説明

酸化染毛剤

【課題】毛髪への施術時に頭皮にアルカリによる刺激感がなく、施述後は染色性に優れ、毛髪に損傷を与えない酸化染毛剤を提供すること。また、アルカリ剤として炭酸塩のみを用いた場合であっても、染色性に優れるとともに、毛髪を明るい色に染色することのできる酸化染毛剤を提供すること
【解決手段】アルカリ剤と酸化染料を含有する第1剤と、酸化剤を含有する第2剤と、炭酸塩を含有する第3剤とからなる、三剤式の酸化染毛剤とする。第3剤には、増粘剤、好ましくはセルロース系高分子を含有させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化染毛剤に関する。詳しくは、炭酸塩を含有する第3剤を用いる、三剤式の酸化染毛剤に関する。
【背景技術】
【0002】
染毛剤は、効果が持続的であるという理由から、酸化染毛剤が広く利用されている。酸化染毛剤は、酸化染料とアルカリ剤を含む第1剤と、過酸化水素を含む第2剤とからなる二剤式の酸化染毛剤が主流となっている。
【0003】
二剤式の酸化染毛剤は、第1剤中のアルカリ剤が第2剤中の過酸化水素と作用して酸素を発生させ、これにより毛髪中のメラニンを分解して毛髪を脱色させると共に、第1剤中の酸化染料が毛髪内で酸化重合されて毛髪が染毛される。第1剤中のアルカリ剤は、過酸化水素との作用の他、毛髪表面のキューティクルを膨潤させ、染料を毛髪内部に浸透させて染毛効果を向上させるといった効果も有している。しかしながら、毛髪表面のケラチン蛋白はアルカリ剤によって分解され易いことから、高pHのアルカリ剤を用いると、毛髪が損傷し枝毛や断毛等が生じたり、頭皮に刺激が生ずるといった問題を有している。
【0004】
このような問題点を解決するために、第1剤のアルカリ剤として、アンモニアと炭酸塩とを併用した二剤式の酸化染毛剤が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。これら提案により上記問題点の改善がなされるものの、アルカリ剤としてアンモニアを用いるため、染毛中のアンモニア臭を排除することができず、また、アンモニア量を低減すると、毛髪の脱色性や染色性に優れないという問題がある。
【0005】
一方、本発明に関連する技術としては、酸化染料を含有する第1剤、過酸化水素を含有する第2剤、及び過炭酸塩を含有する第3剤とかなる三剤式の酸化染毛剤が報告されている(特許文献4参照)。この過炭酸塩とは、炭酸塩の電解酸化や過酸化物と二酸化炭素の反応などにより生じる、強い酸化力を有する酸化剤であって、炭酸塩と異なる物質である。そして、特許文献4では、酸化剤として過酸化水素に加え、過炭酸塩をも用いることで、毛髪中のメラニンを効果的に分解させ、黒髪を白髪と同程度に脱色して白髪隠蔽性の改善を目的とするものであって、本発明と異なる技術である。
【0006】
また、アルカリ剤を含有する第1剤、過酸化水素を含有する第2剤、及び過硫酸塩と炭酸塩を含有する第3剤とからなる三剤式の毛髪脱色剤が報告されている(例えば、特許文献5〜7参照)。しかしながら、特許文献5〜7に開示の三剤式の毛髪脱色剤は、過酸化水素の分解を促進する炭酸塩に加え、強い酸化力を有する過硫酸塩を併用することで、毛髪内のメラニンを十分に分解させ、毛髪の脱色を効果的に行おうとするものである。そして、このような強い酸化力を有する過硫酸塩を含有する第3剤を酸化染毛剤に用いると、酸化染料が毛髪内に浸透する前に染料が酸化されたり、酸化された染料の重合体が分解したりして、毛髪を十分に染毛することができないという問題がある。従って、このような三剤式の毛髪脱色剤を酸化染毛剤に応用することはできない。
【0007】
【特許文献1】特公平5−53770号公報
【特許文献2】特開2001−206825号公報
【特許文献3】特開2002−179539号公報
【特許文献4】特開平3−258714号公報
【特許文献5】特開2007−15986号公報(段落番号〔0056〕)
【特許文献6】特開2006−200787号公報(段落番号〔0071〕)
【特許文献7】特開2005−154286号公報(段落番号〔0042〕)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記従来技術に鑑みなされたものであって、毛髪への施術時に頭皮にアルカリによる刺激感がなく、施述後は染色性に優れ、毛髪に損傷を与えない酸化染毛剤を提供することを課題とする。また、アルカリ剤として炭酸塩のみを用いた場合であっても、染色性に優れるとともに、毛髪を明るい色に染色することのできる酸化染毛剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明は、
〔1〕アルカリ剤と酸化染料を含有する第1剤と、過酸化水素を含有する第2剤と、炭酸塩を含有する第3剤とからなる、三剤式の酸化染毛剤、
〔2〕更に、第3剤に増粘剤を含有してなる、前記〔1〕に記載の酸化染毛剤、
〔3〕増粘剤が、セルロース系高分子である、前記〔2〕に記載の酸化染毛剤、
〔4〕第3剤が、粉末状である、前記〔1〕〜〔3〕の何れかに記載の酸化染毛剤、
〔5〕炭酸塩の酸化染毛剤中の含有量が、炭酸ナトリウムに換算して10〜20重量%である、前記〔1〕〜〔4〕の何れかに記載の酸化染毛剤、並びに
〔6〕第1剤のアルカリ剤が、炭酸塩である、前記〔1〕〜〔5〕何れかに記載の酸化染毛剤
に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、毛髪への施術時に頭皮にアルカリによる刺激感がなく、施述後の毛髪は染色性に優れ、毛髪への損傷を十分に抑制できるという効果を奏する。また、アルカリ剤として炭酸塩のみを用いた場合であっても、染色性に優れるとともに、毛髪を明るい色に染色することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の酸化染毛剤は、アルカリ剤と酸化染料を含有する第1剤と、過酸化水素を含有する第2剤と、炭酸塩を含有する第3剤とからなる、三剤式とすることに大きな特徴がある。
【0012】
かかる特徴を有することで、酸化染毛剤の使用時の炭酸塩の濃度を高濃度とすることができ、アルカリ剤として炭酸塩のみを用いた場合であっても、優れた染色性を発揮することができ、施術後の毛髪の損傷を十分に抑制することができる。そして、毛髪の脱色力にも優れることから、黒髪を多様な明るい色へ染色することができる。
【0013】
まず、本発明の酸化染毛剤にかかる第1剤について説明する。本発明に用いる第1剤は、アルカリ剤と酸化染料を含有する。
【0014】
アルカリ剤としては、酸化染毛剤に通常使用されるものであれば特に限定されず、例えば、アンモニア;炭酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸グアニジン、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどの炭酸塩;エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールなどの有機アミン等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上を適宜組合せて用いることもできる。
【0015】
第1剤中のアルカリ剤の配合量は、本発明の効果を発揮すれば特に限定されないが、染色性の観点から、0.1重量%以上が好ましく、0.3重量%以上がより好ましい。また、皮膚刺激や毛髪の損傷を防止する観点、及び製剤の安定性の観点から、5重量%以下が好ましく、4重量%以下がより好ましい。これらから、アルカリ剤の配合量は、0.1〜5重量%とすることが好ましく、より好ましくは0.3〜4重量%とするとよい。
【0016】
尚、第1剤中のアルカリ剤として炭酸塩のみを選択した場合、施術時のアンモニアやアミンなどの不快臭を除くことができる。そして、後述する第3剤の炭酸塩と相俟って、他のアルカリ剤を用いなくとも、毛髪を明るい色に染色することができるという利点がある。
【0017】
本明細書において、第1剤中に用いられる酸化染料とは、酸化染料前駆体やカップラーなどの酸化染毛剤に用いられる染料を意味する。
【0018】
本発明に用いることのできる酸化染料は、特に限定されないが、例えば、酸化染料前駆体としては、フェニレンジアミン類、アミノフェノール類、ジアミノピリジン類、及びそれらの塩酸塩、硫酸塩等の塩類等が挙げられる。具体的には、p−フェニレンジアミン、トルエン−2,5−ジアミン、トルエン−3,4−ジアミン、2,5−ジアミノアニソール、N−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−メチル−p−フェニレンジアミン、N,N−ジメチル−p−フェニレンジアミン、6−メトキシ−3−メチル−p−フェニレンジアミン、N,N−ジエチル−2−メチル−p−フェニレンジアミン、N−エチル−N−(ヒドロキシエチル)−p−フェニレンジアミン、N−(2−ヒドロキシプロピル)−p−フェニレンジアミン、2−クロル−6−メチル−p−フェニレンジアミン、2−クロロ−p−フェニレンジアミン、N,N−ビス−(2−ヒドロキシエチル)−p−フェニレンジアミン、2,6−ジクロル−p−フェニレンジアミン、2−クロル−6−ブロム−p−フェニレンジアミン等のフェニレンジアミン類;p−アミノフェノール、o−アミノフェノール、2,4−ジアミノフェノール、5−アミノサリチル酸、2−メチル−4−アミノフェノール、3−メチル−4−アミノフェノール、2,6−ジメチル−4−アミノフェノール、3,5−ジメチル−4−アミノフェノール、2,3−ジメチル−4−アミノフェノール、2,5−ジメチル−4−アミノフェノール、2−クロロ−4−アミノフェノール、3−クロロ−4−アミノフェノール等のアミノフェノール類;2,5−ジアミノピリジン等のジアミノピリジン類等及びそれらの塩類等を例示することができる。
【0019】
カップラーとしては、レゾルシン、m−アミノフェノール、m−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノフェノキシエタノール、5−アミノ−o−クレゾール、2−メチル−5−ヒドロキシエチルアミノフェノール、2,6−ジアミノピリジン、カテコール、ピロガロール、没食子酸、タンニン酸等及びそれらの塩類等を例示することができる。
【0020】
また、その他、「医薬部外品原料規格」(1991年6月発行,薬事日報社)に収載されているものも適宜、用いることもできる。
【0021】
上記した酸化染料前駆体及びカップラーは、これのうちの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができ、少なくとも、酸化染料前駆体を用いることが好ましい。
【0022】
第1剤における酸化染料の含有量は、染毛性及び皮膚刺激等の安全性の観点から、通常、0.1〜10重量%程度であればよい。
【0023】
本発明にかかる第1剤には、酸化染料の製剤保存中での酸化を防止する観点から、アスコルビン酸やアスコルビン酸誘導体を含有させることができる。用いることのできるアスコルビン酸誘導体としては、例えば、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カリウム、アスコルビン酸カルシウム、アスコルビン酸アンモニウム、エリソルビン酸、エリソルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム、クエン酸アスコルビル、酢酸アスコルビル、酒石酸アスコルビル、パルミチン酸アスコルビル、ステアリン酸アスコルビル、アスコルビルグルコシド等が挙げられる。
【0024】
次に、本発明の第2剤について説明する。本発明に係る第2剤には、毛髪中のメラニンを分解して毛髪を脱色させるとともに、第1剤中の酸化染料を毛髪内で酸化重合させるために、必須成分として過酸化水素が含有される。
【0025】
過酸化水素の配合量は、本発明の効果を発揮すれば特に限定されないが、染色性の観点から、0.01重量%以上が好ましく、0.1重量%以上がより好ましい。また、皮膚刺激や毛髪の損傷を防止する観点から、10重量%以下が好ましく、6重量%以下がより好ましい。これらから、酸化剤の配合量は、0.01〜10重量%とすることが好ましく、より好ましくは0.1〜6重量%とするとよい。
【0026】
また、本発明に係る第1剤及び/又は第2剤には、本発明の目的の効果を損なわない範囲であれば、上記した成分のほか、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール;ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール等の高級アルコール;ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、オレイン酸等の高級脂肪酸;ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸イソステアリル、ステアリン酸ステアリル等のエステル;アボガド油、オリーブ油、サフラワー油、硬化油等の動植物油;ポリエチレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、1,3−ブチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、1,2−オクタンジオール等の多価アルコール;ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、及びこれらのアルキレンオキシド付加物、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンラノリン等のノニオン性界面活性剤;高級脂肪酸石鹸、アルキル硫酸エステル塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルエーテルリン酸エステル、アルキルエーテルカルボン酸塩、アシルメチルタウリン塩、アルキルスルホコハク酸及びその塩等のアニオン性界面活性剤;アルキルグリシン塩、カルボキシメチルグリシン塩、N−アシルアミノエチル−N−2−ヒドロキシエチルグリシン塩等のグリシン型両性界面活性剤、アルキルアミノプロピオン酸塩、アルキルイミノジプロピオン酸塩等のアミノプロピオン酸型両性界面活性剤、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン等のアミノ酢酸ベタイン型両性界面活性剤、アルキルヒドロキシスルホベタイン等のスルホベタイン型両性界面活性剤等の両性界面活性剤;塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウムなどのアルキルアミン塩;ミリスチン酸ジメチルアミノエチルアミド、ステアリン酸ジエチルアミノプロピルアミドなどの脂肪酸アミドアミン等のカチオン性界面活性剤;赤色2号、赤色102号、黄色202号の(1)、黄色202号の(2)、黄色203号、黒色401号等の色素;pH安定剤、キレート剤、増粘剤、抗炎症剤、紫外線吸収、香料、水等を目的に応じて適宜含有させることができる。
【0027】
尚、本発明に係る第1剤及び第2剤の剤型としては、液状、ジェル状、クリーム状等の種々の剤型で用いることができる。中でも、後述する第3剤との混合性を容易にする観点から、第1剤を液状、ジェル状又はクリーム状とし、第2剤を液状とするのが好ましい。
【0028】
本発明の第3剤は、必須成分として、炭酸塩を含有する。用いられる炭酸塩としては、例えば、炭酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸グアニジン、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどを例示することができる。なかでも、アルカリ濃度をより高める観点から、炭酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムを用いるのが好ましい。
【0029】
炭酸塩の使用量は、本発明の効果を発揮すれば特に限定されないが、毛髪の損傷を抑制する観点から、酸化染毛剤全量中、炭酸ナトリウム(NaCO)に換算して、10重量%以上が好ましく、12重量%以上がより好ましい。また、皮膚刺激を抑制する観点から、20重量%以下が好ましく、18重量%がより好ましい。これらから、炭酸塩の総使用量は、10〜20重量%とすることが好ましく、より好ましくは12〜18重量%とするとよい。
【0030】
第3剤は、第1剤及び第2剤との分散・混合性を良好にする観点から、増粘剤を配合することができる。用い得る増粘剤としては、染毛剤に配合できるものであれば特に限定されないが、例えば、キサンタンガム、グアガム、カラギーナン、ローカストビーンガム等の天然高分子増粘剤;メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース系高分子;カルボキシビニルポリマー等を例示することができる。なかでも、炭酸塩の分散・混合性をより良好にする観点から、セルロース系高分子を用いるのが好ましい。
【0031】
第3剤は炭酸塩のみで構成されていてもよいが、増粘剤と併用する場合、第1剤及び第2剤との分散・混合性を良好にする観点から、炭酸塩1重量部に対して、増粘剤を0.1〜2重量部で混合するのが好ましい。
【0032】
また、本発明に係る第3剤には、本発明の目的の効果を損なわない範囲であれば、上記した成分のほか、塩化ナトリウム、酸化クロム、群青、ベンガラ等の粉体、油性成分、界面活性剤、精製水、香料等を目的に応じて適宜配合することができる。
【0033】
尚、第3剤の剤型は、液状、ジェル状、クリーム状等の種々の剤型で用いることができが、取扱いが容易な観点から、粉末状とするのが好ましい。
【0034】
本発明の酸化染毛剤は、使用時に各剤を均一に混合して用いる。通常、第2剤中に第1剤を投入し、その後に第3剤を混合すれば良く、例えば、1〜10重量部の第2剤が充填されたアプリケータ内に1〜10重量部の第1剤を加え、その後、1〜5重量部の第3剤を投入したのち、密閉して振とうすることにより均一に混合される。この場合、第1剤を液状、ジェル状又はクリーム状とし、第2剤を液状とし、第3剤は粉末状の剤型を用いるのが好ましい。尚、第1剤〜第3剤の混合方法は、上記混合順序に限定されるものではない。
【実施例】
【0035】
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。尚、配合量は特記しない限り、重量%である。また、「POE」は、ポリオキシエチレンの略であり、括弧内の数字は付加モル数を表す。
【0036】
(試料の調製)
下記A−1、A−2、及びA−3のクリーム状の第1剤、下記B−1の液状の第2剤、並びに下記C−1の粉末状の第3剤をそれぞれ定法により調製し、表1に示す混合比で第1剤〜第3剤を混合して実施例及び比較例の酸化染毛剤を製造し、下記評価試験に供した。
【0037】
〔酸化染毛剤第1剤(A−1)〕
炭酸ナトリウム 4.0
パラフェニレンジアミン 0.5
レゾルシン 0.3
メタアミノフェノール 0.1
POE(40)セチルエーテル 3.0
POE(20)セチルエーテル 2.0
流動パラフィン 2.0
セタノール 5.0
塩化ステアリルトリメチルアンモニウム 1.0
無水亜硫酸ナトリウム 0.5
アスコルビン酸ナトリウム 0.5
エデト酸ニナトリウム 0.3
精製水 残 分
合 計 100.0
【0038】
〔酸化染毛剤第1剤(A−2)〕
炭酸ナトリウム 13.0
パラフェニレンジアミン 0.5
レゾルシン 0.3
メタアミノフェノール 0.1
POE(40)セチルエーテル 3.0
POE(20)セチルエーテル 2.0
流動パラフィン 2.0
セタノール 5.0
塩化ステアリルトリメチルアンモニウム 1.0
無水亜硫酸ナトリウム 0.5
アスコルビン酸ナトリウム 0.5
エデト酸ニナトリウム 0.3
精製水 残 分
合 計 100.0
【0039】
〔酸化染毛剤第1剤(A−3)〕
28%アンモニア水 8.0
パラフェニレンジアミン 0.5
レゾルシン 0.3
メタアミノフェノール 0.1
POE(40)セチルエーテル 3.0
POE(20)セチルエーテル 2.0
流動パラフィン 2.0
セタノール 5.0
塩化ステアリルトリメチルアンモニウム 1.0
無水亜硫酸ナトリウム 0.5
アスコルビン酸ナトリウム 0.5
エデト酸ニナトリウム 0.3
精製水 残 分
合 計 100.0
【0040】
〔酸化染毛剤第2剤(B−1)〕
35%過酸化水素水 16.0
POE(40)セチルエーテル 0.5
POE(20)セチルエーテル 0.2
セタノール 1.0
ヒドロキシエタンジホスホン酸 0.2
精製水 残 分
合 計 100.0
【0041】
〔酸化染毛剤第3剤(C−1)〕
炭酸ナトリウム 90.0
カルボキシメチルセルロース 10.0
合 計 100.0
【0042】
【表1】

【0043】
(試験例1;第1剤の低温安定性の評価)
表1に記した実施例及び比較例の各染毛剤第1剤をスクリュー管に充填し、5℃で30日間保存後、試料の一部をガラス板上に延ばし、析出物の有無を下記評価基準に従って目視で評価した。結果を表2に示す。
【0044】
<評価基準>
○:析出物が認められない。
△:わずかに析出物が認められる。
×:析出物が認められる。
【0045】
(試験例2;第1剤の高温安定性の評価)
表1に記した実施例及び比較例の各染毛剤第1剤をスクリュー管に充填し、40℃で30日間保存後、下記評価基準に従って目視で評価した。結果を表2に示す。
【0046】
○:分離が認められない。
△:わずかに分離が認められる。
×:分離が認められる。
【0047】
(試験例3;混合性の評価)
表1に記した各実施例の第1剤〜第3剤を混合し、或いは、各比較例の第1剤と第2剤を混合し、混合の容易性を評価した。すなわち、各実施例の第1剤及び第2剤をアプリケータ内に充填し、軽く振とう後、第3剤を更に投入して振とうした。また、各比較例の第1剤及び第2剤をアプリケータ内に充填して振とうした。このときの混合の容易性を下記評価基準に基づいて評価した。結果を表2に記した。
【0048】
<評価基準>
○:均一に混合される。
△:僅かに均一に混合されない。
×:均一に混合されない。
【0049】
(試験例4;皮膚刺激性の評価)
上記試験例1で混合した各実施例及び各比較例の試料を、10名のパネラーの前腕にスポットした。30分間放置後、水で洗い流し、1時間後の発赤の様子を評価した。結果を表2に記した。
【0050】
<皮膚刺激性の評価基準>
○:10名中2名以下で発赤が認められる。
△:10名中3〜5名で発赤が認められる。
×:10名中6名以上で発赤が認められる。
【0051】
(試験例5;刺激臭の評価)
上記試験例1で混合した各実施例及び各比較例の試料の臭気について、10名のパネラーにより下記評価基準に基づいて評価した。結果を表2に記した。
【0052】
<刺激臭の評価基準>
○:10名中8名以上が刺激臭がないと回答。
△:10名中5〜7名が刺激臭がないと回答。
×:10名中4名以下が刺激臭がないと回答。
【0053】
(試験例6;染色性・明度の評価)
上記試験例1で混合した各実施例及び各比較例の試料を、重さ3g、長さ10cmの人毛毛束(黒色)に均一に塗布した。塗布後30℃で30分間放置し、その後、水で洗浄しドライヤーを用いて毛束を乾燥し毛髪をブラウン色に染色した。乾燥後の毛束の染色の度合い(染色性)について、10名の専門パネラーにより下記評価基準に基づいて評価した。また、乾燥後の毛束の明るい色に染色(明度)されているかを、日本ヘアカラー協会(以下、JHCAと略す。)のヘアカラーリング・レベルスケールにより下記評価基準に基づいて評価した。結果を表2に記した。尚、使用した毛束の初期の明度は、JHCAのヘアカラーリング・レベルスケールで、レベル4であった。
【0054】
<染色性の評価基準>
○:10名中8名以上が良好な染色性であると回答。
△:10名中5〜7名が良好な染色性であると回答。
×:10名中4名以下が良好な染色性であると回答。
【0055】
<明度の評価基準>
○:JHCAのヘアカラーリング・レベルスケールでレベル9以上である。
△:JHCAのヘアカラーリング・レベルスケールでレベル6〜8である。
×:JHCAのヘアカラーリング・レベルスケールでレベル5以下である。
【0056】
(試験例7;毛髪損傷度の評価)
上記試験例6の評価後の毛束の状態を電子顕微鏡(倍率3000倍)で観察し、毛髪の損傷について以下の評価基準に基づいて評価した。その結果を表2に示す。
【0057】
<毛髪損傷の評価基準>
○:毛小皮に損傷はほとんど認められなかった。
△:毛小皮に隆起、亀裂、剥離などの損傷が少し認められた。
×:毛小皮に隆起、亀裂、剥離などの損傷が明らかに認められた。
【0058】
【表2】

【0059】
表2の結果から、本発明の三剤式の酸化染毛剤(実施例1〜4)は、二剤式の酸化染毛剤(比較例1〜4)と比較して、染毛剤によるアルカリの刺激臭や皮膚刺激がないことが分かる。また、施述後の毛髪は染色性に優れ、毛髪への損傷を十分に抑制できることがわかる。
【0060】
また、実施例1〜2のようにアルカリ剤を炭酸塩のみとした場合であっても、染色性に優れるとともに、毛髪を明るい色に染色することができるということが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ剤と酸化染料を含有する第1剤と、過酸化水素を含有する第2剤と、炭酸塩を含有する第3剤とからなる、三剤式の酸化染毛剤。
【請求項2】
更に、第3剤に増粘剤を含有してなる、請求項1に記載の酸化染毛剤。
【請求項3】
増粘剤が、セルロース系高分子である、請求項2に記載の酸化染毛剤。
【請求項4】
第3剤が、粉末状である、請求項1〜3の何れかに記載の酸化染毛剤。
【請求項5】
炭酸塩の酸化染毛剤中の含有量が、炭酸ナトリウムに換算して10〜20重量%である、請求項1〜4の何れかに記載の酸化染毛剤。
【請求項6】
第1剤のアルカリ剤が、炭酸塩である、請求項1〜5の何れかに記載の酸化染毛剤。

【公開番号】特開2010−77084(P2010−77084A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−248706(P2008−248706)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(390011442)株式会社マンダム (305)
【Fターム(参考)】