説明

酸化還元電位測定装置

【課題】底泥/水の界面を検知することにより測定位置(泥表面からの距離)を特定した酸化還元電位(ORP)の測定を行える酸化還元電位測定装置を実現する。
【解決手段】棒状の電極保持体の軸方向に所定間隔を置いて設けられた複数の作用電極を具備する酸化還元電位測定装置において、前記複数の作用電極を使用して界面を検知する界面検知用導電率測定回路を具備したことを特徴とする酸化還元電位測定装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
河川や湖沼などでは、底泥が溶存酸素を消費し、水底が嫌気状態になり、燐・鉄・マンガンなどが底泥より溶出し、水環境へ負荷を与えている。
この様な状態では底泥中及び底泥直上水の酸化還元電位(ORP)はマイナス側に変化しており、こうした変化を測定することにより、環境変化や汚濁状態を把握することが可能になる。
本発明は、底泥/水の界面を検知することにより測定位置(泥表面からの距離)を特定した酸化還元電位(ORP)の測定を行える酸化還元電位測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
酸化還元電位測定装置に関連する先行技術文献としては次のようなものがある。
【0003】
【特許文献1】実開平5−052754号公報
【0004】
図6は従来例の構成説明図である。
図6において、基盤1は塩化ビニル製で直径40cm及び厚さ2cmの円板からなり、基盤1の中央には電極保持体2を挿通して支持する挿通口が穿設してある。
この基盤1の挿通口に、長さ53cm及び外径1cmのステンレスパイプからなり一端を尖った尖端3に形成した細い棒状の電極保持体2が、尖端3を下にして直交方向に着脱可能に嵌挿して支持してある。
【0005】
電極保持体2には、その長さ方向に沿い基盤1の上に1個及び基盤1の下(尖端3側)に4個の作用電極4a、4bが順番に並べて取り付けてある。即ち、電極保持体2の外壁に穿設した開口に、白金製の作用電極4a、4bをゴムパッキンにより周囲を絶縁し且つ水が内部に漏れないように封止して、接着剤により固定してある。
これら各作用電極4a、4bの外表面は電極保持体2の外周に対して凹凸が無いようほぼ平坦に取り付けられ、内側にはそれぞれリード線が接続されている。
【0006】
なお、各作用電極4a、4bの大きさは外径8mmの円形であり、基盤1の下の底泥用の作用電極4aは基盤1の下面2cmから互いに5cmの間隔で設けてあり、従って最下端の作用電極4aは基盤1の下面から17cmの深さになっている。又、基盤1の上の水用の作用電極4bは基盤1の直上に設けてある。
基盤1の隅に設けた貫通口には、通常の比較電極5が着脱自在に嵌挿して支持されている。又、基盤1の中央の電極保持体2の周囲には、重量調節用の鉄製の重り6が基盤1の凹部に均等に3個載置され、全体の重量を12kgに調節している。
【0007】
各作用電極4a、4bと比較電極5により酸化還元電位を測定する計測部(図示せず)は、基盤1及び電極保持体2と別体に設けてあり、複数の作用電極4a、4bを同時に又は順次切り換えながら酸化還元電位の測定ができる機構を備えている。
作用電極4a、4bのリード線及び比較電極5のリード線はそれぞれのケーブル7に接続され、更にケーブル7は計測部に接続されている。
【0008】
以上の構成において、各作用電極4a、4bと基盤1に支持した比較電極5とで底泥の酸化還元電位を深さ毎に測定する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このような装置においては、以下の間題点がある。
酸化還元電位(ORP)を測定したい底泥表面を基盤で覆ってしまうことにより水中からの酸素供給を遮断してしまい測定地点の本来の酸化還元電位(ORP)を測定することが出来ない。
【0010】
嫌気状態による底泥酸化還元電位(ORP)の変化は、深さ方向にせいぜい5〜10cmであるので10mm以下の間隔で測定を行いたいが、実際の底泥の起伏はこれよりも大きく、底泥/水の界面がハッキリせず、どの位置を測定しているのか分からなかった。
【0011】
本発明の目的は、上記の課題を解決するもので、底泥/水の界面を検知することにより、測定位置(泥表面からの距離)を特定した酸化還元電位(ORP)の測定を行えることが出来る酸化還元電位測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このような課題を達成するために、本発明では、請求項1の酸化還元電位測定装置においては、
棒状の電極保持体の軸方向に所定間隔を置いて設けられた複数の作用電極を具備する酸化還元電位測定装置において、前記複数の作用電極を使用して界面を検知する界面検知用導電率測定回路を具備したことを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項2の酸化還元電位測定装置においては、請求項1記載の酸化還元電位測定装置において、
前記複数の作用電極の内の使用する電極を選択する電極切替回路を具備したことを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項3の酸化還元電位測定装置においては、請求項1又は請求項2記載の酸化還元電位測定装置において、
前記作用電極は前記電極保持体の周面にそれぞれ埋め込んで設けられたことを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項4の酸化還元電位測定装置においては、請求項1乃至請求項3の何れかに記載の酸化還元電位測定装置において、
前記作用電極は前記電極保持体の周面にリング状に設けられたことを特徴とする。
【0016】
本発明の請求項5の酸化還元電位測定装置においては、請求項1乃至請求項2の何れかに記載の酸化還元電位測定装置において、
前記作用電極は前記電極保持体の軸にそれぞれ直交して設けられたピン状電極であることを特徴とする。
【0017】
本発明の請求項6の酸化還元電位測定装置においては、請求項1乃至請求項5の何れかに記載の酸化還元電位測定装置において、
前記電極保持体は、底泥に一面が接するリング状の基盤に支持されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の請求項1によれば、次のような効果がある。
酸化還元電位(ORP)センサと界面を検出するための導電率センサの電極位置が同一であることから、底泥/水界面の位置特定が容易に、精度良く行え、底泥/水の界面を検知することにより測定位置(泥表面からの距離)を特定した酸化還元電位(ORP)の測定を行える酸化還元電位測定装置が得られる。
【0019】
本発明の請求項2によれば、次のような効果がある。
複数の作用電極の内の使用する電極を選択する電極切替回路が設けられたので、電極毎に測定回路を備える必要が無い、安価な酸化還元電位測定装置が得られる。
【0020】
本発明の請求項3によれば、次のような効果がある。
作用電極は電極保持体の周面にそれぞれ埋め込んで設けられたので、底泥への外乱が少なく、精度の高い酸化還元電位測定装置が得られる。
【0021】
本発明の請求項4によれば、次のような効果がある。
作用電極は電極保持体の周面にリング状に設けられたので、測定の精度が高く、且つ信頼性の高い酸化還元電位測定装置が得られる。
【0022】
本発明の請求項5によれば、次のような効果がある。
作用電極は電極保持体の軸にそれぞれ直交して設けられたピン状電極であるので、製作が容易で、安価な酸化還元電位測定装置が得られる。
【0023】
本発明の請求項6によれば、次のような効果がある。
電極保持体は、底泥に一面が接するリング状の基盤に支持されているので、電極保持体の周辺を基盤で覆うことないことから、電極周辺への酸素の供給に影響を与えない様にすることができ、精度が高い酸化還元電位測定装置が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下本発明を図面を用いて詳細に説明する。
図1は本発明の一実施例の要部構成説明図、図2は図1の要部電気回路ブロック図である。
【0025】
図1において、複数の作用電極11a,11b,11c……は、棒状の電極保持体12の軸方向に所定間隔を置いて設けられている。
電極保持体12は、この場合は、底泥に一面が接するリング状の基盤13に支持されている。比較電極14も基盤13に支持されている。
【0026】
図2に示す如く、電極切替回路21は、複数の作用電極11a,11b,11c……の内の使用する電極を選択する。
測定選択回路22は、酸化還元電位測定回路15と界面検知用導電率測定回路16とを切り替える。
【0027】
以上の構成において、酸化還元電位測定回路15により、各作用電極11a,11b,11c……と基盤13に支持された比較電極14とで底泥の酸化還元電位を深さ毎に測定する。
一方、界面検知用導電率測定回路16により、底泥の位置を検知する。
【0028】
即ち、本来、酸化還元電位(ORP)センサの作用電極11a,11b,11c……を導電率センサの測定電極としても機能させ、導電率測定による界面検知を実現している。
酸化還元電位(ORP)センサは、比較電極14と作用電極(金属)11a,11b,11c……の構成であり、導電率センサは、最低2つの測定電極(金属)11a,11b,11c……により構成されていることから、金属電極部は共用することが可能である。
【0029】
水中と底泥中では溶け込んでいる成分や濃度が異なるなどの理由で、異なる導電率を示す。従って、酸化還元電位(ORP)/導電率複合センサを水底に設置すると、作用(測定)電極11a,11b,11c……が底泥に達したところで導電率が大きく変化する。その位置を知ることにより界面位置を認識し、そこを基準として上下方向の酸化還元電位(ORP)を測定する。
なお、17は電極のケーブル,18は底泥である。
【0030】
この結果、
酸化還元電位(ORP)センサと界面を検出するための導電率センサの電極位置が同一であることから、底泥/水界面位置特定が容易に、精度良く行え、底泥/水の界面を検知することにより測定位置(泥表面からの距離)を特定した酸化還元電位(ORP)の測定を行える酸化還元電位測定装置が得られる。
【0031】
また、複数の作用電極11a,11b,11c……の内の使用する電極を選択する電極切替回路21が設けられたので、作用電極11a,11b,11c……毎に測定回路を備える必要が無く、安価な酸化還元電位測定装置が得られる。
【0032】
更に電極保持体12は、底泥に一面が接するリング状の基盤13に支持されているので、電極保持体12の周辺を基盤で覆うことないことから、作用電極11a,11b,11c……周辺への酸素の供給に影響を与えない様にすることができ、精度が高い酸化還元電位測定装置が得られる。
【0033】
図3は、本発明の他の実施例の要部構成説明図である。
本実施例においては、作用電極31a,31b,31c……は、電極保持体32の周面にそれぞれ埋め込んで設けられている。
【0034】
この結果、作用電極31a,31b,31c……は、電極保持体32の周面にそれぞれ埋め込んで設けられたので、底泥への外乱が少なく、精度の高い酸化還元電位測定装置が得られる。
【0035】
図4は、本発明の他の実施例の要部構成説明図である。
本実施例においては、作用電極41a,41b,41c……は、電極保持体32の周面にリング状に設けられている。
【0036】
この結果、作用電極41a,41b,41c……は、電極保持体42の周面にリング状に設けられたので、測定の精度が高く、且つ信頼性の高い酸化還元電位測定装置が得られる。
【0037】
図5は、本発明の他の実施例の要部構成説明図である。
本実施例においては、作用電極51a,51b,51c……は、電極保持体52の軸にそれぞれ直交して設けられたピン状電極である。
【0038】
この結果、作用電極51a,51b,51c……は、電極保持体52の軸にそれぞれ直交して設けられたピン状電極であるので、製作が容易で、安価な酸化還元電位測定装置が得られる。
【0039】
複数の作用(測定)電極で導電率/酸化還元電位(ORP)を測定する回路としては、図2に示すように測定回路の入力で測定する電極を切り替え、多点測定を実現する方法以外にも、実際に作用(測定)電極の数と同じだけ測定回路を用意しても良いことは勿論である。
【0040】
なお、以上の説明は、本発明の説明および例示を目的として特定の好適な実施例を示したに過ぎない。
したがって本発明は、上記実施例に限定されることなく、その本質から逸脱しない範囲で更に多くの変更、変形をも含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施例の要部構成説明図である。
【図2】図1の要部電気回路ブロック図である。
【図3】本発明の他の実施例の要部構成説明図である。
【図4】本発明の他の実施例の要部構成説明図である。
【図5】本発明の他の実施例の要部構成説明図である。
【図6】従来例の構成説明図である。
【符号の説明】
【0042】
11a 作用電極
11b 作用電極
11c 作用電極
11d 作用電極
12 電極保持体
13 基盤
14 比較電極
15 酸化還元電位測定回路
16 界面検知用導電率測定回路
17 ケーブル
18 底泥
21 電極切替回路
22 測定選択回路
31a 作用電極
31b 作用電極
31c 作用電極
31d 作用電極
32 電極保持体
41a 作用電極
41b 作用電極
41c 作用電極
41d 作用電極
42 電極保持体
51a 作用電極
51b 作用電極
51c 作用電極
51d 作用電極
52 電極保持体


【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状の電極保持体の軸方向に所定間隔を置いて設けられた複数の作用電極を具備する酸化還元電位測定装置において、
前記複数の作用電極を使用して界面を検知する界面検知用導電率測定回路
を具備したことを特徴とする酸化還元電位測定装置。
【請求項2】
前記複数の作用電極の内の使用する電極を選択する電極切替回路
を具備したことを特徴とする請求項1記載の酸化還元電位測定装置。
【請求項3】
前記作用電極は前記電極保持体の周面にそれぞれ埋め込んで設けられたこと
を特徴とする請求項1又は請求項2記載の酸化還元電位測定装置。
【請求項4】
前記作用電極は前記電極保持体の周面にリング状に設けられたこと
を特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の酸化還元電位測定装置。
【請求項5】
前記作用電極は前記電極保持体の軸にそれぞれ直交して設けられたピン状電極であること
を特徴とする請求項1乃至請求項2の何れかに記載の酸化還元電位測定装置。
【請求項6】
前記電極保持体は、底泥に一面が接するリング状の基盤に支持されていること
を特徴とする請求項1乃至請求項5の何れかに記載の酸化還元電位測定装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−113985(P2007−113985A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−303984(P2005−303984)
【出願日】平成17年10月19日(2005.10.19)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】