説明

酸化染毛剤

【課題】染色した毛髪の艶を良好にできる酸化染毛剤の提供。
【解決手段】酸化染料が配合された第1剤と酸化剤が配合された第2剤とを混合して得られる酸化染毛剤が、ポリアクリル酸アミド及びカルボキシビニルポリマーが配合されたものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化染料が配合された第1剤と酸化剤が配合された第2剤とを染毛処理前に混合して得られる酸化染毛剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
毛髪を着色するために用いられるカラーリング剤として、酸化染料が配合された酸化染毛剤や酸性染料が配合された酸性染毛料等がある。酸化染毛剤は、毛髪内に浸透させた酸化染料を酸化重合により染着させるといった酸性染毛料とは異なる染毛原理のものであり、毛髪の色持ちの長期持続を実現する。酸化染毛剤を使用する際には、その使用方法に応じた粘度が求められる場合がある。例えば特許文献1には、酸化染毛剤を得るための第1剤と第2剤の混合や毛髪への酸化染毛剤の塗布などの操作性を優れたものとするために、カルボキシビニルポリマー及び/又はアクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体と、アクリル酸アミドと2−アクリル酸アミド−2−メチルプロパンスルホン酸との共重合体を含有させた染毛剤組成物の提案がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−328927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、酸化染毛剤を使用する際の操作性が求められる場合がある一方で、その使用後の染色した毛髪に対する要望や、染毛の施術過程に対する要望もある。すなわち、染色した毛髪の艶、毛髪への染色性、毛先のまとまり、酸化染毛剤を毛髪から洗い流す時のきしみ低減といった要望である。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑み、少なくとも染色した毛髪の艶を良好にできる酸化染毛剤のの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等が、酸化染毛剤を使用した後の毛髪の艶を良好にするべく鋭意検討を行った結果、酸化染毛剤にポリアクリル酸アミドとカルボキシビニルポリマーを配合すれば毛髪の艶が向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明に係る酸化染毛剤は、酸化染料が配合された第1剤と酸化剤が配合された第2剤を混合して得られるものであって、ポリアクリル酸アミド及びカルボキシビニルポリマーが配合されたことを特徴とする。この酸化染毛剤を用いれば、少なくとも染色した毛髪の艶を良好にでき、その上、毛髪への染色性及び毛先のまとまりも良好となる。
【0008】
本発明に係る酸化染毛剤は、カチオン性高分子が配合されたものが好ましい。カチオン性高分子を配合すれば、ポリアクリル酸アミドとカルボキシビニルポリマーが配合されているから毛髪の艶が良好で、毛先までのまとまりが向上する上に毛髪から酸化染毛剤を洗い流す時のきしみ低減が可能となる。
【0009】
本発明に係る酸化染毛剤は、ポリアクリル酸アミドの配合濃度がカルボキシビニルポリマー以外のアニオン性高分子の配合濃度よりも高濃度であるものが好ましく、そのカルボキシビニルポリマー以外のアニオン性高分子の配合濃度が0.5質量%以下のものがより好ましく、そのアニオン性高分子が配合されていないものが更に好ましい。カルボキシビニルポリマーが配合されている場合には、染色した毛髪の艶に関して、カルボキシビニルポリマー以外のアニオン性高分子よりもポリアクリル酸アミドを配合する方が有利であるから、ポリアクリル酸アミドの配合濃度の方を高濃度にするのが好ましい。また、染色した毛髪の艶に関して、カルボキシビニルポリマー以外のアニオン性高分子は、その艶の向上の点でポリアクリル酸アミドよりも劣るか、その艶を低下させる場合があるから、本発明に係る酸化染毛剤においては、カルボキシビニルポリマー以外のアニオン性高分子の配合濃度は0.5質量%以下が良く、そのアニオン性高分子が配合されていないのがより好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る酸化染毛剤によれば、ポリアクリル酸アミド及びカルボキシビニルポリマーの両原料が配合されるから、染色後の毛髪の艶が良好となる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施形態に係る酸化染毛剤に基づき、本発明を以下に説明する。
(酸化染毛剤)
本実施形態に係る酸化染毛剤は、公知の酸化染毛剤と同様に第1剤と第2剤とを混合して得られるものであって、ポリアクリル酸アミド及びカルボキシビニルポリマーが配合されたものである(本実施形態の酸化染毛剤として典型的なものは、水の配合量が70質量%以上のものである。)。これらポリアクリル酸アミド及びカルボキシビニルポリマーが配合された酸化染毛剤であれば、使用後の毛髪の艶が良好となる上に、使用後の毛髪の染色性及び毛先までのまとまりも良好となる。また、本実施形態に係る酸化染毛剤は、カチオン性高分子が配合されたものが好適である。
【0012】
なお、本実施形態の酸化染毛剤は第1剤と第2剤を混合して得られるものであることは上記の通りであり、その混合前には、第1剤及び/又は第2剤にポリアクリル酸アミド、カルボキシビニルポリマー、又はカチオン性高分子が配合される。
【0013】
ポリアクリル酸アミドは、アクリル酸アミドの共重合体である。酸化染毛剤に配合されるポリアクリル酸アミドは、SNF社の「Flocare T 290 GC」等が流通している。また、他の原料と配合したポリアクリル酸アミドとしては、ポリアクリル酸アミド、イソパラフィン、及びポリオキシエチレンラウリルエーテル(7E.O.)が配合されたEssential Ingredients社の「Egel305」等として流通している。
【0014】
本実施形態の酸化染毛剤におけるポリアクリル酸アミドの配合濃度は、例えば0.02質量%以上1.5質量%以下であり、0.05質量%以上1.0質量%以下が良く、0.1質量%以上0.8質量%以下が好ましい。0.02質量%未満であると、毛髪の艶が十分でない場合があり、1.5質量%を超えると、酸化染毛剤の粘度が高く成り過ぎることによって毛髪への塗布が困難となる場合がある。
【0015】
カルボキシビニルポリマーは、ペンタエリスチルアリルエーテル、スクロースアリルエーテル、又はプロピレンアリルエーテル等で架橋したアクリル酸の共重合体である。カルボキシビニルポリマーは、Lubrizol社の「Carbopol Ultrez 10 Polymer」、「Carbopol 934 Polymer」、「Carbopol 940 Polymer」、「Carbopol 941 Polymer」、「Carbopol 980 Polymer」、「Carbopol 981 Polymer」等が市販品として流通している。
【0016】
本実施形態の酸化染毛剤におけるカルボキシビニルポリマーの配合濃度は、例えば0.01質量%以上1.0質量%以下であり、0.03質量%以上0.5質量%以下が良く、0.05質量%以上0.4質量%以下が好ましい。0.01質量%未満であると、毛髪の艶が十分でない場合があり、1.0質量%を超えると、酸化染毛剤の粘度が高く成り過ぎることによって毛髪への塗布が困難となる場合がある。
【0017】
本実施形態の酸化染毛剤は、4級アンモニウム基を備えるカチオン性高分子が配合されたものが良い。カチオン性高分子が更に配合されることで、使用後の毛先までのまとまりが良化し、酸化染毛剤を毛髪から洗い流す時のきしみが低減する。
【0018】
上記カチオン性高分子としては、公知のカチオン性高分子である塩化O−[2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース(ポリクオタニウム−10)、ヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウムクロリド(ポリクオタニウム−4)、塩化O−[2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル]グァーガム、ビニルピロリドン・N,N−ジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体ジエチル硫酸塩(ポリクオタニウム−11)、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリル酸ジエチル硫酸塩・N,N−ジメチルアクリルアミド・ジメタクリル酸ポリエチレングリコール(ポリクオタニウム−52)、塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体(ポリクオタニウム−7)等が挙げられる。これら例示した中でも塩化O−[2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース(ポリクオタニウム−10)は安価で好ましく、窒素含有量が1.0〜2.5%のポリクオタニウム−10を選定すると良い。窒素含有量が1.0〜2.5%のポリクオタニウム−10として流通している例を挙げれば、ライオン社製のレオガードGP、MGP;ユニオンカーバイトコーポレーション製のポリマーJR−400、JR−30M;である。
【0019】
本実施形態の酸化染毛剤におけるカチオン性高分子の配合濃度は、例えば0.01質量%以上1.0質量%以下であり、0.1質量%以上0.8質量%以下が良い。0.01質量%未満であると、毛先までのまとまり及び洗い流す時のきしみ低減が不十分な場合があり、1.0質量%を超える配合量であったとしても、1.0質量%以下と比した毛先までのまとまり及び洗い流す時のきしみ低減が大差ない。
【0020】
本実施形態の酸化染毛剤は、カルボキシビニルポリマー以外のアニオン性高分子が配合されたものでも良いが、当該アニオン性高分子が配合されていないものが最適である。
【0021】
カルボキシビニルポリマー以外のアニオン性高分子を本実施形態の酸化染毛剤に配合する場合、ポリアクリル酸アミドの配合濃度が、カルボキシビニルポリマー以外のアニオン性高分子の配合濃度よりも高濃度であると良い。この場合、本実施形態の酸化染毛剤におけるカルボキシビニルポリマー以外のアニオン性高分子の配合濃度は、0.5質量%以下が良く、0.3質量%以下が好ましく、0.1質量%以下がより好ましい。
【0022】
上記カルボキシビニルポリマー以外のアニオン性高分子は、公知のものとして、アクリル酸、酢酸ビニルなどを用いた重合反応により得られるものがある。当該アニオン性高分子としては、例えば、アクリル酸アルキル共重合体(化粧品表示名称として表せば、アクリル酸アルキルコポリマーNa、アクリル酸アルキルコポリマーアンモニウム等)、アクリル酸アルキル・酢酸ビニル共重合体、アクリル酸・アクリルアミド・アクリル酸エチル共重合体が挙げられる。
【0023】
本実施形態の酸化染毛剤における酸化染料の配合濃度は、例えば0.03質量%以上5質量%以下である。
【0024】
本実施形態の酸化染毛剤における酸化剤の配合濃度は、例えば0.2質量%以上4質量%以下である。
【0025】
本実施形態の酸化染毛剤を得るための第1剤と第2剤との混合比率は、例えば、第1剤の質量:第2剤の質量=1:0.5〜2である。
【0026】
本実施形態に係る酸化染毛剤の使用時の剤型は、特に限定されず、例えば液状、クリーム状、ワックス状、ゲル状、フォーム状(泡状)が挙げられる。本実施形態の酸化染毛剤の粘度は、使用の際の毛髪への塗布、垂れ落ち等のハンドリング性を考慮すれは、クリーム状が良い。
【0027】
本実施形態の酸化染毛剤のpHは、例えば8.0〜12.0であり、良好な染色性と頭皮への刺激を低減するためには9.0〜11.0であり、9.5〜10.5が良い。
【0028】
(第1剤)
本実施形態の酸化染毛剤を得るための第1剤は、酸化染料が配合されたものである(本実施形態の第1剤として典型的なものは、水の配合量が70質量%以上のものである。)。この第1剤には、本実施形態の第2剤にポリアクリル酸アミド、カルボキシビニルポリマー、及びカチオン性高分子の全てが配合されていない場合には、それら全てが配合され、同第2剤にポリアクリル酸アミド、カルボキシビニルポリマー、及びカチオン性高分子のいずれかが配合される場合には、その第2剤への配合原料を第1剤にも適宜配合する。また、公知の第1剤原料を任意原料として本実施形態に係る第1剤に配合しても良い。
【0029】
上記第1剤に配合する酸化染料として、酸化反応により単独で発色する公知の染料中間体から選択した一種又は二種以上を採用する。染料中間体としては、硫酸トルエン−2,5−ジアミン、塩酸ニトロパラフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン等のフェニレンジアミン誘導体;塩酸2,4−ジアミノフェノール、オルトアミノフェノール、パラアミノフェノール等のフェノール誘導体;等が挙げられる。
【0030】
また、第1剤の酸化染料として、染料中間体により酸化されて色調を呈する公知のカップラーから選択された一種または二種以上を採用しても良い。カップラーとしては、塩酸2,4−ジアミノフェノキシエタノール、塩酸メタフェニレンジアミン等のフェニレンジアミン誘導体;5−アミノオルトクレゾール、メタアミノフェノール等のアミノフェノール誘導体;レゾルシン;等が挙げられる。
【0031】
本実施形態の第1剤における酸化染料の配合濃度は、例えば0.05質量%以上10質量%以下である。
【0032】
本実施形態の第1剤にポリアクリル酸アミドを配合する場合、その配合濃度は、例えば0.04質量%以上3.0質量%以下であり、0.1質量%以上2.0質量%以下が良く、0.2質量%以上1.6質量%以下が好ましい。
【0033】
本実施形態の第1剤にカルボキシビニルポリマーを配合する場合、その配合濃度は、例えば0.02質量%以上2.0質量%以下であり、0.06質量%以上1.0質量%以下が良く、0.1質量%以上0.8質量%以下が好ましい。
【0034】
本実施形態の第1剤にカチオン性高分子を配合する場合、その配合濃度は、例えば0.02質量%以上2.0質量%以下であり、0.2質量%以上1.6質量%以下が良い。
【0035】
本実施形態の第1剤に任意配合する公知の第1剤原料としては、例えば、高級アルコール、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、多価アルコール、炭化水素、油脂、pH調整剤、酸化防止剤、キレート剤、直接染料である。
【0036】
第1剤用原料としての高級アルコールは、例えば、セタノール、イソセチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オクチルドデカノール、ミリスチルアルコールが挙げられる。一種又は二種以上の高級アルコールを第1剤に配合すると良く、高級アルコールの配合濃度は、適宜設定されるものであるが、例えば2質量%以上20質量%以下である。
【0037】
第1剤用原料としてのノニオン界面活性剤は、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトールテトラ脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルが挙げられる。一種又は二種以上のノニオン界面活性剤を第1剤に配合すると良く、ノニオン界面活性剤の配合濃度は、例えば0.1質量%以上15質量%以下である。
【0038】
第1剤用原料としてのカチオン界面活性剤は、例えば、アルキルアミン塩、脂肪酸アミドアミン塩、エステル含有3級アミン塩、アーコベル型3級アミン塩、長鎖アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジ長鎖アルキルジメチルアンモニウム塩、トリ長鎖アルキルモノメチルアンモニウム塩、ベンザルコニウム型4級アンモニウム塩、モノアルキルエーテル型4級アンモニウム塩が挙げられる。一種又は二種以上のカチオン界面活性剤を第1剤に配合すると良く、カチオン界面活性剤の配合濃度は、例えば0.1質量%以上3質量%以下である。
【0039】
第1剤用原料としての多価アルコールは、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ブチレングリコールが挙げられる。一種又は二種以上の多価アルコールを第1剤に配合すると良く、多価アルコールの配合濃度は、例えば0.1質量%以上3質量%以下である。
【0040】
第1剤原料としての炭化水素は、例えば、流動パラフィン、スクワラン、プリスタン、オゾケライト、パラフィン、セレシン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックスが挙げられる。一種又は二種以上の炭化水素を第1剤に配合すると良く、炭化水素の配合濃度は、例えば0.1質量%以上10質量%以下である。
【0041】
第1剤原料としての油脂は、例えば、硬化油、アーモンド油、アボガド油、オリーブ油、シア脂油、月見草油、ツバキ油、ピーナッツ油、ローズヒップ油が挙げられる。一種又は二種以上の油脂を第1剤に配合すると良く、油脂の配合濃度は、例えば0.1質量%以上10質量%以下である。
【0042】
第1剤原料としてのpH調整剤は、例えば、アンモニア、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、トリエタノールアミン、アルギニン、乳酸、クエン酸、コハク酸、グリコール酸が挙げられる。
【0043】
第1剤用原料としての酸化防止剤は、例えば、アスコルビン酸、亜硫酸塩が挙げられる。
【0044】
また、第1剤用原料としてのキレート剤は、例えば、エチレンジアミン四酢酸及びその塩、ジエチレントリアミン五酢酸及びその塩、ヒドロキシエタンジホスホン酸及びその塩が挙げられる。
【0045】
本実施形態の第1剤のpHは、例えば8.5〜12.5であり、良好な染色性と頭皮への刺激を低減するためには9.5〜11.5であり、10.0〜11.0が良い。
【0046】
また、本実施形態に係る第1剤の剤型は、特に限定されず、液状、クリーム状、ワックス状、ゲル状等のO/Wエマルションである。クリーム状の剤型である場合の第1剤の粘度は、例えば、B型粘度計を使用して25℃、12rpmで計測した60秒後の値が10000mPa・s以上60000mPa・s以下である。
【0047】
(第2剤)
本実施形態の酸化染毛剤を得るための第2剤は、酸化剤が配合されたものである(本実施形態の第2剤として典型的なものは、水の配合量が70質量%以上のものである。)。この第2剤には、本実施形態の第1剤にポリアクリル酸アミド、カルボキシビニルポリマー、及びカチオン性高分子の全てが配合されていない場合には、それら全てが配合され、同第1剤にポリアクリル酸アミド、カルボキシビニルポリマー、及びカチオン性高分子のいずれかが配合される場合には、その第1剤への配合原料を第2剤にも適宜配合する。また、公知の第2剤原料を任意原料として本実施形態に係る第2剤に配合しても良い。
【0048】
第2剤に配合される上記酸化剤としては、例えば、過酸化水素、臭素酸塩、過炭酸塩、過ホウ酸塩が挙げられる。第2剤における酸化剤の配合濃度は、特に限定されないが、例えば0.3質量%以上7質量%以下である。
【0049】
本実施形態の第2剤にポリアクリル酸アミドを配合する場合、その配合濃度は、例えば0.04質量%以上3.0質量%以下であり、0.1質量%以上2.0質量%以下が良く、0.2質量%以上1.6質量%以下が好ましい。
【0050】
本実施形態の第2剤にカルボキシビニルポリマーを配合する場合、その配合濃度は、例えば0.02質量%以上2.0質量%以下であり、0.06質量%以上1.0質量%以下が良く、0.1質量%以上0.8質量%以下が好ましい。
【0051】
本実施形態の第2剤にカチオン性高分子を配合する場合、その配合濃度は、例えば0.02質量%以上2.0質量%以下であり、0.2質量%以上1.6質量%以下が良い。
【0052】
本実施形態の第2剤に任意配合する公知の第2剤原料としては、高級アルコール(配合濃度は、例えば2質量%以上15質量%以下)、ノニオン界面活性剤(配合濃度は、例えば0.5質量%以上6質量%以下)、カチオン界面活性剤(配合濃度は、例えば0.1質量%以上3質量%以下)、多価アルコール、エステル油、酸化防止剤、キレート剤などである。
【0053】
第2剤の剤型は、特に限定されず、例えば液状、クリーム状、ゲル状が挙げられる。
【実施例】
【0054】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明の趣旨を逸脱することがない限り、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0055】
(第1剤)
下記表1〜4に示す原料を水に配合し、実施例及び比較例の酸化染毛剤を得るための第1剤を調製した。これら第1剤の剤型は、クリーム状O/Wエマルションであった。
【0056】
(第2剤)
実施例及び比較例の酸化染毛剤を得るための共通第2剤として、過酸化水素6質量%、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン0.1質量%、ミリスチルアルコール3質量%、流動パラフィン0.4質量%、ラノリン0.4質量%、ポリオキシエチレンセチルエーテル2質量%となる配合濃度の原料を水に配合したものを調製した。
【0057】
(酸化染毛剤)
上記調製した第1剤と第2剤を質量比1:1で混合し、実施例及び比較例の酸化染毛剤を得た。酸化染毛剤の剤型はクリーム状であり、pHは10.0以上10.5以下の範囲であった。
【0058】
(染毛処理)
実施例及び比較例の酸化染毛剤のいずれかを毛束(一般女性から採取した5〜8gの長さ30cm程度の毛束)に塗布し、室温で20分間、毛束を放置した。その後、温水で毛束から酸化染毛剤を洗い流し、毛束を櫛通しを行いながら温風で乾燥させた。以上をもって染毛処理とした。
【0059】
(酸化染毛剤の評価)
専門の評価者3名により、染毛処理後に自然光が照射されている状況での毛束の「艶」、染毛処理後に自然光が照射されている状況での毛束の「染色性」、染毛処理後の毛束の「毛先までのまとまり」、染毛処理過程での毛束から酸化染毛剤を「洗い流す時のきしみ」について評価した。下記表1内での評価では比較例1cを基準とし、表2内での評価では実施例2を基準とし、表3内での評価では実施例3を基準とし、表4内での評価では実施例4aを基準とした。
【0060】
評価結果は下記表1〜4の通りであり、当該結果は評価者全員が一致したものである。評価結果の詳細は次の通りである。
【0061】
毛髪の艶
◎:下記「○」と評価した毛束よりも、更に艶があった。
○:基準よりも艶があった。
―:基準又は基準と同等
×:基準よりも艶がなかった。
【0062】
染色性
○:基準よりも染まっていた。
―:基準又は基準と同等。
×:基準よりも染まっていなかった。
【0063】
毛先までのまとまり
○:基準よりも毛先までまとまっていた。
―:基準又は基準と同等。
×:基準よりも毛先がまとまっていなかった。
【0064】
洗い流すときのきしみ
○:基準よりもきしみ(指通りの悪さ、指への毛髪の絡まり)がなかった。
―:基準又は基準と同等。
×:基準よりもきしみがあった。
【0065】
上記酸化染毛剤の評価とは別に、染毛処理を行った毛束についてのラスター値を算出した。ラスター値の算出は、Bossa Nova Technologies社製「SAMBA Hair System」を用いて行った。下記各表において、「Δラスター値(%)」は、各表の基準のラスター値を100%としたときの差を示す。なお、高いラスター値は、毛髪の艶を高める一要素になると言われている。
【0066】
【表1】

【0067】
上記表1においては、ポリアクリル酸アミド及びカルボキシビニルポリマーが配合された実施例1のみが、艶が特に良好で、染色性及び毛先までのまとまりが良好であったことが示されている。つまり、本発明に係る酸化染毛剤によれば、艶が特に良好で、染色性及び毛先までのまとまりが良好になることを確認できる。
【0068】
【表2】

【0069】
上記表2においては、カルボキシビニルポリマーとの併用にポリアクリル酸アミドを用いた実施例2が、アニオン性高分子の一種であるアクリル酸アルキル共重合体、アクリル酸アルキル・酢酸ビニル共重合体、又はアクリル酸・アクリル酸アミド・アクリル酸エチル共重合体を用いた比較例2a、比較例2b、及び比較例2cのいずれよりも、艶及び染色性に優れていたことが示されている。つまり、酸化染毛剤にカルボキシビニルポリマーと配合する際に併用する原料としてポリアクリル酸アミドを採用することが、艶及び染色性に有利であることを確認できる。また、アニオン性高分子(アクリル酸アルキル共重合体、アクリル酸アルキル・酢酸ビニル共重合体、アクリル酸・アクリル酸アミド・アクリル酸エチル共重合体)を酸化染毛剤に配合することは、艶と染色性に不利であることを確認できる。
【0070】
また、上記表2においては、カルボキシビニルポリマーとの併用にポリアクリル酸アミドを用いた実施例2が、ポリビニルピロリドン、又はアクリル酸オクチルアミド・アクリル酸ヒドロキシプロピル・メタクリル酸ブチルアミノエチル共重合体を用いた比較例2d、及び比較例2eのいずれよりも、艶及び染色性に優れていたことが示されている。これらの評価結果からしても、酸化染毛剤にカルボキシビニルポリマーと配合する際に併用する原料としてポリアクリル酸アミドを採用することが、艶及び染色性に有利であることを確認できる。
【0071】
【表3】

【0072】
上記表3においては、上記表2における結果と同様、酸化染毛剤にカルボキシビニルポリマーを配合する際に併用する原料としてポリアクリル酸アミドを採用することが、艶及び染色性に有利であることを確認できる。
【0073】
【表4】

【0074】
表4において、カチオン性高分子を配合しなかった実施例4aと同高分子を配合した実施例4b〜4eの艶と染色性は、同等であったことが示されている。そして、カチオン性高分子(塩化O−[2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース)の配合を実施例4bよりも実施例4cで増量しているが、艶及び染色性が同等である。これらのことは、本発明に係る酸化染毛剤にカチオン性高分子を配合しても、艶及び染色性に影響を与えないか又はそれらの低下を抑制できることを示している。また、カチオン性高分子を配合した実施例4b〜4eの「毛先までのまとまり」及び「洗い流す時のきしみ」の評価結果が実施例4aよりも良かったことは、本発明に係る酸化染毛剤においては、カチオン性高分子の配合が毛先までのまとまり及び洗い流す時のきしみを良化させることを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化染料が配合された第1剤と酸化剤が配合された第2剤とを混合して得られる酸化染毛剤であって、
ポリアクリル酸アミド及びカルボキシビニルポリマーが配合されたことを特徴とする酸化染毛剤。
【請求項2】
カチオン性高分子が配合された請求項1に記載の酸化染毛剤。
【請求項3】
前記カルボキシビニルポリマー以外のアニオン性高分子が配合されており、前記ポリアクリル酸アミドの配合濃度が前記カルボキシビニルポリマー以外のアニオン性高分子の配合濃度よりも高濃度である請求項1又は2に記載の酸化染毛剤。
【請求項4】
前記カルボキシビニルポリマー以外のアニオン性高分子の配合濃度が0.5質量%以下である請求項3に記載の酸化染毛剤。
【請求項5】
前記カルボキシビニルポリマー以外のアニオン性高分子が配合されていない請求項1又は2に記載の酸化染毛剤。


【公開番号】特開2013−1668(P2013−1668A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−133035(P2011−133035)
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【出願人】(592255176)株式会社ミルボン (138)
【Fターム(参考)】