説明

酵母天然発酵漬けの床

【課題】酵母菌や乳酸菌が生きた酵母天然発酵漬け床を提供する。
【解決手段】地方の役場や農協の施設で麹自動発酵機を借りて、米麹をつくり、家庭でアルコール発酵を応用して漬け床をつくる。米麹、蒸米、ヨーグルト、砂糖、酵母菌を入れ、2〜6ヶ月間発酵させて後、砂糖(蜂蜜、水飴)を加え腐敗を抑えて、酵母菌や乳酸菌が生きている酵母天然発酵漬けの床ができる。この酵母天然発酵漬け床に漬けると、香気のある奈良漬に似たおいしい漬け物ができる。酵母天然発酵の床に乾燥した滋養のある皮・実や乾燥した薬効のある薬草・薬実の粉末を加えと、好みの風味もでて健康に役立つ漬物ができる。また、パンに塗って酵母天然発酵ジャムとしても食べられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルコール発酵を応用して、米麹、蒸米、ヨーグルト、砂糖、酵母菌を入れ、2〜6ヶ月発酵させて後、砂糖(蜂蜜、水飴)を多量に加え、腐敗を抑えた生きた酵母菌や乳酸菌がいる酵母天然発酵漬けの床をつくる。この酵母天然発酵漬けの床にキュウリ、ナス、シロウリ、ダイコン、野菜などを漬けると、香気のある奈良漬けに似たおいしい漬物ができる。この酵母天然発酵漬けの床は、乾燥した滋養のある皮(渋柿、柚子、甘夏、ザボン)、米糠、乾燥芋、乾燥きのこや乾燥海藻、また、乾燥した薬効のある薬草・薬実(陰干したシソ、クコ、カキ、ビワ、ドクダミ、ゲンノショウコ等の葉、陰干したウコン、オタネニンジン等の根、ハトムギ、ハブソウ、マタタビ等の実、ベニバナ等の花)を粉末にして混ぜ、好みのいろいろな風味のある漬け床ができる。また、この漬け床は乾燥した滋養のある皮(渋柿、柚子、甘夏、ザボン)乾燥芋、乾燥きのこや乾燥海藻、また、乾燥した薬効のある薬草・薬実(陰干しシソ、クコ、カキ、ゲンノショウコ等の葉、陰干しウコン、オタネニンジン等の根、ハトムギ、クルミ、ギンナン等の実)、干し魚や干し肉などの粉末や小片と砂糖(蜂蜜、水飴)を加え、混ぜあわせると好みのいろいろな風味がでて、パンに塗ってジャムとして食べることもできる。
【背景技術】
【0002】
古くから、麹を使用して作られる味噌や味噌漬けが食べられている。麹を用いた漬け物には、三五八漬け、べったら漬け、甘酒漬け等があり、酒絞り粕の板粕からつくる粕漬け(奈良漬)がある。酒粕をもちいて、古くから生産されている奈良漬(粕漬け)が、本発明の酵母天然発酵漬けの床で漬けた漬物とよく似ている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
酒粕は酒の搾り粕であるが、美味しくて、汁の味付け、焼いて食べたり、奈良漬(粕漬け)に使ったりしているので、食糧店で高価に売られている。市販の奈良漬(粕漬け)に使う板粕は、ビニール袋に長期間入れてあり、酒粕にいる酵母菌や乳酸菌は、ほとんど活動を停止しているか死んでいるものが多い。そのため、酒粕に焼酎、味醂、ホワイトリカーなどのアルコールと砂糖、水飴、蜂蜜などの多量の糖分や調味料を入れて、清酒の風味をだしている。奈良漬は、長期間、根気よくつけなくてはならず、仕上がりが気候に大いに左右される漬物で、好みでいろいろの風味を出すことは難しい。大きな施設のない家庭で酒粕を使わずに粕漬け(奈良漬)を作ることは出来ない。酒粕は焼いてパンに挟み食べられるが、ジャムのように液状にしてパンに塗って食べられていない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
農協や役場が運営する味噌作りの施設にある麹自動発酵機を借りて、地域自作の米から米麹を作る。蒸米、米麹にヨーグルト、砂糖を入れ、酵母菌(イスート)を植えつけて、数ヶ月間アルコール発酵させる。このように蒸米からアルコール発酵させた漬け床をつくると、アルコールや調味料を入れなくても、酵母菌や乳酸菌が生きたままで生存して風味をだす。腐敗防止のため多量の砂糖(蜂蜜、水飴)を入れても、酵母菌や乳酸菌は生きている。そのため、生きた酵母菌や乳酸菌がいる漬け床にキュウリ、ナス、シロウリ、ダイコン、ニンジン、野菜等を漬けることができる。また、漬け床に乾燥した滋養のある皮(渋柿、柚子、甘夏、ザボン)米糠、乾燥芋、乾燥きのこや乾燥海藻、また、乾燥した薬効のある薬草・薬実(陰干したシソ、クコ、カキ、ビワ、ドクダミ、ゲンノショウコ等の葉、ウコン、オタネニンジン、ニンニク等の根、ハトムギ、ハブソウ、マタタビ等の実、陰干したベニバナ等の花弁)の粉末を混ぜて好みの漬物ができる。この酵母天然発酵の床がついたまま、水洗いせずに食べられるため、健康増進に役立つ。また、この漬け床は乾燥した滋養のある皮(渋柿、柚子、甘夏、ザボンの皮)乾燥芋、乾燥きのこや海藻、また、乾燥した薬効のある薬草・薬実(陰干しシソ、クコ、カキ等の葉、陰干しウコン、オタネニンジン等の根、ハトムギ、クルミ、ギンナン等の実)、干し魚や干し肉などの粉末や小片と砂糖(水飴、蜂蜜)を加え、混ぜ合わせることにより好みの風味にあわせ酵母天然発酵ジャムとしてパンに塗って食べることができる。
【発明の効果】
【0005】
農協や役場が運営する味噌作りの施設を利用できる地域に住んでいる人は、米麹を作らせてもらうと簡単に酵母天然発酵漬けの床が作れる。酵母天然発酵の床に各地域で採れる薬効・滋養のある粉末を混ぜ粕漬け(奈良漬)にない風味と健康増進に関する用途に使える。また、ジャムのようにパンに塗って食べられる。また、作りやすいので、地域で作られる米や生えている薬効・滋養のある粉末から酵母天然発酵の床をつくり地方特産品として販売できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
イ 作業
最近は、地方の農協や役場が運営する施設の麹自動発酵機を借りて、地方物産や家庭用として米麹を作り、味噌や麹漬けを作っている。その自動発酵機を使用させてもらって、米麹作りが簡単に出来るようになった。使用する米は、安価な等級外の米(材料は高価になるが、1,2等級の米を使ってもよい。)でよい。米麹は、白米を3〜4回といで、10〜15時間浸水して、蒸し器で米粒が透明で、指先でひねりつぶせるほどの堅さに蒸した蒸米を作る。蒸米を敷布に広げ、40℃位まで冷まし、種麹(ヤエガキ酒造で購入したコウジカビを使用した。)をすり込むようにまぜて、コウジカビを植え付ける。自動発酵機(ヤエガキ酒造製造のものを使用した)の棚の上に広げ、温度調節を32℃〜38℃に調節して二日間培養して米麹をつくる。植え付けた時刻から12時間ごとに自動発酵機の中の蒸米をコウジカビが均一によく成長するようによく混ぜる。
蒸米は白米を3〜4回といで、10〜15時間水に浸しておいて、蒸し器で蒸して作る。
日本醸造協会が販売している酵母は酒類製造免許がないと家庭で購入できないので、酵母菌はパン屋で販売してもらえる一般製パン用イースト(ジェイティフーズ株式会社製を使用した。)を購入して使用する。
ヨーグルトは、家庭で培養しているヨーグルトを種菌として使用した。市販の牛乳を5分の1ほど出して、牛乳箱で培養しているヨーグルトを箱いっぱい入れ、牛乳箱の上部をちり紙でふたをして、室温で乳酸菌を増殖させる。市販牛乳は脂肪分が多いものがよく、3.5%以上のものを使用する。冬季は、暖かい縁側におき、夏季は冷蔵庫でどろっとするまで増殖させる。使用したヨーグルトは、増殖させた乳酸菌であり、検鏡すると球菌で、連鎖が少し見られるので、ストレプトコックス属(Streptococcus sp.)と思う。
酵母自動発酵機は、15kgの米麹が作られる。そのため、15kgの米麹を使って、酵母天然発酵の床をつくるための作業を記載する。甕(バケツでもよい)中に2枚のビニール袋を重ね合わせ二重にして広げる。その中に8分目まで入る蒸し米・米麹の分量をだいたい測定し、使用する甕(バケツでもよい)の数を決める。
蒸米に入れる米麹、砂糖、ヨーグルト、イーストの分量を知るために、上申書に記載した実験から、米麹1.0kgに対して、蒸米1.6kg、ヨーグルト200ml、砂糖260g、イースト52gを入れるのが良い。この値から計算した分量の米麹、蒸米、ヨーグルト、砂糖、イーストを各甕入れて、洗った細長い板(ビニールが破れないようにナイフで削って丸みをつくる。)を使って、蒸米に手がつかないようにして、よく混ぜ合わせる。ビニール袋の上部のビニールをたたんで、甕の上に広げた新聞紙をかぶせて、甕をふたする。10日間ほど1日1回よくかきまわし、よく混ぜ合わす。室温に2〜6ヶ月間ねかせておく。
室内において、ビニール袋にいれた米麹、蒸米に乳酸菌と酵母菌が自然に入り込み繁殖することは大変難しいので、市販の酵母菌を購入して植えつけることが大切である。酵母菌は、日本醸造協会から酒類製造免許がないと購入できないので、製パン用イーストをパン製造販売店から購入して使用する。使用量は、米麹、蒸米の重量の2%を加えて、よく混ぜ合わせると実験においてよく繁殖し発酵した。発酵の床は酒母と違い液体培養でなく、蒸米と米麹の固形培養であるため室内の空中から接合菌類(ケカビ、クモノスカビ)不完全菌(アオカビ属、コウジカビ属、アルテルナリア属、フザリウム属、クラドスポリュウム属)などの胞子、分生子が酵母天然発酵の床に入り繁殖しやすい。これを防ぐために米麹を多量に入れる操作がよい。発酵の床の培養器具や室温の調節などに費用をかけて、発酵条件を整えれば、米麹を少なくして安価に培養できる。農家の納屋で、費用を使わず、上記イ作業により発酵させるので、実験で良い条件を調べた結果、米麹:蒸米の重量比は5:8のときが、酵母菌と乳酸菌がよく繁殖し、接合菌類、不完全菌が見られなかった。酒母と違い、水を加えない酵母の繁殖しにくい条件で作るので、米麹を蒸米にたくさん加えることが大切である。
発酵の床は発酵してくると蒸米の糖化がすすみ、水分が出てきて柔らかくなめらかになる。アルコールが出来るので、酢酸菌が繁殖して酸っぱくなり酢の匂いがしてくる場合がある。実験では、牛乳で作った自作のヨーグルトを加えることにより、酢酸菌の繁殖が抑えられ、酒の匂いのする発酵の床が出来た。生きている乳酸菌を入れることが必要ある。
使用している酵母菌は製パン用イーストなので、砂糖(糖類)を入れてやるとよく増殖出来る。実験では、米麹・蒸米の重量の5〜10%ほど砂糖を加えたとき、酵母菌がよく増殖した。砂糖を加えなかった発酵の床は、コウジカビの菌糸が多く残っており、酵母菌が少しすくなく、球菌のほかに桿菌が見られた。発酵の初期に砂糖を入れて酵母菌を多数増殖させておくと、腐敗させる微生物(特に細菌)の自然繁殖を防ぐことが出来る。
ロ 作業
冬はゆっくり発酵するので長期間、夏は発酵が早いので短期間ねかせる。かきまぜると、甘酸っぱい匂いがするか小さじで取り出し食べると酒の味がすると、漬け床が砂糖20%以上になるように砂糖を加える。米麹1kgに対して、砂糖560gを入れる。このように多量の砂糖を入れることにより、酵母が発酵しなくなり、他の微生物も繁殖しにくくなる。この状態のものを酵母天然発酵の床と名付ける。酵母天然発酵の床では糖濃度が高くても乳酸菌はよく繁殖できるが酵母菌はあまり繁殖出来ないから牛乳を発酵するヨーグルトを使用するのがよいのかもしれない。本漬けして漬物から水分が出てくると酵母菌はよく繁殖できる。甕の口を新聞紙で覆い漬ける材料の収穫を待つ。
ハ 作業
長期間保存するとき、奈良漬をするときのように下漬けをすると漬物の歯ごたえがこりこりとして美味しい。手軽な下漬けは、シロウリ、カブ、ダイコン、ニンジンは塩分3%で3〜4日漬ける。ナス、キュウリ、野菜は一夜漬けする。漬けあがったら、ザルに入れて重しをして水をきるとよい。少しのときは、半日くらい乾かすとよい。これらを酵母天然発酵の床に本漬けする。毎日の食生活で塩分をひかえるときは、ヘタを落として全体を塩少々でこすり、2〜4つ割りして酵母天然発酵の床に本漬けする。また、野菜(白菜、キャベツなど)は、3%の食塩水を熱湯にした中にさっとくぐらせ、冷えてから絞り酵母天然発酵の床に本漬けする。高血圧、腎臓病の患者には、下漬けをせずにそのまま酵母天然発酵の床に本漬けすると塩分を含まなくおいしく食べられる。
【0007】
ニ 作業
乾燥した滋養のある皮(渋柿、柚子、甘夏、ザボン)、米糠、乾燥芋、乾燥きのこや乾燥海藻、また、乾燥した薬効のある薬草・薬実(陰干したシソ、クコ、カキ、ビワ、ドクダミ、ゲンノショウコ等の葉、ウコン、オタネニンジン、ニンニク等の根、ハトムギ、ハブソウ、マタタビ等の実、陰干したベニバナ等の花弁)などをミルミキサーなどの粉末にする機械で粉にする。酵母天然発酵の床に食べる人の要求する薬効・滋養により、粉末の種類や混合する比を考慮し粉末を加えてこね混ぜていく。入れる粉末の量は、材料や乾燥程度によってことなってくる。酵母天然発酵の床をスプンで持ち上げ、スプンをかたむけてぽとり、ぽとりと落ちるくらいのかたさになるように入れる。又は、かきまわすとしゃもじの跡が窪んで溝のようになって残るかたさになるように入れる。入れた粉末の重量を求め、その20%以上の重量の砂糖を加える。渋柿の皮の粉、乾燥芋の粉、きなこなどを多量入れ、乾燥した薬効のある薬草・薬実(陰干したシソ、クコ、カキ、ビワ、ドクダミ、ゲンノショウコ等の葉、ウコン、オタネニンジン、ニンニク等の根、ハトムギ、ハブソウ、マタタビ等の実、陰干したベニバナ等の花弁)の粉は少量入れると美味しい漬物が出来る。このとき、粉末を舐めてみて、苦さ、辛さ、渋さ、舌に刺激がしたり、匂いがよくないと少量にしなければいけない。好みにより風味も異なる滋養や薬効のある酵母天然発酵の床ができる。
【0008】
ホ 作業
乾燥した渋柿、柚子、甘夏、ザボンの皮、きなこ(大豆粉)、乾燥芋、昆布、煮て乾燥したキノコ、乾燥した海藻など乾燥前でも食べられるものを選ぶ。ミルミキサーで粉末にして、2〜4ヶ月発酵させた酵母天然発酵の床にまぜる。入れる粉末の量は、材料や乾燥によってことなっている。酵母天然発酵の床をスプンで持ち上げ、スプンをかたむけてぽとり、ぽとりと落ちるくらいのかたさになるように入れる。又は、かきまわすとしゃもじの跡が窪んで深く残こり、どろりとした堅さになるように入れる。入れた粉末の重量を求め、その25%以上の重量の蜂蜜(砂糖)を加え貯蔵する。乾燥した薬効のある薬草・薬実(陰干しシソ、クコ、カキ、ハーブ等の葉、陰干しウコン、オタネニンジン等の根、ハトムギ、クルミ、ギンナン等の実)の粉末や小片を少量加えると、滋養や薬効があり、好みの風味のある酵母発酵ジャムが出来る。また、パンを食べる前に、干し魚、肉の粉末や小片を混ぜるとさらに栄養豊富になる。特に美味しかったのは、乾燥した渋柿の皮の粉末である。乾燥した渋柿の皮をミルミキサーなどで粉にする。酵母天然発酵の床にどろりとするまで渋柿の皮の粉を多量入れ、好みにより乾燥した薬効のある薬草・薬実の粉末や小片を少量加え、加えた重量の25%以上の蜂蜜(砂糖)を加え保存する。柚子、甘夏、ザボンの皮は、乾燥するとにがさが少なくなり、粉末や小片を添加すると良い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
米麹、蒸米、ヨーグルト、砂糖、酵母菌を入れ、2〜6ヶ月発酵させて後、砂糖(蜂蜜、水飴)を加えて腐敗を抑え、酵母菌や乳酸菌が生きた酵母天然発酵漬けの床(漬け床)をつくる。
【請求項2】
この酵母天然発酵漬けの床に乾燥した滋養のある皮・実・葉・茎・根・花、乾燥きのこや海藻、乾燥した薬効のある薬草・薬実などを粉末にして混ぜ、砂糖(蜂蜜、水飴)を加え、好みに応じたいろいろの風味や薬効のある酵母天然発酵の床(漬け床)をつくる。
【請求項3】
この酵母天然発酵漬けの床に乾燥した滋養のある実・根・茎・葉・花、乾燥きのこや海藻、乾燥した滋養・薬効のある薬草・薬実、また、干し魚や干し肉などを粉末・小片にして混ぜ、砂糖(蜂蜜、水飴)を加え、パンに塗って食べる滋養と薬効のある好みに応じた酵母天然発酵ジャムを作る。

【公開番号】特開2008−178378(P2008−178378A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−44598(P2007−44598)
【出願日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(507060158)
【Fターム(参考)】