説明

酵素阻害の噴霧しうる皮膚バリヤー組成物

【課題】本発明は、噴霧しうる皮膚バリヤー組成物を提供する。
【解決手段】本発明の皮膚バリヤー組成物は、バリヤー成分と酵素阻害成分から成り、オストミーおよび創傷ケア、幼児オムツ、および糞便失禁適用に用いられ、上記バリヤー成分はペトロラタムまたは他の許容しうる担体をベースとし、酵素阻害成分は塊茎、たとえばジャガイモから得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バリヤーとして作用し、また膵臓や創傷の酵素をも阻害する、噴霧しうる皮膚バリヤー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
オストミー(人工肛門)あるいは糞便失禁をもつ被検者の小孔周囲、肛門周囲および会陰の皮膚や、幼児着用のオムツは、絶えず糞便にさらされる可能性がある。この事態が起ると、皮膚は糞便内容物、主にたん白分解または消化酵素によって攻撃される。この攻撃は皮膚表面のびらんに導き、過酷な皮膚状態、たとえば皮膚炎をもたらす。また創傷酵素によって、創傷環境における創傷周囲の皮膚にも、類似の皮膚びらんが起りうる。
【0003】
オストメート(人工肛門患者)の場合、糞便または尿接触から皮膚を保護する試みにおいて、いろいろな製品が使用されている。これらの製品としては、被膜形成噴霧バリヤー、カシェ剤、ローション剤、クリーム、パスタ剤、リング、バリヤーふきん等が挙げられる。しかしながら、これら製品の保護法の全ては、酵素攻撃に対する物理的バリヤーを提供するにすぎない。物理的バリヤーがすりへったりあるいは破れたりすると、酵素攻撃は切迫する。
創傷の場合、エラスターゼなどの酵素は潜在的に、皮膚損傷を起したり、創傷治癒を遅らせる。
【0004】
本発明は、酵素阻害添加成分と噴霧しうるバリヤーを組合せて含有する噴霧バリヤー組成物の使用による皮膚の保護に関係する。
皮膚を保護する成分を含有する皮膚バリヤーを記載した、多数の先行技術が開示されている。
US特許出願No.2005/0036960A1には、すすぎ落とし抵抗剤、沈殿防止剤および少なくとも1種の皮膚保護剤を含有する噴霧しうる皮膚保護組成物が開示されているが、該組成物には、オイルやシリコーンは含まれていない。
【0005】
US特許No.6723354およびUS特許出願No.2004/0166183A1に、炎症あるいはかゆみの処置のため、噴霧液、ゲル、ローション、パウダー等の形状でのジャガイモ汁の使用が開示されている。酵素阻害は、糞便酵素の混合物に直接該ジャガイモ汁を加えることによって立証されている。
US特許No.6627178B1およびUS特許出願No.2005/0079229A1に、オムツかぶれ処置組成物を微粒化噴霧ディスペンサーの使用によって霧状態に形成することにより、該組成物を選定した皮膚領域に塗布するシステムが記載されている。
【0006】
US特許No.2005/0048105A1に、Dextran70またはマレイン酸とメチルビニルエーテルのコポリマーなどのポリマー担体中にプロテアーゼ阻害薬、たとえばグリシン大豆たん白またはジパルミトイルヒドロキシプロリンを含有する、オムツかぶれ用処置剤が記載されている。
US特許No.6331295B1に、親有機性クレーを水浸透性超吸収ポリマーマトリックスに分散させて成る、オムツかぶれなどの皮膚刺激を予防する固体組成物の使用が開示されている。親有機性クレーは、天然および合成モンモリロナイト、ベントナイト等からなる群から選ばれる。
US特許No.6207596B1に、抗菌性プロテアーゼ阻害薬、たとえば芳香族ジアミジンを含有する予備加湿の使い捨てふきんが開示されている。
【0007】
US特許出願No.2003/0206944A1に、好中球−由来カチオン性プロテアーゼ、たとえばエラスターゼの阻害薬もしくは金属イオン封鎮剤である活性物質を有する綿セルロースマトリックスからなる創傷包帯が開示されている。活性物質は、ジおよびトリペプチドからなる群から選ばれる阻害薬、あるいは上記マトリックスと会合するスルホニル、ホスフェートまたはアルデヒド基からなる群から選ばれる金属イオン封鎮剤とされている。
US特許No.6932976に、皮膚保護クリームと酵素遮断化合物の併用が開示されている。酵素遮断化合物は、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、酸化亜鉛、もしくは乳酸亜鉛またはこれらの組合せから選ばれる。
【0008】
US特許出願No.2003/0104019A1に、尿によって起こる酵素皮膚炎、たとえば会陰皮膚炎の処置または弱化用の、膨潤性クレーおよび解こう剤(peptizing agent)から成る局所固体組成物が開示されている。膨潤性クレーは、葉ろう石、タルク、スメクタイト(smectite)、海泡石、ゼオライト、パリゴルスカイト(palygorskite)およびこれらの混合物からなる群から選ばれる。解こう剤は、ピロリン酸テトラナトリウムまたはカリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム等からなる群から選ばれる。
これらの参考文献は、酵素阻害組成物の噴霧しうる形態でのデリバリーのし方、あるいは膵臓および創傷酵素を阻害する適当な噴霧しうる皮膚バリヤー組成物を教示するものではない。
【発明の開示】
【0009】
本発明は、オイル、シリコーン、水もしくはペトロラタムまたはこれらの組合せをベースとする噴霧バリヤー組成物に、塊茎をベースとする酵素非活性化剤の1種以上を組み込ませることに関係する。
従って、本発明の噴霧バリヤー組成物は、バリヤー成分と酵素阻害成分を含有する。酵素阻害成分は、塊茎、たとえばジャガイモから得られる阻害薬の1種以上である。噴霧バリヤー成分は、担体としてオイル、水、シリコーンまたはペトロラタムをベースとする。
【実施例】
【0010】
下記表1に、ジャガイモたん白の無い対照噴霧バリヤーの組成物と、ジャガイモたん白を有する噴霧バリヤーAの組成物を示す。ヘキサメチルジシロキサン(HMDSD)は、噴霧後に蒸発する予定の溶剤である。ビス−ジグリセリル・ポリアシルアジペート−2は、天然植物性脂肪酸のトリグリセリドエステルである。ジャガイモたん白は、Protagold FQの商品名で、AVEBE Americaから入手した。
必要に応じて、皮膚に適する他の成分も使用しうる。
【0011】
表1:対照噴霧バリヤーおよび噴霧バリヤーAの組成物
【表1】

【0012】
以下に示す工程を行なって、上記組成物を調製する。
(1)混合容器にホワイトペトロラタムを加え、絶えず撹拌しながら、該物質が液体になり、塊が無くなるまで70℃±5℃に加熱する。
(2)ビス−ジグリセリル・ポリアシルアジペート−2を予め45℃±5℃に加熱する。これを上記混合容器に加え、絶えず撹拌しながら、ホワイトペトロラタムとの完全な混合を確実に行なう。温度を60℃±5℃に下げる。
(3)混合容器に軽質鉱油を加え、撹拌して配合物を得る。
(4)混合容器に絶えず撹拌しながらヘキサメチルジシロキサンを加え、均質化する。
(5)噴霧バリヤーAの場合は、混合容器に絶えず撹拌しながらジャガイモたん白を加え、均質化する。
【0013】
次いで両組成物を、霧状態にする噴霧デリバリーシステム、たとえばcan−in−canエアゾールシステムに詰める。必要に応じて、該噴霧バリヤー配合物をbag−on−valveエアゾールシステムに詰めることができる。これらのシステムは共に、当該分野で公知である。本質的に、配合物と噴射剤を分離するシステムによって、該製品をデリバリーする。
当業者であれば、各成分を混合して噴霧しうる組成物を得る幾つかの公知の方法が存在し、かつ上述の操作手順が本発明の技術的範囲を制限すると見なすべきでないことを十分理解するであろう。
対照噴霧バリヤーおよび噴霧バリヤーAは共に、噴霧しうることが認められた。
【0014】
酵素阻害のアッセイ実験
噴霧バリヤーAの酵素阻害能力を、対照噴霧バリヤー(対照)と比較する。噴霧バリヤーAと対照をフィルム上に噴霧し、一夜乾燥せしめる。バイアルでのアッセイ実験に、約200mgの残留物質(溶剤蒸発後の)を用いる。下記表2に、アッセイ実験の試験条件を示す。バイアルを37℃でインキューベーションし、吸収−発光分光分析法で酵素活性を監視する。
【0015】
表2:酵素阻害実験の試験条件
【表2】

*N−(2−ヒドロキシエチル)−ピペラジン−N−2−エタンスルホン酸
注目すべき点は、トリプシンおよびキモトリプシンが膵臓によって放出される消化酵素であることである。
【0016】
アッセイ実験によれば、対照噴霧バリヤーはトリプシンおよびキモトリプシンに対していずれの阻害効果も示さないのに対し、噴霧バリヤーAはキモトリプシンに対し阻害効果を示したが(図1参照)、現記載濃度ではトリプシンに対して該効果を示さなかった。
対照噴霧バリヤーは、創傷に存在する酵素、たとえばエラスターゼに対して阻害効果を示さないと思われる。しかしながら、ジャガイモたん白を有する噴霧バリヤーAは、創傷酵素、たとえばエラスターゼに対し阻害効果を示すと思われる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例における本発明皮膚バリヤー組成物(噴霧バリヤーA)のキモトリプシンに対する阻害効果を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バリヤー成分と酵素阻害成分から成り、噴霧しうる皮膚バリヤー組成物。
【請求項2】
酵素阻害成分が、塊茎から得られる阻害薬の1種以上である請求項1に記載の皮膚バリヤー組成物。
【請求項3】
塊茎がジャガイモである請求項2に記載の皮膚バリヤー組成物。
【請求項4】
バリヤー成分が、オイル、シリコーンもしくはペトロラタムまたはこれらの組合せをベースとする請求項1に記載の皮膚バリヤー組成物。
【請求項5】
バリヤー成分がペトロラタムである請求項4に記載の皮膚バリヤー組成物。
【請求項6】
ヘキサメチルジシロキサン、ホワイトペトロラタム、鉱油、ビス−ジグリセリル・ポリアシルアジペート−2、アロエ・バルバデンシス・エキスおよびジャガイモたん白を含有する請求項1に記載の皮膚バリヤー組成物。
【請求項7】
肛門周囲、会陰、小孔周囲および創傷周囲の皮膚を保護するのに用いる請求項1に記載の皮膚バリヤー組成物。
【請求項8】
a.ヘキサメチルジシロキサン約20〜70.0重量%、
b.ペトロラタム約1.0〜65.0重量%、
c.ビス−ジグリセリル・ポリアシルアジペート−2約1.0〜65.0重量%、
d.鉱油約0.0〜80.0重量%、
e.アロエ・バルバデンシス・エキス約0.0〜20.0重量%、および
f.ジャガイモたん白約0.5〜30重量%
から成り、噴霧しうる皮膚バリヤー組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2007−1979(P2007−1979A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−172811(P2006−172811)
【出願日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【出願人】(391015708)ブリストル−マイヤーズ スクイブ カンパニー (494)
【氏名又は名称原語表記】BRISTOL−MYERS SQUIBB COMPANY
【Fターム(参考)】