説明

酸化マグネシウム焼成物粉末

【課題】Xeガスのガス放電により生成した紫外光により励起されると、高い効率で波長250nm付近の紫外光を放出する酸化マグネシウム粉末を提供する。
【解決手段】酸化マグネシウム源粉末と、アルカリ金属、マグネシウム以外のアルカリ土類金属、希土類金属、アルミニウム、亜鉛及びスズからなる群より選ばれる少なくとも一種の補助金属のフッ化物の粉末とからなり、フッ化物を酸化マグネシウム源粉末中のマグネシウム100モルに対して0.05〜30モルの量にて含む粉末混合物を焼成して得られた酸化マグネシウム焼成物粉末。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Xeガスのガス放電により生成した紫外光により励起されて、波長250nm付近の紫外光を放出する酸化マグネシウム焼成物粉末に関する。
【背景技術】
【0002】
交流型プラズマディスプレイパネル(以下、AC型PDPともいう)は、一般に、画像表示面となる前面板と、放電ガスが充填された放電空間を挟んで対向配置された背面板とからなる。前面板は、前面ガラス基板、前面ガラス基板の上に形成された一対の放電電極、放電電極を被覆するように形成された誘電体層、そして誘電体層の表面に形成された誘電体保護層からなる。背面板は、背面ガラス基板、背面ガラス基板の上に形成されたアドレス電極、背面ガラス基板とアドレス電極とを被覆するように形成された、放電空間を区画するための隔壁、そして隔壁の表面に形成された赤、緑、青の蛍光体層からなる。
【0003】
放電ガスとしては、一般にXe(キセノン)とNe(ネオン)との混合ガスが利用されている。この混合ガスでは、Xeが放電ガスであり、Neはバッファガスである。
誘電体保護層の形成材料には、AC型PDPの作動電圧を低減し、かつ放電空間に生成したプラズマから誘電体層を保護するために、二次電子放出係数が高く、耐スパッタ性に優れる酸化マグネシウムが広く利用されている。
【0004】
従来より、AC型PDPにおいては、発光特性の向上を目的として、誘電体保護層の放電空間側の表面に、放電ガスにより生成する紫外光によって励起されて、蛍光体層の蛍光体を励起し得る波長の紫外光を放出する紫外光放出層を設けることが検討されている。すなわち、放電ガスから放出される紫外光に加え、紫外光放出層から放出される紫外光を用いて蛍光体層の蛍光体を励起させることにより、蛍光体層の発光効率を向上させる方法である。
【0005】
例えば、特許文献1には、マグネシウムが加熱されて発生した蒸気が気相酸化されることによって生成した、BET法によって測定した平均粒子径が500オングストローム以上、好ましくは2000オングストローム以上の気相法酸化マグネシウム単結晶体からなる紫外光放出層を、誘電体保護層の放電空間側の表面に形成したAC型PDPが開示されている。そして、この紫外光放出層は230〜250nmの範囲にピーク波長を有する紫外光を放出し、その波長の紫外光によっても蛍光体が励起されて発光するため、PDPの輝度が増加することが開示されている。
【特許文献1】特開2006−59786号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、AC型PDPなどのガス放電発光装置の誘電体保護層の上に形成する紫外光放出層の材料として有用な、Xeガスのガス放電により生成した紫外光により励起されると、波長250nm付近にピーク波長を有する紫外光を高い効率で放出する酸化マグネシウム焼成物粉末を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、酸化マグネシウム源粉末と、アルカリ金属、マグネシウム以外のアルカリ土類金属、希土類金属、アルミニウム、亜鉛及びスズからなる群より選ばれる少なくとも一種の補助金属のフッ化物の粉末とからなり、フッ化物を酸化マグネシウム源粉末中のマグネシウム100モルに対して0.05〜30モルの量にて含む粉末混合物を焼成することによって、フッ素をマグネシウム100モルに対して0.01〜24モルの量にて、かつ補助金属をマグネシウム100モルに対して0.01〜30モルの量にて含む酸化マグネシウム焼成物粉末を得ることができることを見出した。そして、この酸化マグネシウム焼成物粉末が、Xeガスのガス放電により生成した紫外光によって励起されて波長250nm付近(特に、波長230〜260nmの範囲)にピーク波長を有する紫外光を高い効率で放出することを確認して、本発明を完成した。
更に、本発明者は、上記補助金属のフッ化物粉末の代わりに、補助金属の酸化物粉末又は加熱により金属酸化物に転化する補助金属の化合物粉末(フッ化物粉末を除く)と、フッ化マグネシウム粉末及びフッ化アンモニウム粉末からなる群より選ばれる少なくとも一種のフッ化物粉末とを、補助金属の量が粉末混合物中のマグネシウムの合計量100モルに対して0.05〜30モルの範囲にあって、かつフッ化物粉末中のフッ素の量が補助金属1モルに対して0.1〜10モルの範囲となる量にて用いることによっても、Xeガスのガス放電により生成した紫外光によって励起されて波長250nm付近の紫外光を高い効率で放出する酸化マグネシウム焼成物粉末が得られることを見出した。
【0008】
従って、本発明は、酸化マグネシウム源粉末と、アルカリ金属、マグネシウム以外のアルカリ土類金属、希土類金属、アルミニウム、亜鉛及びスズからなる群より選ばれる少なくとも一種の補助金属のフッ化物の粉末とからなり、フッ化物を酸化マグネシウム源粉末中のマグネシウム100モルに対して0.05〜30モルの量にて含む粉末混合物を焼成して得られた酸化マグネシウム焼成物粉末にある。粉末混合物の焼成温度は、850〜1500℃の範囲の温度にあることが好ましい。フッ化物粉末は、酸化マグネシウム源粉末中のマグネシウム100モルに対して0.1〜25モルの量にあることが好ましい。
【0009】
本発明はまた、酸化マグネシウム源粉末と、アルカリ金属、マグネシウム以外のアルカリ土類金属、希土類金属、アルミニウム、亜鉛及びスズからなる群より選ばれる少なくとも一種の補助金属の酸化物の粉末又は加熱により金属酸化物に転化する補助金属のフッ化物以外の化合物の粉末と、フッ化マグネシウム粉末及びフッ化アンモニウム粉末からなる群より選ばれる少なくとも一種のフッ化物粉末とからなる粉末混合物であって、補助金属を粉末混合物中のマグネシウム100モルに対して0.05〜30モルの量にて、かつフッ化物粉末中のフッ化物を補助金属1モルに対して0.1〜10モルの量にて含む粉末混合物を焼成して得られた酸化マグネシウム焼成物粉末にもある。粉末混合物の焼成温度は、850〜1500℃の範囲の温度にあることが好ましい。粉末混合物中の補助金属は、粉末混合物中のマグネシウム100モルに対して0.1〜25モルの量であることが好ましい。フッ化物粉末中のフッ素は、粉末混合物中の補助金属1モルに対して0.5〜5モルの量であることが好ましい。
【0010】
本発明は更に、マグネシウム、フッ素、そしてアルカリ金属、マグネシウム以外のアルカリ土類金属、希土類金属、アルミニウム、亜鉛及びスズからなる群より選ばれる少なくとも一種の補助金属からなり、フッ素をマグネシウム100モルに対して0.01〜24モルの量にて、かつ補助金属をマグネシウム100モルに対して0.01〜30モルの量に含む酸化マグネシウム焼成物粉末にもある。
【0011】
本発明の酸化マグネシウム焼成物粉末は、特に、交流型プラズマディスプレイパネルの誘電体保護層の放電空間側の表面に形成される紫外光放出層の製造用に有用である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の酸化マグネシウム焼成物粉末は、後述の実施例に示すデータから明らかなように、Xeガスのガス放電により生成した紫外光により励起されて波長250nm付近(波長230〜260nmの範囲)にピーク波長を有する紫外光を高い効率で放出する。AC型PDPや蛍光体ランプ等のガス放電発光装置に使用される蛍光体材料は、前記特許文献1に記載されているように波長250nm付近の紫外光に励起されて可視光を放出することが知られている。このため、本発明の酸化マグネシウム焼成物粉末から製造された酸化マグネシウム膜を、AC型PDPや蛍光体ランプ等のXeガスを放電ガスに用いたガス放電発光装置の放電空間内、特に誘電体保護層の放電空間側の表面に配置すると、Xeガスのガス放電により放電空間内に放出される、波長250nm付近の紫外光の光量を増加させることができ、その結果、ガス放電発光装置から放出される可視光の量を増加させることが可能になる。従って、本発明の酸化マグネシウム焼成物粉末は、AC型PDPの誘電体保護層の放電空間側の表面に形成される紫外光放出層の製造用として特に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の酸化マグネシウム焼成物粉末は、酸化マグネシウム源粉末と、アルカリ金属、マグネシウム以外のアルカリ土類金属、希土類金属、アルミニウム、亜鉛及びスズからなる群より選ばれる少なくとも一種の補助金属のフッ化物粉末とを、補助金属のフッ化物の量がマグネシウム100モルに対して0.05〜30モルの範囲となる割合にて含む粉末混合物を焼成することにより製造される。
【0014】
本発明の酸化マグネシウム焼成物粉末の製造において、酸化マグネシウム源粉末としては、酸化マグネシウム粉末、及び加熱により酸化マグネシウム粉末に転化するマグネシウム化合物粉末を用いることができる。加熱により酸化マグネシウム粉末に転化するマグネシウム化合物粉末の例としては、水酸化マグネシウム粉末、塩基性炭酸マグネシウム粉末、硝酸マグネシウム粉末及び酢酸マグネシウム粉末が挙げられる。酸化マグネシウム源粉末は、酸化マグネシウム粉末であることが好ましく、気相合成酸化法により製造された酸化マグネシウム粉末が特に好ましい。気相合成酸化法とは、金属マグネシウム蒸気と酸素含有気体とを気相で接触させて、金属マグネシウムを酸化して酸化マグネシウム粉末を製造する方法である。
【0015】
酸化マグネシウム源粉末の純度は、99.95質量%以上であることが好ましい。酸化マグネシウム源粉末は、BET比表面積が5〜150m2/g、特に7〜50m2/gの範囲にあることが好ましい。なお、酸化マグネシウム源粉末の粒子径は、本発明の効果を損なわない限り特に制限されない。
【0016】
本発明の酸化マグネシウム焼成物粉末の製造に用いる補助金属のフッ化物粉末は、純度が99.0質量%以上であることが好ましい。フッ化物粉末の粒子径は本発明の効果を損なわない限り特に制限されない。フッ化物粉末は、無水物であってもよいし、水和物であってもよい。フッ化物粉末は、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0017】
本発明で用いることができるアルカリ金属のフッ化物粉末の例としては、フッ化リチウム粉末、フッ化ナトリウム粉末及びフッ化カリウム粉末を挙げることができる。アルカリ土類金属のフッ化物粉末の例としては、フッ化カルシウム粉末及びフッ化バリウム粉末を挙げることができる。希土類金属のフッ化物粉末の例としては、フッ化イットリウム粉末、フッ化セリウム粉末及びフッ化ガドリニウム粉末を挙げることができる。
【0018】
本発明の酸化マグネシウム焼成物粉末の製造に際しては、まず、酸化マグネシウム源粉末と補助金属のフッ化物粉末とを混合し、粉末混合物を調製する。酸化マグネシウム源粉末とフッ化物粉末との配合割合は、フッ化物の量がマグネシウム100モルに対して0.05〜30モルの範囲、好ましくは0.1〜25モルの範囲、更に好ましくは0.2〜15モルの範囲となる割合である。
【0019】
上記の混合工程で得られた粉末混合物は、次いで加熱炉に入れられ、通常は、昇温速度100〜500℃/時間の条件で、好ましくは850〜1500℃の範囲、より好ましくは900〜1500℃の範囲、更に好ましくは1000〜1500℃の範囲の温度にまで加熱され、次いでその範囲の温度で好ましくは10分以上、より好ましくは20分〜5時間、更に好ましくは20分〜2時間加熱焼成される。粉末混合物の焼成物は次いで、通常は、降温速度100〜500℃/時間の条件で室温まで冷却され、目的の酸化マグネシウム焼成物粉末が得られる。
【0020】
また、補助金属のフッ化物粉末に代えて、補助金属の酸化物粉末又は加熱により金属酸化物に転化する補助金属の化合物粉末(フッ化物粉末を除く)と、フッ化マグネシウム粉末及びフッ化アンモニウム粉末からなる群より選ばれる少なくとも一種のフッ化物粉末とを用いても、紫外光を高い効率で放出する酸化マグネシウム焼成物粉末を同様に製造することができる。これらの補助金属の酸化物粉末又は化合物粉末とフッ化物粉末とを用いる場合は、酸化マグネシウム源粉末と、補助金属の酸化物粉末又は化合物粉末と、フッ化物粉末とを、補助金属の量が粉末混合物中のマグネシウム100モルに対して0.05〜30モルの範囲、好ましくは0.1〜25モルの範囲、更に好ましくは0.2〜15モルの範囲となり、フッ化物粉末中のフッ素の量が粉末混合物中の補助金属1モルに対して0.1〜10モルの範囲、好ましくは0.5〜5モルの範囲となる割合で混合した混合粉末として焼成する。
【0021】
加熱により補助金属の酸化物粉末に転化する化合物粉末としては、例えば、補助金属の水酸化物粉末、炭酸塩粉末、重炭酸塩粉末、硝酸塩粉末、酢酸塩粉末、シュウ酸塩粉末などが挙げられる。補助金属の酸化物粉末又は化合物粉末、及びフッ化物粉末は、純度が99.0質量%以上であることが好ましい。これらの粉末の粒子径は本発明の効果を損なわない限り特に制限されない。
【0022】
以上のようにして得られる本発明の酸化マグネシウム焼成物粉末は、酸化マグネシウムを主成分とし、フッ素と、アルカリ金属、マグネシウム以外のアルカリ土類金属、希土類金属、アルミニウム、亜鉛及びスズからなる群より選ばれる少なくとも一種の補助金属とを含む焼成物粉末である。
【0023】
本発明の酸化マグネシウム焼成物粉末は、フッ素の含有量がマグネシウム100モルに対して0.01〜24モルの範囲にあることが好ましく、0.02〜12モルの範囲にあることがより好ましく、0.02〜5モルの範囲にあることが更に好ましい。補助金属の含有量は、マグネシウム100モルに対して0.01〜30モルの範囲にあることが好ましく、0.025〜25モルの範囲にあることがより好ましく、0.1〜5モルの範囲にあることが更に好ましい。また、補助金属の含有量は、フッ素1モルに対して、0.25〜50モルの範囲にあることが好ましく、0.4〜30モルの範囲にあることが更に好ましい。また本発明の酸化マグネシウム焼成物粉末は、BET比表面積が0.1〜30m2/gの範囲にあることが好ましい。
【0024】
本発明の酸化マグネシウム焼成物粉末は、スプレー法や静電塗布法などの公知の方法を用いることにより、AC型PDPや蛍光体ランプの紫外光放出層として有用な酸化マグネシウム膜とすることができる。酸化マグネシウム焼成物粉末の粒子径は本発明の効果を損なわない範囲であれば特に制限されない。
【実施例】
【0025】
[実施例1〜30、及び比較例1、2]
気相合成酸化法により製造された酸化マグネシウム粉末(2000A、宇部マテリアルズ(株)製、純度:99.98質量%、BET比表面積:8.7m2/g)6.0g(0.149モル)に、下記表1に示す金属フッ化物粉末を、下記表1に示す量にて添加し、混合して粉末混合物を得た。得られた粉末混合物を容量25mLのアルミナ坩堝に投入し、アルミナ坩堝に蓋をして電気炉に入れ、240℃/時間の昇温速度にて、炉内温度を下記表1の温度にまで昇温し、次いでその温度で30分間加熱焼成した。その後、炉内温度を240℃/時間の降温速度で室温まで冷却して、酸化マグネシウム焼成物粉末を得た。
【0026】
表1
────────────────────────────────────────
金属フッ化物粉末 金属フッ化物粉末の添加量*) 炉内温度(℃)────────────────────────────────────────
実施例1 LiF 0.0193g(0.5モル) 1200
実施例2 LiF 0.0386g(1.0モル) 1200
実施例3 NaF 0.0313g(0.5モル) 1200
実施例4 NaF 0.0625g(1.0モル) 1200
実施例5 KF 0.0432g(0.5モル) 1200
実施例6 KF 0.0864g(1.0モル) 1200
実施例7 CaF2 0.0581g(0.5モル) 1200
実施例8 CaF2 0.1162g(1.0モル) 1200
実施例9 BaF2 0.1305g(0.5モル) 1200
実施例10 BaF2 0.2610g(1.0モル) 1200
実施例11 AlF3 0.0418g(0.33モル) 1200
実施例12 AlF3 0.0625g(0.5モル) 1200
実施例13 AlF3 0.1250g(1.0モル) 1200
実施例14 ZnF2・4H2O 0.1306g(0.5モル) 1200
実施例15 ZnF2・4H2O 0.2612g(1.0モル) 1200
実施例16 SnF2 0.1167g(0.5モル) 1200
実施例17 SnF2 0.2334g(1.0モル) 1200
実施例18 CeF3 0.0967g(0.33モル) 1200
実施例19 CeF3 0.1460g(0.5モル) 1200
実施例20 CeF3 0.2920g(1.0モル) 1200
実施例21 YF3 0.1090g(0.5モル) 1200
実施例22 YF3 0.2180g(1.0モル) 1200
実施例23 GdF3 0.0159g(0.1モル) 1200
実施例24 GdF3 0.0796g(0.5モル) 1200
実施例25 NaF 0.0160g(0.25モル) 1000
実施例26 NaF 0.1880g(3.0モル) 1000
実施例27 NaF 0.750g(12.0モル) 1000
実施例28 NaF 1.500g(24.0モル) 1000
実施例29 NaF 0.0630g(1.0モル) 1300
実施例30 NaF 0.1250g(2.0モル) 1300
────────────────────────────────────────
比較例1 添加せず − 1200
比較例2 NiF2 0.1439g(1.0モル) 1200
────────────────────────────────────────
*:括弧内は、金属フッ化物粉末の添加量をマグネシウム100モルに対するモル量に換算した値。
LiF:フッ化リチウム粉末(純度:99.9質量%)
NaF:フッ化ナトリウム粉末(純度:99質量%)
KF:フッ化カリウム粉末(純度:99.99質量%)
CaF2:フッ化カルシウム粉末(純度:99質量%)
BaF2:フッ化バリウム粉末(純度:99.999質量%)
AlF3:フッ化アルミニウム粉末(純度:99.9質量%)
ZnF2・4H2O:フッ化亜鉛・四水和物粉末(純度:99質量%)
SnF2:フッ化スズ粉末(純度:99質量%)
CeF3:フッ化セリウム粉末(純度:99.99質量%)
YF3:フッ化イットリウム粉末(純度:99.9質量%)
GdF3:フッ化ガドリニウム粉末(純度:99.99質量%)
NiF2:フッ化ニッケル粉末(純度:99質量%)
【0027】
実施例1〜30及び比較例1、2にて製造した酸化マグネシウム焼成物粉末に含まれるフッ素及びフッ化物として添加した金属の含有量、並びに紫外光発光強度は以下の方法により測定した。その結果を下記の表2に示す。
【0028】
[フッ素及びフッ化物として添加した金属の含有量]
酸化マグネシウム焼成物粉末を塩酸で溶解して調製した溶液中のフッ素及びフッ化物として添加した補助金属の含有量を測定する。フッ素量は、JIS−0102(工場排水試験方法)の34.1に記載の方法により測定し、補助金属量はICP発光分析により測定する。
【0029】
[紫外光発光強度]
酸化マグネシウム焼成物粉末にXeガスのガス放電により生成した紫外光を照射して、焼成物粉末から放出された紫外光スペクトルを測定し、波長250nm付近(波長230〜260nmの範囲)の最大ピーク値を紫外光発光強度として求める。
【0030】
表2
────────────────────────────────────────
金属含有量 フッ素含有量 紫外光発光強度
(モル) (モル)
────────────────────────────────────────
実施例1 0.1 0.06 35600
実施例2 0.2 0.09 58300
実施例3 0.1 0.05 120344
実施例4 0.2 0.10 141500
実施例5 0.1 0.07 99876
実施例6 0.2 0.12 99767
実施例7 0.5 0.82 86711
実施例8 1.0 1.63 83289
実施例9 0.5 0.89 66667
実施例10 1.0 1.91 73644
実施例11 0.33 0.21 78511
実施例12 0.5 0.31 93178
実施例13 1.0 0.47 122989
実施例14 0.5 0.03 50844
実施例15 1.0 0.04 38833
実施例16 0.5 0.03 35356
実施例17 1.0 0.07 43400
実施例18 0.33 0.10 40267
実施例19 0.5 0.13 71867
実施例20 1.0 0.26 92100
実施例21 0.5 0.73 98844
実施例22 1.0 1.52 103267
実施例23 0.1 0.17 78744
実施例24 0.5 0.59 131917
実施例25 0.08 0.08 115644
実施例26 0.8 0.72 117900
実施例27 2.2 2.0 79911
実施例28 4.9 4.2 76289
実施例29 0.1 0.05 111867
実施例30 0.18 0.08 196144
────────────────────────────────────────
比較例1 なし 0 発光せず
比較例2 1.0 0.24 100
────────────────────────────────────────
注1)金属含有量及びフッ素含有量は、マグネシウム100モルに対する含有量。
注2)紫外光発光強度は、比較例2の紫外光発光強度を100とした相対値。
【0031】
表2に示した結果から明らかなように、酸化マグネシウム源粉末と、アルカリ金属、マグネシウム以外のアルカリ土類金属、希土類金属、アルミニウム、亜鉛及びスズからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属のフッ化物粉末とを本発明の範囲で含む粉末混合物を焼成して得られた酸化マグネシウム焼成物粉末は、Xeガスのガス放電により生成した紫外光により励起されて波長250nm付近(波長230〜260nmの範囲)にピーク波長を有する紫外光を高い効率で放出する。一方、比較例2に示すようにフッ化ニッケル粉末などの遷移金属のフッ化物粉末を用いて製造した酸化マグネシウム焼成物粉末は、波長250nm付近の紫外光を放出しても、その量はわずかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化マグネシウム源粉末と、アルカリ金属、マグネシウム以外のアルカリ土類金属、希土類金属、アルミニウム、亜鉛及びスズからなる群より選ばれる少なくとも一種の補助金属のフッ化物の粉末とからなり、フッ化物を酸化マグネシウム源粉末中のマグネシウム100モルに対して0.05〜30モルの量にて含む粉末混合物を焼成して得られた酸化マグネシウム焼成物粉末。
【請求項2】
850〜1500℃の範囲の温度で焼成されたものである請求項1に記載の酸化マグネシウム焼成物粉末。
【請求項3】
フッ化物粉末が酸化マグネシウム源粉末中のマグネシウム100モルに対して0.1〜25モルの量にある請求項1に記載の酸化マグネシウム焼成物粉末。
【請求項4】
酸化マグネシウム源粉末と、アルカリ金属、マグネシウム以外のアルカリ土類金属、希土類金属、アルミニウム、亜鉛及びスズからなる群より選ばれる少なくとも一種の補助金属の酸化物の粉末又は加熱により金属酸化物に転化する補助金属のフッ化物以外の化合物の粉末と、フッ化マグネシウム粉末及びフッ化アンモニウム粉末からなる群より選ばれる少なくとも一種のフッ化物粉末とからなる粉末混合物であって、補助金属を粉末混合物中のマグネシウム100モルに対して0.05〜30モルの量にて、かつフッ化物粉末中のフッ化物を補助金属1モルに対して0.1〜10モルの量にて含む粉末混合物を焼成して得られた酸化マグネシウム焼成物粉末。
【請求項5】
850〜1500℃の範囲の温度で焼成されたものである請求項4に記載の酸化マグネシウム焼成物粉末。
【請求項6】
粉末混合物中の補助金属が、粉末混合物中のマグネシウム100モルに対して0.1〜25モルの量である請求項4に記載の酸化マグネシウム焼成物粉末。
【請求項7】
フッ化物粉末中のフッ素が、粉末混合物中の補助金属1モルに対して0.5〜5モルの量である請求項4に記載の酸化マグネシウム焼成物粉末。
【請求項8】
マグネシウム、フッ素、そしてアルカリ金属、マグネシウム以外のアルカリ土類金属、希土類金属、アルミニウム、亜鉛及びスズからなる群より選ばれる少なくとも一種の補助金属からなり、フッ素をマグネシウム100モルに対して0.01〜24モルの量にて、かつ補助金属をマグネシウム100モルに対して0.01〜30モルの量に含む酸化マグネシウム焼成物粉末。
【請求項9】
交流型プラズマディスプレイパネルの誘電体保護層の放電空間側の表面に形成される紫外光放出層の製造用である請求項1、4及び8のうちのいずれかの項に記載の酸化マグネシウム焼成物粉末。

【公開番号】特開2009−62267(P2009−62267A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−205333(P2008−205333)
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【出願人】(000119988)宇部マテリアルズ株式会社 (120)
【Fターム(参考)】