説明

酸化染毛剤

【課題】 毛髪が傷つきにくく、パサパサになりにくく、自然な染め上がりと十分な染色堅牢性が得られる酸化染毛剤を提供する。
【解決手段】 酸化染料中間体、カプラー及びアルカリ剤を含む第1剤、並びに酸化剤を含む第2剤を、使用時に混合して調製される酸化染毛剤であって、一般式(1)で示される構成単位を有する両性高分子(A)を含有することを特徴とする酸化染毛剤である。
【化5】


式中、R1は水素原子、メチル基又はエチル基、R2は炭素数1〜6のアルキレン基、R3及びR5は炭素数1〜6のアルキル基、R4は炭素数1〜3のアルキレン基、Qは酸素原子又は−NH−、Zは−COO又は−SO3である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は酸化染毛剤に関する。詳しくは、酸化染毛料とアルカリ剤を含有する第1剤と酸化剤を含有する第2剤からなる、いわれる酸化染毛剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
白髪染め、ヘアダイ及びおしゃれ染めなどとして利用が多い酸化染毛剤は、酸化染料中間体とカップラーとアルカリ剤を含有する第1剤と、酸化剤を含有する第2剤からなる二剤型のものが利用されている。これらの酸化染毛剤は、毛髪内部の皮質で発色・定着するため色持ちが良く、しかも脱色しながら染色することによって、望んだ色に染めることが可能であり、染毛力も優れている。しかし、従来の酸化染毛剤は、染毛によって毛髪が傷つきやすく、毛髪のつややうるおいがなくなって、パサパサになり、櫛通りが悪くなったり、シャンプーを繰り返すことによって退色し易いという問題があった。これらの対策として、カチオン性高分子と各種の両性高分子やアニオン性高分子の併用(特許文献1)などが提案されているが、これらであっても毛髪のしっとり感あるいは滑らかさが不十分であり、染色堅牢性においても不十分であった。
【特許文献1】特開2002−193772号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、毛髪が傷つきにくく、パサパサになりにくく、染色堅牢性に優れた酸化染毛剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、鋭意研究を行った結果、特定の両性高分子を使用することにより、上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、酸化染料中間体、カプラー及びアルカリ剤を含む第1剤、並びに酸化剤を含む第2剤を、使用時に混合して調製される酸化染毛剤であって、一般式(1)で示される構成単位を有する両性高分子(A)を含有することを特徴とする酸化染毛剤である。
【化2】

式中、R1は水素原子、メチル基又はエチル基、R2は炭素数1〜6のアルキレン基、R3及びR5は炭素数1〜6のアルキル基、R4は炭素数1〜3のアルキレン基、Qは酸素原子又は−NH−、Zは−COO又は−SO3である。
【発明の効果】
【0005】
本発明の酸化染毛剤は、毛髪が傷つきにくく、パサパサになりにくく、染色堅牢性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の酸化染毛剤は、前記一般式(1)で示される構成単位を有する両性高分子(A)を必須成分とする。
【0007】
本発明の酸化染毛剤に含まれる両性高分子(A)を示す一般式(1)において、R1は水素原子、メチル基又はエチル基であり、好ましいのは水素原子である。またR2としてはメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基及びヘキシレン基などが挙げられるが、好ましいのはエチレン基である。R3及びR5としては、メチル基、エチル基、プロピル基(n−プロピル基及びイソプロピル基)、ブチル基(n−ブチル基、イソブチル基及びsec−ブチル基など)、n−ヘキシル基などが挙げられ、好ましいのはメチル基及びエチル基である。R4としては、メチレン基、エチレン基及びプロピレン基が挙げられ、好ましいのはメチレン基である。Qのうち好ましいのは酸素原子であり、Zのうち好ましいのは−COOである。上記の好ましい範囲であると原料が特に入手し易く、また収率も向上しやすい。
【0008】
本発明の両性高分子(A)は、両性単量体を重合する方法又は高分子反応による方法によって製造できる。
【0009】
両性単量体を重合する方法における両性単量体としては一般式(2)で示される両性単量体(a)が挙げられる。
【0010】
【化3】

【0011】
式中、R1、R2、R3、R4、R5、Q及びZは一般式(1)における基と同様である。
【0012】
一般式(2)で示される両性単量体(a)の具体例としては、ジメチルアミノエチル(α−ヒドロキシメチル)アクリレートのカルボキシベタイン化物、及びジエチルアミノエチル(α−ヒドロキシメチル)アクリレートのカルボキシベタイン化物などが挙げられる。
【0013】
前記両性単量体(a)のうち、一般式(2)におけるQが酸素原子である単量体の製造方法としては、以下のように、α−ヒドロキシアルキル化に引き続いてベタイン化する方法が挙げられる。
(1)ジアルキルアミノアルキルアクリレートのα−ヒドロキシアルキル化反応;
α−ヒドロキシメチルアクリレート化合物の製造方法に関しては、その収率の向上や精製方法も含めて多くの特許文献に提案されている(例えば、特開昭61−134353号公報、特開平05−17375号公報、特開平07−285906号公報、特開平08−301817号公報及び特開平08−183758号公報など)。これらのうち特にジアルキルアミノアルキルアクリレートのα−ヒドロキシアルキル化反応に関しては、例えば、特開昭61−134353号公報に記載されている。具体的には、ジアルキルアミノアルキルアクリレートとアルデヒドを三級アミンの存在下に反応させてジアルキルアミノアルキルα−(ヒドロキシアルキル)アクリレートを製造する。ジアルキルアミノアルキルアクリレートとしては、ジメチルアミノエチルアクリレート及びジエチルアミノエチルアクリレートなどが挙げられる。アルデヒドとしてホルムアルデヒドを使用した場合はα−(ヒドロキシメチル)基、即ち前記一般式(2)におけるR1が水素原子のものが生成し、アルデヒドとしてアセトアルデヒドを使用した場合はα−(1−ヒドロキシエチル)基、即ちR1がメチル基のものが生成する。三級アミンとしては、1,4−ジアザビシクロ−[2,2,2]−オクタン(以下において、DABCOと略記することがある)及びトリエチルアミンなどが挙げられる。ジアルキルアミノアルキルアクリレート/アルデヒドの仕込みモル比は、好ましくは1/0.9〜1/1.2、さらに好ましくは1/0.95〜1/1.05である。反応温度は、好ましくは20〜60℃、さらに好ましくは20〜40℃であり、反応時間は通常10〜100時間、好ましくは20〜80時間である。得られた組成生物を中和・溶剤抽出などを行って精製し目的物を得ることができる。
【0014】
(2)両性化反応(ベタイン化反応);
ジアルキルアミノアルキルα−(ヒドロキシアルキル)アクリレートと一般式(3)で示される化合物(B)とを反応させて両性化する。
X−R5−Z-+ (3)
式中、R5及びZは一般式(1)におけると同様であり、好ましいものも同様である。
Xはハロゲン原子、Mはカチオンである。Xで示されるハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。Mで示されるカチオンとしては、アルカリ金属原子(ナトリウム、カリウム及びリチウムなど)カチオン、アルカリ土類金属原子(カルシウム及びマグネシウムなど)カチオン、アンモニウムカチオン、有機アミン(モノメチルアミン、モノエチルアミン及びモノブチルアミンなどのモノアルキルアミン;ジメチルアミン、ジエチルアミン及びジブチルアミンなどのジアルキルアミン;トリメチルアミン、トリエチルアミン及びトリブチルアミンなどのトリアルキルアミン;シクロヘキシルアミンなどの環状アミン;並びに、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン及びトリエタノールアミンなどのアルカノールアミン)カチオン、及び第4級アンモニウムカチオン(テトラメチルアンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオン及びトリメチルベンジルアンモニウムカチオンなど)などが挙げられる。一般式(4)で示される化合物(B)の具体例としては、モノクロル酢酸ナトリウム、モノクロル酢酸カリウム、モノクロル酢酸モノエタノールアミン塩などが挙げられる。両性化反応における仕込みモル比、温度、時間及び精製方法などは、通常の方法でよく、例えば、ジアルキルアミノアルキルα−(ヒドロキシアルキル)アクリレートと一般式(4)で示される化合物との仕込みモル比(アクリレート/化合物)は、通常0.8/1〜1/1.3、好ましくは1/1〜1/1.2である。なお、反応中の重合を防止するために重合禁止剤(例えば、メチルハイドロキノン、ハイドロキノン及びフェノチアジンなど)を、アクリレートの重量に対して0.1〜3重量%添加することが好ましい。 溶剤としては、水、親水性有機溶剤(メタノール、エタノール及びイソプロパノールなどのアルコール類、アセトン及びメチルエチルケトンなどのケトン類、酢酸エチルなどのエステル類)、又は水と親水性有機溶剤との混合溶剤が使用できる。溶剤として水の使用割合が多いほど両性化反応が進行しやすい。一方、水の使用量が少なく親水性有機溶剤の使用割合が多い(例えば90%以上)ほど副生する塩が析出し易く、副生塩の除去がし易いという利点がある。従って、工程上のコスト、及び得られる両性化物の使用目的を考慮して、溶剤の使用量や割合は適宜選択できる。反応温度は、通常は50〜100℃、好ましくは60〜90℃であり、反応時間は通常4〜30時間、好ましくは5〜20時間である。精製方法としては、副生塩が析出している場合は濾過、副生塩が溶解している場合は透析やイオン交換などが挙げられる。なお、反応条件、特に反応系の水分の量やpHによっては、副生物としてジアルキルアミノアルキルα−(ヒドロキシアルキル)アクリレートのヒドロキシル基が化合物(B)と反応してできるカルボキシアルキルエーテル化物(例えば、ジアルキルアミノアルキルα−(カルボキシメチルオキシメチル)アクリレート及びα−(カルボキシメチルオキシメチル)アクリロイルオキシエチルジメチルベタインなど)が生成することもあるが、これらの副生物は一般式(2)で示される単量体の重量に対して20重量%未満であれば、本願発明の効果に大きな影響を与えることがない。
【0015】
両性単量体(a)のうち、一般式(2)におけるQが−NH−である単量体の製造方法としては、原料としての前記ジアルキルアミノアルキルアクリレートをジアルキルアミノアルキルアクリルアミドに変更することのみで製造する方法が挙げられる。
【0016】
両性単量体(a)のうち、一般式(2)におけるR4がエチレン基でZ-がCOO-である単量体の製造は、ジアルキルアミノアルキルα−(ヒドロキシアルキル)アクリレートとβ−プロピオラクトンとの反応により製造でき、R4がプロピレン基でZ-がSO3-である単量体の製造は、ジアルキルアミノアルキルα−(ヒドロキシアルキル)アクリレートと1,3−プロパンサルトンとの反応で製造できる(類似の反応が特公昭55−11128号公報に記載されている)。
【0017】
本発明における両性高分子(A)は、前記の両性単量体(a)のみを重合した単独重合体であってもよいが、その他の単量体との共重合体であってもよい。その他の単量体としては、例えば、下記の(b1)親水性ノニオン性ビニル単量体、(b2)疎水性ノニオン性ビニル単量体、(b3)アニオン性ビニル単量体、(b4)カチオン性ビニル単量体、及び(b5)前記の両性単量体以外の両性単量体が挙げられる。
【0018】
(b1)親水性ノニオン性ビニル単量体
(b11)アミド基含有ビニル単量体
非置換又はモノアルキル(炭素数1〜4)置換(メタ)アクリルアミド[(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド及びN−エチル(メタ)アクリルアミドなど]、ジアルキル(炭素数1〜4)置換(メタ)アクリルアミド[N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド及びN,N−ジエチル(メタ)アクリルアミドなど]、及びヒドロキシアルキル(炭素数1〜4)置換(メタ)アクリルアミド[N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド及びN,N−ジヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミドなど]が挙げられる。
(b12)ヒドロキシル基含有ビニル系単量体
ヒドロキシアルキル(炭素数2〜6)(メタ)アクリレート[ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及びヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなど]及び炭素数3〜12のアルケノール[(メタ)アリルアルコール、クロチルアルコール及びイソクロチルアルコールなど]が挙げられる。
【0019】
(b13)ポリアルキレングリコール鎖含有ビニル系単量体
ポリアルキレングリコール(アルキレン基の炭素数2〜4、重合度2〜50)又はそのアルキル(炭素数1〜6)エーテルの(メタ)アクリレート[ポリエチレングリコール(分子量100〜300)モノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(分子量130〜500)モノアクリレート、メトキシポリエチレングリコール(分子量110〜310)(メタ)アクリレート及びラウリルアルコールEO付加物(2〜30モル)(メタ)アクリレート等]が挙げられる。
【0020】
(b2)疎水性ノニオン性ビニル単量体
炭素数2〜12の飽和脂肪酸のビニルエステル[酢酸ビニル及びプロピオン酸ビニルなど]、アルキルビニルエーテル、アルキルビニルケトン、(メタ)アクリル酸アルキルエステル[メチル(メタ)アクリレート及びエチル(メタ)アクリレートなど]、マレイン酸ジアルキルエステル[ジメチルマレエート及びジエチルマレエートなど]、グルシジル(メタ)アクリレート、塩化ビニル、アルケン[エチレン、プロピレン、イソブチレン、ジイソブチレン及びドデセンなど]、アルカジエン[ブタジエン及びイソプレンなど]、脂環基含有ビニル単量体[シクロヘキセン、(ジ)シクロペンタジエン、ピネン、リモネン及びビニルシクロヘキセンなど]、スチレン及び(メタ)アクリロニトリルなどが挙げられる。
【0021】
(b3)アニオン性単量体;
(メタ)アクリル酸、α−メチル(メタ)アクリル酸、クロトン酸及び桂皮酸などの不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、フマル酸及びイタコン酸などの不飽和ジカルボン酸;マレイン酸モノアルキルエステルなどの不飽和ジカルボン酸のモノアルキル(炭素数1〜8)エステル;ビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びアルキル(炭素数3〜18)アリルスルホコハク酸エステルなどのスルホン酸基含有モノマー;(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレートの硫酸化物などの硫酸エステル基含有ビニルモノマー;並びに、これらの塩[アルカリ金属(カリウム、ナトリウム等)塩、アンモニウム塩、アミン(アルキル基の炭素数が1〜4のアルキルアミン等)塩、第4級アンモニウム塩等]が挙げられる。
【0022】
(b4)カチオン性単量体;
アミノエチル(メタ)アクリレート、アミノプロピル(メタ)アクリレート、N−アミノエチル(メタ)アクリルアミド、及びこれらのモノアルキル(炭素数1〜6)置換体並びにモノ(メタ)アリルアミンなどの1級もしくは2級アミノ基含有モノマー;ジアルキル(炭素数1〜4)アミノアルキル(炭素数1〜8)(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリルアミド[ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートなど]、並びにモルホリノエチル(メタ)アクリレートなどの3級アミノ基含有モノマー;塩化トリメチルアミノエチル(メタ)アクリレート及び塩化ジメチルジアリルなどの3級アミノ基含有モノマーの第4級アンモニウム塩などが挙げられる。
【0023】
(b5)(a)以外の両性単量体;
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートのカルボキシベタイン化物、及びジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートのカルボキシベタイン化物などが挙げられる。
【0024】
他のビニル単量体(b)のうち、好ましいのは、得られる両性高分子の水溶性の観点から、(b1)、(b3)及び(b5)、特に(b1)である。
【0025】
両性単量体(a)を重合して得られる両性高分子における両性単量体(a)のモル%は、全単量体のうちの10〜100モル%、好ましくは10〜95モル%である。10モル%未満では、得られる両性高分子は水に難溶となることがあり、また染色堅牢性が弱い。
【0026】
両性単量体(a)を必須構成単量体として重合する方法としては、通常のラジカル重合が挙げられる。例えば前記の単量体を溶剤中で重合触媒存在下にラジカル重合する方法が挙げられる。
【0027】
溶剤としては、例えば、水、親水性有機溶媒(エタノール、イソプロパノール、1−ブタノール及び2−ブタノールなどのアルコール系溶剤、並びにメチルエチルケトンなどのケトン系溶剤など)が使用できる。好ましいのは水と親水性有機溶媒の混合溶媒である。
【0028】
重合触媒としては;アゾ系触媒[例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2−アゾビスイソブチレートなど];
過酸化物系触媒[例えば、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシネオヘプタノエートなど];及び過硫酸塩系触媒[例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム及び過硫酸カリウムなど];が挙げられる。
連鎖移動剤としてはアルキルメルカプタンなどを使用することもできる。重合温度としては、50〜120℃、好ましくは60〜110℃である。また、上記の溶液重合の他に、塊状重合、乳化重合または懸濁重合により得ることもできる。さらに、共重合体の重合様式としては、ランダム付加重合または交互共重合のいずれでもよく、また、グラフト共重合またはブロック共重合のいずれでもよい。
【0029】
両性重合体(A)の製造方法のうちの高分子反応による方法は、一般式(4)で示される構成単位を有するカチオン性重合体(A0)と、前記化合物(B)、β−プロピオラクトン又は1,3−プロパンサルトンとを反応させる方法である。
【0030】
【化4】

【0031】
式中、R1は水素原子、メチル基又はエチル基、R2は炭素数1〜6のアルキレン基、R3及びR5は炭素数1〜6のアルキル基、Qは酸素原子又は−NH−である。
【0032】
カチオン性重合体(A0)は、前述のカチオン性単量体であるジアルキルアミノアルキルアクリレートのα−ヒドロキシアルキル化物(a0)を必須構成単量体として重合することにより得られる。α−ヒドロキシアルキル化物(a0)の具体例としては、ジメチルアミノエチル(α−ヒドロキシアルキル)アクリレート、ジエチルアミノエチル(α−ヒドロキシアルキル)アクリレート、及びジメチルアミノエチル(α−ヒドロキシアルキル)アクリルアミドなどが挙げられる。
【0033】
カチオン性重合体(A0)は、(a0)のみの単独重合体であってもよいが、前記他の単量体(b)との共重合体であってもよい。
【0034】
カチオン性高分子(A0)におけるカチオン性単量体(a0)のモル%は、全単量体のうちの10〜100モル%、好ましくは10〜95モル%である。10モル%未満では、両性化して得られる両性高分子が水に難溶となることがある。
【0035】
カチオン性単量体(a0)を必須構成単量体として重合する方法としては、前述と同様の通常のラジカル重合が挙げられる。
【0036】
得られたカチオン性重合体(A0)を、さらに前記一般式(3)で表される化合物(B)と反応させる反応条件は、前述の両性化反応の反応条件と同様である。
【0037】
両性高分子(A)の数平均分子量(以下、Mnと略記する)は好ましくは3,000〜10,000,000である。(A)は高分子であることによって、仕上がり後の毛髪の感触が滑らかになる。(A)のMnが3,000未満では効果が発揮しにくく、10,000,000を越えると、(A)の凝集性が強くなって、(A)中のアニオン性基とカチオン性基が相互作用し易くなるので、滑らかさに寄与する基が少なくなり効果が低減する。上記の観点から特に好ましいMnは4,000〜5,000,000である。本発明におけるMnは、32,000〜1,000,000の場合はゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)で、Mnが1,000,000〜5,000,000の場合は固有粘度により測定されたものである。また、両性高分子(A)は、非架橋型高分子であることが好ましい。両性高分子(A)を構成する単量体に3官能以上の単量体を使用すると、水に不溶性のゲル状架橋型高分子が得られるが、この場合は、滑らかさの効果が低減する。
【0038】
両性高分子(A)の配合量は使用時の濃度で、0.1〜8%(以下において、特に限定しない限り、%は重量%を表す)が好ましく、0.2〜3%が特に好ましい。0.1%未満であると毛髪に良好な感触を付与することができず、8%を超えてもその効果は変わらず経済的ではない。
【0039】
本発明において、両性高分子(A)は、それぞれ第1剤又は第2剤に配合されるか、あるいは第1剤と第2剤の両方に配合されてもよい。
【0040】
本発明の酸化染毛剤の第1剤に配合する酸化染料中間体としては、アミノフェノール類、フェニレンジアミン類、ジアミノピリジン類及びそれらの塩類が挙げられる。塩類としては塩酸塩、硫酸塩、酢酸塩等が挙げられる。染毛力の観点から好ましいのは、p−アミノフェノール、o−アミノフェノール、p−メチルアミノフェノール、p−アミノフェニルスルファミン酸、p−フェニレンジアミン、トルエン−2,5−ジアミン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−p−フェニレンジアミン、2−β−ヒドロキシエチル−p−フェニレンジアミン、N−β−ヒドロキシエチル−N−エチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルアミン、2−クロロ−p−フェニレンジアミン、N,N−ジメチル−p−フェニレンジアミン、2,6−ジクロロ−p−フェニレンジアミン、2,5−ジアミノピリジン及びそれらの塩類である。
【0041】
酸化染料中間体の含有量は、第1剤の重量のうちの0.02〜15%が好ましく、0.1〜10%がより好ましい。この含有量が0.02%未満であると十分な染毛効果が得られず、また15%を超えても染毛効果が特に大きくは向上しないので、15%を超えて配合することは不経済である。0.1〜10%の範囲に設定した場合には、染毛効果と経済的な効果の両方をバランスよく発揮することができる。
【0042】
第1剤に含まれるカプラーとしては、ピロガロール、レゾルシン、カテコール、m−アミノフェノール、m−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノフェノール、1,2,4−ベンゼントリオール、トルエン−3,4−ジアミン、トルエン−2,4−ジアミン、ハイドロキノン、α−ナフトール、2,6−ジアミノピリジン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、5−アミノ−o−クレゾール、ジフェニルアミン、p−メチルアミノフェノール、フロログルシン、2,4−ジアミノフェノキシエタノール、没食子酸、タンニン酸、没食子酸エチル、没食子酸メチル、没食子酸プロピル、五倍子、1−メトキシ−2−アミノ−4−(2−ヒドロキシエチル)アミノベンゼン、5−(2−ヒドロキシエチルアミノ)−2−メチルフェノール等及びそれらの塩が挙げられる。
【0043】
カプラーの含有量は、第1剤の重量のうちの0.02〜10%が好ましく、0.1〜5%がより好ましい。この含有量が0.02%未満であると十分な染毛効果が得られない。また10%を超えても染毛効果が特に大きくは向上しないので、10%を超えて配合することは不経済である。0.1〜5%の範囲に設定した場合には、染毛効果と経済的な効果の両方をバランスよく発揮することができる。
【0044】
本発明の酸化染毛剤には、調色剤として必要により直接染料を配合してもよく、タール系色素や天然色素などの公知のものを1種又は2種以上併用できる。その中でも、ニトロ系染料、アゾ染料、ニトロソ染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料、キノリン染料、アントラキノン染料又はインジゴ染料が、良好な染毛 効果を得られ好ましい。
直接染料の具体例としては、ニトロ−p−フェニレンジアミン、p−ニトロ−o−フェニレンジアミン、p−ニトロ−m−フェニレンジアミン、2−アミノ−4−ニトロフェノール、2−アミノ−5−ニトロフェノール、ピクラミン酸、それらの塩および「医薬品等に使用することができるタール色素を定める省令」(昭和41年告示、厚生省)により定められた染料が挙げられる。
【0045】
直接染料を第1剤に配合する場合、その含有量は第1剤の重量のうちの0.001〜10%が好ましく、0.01〜5%がより好ましい。この含有量が0.001%未満であると十分な染毛効果が得られない。また10%を超えても染毛効果が特に大きくは向上しないので10%を超えて配合することは不経済である。0.01〜5%の範囲に設定した場合には、染毛 効果と経済的な効果の両方をバランスよく発揮することができる。
【0046】
第1剤に含まれるアルカリ剤としては、例えば、アンモニア、アルカノールアミン類(トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等)、有機アミン類(2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、グアニジン等)、無機アルカリ(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム等)、塩基性アミノ酸(アルギニン、リジン等)及びそれらの塩等が挙げられる。これらのアルカリ剤は単独で配合してもよいし、二種以上を組み合わせて配合してもよい。また、二種以上のアルカリ剤を適当に組み合わせて配合することによって第1剤に緩衝作用をもたせてもよい。このアルカリ剤の含有量は、第1剤のpHが8〜12の範囲となる量に設定することが好ましい。
【0047】
これらのアルカリ剤の中でも、毛髪に十分な明度を付与するために、アンモニア等の揮発性アルカリ剤を少なくとも1種含有することが好ましく、その含有量は使用時の濃度で0.5%以下であることが好ましい。0.5%を超えると刺激臭を低減することが困難になる。
【0048】
さらに、この第1液には本発明の効果を妨げない範囲において、公知の成分を添加配合することができる。例えば、カチオン性高分子、アニオン性高分子、非イオン性高分子、両性高分子(A)以外の両性高分子、界面活性剤、溶剤、炭化水素類(流動パラフィン、ワセリン等)、高級アルコール、エステル油、高級脂肪酸、シリコーン及びその誘導体、多価アルコール、紫外線吸収剤、防腐剤、増粘剤、pH調整剤、香料、パール化剤などが挙げられる。
【0049】
カチオン性高分子としては、ジメチルジアリルアンモニウムハライド、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、ビニルピロリドン又はこれらの4級化物を構成単位として含む水溶性カチオン性高分子、カチオン化セルロース誘導体、カチオン性澱粉、並びにカチオン化グアーガム誘導体などが挙げられる。
【0050】
アニオン性高分子としては、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合体のアルカノールアミン塩、メチルビニルエーテルとマレイン酸モノアルキルエステルとの共重合体、酢酸ビニルとクロトン酸との共重合体、アクリル酸とアクリル酸アルキルエステルとN−アルキルアクリルアミドの共重合体、カルボキシルメチルセルロース、カルボキシビニルポリマー、キサンタンガム、カラギーナン、アルギン酸ナトリウム、アラビアガム及びペクチンなどが挙げられる。
【0051】
非イオン性高分子としては、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール及びポリアクリルアミドなどが挙げられる。
【0052】
両性高分子(A)以外の両性高分子としては、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートなどと(メタ)アクリル酸などとの共重合体、並びにジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートを他の非イオン性単量体と共重合してハロゲン化酢酸で両性化した高分子などが挙げられる。
【0053】
界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤及び両性 界面活性剤が挙げられる。
【0054】
アニオン性界面活性剤の具体例としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ステアロイルメチルタウリンナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン、テトラデセンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸及びその塩等が挙げられる。
【0055】
カチオン性界面活性剤の具体例としては、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、エチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウムサッカリン、セチルトリメチルアンモニウムサッカリン等が挙げられる。
【0056】
非イオン性界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンプロピレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレン脂肪酸類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルポリグリコシド、N−アルキルジメチルアミンオキシド等が挙げられる。これらの中でも酸やアルカリ剤に強いことからポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等が好ましい。ポリオキシエチレンアルキルエーテル類の具体例としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル及びポリオキシエチレンステアリルエーテル等が挙げられる。
【0057】
両性界面活性剤の具体例としては、2−ウンデシル−N,N,N−(ヒドロキシエチルカルボキシメチル)−2−イミダゾリンナトリウム、2−ココイル−2−イミダゾリニウムヒドロキサイド−1−カルボキシエチロキシ二ナトリウム塩、2−ヘプタデシル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ココアミドプロピルベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウラミドプロピルベタイン等が挙げられる。
【0058】
これらの界面活性剤は単独で配合してもよいし、二種以上を組み合わせて配合してもよい。
【0059】
溶剤としては、エタノール、イソプロパノール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、イソプレングリコール、へキシレングリコール、エチルカルビトール、グリセリン、ジグリセリン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。これらの溶剤は単独で配合してもよいし、二種以上を組み合わせて配合してもよい。
【0060】
炭化水素類としては、流動パラフィン、流動イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、マイクロクリスタ燐ワックス及びワセリン等が挙げられる。高級アルコールとしては、炭素数10〜24の飽和もしくは不飽和アルコール、例えばラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セタノール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール及びラノリンアルコールなどが挙げられる。エステル油としては、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジオクチル、ラウリン酸ヘキシル及びミリスチン酸イソプロピルなどが挙げられる。高級脂肪酸としては、炭素数10〜24の飽和もしくは不飽和脂肪酸、例えばラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸及びリシノール酸などが挙げられる。シリコーン及びその誘導体としては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ポリエーテル変性シリコーン、及びアミノ変性シリコーンなどが挙げられる。
【0061】
これらの、カチオン性高分子、アニオン性高分子、非イオン性高分子、両性高分子(A)以外の両性高分子、界面活性剤、溶剤、炭化水素類、高級アルコール、エステル油、高級脂肪酸、シリコーン及びその誘導体、多価アルコール、紫外線吸収剤、防腐剤、増粘剤、pH調整剤、香料並びにパール化剤の含有量の合計は、使用時の濃度で、好ましくは30%以下、さらに好ましくは20%以下である。
【0062】
一方、第2液に配合する酸化剤は、毛髪に含まれるメラニンを脱色するために配合されている。酸化剤の具体例としては、過酸化水素、過酸化尿素、過酸化メラミン、過炭酸ナトリウム、過炭酸カリウム、過ホウ酸ナトリウム、過ホウ酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化ナトリウム、過酸化カリウム、過酸化マグネシウム、過酸化バリウム、過酸化カルシウム、過酸化ストロンチウム、過硫酸塩の過酸化水素付加物、リン酸塩の過酸化水素付加物、ピロリン酸塩の過酸化水素付加物、臭素酸ナトリウム等が挙げられ、その中でも過酸化水素が好ましい。これらの酸化剤は単独で配合してもよいし、二種以上を組み合わせて配合してもよい。
【0063】
酸化剤の含有量は、使用時の濃度で、好ましくは0.1〜5%、さらに好ましくは1〜3%である。0.1%未満ではメラニンを十分に脱色することができない。一方、5%を超えて配合すると、毛髪に損傷等の不具合が発生しやすい。
【0064】
さらに、この第2液には本発明の効果を妨げない範囲において、従来公知の成分を添加配合することができる。例えば、前述のカチオン性高分子、アニオン性高分子、非イオン性高分子、両性高分子(A)以外の両性高分子、界面活性剤、溶剤、炭化水素類、高級アルコール、エステル油、高級脂肪酸、シリコーン及びその誘導体、多価アルコール、紫外線吸収剤、防腐剤、界面活性剤、増粘剤、pH調整剤、香料並びにパール化剤などが挙げられ、含有量も使用時の濃度で好ましくは30%以下、さらに好ましくは20%以下である。
【0065】
第1液と第2液を混合する際には、第1液と第2液を重量比で1:3〜2:1の割合で混合するのが好ましく、1:2〜1:1の割合で混合するのがより好ましい。
【0066】
本発明の酸化染毛剤の剤型としては液状、乳液状、クリーム状ゲル状あるいは泡沫状等、通常知られている形態をとることができる。
【0067】
本発明の酸化染毛剤は、第1液中に酸化染料中間体とカップラーを配合しない場合は
毛髪脱色剤として利用することができ、また第1液中の染料として直接染料のみを用いた場合は半永久染毛 剤として利用することもできる。
【0068】
[実施例]
以下の製造例及び実施例により本発明を更に説明するが本発明はこれに限定されるものではない。部及び%は特記しない限り重量部および重量%を意味する。
【0069】
<両性単量体(a−1)の製造例>
[ジメチルアミノエチル(α−ヒドロキシメチル)アクリレートのカルボキシベタイン化物の製造];
加熱撹拌装置および冷却器を備えたガラス製反応容器に、ジメチルアミノエチルアクリレート(以下、「DMAEA」と略記)143部(1.0モル部;興人株式会社製)、37%ホルムアルデヒド水溶液(メタノール含有量7%)78.4部(1.0モル部)及び1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン(以下、DABCOと略記)7部(63ミリモル部;サンアプロ株式会社製)を仕込み、均一混合した後、28℃で48時間激しく攪拌して反応させた。この反応液に1N塩酸を加えてpHを5.8に調整した後、ジクロルメタン100mLで3回抽出し、有機相を飽和食塩水100mLで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、揮発成分を減圧で除去した。132部のジメチルアミノエチル(α−ヒドロキシメチル)アクリレート(以下、「OH−DMAEA」と略記)(純度98%、収率78%)が得られた。その後、加熱撹拌装置及び環流冷却器を備えたガラス製反応容器に、溶媒としてのイソプロピルアルコール300部、上記のOH−DMAEA132部(0.76モル部)、モノクロル酢酸カリウム126部(0.84モル部)及びメトキシハイドロキノン0.5部を仕込み、空気吹き込み下に80℃で5時間環流加熱して両性化反応を行った。反応終了後、反応系を室温まで冷却し、副生する塩化カリウムを直径8.5cmの5Cの濾紙を用いて加圧濾過器で1kg/cm2の圧力で濾過を行ない、イソプロピルアルコールで濃度を50%に調整し、OH−DMAEAのベタイン化物からなる両性単量体(a−1)の50%イソプロピルアルコール溶液を得た(収率95%、両性化率96%、塩素含量0.2%)。
【0070】
製造例1:
加熱冷却装置、攪拌機、温度計、2つの滴下ロートを装着した反応フラスコに、水76部及びイソプロピルアルコール180部を仕込み、一つの滴下ロートに両性単量体(a−1)の50%イソプロピルアルコール溶液157部(0.34モル部)、アクリルアミド(以下、AAmと略記)28.4部(0.4モル部)、ヒドロキシエチルメタクリレート(以下、HEMAと略記)9.1部(0.07モル部)を仕込んで均一に攪拌し単量体溶液を調製した。また他の滴下ロートに開始剤溶液として5%過硫酸ナトリウム水溶液72部を仕込んだ。系内を窒素気流下に80℃に加熱し、単量体溶液及び開始剤溶液を4時間かけて等速度で滴下した。更に窒素気流下2時間同温度に保持して重合反応を行なった。
80℃以下で減圧下にイソプロピルアルコールと水の混合物を、系内のイソプロピルアルコールが無くなるまで留去し、全量が800部になるように水を加えて有効成分濃度を15重量%に調整し、(a−1)/AAm/HEMA=42/49/9モル%からなる両性高分子(A1)の有効成分15重量%水溶液を得た。Mnは9,000であった。
【0071】
製造例2及び3:
単量体として表1に記載の単量体を表1の量を仕込んだこと以外は製造例1と同様にして、両性高分子(A2)〜(A3)を製造した。
製造例4:
加熱冷却装置、攪拌機、温度計、2つの滴下ロートを装着した反応フラスコに、水76部及びイソプロピルアルコール180部を仕込み、一つの滴下ロートに製造例1の中間生成物であるOH−DMAEA90部(0.45モル部)、AAm28.4部(0.4モル部)、HEMA13.0部(0.10モル部)を仕込んで均一に攪拌し単量体溶液を調製した。また他の滴下ロートに開始剤溶液として5%過硫酸ナトリウム水溶液72部を仕込んだ。系内を窒素気流下に80℃に加熱し、単量体溶液及び開始剤溶液を4時間かけて等速度で滴下した。更に窒素気流下2時間同温度に保持して重合反応を行ない、カチオン性重合体(A0−1)を得た。
次に、(A0−1)で使用したOH−DMAEAと等モルのモノクロロ酢酸カリウム40%イソプロピルアルコール懸濁液を滴下ロートから反応フラスコ内に0.5時間で滴下し、更に窒素気流下80℃で還流加熱して12時間両性化反応を行なった。その後、80℃以下で減圧下にイソプロピルアルコールと水の混合物を、系内のイソプロピルアルコールが無くなるまで留去し、全量が1,047部になるように水を加えて有効成分濃度を15重量%に調整し、OH−DMAEAのベタイン化物/AAm/HEMA=47/42/11モル%からなるカチオン性高分子の両性化物(A4)の有効成分15重量%水溶液を得た。Mnは8,000であった。
【0072】
製造例5及び6:
単量体として表1に記載の単量体を表1の量を仕込んだこと以外は製造例4と同様にして、両性高分子(A5)〜(A6)を製造した。
【0073】
比較のカチオン性高分子(X1):
単量体として表1に記載の単量体を表1の量を仕込んだこと以外は製造例1と同様にして、カチオン性高分子(X1)を製造した。
【0074】
比較の両性高分子(X2):
単量体として表1に記載の単量体を表1の量を仕込んだこと以外は製造例4と同様にして、両性高分子(X2)を製造した。
【0075】
比較の両性高分子(X3):
市販の「マーコートプラス3330」(アクリルアミド/アクリル酸/塩化ジメチルジアリルアンモニウムの共重合体:カルゴン社製)を比較の両性高分子(X3)とした。
【0076】
【表1】

【0077】
実施例1〜6及び比較例1〜3:
酸化染毛剤は、以下のようにして調製した。
【0078】
第1剤:
両性高分子(A1)〜(A6)、カチオン性高分子(X1)、又は両性高分子(X2)〜(X3)のうちのいずれか1種を有効成分換算で1部(表2に、実施例及び比較例のNo.と使用した高分子の品名を記載した);酸化染料中間体としてのp−フェニレンジアミンを0.4部とp−アミノフェノールを0.1部;カプラーとしてのレゾルシンを0.6部、アルカリ剤としてのモノエタノールアミンを4.8部と28%アンモニア水を1.5部;溶剤としてのプロピレングリコールを5.5部;非イオン性高分子としてのポリエチレングリコール(数平均分子量400)を1.5部;流動パラフィンを0.8部;セタノールを1.0部;精製水を残量加えて、全量を100部とし、攪拌混合して第1剤とした。
【0079】
第2剤:
酸化剤としての35%過酸化水素を15部;セタノールを1.5部;ポリオキシエチレン(10モル)ラウリルエーテルを1.0部;塩化ラウリルトリメチルアンモニウムを0.5部;精製水を残量加えて、全量を100部とし、攪拌混合して、さらにpHが3.3になるように微量のクエン酸を添加し、第2剤とした。
【0080】
第1剤と第2剤とを重量比1:1で十分に混合して、実施例及び比較例の酸化染毛剤を調製した。これらはいずれもO/W型のクリーム状であった。これらの酸化染毛剤を毛束に塗布した。染毛処理後の毛束について、下記(1)及び(2)の項目に関し、男女それぞれ5名によって官能評価を行い算術平均点を比較した。結果を表2に示す。
さらに、実際に男女各5名が使用して毎日1回のシャンプーによる洗髪を行い、1ヶ月後に、その退色性について官能評価を行い算術平均点を比較した。結果を表2に示す。
【0081】
(1)うるおい感
染毛処理後の毛束を手で触れたときのうるおい感を、以下の基準で評価した。
5点:染毛処理前と同等もしくはそれ以上のうるおい感がある。
4点:うるおい感がほとんど残っている。
3点:うるおい感がやや減少しているが、一応満足できる程度である。
2点:うるおい感がかなり減少し、ややパサツキがある。
1点:うるおい感がほとんど残っておらず、パサパサである。
【0082】
(2)櫛通り性
染毛処理後の毛束を櫛でといで、櫛通り性を以下の基準で評価した。
5点:染毛処理前と同等もしくはそれ以上の滑らかな櫛通り性がある。
4点:滑らかな櫛通り性がほとんど低下していない。
3点:櫛通り性がやや低下し、やや抵抗感があるが、一応満足できる程度である。
2点:ややパサツキがあり、櫛通り性がかなり悪い。
1点:パサパサであり、櫛でといでも大きな抵抗感がある。
【0083】
(3)染色堅牢性
男女各5名が酸化染毛剤を使用して自身の毛髪を染毛した後、毎日1回のシャンプーによる洗髪を行い、1ヶ月後に、その退色性(染色堅牢性)を以下の基準で官能評価した。
5点:全く退色していない。
4点:わずかに退色している。
3点:かなり退色している。
2点:ほとんど退色している。
1点:完全に退色している。
【0084】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明の酸化染毛剤は、毛髪用の永久染毛剤として好適に利用できる。また、第1剤中に酸化染料中間体とカップラーを配合しない場合は毛髪脱色剤として利用することができ、また第1液中の染料として直接染料のみを用いた場合は半永久染毛剤として利用することもできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化染料中間体、カプラー及びアルカリ剤を含む第1剤、並びに酸化剤を含む第2剤を、使用時に混合して調製される酸化染毛剤であって、一般式(1)で示される構成単位を有する両性高分子(A)を含有することを特徴とする酸化染毛剤。
【化1】

(式中、R1は水素原子、メチル基又はエチル基、R2は炭素数1〜6のアルキレン基、R3及びR5は炭素数1〜6のアルキル基、R4は炭素数1〜3のアルキレン基、Qは酸素原子又は−NH−、Zは−COO又は−SO3である。)
【請求項2】
前記両性高分子(A)が、第1剤及び/又は第2剤中に含まれることを特徴とする請求項1記載の酸化染毛剤。
【請求項3】
前記両性高分子(A)が、全構成単位のモル数に基づいて、一般式(1)で示される構成単位を10〜80モル%及び親水性ノニオン性ビニル単量体から構成される単位を20〜90モル%含む両性高分子である請求項1又は2記載の酸化染毛剤。
【請求項4】
前記両性高分子(A)が3,000〜10,000,000の数平均分子量を有する請求項1〜3のいずれか記載の酸化染毛剤。
【請求項5】
さらに、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン性高分子及び前記(A)以外の両性高分子からなる群から選ばれる1種以上を含有してなる請求項1〜4のいずれか記載の酸化染毛剤。

【公開番号】特開2009−209082(P2009−209082A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−53192(P2008−53192)
【出願日】平成20年3月4日(2008.3.4)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】