説明

酸化的ストレスモジュレーター(OSM)を含む薬学的に活性な組成物、新規化学物質、組成物および用途

本明細書中では、医薬組成物および薬物、ならびに炎症および癌の治療における、かかる医薬組成物および薬物の使用法を記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(相互参照)
本出願はその全体として参照することにより本明細書中に組み込まれる、2009年4月17日付で出願された米国仮出願番号第61/170,555号の利益を主張する。
【0002】
酸化的ストレスモジュレーター(OSM)に関する組成物、種々の形態の酸化/還元(レドックス)の形態の使用、ニトロソ化もしくは酸化的ストレスにより誘発される症状、炎症、過形成、ならびにこれらに限定されるものではないが、哺乳動物前立腺、腎臓、肝臓、脳、口、頭頸部、指節(pharanx)、食道(esophageous)、胃、結腸、直腸、性腺、胸部、肺、および膵癌、ならびに血液および他の細胞(幹細胞、癌幹細胞ならびに外胚葉、内胚葉および中胚葉細胞由来の細胞を包含する)の癌を包含する腫瘍の使用を本明細書中に記載する。当該化合物は、1以上の特殊なキノン、ヒドロキノン、ジヒドロキノン、プラストキノン、キノール、クロマノール、クロマノンもしくはある他の修飾キノン、テンポール、トリテルペン、ジアミン、テトラシクレンまたは関連する機能的シグナリングクロマン部分を含む少なくとも1以上の抗酸化剤様機能的シグナリング部分を含む。これらの化合物は、化学的に結合した化学リンカーおよび所定の長さの共有結合した化学リンカーを(a)有さないものもあれば、(b)有するものもあり、これらは(b1)結合した核転座化合物を有するものもあれば、(b2)(b2α)1以上の第4カチオン性部分または(b2β)所定の特定の1以上のphytl鎖または(b2γ)pH感受性カルバミドリンカー(全て種々の既知炭素原子長さを有する)のいずれかを含むミトコンドリア転座化合物を有するものもある。酸化的ストレスを調整する組成物および使用を主張する。
【0003】
本開示はまた、酸化的ストレスモジュレーター(OSM)を含む医薬組成物およびこれを使用する方法に関する。特に、本発明の医薬組成物は薬剤的に活性な化合物、および薬剤的に活性な化合物のインビボ酸化的分解を軽減するOSMを含む。
【背景技術】
【0004】
典型的には、酸化的ストレスは:(1)酸化剤生成の増加、(2)抗酸化剤防御の減少、および/または(3)酸化的損傷を治療できないこと、の3つの因子のうちの1つの結果として細胞に課せられる。細胞損傷は、活性酸素または窒素種(ROS)によって誘発される。ROSは、フリーラジカル、酸素原子を含む反応性アニオン、またはフリーラジカルを産生することができるか、もしくはフリーラジカルによって化学的に活性化されるかのいずれかである酸素原子を含む分子のいずれかである。例は、ヒドロキシルラジカル、スーパーオキシド、過酸化水素、過酸化亜硝酸などである。インビボROSの主な供給源は好気呼吸であるが、ROSは、脂肪酸のペルオキシソームβ−酸化、生体異物化合物によるミクロソームのチトクロームP450代謝、病原体またはリポ多糖類による貪食作用の刺激、アルギニン代謝、および組織特異性酵素によっても産生される。通常の条件下で、ROSは、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、カタラーゼ、またはグルタチオン(GSH)、およびペルオキシダーゼの作用によって細胞から除去される。細胞への主な損傷は、膜脂質中の多価不飽和脂肪酸、必須タンパク質、およびDNAなどの巨大分子のROSによって誘発される変更から生じる。さらに、酸化的ストレスおよびROSは、感染性および非感染性疾患状態、例えば炎症、精神病、腎疾患、心血管疾患、食事誘発性肥満および糖尿病、アルツハイマー病、パーキンソン病、ALs、癌、線維症、ならびに老化に関与する。
【0005】
従って、そのような疾患を標的とする薬剤的に活性な化合物(すなわち、薬剤)をインビボ酸化状態またはニトロソ化状態に付し、それによってプロドラッグまたは薬剤または薬物関連代謝物の少なくとも一部の分解に至る。酸化的またはニトロソ化分解は、化学予防的または化学療法的使用に利用できる薬剤的に活性な化合物の量を事実上減少させ、有効性の低下に至るかまたはさらに高い量を投与することが必要になり、ひいては、インビボで存在する薬剤的に活性な化合物の量がさらに多くなるために望ましくない副作用の発生および/または強度が増大し得る。
【0006】
薬剤代謝は、通常、特殊な酵素系による薬剤の代謝、薬剤の生化学的修飾または分解である。これは異物代謝の一形態である。薬物代謝は、多くの場合、親油性化合物を、さらに容易に排出される極性産物に変換する。その速度は、薬剤の薬理作用の持続期間と強度の重要な決定因子である。薬剤代謝は、中毒または解毒、すなわち化学物質の活性化または不活性化をもたらし得る。両方とも起こる際、ほとんどの薬剤の主な代謝物は解毒産物である。
【0007】
薬剤はほとんど全てが生体異物である。他の一般的に用いられる有機化学物質も生体異物でもあり、薬剤と同じ酵素によっても代謝される。これにより、薬剤−薬剤および薬剤−化学相互作用または反応の機会が与えられる。
【0008】
第I相反応が通常第II相に先行して起こるが、必ずしも起こるわけではない。この反応中に、極体が導入されるかまたはアンマスクされ、その結果、もとの化学物質の(さらに極性が高い)代謝物が得られる。調合薬の場合、第I相反応は薬剤の活性化または不活性化に至る可能性がある。第I相反応(非合成反応とも称する)は、酸化、還元、加水分解、環化および脱環化反応によって起こり得る。薬剤酸化は、混合機能オキシダーゼにより、多くの場合、肝臓で行われる、酵素による酸素の添加または水素の除去を含む。これらの酸化的反応は、典型的にはチトクロームP450モノオキシゲナーゼ(しばしばCYPと略記)、NADPHおよび酸素を含む。この方法をそれらの代謝のために利用するクラスの調合薬には、フェノチアジン、パラセタモールおよびステロイドが含まれる。第I相反応の代謝物が十分に極性である場合、それらこの時点で直ちに排出され得る。しかし、多くの第I相産物は急速に除去されず、続いて反応して、内因性基質が新しく組み入れられた官能基と組み合わさって、非常に極性の高い接合体を形成する。通常の第I相酸化は、C−H結合をC−OHに変換することを含む。この反応は、薬理学的に不活性な化合物(プロドラッグ)を薬理学的に活性なものに変換する場合もある。同様に、第I相は、非毒性分子を有毒なものに変えることができる(有毒化)。有名な例は、アセトニトリル(CH3CN)である。胃中での単純な加水分解により、アセトニトリルは比較的無害な酢酸塩とアンモニアとに変わる。しかし、第I相代謝はアセトニトリルをHOCHCNに変換し、これは急速にホルムアルデヒドとシアン化水素とに分離し、これらはどちらも有毒である。薬剤候補の第I相代謝は、非酵素触媒を使用して実験室でシミュレーションすることができる。生体模倣型反応のこの例では、多くの場合、第I相代謝物を含む産物の混合物が得られる傾向がある。第II相反応は、通常、(例えば、グルクロン酸、スルホン酸塩(一般的に硫酸化として知られる)、グルタチオンまたはアミノ酸との)共役結合反応として知られており、通常、解毒性であり、第I相代謝物の極性官能基との相互作用を含む。共役結合反応が起こる薬剤上の部位としては、カルボキシル(−COOH)、ヒドロキシル(−OH)、アミノ(NH))、およびスルフヒドリル(−SH)基が挙げられる。共役結合反応の生成物は、分子量が増加し、通常、活性な代謝物を産生することが多い第I相反応と異なり不活性である。
【0009】
量的には、肝細胞の滑面小胞体が薬剤代謝の主要臓器であるが、あらゆる生物組織は薬剤を代謝させる能力がある。薬物代謝への肝臓の貢献の原因となる因子としては、肝臓が大きな器官であること、肝臓は腸で吸収された化学物質が浸透する最初の器官であること、および他の器官に対して、ほとんどの薬剤を代謝する酵素系が非常に高濃度で存在することが挙げられる。薬剤が消化管中に運ばれる場合、消化管中で薬剤は門脈を通って肝循環に入るが、十分に代謝されるようになり、初回通過効果を示すといわれている。薬物代謝の他の部位としては、胃腸管、肺、腎臓と皮膚の上皮細胞が挙げられる。これらの部位は、通常、限局的毒性反応に関与する。
【0010】
いくつかの主要酵素と経路は、薬物代謝に関与し、第I相反応と第II相反応とに分けることができ、これらは以下の系を含む:
・チトクロームP450モノオキシゲナーゼ系
・フラビン含有モノオキシゲナーゼ系
・アルコールデヒドロゲナーゼおよびアルデヒドデヒドロゲナーゼ
・モノアミンオキシダーゼ
・ペルオキシダーゼによる共酸化
・電子伝達系、代謝、ホルモン、化学物質および他のシグナル伝達経路からの過酸化物生成
による酸化
または:
・NADPH−チトクロームP450還元酵素
・還元(鉄)チトクロームP450
による還元。
【0011】
還元反応の間、化学物質が無益な循環に入る可能性があり、この循環でフリーラジカルを獲得し、次いですぐにこれを失い酸素になる(スーパーオキシドアニオンを形成する)。加水分解には:
・エステラーゼおよびアミダーゼ
・エポキシドヒドロラーゼ
が含まれる。
【0012】
薬物代謝に影響を及ぼす因子には、ほとんどの親油性薬剤の薬理作用の持続期間および強度が含まれ、これらは薬剤が代謝されて不活性生成物になる速度によって決定される。
【0013】
チトクロームP450モノオキシゲナーゼ系は、この点に関しては最も重要な経路である。一般的に、薬理活性代謝物の代謝(例えば、酵素誘導)速度を増加させるものはいずれも、薬剤作用の持続期間および強度を減少させる。逆もまた真である(例えば、酵素阻害)。さまざまな生理的および病理学的因子も薬物代謝に影響を及ぼし得る。薬物代謝に影響を及ぼし得る生理学的な因子には、年齢、個人差(例えば、遺伝薬理学)、腸肝循環、栄養、腸内細菌叢、または性差が含まれる。
【0014】
一般的に、薬剤は、胎児、新生児および高齢のヒトならびに動物では、成体よりもゆっくりと代謝される。遺伝的変異(多型)は、薬剤の作用の可変性のうちのいくつかの原因である。チトクロームP450モノオキシゲナーゼ系酵素も個人個人で異なり得、民族的背景によって1〜30%の人で欠乏症が起こる。肝臓、腎臓または心疾患を含む病理学的因子も、薬物代謝に影響を及ぼし得る。コンピュータでのモデリングおよびシミュレーション法により、ヒト被験者で臨床試験を行う前に仮想患者集団での薬剤代謝の予測が可能になる。これを用いて、有害反応の危険性が最も高い個体を特定することができる。
【0015】
ニトロソ化または酸化的ストレスは、老化と関連した種々のヒト病理および変性疾患、例えばパーキンソン病、癌およびアルツハイマー病、ならびにハンチントン舞踏病、食事誘発性肥満および糖尿病ならびにフリードライヒ失調症、ならびに感染、炎症および老化に伴い蓄積する非特異的細胞損傷に関与することが知られている。
【0016】
一部の器官の細胞核および細胞質は、活性酸素種(ROS)または活性窒素種(RNS)由来の過酸化水素、スーパーオキシドアニオンおよびヒドロキシルラジカルの代謝源である。細胞質、ミトコンドリアは、エネルギー代謝に主に関与する細胞内小器官であり、主な細胞質ROS源でもあり、ほとんどの細胞内部で酸化的ストレスおよび/または損傷を引き起こすフリーラジカルおよび活性酸素種(「ROS」、例えば過酸化水素およびスーパーオキシドラジカルアニオン(O・))に寄与する。ミトコンドリアは、抗酸化酵素(ペルオキシレドキシン、チオレドキシン、およびGSH依存性ペルオキシダーゼ)の存在のため過酸化水素を無毒化する能力がある。典型的には、ミトコンドリアスーパーオキシド(O・、Oの1つの電子が減少することによって生じるラジカルアニオン)は、以下に示す化学量論に従って、ミトコンドリアマトリックス内に限局されるマンガンスーパーオキシドジスムターゼ(MnSOD)によって不均化(dismutate)される。
2O・+2H→O+H
【0017】
しかし、細胞RNSまたはROS産生が細胞の解毒能力を上回る場合、酸化的損傷が起こり得る。この損傷は、ミトコンドリア機能および酸化的リン酸化を阻害し、ミトコンドリア、他の細胞質もしくは核細胞タンパク質、DNA、RNAおよびリン脂質に対する顕著な細胞性損傷に至り、ひいては細胞の損傷、酸化、炎症、過形成、腫瘍、疾患および/または死を誘発する。スーパーオキシドは、一酸化窒素と拡散制御された反応速度で反応することもでき、非常に強力な酸化剤、例えば過酸化亜硝酸および過酸化ニトリルを形成し、これらは酸化およびニトロ化反応によりタンパク質およびDNAを修飾することができる。これらの損傷および病理学的役割に加えて、ROSはまた、レドックスシグナリング分子として作用し、急性炎症、細胞増殖、DNA損傷修復、遺伝子エラーおよび突然変異を促進して、慢性炎症、過形成、または腫瘍形成および悪性もしくは他の疾患に至る。
【0018】
天然に存在する外因性および内因性組織活性酸素または窒素種(ROS)は、前立腺、結腸直腸、リンパ腫および膵臓発癌において重要な役割を果たすことが知られている。ROSはチオール依存性酵素の活性を変え、細胞レドックスバランスを変え、共有結合的にタンパク質を修飾し、DNAを修飾し突然変異を起こさせる。高脂肪食を摂っている男性における増大した脂質過酸化および無制御なROSの産生は、発展途上国と比較して先進工業国で前立腺癌の発生率がより高いことの大きな理由の1つであることも示された。近年、直接的な実験的証拠により、ROS産生の増加と、膵臓および前立腺器官をはじめとするさまざまな組織における変異および腫瘍発生における対応した増加とが関連づけられている。例えば、Oberleyおよび同僚らは、酸化的ストレス誘導酵素ならびに悪性および正常ヒト前立腺組織のDNA塩基に対する酸化的損傷をモニタリングした。悪性前立腺腫瘍組織は、正常な前立腺の組織と比較して有意に高い酸化的ストレスおよびROSにより誘発されたDNAの修飾を示した。Hoおよび共同研究者ら(Tam et al, Prostate. 2006 Jan 1;66(1):57−69)は、ヒト前立腺癌のよく研究されたTRAMP(マウス前立腺のトランスジェニック腺癌)前立腺癌マウスモデルで生じている前新生物病変における高い酸化的ストレスによって誘発されたDNAの修飾の存在を示した。
【0019】
したがって、改善された薬理学的特性および/または毒性プロフィールを有する特許薬またはプロドラッグとしての抗炎症、抗増殖性、抗過形成性、抗変性、および/または抗癌薬剤を含む、核もしくは細胞質−ミトコンドリア外もしくは細胞質−ミトコンドリア標的化抗酸化剤または類似のモジュレーター薬剤が依然として必要とされている。以下に開示し記載される種々の発明は、ミトコンドリアを標的とし得るかまたは標的とし得ない、そのような分子を提供することに関する。
【0020】
動物またはヒトの薬物療法において機能するために、細胞質送達およびミトコンドリア外標的化またはミトコンドリアに標的化分子は、患者の細胞内に、好ましくは経口投与後に送達されなければならない。ミトコンドリア外標的化に関して、アンドロゲン受容体のリガンド結合ドメイン(LBD)(AR−LBD)は、核中に導入される膜または細胞質タンパク質である。表Iは、ある既知細胞系、処理、標的化試験化合物および系の結果を記載する。
【表1】




【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本開示の一態様は、疾患、炎症、変性、壊死、過形成または腫瘍形成(感染性もしくは非感染性または進行性疾患あるいは転移性進行または転移を含む)、癌またはその疾患前兆の発生、再発を治療もしくは阻害するための組成物および方法に関し、炎症、過形成、腫瘍形成、疾患またはその前駆障害があると診断された哺乳動物に対して、炎症、過形成、腫瘍形成、疾患またはその前兆の発生、再発、進行を治療または阻害するために有効な量で、抗酸化剤と酸化を受けることができる化合物、例えば、HDAC阻害剤、ヒストンデアセチラーゼまたはドキソルビシンもしくはエトポシドなどの他の抗癌剤または他の薬剤との組み合わせを投与することからなる。
【0022】
一実施形態は、HDAC阻害剤と抗酸化剤とを含む組み合わせの投与を含む癌の治療法である。別の実施形態は、癌がHDACもしくは他の阻害剤耐性癌または他の疾患である方法である。別の実施形態は、癌が前立腺癌または結腸直腸癌から選択される方法である。別の実施形態は、癌がアンドロゲン反応性癌、生きている前立腺腺癌または肝細胞癌である方法である。別の実施形態は、癌が活性酸素種の増加したレベルによって特徴づけられる方法である。別の実施形態は、癌が、例えば細胞によるスーパーオキシドおよび/または過酸化水素の産生の増加した速度から酸化的ストレスの上昇したレベルによって特徴づけられる方法である。別の実施形態は、HDAC阻害剤がスベロリルアニリドヒドロキサム酸、トリコスタチンA、トラポキシンB、フェニル酪酸塩、バルプロ酸、ベリノスタット/PXD101、MS275、LAQ824/LBH589、CI994、およびMGCD0103から選択される方法である。別の実施形態は、HDAC阻害剤がスベロリルアニリドヒドロキサム酸から選択される方法である。
【0023】
別の実施形態は、抗酸化剤がビタミンEまたはビタミンE類似体から選択される方法である。別の実施形態は、抗酸化剤がビタミンEプロドラッグ、プラストキノンプロドラッグまたはニトロキシドプロドラッグから選択される方法である。さらなる実施形態は、抗酸化剤が式(I)の化合物である方法である。別の実施形態は、抗酸化剤が最初に投与される方法である。別の実施形態は、ビタミンEが最初に投与される方法である。
【0024】
抗酸化剤および酸化を受けることができる化合物を含む医薬組成物も本明細書中に記載する。一実施形態において、酸化を受けることができる化合物は、HDACの阻害剤である。一実施形態において、酸化を受けることができる化合物は、HDAC阻害剤と抗酸化剤との組合せを含む医薬組成物である。別の実施形態は、HDAC阻害剤が、スベロリルアニリドヒドロキサム酸、トリコスタチンA、トラポキシンB、フェニル酪酸塩、バルプロ酸、ベリノスタット/PXD101、MS275、LAQ824/LBH589、CI994、およびMGCD0103から選択される方法である。別の実施形態は、HDAC阻害剤がスベロリルアニリドヒドロキサム酸から選択される方法である。別の実施形態は、抗酸化剤がビタミンEもしくはビタミンE類似体、プラストキノンもしくはプラストキノン類似体、テンポールもしくはテンポール類似体、またはトリテルペンもしくはトリテルペン類似体から選択される方法である。別の実施形態は、抗酸化剤が薬剤またはプロドラッグとして処方されたビタミンEまたはビタミンE類似体から選択される方法である。更なる実施形態において、抗酸化剤は式(I)の化合物である。別の実施形態において、組成物が単一の単位投薬量で含まれる方法である。
【0025】
一実施形態は、抗癌剤と抗酸化剤とを含む組み合わせを投与することを含む方法である。別の実施形態は、抗癌剤が活性酸素種によって酸化され得る方法である。別の実施形態は、抗癌剤が、ドセタキソール、5−フルオロウラシル、硫酸ビンブラスチン、リン酸エストラムスチン、スラミン、ストロンチウム−89、ブセレリン、クロロトラニセン、燐酸クロム、エトポシド(VP16)、シスプラチン、サトラプラチン、シクロホスファミド、デキサメタゾン、ドキソルビシン、テストステロンおよび類似体、ステロイドおよび類似体、非ステロイド系抗炎症薬(アスピリンを含む)、エストラジオール、吉草酸エストラジオール、エストロゲン(共役またはエステル化)、エストロン、エチニルエストラジオール、フロキシウリジン、ゴセレリン、ヒドロキシウレア、メルファラン、メトトレキセート、マイトマイシン、プレドニゾン、スベロリルアニリドヒドロキサム酸、トリコスタチンA、トラポキシンB、フェニル酪酸塩、バルプロ酸、ベリノスタット/PXD101、MS275、LAQ824/LBH589、CI994、およびMGCD0103から選択される方法である。
【0026】
別の実施形態は、抗酸化剤が式(I)
【化1】


(式中:
i)Aは、ヒドロキノン、ジヒドロキノン、キノン、プラストキノン、キノール、フェノール、ジアミン、トリテルペン、テトラサイクリン、クロマノール、クロマノン、クロマン、テンポール、テンポール−Hまたはそれらのプロドラッグを含み、2〜30個の炭素原子を有する、抗酸化剤または還元された抗酸化剤として機能できる少なくとも1つの基であり;
ii)Lは、0〜50個の炭素原子を含む連結基(pH感受性カルボジアミドリンカーの有無は問わない)であり;
iii)Eは、原子でないかまたは窒素もしくはリンであり;
iv)R1’、R1”、およびR1’”は、それぞれ独立して、0〜12個の炭素原子を含む有機ラジカルから選択される)の構造および
b)式
【化2】

を有する少なくとも1つのアニオン
を有し、ここで、カチオンおよびアニオンは、もし存在するならば、中性の薬剤的に許容される塩を形成するために十分な量で存在する方法である。
【0027】
別の実施形態は、A基が式:
【化3】


(式中、Yは任意に存在し:
i)C〜C直鎖、分岐、もしくは環状アルキル;
ii)C〜C直鎖、分岐、もしくは環状ハロアルキル;
iii)C〜C直鎖、分岐、もしくは環状アルコキシ;
iv)C〜C直鎖、分岐、もしくは環状ハロアルコキシ;または
v)−N(R(各Rは独立して、水素またはC〜C直鎖もしくは分岐アルキルである)
から選択される1以上の電子活性化部分であり得;そして
mは存在するY単位の数を示し、mの値は0〜3である)
を有する方法である。
【0028】
別の実施形態は、Aが
【化4】

である方法である。別の実施形態は、抗酸化剤がビタミンEまたはビタミンEの類似体である方法である。
【0029】
別の実施形態は、抗癌剤がHDAC阻害剤である方法である。別の実施形態は、HDAC阻害剤がスベロリルアニリドヒドロキサム酸である方法である。
【0030】
一実施形態は、抗癌剤と抗酸化剤との組合せを含む医薬組成物である。別の実施形態は、抗癌剤が活性酸素種によって酸化され得る医薬組成物である。別の実施形態は、抗癌剤が、ドセタキソール、5−フルオロウラシル、硫酸ビンブラスチン、リン酸エストラムスチン、スラミン、ストロンチウム−89、ブセレリン、クロロトラニセン、燐酸クロム、シスプラチン、サトラプラチン、シクロホスファミド、デキサメタゾン、ドキソルビシンエトポシド、ステロイド、エストラジオール、吉草酸エストラジオール、エストロゲン(共役またはエステル化)、エストロン、エチニルエストラジオール、フロキシウリジン、ゴセレリン、ヒドロキシウレア、メルファラン、メトトレキセート、マイトマイシン、プレドニゾン、スベロリルアニリドヒドロキサム酸、トリコスタチンA、トラポキシンB、フェニル酪酸塩、バルプロ酸、ベリノスタット/PXD101、MS275、LAQ824/LBH589、CI994、およびMGCD0103から選択される医薬組成物である。
【0031】
別の実施形態は、抗酸化剤が式(I)
【化5】

(式中:
i)Aは、ヒドロキノン、ジヒドロキノン、キノン、プラストキノン、キノール、フェノール、ジアミン、トリテルペン、テトラサイクリン、クロマノール、クロマノン、クロマン、テンポール、テンポール−Hまたはそのプロドラッグを含み、2〜30個の炭素原子を有する、抗酸化剤または還元抗酸化剤として機能することができる少なくとも1つの基であり;
ii)Lは、0〜50個の炭素原子を含む連結基であり;
iii)Eは原子でないか、または窒素もしくはリンであり;
iv)R1’、R1”、およびR1”’は、それぞれ独立して、0〜12個の炭素原子を含む有機ラジカルから選択される)の構造;および
b)式
【化6】

を有する少なくとも1つのアニオンを有し、ここで、カチオンおよびアニオンは、もし存在するならば、中性の薬剤的に許容される塩を形成するために十分な量で存在する医薬組成物である。
【0032】
別の実施形態は、A基が式:
【化7】

(式中、Yは任意に存在し:
i)C〜C直鎖、分岐、もしくは環状アルキル;
ii)C〜C直鎖、分岐、もしくは環状ハロアルキル;
iii)C〜C直鎖、分岐、もしくは環状アルコキシ;
iv)C〜C直鎖、分岐、もしくは環状ハロアルコキシ;または
v)−N(R(各Rは、独立して水素またはC〜C直鎖もしくは分岐アルキルである);から選択される1以上の電子活性化部分であり得、mは存在するY単位の数を示し、mの値は0〜3である)を有する医薬組成物である。
【0033】
別の実施形態は、Aが
【化8】

である医薬組成物である。
【0034】
別の実施形態は、抗酸化剤がビタミンEまたはビタミンE類似体である医薬組成物である。
【0035】
別の実施形態は、抗癌剤がHDAC阻害剤である医薬組成物である。別の実施形態は、HDAC阻害剤がスベロリルアニリドヒドロキサム酸である医薬組成物である。
【0036】
前述の例および実施形態は単に例示目的であり、その観点から当業者には種々の修正または変更が示唆され、本出願の精神および範囲ならびに添付の請求の範囲に含まれると理解される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
本明細書に組み入れられ、本明細書の一部を構成する添付の図面は、以下に記載するいくつかの態様を説明する。類似した数は、図全体にわたって同じ要素を表す。
【図1】ヘキスト色素−DNA蛍光分析によって測定される、ヒト前立腺腫瘍LNCaP細胞の増殖および成長に対する種々の濃度のMitoQ−C10の阻害効果を表す。
【図2】ヘキスト色素−DNA蛍光分析によって測定される、アンドロゲン非依存性PC−3細胞の増殖および成長に対する種々の濃度のMito−Qの阻害効果を表す。
【図3】DCF蛍光/ヘキスト色素−DNA蛍光の比率によって測定される、LNCaPヒト前立腺腫瘍細胞の成長に対する種々の濃度のMito−Q−C10を用いた治療の阻害効果を表す。
【図4】DCF蛍光/ヘキスト色素−DNA蛍光の比率によって測定される、LNCaPヒト前立腺腫瘍細胞における酸化的ストレスに対する種々の濃度のMito−Qを用いた治療の阻害効果を表す。
【図5】DCF蛍光/DNA蛍光の比率によって測定される、LNCaPヒト前立腺癌細胞の治療において合成アンドロゲン(メトリボロン)処理により誘発された酸化的ストレスが、10nMのMito−Qで細胞を前処理することによって完全に抑止されることを示す。
【図6】LC−MSによって測定される、LNCaP細胞におけるMito−Qの細胞内レベルおよび細胞成長に対するその相関性を表す。
【図7】(a)SAHAで処理されていない細胞におけるDNA蛍光のパーセントとして表した、SAHAで処理されたLNCaP細胞における細胞成長の尺度としての相対的DNA−ヘキスト色素蛍光を、(A)R1881なしで処理された細胞;(B)0.05nMのR1881で処理された細胞;および(C)2nMのR1881で処理された細胞におけるSAHA濃度に対してプロットし、(b)DCF蛍光:DNA蛍光の比率として測定される細胞ROSレベルを、(A)R1881なしで処理された細胞;(B)0.05nMのR1881で処理された細胞;および(C)2nMのR1881で処理された細胞におけるSAHA濃度に対してプロットする。
【図8】20μMのビタミンEで前処理されたか
【数1】

または前処理されていない
【数2】

1nMのR1881で処理されたLNCaPおよびPC−3細胞およびLNCaP細胞におけるDCF蛍光:DNA蛍光の比として測定された細胞ROSレベルを示す。
【図9】(A)20μMのビタミンEの存在下または非存在下で、アンドロゲンの非存在下で成長するLNCaP前立腺癌細胞、(B)20μMのビタミンEの存在下または非存在下で、1nMのR1881の存在下で成長するLNCaP細胞、(C)20μMのビタミンEの存在下または非存在下のPC−3前立腺癌細胞、および(D)6μMのビタミンEの存在下または非存在下でのHT−29結腸直腸癌細胞におけるSAHA濃度に対してプロットした、対応するSAHA未処理細胞のDNA蛍光(%)として表された、あらかじめ最適化した非毒性濃度のビタミンEで前処理したSAHA
【数3】

前処理していないSAHA
【数4】

の成長阻害効果を示す。
【図10】20μMのビタミンEで処理されたLNCaP細胞(レーン#1)、2μMのHDAC阻害薬で処理されたLNCaP細胞(レーン#2)、1nMのアンドロゲンで処理されたLNCaP細胞(レーン#3)、1nMのアンドロゲンおよび2μMのHDAC阻害薬で処理されたLNCaP細胞(レーン#4)、ならびに、1nMのアンドロゲン、20μMのビタミンEおよび2μMのHDAC阻害薬で処理したLNCaP細胞(レーン#5)からのアセチルヒストンH4(Ac−ヒストンH4)および対応するβ−アクチンタンパク質の代表的なウェスタンブロットを示す。
【図11】LC−MS方法により測定し、SAHA添加培地から測定されるSAHA標準曲線から計算される、2μMのSAHAで処理されたLNCap細胞
【数5】

、1nMのR1881で前処理し、続いて2μMのSAHAで処理されたLNCap細胞
【数6】

、または20μMのビタミンE+1nMのR1881で処理し、続いて2μMのSAHAで処理されたLNCap細胞
【数7】

における細胞内SAHAレベルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
初期ヒト前立腺癌(CaPまたはPCaは全体を通して互換的に使用される)の一般的なモデルは、LNCaP細胞系である。これは、左の鎖骨上リンパ節における転移性病巣から確立されたアンドロゲン反応性ヒトのCaP細胞系である。培養において、LNCaP細胞を種々のレベルのアンドロゲン類似体メトリボロンで処理して、アンドロゲン除去療法(ADT)を受けた患者または受けていない患者の血清アンドロゲン状態を模倣することができる。LNCaP細胞において、メトリボロンで処理すると、DCFH−DA色素酸化分析により測定されるように、種々のレベルのスーパーオキシド、ヒドロキシルラジカル、過酸化水素などの活性酸素種(ROS)が生じることを、1997年にRippleらが最初に報告した。1nM未満のメトリボロン濃度(「低アンドロゲン」)で処理した場合、LNCaP細胞は1nM〜10nMメトリボロン(R1881合成アンドロゲン)(「正常〜高アンドロゲン」)での処理と比較すると有意に低い細胞ROSを示した。しかし、1〜10nMの範囲内で、メトリボロン処理によって生じる細胞成長またはROSの量において有意な差は観察されなかった。
【0039】
DNAのクロマチン構造は、DNA二本鎖によって連結された多くのヌクレオソームから構成される。4対のヒストンタンパク質は、DNAによって囲まれて、ヌクレオソームを形成する。これらのヒストンは、クロマチン構造を圧縮することによって細胞増殖の間、遺伝子転写を調整するのに役立つ。各ヒストンは、アセチル化によって修正することができる。クロマチン構造が圧縮するにつれて、遺伝子転写の頻度は減少する。ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)は、ヒストンH3およびH4を脱アセチル化する核中に主に存在する酵素の種類であることが知られている。この酵素活性は、細胞周期の停止に必要とされる遺伝子の転写を防止する。HDACが阻害される場合、特異的遺伝子の発現により癌細胞の細胞増殖、細胞死および/または分化の停止が起こり得る。スベロリルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)は、細胞増殖および細胞死の停止を引き起こすHDAC阻害剤である。これは、皮膚T細胞性リンパ腫(CTCL)の治療に関して認可され、また肺癌および特定の他のリンパ腫において機能する。他のHDAC阻害剤としては:トリコスタチンA、トラポキシンB、フェニル酪酸塩、バルプロ酸、ベリノスタット/PXD101、MS275、LAQ824/LBH589、CI994、およびMGCD0103が挙げられる。
【0040】
SAHA(スベロイルアニリドヒドロキサム酸、ボリノスタット)は、皮膚T細胞性リンパ腫の治療で奏功しているが、CaP、結腸直腸、胸部および特定の他の種類の癌の治療において単独療法として臨床的に効果的でない。SAHAをはじめとする特定の既知の化学療法薬およびHDAC阻害剤に対するCaPおよび他のヒト腫瘍の耐性に関しては、たとえば(i)皮膚T細胞性リンパ腫細胞と比較して、CaPおよび結腸直腸細胞は、より高い酸化的ストレスを有し、従って酸化的ストレスを誘発することにより細胞死を誘発できる薬剤に対して免疫があり得る、(ii)CaPまたは他のヒトの腫瘍細胞における高いSOD酵素活性は、SAHAによって生じる酸化的ストレスを中和し得る、(iii)SAHAは前立腺で生じる高レベルのROSによって高いアンドロゲン濃度条件下で酸化される可能性があり、それにより前立腺細胞を殺すために臨床的に達成できないような高いSAHA薬剤濃度を必要とするなどのいくつかの理由があり得る。本発明者らは、高いROSを有するCaP細胞に対するSAHAをはじめとする特定の薬剤の不活性が、SOD活性およびROSに対する耐性における変化によるのではなく、酸化薬剤の損失によるか、高レベルのROSを有する細胞において酸化薬剤または酸化SAHAが失われるためであることを示す。本発明者らは、ROS産生経路における主な酵素のサイレンシングによるか、またはビタミンEもしくはビタミンE類似体での前処理によるROSレベルの減少が、CaP細胞に対してSAHAを活性化するということを見いだした。
【0041】
本発明者らは、細胞内酸化的ストレスが酸化SAHAまたは他のSOC癌治療薬の細胞毒性を低下させるということを見いだした。特定のHDAC阻害薬(SAHAを含む)は、酸化的にストレスを加えられたヒト胸部および結腸癌細胞に対して不活性である。腫瘍細胞が高い酸化的ストレスレベルである場合は、ヒトの前立腺癌に対しても不活性である。しかし、低い酸化的ストレスレベルである場合、SAHAは同じヒト前立腺癌細胞系または原発腫瘍の成長を著しく阻害する。本発明者らは、特定の抗酸化剤での前処理による細胞酸化的ストレスの軽減が、高い酸化的ストレスを有する前立腺、結腸および乳癌細胞をSAHAまたは他の酸化感受性抗癌剤の成長阻害作用に対して相乗的に感受性にするということも発見した。しかし、抗酸化剤前処理または同時処理プロトコルにおいて、抗酸化水溶性クロマノール、高親油性ATCol(アルファトコフェロール)およびそれらの類似体または他の酸化的ストレスモジュレータ(OSM)薬剤は、低い酸化的ストレスレベルのヒトの癌細胞および原発腫瘍を感受性にしなかった。
【0042】
これらのデータは、特定の酸化感受性抗癌剤と組み合わせてクロマノール系脂溶性もしくは親油性ビタミンEまたは水溶性類似体を添加することが治療的に重要であり得ることを直接示す。これは、SAHAのような酸化感受性薬または特定の他の酸化感受性HDAC阻害剤または酸化によって不活性である特定の他の化学療法薬に対して一般的に無反応である高い酸化的ストレスを有するヒト前立腺、胸部、結腸および他の癌の治療のために、SAHAとの組合せを含む。
【0043】
定義
本開示を詳細に説明する前に、本開示の範囲は、変化し得るので、記載した特定の方法、プロトコル、細胞系、および試薬に限定されないと理解される。本明細書中で使用される用語は、特定の実施形態を説明するためだけであって、本開示の範囲を限定することを意図するものではなく、本開示の範囲は添付の請求の範囲によってのみ限定されることも理解されるべきである。
【0044】
本明細書中および添付の請求の範囲で使用されるように、特に別段の明記がない限り、単数形「a」、「an」および「the」は複数を含む点に注意しなければならない。したがって、例えば、「(1つの)細胞」とは、複数のそのような細胞および当業者に公知のそれらの等価物などを含む。また、「a」(または「an」)、「1以上」および「「少なくとも1つ」という用語は、本明細書では交換可能に用いることができる。「含む」、「包含する」、および「有する」という用語も交換可能に用いることができることに注意されたい。
【0045】
多くの場合、本明細書中では、範囲は「およその」1特定の値から、および/または「およその」もう1つの特定の値までとして表される。そのような範囲が表される場合、もう一つの実施例は1つの特定の値から、および/または他の特定の値までを含む。同様に、値が近似値として表されるとき、前に「約」をつけることによって、特定の値がもう一つの実施形態を形成することが理解されよう。範囲の各々のエンドポイントが他のエンドポイントに関連して、また他のエンドポイントと独立しての両方で有意であると更に理解される。
【0046】
「任意の」、または「任意に」とは、その後に記載される事象または状況が起こり得るかまたは起こり得ないことを意味し、この記載は、当該事象または状況が起こる場合および起こらない場合を包含することを意味する。例えば、「任意に置換された低級アルキル」という表現は、当該低級アルキル基が置換され得るか、または置換され得ないこと、そしてこの記載が、非置換低級アルキルおよび置換が存在する低級アルキルの両方を包含することを意味する。
【0047】
細胞は、インビトロであり得る。あるいは、細胞はインビボであり得、対象中で見いだすことができる。「細胞」は、細菌または哺乳動物細胞を含むがこれらに限定されない任意の生物由来の細胞であり得る。
【0048】
本明細書全体で使用されるように、「対象」とは個体を意味する。したがって、「対象」は、飼い慣らされた動物(例えばネコ、イヌなど)、家畜(例えば、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウサギなど)、実験動物(例えば、マウス、ウサギ、ラット、モルモット、フェレット、ミンクなど)および鳥類を含み得る。一態様において、対象は高等哺乳類、例えば霊長類またはヒトである。
【0049】
一態様において、本明細書中に記載される化合物は、診断された医学的状態からの緩和または改善を必要とするヒトまたは、霊長類、ネズミ、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、ヤギ、またはヒツジ種などを包含するが、これらに限定されない動物を含む対象に投与することができる。一態様において、診断された医学的状態からの緩和または改善を必要とするヒトまたは霊長類、ネズミ、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、山羊、またはヒツジ種などを包含するがこれらに限定されない動物を含む対象に投与することができる。
【0050】
明細書および最後の請求項における組成物または物品中の特定の要素または成分の重量部に対する言及は、重量部が表される組成物または物品中の特定の要素または成分と他の元素または成分との間の重量関係を意味する。したがって、2重量部の成分Xおよび5重量部の成分Yを含む化合物において、XおよびYは、2:5の重量比で存在し、さらなる成分が当該化合物に含まれるかどうかに関係なくそのような比率で存在する。
【0051】
特に別段の記載がない限り、成分の重量パーセントは、その成分が含まれる処方または組成物の総重量に基づく。
【0052】
「部分」という用語は、炭素含有残基、すなわち少なくとも1つの炭素原子を含む部分であり、先に定義された炭素含有基を含むが、これらに限定されるものではない。有機部分はさまざまなヘテロ原子を含み得るか、または酸素、窒素、硫黄、リンなどを含むヘテロ原子によりもう1つの分子に結合され得る。有機部分の例としては、これらに限定されるものではないが、アルキルまたは置換アルキル、アルコキシル基または置換アルコキシル基、一または二置換アミノ、アミド基などが挙げられる。有機部分は、好ましくは、1〜21個の炭素原子、1〜18個の炭素原子、1〜15個の炭素原子、1〜12個の炭素原子、1〜8個の炭素原子または1〜4個の炭素原子を含み得る。
【0053】
特に別段の定義がない限り、本明細書中で用いられるすべての専門用語および科学用語は当業者らにより一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書中で記載されるものと類似しているかまたは同等である任意の方法および物質を本開示の実施または試験に用いることができるが、ここでは好適な方法および物質を記載する。本明細書中で記載するすべての刊行物は、本明細書中で述べられる実施形態に関連して使用され得る刊行物中で報告される化学物質、細胞系、ベクター、動物、器具、統計解析および方法を記載し、開示する目的で、参照することによって本明細書中に組み込まれる。
【0054】
「アルキル」という用語は、1〜18個の炭素または望ましくは4〜14個の炭素、5〜13個の炭素、または6〜10個の炭素を有する飽和、直鎖または分岐炭化水素残基を含む部分を意味する。アルキルは、非環状アルカンから1個の水素を除去され、したがって非水素基または部分での置換によって修飾された非環状アルカン化合物と構造的に類似している。アルキル部分は分岐していてもよいし、または分岐していなくてもよい。低級アルキル部分は、1〜4個の炭素原子を有する。アルキル部分の例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、アミル、t−アミル、n−ペンチルなどが挙げられる。
【0055】
「置換アルキル」という用語は、1以上の有機または無機置換基部分で置換された前記定義に類似したアルキル部分を意味する。いくつかの実施形態において、1または2個の有機もしくは無機の置換基部分を使用する。いくつかの実施形態において、各有機置換基部分は、1〜4個、または5〜8個の炭素原子を含む。好適な有機および無機置換基部分としては、これらに限定されるものではないが、ヒドロキシル、ハロゲン、シクロアルキル、アミノ、一置換アミノ、二置換アミノ、アシルオキシ、ニトロ、シアノ、カルボキシ、カルボアルコキシ、アルキルカルボキサミド、置換アルキルカルボキサミド、ジアルキルカルボキサミド、置換ジアルキルカルボキサミド、アルキルスルホニル、アルキルスルフィニル、チオアルキル、チオハロアルキル、アルコキシ、置換アルコキシ、ハロアルキル、ハロアルコキシ、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アリールまたは置換アリールが挙げられる。2以上の置換基が存在する場合は、それらは同一であっても、異なっていてもよい。
【0056】
本明細書における略語には、以下のものが含まれる:
【0057】
本明細書中で用いられる「アルコキシル基」という用語は、前記定義のアルキル部分であって、酸素と直接結合してエーテル残基を形成するものを意味する。例としては、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、t−ブトキシ、イソブトキシなどが挙げられる。
【0058】
「置換アルコキシ」という用語は、ヒドロキシル、シクロアルキル、アミノ、一置換アミノ、二置換アミノ、アシルオキシ、ニトロ、シアノ、カルボキシ、カルボアルコキシル、アルキルカルボキサミド、置換アルキルカルボキサミド、ジアルキルカルボキサミド、置換ジアルキルカルボキサミド、アルキルスルホニル、アルキルスルフィニル、チオアルキル、チオハロアルキル、アルコキシ、置換アルコキシまたはハロアルコキシを包含する1個以上の基、好ましくは1または2個の置換基で置換された前記定義のアルコキシ部分を意味する。2個以上の基が存在する場合、それらは同一であっても、または異なっていてもよい。
【0059】
「一置換アミノ」という用語は、アルキル、置換アルキルまたはアリールアルキルから選択される1個の基で置換されたアミノ(−NH)基を意味し、この場合、これらの用語は全体にわたってみられるのと同じ定義を有する。
【0060】
「二置換アミノ」という用語は、同一または異なって、同じことでありえる2つの部分で置換されるか、別に、アリール、置換アリール、アルキル、置換アルキルまたはアリールアルキルから選択される2つの部分で置換されたアミノを意味し、この場合、この用語は全体にわたってみられる同じ定義を有する。いくつかの例としては、ジメチルアミノ、メチルエチルアミノ、ジエチルアミノ等が挙げられる。
【0061】
「ハロアルキル」という用語は、前記定義のアルキル部分が1以上のハロゲン、好ましくはフッ素で置換されたもの、例えばトリフルオロメチル、ペンタフルオロエチルなどを意味する。
【0062】
「ハロアルコキシ」という用語は、前記定義のハロアルキルであって、酸素と直接結合して、ハロゲン化エーテル残基を形成するもの、例えばトリフルオロメトキシ、ペンタフルオロエトキシを意味する。
【0063】
「アシル」という用語は、カルボニル(C=O)基(ここで、R部分はカルボニル基に結合した炭素原子を有する有機部分である)を含む式−C(O)−Rの部分を意味する。アシル部分は、1〜8個または1〜4個の炭素原子を含む。アシル部分の例としては、これらに限定されるものではないが、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブタノイル、イソブタノイル、ペンタノイル、ヘキサノイル、ヘプタノイル、ベンゾイルなどの部分が挙げられる。
【0064】
「アシルオキシ」という用語は、アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、ブタノイルオキシ、イソブタノイルオキシ、ベンゾイルオキシなどの、酸素に直接結合した、1〜8個の炭素原子を有する前記定義のアシル基を含む部分を意味する。
【0065】
「アリール」という用語は6〜18個の環炭素、または好ましくは6〜12個の環炭素を含む不飽和および共役芳香環部分を意味する。多くのアリール部分は、その中の少なくとも1つの6員芳香族「ベンゼン」部分を有する。そのようなアリール部分の例としては、フェニルおよびナフチルが挙げられる。
【0066】
「置換アリール」という用語は、1以上の有機もしくは無機置換基で置換されるかまたは縮合した前記定義のアリール環部分を意味し、これらに限定されるものではないが、ハロゲン、アルキル、置換アルキル、ハロアルキル、ヒドロキシル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アミノ、一置換アミノ、二置換アミノ、アシルオキシ、ニトロ、シアノ、カルボキシ、カルボアルコキシ、アルキルカルボキサミド、置換アルキルカルボキサミド、ジアルキルカルボキサミド、置換ジアルキルカルボキサミド、アルキルスルホニル、アルキルスルフィニル、チオアルキル、チオハロアルキル、アルコキシ、置換アルコキシまたはハロアルコキシ、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、複素環、置換複素環部分が挙げられ、この場合、これらの用語は本明細書中で定義されている。置換アリール部分は、1、2、3、4、5またはそれ以上の置換基部分を有し得る。置換基部分は、サイズまたは分子量が無制限ではなく、請求の範囲により明確に想定されない限り、各有機部分は、15個以下、10個以下、または4個以下の炭素原子を含み得る。
【0067】
「ヘテロアリール」という用語は、前記定義のアリール環部分であって、芳香環の少なくとも1個の炭素が、これらに限定されるものではないが、窒素、酸素、および硫黄原子をはじめとするヘテロ原子で置換されたものを意味する。ヘテロアリール部分は6員芳香環部分を含み、5もしくは7員芳香環も含み得るか、または二環式もしくは多環式複素芳香族環も含み得る。ヘテロアリール部分の例としては、ピリジル、ビピリジル、フラニル、およびチオフラニル残基が挙げられる。ヘテロアリール部分は、置換アリール部分について前述したように、複素芳香環の炭素原子と結合した1以上の有機もしくは無機置換基部分で任意に置換され得ると理解すべきである。本明細書中で定義される置換アリール部分に類似した方法で、置換ヘテロアリール部分は、1、2、3、4、5またはそれ以上の有機もしくは無機置換基部分を有し得る。置換基部分は、サイズまたは分子量が無制限のものではなく、請求の範囲で明確に想定されない限り、各有機置換基部分は、15個以下、10個以下、または4個以下の炭素原子を含み得る。
【0068】
「ハロ」、「ハライド」または「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素原子もしくはイオンを指す。
【0069】
「複素環」または「複素環式」という用語は、本明細書および最後の請求の範囲で用いられるように、3〜10個の環原子を含む閉環構造を有する部分であって、環中の原子の少なくとも1つは炭素以外の元素、例えば窒素、硫黄、酸素、ケイ素、リンなどである部分を指す。5、6または7員環を有する複素環式化合物が一般的であり、環は、飽和、または部分もしくは完全不飽和であり得る。複素環式化合物は単環式、二環式、または多環式であり得る。複素環式化合物の例としては、ピリジン、ピペリジン、チオフェン、フラン、テトラヒドロフランなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。「置換複素環式」という用語は、前記定義の複素環部分であって、環原子の1つに結合した1以上の有機もしくは無機置換基部分を有するものを指す。
【0070】
「カルボキシ」という用語は、明細書および最後の請求の範囲において用いられているように、カルボン酸に特徴的である−C(O)OH部分を指す。カルボキシ部分の水素は、酸性であることが多く、(pHに応じて)多くの場合、部分的または完全に解離して、酸H+イオンとカルボキシレートアニオン(−CO−)を形成し、この場合、カルボキシレートアニオンは「カルボキシ」部分と呼ばれる場合もある。
【0071】
本明細書中で開示される化合物中にキラル原子が存在する場合、両方の分離されたエナンチオマー、ラセミ混合物および鏡像異性体過剰率の混合物は本開示の範囲内に含まれるものと理解される。本明細書中で定義されるように、ラセミ混合物はエナンチオマーのそれぞれの比が等しく、一方、鏡像体過剰率は1つのエナンチオマーのパーセンテージが他のエナンチオマーより大きい場合であり、全てのパーセンテージが本開示の範囲内に含まれる。さらに、2以上のキラル原子が化合物中に存在する場合、エナンチオマー、ラセミ混合物、鏡像異性体過剰率の混合物およびジアステレオマー混合物は本開示の範囲内に含まれる。
【0072】
化合物
後述する化合物は塩類であり、本明細書中の他の箇所で開示されるようにさまざまな疾患の治療に使用することができる。当業者によって認められるように、塩類は、正電荷と負電荷の合計数が電気的にバランスのとれたカチオンとアニオンとの混合物を含む。しかし、さらに詳細には、本明細書中に開示される塩類は、下記式(I)を有する1以上の分子またはカチオンを有し、
a)式:
【化9】

(式中:
i)Aは、抗シグナリングまたは抗酸化剤または還元抗酸化剤として機能することができ、ヒドロキノン、ジヒドロキノン、キノン、キノール、フェノール、ジアミン、トリテルペン、テトラサイクリン、クロマノール、クロマノン、クロマンテンポール、テンポール−Hまたはそのプロドラッグを含み、2〜30個の炭素原子を有する少なくとも1つの基であり;
ii)LまたはLは、0〜50個の炭素原子を含み、pH感受性カルボジアミドリンカーの有無は問わない連結基であり;
iii)Eは、原子でないか、または窒素もしくはリンであり;
iv)R1’、R1”、およびR1”’は、それぞれ独立して、0〜12個の炭素原子を含む有機ラジカルから選択される)を有する少なくとも1つの分子;および
b)式
【化10】

を有する少なくとも1つのアニオンを有し、ここで、カチオンおよびアニオンは、もし存在するならば、中性の薬剤的に許容される塩を形成するために十分な量で存在する。
【0073】
式(I)の化合物のさまざまな属、亜属、および種は、少なくとも前記開示の特徴を共有し、関連する機能および有用性を有するが、後述するように、特定の構造特性が異なり得る。
【0074】
「抗シグナリング、抗酸化的ストレス調節または抗酸化剤」=「A」部分
いくつかの実施形態において、本開示の化合物は、少なくとも1つまたはそれ以上のヒドロキノン、キノン、修飾キニーネ、プラストキノン、キノール、クロマノール、クロマノン、クロマン、フェノール、ジアミン、トリテルペン、テンポール、テンポール−Hまたはカルボチアミドがその中にまたはそれと結合した、少なくとも1つの抗酸化剤部分「A」を含む。
【0075】
ヒドロキノンおよび関連するキノンは、以下に示す化学構造:
【化11】

を有し、一方、フェノールの例は、式:
【化12】

を有するクロマン6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチル−クロマン−2−イルである。
【0076】
したがって、本明細書中で記載されるカチオン塩の「A」部分は、細胞中のスーパーオキシドラジカルアニオンを還元して、細胞中の抗酸化剤防御酵素により処理することができる過酸化水素を形成することができる1以上のキノン部分を含み、これらはしたがって「抗酸化剤」として機能することができる。キノンおよび他の部分は、大きなA部分の一部であり、多くの実施形態では、4〜30個の炭素原子、または6〜24個の炭素原子、または7〜18個の炭素原子、または8から12個の炭素原子を含み得る。
【0077】
いくつかの実施形態において、A部分は、式:
【化13】

(式中、Yは任意に存在し:
i)C〜C直鎖、分岐、または環状アルキル;
ii)C〜C直鎖、分岐、または環状ハロアルキル;
iii)C〜C直鎖、分岐、または環状アルコキシ;
iv)C〜C直鎖、分岐、または環状ハロアルコキシ;または
v)−N(R(各Rは、独立して水素またはC〜C直鎖もしくは分岐アルキルである)
から選択される1以上の電子活性化部分であり得る。添字mは存在するY単位の数を示し、mの値は0〜3である)
を有する。
【0078】
一実施形態において、Yは、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル基、tert−ブチル、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、およびtertブトキシから選択される電子活性化部分である。
【0079】
一実施形態において、Yは1〜3個のメチルおよび/またはメトキシ単位から選択される。一例としては、次式を有する以下のヒドロキノンとキノンラジカルが挙げられる:
【化14】

【0080】
アンモニウムまたはホスホニウムカチオン部分
本開示の方法に有用な化合物は、カチオン性もしくはポリカチオン性部分を含まないかまたは1以上のカチオン性もしくはポリカチオン性部分を含む。カチオン性部分は正電荷を有し、理論によって拘束されないが、150〜170mVの高いミトコンドリア膜電位のために、そして結果としての静電引力のために、ミトコンドリア中に結果として得られる化合物の望ましい選択的な蓄積を引き起こすと考えられる。また、理論によって拘束されないが、本明細書中で開示されるカチオン性塩の選択的な蓄積はまた、カチオン部分が比較的大きな、および/または親油性の有機置換基部分を含む場合に改善され、したがって結果として得られるカチオン性基は、A基が親油性でない場合でも、全体としてみると比較的親油性であることが判明している。当業者は、多くの比較的親油性のカチオン性基は、特に、窒素またはリン原子を含む化合物から合成することができることを認識し、多くのそのようなカチオン性部分は、様々な方法で抗酸化剤または還元抗酸化剤A部分と結合することができ、本明細書中で記載する方法の実施に有用であり得るカチオンを提供することは明らかである。しかし、さらに詳細には、多くの実施形態において、塩類および/または式(I)のカチオン性化合物は、式:
【化15】

(式中:
Eは、窒素またはリン原子であり;そして
’、R”およびR”’は、それぞれ独立して、1〜12個の炭素原子を含む有機部分である)
を有する四級アンモニウムまたはホスホニウム部分を有する。
【0081】
多くの実施形態において、式(I)の化合物はR’、R”およびR”’を有し得、これらはそれぞれ独立して、アルキル、アリール、ヘテロアリール、またはアルアルキル部分から選択され、これらは非置換であってもよいし、または任意に1もしくは2個の独立して選択された置換基部分で置換されていてもよく、この置換基部分としては、ヒドロキシル、ハロゲン、アミノ、アミノ、ジメチルアミノ、アルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、アルコキシルアルキル、カルボキシ、またはカルボキシアルキル部分が挙げられるが、これらに限定されるものではない。R’、R”およびR”’の任意の置換基の非限定的例には:
i)C〜C直鎖分岐アルキル;例えば、メチル(C)、エチル(C)、n−プロピル(C)、イソプロピル(C)、n−ブチル(C)、sec−ブチル(C)、イソブチル(C)、およびtert−ブチル(C);
ii)C〜C直鎖または分岐アルコキシ;例えば、メトキシ(C)、エトキシ(C)、n−プロポキシ(C)、イソプロポキシ(C)、n−ブトキシ(C)、sec−ブトキシ(C)、イソブトキシ(C)、およびtert−ブトキシ(C);
iii)ハロゲン;例えば、−F、−Cl、−Br、−I、およびそれらの混合物;
iv)アミノおよび置換アミノ;例えば、−NH、−NH、−NHCH、−NHCH、および−N(CH
v)ヒドロキシル;−OH;
vi)C〜C直鎖または分岐ヒドロキシアルキル;例えば、−CHOH、−CHCHOH、−CHCHCHOH、および−CHCHOHCH
vii)C〜C直鎖または分岐アルコキシアルキル;例えば、−CHOCH、−CHCHOCH、−CHCHCHOCH、および−CHCH(OCH)CH
viii)カルボキシまたはカルボキシレート、例えば、−COHまたはアニオン性の等価なカルボキシレート部分−CO;ならびに
xi)カルボキシアルキル、例えば、−CHCOH、−CHCHCOH、−CHCOCH、−CHCHCOCH、および−CHCHCHCOCH
が含まれる。
【0082】
関連する実施形態において、R’、R”およびR”’は、それぞれ独立して、1または2個の独立して選択されたヒドロキシル、ハロゲン、アミノ、ジアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、アルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、アルコキシルアルキル、カルボキシ、またはカルボキシアルキル部分で任意に置換されたアルキル、アリール、またはベンジルから選択される。
【0083】
他の関連する実施形態において、R’、R”およびR”’は、独立して、C〜C10アルキルまたはフェニル部分から選択され、これらは、ヒドロキシル、ハロゲン、アミノ、ジアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、アルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、アルコキシルアルキル、シアノ、カルボキシ、またはカルボキシアルキル部分を包含するが、これらに限定されない1もしくは2個の独立して選択される置換基部分で任意に置換されていてもよい。さらなる実施形態において、R’、R”およびR”’は、C〜C10アルキルまたはフェニル部分から独立して選択され得る。いくつかのさらなる実施形態において、R’、R”およびR”’は、C−C10アルキルから独立して選択される。さらに別の実施形態において、R’、R”およびR”’は、それぞれn−C部分である。
【0084】
ホスホニウムカチオンを有する式(I)の化合物のいくつかの実施形態において、R’、R”およびR”’は、それぞれフェニル部分であり、式:
【化16】

を有するトリフェニルホスホニウムカチオンを生じる。
【0085】
別の関連する実施形態において、R’、R”およびR”’はそれぞれベンジル部分であり、式:
【化17】

を有するトリンジルホスホニウムカチオンを生じる。
【0086】
式(I)のカチオンの他の実施形態は、第4アンモニウムカチオン、すなわちEが窒素原子である場合に関する。そのようないくつかの実施形態において、R’、R”およびR”’はそれぞれ独立してアルキル、アリール、ヘテロアリール、またはアルアルキル部分から選択され、これらは、ヒドロキシル、ハロゲン、アミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、アルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、アルコキシルアルキル、シアノ、カルボキシ、またはカルボキシアルキル部分をはじめとする(これらに限定されるものではない)1または2個の独立して選択された置換基部分で任意に置換されている。R’、R”およびR”’置換基の非限定的例としては:
i)C〜C直鎖分岐アルキル;例えば、メチル(C)、エチル(C)、n−プロピル(C)、イソプロピル(C)、n−ブチル(C)、sec−ブチル(C)、イソブチル(C)、およびtert−ブチル(C);
ii)C〜C直鎖または分岐アルコキシ;例えば、メトキシ(C)、エトキシ(C)、n−プロポキシ(C)、イソプロポキシ(C)、n−ブトキシ(C)、sec−ブトキシ(C)、イソブトキシ(C)、およびtert−ブトキシ(C);
iii)ハロゲン;例えば、−F、−Cl、−Br、−I、およびそれらの混合物;
iv)アミノおよび置換アミノ;例えば、−NH、−NH、−NHCH、−NHCH、および−N(CH
v)ヒドロキシル;−OH;
vi)C〜C直鎖または分岐ヒドロキシアルキル;例えば、−CHOH、−CHCHOH、−CHCHCHOH、および−CHCHOHCH
vii)C〜C直鎖または分岐アルコキシアルキル;例えば、−CHOCH、−CHCHOCH、−CHCHCHOCH、および−CHCH(OCH)CH
viii)カルボキシ;またはカルボキシレート、例えば、−COHまたはアニオン性の等価なカルボキシレート部分−CO;ならびに
xi)カルボキシアルキル、例えば、−CHCOH、−CHCHCOH、−CHCOCH、−CHCHCOCH、および−CHCHCHCOCH
が挙げられる。
【0087】
式(I)(式中、Eは窒素である)のカチオンのさらなる実施形態において、R’、R”およびR”’はそれぞれ独立してアルキルアリール、またはベンジル部分から選択され、これらは、ヒドロキシル、ハロゲン、アミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、アルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、アルコキシルアルキル、カルボキシ、またはカルボキシアルキル部分をはじめとする(これらに限定されるものではない)1もしくは2個の独立して選択された置換基部分で任意に置換されている。
【0088】
別の実施形態において、R’、R”およびR”’は、1もしくは2個の独立して選択されたヒドロキシル、ハロゲン、アミノ、ジメチルアミノ、アルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、アルコキシルアルキル、カルボキシ、またはカルボキシアルキル部分で任意に置換されたC〜C10アルキルまたはフェニル部分から独立して選択される。この実施形態のもう一つの態様において、R’、R”およびR”’は、C〜C10アルキルまたはフェニル部分から独立して選択され;もう一つの実施形態において、R’、R”およびR”’はC〜C10アルキルから独立して選択される。
【0089】
Eが窒素であるカチオンのさらに別の実施形態において、R’、R”およびR”’はそれぞれn−C部分である。
【0090】
「L」または「L」リンカー部分
式(I)のカチオンはリンカー部分「L」を含み、これは「A」部分およびカチオン性部分を結合する。L部分の正確な構造および大きさはかなり異なり得、L部分の多くのバリエーションは本明細書中に開示される実施形態の範囲内に含まれる。いくつかにおいて、L部分は多くの場合、有機部分であり、多種多様な構造を含み得る。多くの実施形態において、L部分は、Aとカチオン基との間に多少の空間および/または結合の柔軟性をもたらすが、結果として生じるカチオンの水溶性または膜内外吸収性を損なうほどの高分子量を有するものにはならないために十分なサイズおよび特性を有するものであるのが望ましい。
【0091】
したがって、いくつかの実施形態において、全体として考慮する場合、L部分は、4〜50個の炭素原子、または4〜30個の炭素原子、または4〜20個の炭素原子を含む。いくつかの実施形態において、L部分は、0〜18個の炭素原子、または8〜12個の炭素原子を含む。
【0092】
一実施形態において、Lは式:
−[C(R2a)(R2b)][W][C(R3a)(R3b)][Z][C(R4a)(R4b)]
(R2a、R2b、R3a、R3b、R4a、およびR4bはそれぞれ独立して:
i)水素;
ii)置換もしくは非置換C〜C12直鎖、分岐、または環状アルキル;
iii)置換もしくは非置換C〜C12直鎖、分岐、または環状アルケニル;
iv)置換もしくは非置換C〜C12直鎖または分岐アルキニル;
v)−C(O)OR
vi)−C(O)R
vii)−OR
viii)−N(R8a)(R8b);
ix)−C(O)N(R9a)(R9b);
x)−CN;
xi)−NO
xii)−SO10
から選択され;
、R、R、R、R、およびR10はそれぞれ独立して:
a)水素;
b)置換もしくは非置換C〜C12直鎖、分岐、または環状アルキル;
c)置換もしくは非置換CまたはC10アリール
から選択され;
WおよびZはそれぞれ独立して:
i)−M−;
ii)−C(=M)−;
iii)−C(=M)M−;
iv)−MC(=M)−;
v)−MC(=M)M−;
vi)−MC(=M)C(=M)M−;または
vii)−MC(=M)MC(=M)M−
から選択され;
ここで、各Mは独立して、O、S、およびNR11から選択され;R11は水素、ヒドロキシル、またはC〜C直鎖もしくは分岐アルキルであり;添字j、n、およびqはそれぞれ独立して0〜30である。ただし、j+n+qは4〜30に等しいとする;添字kおよびpは独立して0または1であり;そしてLは式:
【化18】

(E、R、およびRは前記定義と同じである)を有する1以上の単位を含み得る)を有する。
【0093】
連結基の一実施形態において添字j、nおよびqの合計は4〜24である。連結単位の更なる実施形態において添字j、nおよびqの合計は5〜20である。連結単位の更なる実施形態において添字j、nおよびqの合計は6〜16である。連結単位の更なる実施形態において添字j、nおよびqの合計は7〜16である。連結単位の更なる実施形態において添字j、nおよびqの合計は8〜12である。連結単位の更なる実施形態において、添字j、nおよびqの合計は10に等しい。
【0094】
1つの実施形態において、Lは式:
−[C(R3a)(R3b)]
(R3aおよびR3bはそれぞれ独立して:
i)−H;
ii)C〜C直鎖もしくは分岐アルキル
から選択され;
添字nは4〜30である)を有する。
【0095】
L単位のこの実施形態は、以下の化合物を提供する:
【化19】



【0096】
いくつかの実施形態において、L部分は、メチレンまたはポリメチレン部分、すなわち−(CH−部分のみを含む。いくつかの実施形態は、例えば、4から24個の炭素鎖原子を有するL、−(CH−(添字nは4〜24である)を提供する。他の実施形態は、5〜20個の炭素原子、6〜16個の炭素原子、7〜16個の炭素原子、そして8〜12個の炭素原子を有するLに関する。1つの特定の実施形態は、10個の炭素原子(n=10)を有するL単位、例えば、式:
−CHCHCHCHCHCHCHCHCHCH
を有する10メチレン単位に関する。
【0097】
もう一つの実施形態において、Lは式:
−[C(R2a)(R2b)][C(R3a)(R3b)][C(R4a)(R4b)]
を有し、その非限定的一例は、式:
−[CH[C(R3a)(R3b)][CH
を有し、これにより式:
【化20】

(式中、qは1〜20であり、R3aおよびR3bはそれぞれ水素、メチル、エチル、プロピルおよびヒドロキシルから独立して選択される)を有する化合物が提供される。
【0098】
非限定的例は、式:
【化21】

を有する。
【0099】
非限定的例には、式:
【化22】

を有する化合物が含まれる。
【0100】
それでも、L部分は炭素鎖中に、−O−、−S−、−S(O)−、−S(O)−、−NH−、−NCH−、−C(O)−、または−C(O)O−から独立して選択される1〜10個のさらなる原子または基をさらに含み得る。例えば、いくつかの実施形態において、Lは、式:
−(CHCHO)CHCH
(式中、nは0〜3の整数である)
を有するポリアルキレン部分、またはポリエチレングリコール部分であり得る。
【0101】
n−アニオン
式(I)のカチオンを含む塩化合物は、アニオンXn−(nは1〜4の整数である)も含み、モノアニオン、ジアニオン、トリアニオン、およびテトラアニオンに対応する。Xの第1の実施形態は、無機アニオン部分に関する。モノアニオン無機アニオンには、フルオリド、クロリド、ブロミド、またはヨージドなどの任意のハライドアニオン;硝酸塩、硫酸水素塩;リン酸二水素塩などが含まれる。二価アニオン性無機カチオンとしては、炭酸塩、硫酸塩またはリン酸水素塩を挙げることができ、三価アニオン性無機アニオンとしてはリン酸塩が挙げられる。
【0102】
n−アニオンの他の実施形態において、アニオンは有機アニオンである。式(I)のカチオンから塩類を形成するために使用できる有機アニオン部分の非限定的例には、有機硫酸塩、例えばメチルスルホン酸塩(メシラート)、トリフルオロメチルスルホン酸塩(トリフレート)、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩(トシレート)、または純粋に有機アニオン(多くの場合、有機酸の中和によって形成される)、例えばフマレート、マレエート、マルトレート、スクシネート、アセテート、ベンゾエート、オキサレート、シトレート、またはタータレートアニオンが挙げられる。
【0103】
当業者らは、単離された電気的に中性な塩化合物が産生されるように、式(I)のカチオンおよび対応するXn−アニオンの両方が適切な比で組み合わせなければならず、これらの化合物は本明細書中で開示される方法および組成物において単離され、用いることができることを認識するであろう。したがって、全体として塩化合物に適用される場合、電気的に中性の状態を表す一方法は、そのような塩化合物は式:
N[カチオン]m+M[アニオン]n+
(式中、添字M、N、mおよびnはそれぞれ独立して1〜4である。ただし、積(M×n)=(m×N))を有し、これにより中性塩を形成することを認めることである。
【0104】
本開示はさらに:
a)式:
【化23】

(式中
i)Lは、本明細書中に定義されるように、4〜30個の炭素原子を含む連結基であり;
ii)Eは窒素またはリンであり;
iii)R’、R”およびR”’は、本明細書中で定義されるように、それぞれ1〜12個の炭素原子を含む有機ラジカルから独立して選択され;
iv)R、R、およびRは、本明細書中で定義されるように、それぞれ独立して前記定義の電子活性化部分である)を有するカチオン;ならびに
b)本明細書中で更に定義される式Xを有する少なくとも1つのアニオン
を含む化合物に関し、この場合、カチオンおよびアニオンは、中性の薬剤的に許容される塩を形成するために十分な量で存在する。
【0105】
本開示の一実施形態は、R、R、およびRがそれぞれ独立して、水素または:
i)C〜C直鎖、分岐、もしくは環状アルキル;
ii)C〜C直鎖、分岐、もしくは環状ハロアルキル;
iii)C〜C直鎖、分岐、もしくは環状アルコキシ;
iv)C〜C直鎖、分岐、もしくは環状ハロアルコキシ;または
v)−N(R(各Rは独立して水素またはC〜C直鎖もしくは分岐アルキルである)
から独立して選択される電子活性部分である化合物に関する。
【0106】
一実施形態は、各電子活性化部分が、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブトキシ、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、およびtert−ブトキシから独立して選択される化合物に関する。
【0107】
この実施形態の特定の一般例には、以下のものが含まれる:
【化24】

【0108】
この実施形態による特定の化合物の例には、以下のものが含まれる:
【化25】

【0109】
もう一つの実施形態は、式:
【化26】

(式中、添字nは4〜約24であるか、または添字nは5〜20であるか、または添字nは6〜16であるか、または添字nは7〜16まであるか、または添字nは8〜12ある)の化合物が含まれる。この実施形態の一例は、添字nが10に等しい化合物を包含する。
【0110】
一実施形態は、それぞれが:
i)CまたはC10置換もしくは非置換アリール;または
ii)C〜C12置換もしくは非置換アリールアルキレン
(そのそれぞれは:
i)メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、もしくはtert−ブチル;
ii)メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、もしくはtert−ブトキシ;
iii)フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード;
iv)−NH、−NHCH、−N(CH−NH(CHCH)、−N(CHCH
v)−C(O)OH、−COCH、−COCHCH、−COCHCHCH
vi)−COCH、−COCHCH、−COCHCHCH
vii)−C(O)NH、−C(O)NHCH、−C(O)N(CH、−C(O)NH(CHCH)、−C(O)N(CHCH
viii)−CN;ix)−NO;および
xii)−SOOH、−SOCH;−SONH
から独立して選択される1以上の単位で任意に置換されている)
から独立して選択されるR1’、R1”、およびR1”’単位に関する。
【0111】
この実施形態の例には、それぞれ置換フェニルまたはベンジルから独立して選択されるR’、R”、およびR”’単位が含まれる。この実施形態の非限定的例には、それぞれフェニルまたはベンジルであるR’、R”、およびR”’単位が含まれる。
【0112】
明細書中に開示される化合物の合成
さまざまな方法および/または戦略が文献で開示されており、前述の様に、式(I)のカチオンおよびXn−アニオンを有する塩の合成または製造において用いることができる。いくつかのそのような合成法および/または戦略を本明細書中、以下で開示する。
【0113】
スキームIは、本開示の化合物を調製するプロセスを概説する。
スキームI
【化27】

試薬および条件:(a)(i)NaBH、MeOH;(ii)(CHSO、NaOH。
【化28】

試薬および条件:(b)(i)n−BuLi、TMEDA;(II)CuCN、CH=CH(CHn−2Br。
【化29】

試薬および条件:(c)9−BBN
【化30】

試薬および条件:(d)CHSOCl。
【化31】

試薬および条件:(e)(i)NaI;(ii)P(C
【化32】

試薬および条件:(f)Ce(NH(NO
【0114】
実施例1
以下は、添字nが4〜20であり、連結基がメチレン単位を含む本開示の類似物を調製するための一般的手順である。
【0115】
出発物質1、例えば、2,3−メトキシ−5−メチル−1,4−ベンゾキノンはLipshutz、B.H.等(Lipshutz, B.H. et al.,(1998)Tetrahedron 54, 1241−1253)(それが関連する範囲で参照することによって本明細書中に組み込まれる)の手順にしたがって調製することができる。
【0116】
中間体2は、出発物質1の反応、例えばCarpino, L.A. et al.,(1989)J. Org. Chem. 54, 3303−3310(その全体として参照することによって本明細書中に組み込まれる)の手順により、メタノール中水素化ホウ素ナトリウムを使用して2,3−ジメトキシ−5−メチル−1,4−ベンゾキノンを3,4,5−テトラヒドロキシトルエンに還元し、続いてLipshutzの手順にしたがってNaOH/(CHSOでメチル化することによって調製される。
【0117】
中間体3の調製:中間体2(30ミリモル)の乾燥ヘキサン(80mL)およびN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(8.6mL)中溶液を不活性雰囲気下で乾燥シュレンク管中に入れる。n−ブチルリチウムの溶液(1.6M、26.2mL)をゆっくりと室温で添加し、混合物を次いで冷却し、0℃で約1時間撹拌する。溶液を次いで−78℃まで冷却し、乾燥テトラヒドロフラン(250mL)を添加する。この時点で、配合者は、反応溶液を分析して、環が完全にメタレート化されたかどうかを確認した後、先に進むことができる。反応容器の内容物を次いで、不活性雰囲気下でCuCN(6ミリモル)を含む第2のシュレンク管に移す。混合物を次いで0℃まで10分間温め、次いで−78℃まで再冷却する。ω−ブロモオレフィン(ω−ブロモオレフィンの反応性によって25%〜50%過剰)を添加する。試薬は、連結基−[CH−の長さによって様々であろう。添字nが10に等しい最終化合物を得るために、10−ブロモデス−1−エンをこのステップで使用する。ω−ブロモオレフィンを添加したら、配合者が反応の完了を確認するまで、溶液を温め、室温で撹拌する。反応を次いで10%水性NHCl(〜75mL)でクエンチし、結果として得られた溶液を溶媒で数回抽出する。合した溶媒抽出物を合し、水、10%水性NHOH、および食塩水で洗浄する。有機相を任意の好適な乾燥剤上で乾燥することができ、その後、溶媒を減圧下で除去する。この時点で、配合者は、粗生成物を精製することができるか、またはこの物質が十分な純度を有すると判定される場合は先に進むことができる。
【0118】
中間体4:中間体3(33ミリモル)の乾燥THF(45mL)中溶液を9−ボラビシクロ[3.3.1]ノナン(9−BBN)のTHF(40ミリモル)中撹拌懸濁液に25℃で滴加する。結果として得られた溶液を室温で撹拌し、次いで、配合者が反応の完了を確認するまで必要ならば約60℃から約65℃まで加熱する。混合物を0℃まで冷却し、3MのNOH(〜53mL)を滴加する。添加が完了した後、30%の水性H溶液(〜53mL)を添加する。溶液を約30分間室温で撹拌した後、水相をNaClで飽和させ、THFで数回抽出する。有機相を合し、食塩水で洗浄し、乾燥する。溶媒を蒸発によって除去して、粗中間体4を得る。この時点で、配合者は、粗生成物を精製することができるか、またはこの物質が十分な純度を有すると判定される場合には先に進むことができる。
【0119】
中間体5の調製:中間体4(15ミリモル)およびトリエチルアミン(30ミリモル)の塩化メチレン(50mL)中溶液を室温で撹拌し、次いで塩化メチレン(50mL)中メタンスルホニルクロリド(15.75ミリモル)を約30分にわたって滴加し、その後、完了したと判定されるまで反応を撹拌した。反応溶液を塩化メチレン(50mL)で希釈し、有機層を数回水で、次いで10%水性NaHCOで洗浄する。溶液を次いで乾燥し、真空中で濃縮して、粗生成物を得る。この時点で、配合者は粗生成物を精製することができるか、またはこの物質が十分な純度を有すると判定される場合には先に進むことができるが、粗物質は典型的には直接使用することができる。
【0120】
中間体6の調製:粗中間体5(9.0ミリモル)をキマックス管中、トリフェニルホスフィン(15.6ミリモル)およびNaI(51.0ミリモル)と混合し、アルゴン下で密封する。混合物を次いで磁気撹拌しつつ約3時間70〜74℃で保持し、この間、混合物は溶融液体からガラス状固体まで変化する。管を次いで冷却し、残留物を塩化メチレン(30mL)で処理する。典型的に得られる懸濁液を濾過し、濾液を減圧下で蒸発させる。結果として得られる残留物を塩化メチレン(最少量)中に溶解させ、配合者の判断でジエチルエーテルまたはペンタンで摩砕する。沈殿を濾過し、摩砕溶媒で洗浄し、乾燥して、所望の中間体6を得る。
【0121】
最終類似体の調製:中間体6(7.8ミリモル)の塩化メチレン(80mL)中溶液を分液漏斗中、10%水性NaNO(50mL)とともに約5分間振盪する。有機層を分離し、乾燥し、濾過し、真空中で濃縮して、中間体6の硝酸塩を得る(典型的には、この変換率は100%である)。塩をアセトニトリルと水との混合物(7:3、38mL)中に溶解させ、氷浴中0℃で撹拌する。ピリジン−2,6−ジカルボン酸(39ミリモル)を添加し、続いて硝酸第二セリウムアンモニウム(39ミリモル)のアセトニトリル/水(1:1、77mL)中溶液を約5分にわたって滴下する。反応混合物を冷所で約20分、次いで室温で10分間撹拌する。反応混合物を次いで水(200mL)中に注ぎ、塩化メチレン(200mL)で抽出する。有機層を乾燥し、濾過し、濃縮して、最終類似体を硝酸塩として得る。硝酸塩を塩化メチレン(100mL)中に溶解させ、20%の水性KBr(50mL)とともに振盪することによって、臭化物塩を形成する。有機層を集め、乾燥し、濃縮して、最終類似体を臭化物塩として得る。
【0122】
実施例2
[10−(2,5−ジヒドロキシ−3,4−ジメトキシ−6−メチルフェニル)デシル]トリフェニルホスホニウムブロミド
2−(10−ヒドロキシデシル)−5,6−ジメトキシ−3−メチルシクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−オン(250g、740ミリモル)を塩化メチレン(2.5L)中に溶解させ、混合物を次いで不活性雰囲気下で10℃まで冷却する。トリエチルアミン(125g、1.5モル)を一度に添加し、混合物を10℃まで再平衡化させる。メタンスルホニルクロリド(94g、820ミリモル)の塩化メチレン(500mL)中溶液を次いで約10〜15℃の内部温度を維持するような速度でゆっくりと添加する。反応混合物をさらに15〜20分間撹拌する。混合物を次いで水(850mL)で洗浄し、水性炭酸水素ナトリウム溶液(850mL)で飽和させる。有機層を減圧下、40〜45℃で蒸発させて、赤色液体を得る。さらに2〜4時間、高真空下、周囲温度で乾燥した後、粗生成物をさらに精製することなく次のステップで使用する。
【0123】
10−(4,5−ジメトキシ−2−メチル−3,6−ジオキソシクロヘキサ−1,4−ジエニル)デシルメタンスルホン酸塩(310g、740ミリモル)をMeOH(2L)中に溶解させ、混合物を次いで0〜5℃まで不活性雰囲気下で冷却する。水素化ホウ素ナトリウム(30gm、790ミリモル)を、確実に内部温度が約15℃を越えないような速度で数回にわけて添加する。反応の完了に付随して、赤色から黄色へ変色する。反応混合物をさらに10〜30分間撹拌し、反応の完了を次いでチェックする。混合物を2Lの2MのHClでクエンチし、1.2Lの塩化メチレンで3回抽出する。合した有機相を次いで水(1.2L)で1回洗浄し、乾燥する。有機相を次いで減圧下、40〜45℃で蒸発させて、黄/褐色シロップを得る。物質を次いで室温でさらに2〜8時間乾燥して、304g(収率98.9%)の所望の生成物を得、これをさらに精製することなく次のステップで使用する。
【0124】
トリフェニルホスフィン(383g、1.46モル)を丸底フラスコ中で10−(4,5−ジメトキシ−2−メチル−3,6−ジオキソシクロヘキサ−1,4−ジエニル)デシルメタンスルホン酸塩(304g、730ミリモル)に添加する。フラスコを次いでロータリーエバポレーターに取り付け、内容物を80〜85℃の温度の浴中、真空下で加熱する。混合物が溶融物を形成し、脱気が明らかでなくなったら、真空を不活性雰囲気と置換し、混合物を80〜85℃に設定された浴中、約3日間穏やかにスピンさせる。混合物を次いで室温付近に冷却し、塩化メチレン(800mL)中に溶解させる。酢酸エチル(3.2L)を次いで穏やかに温めながら数回に分けて添加して、所望の生成物を過剰のトリフェニルホスフィンから沈殿させる。溶媒の体積を減じ、残りの混合物を次いで室温まで冷却し、デカントする。残りのシロップ状残留物を次いで酢酸エチル(3.2L)で2回処理し、次いで真空下で乾燥して、441g(収率89.5%)の所望の生成物を得る。
【0125】
前項からの粗物質(440g、5.65モル)を塩化メチレン(6L)中に溶解させ、フラスコを酸素でパージする。フラスコの内容物を酸素雰囲気下で30分間激しく撹拌する。0.65MのNaNOの乾燥ジクロロメタン中溶液(100mL、2モル%のNaNO)を急速に一度に添加し、混合物を酸素雰囲気下、4〜8時間、室温で激しく撹拌する。[反応が不完全と認められる場合、さらなるNaNOを添加することができる。]溶媒を減圧下で蒸発させることによって除去して、シロップ状残留物を得る。この残留物を塩化メチレン(2L)中に40〜45℃で溶解させる。酢酸エチル(3.2L)を次いで穏やかに温めながら数回に分けて添加して、所望の生成物を沈殿させる。油状残留物を真空下で乾燥して、419g(収率94%)の所望の生成物を赤色ガラス状物質として得る。
【0126】
生物活性
前記塩類は、ヒト疾患、特に良性過形成および種々の癌をはじめとする無制御細胞増殖の疾患に関連するか、またはこれらの疾患に典型な多くのインビトロ生物試験法で有効な化合物であることが判明している。
【0127】
本明細書中に記載する化合物の生物活性は、当該塩をそれらが種々のヒト腫瘍細胞系および原発腫瘍細胞培養物を殺すかまたはその成長阻害する相対的能力について試験することによって、測定、スクリーニング、および/または最適化することができる。
【0128】
そのような試験に用いることができる腫瘍細胞系としては、これらに限定されるものではないが、癌および/または無制御細胞増殖の疾患のモデルとなる既知細胞系、例えば以下のものが挙げられる:
【0129】
白血病に関して:CCRF−CEM、HL−60(TB)、K−562、MOLT−4、RPMI−8226、およびSR。肺癌:A549/ATCC、EKVX、HOP−62、HOP−92、NCI−H226、NCI−H23、NCI−H322M、NCI−H460、およびNCI−H522。
【0130】
結腸癌:COLO205、HCC−2998、HCT−116、HCT−15、HT−29、KM−12、およびSW−620。
【0131】
CNS癌:SF−268、SF−295、SF−539、SNB−19、SNB−75、U−231、U−235およびU−251。
【0132】
黒色腫:LOX−IMVI、MALME−3M、M−14、SK−MEL−2、SK−MEL−28、SK−MEL−5、UACC−257、およびUACC−62。
【0133】
卵巣癌:IGR−OVI、OVCAR−3、OVCAR−4、OVCAR−5、OVCAR−8、およびSK−OV−3。
【0134】
腎臓癌:786−0、A−498、ACHN、CAKI−I、RXF−393、RXF−631、SN12C、TK−10、およびU0−31。
【0135】
前立腺癌:DU−145、PC−3CWR22
【0136】
乳癌:MDA−MB−468、MCF7、MCF7/ADR−RES、MDA−MB−231/ATCC、HS578T、MDA−MB−435、MDA−N、BT−549、およびT−47D。
【0137】
膵臓癌:PANC−1、Bx−PC3、AsPC−1。
【0138】
スクリーニングされる化合物を1以上の前記癌細胞系に適用した後、いくつかの実施形態における抗癌有効性を、時間の関数として培養物中の生細胞の数を測定するための当業者に公知の種々の分析手順を用いて測定する。
【0139】
周知の1つの手順は、3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド(「MTT」)を用いて、生細胞を死んだ細胞と区別する。MTT分析は、生腫瘍細胞のミトコンドリア中の活性デヒドロゲナーゼによる暗青色ホルマザン生成物の産生に基づく。癌細胞をスクリーニングされる化合物に一定の日数の間暴露した後、生細胞だけが活性デヒドロゲナーゼを含有し、MTTから暗青色ホルマザンを産生し、染色される。生細胞の数を595nmのホルマザンによる可視光の吸収によって測定する。いくつかの実施形態において、抗癌活性は、プラセボで処理された培養における腫瘍細胞成長のパーセントとして報告する。これらのMTT分析手順は、マウスなどの一般的な実験動物を用いるインビボ分析が数週間または数ヶ月を要するのに対して、1週間以内で結果が得られる点で有利である。
【0140】
これらのMTT抗癌活性スクリーニング分析は、個々の化合物の一般的な細胞毒性に関するデータを提供する。特に、本明細書中の実施例に記載するように、活性な抗癌化合物は、約10μMの濃度の化合物を、1以上の培養されたヒト腫瘍細胞系を、例えば白血病、肺癌、結腸癌、CNS癌、黒色腫、卵巣癌、腎臓癌、前立腺癌、乳癌、または膵臓癌などに適用して、腫瘍細胞を殺すかまたは腫瘍細胞の細胞成長を阻害することにより特定することができる。
【0141】
本開示のいくつかの実施形態において、本明細書中で記載する化合物は、前記癌細胞系のうちの1つの培養物に約10μM以下の濃度で少なくとも約5日間の期間適用された場合に、本開示の化合物を含まない対照と比較して、癌細胞の成長が阻害されるか、または癌細胞が約50%以上の程度まで殺されるならば、特定の癌の治療について生物学的に活性であると見なされる。
【0142】
DNA分析のために、各培養皿を解凍し、光から保護して、室温で平衡化した。Hoechst33258またはHoechst33342色素を次いで各ウェルに200μLの高塩濃度TNE緩衝液(10mMのTris、1mMのEDTA、2MのNaCl[pH7.4])中、6.7μg/mLの最終濃度で添加した。室温で2時間、光から保護してさらにインキュベーションした後、培養皿をCytoFluor2350(商標)スキャナーで360/460nmフィルター励起および発光セットを用いてスキャニングした。DNA蛍光強度を細胞成長の尺度として使用した。
【0143】
特に、その構造が以下に示される2つの特定の塩の生物活性を、前立腺癌の治療または前立腺癌の成長の阻害についての関連性について分析した。
【化33】

【0144】
実施例3
4日にわたるLNCaPおよびPC−3細胞の成長に対する種々の濃度のMito−Q薬の効果を、前記ヘキスト色素−DNA蛍光分析を使用して分析した。これらおよび後述するその後のすべての細胞培養研究において、各データポイントおよびその関連するエラーバーは、それぞれ、独立した3セットの実験において2連で実施した96ウェルプレートの6ウェルから得られたデータの平均値および標準偏差である。
【0145】
結果を図1に示す。Mito−Q−C10処理は、LNCaPおよびPC−3細胞の両方の成長を阻害する。
【0146】
LNCaP前立腺腫瘍細胞の酸化的ストレスレベルに対するMito−Q−C10の阻害効果は、DCF蛍光/ヘキスト色素−DNA蛍光の比で測定することもできる(Ripple MO, Henry WF, Rago RP, Wilding G. Prooxidannt−antioxidant shift induced by androgen treatment of human prostate carcinoma cells. J Natl Cancer Inst. 1997 Jan l;89(l):40−8)。DCFHをROSによってDCFに酸化して、DCF(6−カルボキシ−2’,7’−ジクロロフルオレシンジアセテート)色素の緑色蛍光によってモニタリングされる容易に定量可能なROSレベルを得る。
【0147】
個々の細胞当たりの酸化的ストレスレベルを評価するために、1nMのアンドロゲン類似体メトリボロンで処理したLNCaP細胞におけるDCF蛍光を、種々の濃度のMito−Q−C10の同じ細胞においてヘキスト色素−DNA複合体の青色蛍光で正規化した。
【0148】
LNCaP前立腺腫瘍細胞の酸化的ストレスレベルに対するMito−Q−C10の阻害効果は、DCF蛍光/ヘキスト色素DNA蛍光の比で測定することもできる(Ripple MO, Henry WF, Rago RP, Wilding G. Prooxidant−antioxidant shift induced by androgen treatment of human prostate carcinoma cells. J Natl Cancer Inst. 1997 Jan l;89(l):40−8)。DCFHをROSによってDCFに酸化して、DCF(6−カルボキシ−2’,7’−ジクロロフルオレシンジアセテート)色素の緑色蛍光によってモニタリングされる容易に定量可能なROSレベルを得る。
【0149】
個々の細胞当たりの酸化的ストレスレベルを評価するために、1nMのアンドロゲン類似体メトリボロンで処理したLNCaP細胞におけるDCF蛍光を、種々の濃度のMito−Q−C10の同じ細胞においてヘキスト色素−DNA複合体の青色蛍光で正規化した。
【0150】
LNCaP前立腺腫瘍細胞における酸化的ストレスレベルに対するMitoQ−C10の阻害効果を、DCF蛍光/ヘキスト色素−DNA蛍光の比により測定した。MitoQ処理は、図3に示すDCF蛍光/DNA蛍光分析によって測定されるようにLNCaP細胞における酸化的ストレスを著しく減少させた。Mito−Q−C10処理は、約1〜10μM以上の濃度でLNCaP細胞におけるROSレベルを効果的かつ再現可能に減少させた。Mito−Q−C10処理がDCF分析で測定される酸化的ストレスおよびMTT分析により測定されるミトコンドリア機能の減少を誘発したことは、図4で示すように、DNA分析によって測定される前立腺腫瘍細胞成長の抑制におけるMito−Q−C10の効果と匹敵する点に留意しなければならない。この酸化的ストレスは、ほぼ確実に、アポトーシスによる細胞死および/または壊死性細胞死の間の脂質過酸化の増大に起因する。
【0151】
図5に示す結果は、致死未満量(1μM)のMito−Q−C10前処理もLNCaP細胞においてアンドロゲン(メトリボロン)処理によって誘発される酸化的ストレスを完全にブロックできることを明らかに証明する。アンドロゲンが、前立腺癌、およびこれらに限定されるものではないが良性前立腺肥大症をはじめとする他の前立腺疾患の初期原因物質である、酸化的ストレス発生の主要な原因であることが証明されている。したがって、Mito−Q−C10処理の抗酸化効果は、一般に、癌、癌進行と癌転移、特に、前立腺癌を引き起こす最も重要な代謝産物の1つを除去することができる。
【0152】
図6は、前立腺の癌細胞をMito−Q−C10で治療する場合、Mito−Q−C10の細胞内レベルが細胞寿命に反比例することを示す。
【0153】
Mito−Q−C10は、5mg/kgのi.p.の用量で、動物に安全に注射することができる。この用量で、治療の最初の1時間でのMito−Q−C10の血清レベルは10〜20mg/mlであり、これは前立腺の癌細胞においてアンドロゲンによって誘発された酸化的ストレスをブロックするのに必要なMito−Q−C10濃度より10〜20倍高い。Mito−Q10は750nmol(約20mg/kg)で有毒でないが、1000nmol(約27mg/kg)で毒性は明白である。MitoQ10は、現在医薬として開発されている。商業的に満足できる安定な製剤を得るために、メタンスルホン酸のカウンターアニオンを用いて化合物を調製することが有益であることが判明しており、取扱い、長期保存、および製造を容易にするために、β−シクロデクストリンに吸着させる。この調製物は容易に錠剤にされ、10.6mg/kgのレベルで観察できる悪影響がなく通常の動物毒性スクリーニングを通過した。経口生物学的利用能は約10%と測定され、尿中の主な代謝物は、グルクロニドおよび還元されたヒドロキノン形態の硫酸塩、ならびに脱メチル化化合物である。第I相ヒト試験では、MitoQ10は80mg(1mg/kg)での経口投与で良好な薬物動態学的行動を示し、その結果、血漿Cmax=33.15ng/mLおよび約1時間のTmaxを得た。この処方は、良好な製薬特徴を有する。
【0154】
実施例5a
PMColは培養においてアンドロゲン依存性(LNCaPおよびLAPC4)ならびにアンドロゲン非依存性(DU−145)ヒトの前立腺の腫瘍細胞の成長を阻害するだけでなく、自然発生TRAMPマウス腫瘍の成長を阻害する。マウスにおけるPMColの薬物動態学的(PK)研究では、液体クロマトグラフィー−質量分光(LC−MS)分析を用いて、100mg/kgのPMCol(経口)または5mg/kgのPMCol(静脈内)を投与した。データから、経口PMCol投与後15分以内および静脈内注射後2時間以内に、PMColの血清レベルが急速に降下し、経口投与1時間後にまたは静脈内投与後4時間で検出することができなかったことがわかった。Mito−VE−C2などのMito−PMCol−C0−1は、300nmol(約4〜約6mg/kgで静脈内投与)では毒性を示さない。Mito−PMCol、Mito−PMQまたはMito−PMHQを静脈内注射によってマウスに投与する場合、これらは血漿から除去されて、心臓、脳、骨格筋、肝臓、前立腺および腎臓ならびに他の臓器に蓄積し得る。これらの実験から、一旦血流中に入ると、アルキルTPP−クロマノールおよびアルキルTPP−ヒドロキシル化クロマン、Mito−PMCol、Mito−PMQおよびMito−PMHQ化合物は、それぞれ急速に臓器中に再分配され;TPP由来のMito−PMCol、Mito−PMQおよびMito−PMHQまたはMito−テンポール化合物は、マウスにトリチウム標識の化合物を与えることによって示されるように、マウスにとって経口により生物学的に利用可能である。齧歯動物用飲料水中でMito−PMColを投与すると、血漿中に吸収され、そして血漿から心臓、脳、肝臓、腎臓、および筋肉中へ吸収される。Mito−PMColは、約1.5日の半減期で一次プロセスによって同程度の速度ですべての器官から取り除かれることが示された。従って、これらの研究は、経口投与されたアルキルTPP化合物が生体膜を通してそれらが容易に浸透するためにすべての器官に分布していることと矛盾がない。
【0155】
前立腺腫瘍の成長に関するPMColの阻害効果は、よく特徴づけられたマウス前立腺のトランスジェニック腺癌(TRAMP)モデルで試験する。100mg/kgのPMCol用量が薬剤のMTDである。PMCol治療動物における腫瘍発生は、対照動物と比較すると8週以上遅れた。
【0156】
経口投与後15分にマウス血清中で検出される、経口投与されたPMColのLC−MS溶出プロフィールは、PMColピークが消える際に、大きな新しいピークが血漿の中に現れることを示す。この新しいピークは237の分子イオン質量(m/z)を有する薬剤を含み、これは文献(28およびその中の関連した参考文献)で報告されたものと同じである。このPMCol代謝物は、少なくとも24時間(PK研究の最終時点)血清の中に残留した。本発明者らは同じ保持時間を再現し、PMColを37℃で12時間酸化すると、m/zが出現する。これらの結果は、PMColがインビボで酸化されて、ヒドロキシル化PMColになることを非常に強く示す。溶出プロフィールおよびヒドロキシル化されたPMCol(PMQ)の質量フラグメンテーションパターンは、主な酸化代謝物の質量フラグメンテーションパターンと類似している。ヒドロキシル化PMCol産物は文献で報告されており、主なインビボ代謝物と矛盾がない。
【0157】
培養ならびにインビボの両方で、PMColは活性な薬剤であり、哺乳類の組織および臓器において酸化によって更に代謝される。PMColは、特にアンドロゲン依存性およびアンドロゲン非依存性前立腺腫瘍細胞の両方を特異的に対象とする有意な活性を示す。
【0158】
インビボでの前立腺腫瘍の成長を阻害におけるPMCol−C2またはMito−PMCol−C10の有効性を試験するために、PMCol製剤を標準化し、その投与経路を決定し、経口もしくは静脈内注射により投与する場合の最大耐量(MTD)を決定した。PMColもしくはMito−PMCol−C2または他の類似体は、腫瘍を有する成体マウスに対して、PEG−400中経口(p.o)またはエタノールとプロピレングリコールとの混合物中の静脈内(i.v.)注射のいずれかによって安全に投与することができる。これらの条件下では、PMColの最大耐量(MTD)は、マウスにおいて、それぞれ、p.oまたはi.v.についてはそれぞれ100mg/kgまたは7.5mg/kgである。PMColを、ラット毎日、2グラム/キログラム/日のDLTで経口投与した。
【0159】
Mito−Q−C10と同様に、Mito−PMCol−C2およびMito−PMCol−C10は、ミトコンドリアの内膜を対象として、ROS産生をブロックすることができる。いくつかの実施例において、臨床的に有用なCaP化学療法薬および化学的予防薬剤としてのMito−PMCol分子の開発のためのインビトロおよびインビボ研究を行った。

【0160】
実施例6
本明細書中で記載するのは、設計、アスコルビン酸塩でのリサイクリング、PMCol(ならびに異性体および類似体)の合成、Mito−PMCol、Mito−PMQ、Mito−PMHQおよびMito−PMDHQならびにPMColのアスコルビン酸塩および類似体を含む処方である。いくつかの実施形態において、それらは培養中のCap細胞を阻害し、インビボの哺乳動物前立腺腫瘍の治療的処置のための活性な薬剤である。他の実施形態において、Mito−PMCol系薬剤は、前立腺癌に対して予防的または治療的である。補助療法として、自身の原発性前立腺腫瘍の治療のために手術または放射線療法を受けている個人において、腫瘍再発を遅延させるかまたは軽減する可能性がある。Mito−PMColは、危険にさらされている男性のためにCaP化学的予防薬として開発することができる。いくつかの実施形態において個体に都合よく投与される有効な遅延および持続放出ならびに他の処方を、薬物動態(PK)データとともに、Mito−PMColの臨床用途について特定する。
【化34】

【0161】
Mito−PMQおよびMito−PMColの化学合成。本発明者等は、いくつかの実施形態において強力な抗酸化剤かつ抗腫瘍薬であるMito−PMColの誘導体の合成をここで記載する。Mito−PMColの類似体も抗酸化性を示し、PMColセミキノンラジカル(SQ)を安定させ、キノン(PMQ)への不均化を最小限に抑える既知下部構造を組み入れることにより、向上した抗酸化活性を示す。第2の方法で、本発明者等は、生物学的利用能の増強、ならびにMito−PMColの適切な処方、塩および濃縮物の標的領域への送達を可能にする改善された薬剤送達系中に組み入れるように、Mito−PMCol類似体を設計し、合成し、特性化する。
【0162】
ここでは、本発明者等は、臨床治療的および予防的用途のためのものを包含する、個人における試験に適当な処方において増加した抗酸化/還元等価物、生物学的利用能および関連する治療活性を有する新しい非標的化もしくはミトコンドリア標的化PMCol類似体の合成および試験を記載する。上記スキーム1において、Mito−PMColの抗酸化特性は、クロマノール系のジヒドロキノン部分が環境ラジカル(R・)によるH−原子引き抜きによって安定なセミキノンラジカル(SQ)を形成する能力に由来する。PMColおよびMito−PMColを次いで、セミキノンラジカル(SQ)とアスコルビン酸塩(Asc)またはユビキノールとの反応によりリサイクルして、その後のラジカルクエンチングのために更にラジカルスカベンジングに付すことができる。しかし、抗酸化剤スカベンジング特性を有さない1分子のPMColおよび1分子のキノンPMQを提供するための2つのセミキノンラジカル(SQ)間の競合する不均化反応が、ラジカルスカベンジャーとしての薬剤非活性化の機序である。しかし、PMQ様ユビキノンは、それらのキノンに基づく非スカベンジング抗酸化活性ならびにミトコンドリアの酸化的リン酸化を調節する抗癌活性および他の治療活性のために活性を有し得る。
【0163】
不均化のため、2つのMito−PMCol分子のうちの1つは失われる。この機序に基づいて、不均化の最小化によって、化合物の抗酸化スカベンジング性能の寿命が増大する。
【0164】
実施例7
「Mito−ツインクロマノールおよびMito−ツインクロマノン」(Mito−TwCHol)は、高次抗酸化剤および還元抗酸化剤として特定される。いくつかの実施形態において、Mito−TwCHol抗酸化剤は、Mito−PMColよりも抗酸化活性が増強され、このことはセミキノンラジカルの安定性およびその低い不均化速度に関連する。ラジカル不均化の速度の減少は、融合PMCol残基のメチレンブリッジにより導入されるステアリン環境の増加によるものである。加えて、両ジヒドロキノン残基は酸化されて対応するキノン(Mito−TwCHQ)になる(スキーム2)ので、TwCHolおよびMito−TwCHolはPMcolおよびMito−PMColの2倍の還元当量を達成する。
【0165】
PMColは血清中の生物学的利用能(経口PMCol、4mg/kg;ivPMCol、0.5mg/kg)、および血清半減期(経口PMCol、0.5時間;ivPMCol、2.0時間)を有する。また、100mg/kgの経口PMCol MTDでその抗癌活性および他の治療活性のためにインビボでPMColに必要とされる濃度は、Mito−PMCol投与で減少する可能性があり、これはおそらくは、個人への投与後に比較的短い時間枠内で有意に増大した細胞内ミトコンドリア濃度を達成できるからである。経口投与される場合、PMColの観察される酸(pH2.0)不安定性はPMColの生物学的利用能と矛盾がない。Mito−PMColは、PMColと同様に、代謝され、急速に酸化/ヒドロキシル化される可能性がある。Mito−PMCol酸化代謝物は、開環PMQなどのPMCol酸化代謝物と同様に、開環Mito−PMQである。
【0166】
PMQに対応するLC−MSピークは、経口投与後数分以内で血清中に出現し、血清中で存続する。Mito−PMCol、Mito−TwCHolおよびMito−PMCol二量体類似体、たとえばそれらの非共役形は、いくつかの実施形態では、ミトコンドリア内膜中で分離されるようになる。前立腺中のPMColは、増大した細胞吸収および細胞質ミトコンドリア中の停留を示す。他の実施形態におけるMito−PMColは、さらに急速に、さらに高濃度で組み込まれる。
【化35】

【0167】
他の実施形態のPMCol類似体の抗酸化活性および抗癌活性および他の治療活性は、生物学的利用能、血清安定性を増大させることにより、ならびに哺乳類の臓器および組織による吸収を増大させることにより、また前記PMColの類似体によっても増加する。例えば新規Mito−ツインPMColおよびMito−PMCol二量体を包含する、優れた抗酸化Mito−クロマノールを含有する、臨床的に関連し都合よく調製された新しい医薬組成物。非標的化形は、その非Mito形態では1,3,4,8,9,11−ヘキサメチル−6,12−メタノ−12H−ジベンゾ[d,g][1,3]ジオキソシン−2,10−ジオールと称する(本明細書ではTwColまたはツイン−クロマノールまたはTwColと称する)。Mito−TwCΗolは、無細胞抽出物中のミトコンドリアにおいてモニタリングされるように、Mito−PMColの2倍多い還元当量を提供することができ、酸化的ストレスにさらされたミトコンドリアにおいて生体エネルギーおよび生化学パラメータを改善することができる。更なる実施形態において、ミトコンドリアタンパク質1mgあたり50nmolまでのTwCΗolの濃度で4毒性のないMito−TwCΗol。Mito−TwColはインビトロのヒト細胞およびインビボの哺乳類で治療的に活性である。Mito−TwColは、立体配置的にラジカルを保護し、より中心にラジカルを配置して、ラジカル不均化を停止し、Mito−TwCol抗酸化活性、抗癌活性、および他の治療的活性を増加させる。さらに他の実施形態におけるMito−PMColは、アンドロゲン依存性およびアンドロゲン非依存性ヒト前立腺腫瘍細胞の両方で、そしてヌードマウスならびに自然発生前立腺腫瘍において成長するヒト腫瘍異種移植片で抗腫瘍治療活性を有する。
【0168】
実施例8
Mito−ツインクロマノールおよび他の誘導体の合成および構造−活性。
Mito−TwCΗolを、TwCHolについての文献の手順の変形によって合成する(スキーム3)。加えて、Mito−TwCHolの構造−活性研究により、不均化の速度の減少の原因を解明する。TwCHol類似体を合成して、全体のラジカル安定性および抗酸化活性に対するメチレンブリッジの役割を評価する。スキーム3で例示されるように、類似体I〜IIIは、いくつかの実施形態ではで2,3,5−トリメチル−1,4−ジヒドロキノンの適切なジカルボニル化合物またはジアセタールとの縮合によって調製される。
【0169】
ツインクロマノール類似体IIは、ポリマー合成および他の産業応用のための中間体として、文献ですでに報告されている。3つの類似体I〜IIIはすべて、TwCHolおよびMito−TWCHolと類似した4還元当量を有する。
【0170】
Mito−PMColおよびMito−PMQおよび結合二量体の合成および構造−活性研究。
【化36】

TwCHolについて観察される増強された抗酸化剤活性の効果を更に調査するために、2つの新シリーズの二量体PMCol、Mito−PMCol、およびMito−PMQならびに誘導体を調製した。TwCHolのように、標的化合物は、PMColの2倍の還元当量を有し得る。しかし、中間体セミキノンラジカルは、全Mito−PMCol−二量体系によって与えられるより高い共鳴安定化の結果として、より高い安定性を示すことができる。第1クラスのPMCol二量体誘導体V〜Xは、2つのPMCol部分の間にビニル−連結基を有し得る。ビニルリンカーは、両PMCol単位によるセミキノンラジカルの共鳴安定化のパイプとして機能し得る。これは安定化効果を提供し、不均化の可能性を減らす。PMCol二量体の合成は、容易に入手可能なヒドロキシメチルPMCol誘導体から開始する。対称性二量体(各モノマー単位上に同じPMCol置換)と非対称の二量体(モノマー単位上に異なるPMCol置換)との両方を調製することができる。非対称のPMCol二量体VIII合成の一例を、スキーム4で例示する。
【化37】

試薬および条件a)CHO、B(OH) b)(COCl)、DMSO、−70℃、CHCl、次いでEtN c)Br、P(Ph) d)P(Ph)、トルエン e)BuLi、THF、−78℃
【0171】
8−ヒドロキシメチルおよび5−ヒドロキシメチル誘導体、XIおよびXIIはそれぞれ、文献の手順の変形を使用して、容易に入手可能な6−ヒドロキシクロマノールから直接的な方法で調製される。5−ヒドロキシメチル誘導体XIIは、ブロム化と同時にトルエン中トリフェニルホスフィンで処理することによって、ホスホニウム塩に再変換した。8−ヒドロキシメチル誘導体XIは、スワーン酸化によってアルデヒドに変わる。XIIのリンイリドでのアルデヒドのウィッティヒオレフィン化により、所望のPMCol二量体VIIIおよびMito−PMCol二量体が生成する。トランス異性体が主生成物である。しかし、いくつかの実施形態ではシス異性体が得られ、これは抗酸化活性を有する。
【0172】
融合PMCol−二量体およびMito−PMCol−二量体の合成および構造−活性研究。
【化38】

試薬および条件:a)CHO、NH(CH b)MeI NaCNBH C)K d)2−メチル−3−ブテン−2−オール、TFA/H
一連の融合Mito−PMCol二量体も、抗酸化剤として調製した。融合PMCol二量体類似体XIIIおよびXIVは、縮合芳香族系によるセミキノンラジカルによって得られるより高い共鳴安定化のために、TwCHolよりも高いラジカル安定性を示す。加えて、これらの融合二量体は、TwCHolおよびビニル結合PMCol誘導体と同じ還元当量数(4当量)を有する。
【0173】
スキーム5で例示するように、XIIIの合成は市販の1,5−ジヒドロキシ−ナフタレンから達成される。オルトメチル化に続いてElb酸化を行い、所望の融合ジヒドロキノンを得る。トリフルオロ酢酸/水中2−メチル−3−ブテン−2−オールでの融合ジヒドロキノンの処理により、良好な収率で融合二量体XIIIを得る。XIVの合成は、対応する1,5−ジヒドロキシアントレース(anthrace)から、同様にして達成される。
【0174】
さらなる構造−活性研究は、Mito−PMColのベンゾクロマノール(XV)およびナフトクロマノール(XVI)同族体に焦点を合わせる。芳香環系に融合させた場合、PMColの抗酸化活性は有意に増加する。ベンゾクロマノールビタミンK−クロマノールは、α−トコフェロール(ビタミンE)よりも高い抗酸化剤活性を示すことが報告されている。XVはPMColよりも良好な抗酸化剤であり得る。化合物XVおよびXVIがPMColと同じ還元当量数を有するにもかかわらず、セミキノンラジカルの安定性は縮合芳香族系の拡張された共役のために増大する。この結果、不均化速度の減少とさらに長い活性持続期間に至る。加えて、ベンゾクロマノール(XV)およびナフトクロマノール(XVI)環系の置換により、最大抗酸化効率を得るためのジヒドロキノンの電子最適化が可能になる。スキーム6で例示されるように、ベンゾクロマノール(XV)およびナフトクロマノール(XVI)Mito−PMCol同族体は、それぞれ対応する1,4−ナフチルジヒドロキノンおよび1,4−アンスリルジヒドロキノンから調製される。ベンゾクロマノール(XV)が報告されているが、抗酸化活性はこれまでに生物学的に評価されておらず、また科学文献で報告されていない。
【化39】

【0175】
実施例9
PMColポリ−(L−グルタミン酸塩)およびMito−PMColポリ−(L−グルタミン酸塩)の研究における合成および活性。
血清エステラーゼ活性化PMColプロドラッグ系の調製または薬剤送達スカフォールドに対するカップリングのための機能を有するMito−PMColのモノマー単位を調製することによって測定されるように、PMCol活性を維持する効力および有効性は増大した。ヒドロキシメチル−PMCol類似体XI、XIIおよびXVIIは、対応する6−ヒドロキシクロマノール誘導体のヒドロキシメチル化によって容易に合成される(スキーム4を参照)。ヒドロキシ部分は、エステルを含むプロドラッグ(スクシネート)のための、または高分子送達系(ポリグルタメート)に対する結合部位として機能する。この形態でMito−PMColを投与すると、用量の有意な増加なしに腫瘍または他の細胞でのMito−PMColの濃度が高くなる。アミノメチルPMCol類似体XVIIIa〜cを合成して、アミドPMCol−を得る。これらの化合物は、対応する6−ヒドロキシクロマノール誘導体のアミノメチル化によって、または、対応するアルコール類の酸化的および還元的アミノ化によって調製される。アミノXVIIIa〜c誘導体は、それらが水性媒体中でさらに良好に溶解し、増強された生物学的利用能を提供する酸性塩(HCl、クエン酸)に変わることもできるという利点を提供する。
【化40】

【0176】
強力な抗酸化活性を示すMito−PMColのアルコールおよびアミノ誘導体を、高分子薬物送達系で調査する。活性なアルコールPMCol誘導体XVIIならびにMito−PMColは、ポリマー骨格のカルボキシル残基とPMColのフェノールまたは類似体XVIIのヒドロキシル基との間のエステル結合を介してポリ(L−グルタメート)スカフォールドに結合する(スキーム7)。
【化41】

【0177】
あるいは、活性アミン類似体XVIIIは、いくつかの実施形態では、ポリマー骨格のカルボキシル残基とアミノ基とのアミド結合を介してポリ(L−グルタメート)に結合する(スキーム7)。ポリ(L−グルタメート)は薬剤送達の有用なスカフォールドであると報告されている。カルボキシレート部分は、結合した薬剤の化学作用を立体的に阻害しないように、ポリペプチド骨格から十分に除去される。加えて、結合していないカルボキシレート残基は、良好な水溶解度をポリペプチド−薬剤複合体に提供する。水溶性ポリ−(L−グルタメート)−PMCol−Mito−T系を血清中に導入し、血清中で、血清エステラーゼは酵素としてエステルまたはアミド結合の加水分解を引き起こし、薬剤を放出する。ポリ(L−グルタメート)スカフォールドは続いて代謝されて、非毒性L−グルタミン酸になる。文献にしたがって、ポリ−(L−グルタメート)−PMCol系を調製する。ポリ(L−グルタメート)のMito−PMColローディングは、ポリペプチドエステル結合の完全な加水分解と、それに続くPMColまたはPMCol類似体のHPLC分析によって測定する。
【0178】
実施例10
PMColの酸化およびNO産物:
【化42】

【0179】
α−トコフェロール(α−Toc、ATCol、ビタミンE、VE)は、生物系においてありふれた抗酸化剤であり、種々の活性酸素によって誘発される酸化から生体分子を保護する。その作用は1つの電子が減少した活性酸化剤のクエンチングに由来し、ラジカル連鎖反応はこのプロセスによって終了する。一酸化窒素(NO)は、最も重要な生物学的ラジカル分子の1つで、多くの生理的現象におけるメディエータとして知られている。加えて、NOが比較的高濃度で発生する場合、NOは細胞毒性活性をもたらし、分子酸素またはスーパーオキシドと反応して、三酸化二窒素(N)、二酸化窒素(NO)または過酸化亜硝酸を生じる。これらの高次窒素酸化物(NOx)はNO自体の反応性はわずかであるにもかかわらず、高い反応性および酸化活性を有することが知られている。NOに由来するこれらの活性種は、身体に対して酸化的損傷を与え、そして生体系の主な抗酸化物質の1つであるα−Tocと相互作用することができる。反応混合物の分析を簡単にするために、既知α−Toc類似体(2,2,5,7,8−ペンタメチル−6−クロマノール(PMC))は、基質でもある。高収率の生成物は、NOおよびO2の量および比を制御することによって得られ、そして、生成物の分布は、2つの気体の比および混合時間によって変化することが判明した。ジクロロエタン(DCE)中、PMC1および等モルの量の空気中のNOを使用して反応を実施した場合、2−(3−ヒドロキシ−3−メチルブチル)−3,5,6−トリメチル−1,4−ベンゾキノン(PMQuinone、PMQ)(2)が得られた。その構造が2および2,2,7,8−テトラメチルクロマン−5,6−ジオン(PMCred)として帰属された2つの主生成物が得られた。他の少量の生成物のうち、2つの化合物は、5−ホルミル−2,2,7,8−テトラ−メチル−6−クロマノールおよび2,3−ジヒドロ−3,3,5,6,9,10,11a−ヘプタメチル−7a−(3−ヒドロキシ−3−メチルブチル)−1H−ピラノ[2,3−a]キサンテン−8(7aH),11(11aH)−ジオンと特定された。すべての反応を3回実施し、標示した反応収率は平均値である。反応は、Oの非存在下で、PMCと10当量のNOとを混合することによってほとんど進行せず、したがってPMCとNOとの間に相互作用は存在しないようである。しかし、1当量のNOの場合、ほぼ半量のPMCが消費され、それに伴って少量の2が形成された。これらの現象の原因は、エントリー1の実験においては酸素のわずかな汚染に起因し、この場合、内側圧力はエントリー5よりも低かった。PMCおよびNOを2時間撹拌した後にOを添加する場合、生成物の分布は変化した。文献で示唆されるように、この結果は、Oの非存在下で、PMCとNOとの間に非生産的な相互作用が存在することを示す。1または2当量のNOを使用した場合、PMCは0.5当量のOの存在下で消費されて、ほぼ等モル量の2および3が得られ、収率はNOの量が少ないほど高くなった。これらの場合、O添加のタイミングは生成物の収率に対して大きな影響を及ぼし、このことは、Oの非存在下でのNOとPMCとの間の直接的な相互作用を示唆する。NO量を減少させることによって、反応時間をより長くする必要があるが、過剰量のOを使用すると、相当量のPMCが消費された。この場合、少量の産物4および5は、先の条件下での場合よりも多く得られた。反応性を比較するために、1当量のNOを、NOおよびOの代わりに使用した。短い反応時間(10分)で、3があまり形成されることなく、2が41%の収率で得られ、3の収率は、反応時間を延長するにつれて徐々に増加した。NOとの反応は、化学量論の視点からNOおよび0.5当量のOとの反応に相当するが、結果はエントリー14および10で示すように異なった。したがって、これらも、NOの形成がNOと0.5当量のOとの混合物において不完全であることを示唆した。これにより、さまざまな量の酸素の存在下でのNOとの反応によってPMCの4つの酸化産物が得られる。
【0180】
全体の生成物収率が90%までで得られたので、結果は反応機序全体に合理的なバックグラウンドを提供すると考えられる。これらの生成物を与えるためにいくつかの経路があるはずであるが、想定される反応メカニズムの1つは、スキーム2に示すようなものである。NOがOと反応して、NO/Oの比率によってNまたはNOを形成することはよく知られている。したがって、化学量論に基づいて、反応の主な反応種は、NO(+N)+少量のO、N(+NO)、N(+NO)およびNO+Oと考えられるが、これらの反応種は、反応混合物中で互いと相互転換する。
【0181】
NOはOの援助を受けずにPMCと相互作用するので、NOはPMCに対する反応性を有し、フェノキシラジカルを与えるはずである。反応性NO(またはN)の存在下で、6はNO(またはN)によって更に酸化されて、PMQuinone2を形成すると考えられた。
【0182】
活性NOxが減少する場合、このプロセスはさらに遅くなるはずであり、にならなければならない、そして、酸素はNOxと置換して、6を酸化することができ、反応経路はPMCred3または4の形成に変わると思われる。NOxの量が更に減少した場合、酸化は6の最初の形成の後、酸素単独の関与を経て進行する可能性がある。5はキノノイド10および2のディールス・アルダー反応の生成物であると考えられるので、反応を過剰の2の存在下で実施したが、5の収率は増加しなかった。従って、スキーム2に示すもの以外の5を形成するための別の経路が存在するはずである。0.25当量のNOの存在下でさえも、PMCは過剰のOおよび反応時間の延長によって消費された。これらのデータは、NOが酸化のために触媒的な方法で作用し得る経路が存在することを示唆する。ヒドロキノンが過剰量の酸素の存在下で触媒量のNOによって酸化されたという同様の結果が、Kochiらによって報告された。PMCおよびNOは様々な量の酸素の存在下で反応して、生成物を形成し、そのうちの4つを同定し、定量した。酸化生成物は、NOおよび酸素の量を制限することによって、良好な収率で得られた。加えて、生成物の分布は、NO/O比率を変えることによって変化した。実験は、アルファ−トコフェロールとの反応により本明細書中で提示されるものと類似した結果が得られることを示した。
【0183】
実施例12
多数の異なるヒトの癌細胞は、正常な細胞よりも比較的酸化的ストレスを受ける。前立腺腫瘍細胞における細胞の高い酸化的ストレスは、HDAC阻害剤の成長阻害活性の損失が原因であると仮定した。特定のヒト癌細胞系およびヒトの原発腫瘍の高い酸化的ストレスの軽減は、脂溶性/水不溶性ビタミンE処方を含む食用もしくは医薬用抗酸化剤での前処理、またはクロマノール、キノン、修飾キニーネ、プラストキノン、テトラシクレン、テンポール、もしくは他の抗酸化剤を含む水溶性ビタミンE類似体である調合薬を用いることによって達成された。本発明者らは、これらの抗酸化剤化合物の治療有効性を、癌細胞系ならびに原発ヒトおよび動物腫瘍を、SAHAをはじめとするHDAC阻害剤、ならびに他の酸化感受性抗炎症剤、前立腺および他の公知の癌化学予防薬もしくは癌化学療法薬に対して治療的に感受性にする際の能力および有用性について試験した。ヒトCaP細胞LNCaPおよびPC−3、結腸癌細胞HT−29およびHCT−115、肺癌細胞A549およびNCI−H460、ならびに乳癌細胞MDA−MB231は、アメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection(Manassas, VA))から得た。LNCaP細胞は、5%COを含む加湿空気中、37℃で、直径10cmの組織培養皿において、5%の加熱不活性化ウシ胎仔血清(FBS)および1%の100×抗生、抗真菌溶液(F5培地)を追加したダルベッコの修飾イーグル培地(DMEM)中で維持する。PC−3細胞は、5%のFBSを含むDMEM中で維持した。他の全ての細胞系を、10%のFBSを含むRPMI−1640培地中で培養した。アンドロゲン枯渇に関して、すべての実験で使用されるLNCaP細胞を、F5培地中で培養し、4%の木炭除去FBS(CSS)+1%の非除去FBS(F1/C4培地)を含むDMEM中「低」アンドロゲン状態へ移した。以前の研究では、この培地は充分なアンドロゲン枯渇を示したが、栄養枯渇に関連する有害な成長効果は無かった。移行2日後に、細胞をトリプシン処理し、計数し、F1/C4中に播種した。播種の翌日、細胞を特定濃度のアンドロゲン類似体R1881(細胞培養条件においてアンドロゲンの代用物として広く使用されているもの)で処理した。処理された細胞を、SAHAの添加前に37℃で5%のCOを含む加湿空気中でさらに24時間インキュベートした。段階的濃度の抗酸化剤またはHDAC阻害剤、例えばSAHAを、アンドロゲン添加の翌日またはF1/C4培地中に播種(対照細胞に関して)後2日に、細胞に添加した。実験によって、試験薬剤を系列希釈法によって96ウェル組織培養プレートに、または10cm組織培養皿に計算された濃度で添加した。添加後、さまざまな分析に備えて、37℃で5%のCOを含む加湿空気中で、細胞を3日間インキュベートした。インキュベーションの最後に、96ウェルプレート中の細胞を、2’,7’−ジクロロフルオレセインジアセテート(DCF)色素(Molecular Probes, Inc., Eugene, OR)を用いて公開されたプロトコルにしたがって生細胞において全ROS発生について分析した。ウェルを、あらかじめ37℃まで温めた200μLのクレブス・リンゲル(KR)緩衝液で洗浄した。すべてのウェル中で、あらかじめ温めたKR緩衝液中100μlのDCFを、20.5μMの最終濃度になるように添加した。5%のCOを含む加湿湿空気中で37℃にて45分間細胞をインキュベートし、次いで480nm励起/530nm発光でセットした蛍光プレートスキャナーで読み取って、DCF色素蛍光を測定した。スキャニング後、プレートをDNA分析に備えて−80℃で保存した。DNA分析のために、DCF分析ですでに使用した96ウェル組織培養プレート中に播種した試験細胞を室温で解凍した。ヘキスト色素(33258)を、0.05MのTris(pH 7.5)、2MのNaCl、1mMのエチレンジアミン四酢酸塩(高塩TNE)中で調製して、公開された手順にしたがい、最終ストック色素濃度10μg/mlにした。各ウェルに、200μLのヘキスト−TNEストックを添加した。各96ウェル組織培養プレートを、360ナノメートル励起/460ナノメートル発光でセットした蛍光プレートスキャナーで、ヘキスト色素の全蛍光について測定して、DCF色素蛍光を測定した。
【0184】
試料調製およびLC−MSによる細胞HDAC阻害剤(すなわちSAHA)測定のために、細胞をトリプシン処理し、計数し、ペレット化し、PBSで1回洗浄し、乾燥し、ペレットを−70℃以下で保存した。実験当日、ペレットを、100μLの溶解緩衝液(0.25Mのスクロース、0.06MのKCl、0.05MのNaCl、0.01Mの2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、0.01MのMgCl、0.001MのCaCl、0.0001Mのフェニル−メチル−スルホニル−フルオリド(PMSF)、1mMのEDTAおよび0.2%のトリトンX−100(pH6.5))中、氷中で5分間インキュベートした。10体積の99.5%の冷アセトニトリル、0.5%の酢酸を全溶解物に添加し、激しくボルテックスし、SAHAが有機溶媒中に抽出されるようにさらに5分間氷中でインキュベートした。管を5分間5,000gで遠心分離し、そして、計算された体積の有機層(通常、添加した全有機溶剤の80%)を最上部から慎重に吸引しれた。有機溶剤を窒素流の下で脱水し、50μLの99.5%アセトニトリル、0.5%の酢酸中に再溶解させた。10μLの各抽出物をLC−MS分析に使用し、分析を3回繰り返した。すべてのデータを細胞抽出物の総数に対して正規化し、ngSAHA/10細胞として表した。
【0185】
LNCaP細胞におけるSAHAレベルのクロマトグラフィーを、患者血清中のSAHAレベルのクロマトグラフィーを測定する公開されたLC−MC法の変形によって測定した。LC−MSシステムは、Agilent(Palo Alto, CA)1100自動サンプラーおよびバイナリポンプ、Agilent1100カラムサーモスタットおよびAgilent Zorbax 300SB−C18カラム(3.5μM、2.1×100mm)から構成されていた。移動相溶媒Aはアセトニトリルおよび酢酸(99.5%:0.5%v/v)であり、溶媒Bは水および酢酸(99.5%:0.5%v/v)であった。溶媒勾配および流速を適切に調整した。10%の溶媒A、90%の溶媒Bでの実施5分後のカラム洗浄は0.2ml/分に維持した。カラムサーモスタットを、完全に流すために25℃に維持した。
【0186】
質量検出のための質量検出器は、Agilent1100四重極モーメントベンチトップ質量分析計(3000Vの陽イオンモードでエレクトロスプレーイオン化)を用いて実施した。シングルイオンMSおよびスキャニングMS/MSモードの両方について、脱溶媒和温度は340℃(40psigのネブラー(nebular)圧力、12l/分の乾燥ガス流速)であった。スキャンモードは150〜300m/zの間であり、シングルイオン検出(SIM)モードは、265.2、232.2、および172.2m/zにセットした。データ収集、ピーク検出および積分のためにAgilentソフトウェアを用いて、すべてのデータを集め、保存し、分析した。
【0187】
siSSATで安定してトランスフェクトされたるLNCaPクローンの構築のために、クローンを公開された手順にしたがって作製した。手短に言うと、サイレンシングSSATのためのオリゴヌクレオチドは、公開された配列に基づいて設計した。アニールされたオリゴヌクレオチドを、pSFlベクター(SBI;System Biosciences, Mountain View, CA)中に挿入した。pSIF−H1−siSSATベクターを安定して発現するLNCaP細胞を、レンチウイルス系を使用して確立した。これらの細胞におけるSSATのサイレンシングを、qRT−PCRによって検証した。
【0188】
HDAC分析に関して、製造業者により提供されたプロトコルを若干変更して、Biomol(Plymouth Meeting, PA)HDAC分析キットを使用してハイスループットHDAC分析を標準化した。手短にいうと、薬剤処理の最後に、96ウェル分析プレート中の培地を廃棄し、細胞を25%PBSで1回洗浄し、30μLの脱イオン化再蒸留水中で1時間室温にて膨潤させた。プレートを次いで−70℃以下で凍結させた。実験当日に、プレートを30分間40℃で解凍した。15μLの細胞可溶化物を96ウェル白色丸底プレートに移し、10μLのHDAC分析緩衝液(50mMのTris−HCl、137mMのNaCl、2.7mMのKCl、1mMのMgCl、pH8.0)および同じHDAC分析緩衝液中で適切に希釈された25μLの製造業者により供給された蛍光標識HDAC基質(KI−104, Biomol Inc.)とよく混合した。プレートを37℃で30分間インキュベートした。反応は、200μMのトリコスタチンA(TSA)を含む製造業者により供給されたDeveloper溶液(Developer I, 2Ox, Biomol Inc.)で停止させ、プレートを1時間以内に、360nm励起/460nm発光で、Saphire(Tecan US, Inc., Durham, NC)マルチモードプレートリーダーで、150mVの光電子倍増管電圧設定を用いて読み取った。細胞溶解物の残りの15μLを、85μLの脱イオン化再蒸留水をおよび200μLのヘキスト33258色素を前記DNA分析プロトコルにしたがって使用したDNA分析に使用した。すべてのDNA蛍光データは、全細胞溶解物のDNA読み出しを測定するために2倍した。
【0189】
アセチル化ヒストンのウェスタンブロット解析について、全細胞ヒストンを、公開された手順にしたがって単離した。ゲルローディングの前に、pHを1MのNaOHで7.2に調節した。各試料からの10μlのアリコートを、タンパク質評価のためにとっておいた。残りの試料をロードし、SDS−PAGE中で電気泳動を実施した。ウェスタンブロット解析は、抗アセチルH4抗体(Millipore, Temecula, CA)を用いた公開された手順にしたがって実施した。β−アクチンを、タンパク質ローディングの対照として使用した。アセチルヒストンH4バンド強度を計算し、β−アクチン強度に対して正規化した。
【0190】
LNCaPヒト前立腺癌細胞を、細胞活性酸素種(ROS)を増加させるかまたは減少させるかのいずれかである、2種の濃度のアンドロゲン類似体メトリボロンで前処理し、続いて段階的濃度のSAHAで処理する。96ウェルプレートベースのDNAおよびジクロロフルオレセインジアセテート(DCF−DA)蛍光分析を使用して、細胞成長および全細胞ROSをそれぞれ測定する。液体クロマトグラフィー−質量分析(LC−MS)法を使用して、メトリボロンで前処理されたLNCaP細胞または未処理対照LNCaP細胞における細胞内SAHAレベルを測定する。高いROSレベルを有するヒト前立腺および結腸直腸癌細胞ならびに低いROSレベルを有する他の肺癌細胞に対するSAHAの細胞成長阻害活性もまた、細胞ROSを減少させる毒性未満量の抗酸化試験剤で前処理された細胞において測定する。
【0191】
ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)は、ヒストンH3とH4を脱アセチル化する核に主に存在する酵素の一種である。HDAC活性は、細胞周期停止およびアポトーシスの誘発に必要な遺伝子の発現を防止する。従って、HDAC阻害は細胞増殖を停止させ、アポプトーシス、細胞分化および/または老化を引き起こす。スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)は、細胞増殖の停止および細胞死を引き起こすHDAC阻害剤である。これはリンパ腫に対して最新の臨床試験を受けて、皮膚T細胞性リンパ腫(CTCL)の治療のために承認された。しかし、SAHAはヒトの前立腺、胸部、結腸および他の癌に対して不活性である。
【0192】
LNCaPは、CaP患者のリンパ節における転移性病巣から80年代初期に確立されたアンドロゲンに反応するヒトCaP細胞系である。1997年に、Rippleらは、LNCaP細胞において、段階的な濃度のR1881(アンドロゲン類似体)での処理によって、DCF色素酸化分析によって測定される種々のレベルのスーパーオキシド、ヒドロキシルラジカル、過酸化水素などの活性酸素種(ROS)が生じることを最初に報告した。0.1nM未満のR1881濃度(「低アンドロゲン」)で処理する場合、LNCaP細胞は、1〜10nMのR1881(「正常〜高アンドロゲン」)での処理と比較して有意に低い細胞ROSを示した。しかし、1〜10nMのR1881濃度範囲内で、LNCaP細胞成長またはROS生成の量において有意差は観察されなかった。LNCaP細胞に加えて、他のヒトの前立腺、結腸およびいくつかの乳癌細胞も、高いROSレベルを有し;一方、ヒトの肺癌細胞は、細胞ROSが著しく低い。
【0193】
SAHAは、CTCLリンパ腫の治療に成功していたにもかかわらず、多数の臨床試験では前立腺、結腸、胸部および他の種類のヒトの悪性腫瘍に対してSAHAの有効性が示されなかった。SAHAに対する細胞抵抗の原因はいくつかあり得、たとえば次のものである;(i)SAHAは、酸化的ストレスを誘発することによって、細胞を殺すことができる。CTCLリンパ腫細胞などの低い酸化的ストレスを有する細胞と比較して、高い酸化的ストレスに対して適応した腫瘍細胞を有する他の癌は、MOA誘発酸化的ストレスによって細胞死を誘発できる薬剤によって影響を受け得ない;(ii)これらの細胞における高スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)酵素活性は、SAHAによって生じる酸化的ストレスを中和することができ、したがって、その活性を阻害し得る;(iii)SAHAは前立腺、結腸または乳癌細胞において生じる高レベルのROSによって酸化される可能性があり、そのために、臨床的に達成可能でない高い薬物濃度を必要とする可能性がある。
【0194】
本発明者らは、高いROSを有するCaP細胞に対するSAHAの不活性は、SOD活性の変化またはROSに対する内因的な細胞耐性によるものではなく、むしろ高いROSレベルを有する細胞における細胞内SAHA濃度の急速な減少によるものであるということを見いだした。ROS産生経路において主な酵素のサイレンシングによりROSレベルを低下させることによって、CaP細胞に対するSAHAを活性化する。例えば脂溶性/水不溶性ビタミンEまたは水溶性類似体、クロマールおよび他のOSM薬などの抗酸化剤での前処理によって細胞ROSを減少させと、CaP、結腸および乳がん細胞のSAHA感受性は相乗的に増大し得るが、低い内因性ROSを有するある癌細胞のSAHA感受性は増大しない。SAHAなどのHDAC阻害剤または他の酸化感受性化学療法薬は、抗酸化剤と組み合わせて、単剤としてのSAHAまたはこれらの他の酸化感受性剤に対して全体として無反応である、過酸化水素の高い産生速度を有する腫瘍をはじめとする高い酸化的ストレスを有する種々の異なる癌の治療的処置である。
【0195】
SAHAは、低い酸化的ストレスでのみ前立腺の癌細胞の成長を阻害する。
癌細胞系の核のDNA(DNA)とのヘキスト色素(ヘキスト33258)複合体の蛍光表示は、各ウェル中に存在する細胞の数と比例する。R1881で前処理し、続いて0〜10μMの増加する濃度のSAHAで処理した後のLNCaP細胞のDNA蛍光を図1aに示す。R1881なし、および0.05nMのR1881で前処理したLNCaP細胞において、細胞成長は、SAHA濃度の対数関数的増大にともなってほぼ直線的に阻害された(それぞれ、図1aAおよび1aB)。しかし、2nMのR1881で前処理したLNCaP細胞において、SAHAは、試験したすべての濃度で、細胞成長に対してごくわずかな影響をしか及ぼさない。アンドロゲンなしで、または0.05nMのR1881で処理した細胞における1μM以上の濃度のSAHAの成長阻害効果は、2nMのR1881で前処理した細胞のSAHAの等しい濃度の成長阻害効果よりもきわめて顕著である。これらのデータは、正常血清アンドロゲン(2nM)に暴露されたLNCaP細胞は、低アンドロゲンまたはアンドロゲンなしで成長する細胞と比較して、SAHAの成長抑制性効果に対して比較的耐性であることを示唆する。
【0196】
SAHAの成長阻害効果は、前立腺癌細胞における細胞酸化的ストレスに依存しない。
酸化されたDCF色素の蛍光は、全細胞ROSと比例する。DCF蛍光が96ウェルプレートの同じウェルからのDNA蛍光で正規化される場合、DCF蛍光:DNA蛍光の比は、細胞あたり生じるROSと比例する。さまざまなR1881濃度で前処理したかまたは前処理しないLNCaP細胞のDCF/DNA蛍光の比を、増加するSAHA濃度に対してプロットしたものを図Ibに示す。R1881なしで前処理したLNCaP細胞において、ROSはSAHA濃度の増加とともに増加する(図lb.A)。しかし、0.05nMおよび2nMのR1881で前処理されたLNCaP細胞において、SAHA濃度の増加は、全細胞ROSレベルに対してごくわずかしか影響を及ぼさない。すべてのSAHA濃度での総細胞ROSレベルは、0.05nMのR1881で処理された細胞よりも2nMのR1881で処理された細胞の方が高い。
【0197】
siSSAT LNCaP細胞に対するSAHAの効果。
スペルミジン/スペルミンアセチルトランスフェラーゼ(SSAT)は、LNCaP細胞のアンドロゲンによって誘発されたROS産生の主要酵素である。本発明者らは、SSAT発現を>90%減らすSSATに対するsiRNA(siSSAT)で安定してトランスフェクトされたLNCaP細胞クローンを構築した。R1881処理は、スクランブル化配列を含む対照ベクターでトランスフェクトされたLNCaP細胞の著しい増加と比較すると、siSSATクローンにおけるROS産生に対して有意な影響を及ぼさない。2nMのR1881で前処理されたベクター対照およびsiSSAT細胞に対するSAHAの成長阻害効果を、適切な濃度のR1881で処理するが、SAHAで処理しない対応する細胞のDNA蛍光の%対照として表す。SAHAの成長阻害効果は、ベクター対照細胞について観察されるものと比較して、2nMのR1881 siSSAT細胞で非常に顕著である。
【0198】
siSSATクローンにおけるHDAC活性に対するSAHAの効果。
次に、本発明者らはベクター対照およびsiSSAT細胞系におけるHDAC活性に対する段階的濃度のSAHAの効果を測定した。HDAC活性は、相対的な蛍光単位(FU)のHDAC生成物蛍光/DNA蛍光(相対的蛍光単位(FU))の比として表される。すべてのデータは同じ条件下(R1881の有無にかかわらず)であるが、SAHAで処理しないで成長する、対応する細胞における同じ比に対して正規化した。アンドロゲンで処理していない細胞において、SAHAは、ベクター対照およびsiSSAT細胞系の両方でHDAC活性の阻害にほぼ同様の有効性を有する。しかし、>1μMの濃度で、SAHAは、R1881で前処理したベクター対照細胞においてHDAC活性を阻害しないが、R1881で処理しないsiSSAT細胞においてと同程度まで、R1881においてHDAC活性を阻害する。SAHAのHDAC阻害効果は、アンドロゲン処理したベクター対照細胞の成長ではなく、アンドロゲン処理したsiSSAT細胞の成長の停止におけるSAHAの能力に類似する。
【0199】
ビタミンEで前処理された細胞におけるSAHAの効果。
これらの結果に基づいて、本発明者らは、高い細胞ROSが前立腺癌細胞におけるSAHAの非活性化の原因であると仮定する。従って、本発明者らは、細胞ROSレベルを低下させることが知られている抗酸化剤による細胞の前処理が、細胞をSAHAに対して感受性にするかどうかを試験した。本発明者らは、前立腺癌細胞LNCaP(R1881で処理したものと処理しないものの両方)およびPC−3、結腸癌細胞HT−29、乳癌細胞MDA−MB231ならびに肺癌細胞A549およびNCI−H460細胞)をαトコフェロールスクシネート(ビタミンE)で前処理した。R1881で処理したLNCaP細胞に関して、ビタミンEは、アンドロゲン処理による過剰のROS生成を中和するために、R1881添加の直前に添加した。細胞成長に対する段階的な濃度のビタミンEでの96時間の処理の効果を別に測定した。この研究から、各細胞系に対して非毒性であるビタミンE濃度を前処理のために選択した。LNCaP(R1881で処理したものと処理しないもの)およびPC−3前立腺癌細胞のROSレベルに対する非毒性量のビタミンE(20μM)での処理を図3に示す。ビタミンE処理は、LNCaPおよびPC−3細胞におけるROSレベルを著しく低下させる。ビタミンEによる細胞ROSの類似の減少が、酸化的にストレスを受けた乳癌細胞および結腸癌細胞で観察された。これらのヒト肺癌細胞における酸化的ストレスのレベルは非常に低いため、これらの細胞におけるROSレベルに対するビタミンE処理の影響は、正確に測定できなかった。
【0200】
ビタミンEで前処理したヒト癌細胞および処理していないヒト癌細胞の成長に対するSAHAの効果を図4に示す。すべてのデータは、ビタミンE単独で処理された対応する細胞のDNA蛍光の%対照として正規化する。アンドロゲン未処理LNCaP細胞およびアンドロゲン処理LNCaPの両方(それぞれ図4Aおよび4B)ならびにPC−3細胞(図4C)は、細胞の酸化的ストレスを減少させる非毒性量の20μMのビタミンEでの前処理後にSAHAによる成長阻害に対して著しく感受性になる。HT−29およびMDA−MB231細胞のSAHA感受性も、ビタミンE細胞で処理されていない細胞と比較すると、ビタミンEで前処理された細胞の方が高い。感受性の増加は、ChouおよびTalalayによって開発された方法を使用することによって測定されるように相乗的である。1μMの臨床的に達成可能なSAHA用量でこれらの細胞系に対してSAHAの成長阻害効果において顕著な差がある点に注意する。しかし、低いROSレベルを有する肺癌細胞A549およびNCI−H460は、任意のSAHA濃度でビタミンE前処理後にSAHA感受性増加が認められない。

【0201】
アセチルヒストンレベルにおけるSAHA誘発性変化に対するビタミンE前処理の効果。
20μMのビタミンE単独、1nMのR1881単独、および2μMのSAHA単独、ならびにR1881+SAHAおよびビタミンE+R1881+SAHAの組合せで処理したLNCaP細胞におけるアセチルヒストンレベルの、抗アセチルH4抗体を用いたウェスタンブロット解析を実施した。β−アクチンのウェスタンブロットを使用して、タンパク質ローディングを制御する。代表的なウェスタンブロットを図5に示す。ビタミンEおよびR1881は、アセチルヒストンH4レベルに対してほとんど影響を及ぼさない。SAHA処理は、アセチルヒストンレベルにおいて小さいが有意な増加を引き起こし、このことは、SAHAが、アンドロゲンの不在下で成長するLNCaP細胞においてHDAC活性を阻害することを示す。R1881で前処理された細胞においてアセチルヒストンH4レベルが著しく減少し、このことは、これらの細胞においてSAHAのHDAC阻害活性がかなり失われることを示唆する。ビタミンEでの前処理は、R1881処理された細胞におけるアセチルヒストンH4レベルをほぼ完全に修復し、このことは、ビタミンEで処理された細胞におけるSAHAのHDAC阻害活性の修復を示す。
【0202】
細胞内SAHA濃度のLC−MS評価。
本研究中に標準化される手順を使用して、増大する濃度のSAHAを添加したLNCaP細胞抽出物において、SAHAは1つのピークとして検出される。LNCaP細胞における細胞SAHA濃度は、計算された量のSAHAを添加したLNCaP細胞抽出物を使用して得られるSAHAの標準曲線を使用して、ngSAHA/10細胞として測定した。5μMのSAHAで24時間処理し、R1881で処理しないか、または1nMのR1881で前処理したかのいずれかの細胞のSAHA濃度を測定した。24時間以内に、R1881で前処理されたLNCaP細胞のSAHAレベルは、R1881未処理の細胞のSAHAレベルの半分より少ない。しかしながら、ビタミンEで前処理された細胞において、少なくとも最初の24時間で細胞内SAHAレベルにおける有意な減少はない。
【0203】
データは、SAHAが、おそらくはこれらの細胞におけるSAHAの酸化的分解反応のために、高い酸化的ストレスを有する癌細胞に対して特異的に不活性であることを示す。ビタミンE前処理によるこれらの細胞の酸化的ストレスの減少は、それ以外でば高い酸化的ストレスを有するSAHA耐性癌細胞を、SAHAの成長阻害活性に対して感受性にする。アンドロゲンなし(F1/C4培地)または低アンドロゲン(0.05nMのR1881)処理したLNCaP細胞において、細胞成長の尺度であるDNA蛍光は、SAHA濃度の対数関数的増加とともにほぼ直線的に減少する。したがって、低アンドロゲン条件(≦0.05nMのR1881)で機能する場合、SAHAはLNCaP前立腺癌細胞成長を阻害し、IC50<1μMである。しかし、正常なアンドロゲンレベル(1nMのR1881)で成長するLNCaP細胞において、10μMのSAHA(図la.C)でさえも細胞成長に対してほとんど影響がない。0.05nMのR1881でR1881は成長刺激性効果を有し、1nMまたはそれ以上の濃度で、LNCaP細胞に対する成長阻害効果を示す。これは、非常に低いSAHA濃度での総DNA蛍光値に反映される。SAHA濃度が増加する際のDNA蛍光の変化は、SAHAが低アンドロゲン(0nMおよび0.05nMのR1881)を有する培地中で成長させたLNCaP細胞の成長を阻害するが、高アンドロゲン(1nMのR1881)を有する培地では阻害しないことを明らかに証明する。
【0204】
ROSの変化がSAHAの成長阻害活性に影響を及ぼすかどうかを試験するために、細胞ROSレベルを、低および高アンドロゲン条件下の細胞成長と比較する。アンドロゲンの非存在下(F1/C4培地)で成長するLNCaP細胞において、細胞成長が減少するにつれて、細胞ROSレベルは増加し、これはSAHAによる細胞成長阻害の理由の1つであると仮定された、SAHA処理が細胞ROSレベルを上昇させるという公開された観察を支持する。しかし、0.05nMのR1881で成長するLNCaP細胞において、ROSレベルの増加は認められず、非常に類似した成長阻害が観察された。一方、正常なアンドロゲン状態(1nMのR1881)の存在下で成長する、高い内因性ROSレベルを有するLNCaP細胞は、SAHAに対して耐性である。これらおよび他の類似のデータは、SAHAの成長阻害効果が、SAHA処理された細胞における細胞ROSレベルの増加によるものではないことを示す。この結果から、LNCaPヒト前立腺癌細胞はSAHAの成長阻害効果に対して内因的に耐性ではなく、正常血清アンドロゲンレベルで成長させた場合にのみSAHA耐性を示すこともわかる。アンドロゲン依存性細胞は、主にCaP再発の初期で正常血清アンドロゲンレベルを有する患者で見られるので、大部分の初期前立腺癌患者は400mgqdの臨床的に承認された経口SAHA用量を投与された患者について〜349ng/mL(〜1.3μM)の血清SAHAレベルでSAHAに反応しないであろう。一方、PC−3などのアンドロゲン耐性CaP細胞は、10μM未満でSAHAに対して内因的に耐性である。したがって、低血清アンドロゲンレベルを有する患者における進行した前立腺癌も、SAHAに対して反応しないであろう。疾患の初期または後期のいずれかでSAHAでCaP患者を治療することができる場合がある。
【0205】
SAHAはアンドロゲンの存在下で異なってスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)酵素活性に影響を及ぼす可能性があり、ROSの量の変化を引き起こし、それによって、高アンドロゲン状態で細胞質ROSに間接的に影響を及ぼす。しかし、SOD分析データは、10μMのSAHAでの処理の前に0.05nMまたは1nMのR1881のいずれかで前処理されたLNCaP細胞のSOD活性において有意差はないことを示す。これらおよび他の類似の結果は、SOD活性におけるアンドロゲンによって誘発された変化が細胞酸化的ストレス、ひいては異なるアンドロゲン濃度で成長する細胞のSAHA感受性を変える原因である可能性を除外する。
【0206】
アンドロゲン処理によってROSを生じることができないsiSSAT LNCaPクローンにおいて、SAHAは高アンドロゲン処理細胞において顕著な成長阻害効果を有する。その効果は、低アンドロゲン濃度で成長するLNCaP細胞に対するSAHAの効果と類似している。本発明者等は、細胞HDAC活性が、siSSATベクターまたはスクランブル化配列を有する対照ベクターのいずれかでトランスフェクトされたLNCaP細胞において非常に類似していると判定した。1nMのR1881で前処理し、次いでSAHAの濃度を上昇させて処理したベクター対照細胞におけるHDAC活性は、最初に減少した後増加する。R1881未処理のベクター対照ならびにアンドロゲン処理および未処置のsiSSAT細胞におけるHDAC活性は同様に減少する(図2b.Aおよびと2b.B)。アンドロゲン処理ベクター対照LNCaP細胞におけるHDAC活性のこのような異常増加は、おそらくこれらの細胞においてSAHA活性が失われることによるものである。これらの細胞系はどちらも同じ親LNCaP細胞に由来するので、SAHA取り込み、排出、クロマチン構造の変化などに対する影響は、両細胞系で同じままであることが予想され、したがってこれらの2つの細胞系においてSAHAの活性が異なる可能性から除外することができる。したがって、高ROS含有CaP細胞における細胞内SAHAの酸化が、ヒトのCaP細胞に対するSAHA活性の喪失の主な理由である。
【0207】
SAHAの成長阻害活性に関するHDAC抑制以外の機序は考慮されている。クロマチン構造を変え、従ってSAHA活性を修飾するsiSSAT細胞における細胞ポリアミンレベルの変化の可能性が、1つの可能性である。しかし、ベクター対照とsiSSAT細胞系との間の細胞ポリアミンレベルにはごくわずかの変化しかない。したがってクロマチン構造に影響を及ぼし、したがってsiSSAT細胞のSAHA感受性を改変する細胞ポリアミンの可能性が除外される。
【0208】
これらの結果に基づいて、高ROS含有細胞におけるSAHAの酸化的損失は、これらの細胞に対するSAHA活性の喪失の主な原因である。したがって、脂溶性/水不溶性ビタミンEまたは水溶性VE類似体などの抗酸化剤での前処理による細胞ROSの減少は、高いROSレベルを有するヒト癌細胞に対してSAHAを活性化することができる。
【0209】
本発明者等は、抗酸化剤ビタミンEで前処理の有無にかかわらず、高酸化的ストレスを有するヒト前立腺、結腸および乳癌細胞ならびに低酸化的ストレスを有する肺癌細胞に対するSAHAの成長阻害効果を研究した。ビタミンEまたは水溶性クロマノールの成長阻害または細胞障害効果のないこれらの細胞のそれぞれにおけるROSレベルを減少させるために必要なビタミンEまたは水溶性クロマノール系類似体について最適濃度を決定した。これらのヒト肺癌細胞は非常に低いROSレベルを有するので、これらの細胞のROSレベルに対するビタミンEの影響は、あったとしても、測定されなかった。ROSレベルはLNCaP細胞と比較するとPC−3細胞において比較的少ないが、それらはどちら正常な前立腺上皮細胞よりも高い。すべての培養条件下で試験したすべての細胞系のROSレベルは、ヒトの肺癌細胞におけるものよりも比較的高い。抗酸化剤前処理が前立腺、結腸および乳癌細胞系において同程度までROSレベルを低下させる場合、すべての細胞系はSAHAの成長阻害効果に対して類似した感受性を示した。しかし、SAHAに対してすでに感受性であるヒトの肺癌細胞は、ビタミンE前処理後にSAHA感度においてほとんど増加を示さない。したがって、肺癌細胞を除いて、試験したすべてのヒト腫瘍細胞系は、ビタミンE前処理後にSAHA感受性の相乗的増加を示した。
【0210】
本発明者等のLC−MSデータは、治療の24時間以内で、1nMのR1881で前処理したLNCaP細胞のSAHAレベルはR1881未処置細胞でのレベルの半分であることを示す。これは、アンドロゲン処理されたLNCaP細胞中に存在する高いROSレベルによるSAHAの酸化、または取り込み阻害またはアンドロゲン処理された細胞におけるSAHAの取り込み阻害もしくは排出の増加、あるいは両者によるものであり得る。SAHA活性はベクター対照クローンに対してよりLNCaP細胞のsiSSATクローンに対して高いので、SAHA活性に影響を及ぼすLNCaP細胞におけるSAHAの取り込み/排出の役割は除外される。これらの観察から、非常に酸化的ストレスを受けた細胞におけるSAHAの酸化的分解反応は、ヒト前立腺、結腸および乳癌細胞のSAHA非感受性の原因である可能性が高い。
【0211】
図4中のデータは、臨床的に達成可能な血清レベル(〜1.3μM)のSAHAが、ビタミンEまたは別の類似した抗酸化剤で処理されていないすべての細胞系に対して不活性のことを証明する。細胞酸化的ストレスを低下させるビタミンEなどの抗酸化剤で前処理される場合、乳癌および結腸癌細胞に加えて、アンドロゲンの存在下で成長するアンドロゲン依存性前立腺癌細胞およびアンドロゲンの非存在下で成長するアンドロゲン非依存性前立腺癌細胞はどちらも、臨床的に達成可能な血清レベルよりはるかに低い濃度でSAHAに対して非常に感受性である。従って、SAHAに対して耐性である非常に酸化的ストレスを受けたヒト腫瘍は、SAHAがビタミンEまたは抗酸化剤と組み合わせて投与される場合、感受性が高くなる。
【0212】
かくして、前立腺、結腸と乳癌細胞において:
・細胞ROSにおいてSAHAによって誘発された増加は、SAHAの成長阻害効果を引き起こさない;
・SAHAはヒト前立腺、結腸または乳癌細胞に存在する高いROSによって酸化され、したがって、これらの腫瘍に対するその活性を失う。
・前処理でビタミンEまたは他の抗酸化剤およびOSM薬剤によって細胞の酸化的ストレスを減少させることによって、アンドロゲン依存性ならびにアンドロゲン非依存性CaP細胞ならびにヒト結腸および乳癌細胞はSAHAの成長阻害効果に対して感受性にされる。
・これらのデータは、それ以外ではSAHAおよび他の類似の酸化感受性化学療法薬に対して反応しないヒト悪性腫瘍の治療薬での治療において、SAHAと酸化的ストレスを調整する薬剤との有効な新規併用療法を示す。
【0213】
化合物の合成
さまざまなMito−VE、Mito−PMColおよびMito−QuinoneおよびMito−Plastoquinone類似体、ならびにMito−PMHQおよびMito−TempolおよびMito−Carbamide−Tempolおよび他のMito−Tempol−H類似体に対する新薬送達系の応用は、まだ調査されていない。多くの標的化合物の合成は、共通の出発物質または中間体を使用し、商業的に実施可能であり、非常に妥当な経費での化合物製造を促進する。すべての新しい化合物は、IR、UVとNMR分光法を使用して特徴づけられる。分光学的特性化を実施し、最終化合物の純度を元素分析により確立し、これらの化合物を生体系で試験する。
【0214】
Mito−PMCol類似体およびPMColを、試験管内腫瘍細胞感受性試験で測定される腫瘍細胞系におけるそれらの相対的な細胞増殖抑制性/抗増殖性および細胞毒性および治療活性について比較し、直接的生および死細胞計数を、血球計でトリパンブル色素排除分析によるか、または本発明者等の実験室で確立された通常の公開された手順にしたがってDNA蛍光分析によって実施する。培養中で成長するLNCaPおよびDU−145細胞をさまざまな異なる濃度のPMColおよび類似体で処理した結果を、実験室で用いられる通常の手順を用いて実施する。
【0215】
処理法
インビトロまたはインビボの腫瘍における少なくともいくつかのヒト眼細胞系の成長を阻害する能力を考慮して、本明細書中に記載する化合物は、ヒトをはじめとする哺乳動物における制御できない増殖の疾患、例えば癌または前癌疾患を予防、軽減、または治療するために使用できる。本明細書中に記載される化合物は、抑制できない炎症、増殖、過形成、癌、および前立腺または他の癌、例えば結腸直腸、胸部、膵臓、肝臓、頭頸部および上皮起源の他の固形腫瘍を治療するための医薬を調製するために使用できる。
【0216】
従って、いくつかの実施形態で、本開示は、抑制できない細胞性炎症、増殖の疾患を治療する方法に関し、この方法は、本開示の化合物または本開示の1以上の化合物を含む医薬組成物を、抑制できない細胞性炎症および/または増殖の疾患を治療するために効果的な量で、抑制できない細胞性炎症および/または増殖の疾患があると診断される哺乳類に、投与することを含む。
【0217】
治療される抑制できない細胞性炎症および/または増殖の疾患は、癌、リンパ腫、白血病、もしくは肉腫、またはウイルス誘発性、HCC、頸部、H&Bもしくは前立腺腫瘍であり得る。本開示の方法によって治療される癌の種類には、ホジキン病、骨髄性白血病、多嚢胞腎臓疾患、膀胱癌、脳ガン、頭頚部癌、腎臓癌、肺癌、骨髄腫、神経芽細胞腫/グリア芽細胞腫、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、皮膚癌、肝癌、黒色腫、結腸癌、子宮頸癌、頭頸部、HCC、乳癌、上皮癌、および白血病が含まれるが、これらに限定されるものではない。組成物は、抑制できない炎症および/または増殖および/または前癌状態、例えば頸部および肛門の異形成、他の異形成、高度異形成、過形成、非定型過形成、前立腺上皮内腫瘍および腫瘍形成の疾患の調整剤として使用することもできる。
【0218】
本開示の化合物は、前立腺癌および関連する腫瘍形成(膵臓腺癌または前立腺腺癌を含む)の治療、および/または前立腺癌および関連する腫瘍形成の成長もしくは増殖または慢性炎症性疾患の阻害に特に有効であることが判明している。
【0219】
いくつかの実施形態において、本明細書中で記載される実施形態は、癌またはその腫瘍形成前兆の炎症、発症、再発、進行、脈管形成または転移を治療または阻害する方法であって、癌を治療するか、癌またはその前兆腫瘍形成の発生、再発、進行または転移を阻害するために有効な量で、癌もしくはその前兆炎症性腫瘍形成であるかまたは罹りやすいと診断される哺乳動物に対して、式
【化43】


(式中
a)Aは、キノン、プラストキノン、ヒドロキノン、キノール、クロマノール、テンポール、ジアミン、トリテルペン、テトラサイクリン、またはクロマノンを含む1以上の化合物もしくは他の類似の部分、またはそのプロドラッグを含み、3〜16個の炭素原子を有する抗酸化剤部分であり、
b)Lは、4〜30個の炭素原子を含む有機連結部分であり、
c)Eは、窒素またはリン原子であり、
d)R’、R”、およびR’”は、それぞれ独立して選択された、1〜12個の炭素原子を含む有機部分であり、
ここで、E、R’、R”、およびR’”は、一緒になって四級アンモニウムまたはホスホニウムカチオンを形成し;塩は、1以上の薬剤的に許容されるアニオンXn−(nは1〜4の整数である)を薬剤的に許容される塩を形成するために充分な量で含む)
を有するカチオンを有する1以上の薬剤的に許容される塩類を投与することを含む方法に関する。
【0220】
本開示の薬剤的に許容される塩類は、これらに限定されるものではないが、前立腺癌、結腸直腸癌、胃癌、腎臓癌、皮膚癌、頭頚部癌、脳ガン、膵臓癌、肺癌、卵巣癌、子宮癌、肝癌、HBV誘発性HCC、および胸部または精巣癌をはじめとするある形態の癌の治療に特に有効であると判明している。
【0221】
いくつかの実施形態において、本開示は、前立腺癌の発症、再発、進行または転移を治療、または阻害する方法であって、前立腺癌または前兆腫瘍形成があると診断される哺乳類に、癌を治療するか、または前立腺癌もしくはその前兆腫瘍形成の発症、再発、慢性炎症、進行または転移を阻害するために有効な量で、式(I)のカチオンを含む本開示の1以上の薬剤的に許容される塩類を投与することを含む方法に関する。本開示のいくつかの望ましい実施形態において、薬剤的に許容される塩類は、式:
【化44】

(式中、
e)Eは、窒素またはリン原子であり、
f)R’、R”、およびR’”は、それぞれ独立して選択された、1〜12個の炭素原子を含む有機部分であり、
g)nは、8〜12の整数であり、
h)Yは、電子活性化部分を含む水素の置換基であり;添字mは0〜3であり;R’、R”、およびR’”は、一緒になって四級アンモニウムまたはホスホニウムカチオンを形成し;塩は、薬剤的に許容される塩を形成するのに十分な、1以上の薬剤的に許容されるアニオンXn−(式中、nは1〜4の整数である)も含む)
を有するカチオンを有する。
【0222】
一実施形態において、HDAC阻害剤および抗酸化剤を含む組合せを投与することを含む、癌の治療法である。もう一つの実施形態において、癌がHDAC阻害剤耐性癌である方法である。別の実施形態において、癌が前立腺癌または結腸直腸癌から選択される方法である。別の実施形態において、癌がアンドロゲン反応性癌である方法である。別の実施形態において、癌が活性酸素種のレベルの増加によって特性化される方法である。別の実施形態において、癌が酸化的ストレスのレベルの向上によって特性化される方法である。別の実施形態において、スベロリルアニリドヒドロキサム酸、トリコスタチンA、トラポキシンB、フェニル酪酸塩、バルプロ酸、ベリノスタット/PXD101、MS275、LAQ824/LBH589、CI994、およびMGCD0103から選択される方法である。別の実施形態において、HDAC阻害剤が、スベロリルアニリドヒドロキサム酸から選択される方法である。別の実施形態において、抗酸化剤が、ビタミンEもしくはビタミンE類似体またはMito−Qから選択される方法である。別の実施形態において、抗酸化剤が、ビタミンE、Mito−ビタミンE、Mito−キノンまたはMito−テンポールから選択される方法である。さらなる実施形態において、抗酸化剤が、式(I)の化合物である方法である。別の実施形態において、抗酸化剤を最初に投与する方法である。別の実施形態において、ビタミンEまたは水溶性抗酸化剤を最初に投与する方法である。

【0223】
医薬組成物
本明細書中で記載される化合物は、単独または複数のいずれかで純粋な化学物質として投与することができるが、機能性食品または医薬組成物として活性成分を提供することが好ましい。したがって、本開示のもう一つの実施形態は、1以上の化合物および/またはその薬剤的に許容される塩を、その1以上の薬剤的に許容される担体と、任意に他の治療的および/または予防的成分と共に含む医薬組成物の使用である。担体は、組成物の他の成分と適合性であり、受容者に対してあまり有害であってはならないという意味において「許容され」なければならない。医薬組成物を、抑制できない細胞性炎症および/または増殖の疾患の治療が必要であると診断された哺乳動物に、抑制できない細胞性炎症および/または増殖の疾患、例えば本明細書中で記載されるさまざまな癌および前癌状態を治療するために有効な量で投与される。抗酸化剤と酸化され得る化合物を含む医薬組成物も、本明細書中で記載される。
一実施形態において、酸化され得る化合物は、HDACの阻害剤である。一実施形態において、HDAC阻害剤と抗酸化剤との組合せを含む医薬組成物である。別の実施形態において、HDAC阻害剤が、スベロリルアニリドヒドロキサム酸、トリコスタチンA、トラポキシンB、フェニル酪酸塩、バルプロ酸、ベリノスタット/PXD101、MS275、LAQ824/LBH589、CI994、およびMGCD0103から選択される方法である。
別の実施形態において、HDAC阻害剤が、スベロリルアニリドヒドロキサム酸から選択される方法である。ボリノスタットまたはスベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)は、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)を阻害する化合物のより大きなクラスのメンバーである。ヒストンデアセチラーゼ阻害剤(HDI)は、広範囲の後成的活性を有する。ボリノスタットは、他の医薬での治療中または治療後に疾患が持続するか、悪化するか、または再発する場合、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)を治療するためにゾリンザという名称で市販されている。ゾリンザは2006年10月6日にCTCLの治療のために米国食品医薬品局(FDA)の承認を得、そして、Merck & Co., Inc., White House Station, New Jerseyのために、Patheon, Inc., in Mississauga, Ontario, Canadaによって製造される。これは、CTCLに密接に関連したもう一種類のリンパ腫であるセザリー症候群を治療するのにも使用されている。最近の検査は、ボリノスタットは再発性多形神経膠芽腫に対しても活性を有し、その結果、ことを示唆した。そして、5.7ヵ月(以前の調査での4〜4.4ヵ月と比較して)の総生存率の中央値が得られることを示唆している。ボリノスタットをMito−Tempol−C10をはじめとする抗酸化剤と組み合わせる、更なる脳腫瘍試験のプランを立てる。ボリノスタットを進行した非小細胞肺癌(NSCLC)の治療に含めることにより、改善された反応率を示し、無進行生存率の中央値および総生存率を増大させた(生存改善率はP=O.05レベルで有意でないが)。ゾリンザは、抗酸化剤とともに感染者からHIVを根絶する候補薬剤であり、潜在的にHIV感染したT−細胞に対してインビトロおよびインビボの療法で効果を有することが最近証明された。
【0224】
別の実施形態において、抗酸化剤がビタミンEまたは水溶性もしくはmito標的化ビタミンE類似体から選択される方法である。別の実施形態において、抗酸化剤が、ビタミンE、テンポールまたはテトラシクレンの非抗生抗酸化活性から選択される方法である。更なる実施形態において、抗酸化剤は式(I)の化合物である。別の実施形態において、抗酸化剤は、テンポールまたはテンポール−H(ヒドロキシルアミン)である。もう一つの実施形態は、組成物が単一の単位投与量で含まれる方法である。
【0225】
本明細書中で用いられる場合、「製薬組成物」とは、1以上の薬剤的に許容される担体(その多くは当該技術分野で公知であり、希釈液、防腐剤、可溶化剤、乳化剤、およびアジュバントを含む)、集合的に補助(超臨界流体溶媒/抗溶媒製造からの定義されたサイズの大きさのナノ粒子処方)の適切な組合せと合わせた、治療的に有効な量の薬学的に有効な化合物を意味する。
【0226】
本明細書中で用いられる場合、「有効な量」と「治療的に有効な量」という用語は、過度の有害な副作用、例えば毒性、刺激またはアレルギー応答がなく、望ましい治療的または予防的反応を得るために十分な活性治療薬の量をさす。具体的な「有効量」は、治療される特定の状態、患者の身体的状態、治療される動物の種類、治療期間、併用療法(存在する場合)の性質、および使用される特定の処方および化合物またはその誘導体の構造などの因子によって明らかに変わるであろう。この場合、ある量は、以下の1以上にもたらすならば、治療的に効果的であると考えられる:
(a)アンドロゲンが関与する炎症、ADTが関与する炎症、またはアンドロゲン非依存性障害(例えば、前立腺癌)の予防;および(b)アンドロゲンが関与する障害またはアンドロゲン非依存性障害(例えば、前立腺癌)の逆転または安定化。最適な有効量は、通常の実験を用いて当業者が容易に決定できる。
【0227】
医薬組成物は液体または凍結乾燥もしくは乾燥処方であってよく、さまざまな緩衝液内容物(例えば、トリス−HCl、酢酸塩、リン酸塩)、pHおよびイオン強度、添加物、例えば表面への吸収を防止するアルブミンまたはゼラチン、洗剤(例えば、Tween20、Tween80、プルロニックF68、胆汁酸性塩)、可溶化剤(例えば、グリセロール、ポリエチレングリセロール)、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム)、防腐剤(例えば、チオメルサール、ベンジルアルコール、パラベン)、増量物質もしく等張性改良剤(例えば、ラクトース、マンニトール)、タンパク質に対するポリエチレングリコールなどのポリマーの共有結合、金属イオンによる複合体形成、または例えばポリ乳酸、ポリグリコール酸、ゲル類、ヒドロゲルなどの重合化合物の粒状製剤中もしくは上への物質の組み入れ、または所定のサイズのリポソーム、マイクロエマルジョン、ミセル、定義済みの大きさのナノ粒子中への組み入れ、独自の結晶多形体を含む。
【0228】
非水性の溶媒の例としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、及びオレイン酸エチルのような注射可能な有機エステルが挙げられる。水性担体としては、水、アルコール性/水性溶液、エマルションまたは懸濁液(生理食塩水、緩衝媒体を包含する)が挙げられる。非経口ビヒクルとしては、塩化ナトリウム溶液、リンゲルのデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、加乳リンゲルおよび不揮発性油が挙げられる。静脈内ビヒクルとしては、流体および栄養補充液、電解質補充薬、例えばリンゲルのデキストロースに基づくものなどが挙げられる。防腐剤および他の添加物、たとえば抗菌物質、抗酸化剤、コレーティング剤(collating agent)、不活性ガスなども存在してよい。
【0229】
本開示にしたがって投与可能な制御または持続的放出組成物は、処方を親油性デポー(例えば、脂肪酸、ワックス、油)中に含む。また、組織特異的受容体、リガンドまたは抗原を対象とするか、または組織特異的受容体のリガンドと結合する、抗体または核または他の局在ペプチドに結合するポリマー(例えば、ポロキサマーまたはポロキサミン)でコーティングされた粒状組成物も本開示によって想定される。
【0230】
本開示に従って投与される組成物の他の実施形態は、粒子性形態、保護コーティング、プロテアーゼ阻害薬、グアーガム、柑橘類のペクチン、ガラクトマンナンまたは非経口、肺、鼻および経口をはじめとするさまざまな投与経路の浸透促進剤を組み入れる。
【0231】
ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンまたはポリプロリンなどの水溶性ポリマーの共有結合によって修正された化合物は、対応する修飾された化合物よりも、静脈内注射後に実質的に長い血液中半減期を示すことが知られている(Abuchowskiら、1981年;Newmarkら、1982年;およびKatreら、1987年)。そのような修飾は、水溶液中の化合物の溶解性を増加させ、集積を除去し、化合物の物理的および化学安定性を増強し、そして化合物の免疫原性および反応性を大幅に減らす可能性もある。その結果、そのようなポリマー化合物付加物を非修飾化合物よりも頻繁ではないかまたは低用量で投与することによって、望ましいインビボ生物活性を達成することができる。
【0232】
本開示のさらに別の方法では、医薬組成物は制御放出系において送達することができる。例えば、薬剤は、静脈注入、移植可能浸透圧ポンプ、経皮パッチ、リポソームまたは他の投与様式を使用して投与することができる。一実施形態において、ポンプを使用することができる(Langer、前出;Sefton, CRC Crit. Ref. Biomed. Eng. 14:201(1987);Buchwald et al., Surgery 88:507(1980);Saudek et al., N. Engl. J. Med. 321 :574(1989)を参照)。別の実施形態において、重合物質を使用することができる。さらに別の実施形態において、制御放出系を、治療標的、すなわち、前立腺の近くに配置することができ、したがって全身用量の一部しか必要としない(例えば、Goodson, in Medical Applications of Controlled Release, supra, vol. 2, pp. 115−138(1984)を参照)。他の制御放出系は、Langerによる総説(Science 249:1527−1533(1990))で議論されている。
【0233】
製剤は、抗酸化剤化合物単独を含み得るか、または薬剤的に許容される担体を更に含むことができ、固体または液体状態、例えば錠剤、粉末、カプセル、ペレット、溶液、懸濁液、エリキシル、エマルジョン、ゲル、クリームまたは坐薬(直腸および尿道坐薬を含む)であり得る。
【0234】
薬剤的に許容される担体は、ガム、澱粉、糖、セルロース物質、およびそれらの混合物を含む。化合物を含む製剤は、例えば、ペレットの皮下埋め込みによって患者に投与することができる。更なる実施形態において、ペレットはある期間にわたって化合物の制御放出を提供する。調製は、液状製剤の静脈内、もしくは動脈内、もしくは筋肉内注射、または液体もしくは固体製剤の経口投与、または局所応用によって投与することもできる。投与は、肛門座剤もしくは尿道坐剤または洗口剤の使用によって達成することもできる。
【0235】
本開示の一つの予め定められた薬剤的に有効な量の化合物、および/またはそれらの医薬組成物を、指定するために可能でなくて、治療されるあらゆる疾患状態について指定することは不可能であるが、そのような薬剤的に有効な量の決定は、通常の技量を有する診断医または臨床医の技術範囲内であり、最終的に彼らの判断による。いくつかの実施形態において、本開示の活性化合物を投与して、典型的には約0.1〜約100μM、約1〜50μM、または約2〜約30μMの活性化合物のピーク血漿の濃度を達成する。これは、例えば、場合よって食塩水中、活性成分の0.05%〜5%の溶液の静脈内注射により達成することができるか、または約0.5〜500mgの活性成分を含むボーラスとして経口投与することができる。望ましい血中濃度は、約0.01〜5.0mg/kg/時を提供するように持続点滴によって、または約0.4〜15mg/kgの本開示の活性化合物を含無間欠的注入によって維持することができる。
【0236】
医薬組成物は、経口、腸内、非経口(筋肉内、皮下および静脈を含む)、局所、鼻、膣、眼、舌下、鼻または吸入投与に適切なものを含む。非経口組成物は、必要に応じて、独立した単位投与形態で都合よく提示することができ、薬学の分野で周知の方法のいずれかによって調製することができる。そのような方法は、活性化合物を、液体担体、固体マトリックス、半固体担体、微粉砕された固体担体またはその組合せと会合させ、次いで、必要ならば、生成物を望ましい送達系に成形するステップを含む。
【0237】
経口投与後血中濃度によって示されるように、本開示の化合物は、単独または、賦形剤の存在下で経口生物学的利用能を有し得る。経口生物学的利用能は、慢性疾患のための経口投与を可能にし、他の投与手段よりも優れた自己投与と減少したコストの利点を有する。経口投与に適した医薬組成物は、独立した単位投与形態、例えば予め定められた量の活性成分をそれぞれ含有するハードもしくはソフトゼラチンカプセル、カシェ剤または錠剤として;粉末として、または顆粒として;溶液(懸濁液)として、またはエマルジョンとして提示することができる。活性成分は、ボーラス、舐剤またはペーストとして提示することもできる。経口投与用の錠剤とカプセル剤は、通常の賦形剤、例えば結合剤、フィラー、潤滑油、崩壊剤または湿潤剤を含むことができる。錠剤は、当該技術分野で周知の方法にしたがって、例えば、腸溶コーティングでコーティングすることができる。
【0238】
経口液状製剤は、例えば、水性もしくは油性懸濁液、溶液、エマルジョン、シロップまたはエリキシルの形であり得るか、あるいは使用前に水または他の適切なビヒクルで再構成するための乾燥製品として提示することができる。そのような液状製剤は、通常の添加物、例えば懸濁剤、乳化剤、非水溶ビヒクル(食用油を含み得る)、または一つ以上の防腐剤を含むことができる。
【0239】
本開示によって投与可能な製剤は、既知の溶解混合、造粒、または錠剤形成プロセスによって調製することができる。経口投与に関して、化合物またはそれらの生理的に許容される誘導体、たとえば塩、エステル、N−オキシドなどを、この目的のために慣例的な添加物、例えばビヒクル、安定剤、または不活性希釈液と混合し、通常の方法により、投与に適した形態、たとえば錠剤、コーティング錠、ハードもしくはソフトゼラチンカプセル、水性、アルコール性もしくは油性溶液に変換する。好適な不活性ビヒクルの例は、結合剤、例えばアカシア、コーンスターチ、ゼラチン、崩壊剤、例えばコーンスターチ、馬鈴薯澱粉、アルギン酸、または、潤滑剤、例えばステアリン酸もしくはステアリン酸マグネシウムと組み合わせた、通常の錠剤用基剤、例えばラクトース、スクロースまたはコーンスターチである。
【0240】
好適な油性ビヒクルまたは溶媒の例は、ヒマワリ油または魚類肝油などの植物性または動物性油である。調製は、乾燥顆粒および湿式顆粒また超臨界的に処方されたナノ粒子の両方として実施することができる。
【0241】
化合物は非経口投与(例えば、注射、例えば、ボーラス注射または持続点滴による)のために処方することができ、またアンプル中単位投与形態、に示されることもできる、注射器を予備充填された注射器、小ボーラス注入容器または多剤容器(防腐剤を添加)中で提供することができる。組成物は、油性もしくは水性ビヒクル中の懸濁液、溶液またはエマルジョンなどの形をとることができ、懸濁剤、安定剤および/または分散剤などの処方剤を含み得る。あるいは、活性成分は、使用前に、例えば、滅菌無パイロジェン水などの好適なビヒクルで再構成される、滅菌固体の無菌単離または溶液からの凍結乾燥によって得られる粉末形態であってよい。
【0242】
非経口投与(皮下、静脈内、動脈内、または筋肉内注射)、に関して、化合物またはそれらの生理的に許容される誘導体、たとえばエステル、N−オキシドなどは、所望により、この目的のために一般的で好適な物質(例えば、可溶化剤または他の補助剤)を含む溶液、懸濁液に変換するか、またはエクスパルション(expulsion)に変換する。例は、水および油(界面活性剤および他の薬剤的に許容される補助の添加の有無を問わない)である。例示的な油は、石油、動物、植物、または合成起源のもの、例えば、落花生油、大豆油または鉱油である。一般的に、水、食塩水、水性デキストロースおよび関連する糖溶液、およびグリコール、たとえばプロピレングリコールまたはポリエチレングリコールが、注射液に特に好適な液体担体である。
【0243】
活性成分を含む医薬組成物の調製は、当該技術分野で十分に理解されている。そのような組成物は、鼻咽頭に送達されるエアゾルとして、または液体溶液もしくは懸濁液のいずれかなどの注射可能薬物として調製することができるが;注射前に液体中溶液または懸濁液にするのに適した固体形態も調製することができる。調製物は、乳化することもできる。活性な治療成分は、多くの場合、薬剤学的に許容され、活性成分と適合性である賦形剤と混合する。適切な賦形剤は、例えば、水、食塩水、できストロース、グリセロール、エタノールなどまたはそれらの任意の組み合わせである。
【0244】
加えて、組成物は、少量の、活性成分の効果を増強する補助物質、たとえば湿潤もしくは乳化剤、pH緩衝剤などを含み得る。
【0245】
本開示の化合物は、薬剤的に許容されるアニオンとの薬剤学的に許容される塩の形態でカチオン抗酸化剤を含む。薬剤的に許容される塩類には、薬剤学的に許容されるハロゲン化物、例えばフッ化物、塩化物、臭化物またはヨウ化物、三塩基性リン酸塩、二塩基性リン酸水素塩、一塩基リン酸二水素塩、または薬剤的に許容される有機カルボン酸のアニオン形態、たとえば酢酸塩、シュウ酸塩、酒石酸塩、マンデル酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩が含まれる。そのような薬剤学的に許容される塩類は、当業者に周知のイオン交換反応および技術によって化合物の最初の合成に使用される他の塩類から容易に合成することができる。
【0246】
カチオン性抗酸化剤上の任意の遊離カルボキシル基から形成される塩類は、水酸化ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウムもしくは鉄(III)などの無機塩基、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどの有機塩基由来であってもよい。
【0247】
薬剤における使用に関して、抗酸化、抗癌または化学療法もしくは化学予防化合物の塩類は、薬剤的に許容される塩類であり得る。しかし、他の塩類は、本開示の化合物の、またはそれらの薬剤学的に許容される塩類の商業的もしくは実験室的調製に有用であり得る。化合物の適切な薬剤的に許容される塩類には、たとえば、本開示の化合物の溶液を、薬剤的に許容される酸、例えば塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酢酸、安息香酸、シュウ酸、クエン酸、酒石酸、炭酸またはリン酸の溶液と混合することによって形成され得る酸付加塩が含まれる。
【0248】
加えて、本明細書中で記載される塩類は機能性食品組成物の形態で提供することができ、この場合、塩類の抗酸化性および他の所望の特性は、さまざまな状態または障害の発症を防止する(例えば、前立腺癌を含む種々の形態の癌の発症を阻害することを含む)かまたは軽減するかまたは安定化するが、瓶のラベルはそのような用語を使用しない可能性がある。「機能性食品」または「機能性食品組成物」という用語は、本明細書の目的に関して、疾患の予防および/または治療を包含し、医学健康効果を提供する食品材料または食品材料の一部を指す。本開示の機能性食品組成物は、活性成分として本開示のカチオン性抗酸化剤化合物のみを含み得るか、または前述のカチオン性抗酸化化合物との混合物で、当該物質の総摂取量を増加させることによって食事を補うビタミン、コエンザイム、ミネラル、ハーブ、アミノ酸などを含む栄養補助食品を更に含み得る。
【0249】
従って、本開示は、機能性食品の利点を患者に提供する方法であって、式Iを有する化合物またはその薬剤的に許容される塩を含む機能性食品組成物を患者に投与するステップを含む方法を提供する。そのような組成物は、一般的に、「機能性食品的に許容される担体」を包含し、これは、本明細書で言及されるように、経口送達に適した任意の担体であり、これらに限定されないが、前記の薬剤的に許容される担体を含む。特定の実施形態において、本開示の機能性食品組成物は、機能基準で定義され、免疫ブースティング剤、抗炎症薬、抗酸化剤、またはそれらの混合物を含む栄養補助食品を含む。
【0250】
前記サプリメントのいくつかをそれらの薬理効果に関して記載したが、他のサプリメントも本開示で利用することができ、それらの効果は科学文献で十分に文書化されている。
【0251】
一般的に、当業者は、ヒト腫瘍細胞系統を接種した胸腺欠損ヌードマウスなどのモデル生物で得られたインビボデータを、ヒトなどの別の哺乳類に外挿する方法を理解する。で得られる生体内でのデータを外挿する方法がわかっている。これらの外挿法は単に2つの生物の体重に基づくのではなく、むしろ代謝速度の差、薬理学的送達の差、および投与経路を取り入れる。この種の考慮点に基づいて、好適な用量は、別の実施形態では、典型的に、約0.5〜約10mg/kg/日、または1日あたり体重1kgにつき約1〜約20mg、または約5〜約50mg/kg/dayの範囲である。
【0252】
望ましい用量は、単回投与で、または例えば1日につき2、3、4またはそれ以上の下位用量として適当な感覚で投与される分割用量として、都合よく提供することができる。下位用量は、当業者に必要ならば、例えば、それ自体を多くの独立した大雑把に間隔をあけた投与に更に分割することができる。
【0253】
当業者は、これらの典型的範囲外の投与量および投与形態を試験することができ、必要に応じて、本明細書中に提示される方法で使用できると認めるであろう。
【0254】
組み合わせ
本開示の別の態様によると、前述の化合物に加えてさらなる治療薬を含む、癌の治療に有用な問題の医薬組成物が提供される。そのような薬剤は、化学療法剤、除去または他の治療用ホルモン類、抗腫瘍薬、癌および脈管形成に対して有用なモノクローナル抗体ならびに他の阻害剤であり得る。以下の考察は、この点で例示的であり、限定的でないいくつかの薬剤をいくつかの薬剤を強調する。種々の他の有効な薬剤も使用できる。
【0255】
本発明の化合物と組み合わせて使用できるホルモン類と阻害剤には、ジエチルスチルベストロール(DES)、ロイプロリド、フルタミド、ヒドロキシフルタミド、ビカルタミド、酢酸シプロテロン、ケトコナゾール、酢酸アベラテロン、MDV3100およびアミノグルテチミドが含まれる。
【0256】
本発明の化合物との組み合わせで使用できるさまざまな抗過形成性剤、抗癌剤および抗炎症薬には、タキソテール(ドセタキソール)、5−フルオロウラシル、硫酸ビンブラスチン、リン酸エストラムスチン、スラミンおよびストロンチウム−89が含まれる。本開示の組み合わせおよび範囲内で有用な他の化学療法薬は、ブセレリン、クロロトラニセン、リン酸クロム、シスプラチン、サトラプラチン、シクロホスファミド、デキサメタゾン、ドキソルビシン、エトポシド,エストラジオール、吉草酸エストラジオール、エストロゲン(共役およびエステル化)、エストロン、エチニルエストラジオール、フロキシウリジン、ゴセレリン、ヒドロキシウレア、メルファラン、メトトレキセート、マイトマイシン、プレドニゾン、およびテンポールまたはそれらのプロドラッグである。
【0257】
本開示の他の実施形態は、本明細書および本明細書中に開示される実施形態の詳細および実施の考慮から当業者には明らかであろう。明細書および実施例は、例示のみとして見なされることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗癌剤および抗酸化剤を含む組合せを投与することを含む癌の治療法。
【請求項2】
抗癌剤を活性酸素または窒素種によって酸化する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
抗癌剤が、アスピリン、ドセタキセル、5−フルオロウラシル、ゲムシタビン、硫酸ビンブラスチン、リン酸エストラムスチン、スラミン、ブセレリン、クロロトラニセン、リン酸クロム、シスプラチン、サトラプラチン、カルボプラチン、シクロホスファミド、デキサメタゾン、ドキソルビシン、エストラジオール、吉草酸エストラジオール、エストロゲン(共役およびエステル化)、エストロン、エチニルエストラジオール、エトポシド、フロキシウリジン、ゴセレリン、ヒドロキシウレア、メルファラン、メトトレキセート、マイトマイシン、プレドニゾン、トリコスタチンA、トラポキシンB、フェニル酪酸塩、バルプロ酸、ベリノスタット/PXD101、MS275、LAQ824/LBH589、CI994、およびMGCD0103から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
抗酸化剤が、式(I)
【化1】

(式中:
i)Aは、抗酸化剤または還元抗酸化剤として機能することができる少なくとも1つの基であり、ヒドロキノン、ジヒドロキノン、キノン、プラストキノン、テンポール、フェノール、ジアミン、トリテルペン、クロマノール、クロマノンまたはそのプロドラッグを含み、2〜30個の炭素原子を有する;
ii)Lは0〜50個の炭素原子を含む連結基である;
iii)Eは原子でないか、または窒素もしくはリンである;
iv)R1’、R1”、およびR1”’は、それぞれ独立して、0〜12個の炭素原子を含む有機ラジカルから選択される)の構造;および
b)式
【化2】

を有する少なくとも1つのアニオン(ここで、カチオンおよびアニオンが存在するならば、中性の薬剤的に許容される塩を形成するために十分な量で存在する)を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
A基が、式:
【化3】


(式中、Yは任意に存在し:
i)C〜C直鎖、分岐、または環状アルキル;
ii)C〜C直鎖、分岐、または環状ハロアルキル;
iii)C〜C直鎖、分岐、または環状アルコキシ;
iv)C〜C直鎖、分岐、または環状ハロアルコキシ;または
v)−N(R(各Rは独立して水素またはC〜C直鎖もしくは分岐アルキルである)
から選択される1以上の電子活性化部分であり得;そして
mは存在するY単位の数を示し、mの値は0〜3である)を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
Aが
【化4】

である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
抗酸化剤がビタミンEまたはビタミンE類似体である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
抗癌剤がHDAC阻害剤である、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
HDAC阻害剤と抗酸化剤とを含む組み合わせを投与することを含む、癌の治療法。
【請求項10】
癌がHDAC阻害剤耐性癌である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
癌が、前立腺癌、乳癌または結腸直腸癌から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
癌がアンドロゲン受容体反応性癌および/またはアンドロゲン反応性癌である、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
癌が活性酸素種のレベルの増加によって特徴づけられる、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
癌が酸化的ストレスのレベルの上昇によって特徴づけられる、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
HDAC阻害剤が、トリコスタチンA、トラポキシンB、フェニル酪酸塩、バルプロ酸、ベリノスタット/PXD101、MS275、LAQ824/LBH589、CI994、およびMGCD0103から選択される、請求項9〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
抗酸化剤が、ビタミンEまたはビタミンE類似体から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
抗酸化剤がビタミンEから選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
抗酸化剤を最初に投与する、請求項9に記載の方法。
【請求項19】
ビタミンEを最初に投与する、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
抗癌剤と抗酸化剤との組み合わせを含む医薬組成物。
【請求項21】
抗癌剤が活性酸素種によって酸化され得る、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
抗癌剤が、アスピリン、ドセタキソール、5−フルオロウラシル、硫酸ビンブラスチン、リン酸エストラムスチン、スラミン、ブセレリン、クロロトラニセン、リン酸クロム、シスプラチン、サトラプラチン、カルボプラチン、シクロホスファミド、デキサメタゾン、ドキソルビシン、エストラジオール、吉草酸エストラジオール、エストロゲン(共役およびエステル化)、エストロン、エトポシド、エチニルエストラジオール、フロキシウリジン、ゴセレリン、ヒドロキシウレア、メルファラン、メトトレキセート、マイトマイシン、プレドニゾン、トリコスタチンA、トラポキシンB、フェニル酪酸塩、バルプロ酸、ベリノスタット/PXD101、MS275、LAQ824/LBH589、CI994、およびMGCD0103から選択される、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項23】
抗酸化剤が、式(I)
【化4】

(式中:
i)Aは、抗酸化剤または還元抗酸化剤として機能することができる少なくとも1つの基であり、ヒドロキノン、ジヒドロキノン、キノン、プラストキノン、キノール、フェノール、ジアミン、トリテルペン、テトラサイクリン、クロマノール、テンポール、ニトロキシド、またはそのプロドラッグを含み、2〜30個の炭素原子を有する;
ii)Lは0〜50個の炭素原子を含む連結基である;
iii)Eは原子でないか、または窒素もしくはリンである;
iv)R1’、R1”、およびR1”’は、それぞれ独立して、0〜12個の炭素原子を含む有機ラジカルから選択される)の構造;および
b)式
【化5】

を有する少なくとも1つのアニオン(ここで、カチオンおよびアニオンが存在するならば、中性で薬剤的に許容される塩を形成するために十分な量で存在する)
を有する、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項24】
A基が、式:
【化6】

(式中、Yは任意に存在し:
i)C〜C直鎖、分岐、もしくは環状アルキル;
ii)C〜C直鎖、分岐、もしくは環状ハロアルキル;
iii)C〜C直鎖、分岐、もしくは環状アルコキシ;
iv)C〜C直鎖、分岐、もしくは環状ハロアルコキシ;または
v)−N(R(各Rは独立して水素またはC〜C直鎖もしくは分岐アルキルである)
から選択される1以上の電子活性化部分であり得;そして
mは存在するY単位の数を示し、mの値は0〜3である)を有する、請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項25】
Aが
【化7】


である、請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項26】
抗酸化剤がビタミンEまたはビタミンE類似体である、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項27】
抗癌剤がHDAC阻害剤である、請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項28】
HDAC阻害剤と抗酸化剤との組み合わせを含む、医薬組成物。
【請求項29】
HDAC阻害剤が、トリコスタチンA、トラポキシンB、フェニル酪酸塩、バルプロ酸、ベリノスタット/PXD101、MS275、LAQ824/LBH589、CI994、およびMGCD0103から選択される、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項30】
抗酸化剤がビタミンEまたはビタミンE類似体から選択される、請求項28に記載の医薬組成物
【請求項31】
抗酸化剤がビタミンEから選択される、請求項30に記載の医薬組成物。
【請求項32】
組成物が単一の単位投与量で含まれる、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項33】
抗癌剤が前立腺癌に対し治療的に有効である、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項34】
前立腺疾患または障害の治療のための抗酸化剤と治療薬との組合せを含む医薬組成物。
【請求項35】
前立腺疾患または障害が良性前立腺肥大症である、請求項34に記載の医薬組成物。
【請求項36】
前立腺疾患または障害が前立腺の炎症である、請求項34に記載の医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2012−524074(P2012−524074A)
【公表日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−505976(P2012−505976)
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【国際出願番号】PCT/US2010/031455
【国際公開番号】WO2010/121177
【国際公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(511242351)コルビー ファーマシューティカル カンパニー (1)
【Fターム(参考)】