説明

酵素製剤

【課題】酵素製剤を提供する。
【解決手段】本発明は、不活性担体上に固定化された酵素または酵素を含有する微生物を有する酵素固定化物に、ヒドロシリル化によって得られるシリコーンコーティングが備えられることによって得られる酵素製剤、かかる酵素製剤を製造するための方法、および工業用バイオ触媒としての酵素製剤の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバイオ触媒として使用するための新しい種類の酵素製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
微生物および単離酵素は、化学工業または食品製造における触媒として幅広く使用されている。概要が、例えば、A.リーゼ(Liese)、K.ゼールバッハ(Seelbach)、C.ワンドレイ(Wandrey)、Industrial Biotransformations、ワイリー(Wiley)−VCH:2000年、ドイツヴァインハイム(Weinheim)に示されている。
【0003】
かかるバイオ触媒の経済的使用を保証するために、いくつかの条件が満たされなければならない。すなわち、バイオ触媒は反応条件下に十分に長く活性でなければならず、反応終了後に容易に分離可能であり、かつできるだけ頻繁に再使用可能であるべきである。理想的には、これらの条件は、できるだけ一般の触媒を提供するために、できるだけ広範囲の反応条件(例えば、温度範囲、使用される溶剤の種類、圧力等)に対して満たされるべきである。
【0004】
これらの条件を満たすために、使用される酵素または酵素を含有する微生物を固定化する通常の方法が必要である。
【0005】
多くの場合、酵素または酵素を含有する微生物は担体上に非共有結合で固定化され、担体としては多くの場合、適切な粒度分布のイオン交換樹脂またはポリマー粒子が使用される。その例は、ノボザイムズ社(Novozymes A/S、Bagsvaerd、デンマークの市販製品ノボザイム(Novozym)435、リポザイム(Lipozym)RM IM、またはリポザイム(Lipozym)TL IM、または天野(Amano)エンザイム(株)(日本)の市販製品アマノ(Amano)PSである。これらの例は、かかる固定化物が非水性系においても、例えば、「J.Chem.Soc.,Chem.Comm.」1989年、934−935頁に記載されているように、溶剤をまったく含有せず、または有機溶剤しか含有しないような、技術的に利用可能な活性を示すため、広範囲に使用されている固定化リパーゼである。ただし、かかる固定化物の使用における欠点は、一方では、使用される反応系に依存して、例えば、界面活性成分の使用に際して、酵素または酵素を含有する微生物の脱着の発生である。かかる脱着に付随する活性損失は比較例1において示される。さらに、かかる製剤は不十分な機械的安定性を示し、それによって簡易な攪拌反応器での使用が不可能であり、または明らかに再使用が制限された場合にだけ可能である。かかる製剤の機械的不安定性は比較例2において示される。
【0006】
したがって、かかる酵素製剤の反復使用を可能にするためには、別のリアクターコンセプトを使用しなければならない。「Eur.J.Lipid Sci.Technol.」2003年、105、601−607頁には、実施例について、リパーゼ触媒エステル化を実施するための固定床反応器の使用が記載されている。ただし、この方法の欠点は、高粘性混合物または懸濁液が固定床によって促進できないため低粘性均一反応混合物に限定されることである。
【0007】
K.ファーベル(Faber)「有機化学における生体内変換(Biotransformations in Organic Chemistry)」、シュプリンガー(Springer):2000年、ドイツベルリンには、384頁以下にアルギン酸封入酵素の使用が記載されている。ただし、こうして得られる製剤は機械的安定性がきわめて低く、かつ非水性系における活性がきわめて低い。
【0008】
さらに、例えば、グルタルジアルデヒドなどの反応性物質による固定化酵素の追加の交差架橋が記載されている。ただし、欠点は、修飾前の活性と比べ交差架橋製剤のほとんど明らかに低下した特異的活性である。さらに、この方法は機械的安定性の改善に寄与しない。
【0009】
同様に、そこには反応性担体への酵素の共有固定化が記載されている。これによる欠点は、担体と反応しうる適切な官能基が酵素の表面に存在しなければならないことであり、さらに、それによってしばしば酵素活性の損失が生じる。
【0010】
「J.Am.Chem.Soc.」1999年、121、9487−9496頁にはシロキサン基質、いわゆるゾル・ゲルにおける酵素の含有物が記載されている。ゾル・ゲル製剤の欠点は、効率的にろ過するのが難しい低い粒度分布、機械的安定性の不足、脱着の発生、毒性反応物の使用(TEOSの毒性については、例えば、「日本酸素技報(Nippon Sanso Giho)」 1990年、9、68−72頁およびArchives of Toxicology 1994年、68、277−283頁を参照、TMOSの毒性については、例えば、「Fundamental and Applied Toxicology」1989年、13、285−295頁を参照、非毒性ゾル・ゲルの製造には、例えば、「Polimery w Medycynie」2000年、30、45−54頁に記載されているように、6か月以上の貯蔵や350℃での熱処理という手間のかかるステップが必要である。さらに、これは使用された溶剤にきわめて強く依存する膨張反応であり、これはさまざまな反応系(水性および非水性)における普遍的な使用を妨げる。「J.Sol Gel Sci.Technol.」2003年、26、1183−1187頁は、例として、観察された酵素活性の溶剤依存性とともに広範囲な使用可能性の要件が満たされないことを示している。
【0011】
「Landbauforschung Voelkenrode」2002年、特集号241、41−46頁には、その酵素が最初に「微細な」シリコーン粒子上に固定化され、次いでゾル・ゲルへカプセル化されるゾル・ゲル製剤が記載されている。そこで機械的安定性の問題は部分的に解決されるが、記載されている実験は、十分な活性が選択された溶剤においてのみ達成されることを示し、溶剤非含有系における使用はまったく記載されていない。さらに、製剤は直ちに使用可能な形では存在せず、まず適切な大きさに切断しなければならず、これは技術的基準においてほとんど実現されない。
【0012】
「J.Mol.Catal.B」2005年、35、93−99頁には、機械的に安定なシリコーン球への水性酵素溶液の封入、いわゆる固定化エマルションによる酵素の固定化が記載されている。しかし、得られる特異的活性は、1000U/g以上のわずかに特異的な活性化が達成されうる上述した不活性担体上の固定化物と比べ、33U/gまでと、明らかに低すぎる(U=単位もしくはμmol/分)。
【0013】
国際公開第03/106607号パンフレットにもかかる固定化エマルションが記載されているが、水性系における使用のみが記載されており、用途は洗剤組成物であり、バイオ触媒ではなく、かつ得られる粒径は約10μmであり、有機反応混合物から効率的にろ過するには小さすぎる。
【0014】
したがって、従来技術の欠点を克服し、これまでに実現不可能なバイオ触媒の方法を実現する酵素固定化のための方法がさらに必要とされている。
【特許文献1】国際公開第03/106607号パンフレット
【非特許文献1】「J.Chem.Soc.,Chem.Comm.」1989年、934−935頁
【非特許文献2】「Eur.J.Lipid Sci.Technol.」2003年、105、601−607頁
【非特許文献3】K.ファーベル(Faber)「有機化学における生体内変換(Biotransformations in Organic Chemistry)」、シュプリンガー(Springer):2000年、ドイツベルリン 384頁以下
【非特許文献4】「J.Am.Chem.Soc.」1999年、121、9487−9496頁
【非特許文献5】「日本酸素技報(Nippon Sanso Giho)」 1990年、9、68−72頁
【非特許文献6】Archives of Toxicology 1994年、68、277−283頁
【非特許文献7】「Fundamental and Applied Toxicology」1989年、13、285−295頁
【非特許文献8】「Polimery w Medycynie」2000年、30、45−54頁
【非特許文献9】「J.Sol Gel Sci.Technol.」2003年、26、1183−1187頁
【非特許文献10】「Landbauforschung Voelkenrode」2002年、特集号241、41−46頁
【非特許文献11】「J.Mol.Catal.B」2005年、35、93−99頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、本発明の課題は、従来技術の製剤の1つもしくは複数の欠点のない酵素製剤の提供であった。具体的には、機械的な力および脱着に対して高い安定性を有し、かつその際に好ましくは、技術的使用を可能にするために十分に高いさまざまな水性および非水性反応混合物における特異的活性を使用する酵素製剤が提供されるべきである。好ましくは、酵素製剤は、反応系から簡単に分離され、かつ再使用されうる、その粒度分布から適切でなければならない。
【0016】
明確に挙げられていない別の課題は、以下の明細書、実施例のほか、特許請求の範囲の文脈から生じる。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この課題は、不活性担体上の酵素または酵素を含有する微生物の固定化、および次いでヒドロシリル化によって得られるシリコーンコーティングの被覆によって得られる酵素製剤によって解決されるという意外な方法が見出された。
【0018】
したがって、本発明の対象は、不活性担体上に固定化された酵素または酵素を含有する微生物を有する酵素固定化物に、ヒドロシリル化によって得られるシリコーンコーティングが備えられる酵素製剤、ならびに工業用バイオ触媒としてのその使用である。
【0019】
さらに、本発明の対象は、不活性担体上に固定化された酵素または酵素を含有する微生物を有する酵素固定化物に、ヒドロシリル化によって得られるシリコーンコーティングが備えられることを特徴とする、本発明による酵素製剤の製造方法である。
【0020】
本発明による酵素製剤には、機械的な力および脱着に対して高い安定性を有するという利点がある。これら改善された特徴にもかかわらず、本発明による酵素製剤には、さまざまな水性(例えば、トリブチリンの加水分解)および非水性反応化合物(例えば、プロピルラウレートの溶剤非含有合成)における、技術的使用を可能にするために十分に高い特異的活性がある。さらに、本発明による酵素製剤には、担体材料および担体材料に付随する粒度分布の選択によって、酵素製剤の反応系からの簡単な分離および酵素製剤の再使用が可能であるように粒径を設定しうる利点がある。
【0021】
本発明による酵素製剤およびその製造のための方法は以下に例示的に記載されるが、本発明はこれらの例示的な実施形態に限定されることはない。以下に範囲、一般式、または化合物クラスが挙げられている場合、これらは、明確に言及されている化合物の適切な範囲または群だけではなく、個々の値(範囲)または化合物からの取出しによって得られうる化合物のすべての部分範囲および部分群も包含する。本明細書の枠内で文書が引用される場合、その内容は完全に本発明の開示内容に属する。本発明の枠内で、例えば、さまざまな単位を多重に有しうる有機修飾ポリシロキサンなどの化合物が記載される場合、これらはこれらの化合物においてランダムに分布され(ランダムオリゴマー)または規則正しく(ブロックオリゴマー)存在しうる。かかる化合物における単位の数の表示は、すべての対応する化合物を介して得られる平均値として理解される。
【0022】
本発明による酵素製剤は、不活性担体上に固定化された酵素または酵素を含有する微生物を有する酵素固定化物に、ヒドロシリル化によって得られるシリコーンコーティングが備えられることによって得られることを特徴とする。
【0023】
酵素固定化物の製造のために、適切な酵素を含有する全細胞、休止細胞、精製酵素または細胞抽出物、またはその混合物が使用されうる。好ましく使用されるのは、加水分解酵素、例えば、リパーゼ、エステラーゼ、またはプロテアーゼであり、例えば、カンジダ・ルゴサ(Candida rugosa)、カンジダ・アンタルクチカ(Candida antarctica)、シュードモナス属(Pseudomonas sp.)、サーモマイセス・ラヌゴシオサス(Thermomyces langosiosus)、ブタ膵臓(Schweinepankreas)、ムコール・ミエヘイ(Mucor miehei)、アルカリギネス属(Alcaligines sp.)由来のリパーゼ、カンジダ・ルゴサ(Candida rugosa)由来のコレステロールエステラーゼ、ブタ肝臓由来のエステラーゼなどであり、特に好ましくは、リパーゼが使用される。したがって、酵素固定化物は、好ましくは、加水分解酵素、好ましくは、リパーゼのクラス由来の酵素を有する。
【0024】
不活性担体としては、不活性有機または無機担体が使用されうる。不活性担体としては、好ましくは粒子の少なくとも90%において10〜5000μm、好ましくは、50μm〜2000μmの粒径の粒度分布を有するような個々の粒子担体が使用され、もしくは酵素固定化物に存在する。有機担体としては、特に、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリビニルスチロール、スチロール−ジビニルベンゾル共重合体、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンペレフタレート、PTFEおよび/または他のポリマーを有する、またはこれらからなるものが使用されうる。担体材料としては、固定化すべき酵素に依存して、特に、酸性または塩基性イオン交換樹脂、例えば、Duolite A568、Duolite XAD 761、Duolite XAD 1180、Duolite XAD 7HP、Amberlite IR 120、Amberlite IR 400、Amberlite CG 50、Amberlyst 15(すべてローム・アンド・ハース(Rohm und Haas)社の製品)またはLewatit CNP 105およびLewatit VP OC 1600(ランクセス(Lanxess)社、ドイツレバークーゼン(Leverkusen)の製品)が使用されうる。無機担体としては、従来技術から周知の酸化物および/またはセラミック担体が使用されうる。特に、無機担体として、例えば、セライト、ゼオライト、シリカ、細孔性ガラス(Controlled−Pore Glas(CPG))または他の担体が使用されうるが、これらは例えば、L.カオ(Cao)、「担体結合固定化酵素:原理、応用、および設計(Carrier−bound Immobilized Enzymes:Principles、Application and Design)」、ワイリー(Wiley)−VCH:2005年、ドイツヴァインハイム(Weinheim)に記載されている。特に好ましくは、酵素固定化物に存在する不活性担体もしくは酵素固定化物の製造に使用される不活性担体は、ポリビニルスチロール、ポリメタクリレートまたはポリアクリレートからなる。
【0025】
粒子上での固定化は、本発明によれば、共有または非共有、好ましくは、非共有で行われうる。非共有固定化のためには、担体は、例えば、場合により別の成分、例えば、無機塩または界面活性剤を含有する水性酵素溶液でインキュベート、もしくは含浸されうる。このインキュベーション/含浸は、例えば、0℃〜50℃、好ましくは、0℃〜40℃の温度で実施されうる。好ましくは、インキュベーション/含浸は数分〜数時間の時間にわたって行われる。インキュベーションの進行は、タンパク質測定のための一般的な方法により溶液中の酵素の濃度を測定することによって行われうる。所望の固定化度の達成後、担体は、好ましくは、水で洗浄され、かつ必要に応じて、乾燥されうる。次いで、こうして得られた酵素固定化物には、本発明によれば、シリコーンコーティングが備えられうる。
【0026】
しかし、本発明によれば、市販されている酵素固定化物、例えば、(ノボザイムズ社(Novozymes A/S)、Bagsvaerd、デンマークのノボザイム(Novozym) 435、リポザイムRM IM、またはリポザイムTL IM、または天野(Amano)エンザイム(株)(日本)のアマノ(Amano)PSも使用されうる。
【0027】
シリコーンコーティングは、本発明によれば、ヒドロシリル化によって得られる。そのために、好ましくは、触媒、好ましくは、遷移金属触媒の存在下に、Si−H官能性ポリシロキサンが、少なくとも1つの末端、好ましくは、少なくとも2つの炭素−炭素二重結合を有する有機修飾ポリシロキサンで転換される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
Si−H官能性ポリシロキサンとしては、好ましくは、一般式I
【化1】

[式中、
Nは、a+b+c+d+2=3〜850、好ましくは、6〜160であり、
aは、1〜800、好ましくは、2〜150であり、
bは、0〜400、好ましくは、2〜75であり、
cは、0〜10、好ましくは、0であり、
dは、0〜10、好ましくは、0であり、
は、互いに独立して同一または異なり、飽和または不飽和、場合により、1〜30個の炭素原子を有する分岐アルキル基、7〜30個の炭素原子を有するアルカリール残基、6〜30個の炭素原子を有するアリール残基、好ましくは、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、またはフェニル、特に、メチルを含んで成る群から選択され、
2aは、互いに独立して水素またはRであり、
2bは、互いに独立して水素またはRであり、
は、互いに独立して同一または一般式Ia
【化2】

[式中、
Nは、a+b+c+d+2=3〜850、好ましくは、6〜160であり、
aは、1〜800、好ましくは、2〜150であり、
bは、0〜400、好ましくは、2〜75であり、
cは、0〜10、好ましくは、0であり
dは、0〜10、好ましくは、0であり、
は、互いに独立して同一または異なり、飽和または不飽和、場合により、1〜30個の炭素原子を有する分岐アルキル基、7〜30個の炭素原子を有するアルカリール残基、6〜30個の炭素原子を有するアリール残基、好ましくは、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基またはフェニル、特に、メチルを含んで成る群から選択され、
2aは、互いに独立して水素またはRであり、
2bは、互いに独立して水素またはRであり、
は、互いに独立して同一、または、一般式Iaのさまざまな残基、または残基Rである]のさまざまな残基である]のSiHポリシロキサンが使用される。
【0029】
好ましくは、SiH官能性ポリシロキサンとして、一般式I
【化3】

[式中、
Nは、a+b+c+d+2=6〜160であり、
aは、2〜150であり、
bは、2〜75であり、
cは、0であり、
dは、0であり、
は、互いに独立して同一または異なり、飽和または不飽和、場合により、1〜30個の炭素原子を有する分岐アルキル基、7〜30個の炭素原子を有するアルカリール残基、6〜30個の炭素原子を有するアリール残基、好ましくは、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、またはフェニル、特に、メチルを含んで成る群から選択され、
2aは、互いに独立して水素またはRであり、
2bは、互いに独立して水素またはRである]のポリシロキサンが使用される。
【0030】
これらの化合物が実質的に統計的法則によって規制される分布との混合物の形で存在していること、もしくは存在しうることは当業者には周知である。したがって、指数a、b、c、およびdの値は、通常、平均値を示す。
【0031】
本発明によれば、オレフィン反応相手として、すなわち末端炭素−炭素二重結合を含有するポリシロキサンとしては、好ましくは、一般式II
【化4】

[式中、
Nは、m+n+o+p+2=3〜1000、好ましくは、10〜600であり、
mは、1〜800、好ましくは、2〜600であり、
nは、0〜20、好ましくは、0〜10、好ましくは、0であり、
oは、0〜10、好ましくは、0であり、
pは、0〜10、好ましくは、0であり、
は、互いに独立して同一または異なり、かつ次の群、すなわち、飽和または不飽和、場合により、1〜30個の炭素原子を有する分岐アルキル基、7〜30個の炭素原子を有するアルカリール残基、6〜30個の炭素原子を有するアリール残基、好ましくは、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、またはフェニル、特に、メチルからなり、
は、互いに独立して末端不飽和アルキル残基、好ましくは、ビニル、または、好ましくは、3〜20個の炭素原子を有するアルコキシル残基、またはRであり、
は、互いに独立して同一または一般式IIa
【化5】

[式中、
Nは、m+n+o+p+2=3〜1000、好ましくは、10〜600であり、
mは、1〜800、好ましくは、2〜600であり、
nは、0〜20、好ましくは、0〜10、好ましくは、0であり、
oは、0〜10、好ましくは、0であり、
pは、0〜10、好ましくは、0であり、
は、互いに独立して同一または異なり、かつ次の群、すなわち、飽和または不飽和、場合により、1〜30個の炭素原子を有する分岐アルキル基、7〜30個の炭素原子を有するアルカリール残基、6〜30個の炭素原子を有するアリール残基、好ましくは、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、またはフェニル、特にメチルからなり、
は、互いに独立して末端不飽和アルキル残基、好ましくは、ビニル、または、好ましくは、3〜20個の炭素原子を有するアルコキシル残基、またはRであり、
は、互いに独立して同一または一般式IIaのさまざまな残基または残基Rである]のさまざまな残基である]のポリシロキサンが使用される。
【0032】
末端炭素−炭素二重結合を含有するポリシロキサンとしては、好ましくは、一般式II
【化6】

[式中、
Nは、m+n+o+p+2=10〜600であり、
mは、2〜600であり、
nは、0であり、
oは、0であり、
pは、0であり、
は、互いに独立して同一または異なり、かつ次の群、すなわち、飽和または不飽和、場合により、1〜30個の炭素原子を有する分岐アルキル基、7〜30個の炭素原子を有するアルカリール残基、6〜30個の炭素原子を有するアリール残基、好ましくは、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、またはフェニル、特にメチルからなり、
は、互いに独立して末端不飽和アルキル残基、好ましくは、ビニル、または、好ましくは、3〜20個の炭素原子を有するアルコキシル残基である]のポリシロキサンが使用される。
【0033】
一般式IIの化合物が実質的に統計的法則によって規制される分布との混合物の形で存在していること、もしくは存在しうることは当業者には周知である。したがって、指数m、n、o、およびpの値は、通常、平均値を示す。
【0034】
ヒドロシリル化は触媒の存在下に確立された方法に従って実施されうる。この場合、例えば、ヒドロシリル化に通常使用される、例えば、白金、ロジウム、オスミウム、ルテニウム、パラジウム、イリジウム錯体または類似の化合物、もしくは適切な純元素、またはシリカ、アルミニウム酸化物、もしくは活性炭または類似の担体材料上に固定化された誘導体などの触媒が使用されうる。好ましくは、ヒドロシリル化は、Cis白金またはカールシュテット触媒[トリス(ジビニルテトラメチルジシロキサン)ビス−プラチン]などPt触媒の存在下に実施される。
【0035】
好ましくは、触媒の使用量は、モルオレフィン当たり、もしくは、モル末端炭素−炭素二重結合当たり10−7〜10−1モル、好ましくは、1〜100ppmである。ヒドロシリル化は、好ましくは、0〜200℃、好ましくは、20〜120℃の温度で実施される。
【0036】
ヒドロシリル化は、溶剤の存在下または非存在下に実施されうる。一般に、反応の実施のために溶剤は必要ではない。しかし、反応は、例えば、脂肪族または芳香族炭化水素、環状オリゴシロキサン、アルコールまたはエステルなど適切な溶剤において実施されうる。適切な溶剤は、特にシクロヘキサンまたはトルオールである。
【0037】
本発明によれば、使用される担体の質量に関して、好ましくは、1〜500質量%、好ましくは、10〜200質量%、特に好ましくは、20〜150質量%のシロキサン成分が使用される。シロキサン成分は、特に式Iおよび式IIの化合物の合計から、もしくはその反応産物から構成される。
【0038】
ヒドロシリル化は、式1の化合物の式IIの化合物とのきわめて種々の比を使用して実施されうる。好ましくは、ヒドロシリル化は、反応基に関して1:10〜10:1、好ましくは、1:5〜5:1、特に好ましくは、1:1.1〜1.1:1、かつ完全に特に好ましくは、1:1のモル比で行われる。一般式IおよびIIの使用される化合物の選択およびその混合比の変化によって、シリコーンコーティングの特徴は、基質の透過性および他の反応特性を考慮して変更される。シリコーン成分の酵素固定化物との重量比の選択によって、シリコーンコーティングのコーティング厚さは変化し、対応する要件要求に一致する。
【0039】
ヒドロシリル化によって製造される本発明によるシリコーンコーティングは、ヒドロシリル化が酵素固定化物の存在下に実施されることによって得られうる。しかし、ヒドロシリル化によって得られたシロキサンをその後に酵素固定化物へ配置することよってコーティングを得ることも可能である。これは、例えば、酵素固定化物をシロキサンの溶液、例えば、有機溶剤、特に、シクロヘキサンまたはトリオール中のシロキサンの溶液で処理することによって行われうる。次いで、溶剤は、例えば、蒸発によって除去されうる。かかる溶液中のシロキサンの濃度は、好ましくは、10〜100質量%、好ましくは、30〜100質量%である。しかし、好ましくは、本発明によるシリコーンコーティングは、ヒドロシリル化が酵素固定化物の存在下に実施されることによって得られる。
【0040】
本発明による酵素製剤は、好ましくは、以下に述べられる本発明による方法によって製造される。酵素製剤の製造のためのこの方法は、不活性担体上に固定化された酵素または酵素を含有する微生物を有する酵素固定化物に、ヒドロシリル化によって得られるシリコーンコーティングが備えられることによって特徴づけられる。
【0041】
好ましくは、本発明による方法は、酵素固定化物をSiH官能性ポリシロキサン、末端炭素−炭素二重結合を含有するポリシロキサン、ならびにヒドロシリル化を触媒する触媒を有する反応混合物とヒドロシリル化条件下に接触させることによってシリコーンコーティングが備えられるように実施される。特に、この方法は、不活性担体上に固定化された酵素または酵素を含有する微生物を有する酵素固定化物の存在下に、ヒドロシリル化反応が実施されるように実施されうる。ヒドロシリル化に際して生じるシリコーンによって、酵素固定化物にはシリコーンコーティングが備えられうる。
【0042】
ヒドロシリル化は当業者に周知の方法で実施されうる。好ましくは、ヒドロシリル化は上述したパラメータ/使用素材/触媒を使用して実施される。
【0043】
本発明による方法の好ましい実施形態において、特定量の酵素固定化物には、例えば、一般式Iおよび一般式IIの化合物ならびにカールシュテット(Karstedt)触媒を含有する混合物の添加によって、シリコーン試薬(式IおよびIIの化合物+触媒)の混合物(反応混合物)が添加される。例えば、酵素固定化物1gには、10:1〜1:10のモル混合比で式IおよびIIの化合物、ならびにカールシュテット触媒、例えば、シリコーン成分の既存量に対して50ppmの混合物が添加されうる。コーティング特徴の最適化のために、シリコーン成分を触媒を含めて添加の前に溶剤、例えば、シクロヘキサン、トリオール、または別の有機溶剤において溶解し、かつその溶液を酵素固定化物に添加することが有利でありうる。例えば、シクロヘキサンが溶剤として使用されると、溶液を酵素固定化物に添加した後、例えば、ボルテクサー(Vortexer)(イカ(Ika)、ステップ9)によって、シクロヘキサンの大部分が蒸発するまで、この混合物を約15〜30分間、強く分散させるのが有利であることが証明された。次いで、得られた酵素製剤を乾燥室において50℃で、例えば12時間、乾燥させ、もしくは硬化させる。一般式IおよびIIの化合物の混合比の変化によって、シリコーンコーティングの特徴は問題なく変化し、対応する要件に一致する。
【0044】
本発明による方法の別の実施形態が、コーティングすべき酵素固定化物を所望の反応混合物へ浸漬し、次いで反応混合物から除去し、かつ乾燥させることによって前述の実施形態と区別される。除去は、例えば、酸素固定化物粒子を抑制するふるいを使用して行われうる。浸漬時間は、好ましくは、1〜10分である。乾燥は従来の乾燥室で行われうる。好ましくは、乾燥/硬化は20℃〜80℃、好ましくは、40℃〜60℃、特に好ましくは、約50℃の温度で行われる。
【0045】
特に、技術的基準での実施に適している本発明による方法の別の実施形態において、ヒドロシリル化は(例えば、エアヴェルカ(Erwerka)またはアイリッヒ(Eirich)社の)ペレット化パンユニットを使用して実施される。この場合、酵素固定化物粒子の規定量がいわゆるパンユニットへ添加され、攪拌される。次いで、式IおよびIIの化合物のほか、触媒ならびに場合により溶剤を含有する混合物が添加され、または好ましくは、(例えば、シュリック(Schlick)社または他の)2流体ノズルが使用されて、加圧され(例えば、窒素または合成空気)、混合物もしくは成分が微噴霧の形で塗布され、できるだけ均一の分布を粒子上で保証する。粒子は、長めのコーティング時間後に、上述したように除去され、かつ数時間、20℃〜80℃、好ましくは、40℃〜60℃、特に好ましくは、50℃の温度で乾燥室で乾燥され、もしくは硬化され、次いでさらに使用するまで室温で貯蔵される。
【0046】
別の実施形態において、粒子は流動層反応器(例えば、エアヴェルカ(Erwerka)社)において生成されうるが、ここで粒子および反応混合物は適切な混合比で強い分散下に使用される。
【0047】
本発明による酵素製剤は、例えばバイオ触媒として、特に工業用バイオ触媒として使用されうる。
【0048】
本発明を図1および2の図面を用いて詳しく説明するが、これらに限定されることはない。
【0049】
図1および図2は、4cmの底の直径を有する100mLのビーカー中の攪拌懸濁液の写真を示す。懸濁液は、実施例2に記載されているように製造されている。図面の図1からは、微粒子の未処理NZ435に基づく攪拌懸濁液が混濁していることがわかる。それに対して、本発明により処理されたNZ435に基づく攪拌懸濁液は透明であり、粒子もなく、もしくは少なくとも可視的大きさの粒子もない(図2)。
【0050】
以下の実施例により、明細書および特許請求の範囲から生じる保護範囲を制限することなく、本発明を詳しく説明することにする。
【実施例】
【0051】
材料と方法:
ノボザイム(Novozym)435(NZ435)は、ポリメタクリレート上に吸着によって固定化されたC.antarctica由来のリパーゼBの、ノボザイムズ社(Novozymes A/S)、Bagsvaerd/デンマークの市販の酵素固定化物である。
【0052】
加水分解活性(水性媒体におけるトリブチリン加水分解):
加水分解活性をいわゆるpH−Stat法で測定したが、この場合、加水分解で放出された酸を塩基に対して滴定し、溶液のpH値を一定に維持する。塩基の消費の時間依存性から放出された酸とともに酵素活性が定量化される。実施例:触媒活性粒子10−20mgをトリス−HCl緩衝液(1mM、pH7.5、さらに0.1mM NaClおよびCaClを含有)25mLおよびトリブチリン500μLに添加した。加水分解活性を自動滴定装置(トリトロリン(Tritroline)アルファ、ショット(Schott)社)において滴定塩基(50mM NaOH)の量を定量化した。
【0053】
加水分解活性(水性媒体におけるバレリアン酸エチルエステル):
トリブチリンの実施例における加水分解活性の測定と同様に、バレリアン酸エチルエステルも使用されうる。実施例:触媒活性粒子10−20mgをリン酸緩衝液(1mM、pH8.0)25mL、およびバレリアン酸エチルエステル500μLを添加した。加水分解活性を自動滴定装置(トリトロリン(Tritroline)アルファ、ショット(Schott)社)において滴定塩基(50mM NaOH)の量を定量化した。
【0054】
PLU単位での合成活性(溶剤非含有系におけるプロピルラウレート合成活性):
触媒活性粒子10mgを等モル基質溶液(ラウリン酸および1−プロパノール)5mLに添加し、60℃で振盪もしくは攪拌してインキュベートした。試料(V試料:50μL)を25分にわたって5分ごとに取出し、デカン(内部標準:4mMドデカン)950μLに移した。PLUの測定は開始生成種を用いて行われる。プロピルラウレートの検出(保持時間:9,791分)はガスクロマトグラフィーで行われた(島津製作所(Shimazu)2010、SGE社、BTXカラム、長さ25m、内径0.22μm、膜:0.25μm、検出器タイプ:300℃でのFID、注入温度275℃および注入量1μL、分割比(Splitratio)35,0、担体ガス圧(ヘリウム)150kpa、温度プログラム:開始温度60℃を1.5分維持、温度上昇20℃/分、終了温度250℃を2.5分維持)。
【0055】
ラッカーゼ活性の測定:
ラッカーゼ活性の測定のために、触媒活性粒子(天然または固定化ラッカーゼ)をABTS−Lsg(Ready−to−useの溶液、1.8mM、シグマ・アルドリッチ(Sigma−Aldrich)から入手)1mLを含むリン酸カリウム緩衝液(100mM、pH6、37℃)19mLに移し、かつ吸光の増加を405nmで分光計により測定する。ラッカーゼ活性は20分の時間にわたって追跡されなければならない。試料は5分の間隔で取られる。活性は次のように測定される。すなわち、
【数1】

ΔExt. 405 時間に依存した吸光の変化
反応成分における総量[20mL]
試料 試料の量[2mL]
Δt 時間の変化[分]
ε 405nmでのABTSの吸光係数[43.2mL μmol−1cm−1
d キュベットのコーティング厚さ[1cm]
【0056】
活性は、毎分1μmol基質転換として規定される単位(U/mLもしくはU/g)で示される。
【0057】
ブラッドフォードによるタンパク質測定:
上清におけるタンパク質含量の測定をブラッドフォード(Bradford)の方法(Anal.Chem.1976年、72、248−254頁)に従って実施したが、これはタンパク質における塩基性および芳香族アミノ酸残基へのトリアリルメタン色素クーマシー・ブリリアント・ブルーG−250の結合に基づく。この結合は、465nmから595nmへの吸光最大の変化の原因となる。較正の確立のためにBSAの吸光を5−20μg/Lの濃度で測定した。このためにそれぞれの試料にHOを補充して800μLとし、ブラッドフォード試薬(バイオ・ラッド(Bio Rad)、ミュンヘン)200μLを添加して595nmで測定した。
【0058】
厳しい反応条件下に触媒活性粒子の浸出反応を測定するためにプロトコルを次のステップに拡大した。
【0059】
ノボザイム(Novozym)435(NZ435)のタンパク質の割合の測定は次のスキームに従って行われた。NZ435粒子を30分間、アセトニトリル/HO(1:1、v/v)において45℃で振盪してインキュベートし、次いで上清から試料(例えば、1mL)を取出し、凍結乾燥させ、HO(同じく1mL)中に再懸濁した。次いで、タンパク質含量を上述したように測定することができた。結果は表1からわかる。
【0060】
【表1】

【0061】
比較例1:従来の酵素固定化物の機械的安定性の測定
粒子の機械的安定性の測定のために、これらをさまざまな高粘性の等モル基質溶液(例えば、ポリエチレングリコール(分子量約2400)および油酸)において高い性能特性および60℃より高い温度でインキュベートし、次いで粒子の完全性を検査した。NZ435(ポリエチレングリコール(分子量約2400))および油酸中5重量%)を使用して24時間後に、例えば明らかに発生する混濁によって、裸眼で微粒子の形成を発見することができた。
【0062】
比較例2:従来の酵素固定化物の脱着安定性の測定
厳しい反応条件下に粒子の脱着安定性の測定のために、NZ435 50mgの一部分をMeCN/HO(1:1、v/v)溶液20mLにおいて45℃で30分間振盪した。上清から特定の試料(例えば、1mL)を取出し、上清中のタンパク質含量を上述したように測定した。粒子を折畳み型フィルタを介して回収し、HO 100mLで洗浄し、かつ12時間、50℃で乾燥させ、次いで上述したスキームに従って加水分解活性および合成活性をPLOで測定した。結果は表2からわかる。
【0063】
【表2】

【0064】
実施例1:安定した酵素製剤の製造
製造例:
NZ435粒子1gを金属シャーレに、一般式IおよびIIの化合物(組成は表3を参照、一般式およびIIの成分は、例えば、米国特許第7,196,153B2号明細書に記載されているように、当業者に周知の方法に従って、平衡によって製造された)のさまざまな組成物、ならびにカールシュテット触媒(Syloff 4000、ダウ・コーニング(Dow Corning)、米国の製品)からなる反応混合物1mLとともに添加した。シリコーン成分を触媒を含めてそれぞれ使用前にシクロヘキサン3mL中に溶解し、次いで金属シャーレの粒子に添加した。添加後、直ちにボルテクサー(Vortexer)(イカ(Ika)、ステップ9)を用いて15−30分間、シクロヘキサンの大部分が蒸発するまで強く分散させた。次いで、粒子を約12時間、乾燥室において50℃で乾燥させた。
【0065】
【表3】

【0066】
この方法に従って製造された粒子は、加水分解における未処理固定化物に対して、73%まで(比較例1に記載されているように、未処理NZ435の1.05U/mgと比べ、実施例1 iおよび1 iii、0.77U/mg NZ435)、もしくは65%まで(実施例1 i、0.68U/mg NZ435)の活性収率を有する。合成においては、94%(実施例1 i)、84%(実施例1 iii)、または68%(実施例1 ii)の活性収率を達成することができた。
【0067】
実施例2:本発明による酵素製剤の機械的安定性の測定
粒子(未処理、天然NZ435、もしくは表3のiiiに従ってコーティングされたNZ435)300mgをそれぞれ90分間、5mLラウリン酸中で60℃下に強く攪拌した(イカ(Ika)社の磁気攪拌プレート、モデルRTパワー、ステップ5、磁気攪拌子、長さ3.1cm、幅0.6cm)。撹拌器の除去後、攪拌懸濁液の写真を作成した(図1および2)。
【0068】
図面の図1により、微粒子の未処理NZ435に基づく攪拌懸濁液が混濁していることが明らかにわかる。本発明による処理NZ435に基づく攪拌懸濁液は、それに対して透明であり、粒子もなく、もしくは少なくとも可視的大きさの粒子もない(図2)。
【0069】
次いで、懸濁液からの粒子を折畳み型フィルタで分離し、約10mLのアセトンで洗浄し、12時間、50℃で乾燥させた。
【0070】
粒子の機械的安定性の測定のために粒度分布の測定を実施した。これにより使用されるふるい比は次の排除サイズを有した。すなわち、800μm、500μm、300μm、150μm、および75μm。
【0071】
ふるい分けごとに攪拌前後に粒度分布を測定した。結果は表4からわかる。
【0072】
【表4】

【0073】
実施例3:安定な酵素製剤の脱着安定性の測定
比較例2と同様に、実施例1から得られた粒子を水/アセトニトリルで処理し、次いで加水分解活性、合成活性、および放出タンパク質の量を測定した。この測定の結果は表5からわかる。
【0074】
【表5】

【0075】
未処理天然酵素固定化物はインキュベーション後に決して加水分解活性を示さず、56μg/mg固定化物が遊離タンパク質として検出されうるが、シリコーンコート粒子は初期活性の75%までの加水分解活性(試料ii、0.51U/mg NZ435対浸出前の0.77U/mg NZ435)、初期活性の55%までの合成活性(試料ii、2980U/g NZ435対浸出前の5400U/g NZ435)、および約86%(試料ii)まで削減された酵素脱着を示す。
【0076】
実施例4:酵素固定化物の製造
Lewatit VPOC 1600(ランクセス(Lanxess)社)1gを約18時間、室温でCALB溶液(リポザイムCALB L、ノボザイムズ社(Novozymes A/S)、デンマークバウスヴェア(Bagsvaerd)加水分解活性:2700U/mL)5mL中で攪拌し、折畳み型フィルタで分離し、かつ水250mLで蒸留洗浄し、次いで3時間、風乾し、イソプロパノール1mLで洗浄し、かつもう1回、1時間、風乾した。こうして製造された固定化物をロック可能な反応容器において4℃下でさらに使用するまで貯蔵した。
【0077】
上述した方法の後、酵素固定化物の活性を測定した(1.04U/mgの加水分解活性および6000PLU/gの合成活性)。負荷密度はブラッドフォード試験によって約30μgタンパク質/mgVPOC1600で測定された。
【0078】
こうして生成された酵素固定化物を上述した方法後の第2のステップにおいてシリコーンでコーティングした(表3の実験iにおけるような組成)。製剤中の酵素固定化物の質量の割合は63%に相当する。コート製剤の加水分解活性は0.43U/mgであり、合成活性は2927 PLU/gである。
【0079】
比較例2と同様に、非コートおよびシリコーンでコーティングされた粒子を水/アセトニトリルで処理し、次いで加水分解活性、合成活性、および放出タンパク質の量を測定した。結果は表6からわかる。
【0080】
【表6】

【0081】
表6からわかるように、未処理固定化物において9倍の量のタンパク質が脱着される。同時に、54%(加水分解活性)、もしくは60%(合成活性)の活性収率が達成されうる。NZ435によってすでに市販の完成製剤で示されたシリコーンでの酵素固定化物のコーティングのための上述した方法の適合性は、したがって、自己負荷酵素固定化物でも証明することができた。
【0082】
実施例5:有機溶剤中の酵素活性の測定
実施例1および4の酵素製剤、ならびに対応する天然固定化物の活性を、プロピルラウレート合成がメチルシクロヘキサン(基質の初期濃度=10mM、温度=25℃)中で実施されることによって測定する。
【0083】
【表7】

【0084】
表7は、酵素製剤の活性収率が有機溶剤における使用に際して顕著であり、かつ脱着安定性も明らかになることを明らかに示している。
【0085】
実施例6:別のリパーゼ製剤の製造
実施例1と同様に、リポザイムRM IM(ランクセス(Lanxess)社のDuolite A568上に固定化されたムコール・ミエヘイ(M.miehei)由来のリパーゼ、ノボザイムズ社(Novozymes A/S)から入手)にシロキサンコーティングを備え、かつ活性収率を実施例5と同様に有機溶剤中で測定する。
【0086】
【表8】

【0087】
表8は、リポザイムRM IMの使用量に関して、測定精度の枠内で定量的活性収率が達成されることを明らかに示している。
【0088】
実施例7:別のリパーゼ製剤の製造
実施例4と同様に、サーモマイセス・ラヌギノーサ(T.lanuginosa)由来のリパーゼ(アザ・スペツィアルエンザイム(Asa Spezialenzyme)社の「エステラーゼ(Esterase)TL01として入手、これは追加のエステラーゼ機能を有するリパーゼであることが重要である)をLewatit VPOC1600上に固定化し、かつシロキサンコーティングを備える。活性測定には加水分解バレリアン酸エチルエステルを測定する。
【0089】
【表9】

【0090】
表9は、天然製剤は261U/gの活性を有するが、コーティングされた製剤は157U/gの活性を示すことを示している。天然固定化物の含量に関して、これは285U/gの活性を意味し、すなわち、誤差精度の枠内で定量的活性収率が達成されうる。
【0091】
実施例8:エステラーゼ製剤の製造
実施例7と同様に、リゾプス・オリザエ(R.oryzae)由来のエステラーゼをLewait VPOC1600上に固定化し、コーティングし、かつバレリアン酸エチルエステルの加水分解における活性を測定する。
【0092】
【表10】

【0093】
ここでも測定精度の枠内で量的活性収率が示される。
【0094】
実施例9:ラッカーゼ製剤の製造
実施例4と同様に、ミセリオフトーラ・サーモフィリア(Myceliophthora Thermophilia)(ノボザイムズ社(Novozymes A/S)におけるFlavorstarとして入手)由来のラッカーゼ(EC 1.10.3.2)をLewatit VP OC 1600上に固定化し(1gLewatit VPOC 1600におけるタンパク質4.5mg)、シロキサンコーティングを備え、かつABTSアッセイにおける活性を測定した。
【0095】
【表11】

【0096】
表11は、ラッカーゼも本発明による方法でコーティングされることを示す。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】微粒子の未処理NZ435に基づく攪拌懸濁液の写真である。
【図2】処理されたNZ435に基づく攪拌懸濁液の写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不活性担体上に固定化された酵素または酵素を含有する微生物を有する酵素固定化物に、ヒドロシリル化によって得られるシリコーンコーティングが備えられることによって得られる酵素製剤。
【請求項2】
前記酵素が、加水分解酵素、好ましくは、リパーゼのクラスからのものであることを特徴とする請求項1に記載の酵素製剤。
【請求項3】
前記不活性担体が、粒子の90%において10〜5000μmの粒径の粒度分布を有することを特徴とする請求項1または2に記載の酵素製剤。
【請求項4】
前記使用される不活性担体がポリビニルスチロール、ポリメタクリレートまたはポリアクリレートからなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の酵素製剤。
【請求項5】
前記シリコーンコーティングが、SiH官能性ポリシロキサンの末端炭素−炭素二重結合を含有するポリシロキサンとのヒドロシリル化によって得られることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の酵素製剤。
【請求項6】
SiH成分として、一般式
【化1】

[式中、
Nは、a+b+c+d+2=3〜850であり、
aは、1〜800であり、
bは、0〜400であり、
cは、0〜10であり、
dは、0〜10であり、
は、互いに独立して同一または異なり、飽和または不飽和、場合により、1〜30個の炭素原子を有する分岐アルキル基、7〜30個の炭素原子を有するアルカリール残基、6〜30個の炭素原子を有するアリール残基を含んで成る群から選択され、
2aは、互いに独立して水素またはRであり、
2bは、互いに独立して水素またはRであり、
は、互いに独立して同一、または、一般式Ia
【化2】

[式中、
Nは、a+b+c+d+2=3〜850、好ましくは、6〜160であり、
aは、1〜800であり、
bは、0〜400であり、
cは、0〜10であり、
dは、0〜10であり、
は、互いに独立して同一または異なり、飽和または不飽和、場合により、1〜30個の炭素原子を有する分岐アルキル基、7〜30個の炭素原子を有するアルカリール残基、6〜30個の炭素原子を有するアリール残基を含んで成る群から選択され、
2aは、互いに独立して水素またはRであり、
2bは、互いに独立して水素またはRであり、
は、互いに独立して同一、または、一般式Iaのさまざまな残基、または残基Rである]のさまざまな残基である]のポリシロキサンが使用されることを特徴とする請求項5に記載の酵素製剤。
【請求項7】
SiH成分として、一般式I
【化3】

[式中、
Nは、a+b+c+d+2=6〜160であり、
aは、2〜150であり、
bは、2〜75であり、
cは、0であり、
dは、0であり、
は、互いに独立して同一または異なり、飽和または不飽和、場合により、1〜30個の炭素原子を有する分岐アルキル基、7〜30個の炭素原子を有するアルカリール残基、6〜30個の炭素原子を有するアリール残基を含んで成る群から選択され、
2aは、互いに独立して水素またはRであり、
2bは、互いに独立して水素またはRである]のポリシロキサンが使用されることを特徴とする請求項6に記載の酵素製剤。
【請求項8】
末端炭素−炭素二重結合を含有するポリシロキサンとして、一般式II
【化4】

[式中、
Nは、m+n+o+p+2=3〜1000であり、
mは、1〜800であり、
nは、0〜20であり、
oは、0〜10であり、
pは、0〜10であり、
は、互いに独立して同一または異なり、かつ次の群、すなわち、飽和または不飽和、場合により、1〜30個の炭素原子を有する分岐アルキル基、7〜30個の炭素原子を有するアルカリール残基、6〜30個の炭素原子を有するアリール残基からなり、
は、互いに独立して末端不飽和アルキル残基、またはアルコキシル残基、またはRであり、
は、互いに独立して同一または一般式IIa
【化5】

[式中、
Nは、m+n+o+p+2=3〜1000であり、
mは、1〜800であり、
nは、0〜20であり、
oは、0〜10であり、
pは、0〜10であり、
は、互いに独立して同一または異なり、かつ次の群、すなわち、飽和または不飽和、場合により、1〜30個の炭素原子を有する分岐アルキル基、7〜30個の炭素原子を有するアルカリール残基、6〜30個の炭素原子を有するアリール残基からなり、
は、互いに独立して末端不飽和アルキル残基、またはアルコキシル残基、またはRであり、
は、互いに独立して同一または一般式IIaのさまざまな残基または残基Rである]のさまざまな残基である]のポリシロキサンが使用されることを特徴とする請求項5〜7の少なくとも一項に記載の酵素製剤。
【請求項9】
末端炭素−炭素二重結合を含有するポリシロキサンとして、一般式II
【化6】

[式中、
Nは、m+n+o+p+2=10〜600であり、
mは、2〜600であり、
nは、0〜10であり、
oは、0であり、
pは、0であり、
は、互いに独立して同一または異なり、かつ次の群、すなわち、飽和または不飽和、場合により、1〜30個の炭素原子を有する分岐アルキル基、7〜30個の炭素原子を有するアルカリール残基、6〜30個の炭素原子を有するアリール残基からなり、
は、互いに独立して末端不飽和アルキル残基、またはアルコキシル残基である]のポリシロキサンが使用されることを特徴とする請求項5〜8のいずれか一項に記載の酵素製剤。
【請求項10】
不活性担体上に固定化された酵素または酵素を含有する微生物を有する酵素固定化物に、ヒドロシリル化によって得られるシリコーンコーティングが備えられることによって得られることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の酵素製剤を製造するための方法。
【請求項11】
前記酵素固定化物が、前記酵素固定化物を、SiH官能性ポリシロキサン、末端炭素−炭素二重結合を含有するポリシロキサン、ならびに前記ヒドロシリル化を触媒する触媒を有する反応混合物と、ヒドロシリル化条件下に接触させることによって、シリコーンコーティングが備えられることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
工業用バイオ触媒としての請求項1〜9のいずれか一項に記載の酵素製剤の使用。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−11321(P2009−11321A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−172204(P2008−172204)
【出願日】平成20年7月1日(2008.7.1)
【出願人】(507375465)エヴォニク ゴールドシュミット ゲーエムベーハー (100)
【Fターム(参考)】