説明

酵素水供給システム

【課題】使用する者の要望に適した酵素水を生成してストックタンクに貯留し得る酵素水生成システムを構成する。
【解決手段】スケジュールで設定された酵素水Wxの混合率と、ストックタンクBに残留する酵素水Wxの混合率とが異なる場合には、このストックタンクBに目標貯留量に達するに必要な酵素水Wxの量と、酵素水生成装置Aから新たにストックタンクBに排出することによって、ストックタンクBにおいて混じり合った状態の酵素水Wxの混合率が目標混合率となるように、制御ユニット18の制御形態を設定した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生成タンクに水と酵素製剤とを供給して温度管理することにより酵素水を生成する酵素水生成装置と、この酵素水生成装置で生成された前記酵素水が送られるストックタンクとを備えている酵素水供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
上記のように構成された酵素水供給システムにおいて酵素水生成装置に関連する装置として特許文献1及び特許文献2に記載されるものが存在する。
【0003】
特許文献1では、生成タンク(文献では産出槽)に吸水管から水を送り、この水に酵素製剤(文献では微生物製剤)を加え、ヒータでの加熱によって温度管理することにより、生成タンク内にリパーゼ、プロテアーゼ、アミラーゼ、セルラーゼ等の酵素を含む酵素水(文献では酵素水溶液)を生成し、このように生成した酵素水をストックタンク(文献では貯留槽)に貯留するようにシステムを構成している。また、自動食器洗浄機からオイルトラップに廃水が送られる配管と、このオイルトラップとに対してストックタンクに貯留した酵素水を送る配管を形成し、夫々の配管にポンプを備えている(段落番号〔0011〕〜〔0013〕・図1、図2)。
【0004】
この特許文献1では、自動食器洗浄機の運転終了から所定時間経過した後に、ポンプを駆動することにより、ストックタンクに貯留した酵素水を、配管とオイルトラップとに供給するように制御形態が設定されている(段落番号〔0016〕)。
【0005】
特許文献2では、生成タンク(文献では活性化タンク)にバルブを介して水を送る給水系を備え、この生成タンクに製剤貯留タンクからポンプを介して酵素製剤を供給する供給系を備え、生成タンクには液面レベルセンサと、ヒータと、温度センサとを備え、この生成タンクからポンプを介して酵素水を送り出す排出系を備えている(段落番号〔0021〕〜〔0024〕・図5)。
【0006】
この特許文献2の装置では、生成タンクに所定量の水を貯留し、この生成タンクに酵素製剤を供給した後に、ヒータを駆動して生成タンク内の液体(水と酵素製剤の混合液)を加熱して、この液体の温度を微生物酵素を活性させるのに適した温度に維持し、次に、排出系のポンプを駆動してストックタンク(文献では外部タンク)に生成タンクの液体を排出する処理を行う。この処理を、ストックタンクに設定量貯留されるまで繰り返すように制御形態が設定されている(段落番号〔0029〕・〔0030〕・〔0034〕・図9)。
【0007】
【特許文献1】特開2003‐266062号公報
【特許文献2】特開2004‐242673号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1及び特許文献2に記載されるように、酵素水は油脂を分解する性能を有するため、厨房において床面に酵素水を撒布して洗浄に使用することも行われている。
【0009】
レストランの厨房を例に挙げると、酵素水を厨房の床面に撒布する時間帯は、必然的にレストランの営業を終えた後になる。酵素水は、酵素の量によって油脂を分解する能力に差を生ずるものであり、厨房を清掃する者の中には、多くの酵素を含んだ酵素水を望む者や、含まれる酵素の量が少ない酵素水を望む者も存在する。これは季節毎にレストランのメニューが変わるケースもあり、同一人物でも酵素の種類、酵素の量を変えることを望むことがある。また、床面に撒布する酵素水の量は略決まった量を想定するが、厨房を清掃する者個々で撒布量が異なってくる。
【0010】
この種の要望に対応するために、レストランの営業が終了する時刻に、ストックタンクに必要とする酵素を含んだ酵素水を、必要とするだけ貯留する制御を行うように酵素水供給システムを構成することも考えられる。
【0011】
しかしながら、レストランではパートタイマーやアルバイター等、厨房を清掃する者が日々異なることもあり、ストックタンクに貯留された酵素水を床面等に撒布して清掃を行う作業を考えると、毎日決まった時刻に決まった量の酵素を含んだ酵素水を生成するように制御形態を設定した装置では、清掃する者の個人の要望に応えられない問題がある。つまり、酵素水を多く撒く者は、全ての床面に撒布し終えないうちに酵素水が無くなることになる。生成する酵素水の量は生成スケジュールを作成する者が決めるものであって、必ずしも当日酵素水を撒布する量を当日の生成スケジュールに設定するとは限らない。例えば、オーナーがスケジュール設定の一部として、日付に対応して酵素水作成を設定しても実際の撒き手の感覚と異なることが問題である。
【0012】
本発明の目的は、使用する者の要望に適した酵素水を生成してストックタンクに貯留し得る酵素水生成システムを合理的に構成する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の特徴は、生成タンクに水と酵素製剤とを供給して温度管理することにより酵素水を生成する酵素水生成装置と、この酵素水生成装置で生成された前記酵素水が送られるストックタンクとを備えている酵素水供給システムにおいて、
前記酵素水生成装置は、前記生成タンクに設定量の水を貯留し、この生成タンク内の水に設定量の酵素製剤を加えて温度管理することにより、前記生成タンクに前記酵素水を生成し、このように生成した酵素水を前記ストックタンクに送り出す生成プロセスを実行する制御ユニットを備えると共に、
この制御ユニットは、前記生成プロセスを1回又は複数回実行することにより、スケジュールに設定された生成完了日時までに前記酵素水を前記ストックタンクに貯留し終える制御を行わせるスケジュール管理部と、
前記生成プロセスの実行時に、目標混合率に対応する量の前記酵素製剤を加えた混合液を前記生成タンク内で設定温度に維持して酵素水を生成し、生成された酵素水を排出する制御を実現する生成処理実行部とを備え、
前記スケジュール管理部は、前記ストックタンクに残留する酵素水の混合率と、スケジュールに従って次にストックタンクに貯留すべき酵素水の目標混合率とが異なることを判別した場合には、このスケジュール管理部が前記生成処理実行部での酵素水の生成時における混合率を制御することにより、酵素水生成装置から排出された酵素水が混じり合った状態のストックタンク内の酵素水の混合率を、前記目標混合率と一致又は近似させる点にある。
【0014】
この構成により、このシステムによってストックタンクに酵素水を貯留する際において、スケジュール管理部が、ストックタンクに残留する酵素水の混合率と、スケジュールに従って次にストックタンクに排出すべき酵素水の目標混合率とが異なることを判別した際には、次にストックタンクに排出する酵素水の混合率を制御することにより、ストックタンクに残留する酵素水と、次に排出した酵素水とが混じり合った状態の酵素水の混合率をスケジュールにおいて設定された目標混合率にすることが可能となる。その結果、使用する者の要望に適した酵素水を生成してストックタンクに貯留する酵素水生成システムが合理的に構成された。
【0015】
本発明は、前記スケジュールとして、前記ストックタンクに貯留すべき酵素水の目標貯留量のデータを保存しており、前記スケジュール管理部は、前記ストックタンクの酵素水の残量を取得し、前記生成処理実行部を制御することにより前記目標貯留量との差に対応する量の酵素水を前記ストックタンクに送り出しても良い。
【0016】
この構成により、スケジュール管理部は、ストックタンクの酵素水の残量を取得し、スケジュールとして保存されたデータが示す目標貯留量から前記残量を減じた量を、供給量に設定して酵素水生成装置からストックタンクに酵素水を供給する制御を行うことにより、目標貯留量の酵素水をストックタンクに貯留することができる。
【0017】
本発明は、前記ストックタンクに貯留した酵素水を排出するポンプを有する撒布装置を備えると共に、この撒布装置による酵素水の撒布量に基づいて、前記ストックタンクに残留する酵素水の残量を求めても良い。
【0018】
この構成により、ストックタンクの残量を正確に取得し、この後に酵素水生成装置から排出される酵素水の量を、前記残量に見合った量に設定することが可能となり、ストックタンクに適正な量の酵素水を貯留することができる。
【0019】
本発明は、前記撒布装置が、前記ストックタンクの上部に配置され、この撒布装置に備えたレベルセンサの検出信号を前記制御ユニットに伝える信号系を形成し、
前記スケジュール管理部の制御により、前記ストックタンクに酵素水を供給時に、前記レベルセンサによってストックタンクに貯留された前記酵素水の液面レベルが予め設定されたレベルに達したことを判別した場合には、前記酵素水の供給を停止させても良い。
【0020】
この構成により、何らかの原因で、ストックタンクに過剰な量の酵素水が供給される状況が発生しても、レベルセンサでの判別結果に基づいて酵素水生成装置からストックタンクに酵素水を排出する制御を強制的に停止させることにより、貯留した酵素水をストックタンクから溢れ出させることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔システム構成〕
図1〜図3に示すように、水道水に酵素製剤Xを加えて温度管理を行うことによって酵素水Wxを生成する酵素水生成装置Aと、この酵素水生成装置Aから排出された酵素水Wxを貯留するストックタンクBと、このストックタンクBに貯留された酵素水Wxを汲み出して送り出す撒布装置Cとを備えて酵素水供給システムが構成されている。尚、水道水に酵素製剤Xを加える方法は、生成タンクTに給水した後、酵素製剤Xを供給するものに限らず、酵素製剤Xを生成タンクTに供給した後に、給水するものであっても良いことは言うまでもないことである。
【0022】
この酵素水供給システムは、ファーストフード店やレストランの厨房のように、床面Fが油脂によって汚れやすい飲食店等に設置されるものであり、この飲食店等の営業が終了した時間帯にストックタンクBに貯留した酵素水Wxを撒布装置Cで床面Fに撒布することにより、酵素水Wxに含まれる酵素の作用によって床面Fの油脂成分を分解して洗い流す形態で使用される。このように洗浄を行うことにより床面Fのヌメリが除去され、清浄な表面となる。
【0023】
図1に示すように、厨房の床面Fには排水溝1からの水が導かれる位置にグリストラップ2が形成される。このような厨房では調理や食器の洗浄に使用された排水が排水溝1からグリストラップ2に流れ込み、この排水に含まれる油脂成分はグリストラップ2に蓄えられる。また、床面Fに撒布した酵素水Wxは、排水溝1からグリストラップ2に流れ込み、このグリストラップ2に滞留することにより、油脂成分を分解し、このグリストラップ2の内部を洗浄するように作用する。
【0024】
前記酵素水生成装置Aは、厨房内のテーブル3に設置され、壁面4には水道水の水量を制御するようにハンドル5Aで開閉可能なバルブ5を備え、このバルブ5と酵素水生成装置Aとの間には、バルブ5からの水道水を酵素水生成装置Aに送る水道配管6が形成されている。また、この酵素水生成装置Aで生成された酵素水Wxはゴム等のフレキシブルな排出ホース7を介して前記ストックタンクBに送り出される。
【0025】
〔酵素水生成装置〕
前記酵素水生成装置Aは、金属製のケース10の内部に生成タンクTを備えると共に、この生成タンクTに水道水を給水する給水機構Jと、半透明の樹脂で成るボトル8内の液状の酵素製剤Xを生成タンクTに加える(滴下する形態での供給になる)酵素製剤供給機構Kと、この生成タンクTで生成された酵素水Wxを排出する排出機構Lとを備えている。前記生成タンクTの内部には液面のレベルを検知するフロート式の液面センサ15と、前記生成タンクT内の溶液(酵素製剤Xが加えられた水)を加熱するヒータ16と、この溶液の温度を計測する温度センサ17とを備えている。更に、ケース10の側部位置には酵素水Wxを生成する制御を行う制御ユニット18を備えている。
【0026】
ちなみに、前記酵素製剤Xは、リパーゼ、プロテアーゼ、アミラーゼ、セルラーゼ等の酵素を含むと共に、これらの酵素を生成する微生物を含むものであり、この微生物は、低温状態では休眠状態にあり、40℃程度に維持されることにより活性化して酵素を生成する性質を有する。
【0027】
前記ケース10はステンレス等の耐腐食性が高い金属板を接合して箱状に形成され、このケースはケース本体10Aと、ケース10の前面側に配置される扉10Bとを備えている。ケース本体10Aの前面のうち前記制御ユニット18が配置された側で、前記扉10Bと並列する位置の前壁10Cには操作パネル11を備えている。前記扉10Bは、前記操作パネル11と反対側の端部に形成された縦向き軸芯Y周りで揺動開閉自在に前記ケース本体10Aに支持されている。
【0028】
この酵素水生成装置Aでは、扉10Bを開放することにより前記ボトル8の交換を容易に行え、ボトル8に貯留された酵素製剤Xの残量を視覚によって確認できるように扉10Bには窓部10Wを形成している。
【0029】
〔酵素水生成装置の内部構成〕
前記生成タンクTは、透明な樹脂で成ると共に、正面視で図2に示す如く逆L字状の形状に形成され、この生成タンクTの上部には上部開口を覆う上部プレート20を備え、この生成タンクTの下側の側部には前記ボトル8を収容する空間を形成している。
【0030】
前記給水機構Jは、前記水道配管6から生成タンクTに給水する給水管21と、この給水管21の中間位置に配置した給水用電磁バルブ22とを備えている。
【0031】
前記酵素製剤供給機構Kは、半透明の樹脂製のボトル8に貯留された液状の酵素製剤Xを吸い上げる吸引チューブ25と、この吸引チューブ25からの酵素製剤Xが導かれる定容量ポンプKPと、この定容量ポンプKPから酵素製剤Xが送られる供給チューブ26と、この供給チューブ26の先端に接続したノズル27とを備えている。また、このように生成タンクTに貯留した水の量に対して、前記ノズル27から加えられる酵素製剤Xの量の割合が後述する混合率となる。
【0032】
前記吸引チューブ25は、透明で柔軟な樹脂で成り、この吸引チューブ25の吸引側の端部は、前記ボトル8の上部開口にネジ式に固定される蓋8Aに形成された貫通孔を介してボトル内部に差し込まれている。前記供給チューブ26は、透明で柔軟な樹脂で成り、この供給チューブ26の吐出側を前記ノズル27の上端部に接続している。このノズル27は下端側が小径となる円錐形であり、上端部が前記上部プレート20に支持され、下端には小さい開口を形成している。
【0033】
前記定容量ポンプKPは、縦向き姿勢のシリンダ30の内部にピストン31を上下移動自在に内嵌し、シリンダ30と連通する吸引側のチェック弁32に前記吸引チューブ25の排出側の端部を接続している。このシリンダ30と連通する吐出側のチェック弁33に前記供給チューブ26の一端を接続している。電動モータ34の出力軸34Aにおいて偏芯する位置に連結軸35を形成し、この連結軸35と前記ピストン31の下端のプレート36とを連結体35Aで連結することにより、電動モータ34の回転力を往復作動力に変換してピストン31に伝えるクランク機構を備えている。また、クランク機構の作動位置から前記ピストン31が上端まで移動したタイミング信号を出力する作動センサ37を備えている。
【0034】
この定容量ポンプKPは、電動モータ34の出力軸34Aが1回転する毎に、前記ピストン31を1往復作動させ、この1往復作動毎に設定された量の酵素製剤Xを送り出す性能を有し、前記電動モータ34の作動時には作動センサ37によってピストン31の作動回数を計数して制御ユニット18にフィードバックすることにより、酵素製剤Xの供給量を把握できるようにしている。
【0035】
前記排出機構Lは、前記生成タンクTの底部の酵素水Wxをケース外に導く排出管38と、この排出管38の中間に配置した排出用電磁バルブ39とを備えている。
【0036】
前記液面センサ15は、前記上部プレート20から下方に突設したロッド15Aに対して上下移動自在に外嵌したリング状のフロート15Bと、このフロート15Bに備えたマグネット(図示せず)の磁気が作用することによりON又はOFFするリードスイッチ(図示せず)とを備えている。
【0037】
前記ヒータ16は、通電により発熱する発熱体を金属チューブの内部に収容した構造を有し、前記上部プレート20から下方に突設する形態で上部プレート20に支持されている。前記温度センサ17は、サーミスタ等を収容したロッド状の構造を有し、前記上部プレート20から下方に突設する形態で上部プレート20に支持されている。
【0038】
〔ストックタンク・撒布装置〕
前記ストックタンクBは、上方に開放する単純な容器構造を有した樹脂成形物である。前記撒布装置Cは、ケース40に制御装置41とモータ42を収容すると共に、ケース40の外部に前記モータ42で駆動されるポンプ43を備えている。このポンプ43には、前記ストックタンクBに貯留された酵素水Wxを吸引する吸引ホース44と、ポンプ43から送り出された酵素水Wxを案内する撒布ホース45とが接続している。
【0039】
この撒布装置Cは、平面視において前記ストックタンクBより小さいサイズであり、この撒布装置CをストックタンクBの上端に支持するためのフレーム46を備えており、この撒布装置Cの下面側には下方に突出するフロートセンサ47(レベルセンサの一例)を備えている。このフロートセンサ47は、前記液面センサ15と同様にロッド47Aに対して上下移動自在に外嵌したフロート47Bを備えると共に、フロート47Bに備えたマグネット(図示せず)の磁気が作用することによりON又はOFFするリードスイッチ(図示せず)とを備えている。
【0040】
この撒布装置Cでは、ストックタンクBに貯留された酵素水Wxの液面が設定されたレベルに達したことを検出するように前記フロートセンサ47を備えているが、非接触式に液面のレベルを検出するセンサを備えることや、フロートのレベルから液面のレベルを検出するセンサを備えても良い。このようなセンサを備えることにより、後述するようにストックタンクBの酵素水Wxの残量を計測することも可能となる。
【0041】
前記ケース40には、起動スイッチ48と停止スイッチ49とを備えており、この撒布装置Cの制御装置41と前記制御ユニット18とは通信ケーブルDを介して接続している。また、前記起動スイッチ48を操作することによりモータ42でポンプ43を駆動してストックタンクBの酵素水Wxの撒布を行い、停止スイッチ49を操作することによりモータ42を停止し、酵素水Wxの撒布を停止する。そして、前記制御装置41はモータ42の駆動時間から排出量を通信ケーブルDで制御ユニット18に伝える処理を行う。
【0042】
〔酵素水生成装置の制御構成〕
前記操作パネル11は図2に示すように、スタートボタン51と、ストップボタン52と、電源ランプ53と、複数のモニタランプ54と、警報ランプ55と、液晶ディスプレイ56と、複数の設定ボタン57とを備えている。
【0043】
この酵素水生成装置Aにおいて制御を行う場合には、電源が投入されていることを電源ランプ53の点灯で確認し、操作パネル11の複数の設定ボタン57を操作してスケジュールを設定する。この設定の際には設定内容を液晶ディスプレイ56を介して設定内容を確認できるものとなり、スタートボタン51を操作することで制御が開始され、ストップボタン52を操作することで制御が停止する。尚、エラーが発生した場合には警報ランプ55が点灯して制御が停止する。
【0044】
前記制御ユニット18は、前記操作パネル11との間に信号のアクセス系が形成されると共に、前記給水用電磁バルブ22、前記電動モータ34、前記排出用電磁バルブ39を駆動する信号系が形成され、前記液面センサ15と、温度センサ17、作動センサ37とからの検出信号が入力する信号系、前記ヒータ16に電力を供給する電力系が形成され、更に、前記通信ケーブルDを介して前記撒布装置Cとの間で信号をアクセスする系が形成されている。
【0045】
前記制御ユニット18はマイクロプロセッサ(図示せず)を備え、酵素水Wxを生成する処理はソフトウエアが実現するものであるが、このソフトウエアによる制御系を図4のように模式的に示すことが可能である。
【0046】
つまり、操作パネル11を介して取得した操作情報に基づいてスケジュールテーブル61に設定情報が保存される。このスケジュールテーブル61には、酵素水生成装置Aで必要量の酵素水Wxを生成してストックタンクBに貯留し終える生成完了日時と、ストックタンクBに貯留される酵素水Wxの目標混合率と、ストックタンクBに貯留すべき酵素水Wxの目標貯留量が保存される。
【0047】
このスケジュールテーブル61の設定情報を参照することで酵素水Wxを生成する処理を管理するスケジュール管理部62を備え、前記撒布装置Cのポンプ43を駆動した時間に基づいて消費された(撒布に使用された)酵素水Wxの量の情報と、この撒布装置Cのフロートセンサ47が検出状態に達したことを示す情報とをスケジュール管理部62に与えるストックタンク管理部63を備え、スケジュール管理部62に現在の日時情報を与えるカレンダー部64を備えている。
【0048】
前記スケジュール管理部62は、与えられる情報に基づいて酵素水Wxの生成を開始する生成開始日時と、生成タンクTにおいて生成する酵素水Wxの酵素製剤Xの生成混合率と、酵素水生成装置Aでの酵素水Wxの生成回数との情報をセットする。
【0049】
具体的に説明すると、前記生成開始日時は、ストックタンクBの酵素水Wxの残量に基づいてストックタンクBに目標貯留量の酵素水Wxを貯留するに必要な酵素水Wxの生成量を算出し、この生成量の酵素水Wxを生成するために必要となる生成タンクTでの生成回数を求め、この回数の生成を行うために必要な時間を算出し、このように算出した時間をスケジュールテーブル61に保存された生成完了日時から逆算して求めた情報である。尚、前記目標貯留量とは、例えばストックタンクBを満杯(図1、図3に示す程度)にする量であり、本実施の形態では40リットル程度である。
【0050】
前記スケジュール管理部62でセットされた生成混合率は、生成タンクTに供給される酵素製剤Xの量に対応するものであり、ストックタンクBに残留する酵素水Wxの混合率と、次に必要とする酵素水Wxの目標混合率とが同じ場合には、その目標混合率を生成混合率に設定して酵素水Wxを生成することになる。しかしながら、ストックタンクBに残留する酵素水Wxの混合率と、次に必要とする酵素水Wxの目標混合率とが異なる場合には、このストックタンクBに残留した酵素水Wxと、酵素水生成装置Aから排出された酵素水Wxとが混ざり合った状態の酵素水Wxの混合率がスケジュールテーブル61に保存された目標混合率と一致するように(近似するものでも良い)生成タンクTで酵素水Wxを生成する際の生成混合率が、このスケジュール管理部62に保存される。
【0051】
つまり、次に必要とする酵素水Wxを生成する際に用いる酵素製剤Xの量(生成タンクTの水に供給された酵素製剤Xの量)は目標貯留量にあるストックタンクBの酵素水Wxの混合率から、演算によって容易に求めることが可能である。
【0052】
従って、ストックタンクBに酵素水Wxが残留している状況において、このストックタンクBに対して、酵素水生成装置Aで新たに生成した酵素水Wxを排出して目標貯留量に達した際に、このストックタンクBに貯留された酵素水Wxの混合率を目標混合率にするためには、目標貯留量にあるストックタンクBの酵素水Wxの混合率が目標混合率にある状態での酵素製剤Xの総量を求め、次に、ストックタンクBの残量と混合率とからストックタンクBに残留する酵素水Wxの生成時における酵素製剤Xの使用量を求め、この使用量を前記総量から減ずる演算によって求めた酵素製剤Xの量から新たに生成される酵素水Wxの混合率を求め、この混合率を生成混合率に設定する演算を行うように処理形態が設定されている。尚、ストックタンクBに貯留された酵素水Wxの混合率とは、前回の制御によって酵素水Wxを生成した際の混合率であり、制御ユニット18に保存されている情報から取得される。
【0053】
前記スケジュール管理部62でセットされた生成タンクTでの生成回数は、目標貯留量からストックタンクBの酵素水Wxの残量を減じた値の酵素水Wxを生成するために生成タンクTにおいて酵素水Wxを生成する回数である。
【0054】
前記スケジュール管理部62は、酵素水Wxの生成を実行する生成処理実行部65に情報を与える。この生成処理実行部65は、前記生成タンクTに給水する給水制御手段と、混合制御手段と、加温制御手段と、排出制御手段とを備えている。これら、給水制御手段と、混合制御手段と、加温制御手段と、排出制御手段とはソフトウエアで構成しているが、ハードウエアで構成することや、ハードウエアと組み合わせて構成しても良い。
【0055】
また、この生成処理実行部65は、前記給水用電磁バルブ22と、電動モータ34と、ヒータ16と、排出用電磁バルブ39とを駆動する信号を出力すると共に、前記液面センサ15と、作動センサ37と、温度センサ17とからの信号がフィードバックする。
【0056】
〔制御形態〕
この制御構成による制御形態の概要を図5のフローチャートに示している。つまり、初期設定処理(#100ステップ)の処理を、この初期設定処理によって設定された開始時刻に達したことを判別するまで継続する(#01ステップ)。
【0057】
この初期設定処理(#100ステップ)は、サブルーチンの形でセットされたものであり、この初期設定処理の概要は図6のフローチャートのように、操作パネル11が操作された場合には、この操作パネル11の操作情報からスケジュールテーブル61を作成する処理を行う(#101ステップ)。次に、スケジュール管理部62がスケジュールテーブル61を参照し、ストックタンクBに貯留された酵素水Wxの残量と、このストックタンクBに貯留された酵素水Wxの混合率とを取得し、次に、設定処理を行う(#102〜#104ステップ)。
【0058】
設定処理(#104ステップ)では、酵素水生成装置Aにおいて酵素水Wxの生成を開始する生成開始時刻をセットし、この酵素水生成装置Aにおいて生成する酵素水Wxの混合率(生成混合率)をセットし、この酵素水生成装置Aで生成して排出する目標排出量をセットする処理を行う。
【0059】
この初期設定処理(#100ステップ)の設定処理(#104ステップ)においてセットされた生成開始時刻に達したことを前記#01ステップで判別した場合には、給水制御、混合制御と、加温制御とを、この順序で行い、加温制御を酵素水が生成される時間が経過するまで行う(#01〜#04ステップ)。
【0060】
給水制御(#02ステップ)では、前記給水用電磁バルブ22を開放操作することにより、水道から生成タンクTへの給水を開始し、液面センサ15が設定されたレベルまで水が貯留されたことを判別した場合には、給水用電磁バルブ22を閉じ操作して給水を停止する。
【0061】
混合制御(#03ステップ)では、電動モータ34の駆動で定容量ポンプKPを作動させることにより、ボトル8に貯留された酵素製剤Xを吸引チューブ25で吸引し、供給チューブ26からノズル27を介して生成タンクTに滴下する形態で供給が行われる。この供給の際には前記定容量ポンプKPの作動回数を作動センサ37で計数することにより、目標とする量の酵素製剤Xを供給して設定された混合率を得る。
【0062】
加温制御(#04ステップ)では、前記ヒータ16に電力を供給し、生成タンクTに貯留された溶液の温度を温度センサ17で計測してフィードバックし、この生成タンクTに貯留された溶液の温度が目標温度領域(40℃程度)に維持することにより、生成タンクTにおいて酵素水Wxを生成する制御を実行する。
【0063】
この加温制御(#04ステップ)による温度の維持が設定時間経過したことを判別した(タイムアップを判別した)場合には、加温制御を停止し、排出用電磁バルブ39を開放することにより、生成タンクTで生成された酵素水Wxを排出管38から排出ホース7に送ってストックタンクBに排出する排出制御を実行する(#05、#06ステップ)。この排出制御では、生成タンクTから酵素水Wxが排出されるに充分な時間以上排出用電磁バルブ39を開放状態に維持する制御が実行される。
【0064】
また、#02〜#04ステップの処理が酵素水Wxを生成する一連の処理を実行する際の各ステップを実行する際には、前記操作パネル11の複数のモニタランプ54のうち、対応するモニタランプ54を点灯させる制御が行われる。
【0065】
この本発明の#02〜#04ステップの処理が生成プロセスであり、この生成プロセスを生成回数に対応した回数だけ実行した場合に適正に処理が終了するが、生成回数に対応した生成プロセスを実行しない場合でも、前記撒布装置Cのフロートセンサ47が検出状態(満杯)であることを判別した場合には強制的に処理が終了する(#07、#08ステップ)。そして、この処理は、制御ユニット18の制御をリセットしない限り、反復して実行される(#07〜#09ステップ)。
【0066】
尚、#08ステップのように酵素水生成装置AからストックタンクBへの酵素水Wxの排出を強制的に停止した場合には、目標混合率となる酵素水WxをストックタンクBに貯留できないが、このストックタンクBから酵素水Wxを溢れ出させることがない。また、制御ユニット18の制御をリセットした場合には全ての制御が停止する(#09、#10ステップ)。
【0067】
〔酵素水供給システムの機能〕
このように、本発明の酵素水供給装置Aでは、操作パネル11において、酵素水Wxの生成完了日時の情報と、その酵素水Wxの混合率をスケジュールの情報として設定することにより、この情報がスケジュールテーブル61として保存される。このようにスケジュールテーブル61に必要とする情報が保存された後には、スケジュール管理部62がストックタンクBの酵素水Wxの残量を取得し、この残量に基づいてストックタンクBを目標貯留量にするための酵素水Wxの生成量を算出し、この生成量と生成完了日時とに基づいて酵素水生成装置Aでの生成開始時刻を求める。
【0068】
特に、ストックタンクBに貯留された酵素水Wxの混合率と、スケジュールテーブル61として保存された混合率とが異なる場合には、ストックタンクBの酵素水Wxの残量と、このストックタンクBの酵素水Wxの混合率とに基づいて生成混合率を設定し、この生成混合率となるように生成タンクTに酵素製剤Xを供給することにより酵素水生成装置Aで酵素水Wxを生成する処理を行うことになる。
【0069】
このように酵素水生成装置Aで生成された酵素水WxをストックタンクBに排出することにより、ストックタンクBには使用する者の要望に応じた混合率の酵素水Wxを貯留することが可能となるのである。
【0070】
更に、本発明では、ストックタンクBに貯留されている酵素水Wxの残量を計測するために、前述したように液面レベルを計測するセンサを備えても良く、この種のセンサを備えた場合には、ストックタンクBから人為的に酵素水Wxを汲み出す形態で使用した場合でも、ストックタンクBの酵素水Wxの残量を正確に把握し、適正な混合率の酵素水Wxを貯留することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】酵素水供給システムの斜視図
【図2】酵素水生成装置の縦断正面図
【図3】酵素水供給システムの制御系の概要を示す図
【図4】処理形態の概要を模式的に示す図
【図5】制御形態を示すフローチャート
【図6】初期設定処理のフローチャート
【符号の説明】
【0072】
18 制御ユニット
43 ポンプ
47 レベルセンサ(フロートセンサ)
62 スケジュール管理部
63 生成処理実行部
A 酵素水生成装置
B ストックタンク
C 撒布装置
T 生成タンク
Wx 酵素水
X 酵素製剤


【特許請求の範囲】
【請求項1】
生成タンクに水と酵素製剤とを供給して温度管理することにより酵素水を生成する酵素水生成装置と、この酵素水生成装置で生成された前記酵素水が送られるストックタンクとを備えている酵素水供給システムであって、
前記酵素水生成装置は、前記生成タンクに設定量の水を貯留し、この生成タンク内の水に設定量の酵素製剤を加えて温度管理することにより、前記生成タンクに前記酵素水を生成し、このように生成した酵素水を前記ストックタンクに送り出す生成プロセスを実行する制御ユニットを備えると共に、
この制御ユニットは、前記生成プロセスを1回又は複数回実行することにより、スケジュールに設定された生成完了日時までに前記酵素水を前記ストックタンクに貯留し終える制御を行わせるスケジュール管理部と、
前記生成プロセスの実行時に、目標混合率に対応する量の前記酵素製剤を加えた混合液を前記生成タンク内で設定温度に維持して酵素水を生成し、生成された酵素水を排出する制御を実現する生成処理実行部とを備え、
前記スケジュール管理部は、前記ストックタンクに残留する酵素水の混合率と、スケジュールに従って次にストックタンクに貯留すべき酵素水の目標混合率とが異なることを判別した場合には、このスケジュール管理部が前記生成処理実行部での酵素水の生成時における混合率を制御することにより、酵素水生成装置から排出された酵素水が混じり合った状態のストックタンク内の酵素水の混合率を、前記目標混合率と一致又は近似させる酵素水供給システム。
【請求項2】
前記スケジュールとして、前記ストックタンクに貯留すべき酵素水の目標貯留量のデータを保存しており、前記スケジュール管理部は、前記ストックタンクの酵素水の残量を取得し、前記生成処理実行部を制御することにより前記目標貯留量との差に対応する量の酵素水を前記ストックタンクに送り出す請求項1記載の酵素水供給システム。
【請求項3】
前記ストックタンクに貯留した酵素水を排出するポンプを有する撒布装置を備えると共に、この撒布装置による酵素水の撒布量に基づいて、前記ストックタンクに残留する酵素水の残量を求める請求項2記載の酵素水供給システム。
【請求項4】
前記撒布装置が、前記ストックタンクの上部に配置され、この撒布装置に備えたレベルセンサの検出信号を前記制御ユニットに伝える信号系を形成し、
前記スケジュール管理部の制御により、前記ストックタンクに酵素水を供給時に、前記レベルセンサによってストックタンクに貯留された前記酵素水の液面レベルが予め設定されたレベルに達したことを判別した場合には、前記酵素水の供給を停止させる請求項3記載の酵素水供給システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−252252(P2007−252252A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−79164(P2006−79164)
【出願日】平成18年3月22日(2006.3.22)
【出願人】(000135313)ノーリツ鋼機株式会社 (1,824)
【Fターム(参考)】