説明

酸化/還元反応用白金系触媒及びその用途

【課題】酸化/還元反応用白金系触媒及びその用途を提供する。
【解決手段】酸化/還元反応用白金系触媒及びその用途を開示する。この白金系触媒は、セリウム(Ce)、ジルコニウム(Zr)及びレニウム(Re)の中から選ばれた少なくとも1種の金属の水溶性塩を含む触媒組成物を、アルミナ、シリカ、チタニアの中から選ばれた少なくとも1種を含む担体に担持させることにより製造される。開示された触媒は、使用可能な水溶性白金塩の種類に如何なる特別な制限もなく簡単に製造することができ、そして、これを一酸化炭素の水性ガスシフト反応、三元触媒反応及び一酸化炭素の選択的酸化反応を含む様々な酸化反応、並びに窒素酸化物(NOx )除去反応のような還元反応に適用するときに、優れた触媒活性を示す。特に、開示された触媒は、従前の高温水性ガスシフト反応用触媒及び低温水性ガスシフト反応用触媒を適用し難い特定の温度範囲でさえも優れた性能を示す。更に、それは、高温においてさえもメタン生成により生じる水素の損失なしで一酸化炭素を除去することができ、従って、燃料電池用の高純度水素を製造する水素製造工程において特に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化/還元反応用白金系触媒及びその用途に関する。より特別には、本発明は、セリウム、ジルコニウム及びレニウムの中から選ばれた少なくとも1種の金属の水溶性塩、水溶性白金塩、アルキレンオキシド及び水を含む触媒組成物を担体に含浸させ、そして含浸された触媒組成物を乾燥し、そして焼成することにより製造され、そして酸化/還元反応に適用する場合に優れた触媒活性を示し得る、酸化/還元反応用白金系触媒及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
水性ガスシフト反応は、多くの化学プロセスにおける重要な反応段階である。特に、最近関心の高い燃料電池の原料として用いられる水素を製造するために、化石燃料、例えば炭化水素又はアルコールを改質する場合に、下記の反応式に示される如く、燃料電池(特に、高分子電解質型燃料電池)の電極触媒の性能を低下させるよう機能する一酸化炭素の量を減少させ得、そして同時に水素の生産量を高め得るように、改質ガス中に含有された一酸化炭素を水蒸気の存在下で二酸化炭素に転換することができる。

CO+H2 O⇔CO2 +H2 、ΔH=−41.1kJ/mol
【0003】
水性ガスシフト反応は、例えば石油化学産業など、大量の水素を必要とする大規模なプロセスにおいて広範囲に使用されており、そしてその触媒は良く知られている。この反応は中程度の発熱反応であり、そして一酸化炭素の量を所定濃度又はそれ未満に低下させるために、低温で行われることが必要である。一般的に、商業化されたプロセスにおいては、2種の水性ガスシフト反応器が使用される。
水素ガスシフト反応は、350℃〜450℃の高温において行われる高温水性ガスシフト反応と、190℃〜260℃の温度において行われる低温水性ガスシフト反応を含む[触媒ハンドブック(Catalyst Handbook)第二版]。
【0004】
高温水性ガスシフト反応において使用される鉄−クロム酸化物触媒は、操作中、触媒床の温度を高めるのが容易であるという利点を有するが、しかし、この触媒は、300℃(一般には、350℃)又はそれ未満において、低い活性を示す。低温水性ガスシフト反応において使用される銅−亜鉛−アルミナ触媒は、熱力学的平衡によって、190℃〜260℃の温度において、非常に低い濃度にまで一酸化炭素を処理することができるが、しかし、250℃より高い温度において容易に非活性化され、そして酸素に暴露されるときに自発的に酸化される傾向があり、従って、その交換においては特別な注意が要求される。この理由のために、250℃〜350℃の温度範囲において使用され得、高い活性を示し、そして酸素に暴露されてもその活性における激しい低下が示されない、水性ガスシフト反応触媒に対する要求が生じている。
【0005】
前記要求に関連して、例えば特開2004−000949号明細書(特許文献1)、米国特許第6,846,475号明細書(特許文献2)及び特開2004−284912号明細書(特許文献3)は、白金貴金属触媒が前記要求を満たすことを開示している。より最近では、主成分として白金を含み、そして補助活性触媒が担体、例えばセリア、ジルコニア、チタニアに担持された触媒が、水性ガスシフト反応のために特に有利であると報告されている[Journal of catalysis 225(2005)327−336(非特許文献1)、Catalysis Today 99(2005)257(非特許文献2)]。水性ガスシフト反応に対する白金系触媒用の触媒担体として、チタニ
ア、セリア及びジルコニアが優れていることは良く知られているけれども、これらの金属酸化物は高価であり、そしてこれらの金属酸化物に、触媒担体用に適する高い比表面積、細孔容積及び機械的強度を付与することは非常に困難である。従って、このような優れた性質を有する金属酸化物担体を製造するためには、莫大な費用が発生する。
【0006】
例えば特開2000−178007号明細書(特許文献4)、韓国特許出願公開第2004−0063130号明細書(特許文献5)及び米国特許第6,723,298号明細書(特許文献6)は、大きな比表面積、良好な細孔の発達及び高い機械的強度を有し、そして同時に安価な、アルミナのような金属酸化物担体に、セリウム又はジルコニウムを添加することにより、より経済的で且つ商業的に有用な方法で触媒を製造する方法を開示している。
【0007】
しかしながら、これらの先行技術は、セリウムなどの添加効果を高めるために白金前駆体を激しく制限するか(韓国特許出願公開第2004−0063130号明細書)(特許文献7)、又は、複雑な製造プロセスを使用するか、の何れかである。とりわけ、アルミナによりはセリアにより多く白金が担持されるようにするため、アルミナのような担体に過剰量のセリウムを担持させ、そしてその後、乾燥し、そして焼成して、アルミナ担体の表面にセリア(酸化セリウム)の層を形成する。その後、白金水溶液をセリア含有アルミナ担体に更に担持させ、そして乾燥し、そして焼成し、それにより、触媒を製造する[米国特許第6,723,298号明細書(特許文献8)及び米国特許出願公開第2002/0061277A1号明細書)(特許文献9)。
【0008】
先行技術において、制限された前駆体及び多段階プロセスを使用するしかない理由は、強酸性であり且つハロゲンを含有する塩化白金酸(H2 PtCl6 ・xH2 O)のような白金前駆体が使用される場合、酸性の前駆体がアルミナの塩基サイトに優先的に吸着され、そして最終的に主にアルミナ表面に分布し、その結果、活性促進におけるセリウムの添加効果が不十分であるためである。加えて、塩素のようなハロゲンは、触媒活性における低下の原因になることが知られている。これら2つの理由により、セリウムの添加効果を十分に得るためには、セリウムに隣接する白金の量を増加させるために白金の含量を過度に増加させるか、又は、塩素のようなハロゲンが含まれていない白金前駆体を使用するか、の何れかである[韓国特許出願公開第2004−0063130号明細書(特許文献10)及び米国特許第6,846,475号明細書(特許文献11)]。
【0009】
一方、先行技術において使用されてきた酸素蓄積物質には、セリア、ジルコニア及びセリア複合体がある。排気ガス浄化用三元触媒は、約14.6付近の最も狭い空燃比範囲において、一酸化炭素(CO)、炭化水素、窒素酸化物(NOx )などの優れた転換率を示すが、しかし、前記範囲から外れた空燃比においては、かなり低下した転換率を示す。セリウムは、Ce(III)とCe(IV)の転換が容易であるので、燃料希薄領域において酸素を蓄積し、そして燃料過剰領域において酸素を放出するする能力が非常に優れている。
【0010】
従って、セリウムは、三元触媒と一緒に使用される場合に、空燃比の小さな変更により転換率が大きく低下するという問題を緩和させる重要な役割を果たすため、1990年代の初めから採用され、そして使用されてきた。しかしながら、排気ガス浄化用三元触媒が高温に晒される場合を回避することは困難であり、そしてこの場合、三元触媒において使用されたセリアは、細孔の融着又は結晶の焼結により比表面積が急速に減少し、結晶サイズが急速に増大し、そして酸素蓄積能力及び酸素の移動性が低下するという問題点を有している。即ち、セリアは、耐熱性が低いという問題点を有している。
【特許文献1】特開2004−000949号明細書
【特許文献2】米国特許第6,846,475号明細書
【特許文献3】特開2004−284912号明細書
【特許文献4】特開2000−178007号明細書
【特許文献5】韓国特許出願公開第2004−0063130号明細書
【特許文献6】米国特許第6,723,298号明細書
【特許文献7】韓国特許出願公開第2004−0063130号明細書
【特許文献8】米国特許第6,723,298号明細書
【特許文献9】米国特許出願公開第2002/0061277A1号明細書
【特許文献10】韓国特許出願公開第2004−0063130号明細書
【特許文献11】米国特許第6,846,475号明細書
【非特許文献1】Journal of catalysis 225(2005)327−336
【非特許文献2】Catalysis Today 99(2005)257
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、含浸及びコーティング溶液から製造され、セリウムなどの添加効果を十分に得ることができ、そしてハロゲン含有白金前駆体を含む白金前駆体の種類を問わずに安定性を有する白金系触媒を提供することにある。従って、本発明は、簡便なプロセスにより製造され、改善された性能を有し、そして同時に、酸化/還元反応が行われる広範な分野に適用することが可能な白金系触媒を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一つの観点によれば、(i)セリウム(Ce)、ジルコニウム(Zr)及びレ
ニウム(Re)の中から選ばれた少なくとも1種の金属の水溶性塩、(ii)水溶性白金塩、(iii)炭素原子数2ないし10のアルキレンオキシド及び(iv)水を含む触媒組成物を、アルミナ、シリカ及びチタニアから選ばれた少なくとも1種を含む担体に含浸させ、そして含浸された触媒組成物を乾燥し、そして焼成することにより製造される、酸化/還元反応用白金系触媒が提供される。
前記金属の前記水溶性塩は好ましくは、硝酸セリウムである。
また、前記水溶性白金塩は、ハロゲン原子を含有するか又は含有しない化合物であってよい。本発明の一態様によれば、前記水溶性白金塩は塩化白金酸(H2 PtCl6 )である。
一方、前記アルキレンオキシドはプロピレンオキシド又はブチレンオキシドであってよい。
前記触媒組成物は、該触媒組成物中に存在する各カチオン種のモル数と該カチオン種の酸化数とを乗じることにより得られた合計値の0.5倍〜10倍に相当する量のアルキレンオキシドを含むのが好ましい。
一方、前記白金系触媒は、1質量%〜20質量%の金属、0.1質量%〜10質量%の白金及び70質量%〜98質量%の担体を含むのが好ましい。
前記触媒用の前記担体は、(i)粉末、(ii)球体、(iii)顆粒形状の押出成形品、又は(iv)ペレット化した材料であってよい。本発明の一実施態様によれば、前記触媒の前記担体は、メタルフォーム、セラミックフォーム及びハニカムよりなる群から選ばれたモノリス基材、金属プレート又は金属織物にコートされることにより製造することができる。 本発明の別の観点によれば、前記白金系触媒を、一酸化炭素の水性ガスシフト反応、三元触媒反応、一酸化炭素の選択的酸化反応及び硝酸酸化物除去反応よりなる群から選ばれた酸化又は還元反応に使用する方法が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るセリウム含有白金系触媒は、白金前駆体の使用において特別な制限がなく、そして簡単なプロセスによって製造され、それにより、それは、水性ガスシフト反応の
ような様々な酸化/還元反応に適用される場合に、高い活性を示す。
本発明に係る触媒の担体は、その形状に制限がなく、そして粉末、球形、顆粒形状の押出成形品又はペレット化した材料のような様々な材料であってよい。或いは、前記担体は、メタルフォーム、セラミックフォーム又はハニカムのようなモノリス基材、金属プレート又は金属織物に担体成分をコートすることにより製造することができる。また、本発明の触媒は、触媒金属を微粉末に粉砕し、該触媒金属を含むスラリーを造り、そしてその後、該スラリーを、前記モノリス基材、金属プレート又は金属織物に直接コートすることにより製造することができる。
本発明の触媒は、水性ガスシフト反応に適用される場合には、既存の商業用触媒を適用することが困難な250℃〜350℃の温度範囲において特に有効な性能を示すけれども、その応用分野は水性ガスシフト反応にのみ限定されるものではなく、そして本発明の触媒は、三元触媒反応、一酸化炭素の選択的酸化反応及び窒素酸化物(NOx )除去反応を含む、セリウム(又はセリア)の酸素蓄積能力により白金触媒活性の増大が報告されている様々な分野に適用することができる。従って、本発明の触媒は、高い産業的価値を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
上述したように、本発明は、セリウムを使用することにより触媒活性を増大させ、白金前駆体の種類を問わず高活性を維持し、そして、簡便且つ経済的なプロセスによって製造される、水性ガスシフト反応を含む酸化/還元反応用の白金系触媒を提供する。本発明の白金系触媒は、水性ガスシフト反応に対する適用のみに限定されず、そして、三元触媒反応、一酸化炭素の選択的酸化反応及び窒素酸化物(NOx )除去反応を含む、セリウムの酸素蓄積能力によって白金触媒活性が増進すると報告されている分野に適用することができる。
本発明において使用される担体は、単独の金属酸化物、例えばアルミナ、シリカ又はチタニア、或いは、前記金属酸化物の中から選ばれた少なくとも1種を主成分として含む複合酸化物、の何れかを含み得る。前記担体は好ましくは、白金系触媒の質量に基づいて、70質量%〜98質量%の量使用されることが好ましい。
【0015】
前記担体としては、高い細孔容積を持つものが好ましく、そして高い空間速度を有する反応において使用するのに特に適する。前記担体の細孔容積は0.2cc/gより大きく、そして好ましくは0.4cc/gより大きい。前記担体は、例えば球体、モノリス、押出成形品又はペレット化した材料であってよく、それは好ましくは、寸法が約0.1μm〜100μmの多数のマクロ孔を有する成形体である。
また、担体は、前記担体の形成のみに限定されるものではなく、そして例えば、顆粒形状に製造され得、或いは、メタルフォーム、メタルメッシュ、セラミックフォーム、ハニカムのようなモノリス基材、金属プレート基材又は金属織物に担体成分をコートすることにより形成することができる。
一方、本発明の触媒は、粉末状又は顆粒状の触媒金属を微粉砕し、微粉末に脱イオン水又は有機溶剤などを添加してスラリーを造り、そしてその後、該スラリーを、モノリス基材、例えばメタルフォーム、メタルメッシュ、セラミックフォーム又はハニカム、金属プレート基材又は金属織物にコートすることにより製造してもよい。
【0016】
本発明の触媒には、活性成分として少なくとも白金が担持されるが、しかし、白金のような金属の担持方法は、本発明において限定されない。金属の担持方法の例は、担体の吸収能により与えられた濃度において金属触媒前駆体の水溶液を製造し、そして担体の細孔に該水溶液を吸収させることからなる初期湿式含浸法;過剰量の脱イオン水に溶解した金属触媒前駆体の水溶液に担体を浸漬し、そしてその後、真空下で約60℃〜80℃の温度において、前駆体を含む溶液をゆっくり乾燥させることからなる真空蒸発法;並びに、金
属触媒前駆体の水溶液を担体に噴霧する噴霧法を含み得る。
本発明の最も重要な特徴の一つは、使用可能な白金前駆体に対する特別な制限が無いことである。
とりわけ、本発明において、ハロゲン原子を含有する白金前駆体化合物(即ち、水溶性白金塩)、例えば塩化白金酸(H2 PtCl6 )、又は、ハロゲン原子を含有しない化合物、例えば硝酸白金及びアミン類、例えばジニトロテトラミン(Pt(NH3 4 (NO3 2 )を使用することが可能である。特に、本発明は、ハロゲン原子を含有する塩化白金酸を制限なく使用することができるという最も大きな利点を有する。
【0017】
本発明の触媒の低温における活性は、前記水溶性白金塩の担持量の増加と共に増加する傾向がある。例えば、乾燥と焼成を済ませて得られた触媒における白金含量は0.1質量%〜10質量%であり得る。通常、白金含量は0.5質量%〜5質量%であり得る。白金の担持量が少な過ぎる場合には、白金の効果が十分発揮されず、そして逆に白金の担持量が多過ぎる場合には、担持量の増加による性能の向上が示されない。
また、本発明の白金系触媒は好ましくは、触媒活性を増大させるために、白金に加えて、セリウム(Ce)、ジルコニウム(Zr)及びレニウム(Re)の中から選ばれた少なくとも1種の金属又はその酸化物を含有する。
前記金属前駆体、即ち水溶性塩の例としては、硝酸塩、好ましくは硝酸セリウム[Ce(NO3 3 ・6H2 O]を挙げることができ、そして前記金属の担持量は、白金系触媒の質量に基づいて1質量%〜20質量%であり得るが、しかし、3質量%〜15質量%であることが経済効率の点で好ましい。
上述した水溶性白金塩及びその他の水溶性金属塩の担持手順に関しては、塩類を順次担持する方法、並びに、白金及びセリウムを同時に担持する方法、が特別な制限なく使用され得るが、しかし、前記金属塩を同時に担持するのが好ましい。
【0018】
本発明により、水溶性白金塩の種類を問わず高活性を有する触媒を得ることを可能にするために、炭素原子数2ないし10のアルキレンオキシド及び上述した水溶性白金塩及び水溶性金属塩を水に添加し、そして一緒に混合して触媒組成物を得る。好ましくは、前記アルキレンオキシドはプロピレンオキシド又はブチレンオキシドである。
この際に、前記アルキレンオキシドの化学量論的に必要とされる量(モル数)は、前記触媒組成物中に存在するそれぞれのカチオン種のモル数とカチオン種の酸化数とを掛け合わせることにより得られた合計値に等しい。しかしながら、過剰量の前記アルキレンオキシドが使用される場合には、短時間で十分な効果を示すことができる。使用されるアルキレンオキシドの量は、好ましくは、上述した化学量論的に必要とされる量の0.5倍〜10倍であり、そしてより好ましくは化学量論的に必要とされる量の1倍〜5倍である。
前記アルキレンオキシドは、水溶液のpHを漸次上昇させて水酸化白金及び水酸化セリウムのような金属水酸化物を形成させるか、又は、これらの水酸化物を脱水して、白金−酸素−セリウム(又はジルコニウム又はレニウム)の結合を有するコロイド相を形成するか、の何れかの効果を有する。従って、前記触媒組成物をアルミナ担体に担持させ、そして乾燥プロセス及び焼成プロセスを行った後、白金を、アルミナ担体よりはセリアと強く結合させることにより、セリウムなどの添加による生じる触媒活性を極大化することができる。加えて、例えば、アルキレンオキシドとしてプロピレンオキシドが使用される場合には、1−クロロ−2−プロパノール[CH3 CH(OH)CH2 Cl]のような副産物を形成させ、そしてその後、触媒を製造することからなる次のプロセスにおいて揮発されることにより得られる触媒中に残留するハロゲンの量を減少させる好ましい効果がある。
前記触媒組成物は、上述したような通常の公知の方法によって担体に含浸させ、そしてその後、乾燥し、そして焼成して、本発明の触媒を得る。担持の後、前記触媒組成物を、好ましくは約110℃で乾燥させ、そしてその後、350℃〜500℃で焼成し得るが、しかし、本発明は、特にこれに限定されるのではない。
このように得られた触媒は、そのまま使用してもよいが、しかし、白金が還元された金
属に活性化された後に使用してもよい。還元反応は、ヒドラジンのような還元剤を使用する湿式還元法又は水素ガスを使用する気相還元法の何れかの方法を使用して行い得る。
【0019】
上述した本発明の白金系触媒は、一酸化炭素の水性ガスシフト反応、三元触媒反応、一酸化炭素の選択的酸化反応のような酸化反応及び窒素酸化物除去反応のような還元反応において、効果的に適用することができる。
また、本発明の白金系触媒は、使用可能な水溶性白金塩の種類に対する何らの制限も無く簡単に製造することが可能であり、そして一酸化炭素の水性ガスシフト反応、三元触媒反応、窒素酸化物(NOx )除去反応及び一酸化炭素の選択的酸化反応を含む様々な酸化/還元反応に適用される場合には、優れた触媒活性を示す。それは特に、水性ガスシフト反応において有用であり、炭化水素の改質反応の後、主成分として水素を含み且つ一酸化炭素及び水を含む改質ガスから一酸化炭素を効率よく除去するために使用することができる。
とりわけ、本発明の触媒は、水性ガスシフト反応において、既存の高温水性ガスシフト反応用触媒及び低温水性ガスシフト反応用触媒を適用することが困難な250℃〜350℃の温度において、特に良好な性能を示す。また、それは、高温においてさえもメタン化により生じる水素の損失無く一酸化炭素を除去することができ、従って、燃料電池用の高純度水素を製造する水素製造プロセスにおいて特に有用である。
【実施例】
【0020】
以下、実施例によって本発明を更に具体的に説明するが、しかし、本発明の範疇はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1
塩化白金酸5.7×10-4モル及び硝酸セリウム6.27×10-3モルを脱イオン水80ccに完全に溶解した。プロピレンオキシドを前記溶液に添加し、その後、少なくとも2時間撹拌した。この際、硝酸セリウムとプロピレンオキシドとのモル比を1:10とした。形成された黄色味がかったコロイド相溶液を、触媒担体に含浸させた。触媒担体としてはα−アルミナ(比表面積:100m2 /g及び細孔容積:0.49cc/g)を使用し、そして真空蒸発法を使用して担持した。過剰の水分を除くために、触媒担持溶液を65℃〜70℃で2時間維持した。製造された触媒を110℃で12時間乾燥して、細孔中に存在する水分を完全に除去し、そして350℃で3時間焼成した。プロピレンオキシドは、乾燥プロセス及び焼成プロセス中に完全に揮発し、そして得られた触媒には残留しなかった。白金、セリウム及びアルミナの間の質量比は1:8:91であった。
製造された触媒のシフト反応活性を試験した。触媒活性を試験するために、一酸化炭素10%、二酸化炭素12%及び水素78%からなる混合ガスを、窒素を用いて、体積比1:1にて希釈し、そして反応ガスとして使用した。更に供給した水の量を全反応ガスの25%とし、そして、一酸化炭素と水とのモル比を6.6とした。前記触媒を、比率1:3の水素及び窒素からなる混合気体を使用して、400℃で4時間触媒を還元した後、還元された触媒を使用して触媒活性を下記条件:ガス−時間当たりの空間速度5000/時間、反応圧力1気圧及び反応温度200℃〜400℃、の下で試験した。試験結果を図1に示す。
【0021】
実施例2
ジニトロテトラアミン白金5.7×10-4モル及び硝酸セリウム6.27×10-3モルを脱イオン水80ccに完全に溶解した。その後、触媒含浸、乾燥及び焼成を実施例1と同一条件下で行って触媒を製造した。製造された触媒における白金、セリウム及びアルミナの間の質量比は1:8:91であった。
製造された触媒の活性を、実施例1と同一方法により試験した。試験結果を図2に示す。
【0022】
比較例1
塩化白金酸5.18×10-4モルを脱イオン水8ccに完全に溶解して、白金水溶液を製造した。製造された水溶液をアルミナ担体に含浸させ、そして、触媒担持プロセス、乾燥プロセス及び焼成プロセスを実施例1と同一の条件下で行い、こうして、白金:アルミナの間の質量比1:99を有する触媒を製造した。
製造された触媒の活性を、実施例1と同一方法により試験した。評価結果を図1に示す。
【0023】
比較例2
硝酸セリウム6.2×10-3モルを脱イオン水80ccに完全に溶解し、その後、真空蒸発法を使用してアルミナ担体に含浸させた。セリウムが担持されたアルミナを、水分を完全に除去するために、110℃で12時間乾燥した。その後、乾燥したアルミナを、電気炉内で、空気雰囲気、400℃で4時間焼成して、含浸されたセリウムをセリア(セリウム化合物)に転換した。
こうして製造されたセリア−アルミナ複合担体に白金を含浸させた。塩化白金酸5.18×10-4モルを脱イオン水80ccに完全に溶解して白金水溶液を製造した。触媒担持プロセス、乾燥プロセス及び焼成プロセスを、実施例1と同一条件下で行った。白金、セリウム及びアルミナの間の質量比は1:8:91であった。
製造された触媒の活性を、実施例1と同一方法により試験した。評価結果を図1に示す。
【0024】
比較例3
白金:セリウム:アルミナの質量比1:8:91を有する白金触媒を、実施例2において製造されたセリア−アルミナ複合担体及び白金前駆体としてニジトロテトラアミン白金を用いて、比較例2と同一方法により製造した。
製造された触媒の活性評価を、実施例1と同一方法により試験した。結果を図2に示す。
【0025】
図1及び図2に示される一酸化炭素転換率は、下記のように定義される。
一酸化炭素転換率(%)=(反応器出口における一酸化炭素のモル数/反応器に導入される一酸化炭素のモル数)×100
メタン選択度は、下記のように定義される。
メタン選択度(%)=(生成したメタンのモル数/反応したメタンのモル数)×100
上記実施例及び比較例によって製造された触媒の活性試験の結果を図1及び図2に示す。図1及び図2に示されるように、白金のみを含浸した比較例1の触媒に比べて、セリウムを含む全ての触媒は、触媒活性が大きく増大した。しかしながら、従来の方法(米国特許第6,723,298号明細書、米国特許出願公開第2002/0061277A1号明細書、米国特許第6,846,475号明細書)と類似する比較例2及び3において製造された触媒は、実施例1及び実施例2において製造された触媒とは活性が大きく異なる。実施例1において製造された触媒は、塩化白金酸(H2 PtCl6 ・xH2 O)が白金の前駆体として使用されたにも係わらず、従来技術と類似する比較例2において製造された触媒の活性よりも著しく高い活性を示した。従って、別に複雑な操作を必要とされること無くプロピレンオキシドを添加することにより、白金の前駆体として塩化白金酸を使用する場合に従来技術において生じる問題が改善され、そして本発明が、改善された従来技術(米国特許第6,723,298号明細書、米国特許出願公開第2002/0061277A1号明細書、米国特許第6,846,475号明細書、韓国特許出願公開第2004−0063130号明細書)よりも優れた性能を有する触媒を簡単に製造することができるという点において、従来技術と明確に区別され得ることが判った。実施例1において、白金前駆体としての塩化白金酸は、ニトロジアミン白金(Pt(NH3 2 (NO2 2 )、テトラミン水酸化白金(Pt(NH3 4 (OH2 )、ジニトロテトラミン白金(
Pt(NH3 4 (NO3 2 )などにより代替され得るが、しかしこの場合には、触媒活性の増大効果は、白金前駆体として塩化白金酸を使用する場合よりも大きくなかった。
【0026】
実施例2において製造された触媒の場合には、得られた触媒のセリウム含量が1質量%〜20質量%の場合に触媒活性における増大を示したが、しかし、最適な触媒活性を示すセリウムの含量は3質量%〜15質量%であった。セリウムの含量が20質量%を超える場合には、却って触媒活性の減少が観察され、そしてこれは、過剰量のセリウムが触媒製造プロセスの間に触媒の細孔内に厚いセリア(酸化セリウム)層を形成することにより、細孔構造を劣化させるのが原因であった。韓国特許出願公開第2004−0063130号明細書には、実施例2と類似の方法について簡単に言及されているが、しかし、具体例は提示されておらず、また白金前駆体をジニトロジアミン白金(Pt(NH3 2 (NO2 2 及びジヒドロキシテトラミン白金(Pt(NH3 4 (OH)2 )に限定しており、従って、白金前駆体としてジニトロテトラミン白金(Pt(NH3 4 (NO3 2 )を用いた実施例2とは歴然たる差があった。
実施例1及び実施例2において製造された触媒は、非常に低いメタン化を示したので、それらはまた、水素の効率的な使用という側面でも有利であった。典型的な例として、実施例1による白金系触媒は、実施例1の性能試験価条件下において、350℃までメタンの生成が観察されず、そして400℃の反応温度においてさえも、約12%の非常に低いメタン選択度を示した。
【0027】
上述したように、本発明は、従来技術において提案された触媒に比べて非常に良好な性能を有する白金系触媒が、使用される白金前駆体の種類を問わずに、簡単な製造プロセスによって製造されるという利点を有する。このような触媒は、成形材料例えば粉末形状又は球形状を有するもの、顆粒、押出成形品或いはペレット化した材料、モノリス基材例えばメタルフォーム、セラミックフォーム、ハニカム、金属プレート又は金属織物にコートした後にて使用することができ、そして、水性ガスシフト反応に主に適用することができる。しかしながら、この触媒は、水性ガスシフト反応における適用のみに限定されず、そして、三元触媒反応、一酸化炭素の選択的酸化反応及び窒素酸化物(NOx )除去反応を含む、セリウムの酸素蓄積能力による生じる白金触媒における活性の増大が報告されている様々な分野において使用することができる。
以上、本発明を具体的な実施態様によって詳細に説明したけれども、これらの実施態様が本発明を具体的に説明する目的のためのみのものであり、本発明に係る酸化/還元反応用白金系触媒がこれに限定されず、そして本発明の技術的思想内でその変形又は改良が可能であることは、当業者には明らかである。
本発明の単純な変形又は変更は何れも本発明の範疇に属するものであり、そして、本発明の具体的な範囲は特許請求の範囲によって定義されているものである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、塩化白金酸を前駆体として使用して製造された白金触媒にセリウムを添加する方法を変更した結果としての、水性ガスシフト反応の活性変化のグラフを示す図である。
【図2】図2は、ジニトロテトラアミン白金を前駆体として使用して製造された白金触媒にセリウムを添加する方法を変更した結果としての、水性ガスシフト反応の活性変化のグラフを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)セリウム(Ce)、ジルコニウム(Zr)及びレニウム(Re)の中から選ばれた少なくとも1種の金属の水溶性塩、(ii)水溶性白金塩、(iii)炭素原子数2ないし10のアルキレンオキシド及び(iv)水を含む触媒組成物を、アルミナ、シリカ及びチタニアから選ばれた少なくとも1種を含む担体に含浸させ、そして含浸された触媒組成物を乾燥し、そして焼成することにより製造される、酸化/還元反応用白金系触媒。
【請求項2】
前記金属の前記水溶性塩が硝酸セリウムであり得る、請求項1に記載の白金系触媒。
【請求項3】
前記水溶性白金塩が、ハロゲン原子を含有するか又は含有しない化合物である、請求項1に記載の白金系触媒。
【請求項4】
前記水溶性白金塩が塩化白金酸(H2 PtCl6 )である、請求項1に記載の白金系触媒。
【請求項5】
前記アルキレンオキシドがプロピレンオキシド又はブチレンオキシドであり得る、請求項1に記載の白金系触媒。
【請求項6】
前記触媒組成物が、該触媒組成物中に存在する各カチオン種のモル数と該カチオン種の酸化数とを乗じることにより得られた合計値の0.5倍〜10倍に相当する量のアルキレンオキシドを含む、請求項1に記載の白金系触媒。
【請求項7】
前記白金系触媒が1質量%〜20質量%の金属、0.1質量%〜10質量%の白金及び70質量%〜98質量%の担体を含む、請求項1に記載の白金系触媒。
【請求項8】
前記触媒用の前記担体が、(i)粉末、(ii)球体、(iii)顆粒形状の押出品、又は(iv)ペレット化した材料である、請求項1に記載の白金系触媒。
【請求項9】
前記触媒用の前記担体が、メタルフォーム、セラミックフォーム及びハニカムよりなる群から選ばれたモノリス基材、金属プレート又は金属織物にコートされ得る、請求項1に記載の白金系触媒。
【請求項10】
前記触媒が、該触媒を粉砕し、粉砕された触媒を使用してスラリーを調製し、そしてメタルフォーム、セラミックフォーム及びハニカムよりなる群から選ばれたモノリス基材、金属プレート又は金属織物にコートすることにより製造される、請求項1に記載の白金系触媒。
【請求項11】
請求項1ないし10の何れか1項に記載の白金系触媒を、一酸化炭素の水性ガスシフト反応、三元触媒反応、一酸化炭素の選択的酸化反応及び窒素酸化物除去反応よりなる群から選ばれた酸化反応又は還元反応に使用する方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−520599(P2009−520599A)
【公表日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−547090(P2008−547090)
【出願日】平成18年11月29日(2006.11.29)
【国際出願番号】PCT/KR2006/005100
【国際公開番号】WO2007/073044
【国際公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(507268341)エスケー エナジー 株式会社 (57)
【氏名又は名称原語表記】SK ENERGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】99, Seorin−dong, Jongro−gu, Seoul, 110−110 Republic of Korea
【Fターム(参考)】