分的に消化することによって、且つ適合した制限酵素で消化された適切なベクター内に前記消化されたDNAを連結する制限酵素を不活性化した後に作製され得る。適切なベクターは、pRS314(Trplマーカーを含むpBluescriptに基づく低コピー(CEN6/ARS4)プラスミド(Sikorski, R. S.,and Hieter, P.,1989, Genetics 122, pg 19 27))又はpFL44S(URA3マーカーを含む修飾pUC19に基づく高コピー(2ベータ)プラスミド(Bonneaud, N.,et al.,1991, Yeast 7, pg. 609 615)である。かかるベクターはアカデミックな研究者によって共通して使用されるか、若しくは類似のベクターは多くの種々のベンダー(例えばInvitrogen(カリフォルニア州カールズバッド)、Pharmacia(ニュージャージー州ピスカタウェイ)、New England Biolabs(マサチューセッツ州ベヴァリー))から入手できる。例としては、pYES/GS(Invitrogenからの2ベータ複製開始点に基づく酵母発現プラスミド)又はNew England BiolabsからのYep24クローニングビヒクルがある。染色体DNA及びベクターのライゲーション後、特定の突然変異を有するS.cerevisiaeの菌株にDNAライブラリーを形質転換することができ、そして相当する表現型の補正について選択することができる。野生型表現型を修復することができるDNAフラグメントのサブクローニング及び配列決定の後、P. pastorisにおけるOCHiによってコードされる遺伝子産物の活性を除去するためにこのフラグメントを使用することができる。
【0032】
或いは、関連する特定の菌類のゲノム配列全体が周知の場合、幾つかの供与源(例えばNCBI、Swissprot等)から入手できる一般公開されているDNAデータベースを単に検索することによってかかる遺伝子を同定することができる。例えば、S.cerevisiae由来の既知の1,6マンノシルトランスフェラーゼ遺伝子(OCH1)を有する所定のゲノム配列又はデータベースを検索することによって、高い信頼度で1,6マンノシルトランスフェラーゼ活性を有する遺伝子をコードするかかるゲノムにおける高い相同性の遺伝子を同定することができる。P. pastorisにおけるS.cerevisiaeに由来する幾つかの既知のマンノシルトランスフェラーゼに対するホモログは、これらのアプローチの内の1つも用いて同定されている。これらの遺伝子は、S.cerevisiaeにおけるタンパク質のマンノシル化に関与する遺伝子に類似の機能を有し、従ってそれらの欠失は、P. pastoris又は類似のグリコシル化経路を有する他の菌類におけるグリコシル化パターンを操作するために使用され得る。
【0033】
一旦所定の標的遺伝子配列が決定されたならば、遺伝子ノックアウトの作製は、酵母及び菌類の分子生物学の世界で確立された手法であり、いかなる当業者によっても実施され得る(R. Rothsteins, (1991) Methods in Enzymology, vol. 194, p. 281)。実際、宿主生物の選択は、良好な形質転換の有効性及びかかる宿主のための遺伝子崩壊の手法によって影響され得る。幾つかのマンノシルトランスフェラーゼをノックアウトする必要がある場合、Alani及びKlecknerによって開発された方法によって、全ての望ましくない内在性マンノシルトランスフェラーゼ活性を逐次的に除去するためのURA3マーカーの反復使用が可能になる。この手法は、他の人によって洗練されているが、対抗選択可能なマーカーをフランクする基本的に2つの反復DNA配列の使用を伴うものである。例えば、URA3は、構築体を組込んだ形質転換体の選択を確実にするためのマーカーとして使用することができる。ダイレクトリピートを有するURA3マーカーをフランクすることによって、構築体を組込んでそれ故に標的遺伝子を崩壊させた形質転換体について最初に選択し得る。形質転換体の単離及びそれらの特性評価の後、5’FOAに抵抗性のものについて2回目のラウンドにおける選択に対抗することができる。5’FOAを含むプレート上で生存し得るコロニーは、以前に述べた繰り返しを伴うクロスオーバー現象によって再度URA3マーカーを失った。従って、このアプローチは、同じマーカーの反復使用を可能にし、そして更なるマーカーを必要とすることなく同義遺伝子の崩壊を容易にする。
【0034】
特定のマンノシルトランスフェラーゼ(例えば1,6マンノシルトランスフェラーゼ(OCH1)、P. pastorisにおけるマンノシルホスフェートトランスフェラーゼ(MNN4、MNN6又はIbd突然変異体を補完する遺伝子)を除去することは、主にManGlcNAcを合成するこの生物の設計菌株の作製を可能にし、従ってより複雑なヒトグリコフォーム構造により近く類似するためにグリコシル化パターンを更に修飾するために使用することができる。この方法の好ましい一実施形態は、結果として生じる遺伝子改変P. pastoris菌株のグリコシル化構造が修飾されるようにP. pastorisにおける類似又は同一の生化学機能を除去するために既知の生化学グリコシル化活性をコードする既知のDNA配列を利用するものである。
【0035】
S.cerevisiaeのER及びゴルジ装置において活性である大部分の酵素は、6.5から7.5の間のpH最適条件を有する。組換えマンノシダーゼの作用によってマンノシル化を低下させるための全ての以前のアプローチは、pH5.0のpH最適値を有する酵素に集中しており(Martinet et al.,1998, and Chiba et al.,1998)、それは、これらの酵素の活性がpH7.0で10%未満に低下し、従ってその使用ポイント(P. pastoris及びS.cerevisiaeのER及び初期のゴルジ)で不十分な活性がもたらされる場合であっても当てはまる。マンノシダーゼのpH最適条件が同じ細胞小器官において局所化される他の代表的指標酵素の平均pH最適条件の1.4pH単位の範囲内にある場合、好ましいプロセスにおいては、in vivoでα−マンノシダーゼが利用される。特定の細胞小器官に標的化される酵素のpH最適条件は、単位酵素当たりの最大活性が得られるように、同じ細胞小器官において認められる他の酵素のpH最適条件と整合しなければならない。
【0036】
S.cerevisiaeのER又はゴルジ装置においてManGlcNAcを生じる高マンノース構造の調整を試みる場合には、(1)十分に近いpH最適条件(即ちpH5.2からpH7.8の間)を有する、及び(2)GnTIによるGlcNAcの次の付加を受け入れるために必要とされる特異的な異性体ManGlcNAc2構造を単独又は一斉に作製することが周知である、任意の酵素又は酵素の組み合わせを選択することができる。in vitroでGnTIによってManGlcNAcに変換し得る構造を作製することが示されている任意の酵素又は酵素の組み合わせは、適当な選択を構成する。この知識は科学文献から得ることができるか、若しくは潜在的なマンノシダーゼがManGlcNAcをManGlcNAc−PAに変換することができることを決定し、次いで得られたManGlcNAc−PA構造がin vitroでGlcNAcMan.sub.5GlcNAc.sub.2を与えるためにGnTI及びUDP−GIcNAcのための基質に役立ち得るかどうかをテストすることによって実験的に得ることができる。例えば、ヒト又はネズミの供与源に由来するマンノシダーゼIAは適当な選択である。
【0037】
クローニングされた外来性マンノシダーゼの作用によってマンノシル化を低下させるための以前のアプローチは、O−グリカンの十分な分画(例えば27mol%超)を有する糖タンパク質を生じることができなかった(Martinet et al.,1998 and Chiba et al.,1998)。これらの酵素は、新生糖タンパク質の変換に効果的なER又はゴルジ装置において効率的に機能するはずである。
【0038】
前記プロセスの第2段階は、ゴルジ装置内へのグルコシル基転移酵素の発現を設計することによって新生炭水化物構造への糖の逐次的な付加を伴う。このプロセスは、初期又は内側のゴルジ装置におけるGnTIの機能発現、並びにUDP−N−アセチル−D−ガラクトサミニドの十分な供給を確実にすることを最初に必要とする。
【0039】
この遺伝子工学の努力の最大の目的は、産業的な発酵プロセスにおいて十分に扱われ得る確固たるタンパク質産生菌株であることから、真菌染色体内への同義遺伝子の組込みは慎重なプレーニングを伴う。設計された菌株は種々の遺伝子の範囲で形質転換され、そしてこれらの遺伝子は、所望の活性が発酵プロセスの全体にわたって維持されることを確実にするために安定した方法で形質転換されなければならない。以下の酵素の活性の任意の組み合わせが菌類のタンパク質発現宿主内に設計されなければならない:シアル酸転移酵素、マンノシダーゼ、フコシル基転移酵素、ガラクトシル基転移酵素、グルコシル基転移酵素、GlcNAcトランスフェラーゼ、ER及びゴルジ特異的輸送体(例えばUDPガラクトース及び他の前駆体のためのsyn及びアンチポートの輸送体)、オリゴ糖のプロセッシングに関与する他の酵素、及び活性化オリゴ糖前駆体(例えばUDPガラクトース、CMP−N−アセチルノイラミン酸)の合成に関与する酵素。同時に、非ヒトグリコシル化反応に特徴的であることが周知の酵素をコードする多くの遺伝子を欠失する必要があるだろう。
【0040】
グリコシルトランスフェラーゼ及びマンノシダーゼは、ER及びゴルジ装置の内側(内腔)表面に沿って並び、そしてそれらがER及びゴルジネットワークで進むので糖タンパク質の逐次的なプロセッシングを可能にする「触媒」表面をもたらす。実際、シス、内側及びトランスゴルジ及びトランスゴルジネットワーク(TGN)の複数コンパートメントは、グリコシル化反応の順序づけられた配列が位置し得る種々の場所を提供する。糖タンパク質は、ERにおける合成から後期ゴルジ又はTGNにおける完全な成熟へ進むにつれて、特異的な炭水化物構造が合成され得るように、種々のグリコシダーゼ、マンノシダーゼ及びグリコシルトランスフェラーゼに逐次的に曝露される。多くの研究が、これらの酵素が保持され、それらのそれぞれの細胞小器官に固定される厳密な機序を明らかにするために鋭意取り組まれた。進化する画像は複雑であるが、エビデンスによって、幹領域、膜貫通領域及び細胞質尾部が個別に又は一斉に個別の細胞小器官の膜に酵素を誘導し、それによって関連の触媒ドメインをその遺伝子座に局所化することが示唆される。
【0041】
ターゲティング配列は、ターゲティング配列及び標的とされた酵素の選択のためのライブラリーに関して以下に詳述するように、よく知られ、科学文献及び公的なデータベースに記載される。
【0042】
マンノシル化融合タンパク質
また、N−結合オリゴマンノース構造又はO−結合オリゴマンノース構造或いはその両方を担持する融合タンパク質は本発明に含まれる。本発明の融合タンパク質は、特異性抗原に対する反応を高める際に有用である。これは、ワクチン抗原へのマンノシル化融合タンパク質の結合によって達成され得る。前記融合タンパク質は、マンノース結合レセプターに対する結合によってマクロファージ及び樹状細胞にワクチン抗原を標的化し、これによって各種ワクチン成分の免疫原性を増大させる。従って、本発明のマンノシル化融合タンパク質はワクチンのアジュバントとして有用である。かかるターゲティングはまた、各種の画像化の応用にも有用である。
【0043】
マンノース結合レセプターとしては、マクロファージマンノースレセプター(MMR;CD206)が挙げられ、それは、システインリッチ(CR)ドメイン、フィブロネクチンタイプIIリピート(FNII)を含むドメイン及び複数のC型レクチン様糖認識ドメイン(CTLD)を含む細胞外領域、膜貫通領域及び短い細胞質尾部から構成される4つの哺乳類エンドサイトーシスレセプターのファミリーの内で最初に発見されたものであった。前記ファミリーとしてはまた、ホスホリパーゼA2レセプター、Endo180及びDEC205(CD205)が挙げられるが、MMR及びEndo180だけは、Ca2+に依存する方法で炭水化物に結合する能力を有する。それらは全てI型タンパク質であって、複数のCTLDを含む。細胞間接着分子(ICAM)−3と相互作用するレセプターとして最初に記述され、それ故に樹状細胞特異的ICAM−3−グラッビング非インテグリン(dendritic cell−specific ICAM−3−grabbing nonintegrin;DC―SIGN;CD209)と名づけられた、高マンノース構造を結合する別のレセプターは、樹状細胞におけるII型タンパク質である。MMR及びDC−SIGNの両方は、MHCの発現及びその後のT細胞の活性化をもたらすエンドサイトーシス経路内に内在性抗原を導く能力を有する。MMR又はDC−SIGNに特異的な抗体は、腫瘍関連抗原に結合すると、両MHCクラスI及びII制限T細胞反応を刺激することが示されている。更に、O−グリカン又はN−グリカンのいずれか或いは両方を含むオボアルブミン(OVA)は、酵母(Pichia pastoris)において発現される場合、OVA特異的CD4T細胞分裂反応の誘導に対して非マンノシル化OVAよりも効力があった。
【0044】
本発明は、複数のマンノースエピトープを含む糖タンパク質−免疫グロブリン融合タンパク質(本明細書において「Man融合タンパク質又はMan融合ペプチド」と呼称される)を提供するものである。
【0045】
炭水化物のモル基準で、Man融合タンパク質又はMan融合ペプチドは、遊離糖類よりも、マンノースレセプター−リガンド結合の阻害に効率的である。その理由は、1価の遊離オリゴ糖と比較したマンノシル化グリカンの多価提示である。
【0046】
マンノシル化融合ペプチドは、遊離糖類の当量に対して2、4、10、20、50、80、100倍以上のマンノースレセプター−リガンド結合を阻害する。
【0047】
各種の態様において、本発明は、第2のポリペプチドに作動可能に結合する少なくとも一部の糖タンパク質を含む第1のポリペプチド(例えばムチンポリペプチド又はα−グロブリンポリペプチド)を含む融合タンパク質を提供するものである。本明細書で使用される「融合タンパク質」又は「キメラタンパク質」は、非ムチンポリペプチドに作動可能に結合する少なくとも一部の糖タンパク質ポリペプチドを包含する。
【0048】
「ムチンポリペプチド」とは、ムチンドメインを有するポリペプチドをいう。ムチンポリペプチドは、1、2、3、5、10、20以上のムチンドメインを有する。ムチンポリペプチドは、O−グリカンで置換された、タンデムリピートと呼称される反復アミノ酸配列を特徴とする任意の糖タンパク質である。例えば、ムチンポリペプチドは、2番目又は3番目毎にセリン又はスレオニンであるアミノ酸を有する。ムチンポリペプチドは、分泌されたタンパク質である。或いは、ムチンポリペプチドは細胞表面タンパク質である。
【0049】
ムチンドメインは、オリゴ糖がヒドロキシアミノ酸(O−グリカン)にN−アセチルガラクトサミンを介して結合するアミノ酸のスレオニン、セリン及びプロリンが豊富である。ムチンドメインは、O−結合グリコシル化部位を含むか、或いはそれからなる。ムチンドメインは、1、2、3、5、10、20、50、100以上のO−結合グリコシル化部位を有する。ムチンポリペプチドは、その質量の50%、60%、80%、90%、95%又は100%がグリカンによるものである。ムチンポリペプチドは、MUC遺伝子(即ち、MUC1、MUC2、MUC3a、MUC3b、MUC4、MUC5a、MUC5b、MUC5c、MUC6、MUC10、MUC11、MUC12、MUC13、MUC15、MUC16、MUC17)によってコードされる任意のポリペプチドである。或いは、ムチンポリペプチドは、P−セレクチン糖タンパク質リガンド1(PSGL−1)、CD34、CD43、CD45、CD96、GlyCAM−1、MAdCAM又は赤血球グリコホリンである。好ましくは、ムチンはPSGL−1である。
【0050】
「α−グロブリンポリペプチド」とは、血清糖タンパク質をいう。α−グロブリンとしては、例えば、肺及び肝臓によって産生される酵素や、ヘモグロビンに結合するハプトグロビンが挙げられる。α−グロブリンはαグロブリン又はαグロブリンである。αグロブリンは、大部分がαアンチトリプシン(肺及び肝臓によって産生される酵素)である。血漿ハプトグロビンを含むαグロブリンは、ヘモグロビンと結合して腎臓によるその排出を防止するタンパク質である。他のα−グロブリンは、炎症、組織損傷、自己免疫疾患又は特定の癌の結果として産生される。好ましくは、α−グロブリンはα−1−酸糖タンパク質(即ちオロソムコイド)である。
【0051】
「非ムチンポリペプチド」とは、少なくともその質量の40%未満がグリカンによるものであるポリペプチドをいう。本明細書で用いられる場合、以下の定義は、このケースの理解を容易にするために与えられる。その定義が当業者に周知の意味から異なる程度までその定義はコントロールされる。
【0052】
「生物学的要素」によって、細胞、組織、細菌、ウィルス又は他の生物学的実体(ペプチド、タンパク質、脂質、炭水化物、ホルモン又はそれらの組み合わせを包含する)によって作製されるか、若しくは会合する任意の化合物が意味される。
【0053】
「アジュバント化合物」によって、免疫原性応答或いは抗原又はワクチンの免疫原性を増大させる任意の化合物が意味される。
【0054】
「抗原」によって、免疫原性応答を誘導し得る任意の化合物が意味される。
【0055】
「免疫グロブリン」によって、形質細胞によって分泌され、そして特異性抗原との結合による免疫応答において抗体として機能する任意のポリペプチド又はタンパク質複合体が意味される。本明細書で用いられる免疫グロブリンとしては、IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMが挙げられる。免疫グロブリンの領域は、重鎖又は軽鎖の免疫グロブリンと同様に、Fc領域及びFab領域を含む。
【0056】
「抗原提示」によって、1つ以上の主要組織適合複合体クラスI又はクラスII分子に関連する細胞の表面上における抗原の発現が意味される。抗原提示は、当該技術分野で周知の方法で測定される。例えば、抗原提示は、Gillis,et al.,J. Immunol. 120: 2027 1978に記載のin vitro細胞アッセイを用いて測定される。
【0057】
「免疫原性」によって、免疫応答を刺激する物質の能力が意味される。免疫原性は、例えば、物質に特異的な抗体の存在を決定することによって測定される。抗体の存在は、当該技術分野で周知の方法、例えばELISAアッセイによって検出される。
【0058】
「免疫応答」又は「免疫原性応答」によって、抗原によって誘導される細胞活性(例えば抗体作成や抗原又は抗原フラグメントの提示)が意味される。
【0059】
「タンパク質分解」によって、ペプチド結合の加水分解によるポリペプチドの分解が意味される。「ペプチド」という用語に特定の長さは包含されない。例えば、タンパク質分解は、ゲル電気泳動を使用して測定される。
【0060】
「細胞」には、抗原提示が可能な任意の細胞が包含される。例えば、前記細胞は、体細胞、B細胞、マクロファージ又は樹状細胞である。
【0061】
本発明のMan融合タンパク質の中で、ムチンポリペプチドは、全て又は一部のムチン又はムチン型タンパク質に相当する。Man融合タンパク質は、少なくとも一部のムチン又はムチン型タンパク質を含む。「少なくとも一部」は、ムチンポリペプチドが少なくとも1つのムチンドメイン(例えばO−結合グリコシル化部位)を含むことを意味する。ムチンタンパク質は、ポリペプチドの細胞外の部分を含む。例えば、ムチンポリペプチドは、PSGL−1の細胞外の部分を含む。
【0062】
α−グロブリンポリペプチドは、全て又は一部のα−グロブリンポリペプチドに相当し得る。Man融合タンパク質は、少なくとも一部のα−グロブリンポリペプチドを含む。「少なくとも一部」は、α−グロブリンポリペプチドが少なくとも1つのN−結合グリコシル化部位を含むことを意味する。
【0063】
第1のポリペプチドは、1つ以上の糖転移酵素によってグリコシル化される。第1のポリペプチドは、2、3、4、5以上の糖転移酵素によってグリコシル化される。グリコシル化は逐次的又は連続的である。或いは、グリコシル化は同時的又はランダムである。グリコシルトランスフェラーゼによって、N−結合グリカン鎖又はO−結合グリカン鎖(マンノシル化構造及びヒト様グリカンの両方)の産生に関与することが知られているグリコシルトランスフェラーゼが意味される。第1のポリペプチドは、その質量の40%、50%、60%、70%、80%、90%又は95%超が炭水化物によるものである。
【0064】
融合タンパク質の中で、「作動可能に結合」という用語は、第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドが、第1のポリペプチドのO−結合及び/又はN−結合グリコシル化を可能にする方法で化学的に結合する(最も典型的にはペプチド結合等の共有結合による)ことを示すことが意図される。融合ポリペプチドをコードする核酸を指すために用いられる場合、作動可能に結合という用語は、ムチン/ムチン型又はα−グロブリンポリペプチドをコードする核酸並びに非ムチンポリペプチドがインフレームで互いに融合することを意味する。非ムチンポリペプチドは、ムチン/ムチン型又はα−グロブリンポリペプチドのN末端又はC末端に融合することができる。
【0065】
Man融合タンパク質は、1つ以上の更なる部分に結合する。例えば、Man融合タンパク質は、Man融合タンパク質配列がGST(即ちグルタチオンSトランスフェラーゼ)配列のC末端に融合するGST融合タンパク質に更に結合することができる。かかる融合タンパク質は、Man融合タンパク質の精製を容易にすることができる。或いは、Man融合タンパク質は更に固体担体に結合することができる。各種の固体担体は当業者に周知である。かかる組成物は、抗血液型抗体の除去を容易にすることができる。例えば、Man融合タンパク質は、例えば金属化合物、シリカ、ラテックス、重合物質で構成される粒子;マイクロタイタープレート;ニトロセルロース又はナイロン或いはそれらの組み合わせに結合する。固体担体に結合するMan融合タンパク質は、胃組織、血液又は血漿等の生体試料から微生物、細菌毒素又は他のMan−結合タンパク質を除去するための吸収体として使用される。
【0066】
任意に、Man融合タンパク質は、ワクチンを形成するための抗原に結合する。「抗原」は、免疫応答が要求される任意の化合物を含む。抗原は、身体に導入される際に、B細胞からの抗体の産生、T細胞の活性化及び拡大並びにサイトカイン発現(例えばインターロイキン)等の免疫応答を刺激する任意の物質を含む。「B細胞」又は「Bリンパ球」によって、活性化の際に抗体作成に関与する免疫細胞が意味される。「T細胞」又は「Tリンパ球」によって、リンパ球の種類のメンバーが意味され、更に細胞障害性T細胞及びヘルパーT細胞と定義される。T細胞は、抗原をマークするエピトープを同定し、T細胞が異物と認識する異常な細胞を攻撃及び破壊することによって、全体的な免疫応答を調節及び調整する。抗原としては、例えば、毒素、細菌、異物の血球及び移植臓器の細胞が挙げられる。好ましくは、抗原は、C型肝炎、HIV、B型肝炎、パピローマウィルス、マラリア、結核、単純ヘルペスウィルス、クラミジア及びインフルエンザ、或いはその生物学的要素(例えばウィルスポリペプチド又は細菌ポリペプチド)である。本発明の実施形態において、アジュバントポリペプチドは抗原に共有結合する。例えば、Man融合タンパク質は、ペプチド結合等の共有結合によって抗原に結合する。抗原は、ムチンポリペプチドのN末端又はC末端に融合する。或いは、抗原は、ムチンポリペプチドの内部アミノ酸に融合する。「内部アミノ酸」によって、ポリペプチドのN末端又はC末端にないアミノ酸が意味される。同様に、抗原は、最も典型的にはペプチド結合等の共有結合によって、アジュバントポリペプチドの第2のポリペプチドに作動可能に結合する。抗原は、アジュバントポリペプチドの第2のポリペプチドのN末端又はC末端に融合する。或いは、抗原は、アジュバントポリペプチドの第2のポリペプチドの内部アミノ酸に融合する。
【0067】
Man融合タンパク質は、そのN末端に非相同のシグナル配列(即ちムチン又はグロブリン核酸によってコードされるポリペプチドに存在しないポリペプチド配列)を含む。例えば、天然のムチン又はα−糖タンパク質シグナル配列は、除去することができ、且つ別のタンパク質に由来するシグナル配列で置換することができる。特定の宿主細胞(例えば哺乳動物宿主細胞)において、ポリペプチドの発現及び/又は分泌は、非相同のシグナル配列を用いることにより増大させることができる。
【0068】
本発明のキメラタンパク質又は融合タンパク質は、標準的な組換えDNA技術によって作製することができる。例えば、種々のポリペプチド配列についてコードするDNAフラグメントは、従来手法(例えば、ライゲーションのための平滑末端又はスタッガー末端(stagger−ended)にした末端の使用、適当な末端を与えるための制限酵素での消化、必要に応じて粘着末端の充満、望ましくない結合を回避するためのアルカリホスファターゼ処理、及び酵素ライゲーション)に従って、共にインフレームでライゲーションされる。融合遺伝子は、自動DNAシンセサイザー等の従来手法によって合成される。或いは、遺伝子フラグメントのPCR増幅は、2つの連続した遺伝子フラグメントの間に相補的オーバーハングを生じるアンカープライマーを用いて行うことができ、これを次にアニーリングして、再増幅するとキメラ遺伝子配列を得ることができる(例えば、Ausubel et al.(eds.) CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY, John Wiley & Sons, 1992参照)。その上、融合部分(例えば、免疫グロブリンの重鎖のFc領域)をコードする多くの発現ベクターが市販されている。ムチン又はα−グロブリンをコードする核酸を、融合部分が免疫グロブリンタンパク質にインフレームで結合するように、かかる発現ベクターにクローニングすることができる。 Man融合ポリペプチドは、オリゴマー(例えばダイマー、トリマー又はペンタマー)として存在することができる。好ましくは、Man融合ポリペプチドはダイマーである。
【0069】
第1のポリペプチド及び/又は第1のポリペプチドをコードする核酸は、当該技術分野で周知のムチン/ムチン型又はα−グロブリンをコードする配列を用いて構築される。ムチンポリペプチド及びムチンポリペプチドをコードする核酸のための適切な供与源としては、それぞれGenBank受け入れ番号NP663625及びNM145650、CADI0625及びAJ417815、XP140694及びXM140694、XP006867及びXM006867並びにNP00331777及びNM009151が挙げられ、それらは開示内容全体が参考として本明細書で援用される。α−グロブリンポリペプチド及びα−グロブリンポリペプチドをコードする核酸のための適切な供与源としては、それぞれGenBank受け入れ番号AAH26238及びBC026238、NP000598及びBC012725、AAH12725及びBC012725並びにNP44570及びNM053288が挙げられ、それらはその開示内容全体が参考として本明細書で援用される。
【0070】
ムチンポリペプチド部分は、炭水化物含有量の増加(非突然変異配列との比較)をもたらす天然由来のムチン配列(野生型)における突然変異を有する変異体ムチンポリペプチドとして得られる。例えば、変異体ムチンポリペプチドは、野生型ムチンと比較して更なるO−結合グリコシル化部位を含んだ。或いは、変異体ムチンポリペプチドは、野生型ムチンポリペプチドよりもセリン残基、スレオニン残基又はプロリン残基の増加をもたらすアミノ酸配列変異を含む。この増加した炭水化物含有量は、当業者に周知の方法によってムチンのタンパク質対炭水化物比を決定することによって評価することができる。
【0071】
同様に、α−グロブリンポリペプチド部分は、炭水化物含有量の増加(非突然変異配列との比較)をもたらす天然由来のα−グロブリン配列(野生型)の突然変異を有する変異体α−グロブリンポリペプチドとして得られる。例えば、変異体α−グロブリンポリペプチドは、野生型α−グロブリンと比較して更なるN−結合グリコシル化部位を含んだ。
【0072】
或いは、ムチン又はα−グロブリンポリペプチド部分は、タンパク質分解に対してより大きな抵抗性(非突然変異配列との比較)があるムチン又はα−グロブリン配列をもたらす天然由来のムチン又はα−グロブリン配列(野生型)における突然変異を有する変異体ムチン又はα−グロブリンポリペプチドとして得られる。
【0073】
第1のポリペプチドは完全長のPSGL−1を含む。或いは、第1のポリペプチドは、PSGL−1の細胞外部分等の完全長に満たないPSGL−1ポリペプチドを含む。例えば、第1のポリペプチドは、長さが400未満のアミノ酸、例えば300、250、150、100、50又は25未満のアミノ酸である。
【0074】
第1のポリペプチドは完全長のアルファ酸−グロブリンを含む。或いは、第1のポリペプチドは、完全長に満たないアルファ酸グロブリンポリペプチドを含む。例えば、第1のポリペプチドは、長さが200未満のアミノ酸、例えば150、100、50又は25未満のアミノ酸である。
【0075】
第2のポリペプチドは、好ましくは可溶である。幾つかの実施形態において、第2のポリペプチドは、第2のムチン又はα−グロブリンポリペプチドとのMan融合ポリペプチドの会合を容易にする配列を含む。第2のポリペプチドは、免疫グロブリンポリペプチドの少なくとも1つの領域を含む。「少なくとも1つの領域」は、免疫グロブリン分子の任意の部分(例えば、軽鎖、重鎖、Fc領域、Fab領域、Fv領域又はそれらの任意のフラグメント)を包含するものとする。免疫グロブリン融合ポリペプチドは、当該技術分野で周知であり、例えば米国特許第5,516,964号;同第5,225,538号;同第5,428,130号;同第5,514,582号;同第5,714,147号;及び同第5,455,165号に記載される。
【0076】
第2のポリペプチドは完全長の免疫グロブリンポリペプチドを含む。或いは、第2のポリペプチドは、完全長に満たない免疫グロブリンポリペプチド、例えば、重鎖、軽鎖、Fab、Fab、Fv又はFcを含む。好ましくは、第2のポリペプチドは、免疫グロブリンポリペプチドの重鎖を含む。より好ましくは、第2のポリペプチドは、免疫グロブリンポリペプチドのFc領域を含む。
【0077】
第2のポリペプチドのエフェクター機能は、野生型免疫グロブリン重鎖のFc領域のエフェクター機能に劣る。或いは、第2のポリペプチドは、野生型免疫グロブリン重鎖のFc領域と同等又はそれ以上のエフェクター機能を有する。例えば、Fcエフェクター機能は、Fcレセプター結合、補体結合及びT細胞枯渇活性を含む。(例えば、米国特許第6,136,310号参照)。T細胞枯渇活性、Fcエフェクター機能及び抗体安定性をアッセイする方法は当該技術分野で周知である。一実施形態において、第2のポリペプチドは、Fcレセプターに対するアフィニティーが低いか、若しくはない。或いは、第2のポリペプチドは、補体タンパク質C1qに対するアフィニティーが低いか、若しくはない。
【0078】
本発明の別の態様は、ムチンポリペプチド或いはその誘導体、フラグメント、アナログ又はホモログをコードする核酸を含むベクター、好ましくは発現ベクターに関する。前記ベクターは、免疫グロブリンポリペプチド或いはその誘導体、フラグメントアナログ又はホモログをコードする核酸に作動可能に結合するムチン又はα−グロブリンポリペプチドをコードする核酸を含む。更に、ベクターは、糖転移酵素をコードする核酸を含む。本明細書で使用する「ベクター」という用語は、それが結合した別の核酸を移動させ得る核酸分子を指す。ベクターの1つのタイプは「プラスミド」であって、それは、更なるDNAセグメントがライゲーションし得る環状の2本鎖DNAループを指す。ベクターの別のタイプはウィルスベクターであって、更なるDNAセグメントはウィルスゲノムにライゲーションし得る。特定のベクターは、それが導入される宿主細胞内で自律複製が可能である(例えば、細菌の複製開始点とエピソーム哺乳類ベクターとを有する細菌ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳類ベクター)は、宿主細胞に導入される時点で宿主細胞のゲノムに組み込まれ、それによって宿主ゲノムと共に複製される。更に、ある種のベクターは、該ベクターが作動可能に結合する遺伝子の発現を導くことができる。かかるベクターを、本明細書では「発現ベクター」と称する。一般に、組換えDNA技術での有用性の発現ベクターは、多くの場合プラスミドの形態にある。本明細書では、プラスミドがベクターの最も一般的に用いられる形態であることから、「プラスミド」及び「ベクター」は区別なく用いられ得る。しかし、本発明は、そのような他の形態の発現ベクター、例えば等価な機能を果たすウィルスベクター(例えば、複製欠損レトロウィルス、アデノウィルス及びアデノ関連ウィルス)を含むものとする。
【0079】
本発明の組換え発現ベクターは、宿主細胞における核酸の発現に適した形態で本発明の核酸を含む。これは、組換え発現ベクターが、発現のために用いられる宿主細胞に基づいて選択され、発現される核酸配列に作動可能に結合した1つ以上の調節配列を含むことを意味する。組換え発現ベクターにおいて、「作動可能に結合」とは、対象のヌクレオチド配列が、ヌクレオチド配列の発現を可能にするように、調節配列に結合することを意味するものとする(例えば、in vitro転写/翻訳系において、又はベクターが宿主細胞に導入される場合には宿主細胞において)。
【0080】
「調節配列」という用語には、プロモーター、エンハンサー及び他の発現制御要素(例えば、ポリアデニル化シグナル)が含まれるものとする。そのような調節配列は、例えば、Goeddel,GENE EXPRESSION TECHNOLOGY: METHODS IN ENZYMOLOGY 185, Academic Press, San Diego, Calif. (1990)に記載されている。調節配列には、多くのタイプの宿主細胞においてヌクレオチド配列の構成的発現を導く配列、及び特定の宿主細胞においてのみヌクレオチド配列の発現を導く配列(例えば、組織特異的調節配列)が含まれる。発現ベクターの設計が、形質転換すべき宿主細胞の選択、所望のタンパク質の発現レベル等のような要因に依存し得ることは、当業者によって認識されるであろう。本発明の発現ベクターを宿主細胞に導入し、それによって本明細書に記載される核酸によってコードされる融合タンパク質又はペプチド等のタンパク質又はペプチドを産生することができる(例えば、Man融合ポリペプチド、Man融合ポリペプチドの変異形等)。
【0081】
本発明の組換え発現ベクターは、原核生物細胞又は真核生物細胞におけるMan融合ポリペプチドの発現のために設計することができる。好ましくは、Man融合タンパク質は真核細胞において発現される。最も好ましくは、Man−融合タンパク質は、酵母細胞(Pichia pastoris、Pichia finlandica、Pichia trehalophila、Pichia koclamae、Pichia membranaefaciens、Pichia opuntiae、Pichia thermotolerans、Pichia salictaria、Pichia guercuum、Pichiapyperi、Pichia stiptis、Pichia methanolica、ピキア種、Saccharomyces cerevisiae、サッカロミセス種、Hansenula polymorpha、クルイヴェロマイシス種、Candida albicans、Aspergillus nidulans又はTrichoderma reesei)において発現される。
【0082】
Man融合ポリペプチド発現ベクターは、酵母発現ベクターである。酵母Saccharomyces cerevisiaeにおける発現のためのベクターの例としては、pYepSecl(Baldari, et al.,1987.EMBO J. 6:229−234)、pMFa(Kurjan and Herskowitz,1982.Cell 30:933−943)、pJRY88(Schultz et al.,1987. Gene 54: 113−123)、pYES2(Invitrogen Corporation,カリフォルニア州サンディエゴ)及びpicZ(Invitrogen Corp,カリフォルニア州サンディエゴ)が挙げられる。
【0083】
本発明の別の態様において、本発明の組換え発現ベクターが導入された宿主細胞に関する。「宿主細胞」及び「組換え宿主細胞」という用語は、本明細書において区別なく用いられる。かかる用語は、特定の被験細胞のみならず、かかる細胞の後代又は潜在的な後代を意味すると理解される。変異又は環境の影響により、特定の修飾がその後の世代に起こる可能性があるため、かかる後代は、実際には親細胞とは同一でない可能性があるが、それでもなお本明細書において用いられる用語の範囲に含まれる。
【0084】
宿主細胞は、任意の原核細胞又は真核細胞であり得る。例えば、Man融合ポリペプチドは、細菌細胞(例えば大腸菌)、昆虫細胞、酵母又は哺乳類細胞(例えばヒト、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)又はコス細胞)内で発現され得る。他の適切な宿主細胞は当業者に周知である。好ましくは、宿主細胞は酵母である。
【0085】
ベクターDNAは、従来の形質転換又はトランスフェクション技術によって、原核細胞内又は真核細胞内に導入することができる。本明細書において使用される「形質転換」及び「トランスフェクション」という用語は、リン酸カルシウム又は塩化カルシウムの共沈、DEAE−デキストラン仲介トランスフェクション、リポフェクション或いはエレクトロポレーションを含む、宿主細胞に外来性核酸(例えばDNA)を導入するための、当該技術分野で認識された多様な技術を意味するものとする。宿主細胞を形質転換又はトランスフェクションさせる適切な方法は、Sambrook,et al.(MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL. 2nd ed., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1989)及び他の実験マニュアルに記載だれている。
【0086】
哺乳類細胞の安定的トランスフェクションのために、用いる発現ベクター及びトランスフェクション技術に応じて、細胞のごく一部の分画が外来性DNAをそのゲノム内に組み入れる可能性があることが知られている。これらの成分を同定及び選択するために、選択マーカー(例えば、抗生物質に対する耐性)をコードする遺伝子を、一般的に対象の遺伝子と共に宿主細胞に導入する。各種の選択マーカーとしては、G418、ヒグロマイシン及びメトトレキサート等の、薬物に対する耐性を付与するものが挙げられる。選択マーカーをコードする核酸は、融合ポリペプチドをコードするものと同じベクターにおける宿主細胞に導入することができるか、若しくは別々のベクターにおいて導入することができる。導入された核酸により安定的にトランスフェクションされた細胞は、薬物選択によって同定することができる(例えば、選択マーカー遺伝子を組み込んだ細胞は生存するが、他の細胞は死滅する)。
【0087】
培養における原核宿主細胞又は真核宿主細胞等の本発明の宿主細胞は、Man融合ポリペプチドを産生(すなわち、発現)するために用いることができる。従って、本発明は更に、本発明の宿主細胞を用いてMan融合ポリペプチドを産生する方法を提供する。一実施形態において、前記方法は、Man融合ポリペプチドが産生されるように、適切な培地中で本発明の宿主細胞(その中にMan融合ポリペプチドをコードする組換え発現ベクターが導入されている)を培養することを含む。別の一実施形態において、前記方法は更に、培地又は宿主細胞からManポリペプチドを単離することを含む。
【0088】
Man融合ポリペプチドは、例えば抽出、析出、クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、電気泳動法等の従来の条件に従って単離及び精製することができる。例えば、免疫グロブリン融合タンパク質は、選択的に融合タンパク質のFc部分に結合する不溶化タンパク質A又は不溶化タンパク質Gを含むカラムに溶液を通すことによって精製され得る。例えば、Reis, K. J., et al.,J. Immunol. 132:3098−3102 (1984);PCT出願公開WO87/00329号を参照のこと。融合ポリペプチドは、カオトロピック塩による処理又は含水酢酸(1M)による溶出によって溶出した。
【0089】
或いは、本発明におけるMan融合ポリペプチドは、当該技術分野で周知の方法を用いて化学的に合成することができる。例えば、ポリペプチドの化学的合成法が記載される。ペプチドシンセサイザーを使用する合成を含む種々のタンパク質合成方法が当該技術分野で一般的である。例えば、Peptide Chemistry, A Practical Textbook, Bodasnsky Ed.Springer−Verlag, 1988;Merrifield, Science 232:241−247 (1986);Barany, et al,Intl. J. Peptide Protein Res. 30:705−739 (1987);Kent, Ann. Rev. Biochem. 57:957−989 (1988)及びKaiser, et al, Science 243:187−198 (1989)を参照のこと。標準的ペプチド精製技術を用いて、化学的前駆体や他の化学物質を実質的に含むことがないように、ポリペプチドが精製される。「実質的に化学的前駆体や他の化学物質を含まない」という言葉は、ペプチドの合成に関与する化学的前駆体又は他の化学物質からペプチドが分離されるペプチドの調製を含む。一実施形態において、「実質的に化学的前駆体や他の化学物質を含まない」という言葉は、化学的前駆体又は非ペプチド化学物質の約30%未満(乾燥重量で)、より好ましくは化学的前駆体又は非ペプチド化学物質の約20%未満、更により好ましくは化学的前駆体又は非ペプチド化学物質の約10%未満、及び最も好ましくは化学的前駆体又は非ペプチド化学物質の約5%未満を有するペプチドの調製を含む。
【0090】
ポリペプチドの化学的合成は、D−アミノ酸及び他の有機小分子を含む修飾又は非天然アミノ酸の組込みを容易にする。相当するD−アミノ酸アイソフォームによるペプチド内の1つ以上のLアミノ酸の置換を用いて、酵素加水分解に対するペプチドの抵抗性を増大させることが可能であり、且つ生物活性ペプチドの1つ以上の性質、即ちレセプター結合、作動可能能力又は作用持続時間を高めることが可能である。例えば、Doherty, et al.,1993. J. Med. Chem. 36:2585−2594;Kirby,et al.,1993. J. Med. Chem. 36:3802−3808;Morita, et al.,1994. FEBS Lett. 353:84−88;Wang, et al.,1993. Int. J. Pept. Protein Res. 42:392−399;Fauchere and Thiunieau, 1992. Adv. Drug Res. 23:127−159を参照のこと。
【0091】
ペプチド配列への共有結合架橋の導入によって、ポリペプチド骨格は、立体配座的及び組織分布的に束縛され得る。このストラテジーは、能力、選択性及び安定性が増大した融合ポリペプチドのペプチドアナログを開発するのに使用され得る。環状ペプチドの配座エントロピーはその直鎖状の対応物よりも低いため、特異的な配座の採用は、非環状アナログについてのエントロピーよりも環状アナログについて生じるエントロピーの低下が小さく生じ得、それによって、結合のための自由エネルギーがより有利になる。大環状化は、ペプチドN末端とC末端との間、側鎖とN末端またはC末端との間[例えば、pH8.5のKFe(CN)によって](Samson et al.,Endocrinology, 137:5182−5185(1996))、又は2つのアミノ酸側鎖の間でアミド結合を形成することにより多くの場合達成される。例えば、DeGrado, Adv Protein Chem, 39:51−124(1988)を参照のこと。ジスルフィド架橋はまた、それらの可撓性を低下させるために、直鎖配列に導入される。例えば、Rose, et al., Adv Protein Chem, 37:1−109(1985);Mosberg et al.,Biochem Biophys Res Commun, 106:505−512(1982)を参照のこと。更に、ペニシラミン(Pen,3−メルカプト−(D)バリン)によるシステイン残基の置換は、幾つかのオピオイドレセプター相互作用の選択性を増大するために使用されている。Lipkowski and Carr, Peptides:Synthesis, Structures, and Applications, Gutte, ed.,Academic Press pp.287−320(1995)。
【0092】
免疫化の方法
また、本発明のMan−融合タンパク質は、ワクチンのアジュバントとしても有用である。本発明のワクチンは、アジュバントポリペプチドが欠如している他のワクチンよりも優れた免疫予防的性質及び免疫療法的性質を有する。ムチン−Ig融合タンパク質を含むワクチンは、免疫原性、安全性、耐容性及び有効性が高められる。例えば、本発明のワクチンの高められた免疫原性は、抗体の産生及び/又は分泌、T細胞の活性化及び拡大並びにサイトカイン発現(例えばインターロイキンの産生)等の免疫応答の刺激で測定される場合、比較の非アジュバントポリペプチドを含有するワクチンよりも1.5倍、2倍、3倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍以上大きい。
【0093】
癌細胞の細胞表面は、多くの場合、非癌性細胞の表面上に存在しない特異的な炭水化物、ポリペプチド及び他の潜在的な抗体エピトープを含む。この抗原の不同性によって、身体の免疫系が癌細胞を検出し且つそれに応答することが可能になる。ムチンポリペプチドは、様々な癌に関連している。例えば、PSGL−1は、肺癌や急性骨髄性白血病等の癌に関連している(Kappelmayer et al.,Br J Haematol. 2001, 115(4):903−9参照)。また、MUC1−特異的抗体は、乳癌、膵臓癌及び大腸癌患者の血清から検出されている。ムチンがヒト免疫系によって認識され得ることは明らかであり、それ故、特異性抗原を発現する腫瘍細胞に対する免疫は、ムチン−Ig融合タンパク質及び腫瘍細胞特異性抗原を含むワクチンによって誘導されることになる。腫瘍細胞に対する免疫は、腫瘍サイズの減少の程度、腫瘍血管新生の減少、被験体の増大、又は腫瘍細胞アポトーシスの増加によって測定される。
【0094】
本発明は、被験体の免疫法を提供するものである。被験体は、アジュバントポリペプチド(例えばMan融合タンパク質及び抗原)を含むワクチンを被験体に投与することによって免疫化される。被験体は、例えば細菌感染症、ウィルス感染症又は真菌感染症等の感染症を発症するリスクがあるか、若しくは患っている。感染症としては、C型肝炎、HIV、B型肝炎、パピローマウィルス、マラリア、結核、単純ヘルペスウィルス、クラミジア又はインフルエンザが挙げられる。或いは、被験体は、癌を発症するリスクがあるか、若しくは患っている。例えば、癌としては、乳癌、肺癌、大腸癌、前立腺癌、膵臓癌、子宮頸癌又は黒色腫が挙げられる。
【0095】
本明細書に記載される方法は、感染症又は癌の1つ以上の症候の重症度の低下或いは緩和につながる。感染症及び癌は、通常は医師によって、標準的方法を使用して、診断及び/又はモニターされる。免疫化を必要とする被験体は、当該技術分野で周知の方法によって同定される。例えば、被験体は、CDCの General Recommendation on Immunization (51 (RR02) pp1−36)で概説される通りに免疫化される。癌は、理学的検査、生検、血液検査又はX線によって診断される。
【0096】
被験体は、例えば任意の哺乳類(例えば、ヒト、霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタ)である。治療は、病気の診断前に施される。或いは、治療は、診断後に施される。
【0097】
治療の効果は、特定の病気を診断又は治療する任意の既知の方法に関連して決定される。病気の1つ以上の症候の緩和は、前記化合物が臨床的有益性を付与することを示す。「効果的」とは、前記治療が、被験体における癌のサイズ、有病率又は転移可能性の低下につながることを意味する。治療が予防的に行われる場合、「効果的」は、前記治療によって腫瘍の形成が遅延又は予防されるか、若しくは癌の症候が遅延、予防又は緩和されることを意味する。癌の評価は、標準的な臨床的プロトコールが用いられる。同様に、免疫化の臨床的有益性の増加は、例えば受診の減少及び集団における疾患の負荷の減少によって決定される。
【0098】
抗体分泌を増加させる方法
本発明は、細胞における抗体の産生及び/又は分泌を増大又は刺激する方法を提供するものである。前記細胞はB細胞等の抗体産生細胞である。或いは、前記細胞は、T細胞(Th及びTc)、マクロファージ、樹状細胞等の、B細胞による抗体産生を増大させる細胞である。
【0099】
細胞による抗体分泌は、アジュバントポリペプチド及び抗原を含むワクチンを細胞に接触させることによって増加する。細胞による抗体分泌は、例えばB細胞を刺激することによって直接増加し得、或いは例えばT細胞を活性化し、次いでB細胞を刺激してT細胞(例えばヘルパーT細胞)を刺激することによって間接的に増加し得る。抗体の産生及び/又は分泌の増加は、ELISA、沈降反応及び凝集反応等の、当業者に周知の方法によって測定される。
【0100】
免疫細胞活性化を増大させる方法
本発明は、免疫細胞(例えばB細胞又はT細胞)を活性化又は刺激する方法を提供するものである。T細胞の活性化は、カルシウム仲介細胞内cGMPの増加、又はIL−2のための細胞表面レセプターの増加によって定義される、例えば、T細胞活性化の増加は、ワクチンがない場合よりも、ワクチンをT細胞に接触させた後のカルシウム仲介細胞内cGMP及び/又はIL−2レセプターが増加することを特徴とする。細胞内cGMPは、例えば、市販の試験キットを使用して、競合イムノアッセイ又はシンチレーション近接アッセイによって測定される。細胞表面IL−2レセプターは、例えば、PC61抗体等のIL−2レセプター抗体への結合を決定することによって測定される。また、免疫細胞活性化は、当該技術分野で周知の方法によって、B細胞増殖活性、ポリクローナル免疫グロブリン(Ig)産生及び抗原特異性抗体産生を測定することによって決定することができる。
【0101】
医薬組成物
本発明の融合ペプチドは、医薬組成物において調製することができる。これらの組成物は、上記の物質の内の1つに加えて、当業者に周知の薬学的に許容される賦形剤、担体、緩衝液、安定剤又はその他の材料を含むことができる。かかる材料は、無毒性である必要があり、活性成分の有効性を妨げてはならない。担体又は他の材料の明確な性質は、投与経路(例えば経口経路、静脈内経路、皮膚経路又は皮下経路、経鼻経路、筋肉内経路、腹腔内経路或いは貼付剤経路)に依存し得る。
【0102】
経口投与用医薬組成物は、錠剤、カプセル剤、粉剤又は液体の形態であってよい。錠剤は、ゼラチンやアジュバント等の固体担体を含むことができる。液体医薬組成物は、一般に液体担体、例えば水、石油、動物油、植物油、鉱油又は合成油を含む。生理的食塩水、デキストロース又はその他のサッカライド溶液或いはグリコール(例えばエチレングリコール、プロピレングリコール又はポリエチレングリコール)が含まれ得る。
【0103】
静脈内注射、皮膚注射又は皮下注射或いは苦痛部位の注射のために、活性成分は、発熱性物質を含まず且つ適切なpH、等張性及び安定性を有する非経口的に投与し得る水溶液の形態をとる。関連業者は、例えば等張性のビヒクル(例えば塩化ナトリウム注射液、リンゲル液、乳酸加リンゲル液)を使用して適切な溶液を調製することが十分に可能である。必要に応じて、保存剤、安定剤、緩衝液、抗酸化剤及び/又は他の添加剤を含むことができる。
【0104】
それが、ポリペプチド、ペプチド又は核酸分子であろうと、個体に与えられる本発明における他の医薬的に有用な化合物であろうと、投与は、「予防上有効量」又は「治療上有効量」におけるものが好ましく(場合によっては、予防を治療と考えることができるが)、これは個体に有益性を示すのに十分である。実際の投与量並びに投与速度及び時間経過は、治療対象の性質及び重症度に依存する。例えば、治療の処方(例えば投与量の決定等)は、一般医及び他の医師の責任であり、通常は、治療すべき病気、個々の患者の症状、送達部位、投与方法、及び専門家に周知の他の要素が考慮される。前述の手法及びプロトコールは、REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES, 16th edition, Osol, A.(ed),1980に記載がある。
【0105】
或いは、ターゲティングシステム(例えば抗体又は細胞特異的リガンド)を用いて、細胞の特定のタイプにより特異的に活性薬剤を送達するために、ターゲッティング療法を用いることができる。例えば、剤が容認できないほどの毒性を有する場合、さもなければあまりに多くの投与量を必要とする場合、さもなければ剤が標的細胞に入ることができない場合、ターゲティングは種々の理由のために望ましくあり得る。
【0106】
直接これらの剤を投与する代わりに、例えばウィルスベクター(VDEPT技術の変異体−下記参照)において、細胞に導入されるコード遺伝子からの発現によって、前記剤は標的細胞内で産生することができる。ベクターは、治療すべき特定の細胞を標的とするか、若しくは標的細胞によって多少選択的に切り替えられる調節エレメントを含むことができる。
【0107】
或いは、治療すべき細胞において又は治療すべき細胞を標的とする活性化剤による活性化状態への変換のために、剤を前駆体の形態で投与することができる。このタイプのアプローチは、多くの場合ADEPT又はVDEPTとして知られている。ADEPTは、細胞特異的抗体に共役することによって細胞に活性化剤を標的とすることを含み、一方でVDEPTは、ウィルスベクター内でコードするDNAからの発現によって、ベクター内で活性化剤(例えばワクチン又は融合タンパク質)を産生することを含む(例えば、EP−A−415731及びWO90/07936参照)。
【0108】
本発明の特定の実施形態において、核酸は、ワクチンをコードする配列を含むか、若しくはその機能性誘導体は、遺伝子治療を経由して免疫細胞活性化を調節するために投与される。より具体的な実施形態において、ワクチン又は融合タンパク質をコードする1つ以上の核酸或いはその機能性誘導体は、遺伝子治療を経由して投与される。遺伝子治療とは、被験体への特異的な核酸の投与によって実施される治療をいう。本発明のこの実施形態において、核酸は、そのコードされたペプチドを産生するものであって、そのペプチドは、次いで、疾患又は障害の機能を調節することによって治療効果を及ぼす。遺伝子治療に関する方法のいずれもが、本発明の実施において用いられ得る。例えば、Goldspiel, et al.,1993. Clin Pharm 12:488−505参照。
【0109】
好ましい実施形態において、前記治療剤は、適切な宿主の中で、ワクチン、融合タンパク質又はフラグメント、その誘導体又はアナログの内のいずれか1つ以上を発現する発現ベクターの一部である核酸を含む。特定の実施形態において、かかる核酸は、融合タンパク質のコード領域に作動可能に結合するプロモーターを有する。プロモーターは、誘導性又は構成的であり得、そして必要に応じて組織特異性であり得る。別の特定の実施形態において、コード配列(及び任意の他の所望の配列)にゲノム内の所望の部位で相同組換えを促進する領域が隣接し、それにより核酸の染色体内の発現をもたらす核酸分子が使用される。例えば、Koller and Smithies,1989. Proc Natl Acad Sci USA 86:8932−8935を参照のこと。
【0110】
治療剤核酸の患者への送達は、直接(即ち、核酸又は核酸含有ベクターへの直接的な曝露)又は間接的(即ち、細胞はまず核酸でin vitroで形質転換され、次いで患者へと移植される)のいずれかであり得る。これら2つのアプローチは、それぞれ、in vivo又はエクスビボの遺伝子治療として知られる。本発明の特定の実施形態において、核酸は、in vivoで直接投与され、ここで核酸が発現されて、コードされる産物が産生される。これは、以下を含む、当該技術分野で知られた多数の方法のいずれかにより達成され得る:例えば、核酸を適切な核酸発現ベクターの部分として構築すること、そしてこの核酸を、それが細胞内に存在するように投与すること(例えば、欠損又は弱毒化レトロウィルス或いは他のウィルスベクターを用いた感染による;米国特許第4,980,286号参照);裸のDNAを直接注射すること;微粒子ボンバードメントを使用すること(例えば、Gene Gun(登録商標);Biolistic,DuPont);脂質によって核酸をコーティングすること;関連する細胞表面レセプター/トランスフェクション剤を使用すること;リポソーム、微粒子または微小カプセル中へカプセル化すること;核へ侵入することが知られるペプチドと共にそれを投与すること;又はレセプター依存性エンドサイトーシスへの傾向があるリガンドと共にそれを投与すること(例えば、Wu and Wu, 1987. J Biol Chem 262:4429−4432参照)(これは、対象のレセプターを特異的に発現する細胞型を「標的化」するために使用され得る)等。
【0111】
本発明の実施における遺伝子治療の更なるアプローチは、エレクトロポレーション、リポフェクション、リン酸カルシウム仲介トランスフェクション、ウィルス感染等の方法によって細胞における遺伝子をin vitroで組織培養物に移入させることを含む。一般に、この移入方法としては、細胞への選択マーカーの同時移入が挙げられる。次いで、この細胞を選択圧下に置き(例えば抗生物質抵抗性)、移入された遺伝子を取り込んで発現しつつある細胞の単離を容易にする。次いで、これらの細胞を、患者に送達する。特定の実施形態において、得られた組換え細胞のin vivo投与の前に、核酸は、当該技術分野において周知の任意の方法によって細胞に導入される。この方法としては、例えば、トランスフェクション、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、対象の核酸配列を含むウィルスベクター又はバクテリオファージベクターによる感染、細胞融合、染色体仲介遺伝子移入、微小細胞仲介遺伝子移入、スフェロプラスト融合、及びその移入によってレシピエント細胞の必要な発育機能及び生理的機能が破壊されないことを確実にする類似の方法が挙げられる。例えば、Loeffler and Behr,1993. Meth Enzymol 217:599−618を参照のこと。選択された技術は、細胞へ核酸を安定的に移入することを提供し、その結果、核酸は、その細胞によって発現され得る。好ましくは、移入される核酸は、その細胞後代によって遺伝され得、そして発現され得る。
【0112】
本発明の好ましい実施形態において、得られた組換え細胞は、当該技術分野において知られた種々の方法によって患者に送達され得る。これらの方法としては、例えば、上皮細胞の注射(例えば、皮下注射)、組換え皮膚細胞を皮膚移植片として患者に貼り付けること、及び組換え血液細胞(例えば、造血幹細胞又は前駆細胞)を静脈内注射することが挙げられる。使用が想定される細胞の全量は、所望の効果、患者の状態等に依存し、そして当業者によって決定され得る。
【0113】
核酸が遺伝子治療の目的で導入され得る細胞は、任意の所望の利用可能な細胞型を包含し、そして異種(xenogeneic)、異種遺伝子型(heterogeneic)、同系(syngeneic)又はオートジェニック(autogeneic)であり得る。細胞型としては、分化細胞(例えば、上皮細胞、内皮細胞、ケラチノサイト、線維芽細胞、筋肉細胞、肝細胞及び血液細胞)、或いは幹細胞又は前駆細胞(特に、肺性心筋細胞、肝幹細胞(国際特許公開WO94/08598)、神経幹細胞(Stemple and Anderson,1992, Cell 71:973−985)、造血幹細胞又は前駆細胞(例えば、骨髄、臍帯血、末梢血、胎児肝臓等から得られた細胞)が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい実施形態において、遺伝子治療に利用される細胞は、患者にとって自己由来である。
【0114】
また、本発明のワクチンは1つ以上のアジュバント化合物を含む。アジュバント化合物は、それらが貯蔵物として機能することによってワクチンの長期放出を向上させるという点で有用である。ワクチンに対する長時間曝露によって、抗体応答の期間と同様に、プロセッシングのための抗原による免疫系の発現の時間が増大する。また、アジュバント化合物は、例えば免疫細胞を刺激又は調節することによって、免疫細胞と相互作用する。更に、アジュバント化合物は、粒子(担体/ビヒクル機能)としてのワクチンと結合した後、マクロファージによる食作用を高める。
【0115】
本発明に有用なアジュバント化合物としては、完全フロインドアジュバント(CFA);不完全フロインドアジュバント(IFA);Montanide ISA(不完全セピックアジュバント(incomplete seppic adjuvant);Ribiアジュバント系(RAS);TiterMax;シンテックスアジュバント製剤(Syntex Adjuvant Formulation)(SAF);アルミニウム塩アジュバント;ニトロセルロース吸着抗原;カプセルに入れた抗原又は封入した抗原;免疫刺激的な複合体(ISCOM);及びGerbu(登録商標)アジュバントが挙げられる。
【実施例】
【0116】
実施例1:酵母Pichia pastorisにおけるムチン型(PSGL−1/MIGG2B)及びα−酸糖タンパク質(AGP/MIGG2B)融合タンパク質の発現
ムチン様タンパク質の細胞外の部分(P−セレクチン糖タンパク質リガンド−1)を含む融合タンパク質のためのcDNA配列、或いはα−酸糖タンパク質のための翻訳停止及びマウスIgG2bのFc部分を除くコード配列全体を、ピキアパストリス(P.pastoris)のための発現ベクターにサブクローニングする。PSGL−1/mIgG2bは主にO−グリカンを担持するが、一方でAGP/mIgG2bはN−グリコシル化されるだけである。酵母はトランスフェクションされ、選択薬物としてZeocinを使用して安定的なトランスフェクタントを選択する。分泌された融合タンパク質は、アフィニティクロマトグラフィー及びゲル濾過によって精製され、そしてβ−除去及びPNGase F消化によってそれぞれO−グリカン及びN−グリカンが放出される。放出された糖類は、質量分析法によって特徴が記述される。構造キャラクタリゼーションの焦点はO−グリカンにあるが、それはO−グリカンが以前には詳細な特徴が記述されていないからであり、そして我々の長期的な目標が、ピキアパストリス(P.pastoris)を設計してよりヒト様のO−グリカンを合成することにあるからである。
【0117】
実施例2:マクロファージ及び樹状細胞のマンノースレセプター並びに血清におけるマンノースレセプターに結合するPichia pastoris産生PSGL−1/MIGG2B及びAGP/MIGG2Bの能力の評価
野生型ピキア属において産生されるPSGL−1及びAGPの免疫グロブリン融合タンパク質を、実験において精製及び使用し、マクロファージレセプター結合を評価する。この目的で、単離されたマクロファージ及び樹状細胞を使用して、マンノシル化融合タンパク質の、蛍光ナノ粒子とマイクロ粒子とタンパク質(即ち緑色蛍光タンパク質)とのトレーサ粒子及びタンパク質へ共有結合後の取り込みを促進する能力を評価する。同様に、モデルタンパク質の免疫原性に対するマンノシル化の効果を、マンノシル化融合タンパク質へのその共役、抗原提示細胞(MO及びDC)による取り込み、及び精製CD4及びCD8Tリンパ球群による次のインキュベーション後に、テストする。同様に、血清に由来するマンナン結合レクチン(MBL)を、ピキア属において産生される各種の融合タンパク質に結合する能力に関してテストする。我々は、これにより、MBLへの結合に重要なマンノース構造(N−結合又はO−結合)はどれかについてのなんらかの情報を得るものと考える。
【0118】
実施例3:酵母Pichia pastorisによって産生されるO−グリカンのレパートリーのヒト化
次のステップは、ヒト化O−グリカンレパートリーを有するPSGL−1/mIgG2Bを発現することである。この目的で、我々は、1つ又は幾つかのUDP−N−アセチル−D−ガラクトサミニド:ポリペプチドN―アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ(ppGalNAc−Ts)を共発現し、それは、ペプチド配列特異的な方法でペプチド鎖におけるアミノ酸のセリン又はスレオニンにN−アセチルガラクトサミン残基を付加する酵素である。最初に、我々は、酵素の天然形態を発現する。これが結果として誤ったER/ゴルジ局在化になる場合、我々は、ppGalNAc−Tの触媒ドメインが、第1のマンノース残基をペプチド鎖に結合する酵母特異的マンノシルトランスフェラーゼの膜貫通領域に融合された酵素のキメラ形態を発現させる。これが機能しない場合、ピキア属の他のII型タンパク質からの膜貫通シグナル配列を試みる。更に、我々は、おそらく、ピキア属O−グリカンの生合成に関与する各種のマンノシルトランスフェラーゼの発現を非発現化することを必要とする。相同組換えによる完全な非発現化が致死的である場合、我々はsiRNA技術を用いて部分的な遺伝子の非発現化を達成することを試みる。内在性マンノシルトランスフェラーゼの非発現化は、酵母生存度を維持して、マンノース残基の代わりのGalNAc残基の移入に有利となるのに十分な平衡状態を変えることができる。更に、ピキア属におけるヒト様O−グリカンレパートリーを得るために、それはまた、ゴルジ膜を通してUDP−GalNAcを取得する輸送体を発現するのに必要であり得る。ヒトグリコシルトランスフェラーゼを担持する突然変異体酵母コロニーは、レクチンブロットによって同定する。要するに、成長する酵母コロニーのレプリカは、分泌されたPSGL−1/mIgG融合タンパク質を捕捉するためにニトロセルロース膜でそれらをおおうことによって作製する。洗浄後、膜を、既知の炭水化物特異性のレクチンでプローブする。PSGL−1 Ig融合における所望のグリカンを有する酵母のコロニーは更に拡大し、融合タンパク質によって担持されるO−グリカンレパートリーはその精製後に構造的に特徴が記述される。組換えタンパク質は、上記の通りに精製されて、構造的に特徴が記述される。開始するグリコシル化ステップが成功である場合、最も内部の糖は、治療能のエピトープが作製され得るように、更なるグリコシルトランスフェラーゼ遺伝子を導入することによって構築することができる。
他の実施形態
本発明は、その詳細な説明に関連して記載されたが、上記記述は、添付の請求の範囲によって定義される本発明の範囲を例示することを意図するものであって、限定することを意図するものではない。他の態様、利点及び改変は、以下の請求項の範囲内である。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】誘導の0、24、48及び72時間におけるピキアパストリス(Pichia.pastoris)の種々のクローンにおいて産生されたPSGL−1/mIgG2b融合タンパク質のウエスタンブロット分析の写真。融合タンパク質は、4〜12%のビストリスゲルにおける非還元条件下で分析され、ニトロセルロース膜上に電気ブロッティングされ、そしてHRP結合ヤギ抗mIgG(Fc)抗体で染色される。
【図2】Pichia pastorisの種々のクローン(1〜5)において産生されるPSGL−1/mIgG2b融合タンパク質のウエスタンブロット分析の写真である。融合タンパク質は、4〜12%のビストリスゲルにおける非還元条件下で分析され、ニトロセルロース膜上に電気ブロッティングされ、そしてA)HRP結合ヤギ抗mIgG(Fc)抗体、及びB)マンノシル化グリカン構造を認識するレクチンコンカナバリンAで染色される。
【図3】Pichia pastorisの種々のクローン(1〜4)において産生されるAGP−1/mIgG2b融合タンパク質(a、溶解細胞;b、細胞上澄液)のウエスタンブロット分析の写真。融合タンパク質は、4〜12%のビストリスゲルにおける非還元条件下で分析され、ニトロセルロース膜上に電気ブロッティングされ、そしてA)HRP結合ヤギ抗mIgG(Fc)抗体、及びB)CHO細胞において産生されるPSGL−1/mIgG2bに相当する抗−AGP−1抗体Cで染色される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第2のポリペプチドに作動可能に結合する第1のポリペプチドを含む融合ポリペプチドであって、該第1のポリペプチドがマンノシル化され、該第2のポリペプチドが免疫グロブリンポリペプチドの少なくとも1つの領域を含む、融合ポリペプチド。
【請求項2】
前記第1のポリペプチドがムチンポリペプチドである、請求項1に記載の融合ポリペプチド。
【請求項3】
前記ムチンが、PSGL−1、MUC1、MUC2、MUC3a、MUC3b、MUC4、MUC5a、MUC5b、MUC5c、MUC6、MUC10、MUC11、MUC12、MUC13、MUC15、MUC16、MUC17、CD34、CD43、CD45、CD96、GlyCAM−1、MAdCAM又はそのフラグメントからなる群から選択される、請求項2に記載の融合ポリペプチド。
【請求項4】
前記ムチンポリペプチドがP−セレクチン糖タンパク質リガンド−1の少なくとも1つの領域を含む、請求項2に記載の融合ポリペプチド。
【請求項5】
前記ムチンポリペプチドがP−セレクチン糖タンパク質リガンド−1の細胞外の部分を含む、請求項2に記載の融合ポリペプチド。
【請求項6】
前記第1のポリペプチドがアルファ糖タンパク質ポリペプチドである、請求項1に記載の融合ポリペプチド。
【請求項7】
前記第1のポリペプチドがα−1−酸糖タンパク質の少なくとも1つの領域を含む、請求項1に記載の融合ポリペプチド。
【請求項8】
前記第2のポリペプチドが重鎖の免疫グロブリンポリペプチドの領域を含む、請求項1に記載の融合ポリペプチド。
【請求項9】
前記第2のポリペプチドが免疫グロブリン重鎖のFc領域を含む、請求項1に記載の融合ポリペプチド。
【請求項10】
請求項1に記載の融合ポリペプチドを含むアジュバント組成物。
【請求項11】
Galα1,3Galエピトープを担持するポリペプチドを更に含む請求項10に記載のアジュバント組成物。
【請求項12】
ワクチン摂取を必要とする被験体にワクチン接種する方法であって、請求項10又は11に記載のアジュバント及び抗原を含む組成物を該被験体に投与することを含む、方法。
【請求項13】
請求項1に記載の融合ポリペプチドを産生するように遺伝子組み換えされた、酵母細胞。
【請求項14】
前記細胞がPichia pastoris、Pichia finlandica、Pichia trehalophila、Pichia koclamae、Pichia membranaefaciens、Pichia opuntiae、Pichia thermotolerans、Pichia salictaria、Pichia guercuum、Pichia pyperi、Pichia stiptis、Pichia methanolica、ピキア種、Saccharomyces cerevisiae、サッカロミセス種、Hansenula polymorpha、クルイヴェロマイシス種、Candida albicans、Aspergillus nidulans又はTrichoderma reeseiである、請求項13に記載の酵母細胞。
【請求項15】
O−結合グリカンを有することを特徴とするヒト様糖タンパク質を産生する、遺伝子組み換えされた下等真核細胞。
【請求項16】
前記細胞がN−アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼを発現する、請求項15に記載の細胞。
【請求項17】
N−アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼをコードする核酸分子を含む、ヒト様糖タンパク質を産生する組換え下等真核細胞。
【請求項18】
前記細胞がPichia pastoris、Pichia finlandica、Pichia trehalophila、Pichia koclamae、Pichia membranaefaciens、Pichia opuntiae、Pichia thermotolerans、Pichia salictaria、Pichia guercuum、Pichia pyperi、Pichia stiptis、Pichia methanolica、ピキア種、Saccharomyces cerevisiae、サッカロミセス種、Hansenula Polymorpha、クルイヴェロマイシス種、Candida albicans、Aspergillus nidulans又はTrichoderma reeseiである、請求項15又は17に記載の細胞。
【請求項19】
前記細胞が、高マンノース構造の産生に関与する1つ以上の酵素を発現しない、請求項15又は17に記載の細胞。


【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【公表番号】特表2009−544760(P2009−544760A)
【公表日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−529458(P2009−529458)
【出願日】平成19年1月23日(2007.1.23)
【国際出願番号】PCT/IB2007/004164
【国際公開番号】WO2007/087420
【国際公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(505049076)レコファーマ アーベー (6)
【Fターム(参考)】