説明

酸化剤としてNaOClを用いて第1級及び第2級アルコールを酸化する無臭素TEMPO系触媒システム

本発明は、TEMPO−ホウ酸塩触媒システムを用いてNaOClにより、アルコールをアルデヒド又はケトンに選択的に酸化する方法に関係する。無溶媒条件下でKBr添加剤を用いることなく、この酸化が効率的に実施できることを示す。3,3−ジメチルブチルアルデヒドなどのアルデヒドが、本発明により効率的に製造できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無臭素触媒システムに関するものであり、酸化剤としてNaOClを用いてアルコールをアルデヒド又は酸へ酸化する場合、高い活性及び選択性を示すものである。より具体的には、本発明は、触媒システムに関係するものであって、このシステムは、2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルオキシ触媒(本明細書では以後、「TEMPO」又は「TEMPO触媒」という)とNa247助触媒(CC)の相乗カップルを含み、既知のTEMPO−NaBrシステムより活性であり、かつ高い選択性を示す。このような相乗カップルは、第1級脂肪族及び芳香族アルコールの酸化に特に有用である(しかし、これに限定するものではない)。また、このシステムは、溶媒を必要とすることなく、酸化を行うことができる。
【背景技術】
【0002】
アルコールのカルボニル化合物への選択的な接触酸化は、おそらく合成有機化学における最も重要な転位の一つである。多くの酸化剤が、文献に報告されており、その多くのものは、クロム及びマグネシウムなどの遷移金属酸化物系である(S.Kirk−Othmer Mitchell、Encyclopedia of Chemical Technology、第4版、Wiley−Interscience、ニューヨーク、第2巻、481頁(1992年);Hudlicky,M.「有機化学における酸化」、ACS Monograph、No.186、American Chemical Society、ワシントン、コロンビア特区(1990年);Sheldon R.A.、Kochi J.K. Metal Catalized Oxidation of Organic Compound、ニューヨーク、Academic Press、1981年;Ley,S.V.、Madin,A.、In Comprehensive Organic Synthesis、Trost B.、Fleming,I.、Eds.、Pergamon オックスフォード、1991年、第7巻、251頁;Mijs,W.J.、DeJonge,C.R.H.I.、Organic Synthesis by Oxidation with Metal compound、Plenum、ニューヨーク、1968年)。酸化物及びその転位製品の多くが毒性種であるから、それらの使用は取扱い及び廃棄に関連して深刻な問題をもたらしている。コスト及び毒性の理由で、それらの薬剤の使用に関する重大な欠点は、要求される反応化学量論を越えて大過剰に薬剤を用いる必要があることである。産業上の応用を狙いとして、効果的な、入手容易な触媒及び過酸化水素、ヒドロペルオキシド又は分子状酸素などのクリーンな酸化剤に関する研究が、挑戦課題である(Dijksman,A.、Arends I.W.C.E.及びSheldon R.、Chem.Commun.、1999年、1591〜1592頁;Marko I.E.、P.R.Giles、Tsukazaki M.、Brown S.M.及びUrch C.J.,Science、19696、274、2044)。効果の水準を変更して、第1級アルコールのアルデヒドへの選択的酸化を触媒作用するための、数多くの遷移金属錯体及び酸化剤が報告されており、RuCl3−NaBrO3Konemoto S.、Tomoioka S.、Oshima K.、Bull.Chem.Soc.Japan、1986年、第59巻、第1号、105頁)、Bu4NRuO4−4−メチルモルホリン−N−オキシド(Griffith W.P.、Ley S.V.、Whitcombe G.P.、White A.D.、Chem.Commun.、1987年、第21号、1625頁)、H22及びtert−ブチルヒドロペルオキシド(t−BuOOH)(Y.Tsuji、T.Ohta、T.Idoら、J.Organometalic Chemistry、270、333、1984年)、(T.M.Jiang、J.C.Hwang、H.O.Ho、C.Y.Chen、J.Chin.Chem.Soc.、35、135、1988年)などがある。前記の方法は、総収量が低く、それらの方法の幾つかが貴金属錯体の使用又は過剰の一次酸化剤の使用を必要とするので、用途が限定されていた。
【0003】
第1級及び第2級アルコールの酸化に関する特に好都合な方法は、Anelli及び共同研究者により報告されている(J.Organic Chemistry、1987年、52、2559頁;J.Organic Chemistry、1989年、54、2970頁)。この酸化は、触媒としてTEMPO及び酸化剤として安価で入手が容易なNaOClを用いて、2相系(CH2Cl2−水)で行われた。助触媒KBrが反応速度を高め、水相はNaHCO3を用いてpH8.5〜9.5に緩衝される。相間移動触媒として第4級アンモニウム塩の使用は、アルコールのカルボン酸への酸化を促進する。同様な方法は、触媒量のTEMPO及びNaOClの存在下で酸化剤としてNaClO2を用いて修正された。この方法は、主製品としてカルボン酸を生成した(米国特許第6,127,573号)。
【0004】
Prakashらは、米国特許第5,856,584号の中で、3,3−ジメチル−1−ブタノールの酸化に関する同様な方法を報告している。この方法によれば、3,3−ジメチル−1−ブタノールは、2相システムで反応溶媒としてCH2Cl2を用いて、NaOClにより3,3−ジメチルブチルアルデヒドに酸化される。所望のアルデヒドを80%の分離収率で製造するために、効率的な触媒システムとして、安定な2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシフリーラジカル及びKBrが用いられた。
【0005】
第1級アルコールのアルデヒドへの酸化を媒介するTEMPOの別の開発では、Sheldon及び共同研究者は、市場で入手できるポリ[(6−[1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ]−s−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)イミノ]](また、Chimasorb944(Chem.Commun.、2000年、271〜272頁で)として知られている)を酸化して得られるTEMPO触媒のポリマーバージョンPIPOを用いた。この方法は、芳香族アルコールについてだけであるが、無溶媒条件でアルデヒドを高収率で製造する。第1級アルコールの酸化は、重大な過度の酸化を導きカルボン酸を生成する。
【0006】
米国特許第5,821,374号は、第1級アルコールのアルデヒドへのTEMPO触媒による酸化において、酸化剤としてN−クロロ−4−トルエンスルホンアミドナトリウム塩(クロラミンT)又はN−クロロ−ベンゼンスルホンアミドナトリウム塩(クロラミンB)などのN−クロロ−化合物の使用について記載している。この方法の主な欠点は、大量の溶媒の使用、及び酸化剤として用いるN−クロロ化芳香族化合物の毒性である。
【0007】
米国特許第6,335,464号は、NaBrと組み合わせて、酸化剤としてNaOClを用いて第1級アルコールをカルボン酸に電気触媒的に酸化するために用いた、ポリマー担持TEMPO触媒について記載している。これには、相当するアルデヒドを選択的に生成する方法、及び触媒の再利用の可能性に関する報告はない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
第1級アルコールの選択的酸化の領域で広範囲な研究が報告されているが、それでも、有機溶媒を使用する必要がなく、環境にやさしい酸化剤を用いて行うことができ、かつ臭素系助触媒を使用する必要がない、高い効率の経済的酸化法を開発するニーズが引き続き存在する。このような酸化法を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の方法は、式II又はIIIの触媒、及び助触媒の存在で、酸化剤により第1級又は第2級アルコールを酸化することを含む。
【0010】
【化1】

【0011】
式(II)及び(III)において、R1、R2、R3及びR4は、独立して、同一又は異なる構造の低級アルキル又は置換アルキル基である。R5及びR6は、水素、アルキル又は低級アルコキシであるか、又は一方が水素、かつ他方が低級アルコキシ、ヒドロキシ、アミノ、アルキル又はジアルキルアミノ、アルキルカルボニルオキシ、アルキルカルボニルアミノであり、又はR5及びR6はケタールである。Y-基はアニオンである。
【0012】
本発明の助触媒は、式IVで表されるポリオキシアニオン又は金属塩であり、M1は元素の周期表の第IA族又は第IIA族からの金属イオンであり、M2は周期表の第IIIa族、第IVa族、第IVB族、第Va族、第VB族、第VIA族、第VIB族、第VIIB族、又は第VIII族からのイオンである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
TEMPO/助触媒が促進する酸化は、スキーム1に示される以下の反応で説明される。これによると、酸化は、多くの酸化種が力学平衡で存在するカスケードメカニズムにより起こる。常例的には、次亜塩素酸塩アニオンが助触媒(CC)を酸化してその酸化型(CCO*)を生成し、これが、順次、連鎖移動してTEMPOオクソアンモニウム塩を生成する。TEMPOの「酸化」型は、最後のレドックスサイクルで第1級アルコールをアルデヒドに転化させる。この反応は、次亜塩素酸塩アニオンが比較的安定するpHが8.6〜9.5の範囲の漂白剤溶液で起こり、かつ同時にClO-/Cl-からCC/CCO*の範囲の速度が十分に早く、アルコール酸化の高い総括速度を維持する。所望のpHを維持するために、NaHCO3又はK2CO3が効果的に使用できる。現行の酸化条件下では、所望のアルデヒドが、更に相当する酸誘導体に容易に転化されるので、反応温度は0℃又はそれ以下に保たれる。
【0014】
【化2】

【0015】
本発明にかかる方法は、上記式II又はIIIのTEMPO系触媒及び上記式IVの助触媒の存在下で、酸化剤を用いて第1級又は第2級アルコールを酸化することを含む。
【0016】
本発明で用いる用語、第1級又は第2級アルコールは、第1級又は第2級の水酸基をもつ有機化合物のことをいう。本明細書で用いる用語、低級アルコールは、1から10個の炭素原子をもつアルコールをいい、一方、本明細書で用いる用語、高級アルコールは、11個以上の炭素原子をもつアルコールをいう。第1級及び第2級アルコールの例は、メタノール、エタノール、n−及びイソプロピルアルコール、n−、iso−及びsec−ブチルアルコール、ペンチルアルコール、ヘキシルアルコール、ネオペンチルアルコール、ネオヘキシルアルコール、オクチルアルコール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ノナデシルアルコール、エイコシルアルコールなどのアルコールを含む。不飽和アルコールの例は、アリルアルコール、クロチルアルコール及びプロパギルアルコールを含む。芳香族アルコールの例は、ベンジルアルコール、フェニルエタノール、フェニルプロパノールなどを含む。本明細書で用いる用語、TEMPO系触媒は、上記式II又はIIIの化合物をいう。ここで、R1、R2、R3及びR4は、独立して、同一又は異なる構造の低級アルキル又は置換アルキル基である。R5及びR6は、ともに水素、アルキルであるか、又は低級アルコキシであるか、又は一方が水素、かつ他方が低級アルコキシ、ヒドロキシ、アミノ、アルキル又はジアルキルアミノ、アルキルカルボニルオキシ、アルキルカルボニルアミノであり、又は結合する酸素又はケタールであってもよい。Y-基はアニオンである。用語「低級アルキル」は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、イソブチル、ペンチル、n−ヘキシルなどの8個までの炭素原子をもつ、直鎖又は分枝の飽和炭化水素基を意味する。用語「低級アルコキシ」は、メトキシ及びエトキシなどの、酸素原子を介して結合した低級アルキル基を意味する。用語「低級アルキルカルボニルオキシ」は、酸素原子を介して結合した低級アルキルカルボニル基を意味する。用語「低級アルキルカルボニル」は、カルボニル基を介して結合した低級アルキル基を意味し、かつアセチル、プロピオニルなどの基で代表される。用語「低級カルボニルアミノ」は、アセチルアミノなどの、窒素原子を介して結合された低級アルキルカルボニル基を意味する。
【0017】
このような化合物の例は、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル(TEMPO)、及び4−メトキシ−TEMPO、4−エトキシ−TEMPO、4−アセトキシ−TEMPO、4−アセタミノ−TEMPO、4−ヒドロキシ−TEMPO、4−ベンゾイルオキシ−TEMPO、4−アミノ−TEMPO、N,N−ジメチルアミノ−TEMPO、4−オクソ−TEMPOを含むその4−置換誘導体、及びChimasorb944として知られるポリ[(6−[1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ]−s−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)イミノ]]などのTEMPOのポリマーバージョンを含むが、この例に限定されない。
【0018】
本発明にかかる助触媒は、元素の周期表の第IIa族、第IIIa族、第IVa族、第Va族、第VIa族、第VIIa族、又は第VIII族からの少なくとも1種の金属原子又はイオンを含むオキシ金属イオン又は金属塩からなる群から選ばれる。本発明で用いることができる適切なオキシ金属カチオンは、TiO2+、VO2+、CrO22+、ZrO2+、MoO22+、WO22+を含むが、これに限定されない。塩形成に用いられるアニオン種は、塩化物、リン酸塩、硫酸塩、アセテート、アセチルアセトネートなどであってもよい。本発明で用いることができる適切なオキシ金属アニオンは、MoO42-、WO42-、VO3-、H2PO42-、B472-などを含むが、これに限定されない。塩形成に用いられるカチオン種は、アンモニウム、テトラアルキルアンモニウム、アルカリ金属、アルカリ土類又はその他の適切なカチオンであってもよい。より具体的には、Na247又はZrO(アセテート)2を用いることが好ましい。
【0019】
本明細書で用いる用語、酸化剤は、活性酸素を助触媒に移動できるか又はTEMPO触媒の還元型を直接酸化できる(スキーム1を参照)化合物を意味する。用いることができる適切な酸化剤は、亜塩素酸塩、塩素酸塩、臭素酸塩、次亜塩素酸塩、次亜臭素酸塩、過酸化水素、有機ヒドロペルオキシド、過カルボン酸などを含むが、これに限定されない。より具体的には、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、次亜塩素酸カルシウム、次亜臭素酸ナトリウム、又は次亜臭素酸カリウムが用いられる。工業規模の漂白剤が特に好ましい。漂白剤は、そのままで用いてもよいが、又はイオン強度を向上し、かつpHを変更するために、ナトリウム、カリウム、マグネシウムの塩化物、硫酸塩、炭酸塩などの任意の無機塩、又はナトリウム、カリウムの炭酸塩、重炭酸塩などの塩基、又は酢酸、塩酸、硫酸などの酸により変性することができる。
【0020】
本発明の方法では溶媒の存在は重要ではない。この反応は、同様な効果及び同様なレベルの選択性をもつ適切なアルコール(neat alcohol)中で行われる。酸化されるアルコールが採用される反応温度で固体である場合、任意の通常の非極性、非プロトン性溶媒を使用することができる。特に好ましい溶媒は、塩化メチレン、クロロホルム、エチルアセテート、ブチルアセテート、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、トルエン、アセトン、ジエチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、ペンタン、ヘキサン、又はこれらの溶媒の混合物を含むが、これらの溶媒に限定されることはない。特に好ましい溶媒は、ヘプタン、トルエン及びエチルアセテートである。
【0021】
反応系への無機塩の添加は、系のイオン強度を増大し、かつ水性緩衝液の凝固点を下げる。酸化反応が無溶媒条件で行われる時、反応混合物の凝固点の低下が必要となる。適切な無機塩は、塩化ナトリウム及び塩化カリウムを含む群から選ばれるが、これらの化合物に限定されることはない。
【0022】
少量の有機酸及びHClの蓄積は、反応溶液のpHをより低い値に追いやるかもしれず、かつ反応速度を低下させるであろう。それ故、最大の速度及び高い製品選択性を達成するためには、この酸化反応は、水性緩衝液又は塩基の存在下で行い、生成した酸性副生物を捕捉することが好ましい。適切な緩衝剤及び塩基化合物は、NaHCO3、KHCO3、Na2CO3、K2CO3、K2PO4、Na2HPO4、NaH2PO4、K2HPO4、KH2PO4、NaOAcを含む群から選ばれるが、これらの化合物に限定されるものではない。これらの化合物は、約4から12のpH、かつ最も好ましくは8.6〜9.5のpHを維持するために有効な量で用いられる。
【0023】
反応は、温度範囲を横断して行うことができる。本発明の酸化が行われる温度は、アルデヒドの選択性に影響を及ぼす重要な変数である。好ましい反応温度は、−15℃から30℃の範囲、最も好ましくは0℃から10℃の範囲である。本発明の方法は、2つの非混和性相を十分に接触させることができ、かつ同時に反応温度を所望の範囲に維持できる、任意の通常のバッチ、半バッチ、又は連続的流動反応装置内で行うことができる。
【0024】
本発明の実施形態に従えば、酸化は以下のように行われる:
1.NaHCO3及びNa247の水溶液を調製する
2.式Iのアルコール基質中のMeO−TEMPOの溶液を添加する
3.HCl又はCH3COOHの希釈溶液を用いて2相系のpHを8.6〜9.5の範囲にする
4.攪拌された懸濁液を約0〜5℃に冷却する
5.式Iの化合物を酸化するために、反応温度を所望の設定値に維持して濃縮された漂白剤溶液の計量添加を開始する、かつ
6.添加後に反応系を攪拌し基質の転化を完了する。
【0025】
本発明の別の実施形態に従えば、酸化は反応溶媒の存在下で行われる:
1.NaHCO3及びNa247の水溶液を調製する
2.適当な反応溶媒中のMeO−TEMPO及び式Iのアルコール基質の溶液を添加する
3.HCl又はCH3COOHの希釈溶液を用いて2相系のpHを8.6〜9.5の範囲にする
4.攪拌された懸濁液を約0〜5℃に冷却する
5.式Iの化合物を酸化するために、反応温度を所望の設定値に維持して濃縮された漂白剤溶液の計量添加を開始する、かつ
6.添加後に反応系を攪拌し基質の転化を完了する。
【0026】
本発明の別の実施形態に従えば、酸化はZrO(アセテート)2助触媒の存在下行われ、かつ以下のステップを含む:
1.NaHCO3及びZrO(アセテート)2の水溶液を調製する
2.MeO−TEMPO及び式Iのアルコール基質の溶液を添加する
3.HCl又はCH3COOHの希釈溶液を用いて2相系のpHを8.6〜9.5の範囲にする
4.攪拌された懸濁液を約0〜5℃に冷却する
5.式Iの化合物を酸化するために、反応温度を所望の設定値に維持して濃縮された漂白剤溶液の計量添加を開始する、かつ
6.添加後に反応系を攪拌し基質の転化を完了する。
【0027】
本発明の別の実施形態に従えば、酸化は事前活性化漂白剤溶液を用いて行われ、かつ以下のように説明できる。
1.NaHCO3及びNa247の水溶液を調製する
2.適当な反応溶媒中のMeO−TEMPO及び式Iのアルコール基質の溶液を添加する
3.HCl又はCH3COOHの希釈溶液を用いて2相系のpHを8.6〜9.5の範囲にする
4.攪拌された懸濁液を約0〜5℃に冷却する
5.濃縮された漂白剤溶液の計量添加を開始し、かつこの漂白剤溶液のpHをHCl又はCH3COOHの希釈溶液を用いて下げる、かつ
6.添加後に反応系を攪拌し基質の転化を完了する。
【0028】
本発明の方法において、溶媒を用いる場合、溶媒は、塩化メチレン、クロロホルム、エチルアセテート、ブチルアセテート、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、トルエン、アセトン、ジエチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、及びこれらの溶媒の混合物などの非プロトン性不活性溶媒からなる群から選ばれることが好ましい。特に好ましい溶媒は、ヘプタン、トルエン及びエチルアセテート、又はこの溶媒の混合物である。
【0029】
本発明の方法では、MeO−TEMPO触媒は、0.001〜10.0%モル、より好ましくは約0.1〜1%モルの濃度で用いることが好ましい。助触媒は、0.002〜20.0%モル、より好ましくは約0.2〜2%モルの濃度で用いることが好ましい。漂白剤溶液が次亜塩素酸ナトリウムを含む時、この次亜塩素酸ナトリウムは、アルコール基質を基準にして、約0.8〜1.5当量、より好ましくは約1〜1.2当量で用いることが好ましい。
【0030】
反応が完了すると、粗3,3−ジメチルブチルアルデヒドは、相分離又は有機溶媒を用いた抽出により分離される。抽出に用いられる溶媒は、塩化メチレン、クロロホルム、エチルアセテート、ブチルアセテート、メチルアセテート、トルエン、ジエチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの非プロトン性不活性溶媒からなる群から選ぶことができる。所望のアルデヒドを分離した後、過剰の溶媒がリサイクルされる。この粗3,3−ジメチルブチルアルデヒドは、バッチ又は連続の蒸留又は分別蒸留、又は3,3−ジメチルブチルアルデヒドを濃縮するための薄膜蒸発装置の使用を含む幾つかの方法で回収できる。この粗3,3−ジメチルブチルアルデヒドは、米国特許第5,905,175号に記載されたように、又はバッチ又は連続の蒸留又は分別蒸留、又は薄膜蒸発装置の使用により精製できる。好ましい精製ステップは、100〜106℃、常圧での蒸留を含み、精製3,3−ジメチルブチルアルデヒドを得る。
【0031】
以下の実施例は、本発明の観点を説明するために与えられる。この実施例は、説明の目的に限って与えられるものであり、本明細書で実施した発明に限定されるべきではない。
【実施例】
【0032】
(実施例I−比較例)
実施例Iは、Anelliプロトコルとしても知られている(J.Organic Chemistry、1987年、52、2559頁及びJ.Organic Chemistry、1989年、54、2970頁に報告された)酸化反応に類似した条件下で参照酸化反応を示す。
【0033】
820mgの3,3−ジメチル−1−ブタノール(8mmol)及び14.9mgのMeO−TEMPO(0.08mmol)が、熱電対、添加口、テフロン(登録商標)塗布した磁気攪拌棒、及びpHプローブを装備したジャケット付きガラス製反応フラスコ中で、トルエン(20cc)に溶解される。臭化カリウム(45.25mg、0.4mmol)及び1,310mgのNaHCO3が、水(21.6cc)に溶解され、この水性相が、反応フラスコ中で1,000RPMで攪拌された有機部分に加えられる。攪拌された懸濁液が0℃に冷却され、かつ5.4gの12.3%のNaOCl(8.92mmol)水溶液が、5分かけて気密注入器により加えられる。反応混合物が更に30分間熟成され、かつGC分析のために有機層がサンプリングされる。3,3−ジメチルブチルアルデヒドの収率は、30分の反応時間で77%であり、60分の反応時間で91%である。
【0034】
下記は、1Kgの3,3−ジメチルブチルアルデヒドの製造に必要なMeO−TEMPO触媒、助触媒、及び緩衝剤の計算量である。
【0035】
【表1】

【0036】
表1のデータは、アルコールのTEMPO系漂白剤酸化として知られた方法の重大な欠陥を示すもので、この方法が実際の用途として経済的に実行できないことを示す。これらの方法は、大量の塩素化溶媒又はその他の溶媒、単位量の基質当たり大量のMeO−TEMPO触媒、過剰容量の水性緩衝液の推奨使用、及びアルコール基質の少なくとも5重量%の濃度の臭化カリウム助触媒の使用を含む。
【0037】
(実施例II−比較例)
実施例IIは、反応溶媒の不在下、KBr助触媒及びNaHCO3緩衝剤の存在下で行われたスケールアップした合成を示す。緩衝液の減量、KBrの顕著な減量、漂白剤溶液の緩やかな添加、及び漂白剤添加ステージ及び更に添加後の反応期のpHの連続的維持などの多くの改良がなされて、適切なアルコールの使用を可能にしている。実施例IIは、Anelliの条件に最も近似しており、かつ従来技術に比較してそれ自体が質的に新規なレベルであるが、本明細書では参照の目的に限って考慮される。
【0038】
16.9gの3,3−ジメチル−1−ブタノール(117.3mmol)及び0.0765gのMeO−TEMPO(0.411mmol)が、熱電対、添加口、テフロン(登録商標)塗布した磁気攪拌棒、及びpHプローブを装備したジャケット付きガラス製反応フラスコ中に仕込まれる。臭化カリウム(0.011g、0.104mmol)及び0.676gのNaHCO3が、水(12.4cc)に溶解され、この水溶液が、反応フラスコ中で1,000RPMで攪拌された有機部分に加えられる。攪拌された懸濁液が0℃に冷却され、かつ乳化液がHClの50%溶液を用いてpH=8.4に再調整される。反応体の温度が0℃に達した時、82g(133mmol)の12.1%のNaOCl水溶液が、90分かけて気密注入器によりポンプ注入される。漂白剤添加の間、pHは、数滴の50%HCl水溶液を用いて8.3〜8.4の水準に維持される。この反応混合物は、0℃でさらに120分間攪拌され、かつGC分析のために有機層がサンプリングされる。この第2ステージの反応は、0.2〜0.25ccのNaOH水溶液(50%濃度)を添加してpHが8.4に保たれる。3,3−ジメチルブチルアルデヒドの収率は、60分の反応時間で89.7%であり、90分の反応時間で91.5%である。
【0039】
(実施例III)
実施例IIIは、助触媒としてNaを用い、緩衝剤としてNaHCO3を用いる酸化を示す。この実施例は、Na助触媒が既知のKBr系より効果的である(実施例IIの結果と比較)ことを示す必要がある。
【0040】
16.9gの3,3−ジメチル−1−ブタノール(117.3mmol)及び0.0765gのMeO−TEMPO(0.411mmol)が、実施例Iのようにジャケット付きガラス製反応フラスコに仕込まれる。ホウ酸ナトリウム(0.380g、1.0mmol)及び0.676gのNaHCO3が、水(17cc)に溶解され、この水溶液が、反応フラスコ中で1,000RPMで攪拌された有機部分に加えられる。攪拌された懸濁液が0℃に冷却され、かつ乳化液がCH3COOHの50%溶液を用いてpH=8.4に再調整される。反応体の温度が0℃に達した時、77.5g(126mmol)の12.1%のNaOCl水溶液が、90分かけて気密注入器によりポンプ注入される(漂白剤溶液のpHは、50%のCH3COOH水溶液を用いて10に調節された)。漂白剤添加の間、pHは、数滴の50%CH3COOH水溶液を用いて8.3〜8.4の水準に維持された。この反応混合物は、0℃でさらに120分間攪拌され、かつGC分析のために有機層がサンプリングされる。この第2ステージの反応は、0.2〜0.25ccのNaOH水溶液(50%濃度)を添加してpHが8.4に保たれた。3,3−ジメチルブチルアルデヒドの収率は、60分の反応時間で94.0%であり、90分の反応時間で96.0%である。
【0041】
(実施例IV)
実施例IVは、KBr助触媒及びNaHCO3緩衝剤を除き、Na添加剤で置き換えた酸化を示す。
【0042】
16.9gの3,3−ジメチル−1−ブタノール(117.3mmol)及び0.0765gのMeO−TEMPO(0.411mmol)が、実施例Iのようにジャケット付きガラス製反応フラスコに仕込まれる。ホウ酸ナトリウム(0.380g、1.0mmol)が水(12cc)に溶解され、この水溶液が、反応フラスコ中で1,000RPMで攪拌された有機部分に加えられる。攪拌された懸濁液が0℃に冷却され、かつ乳化液がCH3COOHの50%溶液を用いてpH=8.4に再調整される。反応体の温度が0℃に達した時、75.5g(122mmol)の12.1%のNaOCl水溶液が、90分かけて気密注入器によりポンプ注入される。漂白剤添加の間、pHは、数滴の50%CH3COOH水溶液を用いて8.3〜8.4の水準に維持された。この反応混合物は、0℃でさらに120分間攪拌され、かつGC分析のために有機層がサンプリングされる。この第2ステージの反応は、0.2〜0.25ccのNaOH水溶液(50%濃度)を添加してpHが8.4に保たれた。3,3−ジメチルブチルアルデヒドの収率は、60分の反応時間で90.0%であり、90分の反応時間で91.0%である。
【0043】
(実施例V)
実施例Vは、KBr助触媒及びNaHCO3緩衝剤を除き、Na−Zr(アセテート)2添加剤で置き換えた酸化を示す。
【0044】
16.9gの3,3−ジメチル−1−ブタノール(117.3mmol)及び0.0765gのMeO−TEMPO(0.411mmol)が、実施例Iのようにジャケット付きガラス製反応フラスコに仕込まれる。ホウ酸ナトリウム(0.380g、1.0mmol)及びZr(アセテート)2(0.2g溶液、0.1mmol)が水(12.0cc)に溶解され、この水溶液が、反応フラスコ中で1,000RPMで攪拌された有機部分に加えられる。攪拌された懸濁液が0℃に冷却され、かつ乳化液がCH3COOHの50%溶液を用いてpH=8.4に再調整される。反応体の温度が0℃に達した時、75.5g(122mmol)の12.1%のNaOCl水溶液が、90分かけて気密注入器によりポンプ注入される(漂白剤溶液のpHは、50%のCH3COOH水溶液を用いて10に調節された)。漂白剤添加の間、pHは、数滴の50%CH3COOH水溶液を用いて8.3〜8.4の水準に維持された。この反応混合物は、0℃でさらに120分間攪拌され、かつGC分析のために有機層がサンプリングされる。この第2ステージの反応は、0.2〜0.25ccのNaOH水溶液(50%濃度)を添加してpHが8.4に保たれた。3,3−ジメチルブチルアルデヒドの収率は、60分の反応時間で95.0%であり、90分の反応時間で93.0%である。
【0045】
(実施例VI)
実施例VIは、KBr助触媒及びNaが同時に存在する酸化を示す。
【0046】
16.9gの3,3−ジメチル−1−ブタノール(117.3mmol)及び0.0765gのMeO−TEMPO(0.411mmol)が、実施例Iのようにジャケット付きガラス製反応フラスコに仕込まれる。ホウ酸ナトリウム(0.380g、1.0mmol)及び臭化カリウム(0.011g、0.104mmol)が水(12.0cc)に溶解され、この水溶液が、反応フラスコ中で1,000RPMで攪拌された有機部分に加えられる。攪拌された懸濁液が0℃に冷却され、かつ乳化液がCH3COOHの50%溶液を用いてpH8.4に再調整される。反応体の温度が0℃に達した時、75.5g(122mmol)の12.1%のNaOCl水溶液が、90分かけて気密注入器によりポンプ注入される(漂白剤溶液のpHは、50%のCH3COOH水溶液を用いて10に調節された)。漂白剤添加の間、pHは、数滴の50%CH3COOH水溶液を用いて8.3〜8.4の水準に維持された。この反応混合物は、0℃でさらに120分間攪拌され、かつGC分析のために有機層がサンプリングされる。この第2ステージの反応は、0.2〜0.25ccのNaOH水溶液(50%濃度)を添加してpHが8.4に保たれた。3,3−ジメチルブチルアルデヒドの収率は、60分の反応時間で94.0%であり、90分の反応時間で95.0%である。この収率は、臭化カリウムを用いなかった実施例IIIの収率に等しい。
【0047】
(実施例VII)
実施例VIIは、実施例VIに類似するが、新規触媒システムの頑強さを例証するものである。第2ステージで乳化液のpHを連続的に監視し、かつ維持するために、必要量のNaOH溶液が、酸化の第2ステージの開始時に一度に導入された。その他の濃度及び割合の全ては、実施例IIIと同様である。
【0048】
16.9gの3,3−ジメチル−1−ブタノール(117.3mmol)及び0.0765gのMeO−TEMPO(0.411mmol)が、実施例Iのようにジャケット付きガラス製反応フラスコに仕込まれる。ホウ酸ナトリウム(0.380g、1.0mmol)及び0.676gのNaHCO3が、水(17cc)に溶解され、この水溶液が、反応フラスコ中で1,000RPMで攪拌された有機部分に加えられる。攪拌された懸濁液が0℃に冷却され、かつ乳化液がCH3COOHの50%溶液を用いてpH=8.4に再調整される。反応体の温度が0℃に達した時、77.5g(126mmol)の12.1%のNaOCl水溶液が、90分かけて気密注入器によりポンプ注入される(漂白剤溶液のpHは、50%のCH3COOH水溶液を用いて10に調節された)。漂白剤添加の間、pHは、数滴の50%CH3COOH水溶液を用いて8.3〜8.4の水準に維持された。この反応混合物は、0℃でさらに120分間攪拌され、かつGC分析のために有機層がサンプリングされる。この実施例では、漂白剤の添加が完了した後、直ちに0.2〜0.25ccのNaOH水溶液(50%濃度)が添加され、乳化液のpHを保つために手間は要らなかった。3,3−ジメチルブチルアルデヒドの収率は、60分の反応時間で97.0%であり、90分の反応時間で94.0%である。
【0049】
(実施例VIII)
実施例VIIIは、実施例VIIに類似するが、MeO−TEMPOの量が1/2に減少している。その他の濃度及び割合の全ては、実施例IIと同様である。
【0050】
16.9gの3,3−ジメチル−1−ブタノール(117.3mmol)及び0.0382gのMeO−TEMPO(0.205mmol)が、実施例Iのようにジャケット付きガラス製反応フラスコに仕込まれる。ホウ酸ナトリウム(0.380g、1.0mmol)及び0.676gのNaHCO3が、水(17cc)に溶解され、この水溶液が、反応フラスコ中で1,000RPMで攪拌された有機部分に加えられる。攪拌された懸濁液が0℃に冷却され、かつ乳化液がCH3COOHの50%溶液を用いてpH=8.4に再調整される。反応体の温度が0℃に達した時、77.5g(126mmol)の12.1%のNaOCl水溶液が、90分かけて気密注入器によりポンプ注入される(漂白剤溶液のpHは、50%のCH3COOH水溶液を用いて10に調節された)。漂白剤添加の間、pHは、数滴の50%CH3COOH水溶液を用いて8.3〜8.4の水準に維持された。この反応混合物は、0℃でさらに120分間攪拌され、かつGC分析のために有機層がサンプリングされる。この実施例では、漂白剤の添加が完了した後、直ちに0.2〜0.25ccのNaOH水溶液(50%濃度)が添加され、乳化液のpHを保つために手間は要らなかった。3,3−ジメチルブチルアルデヒドの収率は、60分の反応時間で94.0%であり、90分の反応時間で99.0%である。
【0051】
(実施例IX)
実施例IXは、Na247がTEMPOシステムに対して独立した助触媒として役割を演じるその役割に光を投じる。この実施例では、ホウ酸ナトリウムが完全に除かれ、追加の当モル量のNaHCO3で置き換えられた。アルデヒド収量の完全な低下は、Na247の存在が、標準的反応条件下で触媒効果を達成するのに重要である(実施例VIIIと比較)ことを示す。
【0052】
16.9gの3,3−ジメチル−1−ブタノール(117.3mmol)及び0.0382gのMeO−TEMPO(0.205mmol)が、実施例Iのようにジャケット付きガラス製反応フラスコに仕込まれる。0.757gのNaHCO3が、水(17cc)に溶解され、この水溶液が、反応フラスコ中で1,000RPMで攪拌された有機部分に加えられる。攪拌された懸濁液が0℃に冷却され、かつ乳化液がCH3COOHの50%溶液を用いてpH8.4に再調整される。反応体の温度が0℃に達した時、77.5g(126mmol)の12.1%のNaOCl水溶液が、90分かけて気密注入器によりポンプ注入される(漂白剤溶液のpHは、50%のCH3COOH水溶液を用いて10に調節された)。漂白剤添加の間、pHは、数滴の50%CH3COOH水溶液を用いて8.3〜8.4の水準に維持された。この反応混合物は、0℃でさらに120分間攪拌され、かつGC分析のために有機層がサンプリングされる。この実施例では、漂白剤の添加が完了した後、直ちに0.2〜0.25ccのNaOH水溶液(50%濃度)が添加され、乳化液のpHを保つために手間は要らなかった。3,3−ジメチルブチルアルデヒドの収率は、60分の反応時間で67.0%であり、90分の反応時間で67.0%である。
【0053】
次のシリーズの実施例は、異なる4−置換TEMPO触媒及びNa247助触媒の使用を示す。
【0054】
(実施例X)
12.2gの98%純度の3,3−ジメチル−1−ブタノール(117.3mmol)及び0.043gのMeO−TEMPO(0.223mmol)が、実施例Iのようにジャケット付きガラス製反応フラスコに仕込まれる。ホウ酸ナトリウム(0.294g、0.76mmol)、NaHCO3(1.472g、17.5mmol)およびNaCl(2g)が、水(25cc)に溶解され、この水溶液が、反応フラスコ中で1,000RPMで攪拌された有機部分に加えられる。攪拌された懸濁液が0℃に冷却され、かつ乳化液がNaOHの40%溶液を用いてpH8.6に再調整される。反応体の温度が0℃に達した時、69.8g(123.1mmol)の13.1%のNaOCl水溶液が、55分かけて気密注入器によりポンプ注入される。この反応混合物は、0℃でさらに15分間攪拌され、かつGC分析のために有機層がサンプリングされる。3,3−ジメチルブチルアルデヒドの収率は、漂白剤添加後の2分で90.6%であり、15分の反応時間で92.1%である。
【0055】
(実施例XI)
12.2gの98%純度の3,3−ジメチル−1−ブタノール(117.3mmol)及び0.036gのTEMPO(0.223mmol)が、実施例Iのようにジャケット付きガラス製反応フラスコに仕込まれる。ホウ酸ナトリウム(0.294g、0.76mmol)、NaHCO3(1.472g、17.5mmol)およびNaCl(2g)が、水(25cc)に溶解され、この水溶液が、反応フラスコ中で1,000RPMで攪拌された有機部分に加えられる。攪拌された懸濁液が0℃に冷却され、かつ乳化液がNaOHの40%溶液を用いてpH8.6に再調整される。反応体の温度が0℃に達した時、69.8g(123.1mmol)の13.1%のNaOCl水溶液が、55分かけて気密注入器によりポンプ注入される。この反応混合物は、0℃でさらに15分間攪拌され、かつGC分析のために有機層がサンプリングされる。3,3−ジメチルブチルアルデヒドの収率は、漂白剤添加後の2分で87.4%であり、15分の反応時間で91.2%である。
【0056】
(実施例XII)
12.2gの98%純度の3,3−ジメチル−1−ブタノール(117.3mmol)及び0.049gの4−アセタミド−TEMPO(0.223mmol)が、実施例Iのようにジャケット付きガラス製反応フラスコに仕込まれる。ホウ酸ナトリウム(0.294g、0.76mmol)、NaHCO3(1.472g、17.5mmol)およびNaCl(2g)が、水(25cc)に溶解され、この水溶液が、反応フラスコ中で1,000RPMで攪拌された有機部分に加えられる。攪拌された懸濁液が0℃に冷却され、かつ乳化液がNaOHの40%溶液を用いてpH8.6に再調整される。反応体の温度が0℃に達した時、69.8g(123.1mmol)の13.1%のNaOCl水溶液が、55分かけて気密注入器によりポンプ注入される。この反応混合物は、0℃でさらに15分間攪拌され、かつGC分析のために有機層がサンプリングされる。3,3−ジメチルブチルアルデヒドの収率は、漂白剤添加後の2分で88.3%であり、15分の反応時間で92.1%である。
【0057】
(実施例XIII)
8.6gの98%純度のヘプタン−1−オール(72.8mmol)、トルエン(10cc)及び0.047gのMeO−TEMPO(0.252mmol)が、実施例Iのようにジャケット付きガラス製反応フラスコに仕込まれる。ホウ酸ナトリウム(0.129g、0.338mmol)、及びNaHCO3(0.43g)が、水(15cc)に溶解され、この水溶液が、反応フラスコ中で1,000RPMで攪拌された有機部分に加えられる。攪拌された懸濁液が0℃に冷却され、かつ乳化液がCH3COOHの50%溶液を用いてpH=8.6に再調整される。反応体の温度が0℃に達した時、47.7g(84.0mmol)の13.1%のNaOCl水溶液が、20分かけて気密注入器によりポンプ注入される。この反応混合物は、0℃でさらに15分間攪拌され、かつGC分析のために有機層がサンプリングされる。ヘプタナールの収率は、漂白剤添加後の2分で93.0%である。
【0058】
(実施例XIV)
7.5gの98%純度のヘキサン−1−オール(72.8mmol)、トルエン(10cc)及び0.047gのMeO−TEMPO(0.252mmol)が、実施例Iのようにジャケット付きガラス製反応フラスコに仕込まれる。ホウ酸ナトリウム(0.129g、0.338mmol)及びNaHCO3(0.43g)が、水(15cc)に溶解され、この水溶液が、反応フラスコ中で1,000RPMで攪拌された有機部分に加えられる。攪拌された懸濁液が0℃に冷却され、かつ乳化液がCH3COOHの50%溶液を用いてpH8.6に再調整される。反応体の温度が0℃に達した時、47.7g(84.0mmol)の13.1%のNaOCl水溶液が、20分かけて気密注入器によりポンプ注入される。この反応混合物は、0℃でさらに15分間攪拌され、かつGC分析のために有機層がサンプリングされる。ヘキサナールの収率は、漂白剤添加後の2分で90.0%である。
【0059】
(実施例XV)
7.9gの99%純度のベンジルアルコール(72.3mmol)、トルエン(10cc)及び0.047gのMeO−TEMPO(0.252mmol)が、実施例Iのようにジャケット付きガラス製反応フラスコに仕込まれる。ホウ酸ナトリウム(0.129g、0.338mmol)及びNaHCO3(0.43g)が、水(15cc)に溶解され、この水溶液が、反応フラスコ中で1,000RPMで攪拌された有機部分に加えられる。攪拌された懸濁液が0℃に冷却され、かつ乳化液がCH3COOHの50%溶液を用いてpH8.6に再調整される。反応体の温度が0℃に達した時、47.7g(84.0mmol)の13.1%のNaOCl水溶液が、20分かけて気密注入器によりポンプ注入される。この反応混合物は、0℃でさらに15分間攪拌され、かつGC分析のために有機層がサンプリングされる。ベンズアルデヒドの収率は、漂白剤添加後の2分で100.0%である。
【0060】
(実施例XVI)
8.36gの98%純度の4−メチルシクロヘキサノル(71.7mmol)、トルエン(10cc)及び0.047gのMeO−TEMPO(0.252mmol)が、実施例Iのようにジャケット付きガラス製反応フラスコに仕込まれる。ホウ酸ナトリウム(0.129g、0.338mmol)及びNaHCO3(0.43g)が、水(15cc)に溶解され、この水溶液が、反応フラスコ中で1,000RPMで攪拌された有機部分に加えられる。攪拌された懸濁液が0℃に冷却され、かつ乳化液がCH3COOHの50%溶液を用いてpH8.4に再調整される。反応体の温度が0℃に達した時、47.7g(84.0mmol)の13.1%のNaOCl水溶液が、20分かけて気密注入器によりポンプ注入される。この反応混合物は、0℃でさらに5分間攪拌され、かつGC分析のために有機層がサンプリングされる。4−メチルシクロヘキサノンの収率は、漂白剤添加後の5分で94.0%である。
【0061】
(実施例XVII)
7.55gの99%純度の4−メチル−2−ペンタノール(73.2mmol)、トルエン(10cc)及び0.047gのMeO−TEMPO(0.252mmol)が、実施例Iのようにジャケット付きガラス製反応フラスコに仕込まれる。ホウ酸ナトリウム(0.129g、0.338mmol)及びNaHCO3(0.43g)が、水(15cc)に溶解され、この水溶液が、反応フラスコ中で1,000RPMで攪拌された有機部分に加えられる。攪拌された懸濁液が0℃に冷却され、かつ乳化液がCH3COOHの50%溶液を用いてpH8.4に再調整される。反応体の温度が0℃に達した時、47.7g(84.0mmol)の13.1%のNaOCl水溶液が、20分かけて気密注入器によりポンプ注入される。この反応混合物は、0℃でさらに5分間攪拌され、かつGC分析のために有機層がサンプリングされる。4−メチル−2−ペンタノンの収率は、漂白剤添加後の5分で77.0%である。22℃で行われた同一の反応は、92%の収率で所望の4−メチル−2−ペンタノンを生成した。
【0062】
(実施例XVIII)
8.68gの98%純度のヘプタノール−1(73.2mmol)、トルエン(10cc)及び0.047gのMeO−TEMPO(0.252mmol)が、実施例Iのようにジャケット付きガラス製反応フラスコに仕込まれる。ホウ酸ナトリウム(0.129g、0.338mmol)及びNaHCO3(0.43g)が、水(15cc)に溶解され、この水溶液が、反応フラスコ中で1,000RPMで攪拌された有機部分に加えられる。攪拌された懸濁液が0℃に冷却され、かつ乳化液がCH3COOHの50%溶液を用いてpH8.4に再調整される。反応体の温度が0℃に達した時、95.4g(168.0mmol)の13.1%のNaOCl水溶液が、40分かけて気密注入器によりポンプ注入される。この反応混合物は、0℃でさらに5分間攪拌され、かつGC分析のために有機層がサンプリングされる。ヘプタン酸の収率は、漂白剤添加後の5分で83.0%である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1級及び第2級アルコールをアルデヒド及びケトンに酸化する方法であって、第1級又は第2級アルコールを酸化剤と反応させることを含み、その際、前記アルコールが、2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルオキシ触媒類を含む群から選ばれた触媒を含む溶液中にあり、かつ更に助触媒の存在下にあり、助触媒がオキシ金属イオン及びそれらの塩を含む群から選ばれ、前記アルコールが前記溶液中で基質として作用する方法。
【請求項2】
前記第1級及び第2級アルコールが、メタノール、エタノール、n−及びiso−プロピルアルコール、n−、iso−及びsec−ブチルアルコール、ペンチルアルコール、ヘキシルアルコール、ネオペンチルアルコール、ネオヘキシルアルコール、オクチルアルコール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ノナデシルアルコール、エイコシルアルコール、及びアリルアルコール、クロチルアルコール及びプロパギルアルコール(これに限定されない)を含む不飽和アルコール、及びベンジルアルコール、フェニルエタノール及びフェニルプロパノール(これに限定されない)を含む芳香族アルコールを含む群から選ばれる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルオキシ触媒が、式:


(式中、R1、R2、R3及びR4が、独立して、同一又は異なる構造の低級アルキル又は置換アルキル基であり、R5及びR6が、ともに水素であるか又は低級アルコキシであるか、又は1方が水素でありかつ他方が低級アルコキシ、ヒドロキシ、アミノ、アルキル又はジアルキルアミノ、アルキルカルボニルオキシ、アルキルカルボニルアミノであるか、又は酸素又はケタールにより結合して置換されてもよく、かつY-がアニオンである)で表される触媒類からなる群から選ばれる請求項1に記載の方法。
【請求項4】
2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルオキシ触媒が、基質アルコールの0.001〜10モル%の量で存在する請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記TEMPO系触媒が、4−メトキシ−TEMPO、4−エトキシ−TEMPO、4−アセトキシ−TEMPO、4−アセタミノ−TEMPO、4−ヒドロキシ−TEMPO、4−ベンゾイルオキシ−TEMPO、4−アミノ−TEMPO、N,N−4−ジメチルアミノ−TEMPO、4−オクソ−TEMPO、ポリ[(6−[1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ]−s−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)イミノ]]及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれる請求項3に記載の方法。
【請求項6】
助触媒が、TiO2+、VO2+、CrO22+、ZrO2+、MoO22+、WO22+を含むオキシ金属カチオンの群、及びMoO42-、WO42-、VO3-、H2PO42-、B472-を含むアニオンの群から選ばれる請求項1に記載の方法。
【請求項7】
助触媒が、Na247又はZrO(アセテート)2である請求項6に記載の方法。
【請求項8】
助触媒濃度が、基質アルコールの0.01〜20%モルである請求項6に記載の方法。
【請求項9】
酸化剤が、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、次亜塩素酸カルシウム、亜塩素酸ナトリウム、過酸化水素、tert−ブチルヒドロペルオキシド、トリクロロイソシアヌル酸、過酢酸、過ギ酸、トリクロロ過酢酸及びトリフルオロ過酢酸を含む群から選ばれる請求項1に記載の方法。
【請求項10】
酸化剤とアルコールの比率が、約1:0.8から1:1.5の範囲である請求項9に記載の方法。
【請求項11】
1種又は複数の追加の溶媒をアルコール溶液に添加することを更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記溶媒が、水、アセトニトリル、アセトン、テトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン、メチル−tert−ブチルエーテル、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、エチルアセテート、メチルアセテート、及び上記群の溶媒の混合物を含む群から選ばれる請求項11に記載の方法。
【請求項13】
酸化が追加溶媒の不在下で行われる請求項1に記載の方法。
【請求項14】
緩衝溶液がアルコール溶液に添加される請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記緩衝溶液が、pHを約4から約12に維持するために必要な、NaHCO3、KHCO3、Na2CO3、K2CO3、K2PO4、Na2HPO4、NaH2PO4、K2HPO4、KH2PO4、NaOAc及びそれらの任意の組み合わせからなる溶液を含む請求項14に記載の方法。
【請求項16】
反応温度が−10℃から50℃の範囲に維持される請求項1に記載の方法。
【請求項17】
乳化液のpHを約4〜12のpH範囲に維持しながら、漂白剤溶液をアルコール及び水性緩衝剤の溶液に添加する請求項14に記載の方法。
【請求項18】
漂白剤溶液の添加時間が、一度に全量添加と10時間で全量添加の間にあり、かつ後段の追加反応が、さらに0から10時間継続される請求項17に記載の方法。
【請求項19】
乳化液のpHを約4〜12のpH範囲に維持しながら、助触媒とともに触媒のアルコール基質溶液を、長時間かけて緩衝漂白剤溶液に添加する請求項18に記載の方法。
【請求項20】
触媒のアルコール溶液の添加時間が、一度に全量添加と10時間で全量添加の間にあり、かつ後段の追加反応が、さらに0から30時間継続される請求項1に記載の方法。
【請求項21】
バッチ又は連続の蒸留又は分別蒸留、又は薄膜蒸発装置により粗アルデヒド又はケトンを精製するさらなるステップを含む請求項1に記載の方法。
【請求項22】
3,3−ジメチルブチルアルデヒドの製造方法であって、3,3−ジメチルブタノールを酸化剤と反応させるステップを含み、その際、前記3,3−ジメチルブタノールが、2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルオキシ触媒を含む群から選ばれた触媒を含む溶液中にあり、かつ更にTiO2+、VO2+、CrO22+、ZrO2+、MoO22+、WO22+を含むオキシ金属カチオンの群及びMoO42-、WO42-、VO3-、H2PO42-、B472-を含むアニオンの群とを含む群から選ばれた助触媒の存在下にある方法。
【請求項23】
前記酸化剤が、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、次亜塩素酸カルシウム、亜塩素酸ナトリウム、過酸化水素、tert−ブチルヒドロペルオキシド、トリクロロイソシアヌル酸、過酢酸、過ギ酸、トリクロロ過酢酸及びトリフルオロ過酢酸を含む群から選ばれる請求項22に記載の方法。
【請求項24】
酸化剤とアルコールの比率が、約1:0.8から1:1.5の範囲である請求項22に記載の方法。
【請求項25】
追加の溶媒をアルコール溶液に添加することを更に含む請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記溶媒が、水、アセトニトリル、アセトン、テトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン、メチル−tert−ブチルエーテル、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、エチルアセテート、メチルアセテート、及び上記群の溶媒の混合物を含む群から選ばれる請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記方法が溶媒の不在下で行われる請求項22に記載の方法。
【請求項28】
緩衝液をアルコール溶液に添加する請求項22に記載の方法。
【請求項29】
前記緩衝液が、pHを約4から約12に維持するために必要な、NaHCO3、KHCO3、Na2CO3、K2CO3、K2PO4、Na2HPO4、NaH2PO4、K2HPO4、KH2PO4、NaOAc及びそれらの任意の組み合わせからなる溶液を含む請求項28に記載の方法。
【請求項30】
乳化液のpHを約4〜12のpH範囲に維持しながら、漂白剤溶液をアルコール及び水性緩衝剤の溶液に添加する請求項29に記載の方法。
【請求項31】
漂白剤溶液の添加時間が、一度に全量添加と10時間で全量添加の間にあり、かつ後段の追加反応時間が、さらに0から10時間継続される請求項29に記載の方法。
【請求項32】
第1級及び第2級アルコールをアルデヒド及びケトンに酸化する方法であって、第1級又は第2級アルコールを酸化剤と反応させることを含み、その際、前記アルコールが、2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルオキシ触媒類を含む群からそれぞれ選ばれた2種又はそれ以上の触媒を含む溶液中にあり、かつ更に助触媒の存在下にあり、助触媒がオキシ金属イオン及びそれらの塩を含む群から選ばれ、前記アルコールが前記溶液中で基質として作用する方法。

【公表番号】特表2006−517584(P2006−517584A)
【公表日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−503132(P2006−503132)
【出願日】平成16年1月29日(2004.1.29)
【国際出願番号】PCT/US2004/002475
【国際公開番号】WO2004/067484
【国際公開日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【出願人】(505246022)ザ ヌトラスウィート カンパニー (2)
【Fターム(参考)】