説明

酸化セルロースおよびヒト組換えコラーゲンを含有している創傷包帯

【課題】ヒト組換えコラーゲン、および、酸化セルロースを含有している創傷包帯用組成物を提供する。
【解決手段】例えば、前記組成物は、ヒト組換えコラーゲンと酸化再生セルロース(ORC)との水分散液を凍結乾燥することにより形成されている、スポンジの形態であってよい。この組成物は、慢性の創傷の治療のために、特に適している。

【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
本発明は、酸化セルロースおよびヒト組換えコラーゲンを含有している創傷包帯用組成物、ならびに、当該組成物の創傷治癒のための使用に関連している。
【0002】
酸化セルロースは、セルロースの酸化、例えば、四酸化二窒素、により製造されている。この処理は、主に、多糖類の残基における第一アルコール基(primary alcoholic groups)を、カルボン酸基に変えて、セルロース鎖の中にウロン酸の残基を形成する。この酸化は完全な選択性を伴って進行せず、この結果として、2位および3位の炭素における水酸基が、時折、ケト型(keto form)に変換される。これらのケトン単位は、アルカリに不安定な結合(alkali labile link)を導入し、この結合は、pH7またはそれ以上で、ラクトンの形成および糖環の開裂により、そのポリマーの分解を開始する。この結果として、酸化セルロースは、生理学的な条件下において、生体分解性および生体吸収性である。
【0003】
実用的な適用のために好ましい酸化セルロースは、レーヨンのような、再生セルロースの酸化により調製される酸化再生セルロース(oxidized regenerated cellulose)(ORC)である。このORCは止血特性を有していることが、相当な期間にわたり、知られている。すなわち、ORCは、1950年以来、サージセル(SURGICEL)(ジョンソン・エンド・ジョンソン・コーポレイション(Johnson & Johnson Corporation)の登録商標)と呼ばれる止血用製品として、利用可能であった。この製品は、編まれたレーヨン材料の酸化により製造されている。
【0004】
さらに、多孔度、密度および編みパタン、の改良は、二次的なORCの布製品、すなわち、インターシード(INTERCEED)(ジョンソン・エンド・ジョンソン・コーポレイション(Johnson & Johnson Corporation)の登録商標)の発売につながり、この製品は腹部の手術における、術後の付着の程度を低減させることが示されている。
【0005】
米国特許第2517772号(US-A-2517772)(ダウブ(Doub)他)は、ORC布材(ORC fabric)にトロンビンを含浸させることにより得られた、改良された止血材料、を記載している。
【0006】
また、欧州特許公開第0437095号(EP-A-0437095)は、同様に合成された酸性のORC材料を、酢酸ナトリウムのような、弱有機酸の塩基性塩の溶液に接触させることにより調製されている、中和されたORC材料、を記載している。この結果として得られる中和された製品は、止血および付着防止のために、提示されている。
【0007】
欧州特許公開第0562862号(EP-A-0562862)は、創傷インプラントとして使用するための、生体吸収性のスポンジ材料、を記載している。この材料は、内部に配向されている基礎構造(substructure)を有する、コラーゲンのスポンジ基材、を含んでいる。この基材および/または基礎構造は酸化再生セルロースを含んでいてよい。ただし、慢性の創傷の治療のための前記のような材料の使用の開示は全くされていない。
【0008】
国際公開第98/00180号(WO98/00180)は、慢性の創傷の治療のための、酸化再生セルロース(ORC)を混合したコラーゲンの、凍結乾燥したスポンジの使用、を記載している。欧州特許公開第1153622号(EP-A-1153622)は、湿潤時および乾燥時の両方において、高い再現性および引っ張り強さを示す、ウシコラーゲン/ORCの混合物(bovine collagen/ORC mixtures)、に基いている前記の種類の無菌スポンジパッド、をさらに記載している。この欧州特許公開第1153622号(EP-A-1153622)において記載されているスポンジパッドは凍結乾燥されていて、そのスポンジの少なくとも80重量%は、60:40〜40:60の重量比率における、ウシコラーゲン(bovine collagen)と酸化再生セルロースとの混合物により、構成されている。
【0009】
前記欧州特許公開第1153622号(EP-A-1153622)に従って作られている、ORCを混合したウシコラーゲンのスポンジは、登録商標をプロモグラン(PROMOGRAN)として、エシコン・インコーポレイテッド(Ethicon, Inc.)から、市場において入手可能である。これらの製品は、特に、慢性の創傷の治療において、非常に有効である。これらの材料は天然で、生物由来(たとえ、化学的に修飾されていても)のものであり、したがって、低い抗原性を有する傾向がある。前記の材料は、一般に、生体吸収性であり、このような材料は、創傷の表面からの従来の創傷包帯の材料の除去に伴う傷害(trauma)、を軽減する。さらに、これらの材料の一部は、創傷治癒における積極的な治療効果、を有する可能性がある。
【0010】
本発明の目的は、哺乳類動物の創傷、特に、ヒトの、静脈性潰瘍、褥瘡(decubitis ulcer)および糖尿病性潰瘍等のような、慢性の創傷、のための改良された創傷包帯材料、を提供することである。このような慢性の創傷は、一般に、出血または他の体組織に対する付着を、ほとんどまたは全く、示さない。
【0011】
したがって、第1の態様において、本発明は、ヒト組換えコラーゲンおよび酸化セルロースを含む創傷包帯組成物、を提供している。凍結乾燥したスポンジの中における、ウシコラーゲンの代わりのヒト組換えコラーゲンの使用は、ウシコラーゲンを含む凍結乾燥したスポンジを用いる場合よりも大きな程度まで、ヒトの皮膚の線維芽細胞を増殖させることが、予想外に見出されている。
【0012】
好ましくは、前記の酸化セルロースは、酸化再生セルロース(ORC)、を含んでいる。この酸化再生セルロースは、米国特許第3122479号(US-A-3122479)において記載されている方法により得られ、この特許文献の全体の内容は参照により本明細書に組み込まれている。この材料は、当該材料が、生体適合性であり、生体分解性であり、非免疫抗原性(non-immunogenic)であり、かつ、容易に市場において入手可能である、という特徴、を含む多数の利点、を提供する。このORCは、異なる酸化の程度、したがって、分解の速度、を伴って、入手可能である。このORCは、織り状、不織状および編み状の布を含む、不溶性の布の形態で、使用可能である。別の実施形態において、前記ORCは、ORCのアルカリ加水分解により得られる、水溶性の低分子量のフラグメントの形態、である。
【0013】
好ましい実施形態において、前記の酸化セルロースは、好ましくは、適当な固体または半固体の局所用薬剤媒体の中に分散されている、繊維粒子または粉末粒子等のような、粒子の形態である。特に、前記の材料は、好ましくは、ORC繊維を含んでおり、この場合に、それらの繊維の少なくとも80%の容積の部分は、20μm〜1000μm、の範囲内の長さ、を有している。このような寸法分布は、例えば、ORCの布を微粉砕した後に、その微粉砕した粉末を篩い分けして範囲外の繊維を除去することにより、達成できる。好ましくは、前記のORC繊維の平均(容積平均)の長さは、250μm〜450μm、の範囲内、である。この範囲内のORC繊維の長さの選択は、その結果として、そのORCとヒト組換えコラーゲンとの混合を容易にして、高度に均質な製品を生じる。このORCがヒト組換えコラーゲンとより完全に錯化されるほど、スポンジの高められた治療特性がその結果として生じる。
【0014】
好ましくは、前記の酸化セルロースは、50,000よりも大きい平均分子量、を有している。このような酸化セルロースは創傷流体(wound fluid)の中において実質的に不溶性であるが、生理学的なpHにおいて、生体吸収性のフラグメントへの、極めてゆるやかな分解を生じる。好ましくは、前記の酸化セルロースは中和されていない。しかしながら、本発明は、前記において定義されたような、慢性の創傷の治療のための薬剤の調製について、欧州特許公開第043095号(EP-A-043095)において記載されているような、部分的にまたは完全に中和されている材料の使用、を含む。
【0015】
用語の「ヒト組換えコラーゲン(human recombinant collagen)」は、コラーゲンをコード化する少なくとも1種類のヒト遺伝子を発現するために、ヒト以外の生体を培養することにより製造されたコラーゲン、を意味する。このヒト組換えコラーゲンは、I型、II型、III型、IV型、V型、VI型、VII型、VIII型、IX型、X型、XI型、XII型、XIII型、XIV型、XV型、XVI型、XVII型、XVIII型、XIX型、XX型、XXI型、XXII型、XXIII型、XXIV型、XXV型、XXVI型、および、XXVII型の、コラーゲンからなる群から、適宜に選択される。このコラーゲンは、他の型を含まない、一つの型のコラーゲンであってもよく、または、複数の型のコラーゲンの混合物であってもよい。適宜に、前記のコラーゲンは、I型コラーゲン、III型コラーゲン、およびこれらの混合物、からなる群から選択される、コラーゲン、を含むか、または、これらのコラーゲンにより実質的に構成されている。
【0016】
ヒト組替えコラーゲンは、当業界において知られている任意の適当な方法により、供給できる。例えば、このヒト組替えコラーゲンを供給する工程は、米国特許第5,962,648号において記載されているプロトコルに従う処理を含むことができ、この特許文献の全体の内容は参照により本明細書に組み込まれている。別の組換え処理が米国特許第5,593,859号および国際公開第2004/078120号(WO2004/078120)において記載されており、これらの特許文献も参照により本明細書に組み込まれている。好ましくは、コラーゲンは、コラーゲンを含むポリペプチドをコード化する少なくとも1種類の遺伝子と、翻訳後酵素のプロリル・4−ヒドロキシラーゼ(prolyl 4-hydroxylase)の、オー・シー(oc)およびサブユニット、をコード化する遺伝子と、により、トランスフェクションされている細胞を培養して、その結果として得られるコラーゲンのモノマーを精製することにより、組換えの様式で、製造される。この組換えコラーゲンの溶液は、その後、不溶性で線維質のコラーゲンを生成するために、重合化または架橋の条件に曝すことができる。
【0017】
ウシコラーゲンは、コラーゲンI型(85%)とコラーゲンIII型(15%)と、の混合物であり、天然に定められていて、変化することのない、組み合わせ物である。一方、組換えコラーゲンの利点は、コラーゲンI型およびコラーゲンIII型が、互いに独立して作られることであり、そのため、これらのI型およびIII型の任意の組み合わせ物を作ることが可能である。本発明による製品は、任意の比率で、ヒトコラーゲン(human collagen)I型と、ヒトコラーゲンIII型と、を適当に含有できる。例えば、これらの製品は、100:0、80:20、60:40、50:50、40:60、20:80、または、0:100、あるいはこれらの間の任意の値の重量比率において、ヒトコラーゲンI型と、ヒトコラーゲンIII型と、を含有していてよい。好ましくは、前記のヒトコラーゲンI型:ヒトコラーゲンIII型の重量比率は、約50:50よりも大きく、好ましくは、約70:30よりも大きく、例えば、約80:20である。適宜に、前記I型のヒト組換えコラーゲンは、前記材料の中の、全体のヒト組換えコラーゲンの、少なくとも約75重量%、を構成している。
【0018】
本発明よる組成物は、好ましくは、ヒト組換えコラーゲンと酸化セルロースと、の完全な混合物、を含有している。好ましくは、この完全な混合物は、溶媒のような、適当な媒体の中における、ヒト組換えコラーゲンと酸化セルロースとの混合された溶液または分散液(dispersion)か、または、そのような溶液または分散液から溶媒を除去することにより作られる固体の組成物、を含む。(この分散液(dispersion)とは、媒体中の分離した固体粒子の分布状態、例えば、コロイド状分散液または剪断混合処理により形成された分散液、を意味する)。このような完全な混合物は、ヒト組換えコラーゲンのアミン基と酸化セルロースにおけるカルボキシレート基(carboxylate group)との間の、最大限の化学的な錯化、を結果として生じる。なお、全てのパーセントおよび比率は重量パーセントおよび重量比率である。
【0019】
好ましくは、前記のヒト組換えコラーゲンは、前記組成物の、少なくとも5重量%、さらに好ましくは、少なくとも10重量%、20重量%、または、30重量%、を構成している。好ましくは、前記の酸化セルロースは、前記組成物の、少なくとも5重量%、さらに好ましくは、少なくとも10重量%、20重量%、または、30重量%、を構成している。好ましくは、前記のヒト組換えコラーゲンおよび酸化セルロースは、合わせて、前記の創傷包帯材料の、少なくとも25重量%、好ましくは50重量%、または、75重量%を構成し、一部の実施形態においては、前記材料の少なくとも90重量%、を構成している。また、特定の好ましい実施形態において、前記の材料は、ヒト組換えコラーゲンと酸化セルロースとにより、実質的に構成されている。
【0020】
前記の、本発明による材料の別の成分は、0〜25重量%の、例えば、約1〜約20重量%の、例えば、アルギン酸ナトリウムまたはアルギン酸カルシウム等のようなアルギネート、デンプングリコール酸ナトリウム(sodium starch glycolate)等のようなデンプン誘導体、メチルセルロースまたはカルボキシメチルセルロース等のようなセルロース誘導体、または、ヒアルロン酸もしくはその塩、コンドロイチン硫酸、もしくはヘパラン硫酸等のようなグリコサミノグリカン等の、1種類以上の他の生体適合性の多糖類、を含んでいてよい。また、本発明による材料は、約25重量%までの、例えば、約1〜約20重量%の、フィブロネクチン、フィブリン、ラミニン、エラスチン、ヒト組換えコラーゲン以外のコラーゲン、およびこれらの混合物、からなる群から選択される、1種類以上の付加的な構造タンパク質、を含んでいてもよい。
【0021】
前記の、本発明による材料はまた、約20重量%までの、好ましくは約2〜約10重量%の水も含んでいてよい。さらに、本発明による材料は、0〜40重量%の、例えば、約5〜約25重量%の可塑剤、好ましくは、グリセロールまたはソルビトール等のような、多価アルコール、も含有していてよい。
【0022】
特定の実施形態において、本発明による材料は、約10重量%までの、例えば、約0.01〜約5重量%、一般的に、約0.1〜約2重量%の、非ステロイド系の抗炎症薬(例えば、アセトアミノフェン)、ステロイド、局所麻酔薬、抗菌剤、または、増殖因子(例えば、線維芽細胞増殖因子、または、血小板由来増殖因子)等のような、1種類以上の治療用の創傷治癒剤、も含有していてよい。前記の抗菌剤は、例えば、防腐薬、抗生物質、または、これらの混合物、を含むことができる。好ましい抗生物質は、テトラサイクリン、ペニシリン、テラマイシン、エリスロマイシン、バシトラシン、ネオマイシン、ポリマイシンB(polymycin B)、ムピロシン(mupirocin)、クリンダマイシン、および、これらの混合物、を含む。好ましい防腐薬は、コロイド状銀(colloidal silver)を含む銀、前記材料を構成している1種類以上のアニオン性ポリマーの塩を含む銀塩、スルファジアジン銀、クロルヘキシジン、ポビドンヨード、トリクロサン(triclosan)、スクラルファート、第四級アンモニウム塩、および、これらの混合物、を含む。前記の、本発明による薬物添加された創傷包帯材料は、この創傷包帯材料が使用中に分解していくにしたがって、前記の治療剤の持続された放出、を行なう。
【0023】
なお、前記のパーセントの全ては、乾燥状態の重量に基いている。
【0024】
好ましくは、前記のヒト組換えコラーゲンと酸化セルロースとの重量比率は、約1:99〜約99:1である。さらに好ましくは、前記の重量比率は、約1:9〜約9:1の範囲内、さらに好ましくは、約4:1〜約1:4の範囲内、さらに好ましくは、約2:1〜約1:2の範囲内、および、最も好ましくは、約60:40〜約50:50、のヒト組換えコラーゲン:酸化セルロース、の範囲内である。特定の実施形態において、前記材料は、乾燥状態の重量に基いて、約55重量%のヒト組換えコラーゲンと、約45重量%の酸化セルロースと、により本質的に構成されている。
【0025】
本発明による組成物は、粉末、微小球(microsphere)、フレーク、マットまたはフィルム等のような、任意の好都合な形態であってよい。
【0026】
特定の実施形態において、本発明による組成物は、局所的な供給のための、半固体またはゲルの軟膏、の形態である。
【0027】
特定の実施形態において、本発明による組成物は、慢性の創傷に対する供給のための、凍結乾燥した、または、溶媒乾燥した(solvent-dried)、生体吸収性のスポンジ、の形態である。好ましくは、前記スポンジの平均の気孔寸法は、10μm〜500μm、さらに好ましくは、約100μm〜300μm、の範囲内、である。適当なスポンジは、適当な治療剤を伴って、ヒト組換えコラーゲンの粒子または繊維と、ORCの繊維と、により本質的に構成されている水分散液、を凍結乾燥または溶剤乾燥することにより、作製されている。
【0028】
適宜に、前記の本発明による材料は、欧州特許公開第1153622号(EP-A-1153622)において記載されているような、実質的に、ヒト組換えコラーゲンとORCとの凍結乾燥したスポンジであり、この特許文献の全体の内容は参照により本明細書に組み込まれている。
【0029】
さらに別の実施形態において、前記の本発明による組成物は、柔軟なフィルムの形態であり、この形態は、連続的(continuous)であっても、断続的(interrupted)であってもよい(例えば、穴あけされている)。さらに、この柔軟なフィルムは、好ましくは、グリセロールのような、そのフィルムを柔軟にするための、可塑剤を含有している。
【0030】
第2の態様において、本発明は、本発明の第1の態様による創傷包帯用組成物、を含んでいる創傷包帯、を提供している。この創傷包帯は、本発明による創傷包帯材料により、本質的に構成することができ、例えば、この創傷包帯は前記の材料のシートにより構成することができ、この場合に、この包帯は、通常において、適当な二次的な包帯と共に、使用されることになる。
【0031】
前記の創傷包帯は、好ましくは、シートの形態であり、本発明による組成物の活性な層を含んでいる。この活性な層は、通常において、使用中に、創傷接触用の層になるが、一部の実施形態においては、この活性な層は、液体透過性の上部シートにより、創傷から分離することも可能である。好ましくは、前記の活性な層の面積は、約1cm2 〜約400cm2 、さらに好ましくは、約4cm2 〜約100cm2 、である。
【0032】
好ましくは、前記の物品は、前記の活性な層の創傷対向面と反対の側に、その活性な層の上に延在している裏当てシート(backing sheet)、をさらに備えている。また、好ましくは、この裏当てシートは、いわゆる島型包帯を形成するために、前記の活性な層の周囲に、1mm〜50mm、好ましくは、5mm〜20mmの幅の周辺領域が延在するように、前記の活性な層よりも大きい。このような場合に、この裏当てシートは、好ましくは、少なくともその周辺領域の中において、感圧の医療用接着剤が塗布されている。
【0033】
好ましくは、前記の裏当てシートは実質的に液体不透過性である。また、この裏当てシートは、好ましくは、半透過性である。すなわち、この裏当てシートは、好ましくは、水蒸気に対して透過性であるが、液体の水または創傷の滲出液に対して不透過性である。好ましくは、前記裏当てシートはまた、微生物不透過性でもある。
【0034】
前記の裏当てシートを形成するための適当なポリマーは、英国特許第1280631号(GB-A-1280631)において記載されているもの等のような、ポリウレタン、ならびに、ポリアルコキシアルキルアクリレートおよびポリアルコキシアルキルメタクリレート(polyalkoxyalkyl acrylates and methacrylates)、を含む。好ましくは、前記の裏当てシートは、主に、独立気泡型である高密度ブロックド・ポリウレタン発泡体(high density blocked polyurethane foam)の、連続的な層を含んでいる。適当な裏当てシートの材料は、登録商標をエスタン5714F(ESTANE 5714F)として、入手可能である、ポリウレタンフィルムである。
【0035】
前記の接着剤層(存在する場合)は、水蒸気透過性であり、かつ/または、この層の水蒸気の通過を可能にするようにパタン化されている必要がある。この接着剤層は、好ましくは、島型の創傷包帯のために従来から用いられている種類の、連続的な水蒸気透過性の、感圧接着剤の層である。ポリウレタン基材型の感圧接着剤が好ましい。
【0036】
前記の包帯は、特に、その包帯が滲出している創傷の上において使用するためのものである場合に、その活性な層と保護シートとの間に、吸収剤の層、をさらに含んでいてもよい。この任意の吸収剤の層は、ガーゼ、不織布、超吸収剤(superabsorbent)、ヒドロゲル、およびこれらの混合物、を含む、創傷治癒の技術において、創傷流体、血清、または、血液を吸収するために従来から用いられている層の任意のもの、であってよい。適宜に、前記吸収剤の1つ以上の層は、前記のヒト組換えコラーゲン/ORCの層と共に、実質的に同一の広がりを有する。
【0037】
前記包帯の創傷対向面は、除去可能なカバーシートにより、保護されていてもよい。このカバーシートは、通常において、柔軟な熱可塑性材料により、形成されている。適当な材料は、ポリエステル、および、ポリオレフィン、を含む。好ましくは、このカバーシートの接着剤対向面は剥離面である。すなわち、この剥接着剤対向面は、カバーシートの除去を補助するために、前記接着剤層と前記裏当てシートの上の接着剤とに対して、弱い接着性しかない面である。例えば、前記のカバーシートは、フルオロポリマー等のような、非接着性のプラスチックにより形成可能であり、あるいは、このカバーシートは、シリコーンまたはフルオロポリマーの剥離用の被膜等のような、剥離用の被膜、を備えていてもよい。
【0038】
好ましくは、本発明の創傷包帯は無菌であり、微生物不透過性の容器の中に包装されている。
【0039】
さらに別の態様において、本発明は、創傷の治療のための包帯の調製のための本発明の第1の態様による創傷包帯用組成物、の使用、を提供している。好ましくは、この創傷は慢性の創傷、例えば、静脈性潰瘍、褥瘡、および、糖尿病性潰瘍、からなる群から選択される創傷、である。
【0040】
さらに別の態様において、本発明は、線維芽細胞を本発明の創傷包帯材料に接触させる処理を含む、線維芽細胞を増殖させる方法、を提供している。好ましくは、この線維芽細胞は皮膚線維芽細胞である。さらに好ましくは、この線維芽細胞はヒト線維芽細胞である。前記の方法は、生体内または生体外のいずれにおいても、行なうことが可能である。好ましくは、前記の方法は、ウシコラーゲンにより作製されている同一種の創傷包帯材料により達成される線維芽細胞の増殖よりも、多量の線維芽細胞の増殖を達成する。適宜に、以下において記載されているように測定されている線維芽細胞の増殖における増加は、負の対照と正の対照との間の差の、約40%よりも多く、好ましくは、この増加は前記対照の差の約50%よりも多い。
【0041】
さらに別の態様において、本発明は、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMPs)を本発明の創傷包帯材料に接触させる処理を含む、マトリックスメタロプロテイナーゼを不活性化させる方法、を提供している。この方法は、生体内または生体外のいずれにおいても、行なうことが可能である。
【0042】
さらに別の態様において、本発明は、褥瘡、静脈性潰瘍および糖尿病性潰瘍等のような、哺乳類動物における慢性の創傷の治療の方法、を提供している。この方法は、創傷に対して、本発明による創傷包帯材料を適用する処理、を含む。
【0043】
好ましくは、前記の包帯は、少なくとも1時間、さらに好ましくは、少なくとも6時間、最も好ましくは、少なくとも12時間、の期間にわたり、前記の慢性の創傷に適用される。この治療は、数日間または数週間にわたり、延長可能であり、慢性の創傷に対して必要であれば、その包帯は適宜に交換される。このことは、ORCの止血の適用と対照的であり、この適用は、数秒または数分しか、継続しない。
【0044】
いずれの理論にも束縛されることを望むことなく、ヒト組換えコラーゲン/酸化セルロースの組成物は、以下の方法の少なくとも一部において、慢性の創傷の治癒、を助長する、と考えられる。第1に、前記の錯体は、創傷の部位に、PDGF、EGFおよびFGF等のような増殖因子を保持するために、これらの増殖因子に結合する。そうでなければ、これらの増殖因子は、創傷の滲出液と共に、創傷の部位から運び去られる傾向がある。その後、生理学的なpHにおける、ヒト組換えコラーゲン/酸化セルロースのゆるやかな分解は、創傷の中への前記の増殖因子のゆるやかな放出、を結果として生じる。第2の理由は、前記の材料は完全に生体吸収性で生理学的に許容可能であることである。さらに別の理由は、前記の材料は皮膚線維芽細胞の増殖を助長することである。さらに別の理由は、前記の材料は、慢性の創傷の流体の中に高められた量で存在していて、不十分な創傷の治癒の起因となる、特定のホスト由来プロテアーゼ酵素(マトリックスメタロプロテイナーゼ)、を不活性にすることである。
【0045】
本発明において用いられている、ヒト組換えコラーゲン/酸化セルロース、の錯体は、ヒト組換えコラーゲンの分散液を、適当な溶媒、好ましくは、水分散液、の中に、供給する工程と、酸化セルロースを前記の溶媒の中に浸漬または分散させる工程と、これに続いて、酸化セルロースにより錯化されたヒト組換えコラーゲンを含む固体材料を残すように、前記の分散液から溶媒を除去する工程と、を含む方法、により作ることができる。
【0046】
前記の酸化セルロースは、好ましくは、前記のヒト組換えコラーゲンの懸濁液と同等のpHにおいて、酸化セルロースの懸濁液または溶液の形態で、そのヒト組換えコラーゲンの水分散液に加えた後に、攪拌または均質化により、混合できる。あるいは、酸化セルロースの乾燥状態の繊維または布を、ヒト組換えコラーゲンの水分散液の中に、分散または浸漬させてもよい。
【0047】
本発明による材料の中の、前記の任意の付加的な成分は、好ましくは、前記の分散液からの溶媒の除去の前に、その分散液の中に含まれている。
【0048】
好ましくは、前記分散液のpHは、約1〜約10、好ましくは約2〜約8のpH、の範囲内に調節されている。酸化セルロースは、高いpHにおいて、加水分解を受けて、可溶性のフラグメントになる。
【0049】
前記の溶媒は、材料のフィルムを残すように、蒸発(evaporation)、例えば、トレイにおける分散液からの蒸発により、前記分散液から除去できる。別の実施形態において、前記溶媒、好ましくは水、は、スポンジの形態の材料を製造するために、凍結乾燥(freeze-drying)(冷凍乾燥(lyophilizing))、または、溶媒乾燥により、除去される。好ましくは、前記溶媒の分散液は、5mg/mL〜30mg/mLのヒト組換えコラーゲン、を含有している。
【0050】
特定の実施形態において、前記方法は、エピクロリドリン、カルボジイミド、ヘキサメチレンジイソシアネート(hexamethylene diisocyanate)(HMDI)またはグルタルアルデヒド等のような、架橋剤により、前記の分散液の中の、あるいは、乾燥させた材料の中の、ヒト組換えコラーゲンおよび/または酸化セルロース、を処理する工程、をさらに含んでいてもよい。
【0051】
あるいは、前記の架橋は脱水熱的(dehydrothermally)に行なってもよい。この架橋の方法はその最終生産物に著しく影響する可能性がある。例えば、HMDIは、前記錯体の中のヒト組換えコラーゲンにおける第一級アミノ基を架橋するが、カルボジイミドは、ORCにおける炭水化物を、ヒト組換えコラーゲンにおける第一級アミノ基に、架橋する。
【0052】
本発明のいずれかの一つの態様に関連して前述されている任意の付加的なまたは代替的な特徴は、単独または組み合わせのいずれかにおいて、本発明のいずれかの他の態様に関連している代替的なまたは付加的な特徴でもあるということは、理解されるであろう。
【0053】
次に、例として、本発明の具体的な実施形態がさらに説明されている。
【0054】
参考例1:ウシコラーゲン/繊維質ORCのスポンジの調製
凍結乾燥した、コラーゲン/ORCのスポンジを以下のように調製した。
【0055】
最初に、以下のように、ウシの真皮から、コラーゲン成分を調製した。ウシの真皮を雌牛の皮から剥ぎ取り、擦り取って、その後の処理の間における微生物の活性を抑制するために、次亜塩素酸ナトリウム溶液(0.03%(重量/容量))の中に浸した。その後、この真皮を水により洗浄してから、この真皮を、周囲温度において、膨潤させて滅菌するために、水酸化ナトリウム(0.2%(重量/容量))および過酸化水素(0.02%(重量/容量))を含有している溶液により処理した。その後、これらの真皮片は、0.24mmol/gよりも低いアミド窒素の量に到達するまで、ひっくり返しながら、10〜14日の時間にわたり、周囲温度において、12.2よりも高いpHで、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、および、炭酸水素ナトリウム(sodium bicarbonate)(それぞれ、0.4%(重量/容量)、0.6%(重量/容量)、および、0.05%(重量/容量))を含有している溶液の中におけるアルカリ処理工程を受けた。その後、これらの真皮片は、周囲温度およびpH0.8〜pH1.2において、1%塩酸による、酸処理工程を受けた。この処理は、真皮片が十分な酸を吸収して、2.5よりも低いpHに到達するまで、ひっくり返しながら、継続される。その後、真皮片を、これらの真皮片のpH値が3.0〜3.4に到達するまで、水により洗浄した。次に、これらの真皮片を、最初に粗粉砕(coarse comminution)の設定で、次に、微細粉砕(fine comminution)の設定により、ボールチョッパー(bowl chopper)の中において、氷と共に、粉砕した。この結果として得られた、氷としての100gの水に対して650gの真皮片の比率で構成されている、ペーストは、処理の次の段階において使用される前に、凍結されて貯蔵される。しかしながら、コラーゲンは、次の段階におけるORCとの混合の前においては、凍結乾燥されない。
【0056】
凍結乾燥したパッドのORC成分は以下のように調製されている。サージセル(SURGICEL)の布(ジョンソン・エンド・ジョンソン(Johnson & Johnson)、アーリントン所在(Arlington))を、温度を60℃よりも低く維持しながら、スクリーンプレートを通して、ロータリーナイフカッターを用いて、微粉砕する。
【0057】
前記の微粉砕したORCの粉末と必要とされる重量(固体含有量による)の凍結したコラーゲンペーストを、その後に、3.0のpH値と1.0%の合計の固形物含有量とを得るために、酢酸により酸性化されている、十分な量の水、に加える。この混合物を、均質なスラリーを形成するように設定を次第に小さくしながら、フライマ(Fryma)MZ130Dホモジナイザーにより、均質化する。このスラリーのpHを2.9〜3.1に維持する。また、スラリーの温度は20℃よりも低く維持され、固形物含有量は1%±0.07%に維持される。
【0058】
前記の結果として得られたスラリーを脱気容器にポンプ輸送する。このスラリーを脱気するために、断続的な攪拌を伴って、真空が、最小限で30分間にわたり、開始される。その後、このスラリーを、25mmの深さまで、凍結乾燥装置のトレイの中に、ポンプ注入する。これらのトレイは、温度が−40℃に予め設定されている冷凍庫(freezer)の棚の上に、置かれる。次に、コラーゲンおよびORCを乾燥して脱水熱的に架橋させることにより、厚いスポンジパッドを形成するように、凍結乾燥装置のプログラムを開始する。この工程の完了時に、真空を解除し、凍結乾燥されたブロックを、取り出してから、上部および下部の表面層を除去して、それらのブロックの残りの部分を3mmの厚さのパッドに分割するために、切り裂く。前記の凍結乾燥されたブロックをパッドに切り裂く工程は、フェッケン・キルフェルK1(Fecken Kirfel K1)スリッターにより、行なわれる。最終的に、これらのパッドは、ダイカッターの上で、所望の寸法および形状に、ダイで切断されて、18〜29KGyのコバルト60のガンマ線照射により、滅菌される。予想外に、この照射はコラーゲンの著しい変性を引き起こさず、このコラーゲンは、ORCの存在により、安定化されていると思われる。この結果として得られた、凍結乾燥されたORCのパッドは、均一な、白色の、滑らかで柔らかい外観、を有している。これらのパッドの厚さは3.2mm±0.17mm(N=8バッチ)である。これらのパッドは、以下において記載されている手順において、正の対照として、用いられている。
【0059】
実施例1:ヒト組換えコラーゲン/繊維質ORCのスポンジの調製
ヒト組換えコラーゲン/繊維質ORCのスポンジを、参考例1において記載されているように、調整したが、そのコラーゲンを、等量のヒト組換えコラーゲンのフラクションにより、置き換えている。このヒト組換えコラーゲンは、カリフォルニア州、94080、サウス・サン・フランシスコ、ゲートウエイ・ブールバード225(225 Gateway Boulevard, South San Francisco, California, 94080)所在の、フィブロゲン・インコーポレイテッド(Fibrogen Inc.)から、入手されている。このコラーゲンは、遺伝的に修飾されている酵母により製造され、前記ウシの材料の密度(consistency)と同等の密度を達成するために、架橋されている。また、このヒト組換えコラーゲンは、トリプシン消化の受けやすさにおいて、ウシコラーゲンと同等である。I型:III型の、ヒト組換えコラーゲン、の異なる比率を伴う多数の異なるスポンジを作製した。
【0060】
手順1:ヒト皮膚線維芽細胞の増殖アッセイ
ヒト皮膚線維芽細胞の増殖アッセイを以下のように行なった。
【0061】
基本型抽出物を以下のように調製した。1mgの試験するそれぞれの創傷包帯材料を、1mLの無血清培地の中に置いて、無菌条件下に、37℃において、24時間にわたり、培養した。
【0062】
成人のヒト皮膚線維芽細胞を、DMEM(10%FBS)(標準培養培地:ダルベッコ基礎培地(Dulbecco's miminal essential medium):ウシ胎児血清)の中において、増殖して維持した。これらの細胞を、規定どおりに、継代培養して、95%の集密度(confluent)の時に、実験的試験のために用いた。成人のヒト皮膚線維芽細胞を95%の集密度において集めて、2.5×104個の細胞/mLの細胞密度で、DMEM+10%FBS中において、96ウェル型のマイクロタイタープレート(100mL/ウェル)の中に再接種した。これらの細胞を、37℃、5%CO2において、加湿した培養器の中で、24時間にわたり、プレート表面に付着させた。その後、培地を吸引により除去して、細胞の単一層を無血清DMEMにより洗った。
【0063】
次に、前記の試験サンプル(それぞれの基本型の抽出物)を前記細胞の単一層に加えた(100mL/ウェル)。それぞれの試験サンプルの6個の複製物を測定した。全てのサンプルを、37℃、5%CO2において、48時間にわたり、前記の細胞と共に、培養した。この培養期間の後に、前記の順化培地を吸引により除去して、市販の細胞増殖キット(ベーリンガー・マンハイム(Boehringer Mannheim)から入手される、XTT,細胞増殖キットII(XTT, Cell Proliferation kit II)、カタログ番号:1,465,015)からの、標識用溶液により置き換えた。この溶液を添加した後に、450nmにおいて、初期の吸光度の読取値を得てから、前記のマイクロタイタープレートを、37℃、5%CO2において、培養し、吸光度を4時間にわたりモニターした。これらの吸光度の測定は、サーモラブシステムズ・マルチスカン・スペクトラム(Thermolabsystems Multiskan Spectrum)装置において、行なった。
【0064】
それぞれの基本型の増殖効果を、前記の測定した吸光度の読取値を、正および負の対照に対して比較することにより、評価した。この場合に、血清を含有している培地(DMEM中の10%FBS)を正の対照として用い、無血清の培地を負の対照として用いた。これらの結果が表1において示されている。この場合に、ヒト皮膚線維芽細胞の増殖における測定された効果は、負の対照(0%における)と正の対照(100%における)との間の、細胞増殖における増加のパーセント値として、表現されている。
【0065】
【表1】

【0066】
したがって、参考例1は、負の対照に対して、線維芽細胞の増殖においてわずかな増加を示しているが、その増加は、正の対照により達成される増加の20%のみであることが分かる。これに対して、本発明による組成物は、正の対照により達成される線維芽細胞の増殖における増加の、55.1%〜91.4%、を達成している。
【0067】
表1において示されている細胞増殖のデータは、ヒト組換え型配合物の全てが、参考例1のウシコラーゲンの等価物よりも、性能が優れているということを示している。
【0068】
手順2:マトリックスメタロプロテイナーゼの抑制
6人の異なる患者からの創傷流体の凍結したサンプルを解凍して適宜に希釈した。
【0069】
創傷包帯サンプルは、凍結乾燥したシート材料から得た、6mmの直径のパンチ生検のサンプル(biospy punch sample)であった。以下の試験手順において、参考例1において記載されているように調製された、コラーゲン/ORCのスポンジのサンプルを、正の対照として用いた。SOF−WICK(登録商標)ガーゼを、負の対照として用いた。
【0070】
前記の包帯サンプルを、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)の中に、数秒間にわたり、予め浸漬して、前記の創傷流体のそれぞれのサンプルに、これらの包帯サンプルを加える前に、わずかな圧力により、過剰の食塩水を除去した。次に、それぞれの創傷流体を、37℃において、包帯サンプルと共に、培養した。その後、これらの培養した創傷流体のサンプルを、時間点、T=30分およびT=60分、において、採取した。
【0071】
次に、前記の創傷流体サンプル中に存在しているマトリックスメタロプロテイナーゼの活性のレベルを、基質活性アッセイを用いて、分光蛍光測定により測定した。これらの基質は、適当な酵素開裂部位(enzyme cleavage site)に似るように合成した短いペプチドを含有しており、加水分解時に放出される蛍光レポーター基(fluorescent reporter group)を含んでいる。これにより、酵素の活性を、分光蛍光測定用の化合物である、7−アミノ4−メチルクマリン(7-amino 4-methyl coumarin)、の生成の速度を測定することにより、決定した。活性は、いずれも、相対蛍光単位/分(relative fluorescence unit per minute)(RFU/分)として、表現されている。それぞれのサンプルを6回試験して、その平均値を計算した。前記の基質は10mMの貯蔵濃度において調製されていて、適当なアッセイ用緩衝液の中において0.5mMの使用濃度に希釈されている。これにより、一つのマイクロタイターウェル(黒色、平底型)の中において混合された、反応混合物は、5μLの創傷流体、175μLのアッセイ用緩衝液、および20μLの基質(最終濃度:50μM)、を含んでいる。このマイクロタイタープレートを、455nm(励起:383nm)において速やかに読み取り、かつ、次の時間まで間隔をあけて読み取り、これらの読み取りの間に、プレートを覆い、37℃において培養した。この結果、マトリックスメタロプロテイナーゼ様の活性が、メタノール中に可溶化された、スクシニル−グリシン−プロリン−ロイシン−グリシン−プロリン7−アミノ4−メチルクマリン基質(the substrate Succinyl-Glycine-Proline-Leucine-Glycine-Proline 7-amino 4-methyl coumarin)(バッケム,UKリミテッド(Bachem, UK, Ltd.))を用いて、評価されている。また、最大のMMP活性のために必要なアッセイ用緩衝液は、200mMのNaClおよび10MのCaCl2を含有している、40mMのトリス/HCl(Tris/HCL)(pH7.4)であった。蛍光測定は、ダイネクス・テクノロジーズ・フルオロライト1000(Dynex Technologies Fluorolite 1000)装置において、行なった。
【0072】
前記の結果は、表2(T=30分に対応)および表3(T=60分に対応)において、示されている。これらの表は、6種類の創傷流体サンプルについてのRFU/分における測定されたMMPの活性(それぞれ、各表の行1〜6)と、RFU/分における平均値(行7)と、残りのMMPの活性のパーセント値(行8)と、を示している。
【0073】
本発明による、異なる配合物に対応するMMPの抑制において、わずかな変化しか観察されなかった。しかしながら、ヒトのI型:III型における80:20の配合物は、他のものよりも、良好であった。本発明による材料によるMMPの抑制は、参考例1(ウシコラーゲンを含有している)の材料において得られる抑制よりも、明らかに、わずかに少ないが、その差は、有意差があるとは考えられない。
【表2】

【表3】

【0074】
前記の例は、例示のみの目的のために、示されている。添付の特許請求の範囲に該当する多くの他の実施形態は、熟練した読者には、明らかになるであろう。
【0075】
〔実施の態様〕
(1)創傷包帯用組成物において、
ヒト組換えコラーゲンと、
酸化セルロースと、
を含有している、創傷包帯用組成物。
(2)実施態様1に記載の創傷包帯用組成物において、
前記ヒト組換えコラーゲン、および前記酸化セルロースは、前記創傷包帯用組成物の中に完全に混合されている、創傷包帯用組成物。
(3)実施態様1または2に記載の創傷包帯用組成物において、
前記酸化セルロースは、分散されている繊維、または、分散されている粉末、の形態である、創傷包帯用組成物。
(4)実施態様1〜3のいずれかに記載の創傷包帯用組成物において、
前記酸化セルロースは、酸化再生セルロース(oxidized regenerated cellulose)(ORC)を含む、創傷包帯用組成物。
(5)実施態様1〜4のいずれかに記載の無菌の凍結乾燥したスポンジにおいて、
前記ヒト組換えコラーゲンは、I型ヒト組換えコラーゲン、III型ヒト組換えコラーゲン、および、これらの混合物、から選択される、無菌の凍結乾燥したスポンジ。
【0076】
(6)実施態様5に記載の無菌の凍結乾燥したスポンジにおいて、
約50:50〜約100:0、好ましくは約70:30〜約90:10の比率で、I型ヒト組換えコラーゲン、および、III型ヒト組換えコラーゲン、を含有している、無菌の凍結乾燥したスポンジ。
(7)実施態様1〜6のいずれかに記載の創傷包帯用組成物において、
前記酸化セルロース、および前記ヒト組換えコラーゲンは合わせて、乾燥重量に基いて、前記材料の少なくとも25重量%を構成している、創傷包帯用組成物。
(8)実施態様7に記載の創傷包帯用組成物において、
前記酸化セルロース、および前記ヒト組換えコラーゲンは合わせて、乾燥重量に基いて、前記材料の少なくとも50重量%を構成している、創傷包帯用組成物。
(9)実施態様1〜8のいずれかに記載の創傷包帯用組成物において、
前記組成物が、1種類以上の創傷治癒治療用の物質を、乾燥重量に基いて、約0.01〜約5重量%で、さらに含有している、創傷包帯用組成物。
(10)実施態様1〜9のいずれかに記載の創傷包帯用組成物において、
前記ヒト組換えコラーゲンと前記酸化セルロースとの重量比率は、1:10〜10:1である、創傷包帯用組成物。
【0077】
(11)実施態様10に記載の創傷包帯用組成物において、
前記ヒト組換えコラーゲンと前記酸化セルロースとの重量比率は、1:4〜4:1の範囲である、創傷包帯用組成物。
(12)創傷包帯において、
実施態様1〜11のいずれかに記載の創傷包帯用組成物、
を含有している、創傷包帯。
(13)実施態様12に記載の創傷包帯において、
前記創傷包帯は、無菌であり、かつ、微生物不透過性の容器の中に包装されている、創傷包帯。
(14)実施態様1〜11のいずれかに記載の創傷包帯用組成物の使用において、
創傷の治療のための包帯の調製のための、使用。
(15)実施態様14に記載の使用において、
前記創傷は、慢性の創傷である、使用。
【0078】
(16)実施態様15に記載の使用において、
前記慢性の創傷は、静脈性潰瘍、褥瘡、および、糖尿病性潰瘍、からなる群から選択される、使用。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
創傷包帯用組成物において、
ヒト組換えコラーゲンと、
酸化セルロースと、
を含有している、創傷包帯用組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の創傷包帯用組成物において、
前記ヒト組換えコラーゲン、および前記酸化セルロースは、前記創傷包帯用組成物の中に完全に混合されている、創傷包帯用組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の創傷包帯用組成物において、
前記酸化セルロースは、分散されている繊維、または、分散されている粉末、の形態である、創傷包帯用組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の創傷包帯用組成物において、
前記酸化セルロースは、酸化再生セルロース(ORC)を含む、創傷包帯用組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の無菌の凍結乾燥したスポンジにおいて、
前記ヒト組換えコラーゲンは、I型ヒト組換えコラーゲン、III型ヒト組換えコラーゲン、および、これらの混合物、から選択される、無菌の凍結乾燥したスポンジ。
【請求項6】
請求項5に記載の無菌の凍結乾燥したスポンジにおいて、
約50:50〜約100:0、好ましくは約70:30〜約90:10の比率で、I型ヒト組換えコラーゲン、および、III型ヒト組換えコラーゲン、を含有している、無菌の凍結乾燥したスポンジ。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の創傷包帯用組成物において、
前記酸化セルロース、および前記ヒト組換えコラーゲンは合わせて、乾燥重量に基いて、前記材料の少なくとも25重量%を構成している、創傷包帯用組成物。
【請求項8】
請求項7に記載の創傷包帯用組成物において、
前記酸化セルロース、および前記ヒト組換えコラーゲンは合わせて、乾燥重量に基いて、前記材料の少なくとも50重量%を構成している、創傷包帯用組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の創傷包帯用組成物において、
前記組成物が、1種類以上の創傷治癒治療用の物質を、乾燥重量に基いて、約0.01〜約5重量%で、さらに含有している、創傷包帯用組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の創傷包帯用組成物において、
前記ヒト組換えコラーゲンと前記酸化セルロースとの重量比率は、1:10〜10:1である、創傷包帯用組成物。
【請求項11】
請求項10に記載の創傷包帯用組成物において、
前記ヒト組換えコラーゲンと前記酸化セルロースとの重量比率は、1:4〜4:1の範囲である、創傷包帯用組成物。
【請求項12】
創傷包帯において、
請求項1〜11のいずれかに記載の創傷包帯用組成物、
を含有している、創傷包帯。
【請求項13】
請求項12に記載の創傷包帯において、
前記創傷包帯は、無菌であり、かつ、微生物不透過性の容器の中に包装されている、創傷包帯。
【請求項14】
請求項1〜11のいずれかに記載の創傷包帯用組成物の使用において、
創傷の治療のための包帯の調製のための、使用。

【公開番号】特開2007−160092(P2007−160092A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−332282(P2006−332282)
【出願日】平成18年12月8日(2006.12.8)
【出願人】(591286579)エシコン・インコーポレイテッド (170)
【氏名又は名称原語表記】ETHICON, INCORPORATED
【Fターム(参考)】