説明

酵母栄養食品及びその製造方法

本発明は酵母栄養食品及びその製造方法を開示する。本発明の酵母栄養食品は、酵母を主原料とし、粉乳、麦芽デキストリン、乳糖、植物脂肪粉末、炭酸カルシウム、デンプン、精白糖及び調味料、香料を含み、本発明の酵母栄養食品はさらに、葉酸、ビタミンB群、ビタミンA、ビタミンC、セレン強化酵母、亜鉛強化酵母、クロム強化酵母、鉄強化酵母等の微量元素が豊富な酵母、炭酸カルシウム、脱水ネギスライス、微晶セルロース、デンプン、ココアパウダー、果物・野菜粉末、ゴマ、ミルクティーパウダー、豆乳パウダー、燕麦片を含む。本発明は多種の補助原料を用い、多種の製造プロセスを用いて、粉末状、フレーク状、錠剤の酵母栄養食品を取得し、様々な人の服用に食感が適合する栄養食品を開発している。また、本発明の酵母栄養食品は、多種の補助原料を添加することにより、既存の酵母栄養食品と比較して食用者の免疫機能を著しく向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酵母栄養食品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酵母菌体は単細胞真核微生物であって、シイタケやキクラゲ等と同様に菌藻類食物に属し、タンパク質、ビタミン、炭水化物、脂肪、ミネラル、核酸等の多種の栄養成分を豊富に含んでいる。酵母菌には必須アミノ酸を含む18種類のアミノ酸が含まれ、特に、穀物タンパク質中の含有量が比較的少ないリジンは酵母菌体中の含有量が比較的高い。また、酵母のアミノ酸比率は国際連合食糧農業機関(FAO)が推奨する理想的なアミノ酸成分値に近いため、栄養価が高い。世界人口の急速な増加に伴って、食料不足が日増しに顕著になっており、とりわけタンパク質食品不足が顕著になっている。伝統的な動植物タンパク質食品の生産は農業技術及び各種環境因子の制限を受けるため、生産の増加は緩慢であり、人類のタンパク質消費の需要を満たすことは困難である。酵母という単細胞タンパク質源の出現により、新たなタンパク質獲得分野が開拓された。
【0003】
また、酵母菌中にはビタミン、ミネラル及び多糖が豊富に含まれ、よりバランスのとれた栄養を人体に提供することができる。また、酵母中の脂肪の含有量は非常に低く、コレステロールを含まないため、低カロリー、高栄養の健康食品である。
【0004】
酵母はこのように豊富な栄養を含んでいるため、酵母を用いて栄養健康食品を製造することが可能である。現在、従来技術において酵母を主原料とした栄養食品に含まれる原料は数種類にすぎず、酵母は酵母粉末のみが用いられ、また、製造プロセスも単一である。例えば、特許「栄養酵母食品及びその製造方法(特許文献1)」により開示される栄養酵母食品には、栄養酵母粉末、全脂粉乳、β−シクロデキストリン、甘味料、植物脂肪粉末及びその他の添加剤が含まれるにすぎず、当該食品の製造には錠剤の製造プロセスが用いられているにすぎない。従って、多種の栄養成分を含み、様々な剤形を有し、様々な人に食感が適合する酵母栄養食品を製造することに人々の関心が向けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】中国特許出願公開第200510015005.2号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、酵母栄養食品の組成が限られていること、製造プロセスが単一であること等の従来の技術における課題を解決するための酵母栄養食品及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一つの態様は、酵母を主原料とし、粉乳、麦芽デキストリン、乳糖、植物脂肪粉末、炭酸カルシウム、デンプン、精白糖及び調味料、香料を含む酵母栄養食品を提供し、前記酵母栄養食品は、ビタミンB群及び微量元素を豊富に含む酵母をさらに含み、前記成分は、以下の重量部で、
酵母 5〜97、
粉乳 1〜20、
植物脂肪粉末 1〜50、
炭酸カルシウム 0.1〜50、
デンプン 1〜50、
麦芽デキストリン 0〜50、
乳糖 0〜50、
精白糖 0〜70、
葉酸 0〜1、
ビタミンB12 0〜1、
ビタミンB 0〜10、
ビタミンB 0〜10、
ビタミンA 0〜10、
ビタミンC 0〜20、
セレン強化酵母 0〜10、
亜鉛強化酵母 0〜40、
鉄強化酵母 0〜10、
クロム強化酵母 0〜10、及び
微晶セルロース 0〜20を含むことを特徴とする。
【0008】
本発明による酵母栄養食品であって、以下の重量部で、
精白糖 1〜70、
葉酸 0.00001〜1、
ビタミンB12 0.00001〜1、
ビタミンB 0.0001〜10、
ビタミンB 0.0001〜10、
ビタミンA 0.0001〜10、
ビタミンC 0.0001〜20、
セレン強化酵母 0.0001〜10、
亜鉛強化酵母 1〜40、
鉄強化酵母 1〜10、
クロム強化酵母 0.0001〜10、及び
微晶セルロース 1〜20を含む。
【0009】
本発明による酵母栄養食品であって、以下の重量部で、
脱水ネギスライス 1〜10、
ココアパウダー 1〜20、
果物・野菜粉末 1〜20、
ゴマ 1〜50、
ミルクティーパウダー 1〜20、
豆乳パウダー 1〜20、及び
燕麦片 1〜20を含む。
【0010】
本発明による酵母栄養食品において、主原料である酵母は酵母粉末または酵母ミルクでありうる。
【0011】
本発明による酵母栄養食品は、さらに鉄強化酵母またはクロム強化酵母を含む。
【0012】
本発明による酵母栄養食品であって、鉄強化酵母はグルコン酸第一鉄、アミノ酸キレート鉄、硫酸第一鉄、フマル酸第一鉄、乳酸第一鉄またはそれらの任意の混合物で置換可能であり、亜鉛強化酵母は硫酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、乳酸亜鉛、クエン酸亜鉛、アミノ酸キレート亜鉛またはそれらの任意の混合物で置換可能であり、セレン強化酵母は亜セレン酸ナトリウムで置換可能であり、調味料はクエン酸、リンゴ酸である。
【0013】
本発明の酵母栄養食品の具体的な実施の形態において、酵母栄養食品は、以下の重量部で、酵母 5〜97、粉乳 1〜20、植物脂肪粉末 1〜50、炭酸カルシウム 0.1〜50、デンプン 1〜50、ビタミンC 0.1〜0.3、精白糖 20〜70、及び、ココアパウダー 1〜20を含む。
【0014】
本発明の酵母栄養食品の具体的な実施の形態において、酵母栄養食品は、以下の重量部で、酵母 5〜97、粉乳 1〜20、植物脂肪粉末 1〜50、炭酸カルシウム 0.1〜50、デンプン 1〜50、及び、微晶セルロース 1〜20を含む。
【0015】
本発明の酵母栄養食品の具体的な実施の形態において、酵母栄養食品は、以下の重量部で、酵母 5〜95、粉乳 1〜20、植物脂肪粉末 1〜50、炭酸カルシウム 0.1〜50、デンプン 1〜50、ゴマ 1〜20、精白糖 1〜20、及び、麦芽デキストリン 10〜50を含む。
【0016】
本発明の酵母栄養食品の具体的な実施の形態において、酵母栄養食品は、以下の重量部で、酵母 5〜95、粉乳 1〜20、植物脂肪粉末 1〜50、炭酸カルシウム 0.1〜50、デンプン 1〜50、精白糖 20〜70、果物・野菜粉末 1〜20、及び、調味料 1〜20を含む。
【0017】
本発明の酵母栄養食品の具体的な実施の形態において、酵母栄養食品は、以下の重量部で、酵母 5〜95、粉乳 1〜20、植物脂肪粉末 1〜50、炭酸カルシウム 0.1〜50、デンプン 1〜50、及び、脱水ネギスライス 1〜10を含む。
【0018】
本発明の酵母栄養食品の具体的な実施の形態において、酵母栄養食品は以下の重量部で、酵母 5〜95、粉乳 1〜20、植物脂肪粉末 1〜50、炭酸カルシウム 0.1〜50、デンプン 1〜50、葉酸 0.05〜0.1、ビタミンB12 0.0002、ビタミンA 0.1〜0.3、ビタミンC 0.1〜0.3、及び、鉄強化酵母 1〜10を含む。
【0019】
本発明による酵母栄養食品において、ビタミンB群は、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB12、パントテン酸、ニコチン酸からなる群から選ばれるいずれか一つである。
【0020】
本発明の酵母栄養食品の具体的な実施の形態において、酵母栄養食品は、以下の重量部で、酵母 5〜95、粉乳 1〜20、植物脂肪粉末 1〜50、炭酸カルシウム 0.1〜50、デンプン 1〜50、亜鉛強化酵母 1〜10、セレン強化酵母 1〜10、クロム強化酵母 1〜10、及び、鉄強化酵母 1〜10を含む。
【0021】
本発明の酵母栄養食品の具体的な実施の形態において、酵母栄養食品は、以下の重量部で、酵母 5〜95、粉乳 1〜20、植物脂肪粉末 1〜50、炭酸カルシウム 0.1〜50、デンプン 1〜50、ミルクティーパウダー、豆乳パウダー、及び、燕麦片 計60を含む。
【0022】
本発明による酵母栄養食品は、粉末状、フレーク状、錠剤のいずれの剤形にも適合する。
【0023】
本発明の別の態様では、本発明による酵母栄養食品の製造方法を提供する。
【0024】
本発明による酵母栄養食品を製造する方法は、酵母と他の原料とを配合比に応じて混合するステップと、加水攪拌して均一にするステップと、その後噴霧乾燥及び包装して、粉末状の酵母栄養食品を得るステップとを含む。
【0025】
本発明による酵母栄養食品を製造する方法は、酵母を加水攪拌して均一にするステップと、その後ドラム式乾燥機を用いて乾燥温度を180℃に制御して乾燥するステップと、乾燥後に収集してふるいを用いて篩過するステップと、さらに前記他の補助原料を加え混合して均一にするステップと、最後に包装し、これによりフレーク状の酵母栄養食品を得るステップとを含む。
【0026】
本発明による酵母栄養食品を製造する方法は、酵母と他の原料とを配合比に応じて混合するステップと、その後造粒、乾燥、打錠等の工程により錠剤を製造するステップと、最後に包装して錠剤の酵母栄養食品を得るステップとを含む。
【0027】
従来技術と比較して、本発明の酵母栄養食品は、従来技術において既存の原料以外に、さらにビタミンA、ビタミンB群、ビタミンC、鉄強化酵母、亜鉛強化酵母、セレン強化酵母、クロム強化酵母等の多種の物質を含み、酵母食品の栄養性を向上させるとともに、多種の栄養物質に対する利用者のニーズを満たしている。また、本発明は多種のプロセスを用いて酵母栄養食品を製造しており、粉末状、フレーク状、錠剤等の様々な剤形の酵母栄養食品を得ることができ、様々な人々の服用に適合した食感の栄養食品を開発している。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の酵母栄養食品の具体的な実施例を列挙する。当業者にとって、列挙される具体的な実施例は本発明の範囲を制限するものではなく、例示を目的としたものに過ぎないことは自明である。
【0029】
(実施例1)
本発明の実施例1において、酵母栄養食品は、以下の重量部で、酵母 90、粉乳 18、植物脂肪粉末 45、炭酸カルシウム 5.3、デンプン 50、セレン強化酵母 2、亜鉛強化酵母 2、クロム強化酵母 2、葉酸 0.1、ビタミンB 0.1、ビタミンB 0.1、ビタミンB12 0.001、及び、鉄強化酵母 2を含む。
【0030】
(実施例2)
本発明の実施例2において、酵母栄養食品は、以下の重量部で、酵母 10、粉乳 10、植物脂肪粉末 10、炭酸カルシウム 10、デンプン 17.6、セレン強化酵母 8、亜鉛強化酵母 8、クロム強化酵母 8、鉄強化酵母 8、ビタミンB 0.002、ビタミンB 0.002、ビタミンB12 0.00005、精白糖 20、ココアパウダー 10、及び、麦芽デキストリン 10を含む。
【0031】
(実施例3)
本発明の実施例3において、酵母栄養食品は、以下の重量部で、酵母 50、粉乳 5、植物脂肪粉末 20、炭酸カルシウム 40、デンプン 30、セレン強化酵母 5、亜鉛強化酵母 10、クロム強化酵母 5、葉酸 0.05、ビタミンB 5、ビタミンB 5、ビタミンB12 0.001、及び、精白糖 4.95を含む。
【0032】
本発明の酵母栄養食品は、粉末状、フレーク状、錠剤という様々な剤形を含むのに好適である。そのため、異なる剤形に対し、本発明の酵母栄養食品を製造する方法は以下の三種類を含みうる:
【0033】
粉末状の酵母栄養食品を製造する方法であって、酵母と他の原料とを配合比に応じて混合するとともに加水攪拌して均一にするステップと、その後噴霧乾燥及び包装して、粉末状の酵母栄養食品を得るステップとを含む。
【0034】
フレーク状の酵母栄養食品を製造する方法であって、酵母を加水攪拌して均一にするステップと、その後ドラム式乾燥機を用いて乾燥温度を180℃に制御して乾燥するステップと、乾燥後に収集してふるいを用いて篩過するステップと、さらに前記他の補助原料を加えて混合して均一にするステップと、最後に包装することにより、フレーク状の酵母栄養食品を得るステップとを含む。
【0035】
錠剤の酵母栄養食品を製造する方法であって、酵母と他の原料とを配合比に応じて混合するステップと、その後造粒、乾燥、打錠等の工程により錠剤を製造するステップと、最後に包装して錠剤の酵母栄養食品を得るステップとを含む。錠剤の製造には、湿式法、ワンステップ造粒機による方法、または直接打錠法を用いることが可能である。
【0036】
機能性試験により、本発明が顕著な免疫力増進機能を具備し、かつその作用は同類の製品と比較して向上していることが実証された。具体的な実験データは以下の通りである。
1材料及び方法
1.1 被験物:本願発明の実施例1、2、3の酵母栄養食品(以下、酵母栄養食品A1、A2、A3と略称する)、及び発明特許「栄養酵母食品及びその製造方法(200510015005.2)」による酵母栄養食品(以下、酵母栄養食品Bと略称する。配合は、栄養酵母粉末 18g、全脂粉乳 44g、植物脂肪粉末 15g、ショ糖 9g、果糖 7.5g、β‐シクロデキストリン 2g、ココアパウダー 1.05g、コーヒーパウダー 0.05g、ココアパウダー香料 3.4g)。成人推奨量は10g/dであり、成人の体重60kgで換算すると、0.17g/kg.bwである。様々な所定濃度の溶液を調製して胃内に投与した。
【0037】
1.2 被験動物:クリーンレベルBALB/cマウス、オス、200匹、18〜22g(湖北省実験動物研究センター)。
【0038】
1.3 群分け及び投与:マウスを、通常対照群、酵母栄養食品A1、A2、A3を与える群、酵母栄養食品Bを与える群、の5つの群に無作為に分けた。酵母栄養食品A1〜A3を与える3つの群及び酵母栄養食品Bを与える群には、人体摂取量の30倍(5.0g/kg.bw)で胃内投与し、胃内投与体積は0.2ml/10g.bwとした。
【0039】
1.4 主要機器及び試薬:直径5mmのパンチャー、顕微鏡、微量血液凝固試験板、遠心分離機、酵素ラベルメーター、96ウェル培養プレート、5%COインキュベーター、注射用インク、コンカナバリンA(ConA)、MTT、DNFB、生理食塩水、ニワトリ赤血球、Giemsa染色液、YAC−1細胞、Hanks液、PRMI1640完全培養液、乳酸リチウム、ヨードニトロテトラゾリウムクロリド(INT)、フェナジンメトサルフェート(PMS)、NAD、Tris−HCl緩衝液。
【0040】
1.5 実験方法
1.5.1 カーボンクリアランス試験及び臓器/体重比測定:実験の最後において、マウスの体重を測定した後に、体重に応じて希釈したインドインク(100mg/kg)をマウスの尾静脈から注入し、インク注入の2分後、10分後に、それぞれ内眼角静脈叢から20μl採血し、即座に2mlの0.1% NaCO溶液中に加えた。NaCO溶液をブランクコントロールとし、721光学型分光計を用いて600nmにおける光学密度値(OD)を測定した。マウスを絶命させて解剖し、肝臓、脾臓及び胸腺を摘出して、ろ紙で血痕を吸収した後に重量を測定した。
【0041】
1.5.2 遅発性過敏反応(DTH):マウスに連続30日間胃内投与した後、各マウスの腹部の皮膚を脱毛剤を用いて約3cm×3cmの範囲で脱毛処理し、その後DNFB溶液50μlを均一に塗布して感作した。5日後、再度DNFB溶液10μlをマウスの右耳両面に均一に塗布して刺激した。24時間後、頸椎脱臼によりマウスを絶命させ、左右両耳を切除してパンチャーで直径5mmの耳片を採取し、重量を測定した。
【0042】
1.5.3 マウス腹腔マクロファージのニワトリ赤血球貪食実験(半体内法):マウスに連続30日間胃内投与した後、各マウスの腹腔に2%のニワトリ赤血球懸濁液1mlを注射した。30分後、頸椎脱臼によりマウスを絶命させ、プレート上に仰向けに固定し、腹壁の皮膚を正中切開し、腹腔から生理食塩水2mlを注入し、マウスのプレートを1分間転動させ、その後腹腔洗浄液を1ml抽出し、2つのスライドガラスに平均に滴下し、湿らせたガーゼを敷いた琺瑯容器内に置いて、37℃のインキュベーターで30分間保温した。保温後、生理食塩水ですすいで、接合していない細胞を除去した。自然乾燥し、1:1のアセトン:メタノール溶液で20分間固定し、4%(v/v)のGiemsa−リン酸緩衝液で3分間染色し、さらに蒸留水ですすいで自然乾燥し、顕微鏡下でマクロファージをカウントした。
【0043】
1.5.4 ConA誘発マウス脾臓リンパ細胞転化実験及びマウスNK細胞活性測定(乳酸脱水素酵素LDH測定法):マウスに連続30日間胃内投与した後、頸椎脱臼によりマウスを絶命させ、無菌で脾臓を摘出し、適量の無菌Hanks液を入れたシャーレに置き、脾臓をピンセットで裂いて、200メッシュのふるいで篩過し、単細胞懸濁液を得た。細胞懸濁液を2つに分け、それぞれConA誘発マウス脾臓リンパ細胞転化実験及びマウスNK細胞活性測定に用いた。
【0044】
1.5.4.1 ConA誘発マウス脾臓リンパ細胞転化実験:Hanks液を用いて細胞懸濁液を2回洗浄し、その都度10分間遠心分離(1000r/分)し、その後細胞を1mlの完全培養液中に懸濁させて、トリパンブルーで染色して生細胞数(95%以上のもの)をカウントした。細胞の濃度は3×10個/mlに調整した。各細胞懸濁液を2ウェルに分けて24ウェル培養プレートに各ウェル1mlずつ加え、一方のウェルには75μlのConA液を加え、他方のウェルは対照とした。インキュベーター内に置いて72時間インキュベートした。インキュベート終了の4時間前に、各ウェルから上清0.7mlを除いて0.7mlの血清を含まないRPMI1640培養液を加え、同時にMTTを50μl/ウェル加えて、引き続き4時間インキュベートした。インキュベート終了後、各ウェルに1mlの酸性イソプロピルアルコールを加え、均一に攪拌して溶解させた。その後、96ウェル培養プレートに分けて入れ、各ウェルは3つの平行ウェルとし、酵素ラベルメーターを用いて570nmの波長で光学密度値を測定した。
【0045】
マウスNK細胞活性測定(乳酸脱水素酵素LDH測定法):実験の24時間前に標的細胞を継代培養し、適用前にHanks液で3回洗浄し、PRMI1640完全培養液を用いて細胞の濃度を4×10個/mlに調整した。Hanks液を用いて細胞懸濁液を2回洗浄し、その都度10分間遠心分離(1000r/分)した。上清を捨てて細胞のスラリーを弾き、0.5mlの滅菌水20sを加え、細胞溶解後にさらに0.5mlの2xHanks液及び8mlのHanks液を加え、10分間遠心分離(1000r/分)し、1mlの完全培地で再懸濁し、1%氷酢酸で希釈した後にカウントし、トリパンブルーで染色して生細胞数(95%以上のもの)をカウントした。細胞の濃度は2×10個/mlに調整した。標的細胞とエフェクター細胞をそれぞれ100μl取り(エフェクター:標的細胞の比率は50:1)、96ウェル培養プレートに加えた。標的細胞の自然LDH放出ウェルに標的細胞及び培養液を各100μl加え、標的細胞の最大LDH放出ウェルに標的細胞1%及びNP40を各100μl加えた。上記はそれぞれトリプリケートで行い、37℃、5% COインキュベーター中で4時間インキュベートし、その後培養プレートを5分間遠心分離(1500r/分)し、各ウェルから上清100μlを取って96ウェル培養プレートに置き、同時にLDH基液100μlを加えて3分間反応させ、各ウェルに1mol/LのHC 130μlを加え、酵素ラベルメーターで490nmにおける光学密度値(OD)を測定した。
【0046】
結果
2.1 二種類の酵母栄養食品のマウスの臓器/体重比への影響について、結果は表1を参照。
【0047】
表1 二種類の酵母栄養食品のマウスの臓器/体重比への影響(xbar±s)
【0048】
【表1】

*P<0.05(対照群と比較)
【0049】
二種類の酵母栄養食品の脾臓/体重比は、対照群と比較するとP>0.05であり、有意な相違はなかった;胸腺/体重比は、対照群と比較するとP<0.05であり、有意に相違していた。
【0050】
2.2 二種類の酵母栄養食品のマウスの細胞免疫機能(マウス脾臓リンパ細胞転化実験及びマウス遅発性過敏反応(DTH))への影響について、表2を参照。
【0051】
表2 二種類の酵母栄養食品のマウスの細胞免疫機能への影響(xbar±s)
【0052】
【表2】

(1)P<0.01(対照群と比較)
(2)P<0.05(対照群と比較)
(3)P<0.05(酵母栄養食品A1〜A3群を酵母栄養食品Bグループ群と比較)
【0053】
酵母栄養食品A1〜A3群のリンパ細胞増殖実験におけるOD差分値は、対照群と比較するとP<0.01であり、有意に相違していた;耳腫脹の程度も、対照群と比較するとP<0.01で有意に相違しており、また、酵母栄養食品A1〜A3群を酵母栄養食品B群と比較するとP<0.05であり、有意に相違していた。
【0054】
二種類の酵母栄養食品のマウスの単核‐マクロファージ機能(マウスカーボンクリアランス試験、マウス腹腔マクロファージのニワトリ赤血球貪食能力)への影響について、表3を参照。
【0055】
表3 二種類の酵母栄養食品のマウスの単核‐マクロファージ機能への影響(xbar±s)
【0056】
【表3】

【0057】
(1)P<0.01(対照群と比較)
(2)P<0.05(対照群と比較)
(3)P<0.05(酵母栄養食品A1〜A3群を酵母栄養食品B群と比較)
【0058】
酵母栄養食品A1〜A3群のマウスカーボンクリアランス試験における貪食指数は、対照群と比較するとP<0.01であり、極めて有意に相違していた;マウス腹腔マクロファージのニワトリ赤血球貪食の貪食率は、対照群と比較するとP<0.01であり、極めて有意に相違していた。また、酵母栄養食品A1〜A3群を酵母栄養食品B群と比較するとP<0.05であり、有意に相違していた。
【0059】
二種類の酵母栄養食品のマウスのNK細胞活性への影響について、表4を参照。
【0060】
表4 二種類の酵母栄養食品のマウスのNK細胞活性への影響(xbar ±s)。
【0061】
【表4】

(1)P<0.01(対照群と比較)
(2)P<0.05(対照群と比較)
(3)P<0.01(酵母栄養食品A1〜A3群を酵母栄養食品B群と比較)
【0062】
酵母栄養食品A1〜A3群のマウスのNK細胞活性は、対照群と比較するとP<0.01であり、極めて有意に相違していた。また、酵母栄養食品A1〜A3群を酵母栄養食品B群と比較するとP<0.01であり、有意に相違していた。
【0063】
結論
本実験では、マウスに本発明の酵母栄養食品(酵母栄養食品A1〜A3)及び発明特許「栄養酵母食品及びその製造方法(特許文献1)」による栄養酵母食品(酵母栄養食品B)を投与し、マウスの細胞免疫機能実験(マウス脾臓リンパ細胞転化実験及びマウス遅発性過敏反応(DTH))、単核‐マクロファージ機能実験(マウスカーボンクリアランス試験、マウス腹腔マクロファージのニワトリ赤血球貪食能力)、NK細胞活性実験を行った。実験結果は、本発明の酵母栄養食品A1〜A3が、酵母栄養食品Bと比較して、マウスの各種免疫機能をより著しく向上させることを示した。
【0064】
以上、特定の好適な実施の形態に基づいて本発明を説明したが、当業者にとって、添付の「特許請求の範囲」に規定される本発明の要旨及び範囲を逸脱しない範囲で、各種の変更及び改変を加えることが可能であることは自明である。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
酵母を主原料とし、粉乳、麦芽デキストリン、乳糖、植物脂肪粉末、炭酸カルシウム、デンプン、精白糖、調味料、及び香料を含む酵母栄養食品において、
前記酵母栄養食品は、ビタミンB群及び微量元素を豊富に含む酵母をさらに含み、
前記成分は、以下の重量部で、
酵母 5〜97、
粉乳 1〜20、
植物脂肪粉末 1〜50、
炭酸カルシウム 0.1〜50、
デンプン 1〜50、
麦芽デキストリン 0〜50、
乳糖 0〜50、
精白糖 0〜70、
葉酸 0〜1、
ビタミンB12 0〜1、
ビタミンB 0〜10、
ビタミンB 0〜10、
ビタミンA 0〜10、
ビタミンC 0〜20、
セレン強化酵母 0〜10、
亜鉛強化酵母 0〜40、
鉄強化酵母 0〜10、
クロム強化酵母 0〜10、及び
微晶セルロース 0〜20を含む、酵母栄養食品。
【請求項2】
前記成分は、以下の重量部で、
精白糖 1〜70、
葉酸 0.00001〜1、
ビタミンB12 0.00001〜1、
ビタミンB 0.0001〜10、
ビタミンB 0.0001〜10、
ビタミンA 0.0001〜10、
ビタミンC 0.0001〜20、
セレン強化酵母 0.0001〜10、
亜鉛強化酵母 1〜40、
鉄強化酵母 1〜10、
クロム強化酵母 0.0001〜10、及び
微晶セルロース 1〜20を含む、請求項1記載の酵母栄養食品。
【請求項3】
以下の重量部で、
脱水ネギスライス 1〜10、
ココアパウダー 1〜20、
果物・野菜粉末 1〜20、
ゴマ 1〜50、
ミルクティーパウダー 1〜20、
豆乳パウダー 1〜20、及び
燕麦片 1〜20の一種または複数種をさらに含む、請求項1に記載の酵母栄養食品。
【請求項4】
前記主原料である酵母は、酵母粉末または酵母ミルクである、請求項1に記載の酵母栄養食品。
【請求項5】
前記鉄強化酵母はグルコン酸第一鉄、アミノ酸キレート鉄、硫酸第一鉄、フマル酸第一鉄、乳酸第一鉄またはそれらの任意の混合物で置換可能であり、
前記亜鉛強化酵母は硫酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、乳酸亜鉛、クエン酸亜鉛、アミノ酸キレート亜鉛またはそれらの任意の混合物で置換可能であり、
前記セレン強化酵母は亜セレン酸ナトリウムで置換可能であり、
前記調味料はクエン酸、リンゴ酸である、請求項1に記載の酵母栄養食品。
【請求項6】
請求項1に記載の酵母栄養食品を製造する方法であって、
前記酵母と他の原料とを配合比に応じて混合するステップと、
加水攪拌して均一にするステップと、
噴霧乾燥及び包装して、粉末状の酵母栄養食品を得るステップと、
を含む、酵母栄養食品の製造方法。
【請求項7】
請求項1に記載の酵母栄養食品を製造する方法であって、
前記酵母を加水攪拌して均一にするステップと、
ドラム式乾燥機を用いて乾燥温度を180℃に制御して乾燥するステップと、
乾燥後に収集してふるいを用いて篩過するステップと、
前記酵母以外の成分を加えて混合して均一にするステップと、
包装し、フレーク状の酵母栄養食品を得るステップと、
を含む、酵母栄養食品の製造方法。
【請求項8】
請求項1に記載の酵母栄養食品を製造する方法であって、
前記酵母と他の原料とを配合比に応じて混合するステップと、
造粒、乾燥、打錠等の工程により錠剤を製造するステップと、
包装して錠剤の酵母栄養食品を得るステップと、
を含む、酵母栄養食品の製造方法。



【公表番号】特表2011−530300(P2011−530300A)
【公表日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−522375(P2011−522375)
【出願日】平成21年9月23日(2009.9.23)
【国際出願番号】PCT/CN2009/074142
【国際公開番号】WO2010/069191
【国際公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(509019026)安▲チ▼酵母股▲フェン▼有限公司 (4)
【氏名又は名称原語表記】ANGELYEAST CO., LTD
【住所又は居所原語表記】168 Chengdong Road,Yichang,Hubei P.R. China
【Fターム(参考)】