説明

酸化タングステン粒子分散液の製造方法、貴金属担持酸化タングステン粒子分散液の製造方法、及び光触媒体機能製品。

【課題】本発明によれば、分散媒中への酸化タングステン粒子の分散性が優れ、保管していても固液分離が生じない酸化タングステン粒子分散液を提供することである。
【解決手段】工程(a)、(b)を有する酸化タングステン粒子分散液を製造する方法であり、分散処理は、混合物中にアルカリ性化合物を添加しながら、湿式媒体撹拌ミルを使用して行われることを特徴とする酸化タングステン粒子分散液の製造方法。
(a)酸化タングステン粒子と分散媒を混合して混合物を得る。
(b)混合物を分散処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化タングステン粒子分散液の製造方法、貴金属担持酸化タングステン粒子分散液の製造方法、並びに、これら製造方法で得られる酸化タングステン粒子分散液または貴金属担持酸化タングステン粒子分散液を用いて得られる光触媒体機能製品に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体にバンドギャップ以上のエネルギーを持つ光を照射すると、価電子帯の電子が伝導帯に励起され、価電子帯に正孔が生成する。このようにして生成した正孔は強い酸化力を有し、励起した電子は強い還元力を有することから、半導体に接触した物質に酸化還元作用を及ぼす。この酸化還元作用は光触媒作用と呼ばれており、かかる光触媒作用を示し得る半導体は光触媒体と呼ばれている。このような光触媒体として酸化タングステンが知られている。酸化タングステンは蛍光灯の照明下で高い光触媒作用を示す光触媒体である。
【0003】
光触媒体を各種部材等へ使用するには、分散媒に光触媒体を分散させた光触媒体分散液を各種部材等へ塗布することが便利であるが、分散媒に酸化タングステン粒子を分散させた酸化タングステン粒子分散液は、酸化タングステン粒子の分散媒への分散性が低く、酸化タングステン粒子同士の凝集等が生じることがある。
【0004】
特許文献1には、酸化タングステン粒子と分散媒とを含む光触媒分散体(酸化タングステン粒子分散液)であって、酸化タングステン粒子の表面を水酸基に置き換えてゼータ電位の絶対値を大きくし、分散性を向上させるために、分散媒のpHを2.1〜5.7の範囲内とした光触媒分散体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−240979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の光触媒分散体は、酸化タングステン粒子の分散性が十分ではなく、該光触媒分散体を保管していると、酸化タングステン粒子の凝集に伴う固液分離が生じることがわかった。
【0007】
そこで本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、以下の構成からなる製造方法により製造される酸化タングステン粒子分散液が、分散媒中への酸化タングステン粒子の分散性が優れ、保管していても固液分離が生じないことを見出し、本発明を完成するに至った。
(1)工程(a)、(b)を有する酸化タングステン粒子分散液を製造する方法であり、分散処理は、混合物中にアルカリ性化合物を添加しながら、湿式媒体撹拌ミルを使用して行われることを特徴とする酸化タングステン粒子分散液の製造方法。
(a)酸化タングステン粒子と分散媒を混合して混合物を得る。
(b)混合物を分散処理する。
(2)酸化タングステン粒子の含有量が、酸化タングステン粒子分散液100重量部に対し、15〜50重量部である前記(1)に記載の製造方法。
(3)前記(1)または(2)のいずれかに記載の製造方法により得られる酸化タングステン粒子分散液に、貴金属の前駆体を添加し、次いで酸化タングステン粒子のバンドギャップ以上のエネルギーを有する光を照射する貴金属担持酸化タングステン粒子分散液の製造方法。
(4)貴金属がCu、Pt、Au、Pd、Ag、Ru、Ir及びRhからなる群より選ばれる少なくとも1種である前記(3)に記載の製造方法。
(5)基材表面に光触媒体層を備える光触媒機能製品であって、前記光触媒体層が、前記(1)〜(4)のいずれかに記載の製造方法で得られる分散液を用いて形成される光触媒機能製品。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、分散媒中への酸化タングステン粒子の分散性が優れ、保管していても固液分離が生じない酸化タングステン粒子分散液を提供することが出来る。また、本発明によれば、酸化タングステン粒子に貴金属が担持され、分散媒中への該粒子の分散性が優れ、保管していても固液分離が生じない貴金属担持酸化タングステン粒子分散液を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例1で得られた酸化タングステン粒子分散液を真空乾燥して得た固形分のX線回折スペクトル、および比較例1で得られた酸化タングステン粒子分散液を真空乾燥して得た固形分のX線回折スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の酸化タングステン粒子の製造方法は、酸化タングステン粒子と分散媒を混合して混合物を得、混合物中にアルカリ性化合物を添加しながら、湿式媒体撹拌ミルを使用して混合物を分散処理することで、酸化タングステン粒子分散液を製造するものである。
【0011】
(酸化タングステン粒子)
酸化タングステン粒子は、光触媒作用を示す粒子状の酸化タングステンであれば、特に制限されないが、例えば、三酸化タングステン(WO)粒子等が挙げられる。なお、酸化タングステン粒子は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
【0012】
酸化タングステン粒子は、例えばタングステン酸塩の水溶液に酸を加えることにより、沈殿物としてタングステン酸を得、得られたタングステン酸を焼成する方法により得ることができる。また、メタタングステン酸アンモニウム、パラタングステン酸アンモニウムを加熱して熱分解する方法により得ることもできる。さらに、金属状のタングステン粒子を燃焼する方法でも得ることができる。
【0013】
酸化タングステン粒子の粒子径は、特に制限されないが、光触媒作用の点から、平均分散粒子径で、通常50〜200nm、好ましくは80〜130nmである。
【0014】
(分散媒)
分散媒としては通常、水を主成分とする水性媒体、具体的には水の含有量が50質量%以上のものが用いられ、水単独であってもよいし、水と水溶性有機溶媒との混合媒体であってもよい。
水溶性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等の水溶性アルコール、アセトン、メチルエチルケトン、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、酢酸エチル、ジエチルエーテル等が挙げられる。なお、水溶性有機溶媒は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
分散媒の使用量は、酸化タングステン粒子に対して、通常3質量倍〜200質量倍である。分散媒の使用量が3質量倍未満では酸化タングステン粒子が沈降し易くなり、200質量倍を超えると容積効率の点で不利である。
【0015】
(分散処理)
分散処理は、酸化タングステン粒子と分散媒を混合して混合物を得、該混合物中にアルカリ性化合物を添加しながら、湿式媒体撹拌ミルを使用して行われる。このような分散処理を行うことで、分散媒中への酸化タングステン粒子の分散性を向上させ、保管していても固液分離の生じない酸化タングステン粒子分散液を得ることができる。この理由として、湿式媒体攪拌ミルを使用して酸化タングステン粒子と分散媒との分散処理を行うと、酸化タングステン粒子が粉砕メディアであるビーズとの衝突によりメカノケミカル的な作用を受けることで、結晶性のタングステン酸粒子(HWO)が生成され、このタングステン酸粒子が酸化タングステン粒子の凝集剤として機能することで、酸化タングステン粒子が凝集し易くなり分散性が低下するが、分散媒にアルカリ性化合物を添加することで、タングステン酸粒子の生成は抑制され、分散媒中への酸化タングステン粒子の分散性の低下が抑制されることが推察される。
結晶性のタングステン酸粒子の生成は、例えば、酸化タングステン粒子分散液を乾燥して得られる粉末のX線回折スペクトルを測定することにより確認することができる。
【0016】
分散媒への酸化タングステン粒子の混合量は、分散液100重量部に対し、15〜50重量部であることが好ましい。酸化タングステン粒子の混合量が15質量部未満では、得られる酸化タングステン粒子分散液の濃度が薄くなり、これを用いる際に用途によっては濃縮等の操作が必要となるおそれがある。また、混合量が50重量部を越えると、分散処理の効率が著しく低下するおそれがある。
【0017】
混合物中に添加するアルカリ性化合物としては、例えば、アンモニア水、水酸化リチウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、炭酸アンモニウム水容液、炭酸水素ナトリウム水溶液、炭酸水素カリウム水溶液、炭酸水素アンモニウム水溶液等が挙げられる。
アルカリ性化合物の添加量は、酸化タングステン粒子分散液のpHが2.2〜4.0の範囲内、好ましくは2.4〜3.0の範囲内に維持される量が好ましい。アルカリ性化合物の添加量が少なく、酸化タングステン粒子分散液のpHが2.2未満であると、タングステン酸粒子の生成の抑制が十分でなく、分散媒中への酸化タングステン粒子の分散性低下の抑制が不十分となるおそれがある。また、アルカリ性化合物の添加量が多く、酸化タングステン粒子分散液のpHが4.0を超えると、酸化タングステン粒子が分散媒に溶解し、該酸化タングステン粒子分散液から得られる酸化タングステン粒子の光触媒作用が低下するおそれがある。
【0018】
アルカリ化合物の添加の方法としては、pHの値を任意に制御できる点から、pHを一定に調整する制御機構を有するpHコントローラを使用する方法が好ましい。
アルカリ性化合物の添加は、湿式媒体撹拌ミルを使用している間連続して行ってもよいし、断続的に行ってもよいし、一定期間間隔を空けて行ってもよい。
【0019】
(酸化タングステン粒子分散液)
かくして混合物中にアルカリ性化合物を添加しながら、湿式媒体撹拌ミルを使用して混合物を分散処理することで、酸化タングステン粒子分散液を得る。酸化タングステン粒子は分散媒中に、沈降することなく分散されている。この酸化タングステン粒子が分散された分散液は、酸化タングステン粒子の分散性に優れ、保管していても酸化タングステン粒子の凝集に伴う固液分離が生じないため取り扱いやすい。
【0020】
(貴金属の前駆体)
本発明では、貴金属またはその前駆体を酸化タングステン粒子分散液に添加し、酸化タングステン粒子に担持させることが好ましい。貴金属とは、酸化タングステン粒子に担持されて電子吸引性を発揮しうる化合物であり、貴金属の前駆体とは、酸化タングステン粒子の表面で貴金属に遷移しうる化合物(例えば、光照射により貴金属に還元されうる化合物)である。貴金属が酸化タングステン粒子に担持されると、光の照射により伝導帯に励起された電子と価電子帯に生成した正孔との再結合が抑制され、光触媒作用をより高めることができる。
【0021】
本発明で使用する貴金属の前駆体としては、分散媒中に溶解し得るものが使用される。かかる前駆体が溶解すると、これを構成する貴金属元素は通常、プラスの電荷を帯びた貴金属イオンとなって、分散媒中に存在する。そして、この貴金属イオンが、光の照射により0価の貴金属に還元されて、酸化タングステン粒子の表面に担持される。貴金属としては、例えばCu、Pt、Au、Pd、Ag、Ru、IrおよびRhが挙げられる。その前駆体としては、これら貴金属の水酸化物、硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、有機酸塩、炭酸塩、リン酸塩などが挙げられる。これらの中でも高い光触媒活性を得る点から、貴金属は、Cu、Pt、Au、Pdが好ましい。
【0022】
Cuの前駆体としては、例えば、硝酸銅(Cu(NO))、硫酸銅(CuSO)、塩化銅(CuCl、CuCl)、臭化銅(CuBr、CuBr)、沃化銅(CuI)、沃素酸銅(CuI)、塩化アンモニウム銅(Cu(NH)Cl)、オキシ塩化銅(CuCl(OH))、酢酸銅(CHCOOCu、(CHCOO)Cu)、蟻酸銅((HCOO)Cu)、炭酸銅(CuCO)、蓚酸銅(CuC)、クエン酸銅(Cu)、リン酸銅(CuPO)等が挙げられる。
【0023】
Ptの前駆体としては、例えば、塩化白金(PtCl、PtCl)、臭化白金(PtBr、PtBr)、沃化白金(PtI、PtI)、テトラクロロ白金酸カリウム(KPtCl)、ヘキサクロロ白金酸(HPtCl)、ヘキサクロロ白金酸カリウム(KPtCl)、亜硫酸白金(HPt(SO)OH)、塩化テトラアンミン白金(Pt(NH)Cl)、炭酸水素テトラアンミン白金(C14Pt)、テトラアンミン白金リン酸水素(Pt(NH)HPO)、水酸化テトラアンミン白金(Pt(NH)(OH))、硝酸テトラアンミン白金(Pt(NO)(NH))、テトラアンミン白金テトラクロロ白金((Pt(NH))(PtCl))、ジニトロジアミン白金(Pt(NO)(NH)等が挙げられる。
【0024】
Auの前駆体としては、例えば、塩化金(AuCl)、臭化金(AuBr)、沃化金(AuI)、水酸化金(Au(OH))、テトラクロロ金酸(HAuCl)、テトラクロロ金酸カリウム(KAuCl)、テトラブロモ金酸カリウム(KAuBr)等が挙げられる。
【0025】
Pdの前駆体としては、例えば、酢酸パラジウム((CHCOO)Pd)、塩化パラジウム(PdCl)、臭化パラジウム(PdBr)、沃化パラジウム(PdI)、水酸化パラジウム(Pd(OH))、硝酸パラジウム(Pd(NO))、硫酸パラジウム(PdSO)、テトラクロロパラジウム酸カリウム(K(PdCl))、テトラブロモパラジウム酸カリウム(K(PdBr))、テトラアンミンパラジウム塩化物(Pd(NHCl)、テトラアンミンパラジウム臭化物(Pd(NHBr)、テトラアンミンパラジウム硝酸塩(Pd(NH(NO)、テトラアンミンパラジウムテトラクロロパラジウム酸((Pd(NH)(PdCl))、テトラクロロパラジウム酸アンモニウム((NHPdCl)等が挙げられる。
【0026】
貴金属の前駆体は、それぞれ単独で、または2種類以上を組み合わせて使用される。その使用量は、貴金属原子に換算して、光触媒体粒子の使用量100質量部に対して、光触媒作用の向上効果が十分に得られる点で通常0.005質量部以上、コストに見合った効果が得られる点で通常1質量部以下であり、好ましくは0.01質量部〜0.6質量部、さらに好ましくは0.05〜0.2質量部である。
【0027】
(光の照射)
本発明では、酸化タングステン粒子分散液に貴金属の前駆体を添加し、次いで光を照射することが好ましい。酸化タングステン粒子分散液への光の照射は、撹拌しながら行ってもよい。透明なガラスやプラスチック製の管内を通過させながら管の内外から照射してもよく、これを繰り返してもよい。光源としては酸化タングステン粒子のバンドギャップ以上のエネルギーを有する光を照射できるものであれば特に制限はなく、具体例としては、殺菌灯、水銀灯、発光ダイオード、蛍光灯、ハロゲンランプ、キセノンランプ、太陽光を用いることができる。照射する光の波長は通常、180nm〜500nmである。光照射を行う時間は、十分な量の貴金属を担持できることから、通常20分以上、好ましくは1時間以上、通常24時間以下、好ましくは6時間以下である。24時間を越える場合、それまでに貴金属の前駆体の殆どは貴金属となって担持されてしまい、光照射にかかるコストに見合う効果が得られない。
【0028】
(犠牲剤)
本発明では、犠牲剤を貴金属の前駆体を添加した酸化タングステン粒子分散液に添加することが好ましい。犠牲剤としては、例えば、エタノール、メタノール、プロパノール等のアルコール、アセトン等のケトン、蓚酸等のカルボン酸が用いられる。犠牲剤が固体の場合、この犠牲剤を適当な溶媒に溶解して用いてもよいし、固体のまま用いてもよい。尚、犠牲剤は、光照射を行う前に原料分散液に添加してもよいし、原料液に一定時間光照射を行い、その後に犠牲剤を添加して、さらに光照射を行ってもよい。犠牲剤の量は分散媒に対して、通常0.001質量倍〜0.3質量倍、好ましくは0.005質量倍〜0.1質量倍である。犠牲剤の使用量が0.001質量倍未満では酸化タングステン粒子への貴金属の担持が不十分となり、0.3質量倍を超えると犠牲剤の量が過剰量となりコストに見合う効果が得られない。
【0029】
(pH調整)
本発明では、貴金属の前駆体を添加した酸化タングステン粒子分散液のpHを2.5〜4.5の範囲内に維持しながら、好ましくは2.7〜3.5に維持しながら光照射を行う。通常、光照射により貴金属が酸化タングステン粒子の表面に担持される際には分散液のpHが酸性に除々に変化するので、pHを前記範囲内に維持するため、通常塩基を添加すればよい。塩基としては、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウム等の水溶液が挙げられるが、これらの中でもアンモニア水や水酸化ナトリウム水溶液や水酸化カリウム水溶液を用いるのが好ましい。
【0030】
(貴金属担持酸化タングステン粒子分散液)
かくして光を照射することにより、貴金属前駆体が貴金属となって酸化タングステン粒子に担持されて、貴金属担持酸化タングステン粒子を得る。この貴金属担持酸化タングステン粒子は用いた分散媒中に、沈降することなく分散されている。この貴金属担持酸化タングステン粒子が分散された分散液は、貴金属担持酸化タングステン粒子の分散性に優れ、保管していても貴金属担持酸化タングステン粒子の凝集に伴う固液分離が生じないため取り扱いやすい。
【0031】
酸化タングステン粒子分散液および貴金属担持酸化タングステン粒子分散液は、本発明の効果を損なわない範囲で公知の各種添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば非晶質シリカ、シリカゾル、水ガラス、オルガノポリシロキサンなどのケイ素化合物、非晶質アルミナ、アルミナゾル、水酸化アルミニウムなどのアルミニウム化合物、ゼオライト、カオリナイトなどのアルミノケイ酸塩、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウムなどのアルカリ土類金属酸化物、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウムなどのアルカリ土類金属水酸化物、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Tc、Re、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Os、Ir、Ag、Zn、Cd、Ga、In、Tl、Ge、Sn、Pb、Bi、La、Ceなどの金属元素の水酸化物や酸化物、リン酸カルシウム、モレキュラーシーブ、活性炭、有機ポリシロキサン化合物の重縮合物、リン酸塩、フッ素系ポリマー、シリコン系ポリマー、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、アルキド樹脂が挙げられる。これらの添加剤を添加して用いる場合、それぞれ単独で、又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
前記添加剤は、本発明の分散液を用いて基材の表面に光触媒体層を形成する際に、光触媒体粒子をより強固に基材の表面に保持させるためのバインダー等に用いることもできる(例えば、特開平8−67835号公報、特開平9−25437号公報、特開平10―183061号公報、特開平10―183062号公報、特開平10―168349号公報、特開平10―225658号公報、特開平11―1620号公報、特開平11―1661号公報、特開2004―059686号公報、特開2004―107381号公報、特開2004―256590号公報、特開2004―359902号公報、特開2005―113028号公報、特開2005―230661号公報、特開2007―161824号公報など参照)。
【0033】
(光触媒機能製品)
本発明の光触媒機能製品は、前記酸化タングステン粒子分散液または貴金属担持酸化タングステン粒子分散液を用いて形成された光触媒体層を表面に備えるものである。ここで、光触媒体層は、例えば、本発明の酸化タングステン粒子分散液または貴金属担持酸化タングステン粒子分散液を基材(製品)の表面に塗布した後に、分散媒を揮発させるなど、従来公知の成膜方法によって形成することができる。光触媒体層の膜厚は、特に制限されるものではなく、通常、その用途等に応じて、数百nm〜数mmまで適宜設定すればよい。光触媒体層は、基材(製品)の内表面または外表面であれば、どの部分に形成されていてもよいが、例えば、光(可視光線)が照射される面であって、かつ悪臭物質が発生する箇所や、病原菌やウイルスが存在する箇所と連続または断続して空間的につながる面に形成されていることが好ましい。なお、基材(製品)の材質は、形成される光触媒体層を実用に耐えうる強度で保持できる限り、特に制限されるものではなく、例えば、プラスチック、金属、セラミックス、木材、コンクリート、紙など、あらゆる材料からなる製品を対象にすることができる。尚、光触媒作用による光触媒体層と基材の密着性の劣化を抑制するために、光触媒体層と基材の間に、例えばシリカ成分等からなる公知のバリア層を形成することができる。
【0034】
前記プラスチックとしては、熱硬化性樹脂の場合には、例えば、アラミド樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、シリコーン樹脂、メラミンユリア樹脂等が挙げられる。
また、前記プラスチックとしては、熱可塑性樹脂の場合には、例えば、縮重合系樹脂やビニルモノマーを重合して得られる樹脂等が挙げられる。
【0035】
縮重合系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸、生分解性ポリエステル、ポリエステル系液晶ポリマーなどのポリエステル系樹脂;エチレンジアミン−アジピン酸重縮合体(ナイロン−66)、ナイロン−6、ナイロン−12、ポリアミド系液晶ポリマーなどのポリアミド樹脂;ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンオキシド、ポリメチレンオキシド、アセタール樹脂などのポリエーテル系樹脂;セルロースおよびその誘導体などの多糖類系樹脂;等が挙げられる。
【0036】
ビニルモノマーを重合して得られる樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、スチレン−エチレン−プロピレン共重合体(ポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック共重合体)、スチレン−エチレン−ブテン共重合体(ポリスチレン−ポリ(エチレン/ブテン)ブロック共重合体)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン共重合体(ポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)−ポリスチレンブロック共重合体)、エチレン−スチレン共重合体などの不飽和芳香族含有樹脂;ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラールなどのポリビニルアルコール系樹脂;ポリメチルメタクリレート、モノマーとしてメタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、メタクリル酸アミド、アクリル酸アミドを含むアクリル系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどの塩素系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素系樹脂;等が挙げられる。
【0037】
本発明の光触媒機能製品は、屋外においては勿論のこと、蛍光灯、ナトリウムランプ、
および白色発光ダイオードのような可視光源からの光しか受けない屋内環境においても、
光照射によって高い光触媒作用を示す。したがって、本発明の製造方法により得られた酸化タングステン粒子分散液または貴金属担持酸化タングステン粒子分散液を、例えば、天井材、タイル、ガラス、壁紙、壁材、床等の建築資材、自動車内装材(自動車インストルメントパネル、自動車用シート、自動車用天井材)、冷蔵庫やエアコン等の家電製品、衣類やカーテン等の繊維製品などに塗布して乾燥させると、屋内照明による光照射によって、ホルムアルデヒドやアセトアルデヒドなどの揮発性有機物、アルデヒド類、メルカプタン類、アンモニアなどの悪臭物質、窒素酸化物の濃度を低減させ、黄色ブドウ球菌、大腸菌、炭疽菌、結核菌、コレラ菌、ジフテリア菌、破傷風菌、ペスト菌、赤痢菌、ボツリヌス菌、およびレジオネラ菌等の病原菌等を死滅、分解、除去することができ、また、七面鳥ヘルぺスウイルス、マレック病ウイルス、伝染性ファブリキウス嚢病ウイルス、ニューカッスル病ウイルス、伝染性気管支炎ウイルス、伝染性喉頭気管炎、鳥脳脊髄炎ウイルス、鶏貧血ウイルス、鶏痘ウイルス、鳥類レオウイルス、鳥類白血病ウイルス、細網内皮症ウイルス、鳥類アデノウイルス及び出血性腸炎ウイルス、ヘルペスウイルス、天然痘ウイルス、牛痘ウイルス、水庖唐ウイルス、麻疹ウイルス、アデノウイルス、コクサッキーウイルス、カリシウイルス、レトロウイルス、コロナウイルス、鳥インフルエンザウイルス、ヒトインフルエンザウイルス、豚インフルエンザウイルス、ノロウイルス及びその組換え体等を無害化することができ、さらに、ダニアレルゲンやスギ花粉アレルゲン等のアレルゲンを無害化することができる。また、本発明の光触媒機能製品は、可視光線を照射すれば、充分な親水性を発揮し、防曇性を発現するだけでなく、汚れに水をかけるだけで容易に拭き取ることができるようになり、さらに帯電をも防止できる。
【実施例】
【0038】
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明はかかる実施例によって限定されるものではない。
なお、各実施例における測定法は、以下の通りである。
【0039】
1.平均分散粒子径(nm)
マイクロトラックUPA粒度分析計(日機装(株)製)を用いて、動的散乱法により累積50%径と90%径を測定して、それぞれ分散粒子径d50(nm)およびd90(nm)とした。
【0040】
2.X線回折スペクトル
X線回折装置(リガク社製「RINT2000/PC」)を用いてX線回折スペクトルを測定し、そのX線回折スペクトルから結晶性のタングステン酸粒子の存在の有無を確認した。
【0041】
3.アセトアルデヒド分解能の測定
光触媒活性は、蛍光灯の光の照射下でのアセトアルデヒドの分解反応における一次反応速度定数を測定することにより評価した。すなわち、ガラス製シャーレ(外径70mm、内径66mm、高さ14mm、容量約48mL)に、得られた貴金属担持酸化タングステン粒子分散液を底面の単位面積あたりの固形分換算の滴下量が1g/mとなるように滴下し、シャーレの底面全体に均一に形成した。次いで、このシャーレを110℃の乾燥機内で大気中で1時間保持することにより乾燥させて、ガラス製シャーレの底面に光触媒体層を形成した。この光触媒体層に紫外線強度が2mW/cm(トプコン社製紫外線強度計「UVR−2」に同社製受光部「UD−36」を取り付けて測定)となるようにブラックライトからの紫外線を16時間照射して、これを光触媒活性測定用試料とした。
【0042】
次に、この光触媒活性測定用試料をシャーレごとガスバッグ(内容積1L)の中に入れて密閉し、次いで、このガスバッグ内を真空にした後、酸素と窒素との体積比が1:4である混合ガス0.6Lを封入し、さらにその中に1%アセトアルデヒドを含む窒素ガス3mLを封入して、暗所で室温下1時間保持した。その後、市販の白色蛍光灯を光源とし、測定用試料近傍での照度が1000lx(ミノルタ社製照度計「T−10」で測定)となるようにガスバッグの外から蛍光灯の光を照射し、アセトアルデヒドの分解反応を行った。このとき、測定試料近傍の紫外線の強度は、6.5μW/cm(トプコン社製紫外線強度計「UVR−2」に同社製受光部「UD−36」を取り付けて測定)であった。蛍光灯の光照射を開始してから1.5時間毎にガスバッグ内のガスをサンプリングし、アセトアルデヒドの濃度をガスクロマトグラフ(島津製作所社製「GC−14A」)にて測定した。そして照射時間に対するアセトアルデヒドの濃度から一次反応速度定数を算出し、これをアセトアルデヒド分解能として評価した。この一次反応速度定数が大きいほど、アセトアルデヒドの分解能、すなわち光触媒活性が高いと言える。
【0043】
(実施例1)
分散媒としてイオン交換水4kgに、酸化タングステン粒子(日本新金属製)1kgを加えて混合して混合物を得た。この混合物に湿式媒体撹拌ミル(コトブキ技研社製、「ウルトラアペックスミル UAM−1」)を使用して分散処理を施して酸化タングステン粒子分散液を得た。なお、分散処理の間、pH電極とこのpH電極に接続され、アンモニア水を供給してpHを一定に調整する制御機構を有するpHコントローラ(pH=2.5に設定)により、分散媒中にNHを添加して酸化タングステン粒子分散液のpHを2.5一定に保った。添加したNHの量は2.2gであった。
【0044】
得られた酸化タングステン粒子分散液における酸化タングステン粒子の分散粒子径のうちd50が67nmで、d90が116nmであった。さらに、この酸化タングステン粒子分散液を室温で7日間保管したところ、酸化タングステン粒子の分散粒子径のうちd50が65nmで、d90が123nmとなり、保管中に固液分離は見られなかった。なお、保管後の酸化タングステン粒子分散液のpHは3.4であった。
また、得られた酸化タングステン粒子分散液を真空乾燥して固形分を得、得られた固形分について、X線回折スペクトルを測定すると、図1に示す通り酸化タングステン(WO)のピークが観測された。一方、タングステン酸(HWO)のピークは観測されず、結晶性のタングステン酸粒子の生成は確認されなかった。
【0045】
この酸化タングステン粒子分散液にヘキサクロロ白金酸(HPtCl)の水溶液をヘキサクロロ白金酸が白金原子換算で酸化タングステン粒子の使用量100質量部に対して0.12質量部になるように加え、ヘキサクロロ白金酸含有酸化タングステン粒子分散液を得た。この分散液100質量部中に含まれる固形分(酸化タングステン粒子の量)は、17質量部(固形分濃度17質量%)であった。
【0046】
次いで、pH電極とこのpH電極に接続され、アンモニア水を供給してpHを一定に調整する制御機構を有するpHコントローラ(pH=3.5に設定)とを備え、水中殺菌灯(三共電気製「GLD15MQ」)を設置したガラス管(内径37mm、高さ360mm)からなる光照射装置で前記ヘキサクロロ白金酸含有酸化タングステン粒子分散液1200gを毎分1Lの速度で循環させ、光照射(紫外線)を行いながら、pHコントローラーによりアンモニア水を加えてヘキサクロロ白金酸含有酸化タングステン粒子分散液のpHを3.5にした。光照射を行った時間は2時間であった。その後、引き続き循環させながら、更にメタノールをその濃度が全溶媒の1質量%となるように加えて、光(紫外線)を3時間照射して、白金担持酸化タングステン粒子分散液を得た。光照射中、pHコントローラーによりアンモニア水が加えられ、分散液のpHは3.5に維持された。
【0047】
得られた白金担持酸化タングステン粒子分散液を20℃で8日間保管したところ、固液分離は見られなかった。
また、得られた白金担持酸化タングステン粒子分散液を用いて形成した光触媒体層の光触媒活性を評価したところ、一次反応速度定数は0.12h−1であった。
【0048】
(比較例1)
pHをpHコントローラーによるアンモニア水の添加を行わない以外は、実施例1と同様に操作して酸化タングステン粒子分散液を調製した。酸化タングステン粒子分散液のpHは2.1であった。
【0049】
得られた酸化タングステン粒子分散液における酸化タングステン粒子の分散粒子径のうちd50が97nmで、d90が123nmであった。さらに、この酸化タングステン粒子分散液を20℃で7日間保管したところ、酸化タングステン粒子の分散粒子径のうちd50が110nmで、d90が244nmとなり、保管中に固液分離が見られた。pHは2.5であった。
また、得られた酸化タングステン粒子分散液を真空乾燥して固形分を得、分散処理後の固形分について、X線回折スペクトルを測定すると、図1に示す通り酸化タングステン(WO)のピークに加えて、2θ=16.5°、25.5°付近(矢印で示す付近)にタングステン酸(HWO)のピークが観測され、結晶性のタングステン酸粒子の生成が確認された。
【0050】
実施例1の酸化タングステン粒子分散液は、分散安定性に優れ、固液分離が見られなかった。また、実施例1の白金担字酸化タングステン粒子分散液は、分散安定性に優れ、固液分離が見られず、さらに高い光触媒活性を示した。これに対し、比較例1の酸化タングステン粒子分散液は、分散安定性が低く、固液分離が見られた。
【0051】
(参考例1)
実施例1で得た酸化タングステン粒子分散液または貴金属担持酸化タングステン粒子分散液を、天井を構成する天井材の表面に塗布し乾燥させることにより、天井材の表面に光触媒体層を形成することができ、これによって、屋内照明による光照射により屋内空間における揮発性有機物(例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アセトン、トルエン等)や悪臭物質の濃度を低減することができ、黄色ブドウ球菌や大腸菌等の病原菌や、鳥インフルエンザウイルスやヒトインフルエンザウイルスや豚インフルエンザウイルス等のウイルスを死滅させることができ、また、ダニアレルゲンやスギ花粉アレルゲン等のアレルゲンを無害化することもできる。さらに、天井材の表面が親水化し、汚れを容易に拭き取ることができるようになり、さらに帯電をも防止できる。
【0052】
(参考例2)
実施例1で得た酸化タングステン粒子分散液または貴金属担持酸化タングステン粒子分散液を、屋内の壁面に施工されたタイルに塗布し乾燥させることにより、タイル表面に光触媒体層を形成することができ、これによって、屋内照明による光照射により屋内空間における揮発性有機物(例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アセトン、トルエン等)や悪臭物質の濃度を低減することができ、黄色ブドウ球菌や大腸菌等の病原菌や、鳥インフルエンザウイルスやヒトインフルエンザウイルスや豚インフルエンザウイルス等のウイルスを死滅させることもでき、また、ダニアレルゲンやスギ花粉アレルゲン等のアレルゲンを無害化することもできる。さらに、タイルの表面が親水化し、汚れを容易に拭き取ることができるようになり、さらに帯電をも防止できる。
【0053】
(参考例3)
実施例1で得た酸化タングステン粒子分散液または貴金属担持酸化タングステン粒子分散液を、窓ガラスの屋内側表面に塗布し乾燥させることにより、ガラス表面に光触媒体層を形成することができ、これによって、屋内照明による光照射により屋内空間における揮発性有機物(例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アセトン、トルエン等)や悪臭物質の濃度を低減することができ、黄色ブドウ球菌や大腸菌等の病原菌や、鳥インフルエンザウイルスやヒトインフルエンザウイルスや豚インフルエンザウイルス等のウイルスを死滅させることもでき、また、ダニアレルゲンやスギ花粉アレルゲン等のアレルゲンを無害化することもできる。さらに、窓ガラスの表面が親水化し、汚れを容易に拭き取ることができるようになり、さらに帯電をも防止できる。
【0054】
(参考例4)
実施例1で得た酸化タングステン粒子分散液または貴金属担持酸化タングステン粒子分散液を、壁紙に塗布し乾燥させることにより、壁紙の表面に光触媒体層を形成することができ、さらにこの壁紙を屋内の壁面に施工することによって、屋内照明による光照射により屋内空間における揮発性有機物(例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アセトン、トルエン等)や悪臭物質の濃度を低減することができ、黄色ブドウ球菌や大腸菌等の病原菌や、鳥インフルエンザウイルスやヒトインフルエンザウイルスや豚インフルエンザウイルス等のウイルスを死滅させることもでき、また、ダニアレルゲンやスギ花粉アレルゲン等のアレルゲンを無害化することもできる。さらに、壁紙の表面が親水化し、汚れを容易に拭き取ることができるようになり、さらに帯電をも防止できる。
【0055】
(参考例5)
実施例1で得た酸化タングステン粒子分散液または貴金属担持酸化タングステン粒子分散液を、屋内の床面に塗布し乾燥させることにより、床面に光触媒体層を形成することができ、これによって、屋内照明による光照射により屋内空間における揮発性有機物(例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アセトン、トルエン等)や悪臭物質の濃度を低減することができ、黄色ブドウ球菌や大腸菌等の病原菌や、鳥インフルエンザウイルスやヒトインフルエンザウイルスや豚インフルエンザウイルス等のウイルスを死滅させることもでき、また、ダニアレルゲンやスギ花粉アレルゲン等のアレルゲンを無害化することもできる。さらに、床面の表面が親水化し、汚れを容易に拭き取ることができるようになり、さらに帯電をも防止できる。
【0056】
(参考例6)
実施例1で得た酸化タングステン粒子分散液または貴金属担持酸化タングステン粒子分散液を、自動車用インストルメントパネル、自動車用シート、自動車の天井材、自動車用ガラスの車内側などの自動車内装材の表面に塗布し乾燥させることにより、これら自動車内装材の表面に光触媒体層を形成することができ、これによって、車内照明による光照射により車内空間における揮発性有機物(例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アセトン、トルエン等)や悪臭物質の濃度を低減することができ、黄色ブドウ球菌や大腸菌等の病原菌や、鳥インフルエンザウイルスやヒトインフルエンザウイルスや豚インフルエンザウイルス等のウイルスを死滅させることもでき、また、ダニアレルゲンやスギ花粉アレルゲン等のアレルゲンを無害化することもできる。さらに、自動車内装材の表面が親水化し、汚れを容易に拭き取ることができるようになり、さらに帯電をも防止できる。
【0057】
(参考例7)
実施例1で得た貴金属担持光触媒体粒子分散液を、エアコンの表面に塗布し乾燥させることにより、エアコンの表面に光触媒体層を形成することができ、これによって、屋内照明による光照射により屋内空間における揮発性有機物(例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アセトン、トルエン等)や悪臭物質の濃度を低減することができ、黄色ブドウ球菌や大腸菌等の病原菌や、鳥インフルエンザウイルスやヒトインフルエンザウイルスや豚インフルエンザウイルス等のウイルスを死滅させることもでき、また、ダニアレルゲンやスギ花粉アレルゲン等のアレルゲンを無害化することもできる。さらに、エアコンの表面が親水化し、汚れを容易に拭き取ることができるようになり、さらに帯電をも防止できる。
【0058】
(参考例8)
実施例1で得た酸化タングステン粒子分散液または貴金属担持酸化タングステン粒子分散液を、冷蔵庫の庫内に塗布し乾燥させることにより、冷蔵庫内に光触媒体層を形成することができ、これによって、屋内照明や冷蔵庫内の光源による光照射により冷蔵庫内における揮発性有機物(例えば、エチレン等)や悪臭物質の濃度を低減することができ、黄色ブドウ球菌や大腸菌等の病原菌や、鳥インフルエンザウイルスやヒトインフルエンザウイルスや豚インフルエンザウイルス等のウイルスを死滅させることもでき、また、ダニアレルゲンやスギ花粉アレルゲン等のアレルゲンを無害化することもできる。さらに、冷蔵庫の庫内の表面が親水化し、汚れを容易に拭き取ることができるようになり、さらに帯電をも防止できる。
【0059】
(参考例9)
実施例1で得た酸化タングステン粒子分散液または貴金属担持酸化タングステン粒子分散液を、電車のつり革、エレベーターのボタン等、不特定多数の人が接触する基材表面に塗布し乾燥させることにより、これら基材表面に光触媒体層を形成することができ、これによって、屋内照明による光照射により屋内空間における揮発性有機物(例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アセトン、トルエン等)や悪臭物質の濃度を低減することができ、黄色ブドウ球菌や大腸菌等の病原菌や、鳥インフルエンザウイルスやヒトインフルエンザウイルスや豚インフルエンザウイルス等のウイルスを死滅させることもでき、また、ダニアレルゲンやスギ花粉アレルゲン等のアレルゲンを無害化することもできる。さらに、基材表面が親水化し、汚れを容易に拭き取ることができるようになり、さらに帯電をも防止できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工程(a)、(b)を有する酸化タングステン粒子分散液を製造する方法であり、分散処理は、混合物中にアルカリ性化合物を添加しながら、湿式媒体撹拌ミルを使用して行われることを特徴とする酸化タングステン粒子分散液の製造方法。
(a)酸化タングステン粒子と分散媒を混合して混合物を得る。
(b)混合物を分散処理する。
【請求項2】
酸化タングステン粒子の含有量が、酸化タングステン粒子分散液100重量部に対し、15〜50重量部である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2のいずれかに記載の製造方法により得られる酸化タングステン粒子分散液に、貴金属の前駆体を添加し、次いで酸化タングステン粒子のバンドギャップ以上のエネルギーを有する光を照射する貴金属担持酸化タングステン粒子分散液の製造方法。
【請求項4】
貴金属がCu、Pt、Au、Pd、Ag、Ru、Ir及びRhからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
基材表面に光触媒体層を備える光触媒機能製品であって、前記光触媒体層が、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法で得られる分散液を用いて形成される光触媒機能製品。

【図1】
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【公開番号】特開2012−131650(P2012−131650A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−282763(P2010−282763)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】