説明

酵母種および真菌種の検出のための核酸プローブ

本発明は、真菌種および酵母種についての診断アッセイにおけるRPS7遺伝子またはその対応するmRNAの一部の使用ならびにかかるアッセイおよび方法で用いる配列に関する。本発明は、RPS7遺伝子またはその対応するmRNAの少なくとも一部に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを含む酵母種および/または真菌種の検出および同定のための診断キットを提供する。オリゴヌクレオチドプローブは、RPS7遺伝子またはその対応するmRNAの一部と実質的に相同であるか実質的に相補的である配列を有することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、リボゾームタンパク質遺伝子、対応するmRNA、ならびにこれらに関連する特異的プローブ、プライマー、およびオリゴヌクレオチド、酵母種および真菌種を検出および/または識別するための診断アッセイにおけるその使用に関する。特に、本発明は、リボゾームタンパク質RPS7に対応する遺伝子およびその対応するmRNAに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
感染の原因としての酵母および真菌の検出および同定は、これまでにないほど重要である。酵母および真菌感染の危険性がある免疫不全患者数は、増加し続けており、疾患を引き起こす真菌因子の範囲も同様である。真菌感染、特に侵襲性真菌感染による死亡率は、一定の危険な状態にある患者群で30%以上である(“Stakeholder Insight:Invasive fungal infections”,Datamonitor,Jan 2004)。一連の利用可能な抗真菌薬は増加しているが、抗真菌薬に対する固有および新たな耐性の両方の認識も増加している。これらの要因により、臨床試験の費用を抑制する必要性が増大し、試験手順において実験が統合されている。
【0003】
侵襲性真菌感染は増加傾向にある。2003年では、900万人の危険な状態にある患者のうち120万人が感染症を発症したと見積もられた。免疫不全患者(移植患者、手術患者、新生児、癌患者、糖尿病患者、およびHIV/AID患者が含まれる)は、侵襲性真菌感染を発症する危険性が高い(Datamonitor report:Stakeholder opinion−Invasive fungal infections,options outweigh replacements 2004)。多数の重症敗血症が年を追って報告されている。その医学的管理が改善されているにもかかわらず、敗血症は、依然として集中治療における最大の課題の1つを構成している。敗血症の発症を担う微生物(細菌、真菌、および酵母)は、伝統的には、微生物学的培養方法を用いて病院検査室で検出され、この方法は、感度が低く(25〜82%)、非常に時間がかかり、一般に、完了までに2〜5日間を要し、真菌感染の診断には8日間までを要する。確定診断は、通常、臨床標本からの特定の作用因子(agent)の回収および同定または明確な形態学的特徴を有する真菌の微視的証明のいずれかに基づく。しかし、これらの方法によって感染菌に関する決定的証拠を得ることができない症例が多数存在する。これらの場合、特定の宿主抗体応答の検出を使用することができるが、この場合も患者の免疫状態に影響を受け得る。典型的に細菌および真菌に起因する血流感染の検出および同定で時間は重要である。有効な治療は、感染源の発見および迅速且つ有効な抗生物質または抗真菌剤の適切な決定に依存する。病原体が正確に同定された後のみに、特定の抗生物質を使用した標的療法を開始することができる。多数の医師が酵母および真菌の早期診断のためのより良好なin vitro増幅および直接検出診断技術の開発を望んでいる(“Stakeholder Insight:Invasive fungal infections”,Datamonitor,Jan 2004)。最近、Roche(商標)は、臨床サンプル中の細菌、真菌、および酵母のDNAの検出のためのリアルタイムPCRベースのアッセイ(Septifast(商標))を販売した。したがって、臨床領域における生体分析に適用するための臨床的に有意な細菌病原体および真菌病原体の新規の迅速な診断試験の開発が明確に必要とされている。これにより、本発明者らは、核酸診断(NAD)試験で適用するための新規の真菌および酵母核酸標的を検索および同定した。
【0004】
カンジダ菌種およびアスペルギルス菌種は、現在、免疫不全患者に感染する最も重要な病原体に位置づけられている。特に、感染は、尿路、呼吸器系、および血流、ならびにステント、カテーテル、および整形外科的接合部の挿入部位によく認められる。公知のカンジダ菌種のおよそ10%がヒト感染に関与している。侵襲性カンジダ症は、カンジダが血流に侵入した場合に起こり、米国の人口100,000人あたり8人の頻度で生じ、死亡率は40%と見積もられている。Candida albicansは、血流感染の4番目に最も一般的な原因である。アスペルギルス症は、通常、肺感染症として始まり、患者によっては生命にかかわる侵襲性感染症に進行する可能性があり、死亡率は90%を超える。新興真菌症の作用因子には、フサリウム属、スケドスポリウム属、接合菌類、およびトリコスポロン菌種が含まれる(“Stakeholder Insight:Invasive fungal infections”,Datamonitor,Jan 2004)。
【0005】
真菌および酵母核酸ベースの診断は、リボゾームRNA(rRNA)遺伝子、RNA転写物、およびその関連するDNA/RNA領域を重視する。rRNA遺伝子は、全ての真菌種で高度に保存されており、これらは、異なる特徴的な遺伝子間転写スペーサー領域も含む。リボゾームrRNAは、以下の3つの遺伝子を含む:大サブユニット遺伝子(28S)、小サブユニット遺伝子(18S)および5.8S遺伝子。28S遺伝子および18S rRNA遺伝子は、5.8S rRNAおよび2つの内部転写スペーサー(ITS1およびITS2)によって分断されている。ITS領域が多数の配列多型を含むので、多数の研究者は、これらを標的として重視している(Atkins and Clark,2004)。rRNA遺伝子はまた、真菌ゲノム内に10個を超えるコピーを有する多コピー遺伝子である。
【0006】
多数のグループが、真菌および酵母感染のための新規のアッセイの開発に取り組んでいる。特許文献1は、多数の他の態様のうち、Candida albicansの転写因子CaTEC1、そのインヒビター、およびカンジダ感染に関与する疾患の診断および治療方法に関し、ヌクレオチド配列、タンパク質、宿主細胞、および/または抗体を含む診断および薬学的組成物にも関する。特許文献2は、Candida albicansおよび/またはカンジダ・ドゥブリニエンシス(Candida dubliniensis)由来のリボゾーム核酸を検出するためのハイブリッド形成アッセイプローブおよびアクセサリーオリゴヌクレオチドに関する。特許文献3および特許文献4は、5つの医学的に重要なカンジダ菌種由来のDNAを増幅および種分化するために使用することができるDNAプライマー組に関する。特許文献5は、カンジダ感染の診断に有用な配列を開示している。一定範囲の酵母種および真菌種の診断について、特許文献6および特許文献7は18S rRNA遺伝子に基づくプローブを開示し、特許文献8は、28S rRNAに基づくプローブを開示している。特許文献9は、一定範囲のカンジダ菌種の核酸ベースの診断で用いるキチンシンターゼ遺伝子に基づいた配列を記載している。
【0007】
変異ゲノム配列を有する耐性のある毒性株集団を増加させる現代の抗菌治療によって生じる淘汰圧を特に考慮して、より迅速でより正確な診断方法の開発が必要であることが明確である。感染原因となる微生物の早期診断が可能な方法により、感染を治療するための特定の狭域の抗生物質または抗真菌薬を選択することができる(非特許文献1)。
【0008】
RPS7は、70を超えるリボゾームタンパク質のうちの1つである。これは、原核生物および真核生物で認められ、rRNAの折り畳みにおいてリボゾーム小サブユニット中で機能し、リボゾーム小サブユニットのヘッドを形成する。rps7遺伝子はリボゾーム内に保存された機能を有する必須タンパク質をコードする。酵母では、例えば、出芽酵母RPS7は、14塩基対の位置が異なり、各遺伝子が1つのイントロンを有する2つの遺伝子によってコードされる。Synetosら(1992)は、サッカロミセスは1遺伝子コピーで生存することができるが、両方の欠失で死滅することを示した。Delbrruckら(1997)は、C.albicans中のRPS7遺伝子をクローン化および配列決定し(GenBank 受入番号 U37009)、C.albicans中のrps7がイントロンを欠き、S.セレビシエ中のRPS7タンパク質とアミノ酸レベルで83%相同であることを割り出した。このグループは、RPS7遺伝子がrRNAの3〜6倍の発現レベルで菌糸形成中に上方制御されることも示した。これにより、酵母形態から菌糸形成への形態形成がカンジダ菌種感染に重要であるので、遺伝子が臨床的に関連することが示唆される。アスペルギルス菌種、特に、A.fumigatusでは、RPS7遺伝子は、3つのエクソンおよび2つのイントロンを含み、それにより、遺伝子構造は酵母で認められるものと異なる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願公開第2004/044193号明細書
【特許文献2】国際公開第01/83824号パンフレット
【特許文献3】米国特許第6,017,699号明細書
【特許文献4】米国特許第5,426,026号明細書
【特許文献5】米国特許第6,747,137号明細書
【特許文献6】欧州特許第0,422,872号明細書
【特許文献7】米国特許第5,658,726号明細書
【特許文献8】米国特許第5,958,693号明細書
【特許文献9】米国特許第6,017,366号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Datamonitor report:Stakeholder opinion −Invasive fungal infections,options outweigh replacements 2004;Datamonitor report:Stakeholder Opinion−Sepsis,under reaction to an overreaction,2006
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の目的は、1つ以上の酵母種または真菌種の検出および同定で使用することができる配列および/または診断アッセイを提供することである。本発明者らは、カンジダおよびアスペルギルス遺伝子特異的プライマーを設計するためにrps7遺伝子の構造構成(structural organization)を活用している。これは、共生生物としてカンジダを含むサンプル中の真菌病原体を同定したい場合にユニバーサルプライマーの使用アプローチがうまく行かないかもしれないという点で先行技術よりも有利である。カンジダが増幅過程において真菌病原体からの調節を脱して優先的に増幅され、それにより、病原体を検出することができない可能性が高い。さらに、Delbruckら、1997によって、1つの種における異なる染色体上のrps7遺伝子の異なる対立遺伝子間の配列の相違が異なる関連する無性種における遺伝子間よりもはるかに異なり得ることが示唆されている。これにより、当業者は、分子診断の標的としてのこの遺伝子の選択を回避するであろう。また、いくつかの種(Candida albicansなど)で異なる配列型が存在し、このことも分子診断の標的遺伝子としてのこの遺伝子の選択を回避させているであろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
定義
本明細書中で使用される場合、以下の用語は、明らかに別の意味で記載されない限り、所与の意味を有する。
【0013】
「合成オリゴヌクレオチド」は、ゲノムDNAまたは生きている生物に直接由来しない2つ以上のヌクレオチド塩基の核酸ポリマー分子をいう。用語「合成オリゴヌクレオチド」は、化学的に製造されたか、in vitroで酵素的に合成されたDNA、RNA、およびDNA/RNAハイブリッド分子を含むことが意図される。「オリゴヌクレオチド」は、互いに共有結合した2つ以上のヌクレオチドサブユニットを有するヌクレオチドポリマーである。オリゴヌクレオチドは、一般に、約10〜約100ヌクレオチドである。ヌクレオチドサブユニットの糖類は、リボース、デオキシリボース、またはOMeなどのその修飾誘導体であり得る。ヌクレオチドサブユニットを、ホスホジエステル結合、修飾結合(modified linkage)などの結合、またはオリゴヌクレオチドのその相補的標的ヌクレオチド配列とのハイブリッド形成を妨害しない非ヌクレオチド部分によって結合することができる。修飾結合には、標準的なホスホジエステル結合をホスホロチオアート結合、メチルホスホナート結合、または中性ペプチド結合などの異なる結合と置換する修飾結合が含まれる。窒素塩基アナログはまた、本発明のオリゴヌクレオチドの成分であり得る。
【0014】
「標的核酸」は、標的核酸配列を含む核酸である。「標的核酸配列」、「標的ヌクレオチド配列」、または「標的配列」は、相補的オリゴヌクレオチドとハイブリッド形成することができる特異的なデオキシリボヌクレオチド配列またはリボヌクレオチド配列である。
【0015】
「オリゴヌクレオチドプローブ」は、高ストリンジェンシーハイブリッド形成条件下で検出可能なハイブリッドプローブ:標的二本鎖を形成することができるのに十分にその標的核酸配列と相補的なヌクレオチド配列を有するオリゴヌクレオチドである。オリゴヌクレオチドプローブは、単離化学種であり、かかるヌクレオチドが高ストリンジェンシーハイブリッド形成条件下でのハイブリッド形成を妨害しない限り、標的化領域の外側にさらなるヌクレオチドを含むことができる。プロモーター配列、制限エンドヌクレアーゼ認識部位、または所望の二次構造また三次構造を付与する配列(触媒活性部位など)などの非相補性配列を使用し、本発明のプローブを使用して検出を促進することができる。オリゴヌクレオチドプローブを、任意選択的に、プローブのその標的配列とのハイブリッド形成を検出または確認することができる放射性同位体、蛍光部分、化学発光物質、ナノ粒子部分、酵素、またはリガンドなどの検出可能な部分で標識することができる。オリゴヌクレオチドプローブは約500ヌクレオチド長と同程度またはそれを超えるか、10ヌクレオチド長未満であることが可能であるが、オリゴヌクレオチドプローブは、約10〜約100ヌクレオチド長の範囲のサイズであることが望ましい。
【0016】
「ハイブリッド」または「二本鎖」は、相補塩基間のワトソン−クリック塩基対合または非標準塩基対合によって2つの一本鎖核酸配列の間に形成された複合体である。「ハイブリッド形成」は、核酸の2つの相補鎖が組合わさって二本鎖構造(「ハイブリッド」または「二本鎖」)を形成する過程である。
【0017】
「真菌」または「酵母」は、真菌界の任意の生物を意味し、好ましくは子嚢菌門の任意の生物に関し、最も好ましくは半子嚢菌綱の任意の生物に関する。
【0018】
「相補性」は、各鎖におけるワトソン−クリック塩基対間の水素結合によってハイブリッドまたは二本鎖DNA:DNA、RNA:RNA、またはDNA:RNAを形成することができるDNAまたはRNAの一本鎖の塩基配列によって付与される性質である。アデニン(A)は、通常、チミン(T)またはウラシル(U)と相補性を示し、グアニン(G)は、通常、シトシン(C)と相補性を示す。
【0019】
用語「ストリンジェンシー」を、ハイブリッド形成およびその後のプロセシング工程中に存在する温度、イオン強度、および溶媒組成を記載するために使用する。当業者は、「ストリンジェンシー」条件を種々のパラメーターを個別または共に変更することによって変化させることができることを認識するであろう。高ストリンジェンシー条件下では、相補性の高い核酸ハイブリッドのみが形成され、十分な相補性を持たないハイブリッドは形成されないであろう。したがって、アッセイ条件のストリンジェンシーは、ハイブリッドを形成する2つの核酸鎖間に必要な相補性量を決定づける。ストリンジェンシー条件を、標的核酸および非標的核酸と形成されるハイブリッド間の安定性の相違が最大になるように選択する。
【0020】
「高ストリンジェンシー」条件を使用して、核酸塩基対合は、高頻度の相補性塩基配列を有する核酸フラグメント間のみに起こるであろう(例えば、「高ストリンジェンシー」条件下でのハイブリッド形成は、約85〜100%同一、好ましくは約70〜100%同一のホモログ間で起こり得る)。中ストリンジェンシー条件を使用して、核酸塩基対合は、中程度の頻度の相補性塩基配列を有する核酸間で起こるであろう(例えば、「中ストリンジェンシー」条件下でのハイブリッド形成は、約50〜70%同一のホモログ間で起こり得る)。したがって、「弱」または「低」ストリンジェンシー条件には、しばしば、相補配列の頻度が通常低い遺伝学的に異なる生物由来の核酸が必要である。
【0021】
「高ストリンジェンシー」条件は、42℃の5×SSPE(43.8g/l NaCl、6.9g/l NaHPOO、および1.85g/l EDTA、NaOHでpH7.4に調整する)、0.5% SDS、5×Denhardt試薬、および100μg/ml変性サケ精子DNAからなる溶液中での結合またはハイブリッド形成、およびその後の42℃の0.1×SSPE、1.0%SDSを含む溶液での洗浄と等価な条件(約500ヌクレオチド長のプローブを使用する場合)である。
【0022】
「中ストリンジェンシー」条件は、42℃の5×SSPE(43.8g/l NaCl、6.9g/l NaHPOO、および1.85g/l EDTA、NaOHでpH7.4に調整する)、0.5% SDS、5×Denhardt試薬、および100μg/ml変性サケ精子DNAからなる溶液中での結合またはハイブリッド形成、およびその後の42℃の1.0×SSPE、1.0% SDSを含む溶液での洗浄と等価な条件(約500ヌクレオチド長のプローブを使用する場合)である。
【0023】
「低ストリンジェンシー」条件は、42℃の5×SSPE(43.8g/l NaCl、6.9g/l NaHPOO、および1.85g/l EDTA、NaOHでpH7.4に調整する)、0.1% SDS、5×Denhardt試薬[50×Denhardtは、500mlあたり以下を含む:5g Ficoll(Type400、Pharamcia)、5g BSA(Fraction V;Sigma)]、および100μg/ml変性サケ精子DNAからなる溶液中での結合またはハイブリッド形成、およびその後の42℃の5×SSPE、0.1% SDSを含む溶液での洗浄と等価な条件(約500ヌクレオチド長のプローブを使用する場合)である。
【0024】
核酸in−vitro増幅ベースのテクノロジーに関しては、「ストリンジェンシー」を、特にin−vitro増幅テクノロジーに対する温度条件および緩衝液のイオン条件の適用によって達成する。例えば、PCRおよびリアルタイムPCRに関しては、「ストリンジェンシー」を、プローブのリアルタイムPCRハイブリッド形成に関して、標的核酸のin−vitro増幅のための標的核酸へのオリゴヌクレオチドプライマーのための特定の温度および緩衝液のイオン強度の適用によって得る。
【0025】
例えば、PCRおよびリアルタイムPCRにおけるin vitro増幅ベースの検出系に関して使用する場合、「高ストリンジェンシー」は、1.5〜8mMの濃度のMgClを含む緩衝液環境における55℃〜65℃の範囲のハイブリッド形成(アニーリング)温度条件を含む。
【0026】
例えば、PCRおよびリアルタイムPCRにおけるin vitro増幅ベースの検出系に関して使用する場合、「中ストリンジェンシー」は、1.5〜8mMの濃度のMgClを含む緩衝液環境における45℃〜54℃の範囲のハイブリッド形成(アニーリング)温度条件を含む。
【0027】
例えば、PCRおよびリアルタイムPCRにおけるin vitro増幅ベースの検出系に関して使用する場合、「低ストリンジェンシー」は、1.5〜8mMの濃度のMgClを含む緩衝液環境における40℃〜44℃の範囲のハイブリッド形成(アニーリング)温度条件を含む。
【0028】
当業者は、本発明の実質的に対応するプローブが言及した配列と異なるが、依然として同一の標的核酸配列とハイブリッド形成することができると理解するであろう。核酸由来のこの変動を、配列内の同一塩基の比率またはプローブとその標的配列との間の完全に相補的な塩基の比率に関して言及することができる。本発明のプローブは、これらの比率が約100%〜約80%であるか、約10ヌクレオチド標的配列中の0塩基ミスマッチから約10ヌクレオチド標的配列中の2塩基ミスマッチまでである場合に核酸配列に実質的に対応する。好ましい実施形態では、比率は約100%〜約85%である。より好ましい実施形態では、この比率は約90%〜約100%であり、他の好ましい実施形態では、この比率は約95%〜約100%である。
【0029】
「十分に相補的な」または「実質的に相補的な」は、高ストリンジェンシーハイブリッド形成条件下で検出に安定なハイブリッドを形成するのに十分な量の連続的相補ヌクレオチドを有する核酸を意味する。
【0030】
「核酸ハイブリッド」または「プローブ:標的二本鎖」は、好ましくは約10〜約100ヌクレオチド長、より好ましくは14〜50ヌクレオチド長の二本鎖の水素結合構造である構造を意味するが、この長さはオリゴヌクレオチドプローブの全長に依存するであろう。構造は、化学発光または蛍光の検出、オートラジオグラフィ、電気化学分析、またはゲル電気泳動などの手段による検出に対して十分に安定である。かかるハイブリッドには、RNA:RNA、RNA:DNA、またはDNA:DNA二本鎖分子が含まれる。
【0031】
「RNA等価物およびDNA等価物」は、同一の相補塩基対ハイブリッド形成特性を有するRNA分子およびDNA分子をいう。RNA等価物およびDNA等価物は、異なる糖類(すなわち、リボース対デオキシリボース)を有し、RNA中のウラシルの存在およびDNA中のチミンの存在が異なり得る。等価物が特定の配列と同程度の相補性を有するので、RNA等価物とDNA等価物との間の相違は、実質的に対応する核酸配列の相違に寄与しない。
【0032】
「優先的にハイブリッド形成する」は、高ストリンジェンシーハイブリッド形成条件下でオリゴヌクレオチドプローブがその標的核酸とハイブリッド形成して、安定なプローブ:非標的ハイブリッド(他の生物由来の非標的核酸の存在を示すであろう)を形成することなく、安定なプローブ:標的ハイブリッドを形成する(それにより、標的核酸の存在を示す)ことができることを意味する。したがって、プローブは、当業者が(例えば、カンジダ)の存在を正確に検出し、これらの種を他の生物と区別することができるように非標的核酸よりも十分に広い範囲で核酸を標的化するようにハイブリッド形成する。優先的ハイブリッド形成を、当該分野で公知であり、本明細書中に記載されている技術を使用して測定することができる。
【0033】
「セラノスティクス(theranostics)」は、疾患を診断し、正確な治療レジメを選択し、治療に対する患者の応答をモニタリングするための診断試験の使用を意味する。本発明のセラノスティクスは、患者から採取したサンプル、スワブ(swab)、または標本に対する本発明のNADアッセイの使用に基づき得る。
【0034】
発明の要旨
本発明は、RPS7遺伝子またはその対応するmRNAの少なくとも一部に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを含む酵母種および/または真菌種の検出および同定のための診断キットを提供する。オリゴヌクレオチドプローブは、RPS7遺伝子またはその対応するmRNAの一部と実質的に相同であるか実質的に相補的である配列を有することができる。したがって、これは、相補的なDNA分子またはRNA分子と結合するかハイブリッド形成することができるであろう。RPS7遺伝子は、真菌RPS7遺伝子であり得る。RPS7遺伝子は、酵母RPS7遺伝子であり得る。核酸分子は合成であり得る。キットは、1つを超えるかかるプローブを含むことができる。特に、キットは、複数のかかるプローブを含むことができる。さらに、キットは、例えば、細菌種またはウイルスなどの他の生物のさらなるプローブを含むことができる。
【0035】
RPS7遺伝子は、酵母および真菌中のリボゾーム小サブユニットのタンパク質成分であるリボゾームタンパク質S7をコードする。これはリボゾーム生合成、すなわち、タンパク質合成に必要である。RPS7は、18S rRNAのアセンブリの開始に関与する。
【0036】
本発明は、酵母および真菌の診断で使用する高コピー数のmRNAを同定した。同定された配列は、in vitro DNA/RNA増幅ベースの検出系だけでなく、シグナル増幅ベースの検出系にも適切である。さらに、適切な標的として同定された本発明の配列は、いくつかの領域中に有意な遺伝子内配列多様性(有利であり、本発明の態様が群または種特異的標的に指向することができる)を有し、いくつかの領域中に有意な配列均一性(本発明の態様が酵母および真菌の診断のための直接核酸検出テクノロジー、シグナル増幅核酸検出テクノロジー、および核酸in vitro増幅テクノロジーで使用する属特異的酵母および真菌プライマーおよびプローブに指向することができる)も有するという利点を提供する。RPS7配列により、診断アッセイで複数の試験および自動化が可能である。
【0037】
本発明の配列の利点の1つは、密接に関連する酵母種と真菌種との間の遺伝子内RPS7ヌクレオチド配列の多様性によって酵母および真菌の検出のための診断アッセイで使用する特異的プライマーおよびプローブを診断することができることである。RPS7ヌクレオチド配列(DNAおよびRNAの両方)を、診断アッセイにおける直接検出、シグナル増幅検出、およびin vitro増幅テクノロジーと共に使用することができる。RPS7配列により、診断アッセイで複数の試験および自動化が可能である。
【0038】
高コピー数のRPS7 mRNAは、シグナル増幅検出テクノロジーと組み合わせた診断アッセイにおけるその使用に有利である。さらに、RPS7転写物の不安定性により、この診断標的を生存率診断アッセイで使用することができる。
【0039】
キットは、RPS7遺伝子の少なくとも一部の増幅用プライマーをさらに含むことができる。適切には、キットは、RPS7遺伝子の一部の順方向プライマーおよび逆方向プライマーを含む。RPS7遺伝子の一部は、アスペルギルスRPS7遺伝子のエクソン3の一部であり得る。あるいは、RPS7遺伝子の一部は、C.albicansRPS7遺伝子の塩基対508位から塩基対711位までの遺伝子領域の一部に等価であり得る。アスペルギルスRPS7遺伝子のエクソン3の一部のプローブおよびC.albicansRPS7遺伝子の塩基対508位から塩基対711までに等価な遺伝子領域の一部のプローブを含むキットが特に好ましい。塩基対508位から塩基対711位までに等価な領域を、他の生物(サッカロミセス菌種およびクリプトコッカス・ネオフォルマンスなど)で見出すことができるが、必ずしも508位〜711位ではない。キットは、さらなるプローブも含むことができる。
【0040】
プローブは、配列番号1〜配列番号7、配列番号176〜配列番号189、配列番号378〜配列番号413、および配列番号419〜配列番号448、またはRPS7遺伝子のプローブとして作用することもできる配列と実質的に相同であるか実質的に相補的である配列の群から選択される配列を有することができる。
【0041】
キットは、少なくとも1つの順方向in vitro増幅プライマーおよび少なくとも1つの逆方向in vitro増幅プライマー、配列番号8〜配列番号40、配列番号414、配列番号417、配列番号418、または順方向増幅プライマーとして作用することもできるこれらと実質的に相同であるか実質的に相補的である配列からなる群から選択される配列を有する順方向増幅プライマー、ならびに配列番号3、配列番号22〜配列番号49、配列番号415、および配列番号416、または逆方向増幅プライマーとして作用することもできるこれらと実質的に相同であるか実質的に相補的である配列からなる群から選択される配列を有する逆方向増幅プライマーを含むことができる。診断キットは、直接核酸検出テクノロジー、シグナル増幅核酸検出テクノロジー、および核酸in vitro増幅テクノロジーに基づくことができ、のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、核酸配列ベースの増幅(Nucleic Acids Sequence Based Amplification)(NASBA)、鎖置換増幅(Strand Displacement Amplification)(SDA)、転写媒介増幅(Transcription Mediated Amplification)(TMA)、分岐DNAテクノロジー(bDNA)、およびローリングサークル増幅テクノロジー(RCAT))、または他のin vitro酵素増幅テクノロジーの一つ以上から選択される。
【0042】
本発明はまた、配列番号1〜配列番号466およびこれらと実質的に相同であるかこれらの一部と実質的に相同であり、RPS7遺伝子に基づいた診断で機能を果たす配列からなる群から選択される核酸分子を提供する。核酸分子は、配列番号l〜配列番号466の核酸分子の一部と実質的に相同であるか実質的に相補的である配列を有するオリゴヌクレオチドを含むことができる。
【0043】
本発明はまた、
(i)適切な条件下で試験サンプルを少なくとも1つの上記定義のオリゴヌクレオチドプローブと混合する工程、
(ii)高ストリンジェンシー条件下で試験サンプル中に存在し得る任意の核酸をオリゴヌクレオチドとハイブリッド形成させてプローブ:標的二本鎖を形成する工程、および
(iii)プローブ:標的二本鎖が存在するかどうかを決定する工程を含み、二本鎖の存在が試験サンプル中の標的生物の存在について陽性と同定する、試験サンプル中の標的生物を検出する方法を提供する。
【0044】
プローブは、配列番号1〜配列番号49、配列番号176〜配列番号189、および配列番号378〜配列番号448、またはRPS7遺伝子のプローブとして作用することもできる配列と実質的に相同であるか実質的に相補的である配列からなる群から選択される配列を有することができる。
【0045】
本発明の核酸分子およびキットを、1つ以上の酵母種および/または真菌種の存在を検出するか、患者中の酵母および/または真菌の力価を測定するための診断アッセイ、または患者中の酵母および/または真菌の力価を減少させるか、環境中の酵母および/または真菌の汚染を測定するために設計された治療レジメンの有効性を評価する方法で使用することができる。環境は、病院であり得るか、食品サンプル、環境サンプル(例えば、水)、産業サンプル(製造過程サンプルなど)、または生物汚染度または質の評価に必要な最終産物であり得る。
【0046】
本発明のキットおよび核酸分子を、RPS7遺伝子機能を破壊するために使用することができる1つ以上の破壊剤(disruptive agent)の同定および/または特徴づけで使用することができる。破壊剤を、アンチセンスRNA、PNA、およびsiRNAからなる群から選択することができる。
【0047】
いくつかの実施形態では、RPS7遺伝子はE.ゴシピイ(E.gossypii)遺伝子である。いくつかのかかる実施形態では、RPS7遺伝子を、配列番号54、配列番号194、配列番号212、またはその各mRNA等価物、配列番号55、配列番号195、配列番号213またはその一部、またはこれらと実質的に相同であるか、1つ以上の配列の一部と実質的に相補的である配列からなる群から選択することができる。
【0048】
いくつかの実施形態では、RPS7遺伝子はK.ラクチス遺伝子である。いくつかのかかる実施形態では、RPS7遺伝子を、配列番号56、配列番号196、配列番号210、またはその各mRNA等価物、配列番号57、配列番号197、配列番号211またはその一部、またはこれらと実質的に相同であるか、1つ以上の配列の一部と実質的に相補的である配列からなる群から選択することができる。
【0049】
いくつかの実施形態では、RPS7遺伝子は、D.ハンセニイイ(D.hansenii)遺伝子である。いくつかのかかる実施形態では、RPS7遺伝子を、配列番号60、配列番号200、配列番号214、またはその各mRNA等価物、配列番号61、配列番号201、配列番号215またはその一部、またはこれらと実質的に相同であるか、1つ以上の配列の一部と実質的に相補的である配列からなる群から選択することができる。
【0050】
本発明のいくつかの実施形態では、種特異的プローブを含む核酸分子を使用して、同一属の種を区別することができる。
【0051】
例えば、Candida albicans菌種特異的プローブは、配列番号6、配列番号7、および配列番号378〜配列番号385またはその一部、またはこれらと実質的に相同であるか、1つ以上の配列の一部と実質的に相補的である配列を含むオリゴヌクレオチドを含むことができる。
【0052】
酵母および真菌の標的生物の核酸を検出するための組成物中に本発明のオリゴヌクレオチドを提供することができる。かかる組成物はまた、組成物の意図する使用に応じて適切に、緩衝液、酵素、界面活性剤、塩などを含むことができる。本発明の組成物、キット、および方法は、少なくとも1つの合成オリゴヌクレオチドを含むと本明細書中に記載されているが、合成オリゴヌクレオチドの代わりかこれと共に合成ヌクレオチドフラグメントと実質的に同一の配列を有する天然オリゴヌクレオチドを含むこともできることも想定される。
【0053】
本発明はまた、少なくとも1つの順方向in vitro増幅プライマーおよび少なくとも1つの逆方向in vitro増幅プライマーを含み、順方向増幅プライマーが、配列番号8〜40、配列番号414,配列番号417、配列番号418、または順方向増幅プライマーとして作用することもできるこれらと実質的に相同であるか実質的に相補的である配列の一つ以上からなる群から選択され、逆方向増幅プライマーが、配列番号3、配列番号22〜配列番号49、配列番号415、および配列番号416、または逆方向増幅プライマーとして作用することもできるこれらと実質的に相同であるか実質的に相補的である配列の一つ以上からなる群から選択される、標的酵母および/または真菌生物のためのin vitro増幅診断キットを提供する。
【0054】
本発明はまた、候補酵母種および/または真菌種のRPS7遺伝子配列と実質的に相補的であるか実質的に相同である配列を含む1つ以上のDNAプローブを含む、候補酵母種および/または真菌種の存在を検出するための診断キットを提供する。本発明はまた、RPS7遺伝子またはそのmRNA転写物、酵母および/または真菌のRPS7遺伝子またはそのmRNA転写物、酵母RPS7遺伝子またはそのmRNA転写物、1つ以上の配列番号1〜配列番号466からなる1つ以上の群と実質的に相同であるか、実質的に相補的であるヌクレオチド配列を有する1つ以上の合成オリゴヌクレオチドを提供する。ヌクレオチドは、DNAを含むことができる。ヌクレオチドは、RNAを含むことができる。ヌクレオチドは、DNA、RNA、およびPNAの混合物を含むことができる。ヌクレオチドは、合成ヌクレオチドを含むことができる。本発明の配列(ならびに本発明の方法、キット、組成物、およびアッセイに関連する配列)を、RPS7遺伝子のコード領域の一部と実質的に相同であるように選択することができる。遺伝子は、標的酵母または真菌生物由来の遺伝子であり得る。本発明の配列は、好ましくは、配列の一部とプローブ:標的二本鎖を形成することができるのに十分である。
【0055】
本発明はまた、本発明のオリゴヌクレオチド(合成であってよい)と実質的に相同であるか、実質的に相補的であるオリゴヌクレオチドプローブを含む標的酵母または真菌生物のための診断キットを提供する。in vitro増幅プライマーとしての使用に適切な配列もオリゴヌクレオチドプローブとしての使用に適切であり得る一方で、増幅プライマーが約15ヌクレオチドと約30ヌクレオチドとの間(より好ましくは約15〜約23、最も好ましくは約20〜約23)の相補部分を有することができ、本発明のオリゴヌクレオチドプローブが任意の適切な長さであり得ることが好ましいことを認識するであろう。当業者は、選択したオリゴヌクレオチドプローブの長さ、性質、構造(例えば、LightCyclerのハイブリッド形成プローブ対、Taqman5’エキソヌクレアーゼプローブ、ヘアピンループ構造など)、および配列に応じて異なるハイブリッド形成条件および/またはアニーリング条件が必要であることを認識するであろう。オリゴヌクレオチドプローブを表面上に固定した本発明のキットおよびアッセイも提供することができる。かかる表面は、ビーズ、膜、カラム、ディップスティック、ナノ粒子、診断プレートのウェルなどの反応室の内面もしくは反応チューブの内側、毛細管、または容器などであり得る。
【0056】
標的酵母または真菌生物を、
【0057】
【数1】

からなる群から選択することができる。
【0058】
標的酵母生物は、既に実験的に証明された所与のプライマー対のカンジダ菌種であり得、より好ましくは、
【0059】
【数2】

からなる群から選択される。これらの環境下では、遺伝子特異的領域または属特異的領域に対する本発明の増幅プライマーおよびオリゴヌクレオチドプローブを、1つ以上、または多数、または実質的に全ての標的酵母生物群の所望の生物を同定することができるように設計することができる。適切な順方向増幅プライマーを、Can1F:5’−AGC TGG TTT CAT GGA TGT−3’(配列番号40)、配列番号36、および配列番号37、ならびに/または配列番号38と39との混合物からなる群から選択することができる。適切な逆方向増幅プライマーを、Can2R:5’−TCT GGG TAT CTG AT(A/G)GTT CT−3’(配列番号3)、配列番号2、および/または配列番号4と5との混合物、実際は、配列番号41、配列番号42、配列番号46、配列番号47、および/または配列番号43〜45の混合物、および/または配列番号48〜49の混合物の1つ以上と実質的に相補的なオリゴヌクレオチドからなる群から選択することができる。適切な属特異的オリゴヌクレオチドプローブは、CASP:5’−TAA CAT CGT AGG CTA ATC−3’(配列番号1)、配列番号6、または配列番号7である。カンジダ菌種特異的プローブを、配列番号378〜配列番号413からなる群から選択することができる。標的真菌生物は、既に実験的に証明された所与のプライマー対のアスペルギルス菌種であり得、より好ましくは、
【0060】
【数3】

からなる群から選択される。適切な順方向増幅プライマーは配列番号414、配列番号417、および配列番号418であり得、選択される逆方向プライマーは、配列番号415または配列番号416であり得る。アスペルギルス菌種特異的プローブを、配列番号419〜配列番号448からなる群から選択することができる。
【0061】
試験サンプルは、標的酵母および/または真菌生物の細胞を含むことができる。本方法はまた、上記試験サンプル中に存在し得る標的酵母または真菌生物の任意の細胞から核酸を放出させる工程を含むことができる。理想的には、試験サンプルは、患者から得たサンプル(スワブ、または血液、尿、唾液、気管支洗浄物、歯科標本、皮膚標本、頭皮標本、移植臓器生検、糞便、粘液、または排泄物サンプルなど)の溶解物である。試験サンプルは、食品サンプル、水サンプル、環境サンプル、最終産物、および最終産物または製造過程産業サンプルであり得る。
【0062】
本発明はまた、1つ以上の酵母種または真菌種の存在についての診断アッセイにおける配列番号1〜466のいずれか1つの使用を提供する。種は、
【0063】
【数4】

【0064】
【数5】

からなる群から選択することができる。
【0065】
本発明はまた、1つ以上の本発明の合成オリゴヌクレオチドを含むセラノスティクス、食品安全性診断、産業微生物学診断、環境モニタリング、獣医学的診断、バイオテロ診断で使用するキットを提供する。キットはまた、適切なサンプル回収装置、試薬容器、緩衝液、標識部分、溶液、界面活性剤、および補足液(supplementary solution)からなる群から選択される1つ以上の材料を含むことができる。本発明はまた、セラノスティクス、食品安全性診断、産業微生物学診断、環境モニタリング、獣医学的診断、バイオテロ診断における本発明の配列、組成物、ヌクレオチドフラグメント、アッセイ、およびキットの使用を提供する。
【0066】
核酸分子、組成物、キット、または方法を、酵母および/または真菌種の検出のための診断核酸ベースのアッセイで使用することができる。
【0067】
核酸分子、組成物、キット、または方法を、患者中の酵母および/または真菌の力価を測定するための診断アッセイで使用することができる。力価をin vitroで測定することができる。
【0068】
核酸分子、組成物、キット、または方法を、治療レジメの1つ以上の重要な段階で(in vivo方法またはin vitro方法によって)患者中の酵母および/または真菌の力価を評価する工程を含む、患者中の酵母および/または真菌の力価を減少させるように設計した治療レジメの有効性を評価する方法で使用することができる。適切な重要な段階には、治療前、治療中、および治療後が含まれ得る。治療レジメは、医薬品(pharmaceutical drug)などの抗真菌薬を含むことができる。
【0069】
核酸分子、組成物、キット、または方法を、例えば、病院における潜在的な酵母および/または真菌の汚染を測定するための診断アッセイで使用することができる。
【0070】
核酸分子、組成物、キット、または方法を、RPS7遺伝子機能を破壊するために使用することができる1つ以上の破壊剤の同定および/または特徴づけで使用することができる。適切な破壊剤を、アンチセンスRNA、PNA、siRNAからなる群から選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】a:プライマーCan1FおよびCan2Rを使用して増幅したカンジダ菌種RT−PCR部分的RPS7配列のゲル電気泳動;b:C.albicans種特異的プローブCASPの特異性を証明するオートラジオグラフ。AおよびB:レーン1:マーカーXIV;2:Candida albicans部分的RPS7 RT−PCR産物;3:C.tropicalis部分的RPS7 RT−PCR産物;4:C.parapsilosis部分的RPS7 RT−PCR産物;5:C.glabrata部分的RPS7 RT−PCR産物;6:C.dubliniensis部分的RPS7 RT−PCR産物。これらのin vitro増幅産物を、カンジダ属特異的プライマーCan1F:5’−AGC TGG TTT CAT GGA TGT−3’(配列番号40)およびCan2R:5’−TCT GGG TAT CTG AT(A/G)GTT CT−3’(配列番号3)を使用して生成した。
【図2】RPS7遺伝子、組み込みプライマー配列番号40および配列番号3、ならびにTaqManプローブ配列番号384に基づくC.albicansのリアルタイムPCRアッセイの包括試験(inclusivity testing)−20種全てのC.albicans株が検出された。
【図3】RPS7遺伝子および組み込みプライマー配列番号40および配列番号3、ならびにTaqManプローブ配列番号384に基づくC.albicansのリアルタイムPCRアッセイの特異性。病理学に関連する他のカンジダ菌種(C.haemuloni、C.kefyr、C.pulcherrima、C.utilis、C.viswanthii、C.zeylanoides、およびヒトDNAが含まれる)の照合−交差反応は認められなかった。
【図4】RPS7遺伝子、組み込みプライマー配列番号40および配列番号3、ならびにTaqManプローブ配列番号384に基づき、C.albicansゲノムDNAの連続希釈物(10−l細胞等価物)を含むC.albicansのリアルタイムPCRアッセイの検出限度−検出限度は10細胞であった。
【図5】RPS7遺伝子、組み込みプライマー配列番号418および配列番号415、ならびにTaqManプローブ配列番号419に基づき、A.fumigatusゲノムDNA 5062の連続希釈物(10−l細胞等価物)を含むA.fumigatusのリアルタイムPCRアッセイの検出限度−現出限度は1細胞等価物であった。
【図6】RPS7遺伝子、組み込みプライマー配列番号418および配列番号415、ならびにTaqManプローブ配列番号419に基づくA.fumigatus(20株のA.fumigatus)のリアルタイムPCRアッセイの包括試験−全てのA.fumigatus株が検出された。
【図7】RPS7遺伝子、組み込みプライマー配列番号418および配列番号415、ならびにTaqManプローブ配列番号419に基づくA.fumigatusのリアルタイムPCRアッセイの特異性試験。交差反応性試験パネルは、一定範囲のアスペルギルス菌種を含んでいた−交差反応は検出されなかった。
【発明を実施するための形態】
【0072】
発明の詳細な説明
材料と方法
生物および成長条件:カンジダ菌種(CBS 562)を、Sabouraud寒天(4% wt/volグルコース、1% wt/volペプトン、1.5%寒天)上で、180rpmにて37℃で一晩成長させた。1つのコロニーを使用して、10mlのSabouraudブロス(Oxoid(商標))に接種し、37℃で一晩成長させた。1mlの一晩培養物を使用して、100ml Sabouraudブロス(Oxoid(商標))に接種し、指数成長期および静止期まで(それぞれ、8時間および16時間)成長させた。クロコウジカビを、Sabouraud寒天上にて30℃で48時間成長させた。皮下注射針を使用して、寒天を突き刺し、100ml Sabouraudブロスに移し、48時間成長させた。傾斜培養(slope)または乾燥ストック(dessicated stock)由来のアスペルギルス菌種も、Sabouraud寒天中にて25℃で1〜7日間成長させた。
【0073】
総RNAの単離:C.albicansからのRNA抽出を、指数成長期まで成長させた後にRNeasy(商標)ミニキット(商標)(Qiagen(商標))を使用して行った。1mlの培養物を、10,000rpmで遠心分離し、ペレットを100μlのYI溶解緩衝液(0.1M EDTA、1Mソルビトール、0.1%β−メルカプトエタノール、および1000Uリチカーゼ(lyticase))中で再懸濁し、30℃で20分間インキュベートした。総RNAの質を、1.2%MOPS変性ゲルでのゲル電気泳動によって評価し、TBS−380(商標)ミニフルオロメーター( miniflurometer)(Turner Systems(商標))を使用した蛍光光度法によって定量した。
RPS7真菌/酵母遺伝子特異的in vitro増幅プライマーの設計:総RNAを、Ambion(商標)酵母総RNA単離キットを使用して5つのカンジダ菌種(C.albicans、C.glabrata、C.tropicalis、C.parapsilosis、およびC.dubliniensis)から単離し、製造者の説明書に従ってこれを行った。次いで、5つ全ての単離した総RNAに対してin vitro RT−PCR増幅を行って、特徴づけていない酵母種(C.tropicalis、C.parapsilosis、およびC.dubliniensis)由来の配列の生成のためのCan 1F(配列番号40)およびCan2R(配列番号3)の使用を証明した。in vitro増幅プライマーである配列番号3および配列番号40を使用し、製造者の説明書に従ってTitan One Tube(商標)RT−PCRシステム(Roche)を使用して試験した全カンジダ菌種由来の単離総RNAに対してRT−PCR増幅を行った。次いで、得られたRT−PCR in vitro増幅産物を、1.2%アガロースゲルで電気泳動して、in vitro増幅の成功を判断し、その後にサザンブロッティングした(図1A)。特徴づけていないカンジダRPS7配列由来の残りのRT−PCRin vitro増幅産物を、製造者の説明書に従ってRoche High Pure(商標)PCR産物精製キットを使用して精製し、その後に配列決定プライマーとして配列番号40を使用して配列決定し、これらの生物の新規のRPS7部分配列データを得た(配列番号64および65、66および67、68および69、70および71)。
Can1F:5’−AGC TGG TTT CAT GGA TGT−3’:配列番号40
Can2R:5’−TCT GGG TAT CTG AT(A/G)GTT CT−3’:配列番号3
in vitro PCR増幅を使用したカンジダ、出芽酵母、およびC.ネオフォルマンス種部分RPS7配列の決定−プライマーCanF1(配列番号40)およびCanR2(配列番号3):カンジダ菌種部分RPS7配列のヌクレオチド配列データベースを決定および拡大するために、また、in vitro PCR増幅プライマーCanF1(配列番号40)およびCan2R(配列番号3)の多様な用途をさらに証明するために、一連のPCR in vitro増幅を、以下のカンジダ株に対して行った:C.albicans株178、180、320、369、765、16733、1560、9559、4154、2700、562、3822、3156、3345、3328、C.ドゥブリニエンシス3949、C.glabrata株、9087、4692、205444、10269、9556、5563、3959、138、3605、3897、8018、3863、3902、604、C.parapsilosis株、3902、604、2194、2196、1001、1716、9557、5579、C.krusei株5579、9560、6055、17518、573、3165、3922、3847、およびC.tropicalis株3895、94、4225、5557、15902、4139、3873、3870、8157、2311。総ゲノムDNAを、Edge BiosystemsゲノムDNA精製キットを使用してこれらの各株から単離し、精製DNAの完全性を、1.2%アガロースゲルでの各単離DNAサンプルの電気泳動によって決定した。次いで、各DNAサンプルを、製造者の説明書に従ってCanF1およびCanR2と組み合わせてTaq DNAポリメラーゼ(Roche)を使用したin vitro PCR増幅に供した。次いで、各カンジダ株ゲノムDNAから増幅したPCR産物を、Roche High Pure PCR産物精製キットを使用して精製した。次いで、精製PCR産物を、配列プライマーとしてCanF1を使用したヌクレオチド配列決定に供した。これにより、試験した全カンジダ株についての新規の部分RPS7ヌクレオチド配列が生成された。配列番号62〜配列番号175によって示した配列は、試験した上記のカンジダ株について生成した部分RPS7ヌクレオチド配列を示す。さらに、PCR増幅プライマーである配列番号40および配列番号3を使用して、カンジダ菌種(n=20種、n=120株)から抽出したDNAを増幅した。これらのプライマーは、C.albicansのRPS7遺伝子の508〜711位(受入番号:U37009)と等価なRPS7遺伝子の204bp領域を増幅する。リチカーゼ酵素でのカンジダ菌種細胞の前処理後にMagNAピュア酵母よび細菌単離キットIIIを使用して、MagNA Pureシステム(Roche Molecular Systems)でDNAを抽出した。いくつかのDNA抽出物を、EasyMagシステム(BioMerieux)を使用して得た。表1の概説の試薬および条件を使用してPCR増幅を行った。DNA配列決定のPCR産物を、ExoSAP−ITキット(USB)またはHigh Pure PCR精製キット(Roche)を使用して浄化した。配列番号40のプライマーを使用して、外部配列サービスプロバイダーであるSequiserve(Germany)がカンジダ菌種のPCR産物のDNA配列決定を開始した。さらに、PCRプライマーである配列番号40および配列番号3を使用して、C.ネオフォルマンスおよび出芽酵母種由来のDNAを増幅した。配列番号40のプライマーを使用して、PCR産物も外部配列プロバイダーであるSequiserve(Germany)が配列決定した。配列番号222〜配列番号325は、カンジダ菌種rps7遺伝子(204bp)配列を示す。配列番号449は、出芽酵母rps7遺伝子(204 bp)配列を示し、配列番号451はC.ネオフォルマンスrps7遺伝子配列を示す。
表1:カンジダ菌種である出芽酵母およびC.ネオフォルマンスにおいてRPS7遺伝子を増幅するために使用したPCR試薬および条件。
【0074】
【表1−1】

【0075】
【表1−2】

アスペルギルス菌種のRPS7遺伝子エクソン3配列情報の作成
PCRプライマーである順方向プライマー配列番号414および逆方向プライマー配列番号415を、A.fumigatusのRPS7中の664〜980位(Genbank受入番号:XM_749453(アスペルギルス菌種))由来のエクソン3(317bp)を増幅するように設計した。これらのプライマーを使用して8種由来のDNA(n=67株−表2)をPCR増幅し、これらの株についてのエクソン3フラグメントの配列情報を連続的に得た。独立したプライマー対である順方向プライマー配列番号417および逆方向プライマー配列番号416を設計し、適用して、クロコウジカビ株中のRPS7遺伝子(エクソン3−317bp)を増幅した(n=10−表2)。これらのプライマーを使用して、表3に記載の条件を使用して、iCycler(BioRad)にてアスペルギルス菌種中のRPS7エクソン3(317bp)のPCR増幅を行った。DNA配列決定のためのPCR産物を、High Pure PCR精製キット(Roche)を使用して浄化した。外部配列サービスプロバイダーであるSequiserve(Germany)によって配列番号414および配列番号417(順方向)プライマーを使用してDNA配列決定を行った。
表2:RPS7遺伝子のエクソン3を配列決定したアスペルギルス菌種および株。
【0076】
【表2】

表3:DNA配列決定のためのアスペルギルス菌種中のRPS7遺伝子のエクソン3の317bp領域のPCR増幅のために使用したPCR試薬およびPCR条件。
【0077】
【表3−1】

【0078】
【表3−2】

RPS7遺伝子配列に基づいたプロトタイプ種特異的C.albicans核酸診断(NAD)アッセイの開発:次いで、新規および既に存在するRPS7配列データ(配列番号62〜配列番号175)を試験し、C.albicans種特異的オリゴヌクレオチドプローブ(CASP、配列番号1)を同定し、上記のようにサザンブロットへのハイブリッド形成での使用するために合成した。CASP(配列番号1)オリゴヌクレオチドプローブの5’末端を、T4ポリヌクレオチドキナーゼ(Roche)を使用してγP32で放射性標識し、サザンブロットと55℃で2時間ハイブリッド形成させた。ハイブリッド形成溶液を取り出し、ブロットに6×SSC、0.1%SDSにて室温で10分間の洗浄を2回行い、その後に6XSSC,0.1%SDSにて55℃で1分間の高ストリンジェンシー洗浄を行った。ブロットをX線フィルムに曝露し、−70℃で2時間オートラジオグラフィを行った。図1Bは、CASP種特異的オリゴヌクレオチドプローブのみがC.albicansのRT−PCR in vitro増幅産物とハイブリッド形成した。したがって、目的の酵母種の検出のための標的としてのRPS7核酸配列の使用および潜在性が証明された。
CASP:5’−TAA CAT CGT AGG CTA ATC−3’:配列番号1
カンジダ菌種のオリゴヌクレオチドプローブの設計
各種(配列番号222〜配列番号325)について得た異なる配列型を示すカンジダ菌種中のRPS7遺伝子204bp標的領域について得た配列情報をアラインメントし、生物情報学ツール(ClustalWおよびBLASTプログラムが含まれる)を使用して分析し、異なるカンジダ菌種の同定のためのオリゴヌクレオチドプローブを設計した。C.albicans同定のために、オリゴヌクレオチドプローブ配列番号378〜配列番号385を設計した。C.krusei同定のために、オリゴヌクレオチドプローブ配列番号386〜配列番号389を設計した。C.parapsilosis同定のために、オリゴヌクレオチドプローブ配列番号390〜配列番号393を設計した。C.tropicalisの同定のために、オリゴヌクレオチドプローブ配列番号394〜配列番号405を設計した。C.glabrata同定のために、オリゴヌクレオチドプローブ配列番号406〜配列番号413を設計した。
【0079】
プライマー配列番号40および配列番号3ならびにオリゴヌクレオチドプローブ配列番号378〜配列番号413を使用して、カンジダ菌種のための核酸診断アッセイを設計した。開発したアッセイの例には、5つのカンジダ菌種(C.albicans、C.krusei、C.tropicalis、C.glabrata、およびC.parapsilosisが含まれる)のためのリアルタイムPCR TaqManアッセイが含まれる。C.albicansアッセイの例は、プライマー配列番号40および配列番号3ならびにオリゴヌクレオチドプローブ配列番号384を含む(図2)。C.kruseiのアッセイの例は、プライマー配列番号40および配列番号3ならびにプローブ配列番号386を含む。C.glabrataのアッセイの例は、プライマー配列番号40および配列番号3ならびにプローブ配列番号412を含む。C.tropicalisのアッセイの例は、プライマー配列番号40および配列番号3ならびにプローブ配列番号400を含む。C.parapsilosisのアッセイの例は、プライマー配列番号40および配列番号3ならびにプローブ配列番号392を含む。これらの種特異的アッセイをLightCyclerリアルタイムPCR装置で設定し、表4に記載の条件および試薬を使用して行う。各種アッセイを、種の20種の株の包括性(inclusivity)について試験し、各種アッセイについて、関連株(n=20)を検出した。各種アッセイを、種のパネル(19種のカンジダ、24種の他の酵母および皮膚糸状菌、9種のアスペルギルス、15種の細菌種、およびヒトDNAが含まれる)に対する交差反応性について試験した(表5)。各種アッセイにより、検出するように設計した種の株のみが検出され、他のカンジダ菌種、アスペルギルス菌種、他の酵母、皮膚糸状菌、細菌、またはヒトDNA由来のDNAと交差反応しなかった。図3は、C.albicans種特異的アッセイを使用した特異性研究の例を示す。アッセイの検出限度(LOD)または感度を、関連種由来のゲノムDNAの10回連続希釈(10−l細胞等価物)を使用して決定した。各種アッセイについて10種の細胞等価物の検出限度を確立した。図4は、C.albicansアッセイについて得た検出限度を示す。
表4:PCR試薬およびサーモサイクリング条件:
【0080】
【表4−1】

【0081】
【表4−2】

カンジダ菌種およびA.fumigatusアッセイでの交差反応性試験のために含まれる種のパネル
【0082】
【化1−1】

オリゴヌクレオチドプライマーおよびアスペルギルス菌種のためのプローブの設計
DNA配列決定後(エクソン3 RPS7(317bp))、各種(配列番号326〜配列番号377)について得た異なる配列型を示すアスペルギルス菌種から増幅したPCR産物のために生成した配列情報をアラインメントし、生物情報学ツール(ClustalWおよびBLASTプログラムが含まれる)を使用して分析した。PCRプライマー配列番号418を、PCRプライマー配列番号415と組み合わせて、A.fumigatusおよび他のアスペルギルス菌種中のRPS7遺伝子の125bp領域の増幅のために設計した。A.fumigatusの同定ために、オリゴヌクレオチドプローブ配列番号419〜配列番号424を設計した。A.カンジダスの同定のために、オリゴヌクレオチドプローブ配列番号425〜配列番号428を設計した。A.テレウスの同定のために、オリゴヌクレオチドプローブ配列番号429〜配列番号432を設計した。A.ベルシカラの同定のために、オリゴヌクレオチドプローブ配列番号433〜配列番号436を設計した。A.ニデュランスの同定のために、オリゴヌクレオチドプローブ配列番号437〜配列番号440を設計した。A.フラバスの同定のために、オリゴヌクレオチドプローブ配列番号441および配列番号442を設計した。A.クラバタスの同定のために、オリゴヌクレオチドプローブ配列番号443〜配列番号448を設計した。
アスペルギルス菌種(A.fumigatus)のための核酸ベースの診断アッセイ:
アスペルギルス菌種のための核酸診断アッセイを、プライマー配列番号414〜配列番号418およびオリゴヌクレオチドプローブ配列番号419〜配列番号448を使用して設計した。開発したアッセイの一例は、A.fumigatusのためのリアルタイムPCR TaqManアッセイ(プライマー配列である配列番号418および配列番号415ならびにDNAオリゴヌクレオチドプローブ配列番号419を含む)である。このアッセイを、LightCyclerリアルタイムPCR装置で設定し、表4に記載の条件および試薬を使用して行う。アッセイの検出限度(LOD)または感度を、A.fumigatus株番号5062由来のゲノムDNAの10回連続希釈(10−l細胞等価物)を使用して決定した。図5は、1ゲノム等価物としてのA.fumigatusアッセイのLODを示す。A.fumigatusアッセイの特異性を、A.fumigatusの20株を使用した包括性についてのA.fumigatusアッセイの試験によって確認した。アッセイで全20株が検出された(図6)。A.fumigatusアッセイを、パネル(20種のカンジダ、24種の皮膚糸状菌、8種のアスペルギルス菌種、15の細菌種、およびヒトDNAが含まれる)に対する交差反応性についてチェックした。A.fumigatusアッセイにおいてこれらの株/種またはヒトDNAの交差反応は存在しなかった(表5)。図7は、アスペルギルス菌種DNAのパネルを使用して行った交差反応研究の例を示す。
【0083】
本明細書中に開示の任意の配列がPatentIn3.3ソフトウェア中の添付の配列表中のその対応物と異なる限りにおいて、テキスト本文内の配列は、正確なバージョンとして認識すべきである。
【0084】
用語「comprises/comprising」および用語「having/including」は、本発明に関連して本明細書中で使用される場合、記載の特徴、整数、工程、または成分の存在を特定するために使用するが、1つ以上の他の特徴、整数、工程、成分、またはその群の存在または付加を排除しない。
【0085】
明確にするために個別の実施形態の文脈で記載される本発明の一定の特徴を、1つの実施形態と組み合わせて提供することもできると認識される。逆に、簡潔にするために1つの実施形態の文脈で記載される本発明の種々の特徴を、個別または任意の適切なサブコンビネーション(subcombination)で提供することもできる。配列番号、プローブの部位、オリゴヌクレオチドなどを太字および下線で示す。
Nまたはx=任意のヌクレオチド;w=a/t、m=a/c、r=a/g、k=g/t、s=c/g、y=c/t、h=a/t/c、v=a/g/c、d=a/g/t、b=g/t/c。
【0086】
一部の例では、特異的縮重オプションを、括弧内に示す:例えば、(a/g)はAまたはGのいずれかである。
【0087】
【化1−2】

【0088】
【化2】

【0089】
【化3】

【0090】
【化4】

【0091】
【化5】

【0092】
【化6】

【0093】
【化7】

【0094】
【化8】

【0095】
【化9】

【0096】
【化10】

【0097】
【化11】

【0098】
【化12】

【0099】
【化13】

【0100】
【化14】

【0101】
【化15】

【0102】
【化16】

【0103】
【化17】

【0104】
【化18】

【0105】
【化19】

【0106】
【化20】

【0107】
【化21】

【0108】
【化22】

【0109】
【化23】

【0110】
【化24】

【0111】
【化25】

【0112】
【化26】

【0113】
【化27】

【0114】
【化28】

【0115】
【化29】

【0116】
【化30】

【0117】
【化31】

【0118】
【化32】

【0119】
【化33】

【0120】
【化34】

【0121】
【化35】

【0122】
【化36】

【0123】
【化37】

【0124】
【化38】

【0125】
【化39】

【0126】
【化40】

【0127】
【化41】

【0128】
【化42】

【0129】
【化43】

【0130】
【化44】

【0131】
【化45】

【0132】
【化46】

【0133】
【化47】

【0134】
【化48】

【0135】
【化49】

【0136】
【化50】

【0137】
【化51】

【図1AandB】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
RPS7遺伝子またはその対応するmRNAの少なくとも一部に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを含む酵母種または真菌種のための診断用キット。
【請求項2】
RPS7遺伝子の少なくとも一部の増幅のためのプライマーをさらに含む、請求項1に記載のキット。
【請求項3】
RPS7遺伝子の一部の順方向プライマーおよび逆方向プライマーを含む、請求項2に記載のキット。
【請求項4】
前記RPS7遺伝子の一部がアスペルギルスRPS7遺伝子のエクソン3の一部である、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のキット。
【請求項5】
前記RPS7遺伝子の一部が、C.albicans RPS7遺伝子の塩基対508位〜塩基対711位の一部に等価である、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のキット。
【請求項6】
アスペルギルスRPS7遺伝子のエクソン3の一部のプローブおよびC.albicans RPS7遺伝子の508位〜711位に等価物の一部のプローブを含む、前記請求項のいずれか1項に記載のキット。
【請求項7】
前記プローブが、配列番号1〜配列番号7、配列番号176〜配列番号189、配列番号378〜配列番号413、および配列番号419〜配列番号448、またはプローブとして作用することもできるこれらと実質的に類似するか相補的である配列から選択される、前記請求項のいずれか1項に記載の診断用キット。
【請求項8】
少なくとも1つの順方向in vitro増幅プライマーおよび少なくとも1つの逆方向in vitro増幅プライマーを含み、前記順方向増幅プライマーが、配列番号8〜配列番号40、配列番号414、配列番号417、配列番号418、または順方向増幅プライマーとして作用することもできるこれらと実質的に類似するか相補的である配列からなる群から選択され、前記逆方向増幅プライマーが、配列番号3、配列番号22〜配列番号49、配列番号415、および配列番号416、または逆方向増幅プライマーとして作用することもできるこれらと実質的に類似するか相補的である配列からなる群から選択される、前記請求項のいずれか1項に記載のキット。
【請求項9】
直接核酸検出テクノロジー、シグナル増幅核酸検出テクノロジー、および核酸in vitro増幅テクノロジーに基づいて、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、核酸配列ベースの増幅(Nucleic Acids Sequence Based Amplification)(NASBA)、鎖置換増幅(Strand Displacement Amplification)(SDA)、転写媒介増幅(Transcription Mediated Amplification)(TMA)、分岐DNAテクノロジー(bDNA)、およびローリングサークル増幅テクノロジー(RCAT)、または他の酵素in vitro増幅ベースのテクノロジーの一つ以上から選択される、請求項8に記載の診断用キット。
【請求項10】
配列番号1〜配列番号466およびこれらとまたはこれらの一部と実質的に相同であるか実質的に相補的である配列からなる群から選択され、RPS7遺伝子に基づいた診断において機能を有する、核酸分子。
【請求項11】
請求項10に記載の核酸分子の一部に実質的に相同であるか実質的に相補的である配列を有するオリゴヌクレオチドを含む核酸分子。
【請求項12】
試験サンプル中の標的生物を検出する方法であって、
(ii)適切な条件下で試験サンプルをRPS7遺伝子またはその対応するmRNAの少なくとも一部に結合することができる少なくとも1つのオリゴヌクレオチドプローブと混合する工程、
(ii)高ストリンジェンシー条件下で試験サンプル中に存在し得る任意の核酸をオリゴヌクレオチドとハイブリッド形成させてプローブ:標的二本鎖を形成する工程、および
(iii)プローブ:標的二本鎖が存在するかどうかを決定する工程を含み、前記二本鎖の存在が試験サンプル中の標的生物の存在について陽性と同定する、方法。
【請求項13】
前記プローブが、配列番号1〜配列番号49、配列番号176〜配列番号189、および配列番号378〜配列番号448、またはRPS7遺伝子のプローブとして作用することもできるこれらと実質的に相同であるか実質的に相補的である配列からなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
1つ以上の酵母種および/または真菌種の存在を検出するための診断アッセイにおける請求項10または請求項11のいずれか1項に記載の核酸分子の使用。
【請求項15】
患者における酵母および/または真菌の力価を測定するための診断アッセイにおける請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載のキットまたは請求項10または請求項11のいずれか1項に記載の核酸分子の使用。
【請求項16】
患者における酵母および/または真菌の力価を減少させるように設計された治療レジメの有効性を評価する方法であって、前記治療レジメの1つ以上の重要な段階での請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載のキットまたは請求項10または請求項11のいずれか1項に記載の核酸分子の使用を含む、方法。
【請求項17】
環境における酵母および/または真菌の汚染を測定するための診断アッセイにおける請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載のキットまたは請求項10または請求項11のいずれか1項に記載の核酸分子の使用。
【請求項18】
前記環境が、病院、食品サンプル、環境サンプル(例えば、水)、産業サンプル(製造過程サンプルなど)、または生物汚染度または品質の評価に必要な最終産物である、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
RPS7遺伝子機能を破壊するために使用することができる1つ以上の破壊剤の同定および/または特徴づけにおける請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載のキットまたは請求項10または請求項11のいずれか1項に記載の核酸分子の使用。
【請求項20】
前記破壊剤が、アンチセンスRNA、PNA、siRNAからなる群から選択される、請求項19に記載の使用。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−512740(P2010−512740A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−540964(P2009−540964)
【出願日】平成19年12月14日(2007.12.14)
【国際出願番号】PCT/IE2007/000123
【国際公開番号】WO2008/072217
【国際公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(506333923)ナショナル・ユニバーシティ・オブ・アイルランド・ゴルウェイ (5)
【氏名又は名称原語表記】National University of Ireland Galway
【Fターム(参考)】