説明

酸味・酸臭がマスキングされた低pH食品

【課題】 食味、食感や、保存性に影響を与えることなく、酸味・酸臭がマスキングされた低pH食品、及び該低pH食品の製造方法を提供すること。
【解決手段】 例えば、(1)カテキン類を食品素材に配合する方法、(2)カテキン類の溶液に食品を浸漬する方法、(3)カテキン類の溶液を食品にまぶす方法等の方法により、低pH食品にカテキン類を0.03〜1000ppm含有させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸味・酸臭がマスキングされた低pH食品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品の保存性を確保するための主流な方法の一つとして、食品のpHを下げる方法がある。この場合、乳酸、クエン酸、酢酸等の有機酸を含有する水溶液に食品を浸漬するか、あるいはこれらの有機酸を食品素材に添加混合することになるため、食品に酸味・酸臭が生じてしまう。
【0003】
このような低pH食品に生じる酸味をマスキングする方法として、高甘味度甘味料を使用する方法が提案されている(例えば特許文献1〜3参照)。
【0004】
しかし、高甘味度甘味料を使用すると、高甘味度甘味料に由来する独特のクセのある甘味が生じてしまうという問題があった。
【0005】
また、従来より、食品の風味付けやカテキン類の摂取等を目的として、茶葉や茶葉抽出物等のカテキン類を、パン類や麺類等の食品に配合することが行われている(例えば特許文献4〜7参照)が、低pH食品にカテキン類を配合するものではない。
【0006】
【特許文献1】特開平10−215793号公報
【特許文献2】特開平10−229847号公報
【特許文献3】特開平10−243776号公報
【特許文献4】特開2003−299440号公報
【特許文献5】特開2003−33155号公報
【特許文献6】特開2003−81825号公報
【特許文献7】特開平11−113519号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、食味、食感や、保存性に影響を与えることなく、酸味・酸臭がマスキングされた低pH食品、及び該低pH食品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を行った結果、低pH食品にカテキン類を含有させることにより、低pH食品の酸味・酸臭がマスキングされることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、カテキン類を0.03〜1000ppm含有することを特徴とする酸味・酸臭がマスキングされた低pH食品を提供するものである。
【0010】
また、本発明は、上記の低pH食品の好ましい製造方法として、(1)カテキン類を食品素材に配合する方法、(2)カテキン類の溶液に食品を浸漬する方法及び(3)カテキン類の溶液を食品にまぶす方法から選ばれる1以上の方法により、低pH食品にカテキン類を0.03〜1000ppm含有させることを特徴とする酸味・酸臭がマスキングされた低pH食品の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、低pH食品の食味、食感や、保存性に影響を与えることなく、低pH食品の酸味・酸臭をマスキングすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の低pH食品について、好ましい実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0013】
本発明の低pH食品は、保存性を確保するために、有機酸を含有させて食品のpHを低下させた食品で、主に、電子レンジで加熱する、炒める等の加熱調理をして喫食するように加工された、常温で流通される食品である。その代表例としては、でんぷん質食品、特に、茹でスパゲティ、茹でうどん、茹でそば等の茹で麺、蒸し麺、蒸しパン、中華まん、餃子や春巻とその皮、その他のパスタ類、お好み焼き、たこ焼き等が挙げられる。本発明の低pH食品は、その他、保存性を確保するために、有機酸を含有させて食品のpHを低下させた食品であれば、でんぷん質食品に制限されない。尚、本発明の低pH食品のpHは、従来の低pH食品と同様に、充分な保存性を確保する上で3.0〜5.5が好ましい。
【0014】
上記有機酸としては、乳酸、クエン酸、酢酸、グルコン酸(グルコノデルタラクトンを含む)、アジピン酸、酒石酸、フマル酸、リンゴ酸等が挙げられる。本発明の低pH食品において、上記有機酸の含有量は、好ましくは食品のpHが3.0〜5.5となるように、使用する有機酸の種類及び食品の緩衝力に応じて適宜調整すればよい。
【0015】
本発明の低pH食品は、上記有機酸に由来する酸味・酸臭をマスキングするために、カテキン類を含有する。
該カテキン類としては、制限されるものでなく、カテキン、ガロカテキン、それらのエピ体(エピカテキン、エピガロカテキン)、及びそれらの3−ガロイル誘導体(カテキンガレート、エピカテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート)の他、アフゼレキン等が挙げられ、これらのカテキン類としては、茶葉抽出物及びその濃縮物等を使用しても良く、化学合成品を使用しても良い。
【0016】
本発明の低pH食品における上記カテキン類の含有量は、0.03〜1000ppmである。カテキン類の含有量が0.03ppmより少ないと、マスキング効果が不十分であり、またカテキン類の含有量が1000ppmより多いと、カテキン類の味が感じられて食品の食味が悪くなる。
【0017】
本発明において、上記カテキン類を含有させる低pH食品自体は、従来の低pH食品の製造方法に準じて製造することができる。また、上記カテキン類は、任意の方法、例えば、(1)カテキン類を加工前又は加工中の食品素材に配合する方法、(2)カテキン類の溶液に食品を浸漬する方法及び(3)カテキン類の溶液を食品にまぶす方法から選ばれる1以上の方法により、低pH食品に含有させることができる。
【0018】
以下に、低pH食品としてでんぷん質食品である茹で麺を例にその好ましい製造方法について説明する。
【0019】
常法により、麺を製造し、麺を茹でた後、得られた茹で麺を有機酸水溶液に浸漬し、低pH茹で麺を得る。この低pH茹で麺をカテキン類の溶液に浸漬する。この方法によれば、一本一本の麺にカテキン類を簡便に均一に含有させることができる。尚、上記有機酸水溶液にカテキン類を含有させた水溶液を用いることにより、有機酸水溶液への浸漬とカテキン類の溶液への浸漬とを同時に行ってもよい。
【0020】
上記カテキン類の溶液への茹で麺の浸漬時間は、該溶液のカテキン類濃度及び溶媒の種類、浸漬温度や茹で歩留り等によって調整可能であり、好ましくは10秒〜3分であり、例えば、浸漬温度が40℃の場合は40秒程度とすると良い。浸漬時間が3分より長いと、麺がふやけてしまう場合があり、また浸漬時間が10秒より短いと、充分な保存性及びマスキング効果を得られない場合がある。
【0021】
カテキン類の溶液に食品を浸漬する方法により、カテキン類を低pH食品に含有させる場合、低pH食品100質量部に対して、カテキン類の溶液を200〜3000質量部程度用いるのが好ましく、より好ましくはカテキン類の溶液を300〜2000質量部程度用いる。また、この場合、該カテキン類の溶液の濃度は、0.00001〜15質量%であることが好ましく、0.00003〜10質量%であることがより好ましい。
また、カテキン類の溶液を食品にまぶす方法により、カテキン類を低pH食品に含有させる場合、低pH食品100質量部に対して、カテキン類の溶液を2質量部まぶすとすると、カテキン類の溶液の濃度は1.5ppm〜50000ppmである。
さらに、上記カテキン類の溶液の溶媒としては、水、エタノール、液状油(ナタネ油、大豆油、コーン油、米油等)等が挙げられ、低pH食品の種類等に応じて適宜選択することができる。
【実施例】
【0022】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例等によって何ら制限を受けるものではない。
【0023】
〔実施例1〜3及び比較例1〕
乾スパゲティを茹で、歩留り230%の茹でスパゲティを得た。得られた茹でスパゲティを有機酸(発酵乳酸及びグルコン酸)水溶液に1分間浸漬し、低pHスパゲティを得た。
この低pHスパゲティ200gに、カテキン含有液状油をまぶし、表1に示すカテキン含有量の低pHスパゲティを得た。これらの低pHスパゲティについて、酸味・酸臭の有無の程度を下記の評価基準に従って評価した。その評価結果(10名のパネラーの平均評価点)を表1に示す。
【0024】
(酸味・酸臭の評価基準)
5:酸味・酸臭を全く感じない。
4:酸味・酸臭をほとんど感じない。
3:酸味・酸臭をやや感じる。
2:酸味・酸臭を感じる。
1:酸味・酸臭を強く感じる。
【0025】
【表1】

【0026】
〔実施例4及び比較例2〕
カテキンをスパゲティ原料に配合して、表2に示すカテキン含有量の乾スパゲティを製造した。この乾スパゲティを茹で、歩留り230%の茹でスパゲティを得た。得られた茹でスパゲティを有機酸(発酵乳酸及びグルコン酸)水溶液に1分間浸漬し、カテキンを含有する低pHスパゲティを得た。これらの低pHスパゲティについて、酸味・酸臭の有無の程度を実施例1の場合と同様に評価した。その評価結果を表2に示す。
【0027】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテキン類を0.03〜1000ppm含有することを特徴とする酸味・酸臭がマスキングされた低pH食品。
【請求項2】
食品が茹で麺である請求項1記載の低pH食品。
【請求項3】
(1)カテキン類を食品素材に配合する方法、(2)カテキン類の溶液に食品を浸漬する方法及び(3)カテキン類の溶液を食品にまぶす方法から選ばれる1以上の方法により、低pH食品にカテキン類を0.03〜1000ppm含有させることを特徴とする酸味・酸臭がマスキングされた低pH食品の製造方法。

【公開番号】特開2007−20525(P2007−20525A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−210611(P2005−210611)
【出願日】平成17年7月20日(2005.7.20)
【出願人】(398012306)日清フーズ株式会社 (139)
【Fターム(参考)】