説明

酸性プロテアーゼ酵素と酸性緩衝剤の組合せおよびその使用

【課題】皮膚症状、疾患または障害の治療に有用な組成物の提供。
【解決手段】少なくとも1つの酸性プロテアーゼ酵素と酸性緩衝剤を含むことを特徴とする組成物であり、酸性緩衝剤は酸と薬剤または化粧品として許容される担体を含むものである組成物。酸性プロテアーゼは、真菌プロテアーゼ、細菌プロテアーゼ、又は哺乳動物プロテアーゼから選択され、具体的には、ペプシン、カテプシン、リゾプスペプシン、ペンシロペプシン、及びエンドチアペプシンより選択される。酸性緩衝剤としては、リン酸、ピロリン酸、重硫酸ナトリウム、及び重硫酸カリウム等より選択される無機酸を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.発明の分野
本発明は、少なくとも1つの酸性プロテアーゼ酵素と酸性緩衝剤(この酸性緩衝剤は、酸と、薬剤または化粧品として許容される担体を含む)を含むことを特徴とする新規な組成物に関するものであり、そしてこの組成物は、異常な皮膚症状、疾患または障害の治療または予防、および/または皮膚のきめまたは外見の改善、および/または表皮剥離の増強、および/または表皮細胞の再生の増強のために有用である。本発明はまた、異常な皮膚症状、疾患または障害の治療または予防、および/または皮膚のきめまたは外見の改善、および/または表皮剥離の増強、および/または表皮細胞の再生の増強のための組成物の使用法に関する。
【背景技術】
【0002】
2.発明の背景
ヒトの皮膚の表皮層の剥離は、表皮細胞再生の速度の上昇を誘導することは充分な根拠により示されている(E. Philips, 1995, 米国特許第5,431,913号;W.P. Smith, 1994, Cosmetics and Toiletries 109:41-8)。ヒト表皮は、一定の再生状態にある層状の扁平上皮細胞の複数の層からなる。新しい細胞は、表皮の最も内部の膜である基底層で最初に形成される。これらの細胞は、さらに新しい細胞の産生により取って代わられ、次に表皮の外部層の角質層に輸送されて、そこで通常2〜3週間毎に剥が(剥離)される。ヒトの皮膚の一般的健康状態および外見は、このプロセスの速度に大きく依存する。
【0003】
加齢または環境への曝露のような、ある種の状況または条件は、この正常なプロセスを妨げ、そして細胞再生の速度の全般的な低下をもたらすことがある(VanScottとYu, 1984, J. Am. Acad. Dermatol. 11:867-79)。細胞の層が基底層から角質層に移動するのに要する時間が患者の年齢と共に増大するため、表皮細胞の再生の速度は低下する。典型的な20歳のヒトでは、表皮の外層の細胞は平均して2週間毎にターンオーバーするのに対して、もっと成熟した皮膚の細胞ターンオーバー間隔は2倍ほど長いこともあることが報告されている(E. Phillips, 1985, 米国特許第5,431,913号)。加齢による細胞再生速度の低下は、太陽光線および他の気候条件への曝露のような環境条件により増悪しうる(K.E. Burke, 1990, Postgraduate Medicine 88(1):207-27)。細胞再生速度の低下は、皮膚の外層の細胞が環境条件に曝露される時間を増大させ、そして損傷の助長および/または蓄積をもたらしうる。いくつかの研究は、表皮細胞ターンオーバー速度の上昇が、角質細胞間合着の上昇と関連することを示唆している(VanScottとYu, 1989, Cutis 43:222-28)。
【0004】
表皮層の細胞は、半接着斑、接着斑、ギャップ結合、グリコサミノグリカン、プロテオグリカンのようなタンパク性成分、および皮膚に存在する他の成分により結合しており、そしてこれら全ては、相互におよび細胞成分に結合する能力を有する。表皮細胞のこの結合は、「角質細胞間合着」として説明され、関係する合着強度の程度は、水和およびpHのような因子により影響される。角質細胞間合着の増大は、過角化症を引き起こし、そして表皮細胞の保持により引き起こされる厚くかつしばしば乾燥状または鱗状の皮膚を特徴とする。合着と細胞ターンオーバー速度の間に存在する均衡は、若い皮膚の正常な若返りの原因であり、そしてこれらの因子の不均衡により、成熟した表皮表面の老化した粗くかつ美しくない外見が生じうる。細胞再生速度と角質細胞間合着を均衡させる局所的活性のある成分の探索は、今日の皮膚科学研究において顕著である(VanScottとYu, 1984, J. Am. Acad. Dermatol. 11:867-79)。
【0005】
この研究領域における最近の進歩は、この点に関して有望な多くの局所的活性のある酸性化合物を提供した(Yuら, 1978, 米国特許第4,105,783号;Yuら, 1982, 米国特許第4,363,815号)。これらの酸性化合物による長期治療により、表皮細胞再生の速度が増大する。低分子量ヒドロキシまたはケト酸およびそのエステルのような、表皮に活性であることが知られている酸成分は、角質溶解剤/落屑剤としてのその有効性に関して充分に報告されている。高濃度のこれらの酸(例えば、サリチル酸およびグリコール酸)、ならびにトリクロロ酢酸のような他の酸は、適用部位の組織の破壊を引き起こす能力について知られている(W.L. Epstein, 1990, 「刺激性接触皮膚炎」(Irriant Contact Dermatitis), Jackson and Glodner編, Marcel Decker, Inc., New YorkとBasel, pp. 127-165;Remington's Pharmaceutical Sciences, A. Osol編, 第16版, Mack Publishing, Inc., Easton, PA., 1980)。低濃度では、これらの酸は、ケラチンの多い角質層の死細胞を遊離させ、角質間合着を妨害し、それによって落屑を促進する能力を有することが証明された;この活性は、「角質溶解活性」と呼ばれる(Remington's Pharmaceutical Sciences, A. Osol編, 第16版, Mack Publishing, Inc., Easton, PA., 1980;W.P. Smith, 1994, Cosmetics and Toiletries 109:41-8)。
【0006】
上にリストされるものを含めて、多くの角質溶解剤は、皮膚刺激性である。いくつかの角質溶解剤は、他のものよりも有効であるとして推奨されているが、これらの酸のそれぞれの治療指数を比較すると、特に有利なものはない。「治療指数」とは、成分の角質溶解性の効率とともに所定濃度の刺激のレベルを考慮する、これらの成分の有効性の評価の正確な方法である。低レベルでさえ(4%を超える酸濃度)これらの成分は著しい皮膚刺激を引き起こすことが証明されている。これらの成分のさらに低レベルの使用は刺激を低下させるが、一般に角質溶解の有効性を低下させる。さらに、この酸の長期使用は、細胞再生誘導の効率を低下させる(W.P. Smith, 1994, Cosmetics and Toiletries 109:41-8)。これらの欠点は、非刺激濃度におけるこれらの酸の角質溶解の有効性を増強するための方法論の必要性を指摘している。
【0007】
やけどからの瘢痕除去および抗菌療法への補助手段のようなもののために、局所療法におけるタンパク質分解性酵素の適用がしばらく行われてきた(G. Rodeheaver, 1975, Am. J. Surg. 129(5):537-544)。これらの酵素は、一般にパパイヤ(パパイン)、イチジク(フィシン)、およびパイナップル(ブロメリン)のような、植物供給源に制限されている酵素を含む。これらの植物からの抽出物を含有し、タンパク質分解作用により外部表皮層の除去を増強するとして奨励されている化粧品製剤が市販されている。基質特異性およびpHに関する活性のスペクトルは、これらの製剤のタンパク質分解作用が、外部表皮層での角質溶解活性をもたらすことを示唆しているが、局所療法に以前から使用されているタンパク質分解酵素は欠点がないわけではない。
【0008】
現在化粧品の塗布に使用されているこれらの酵素(例えば、パパイン、ブロメリン、およびフィシン)は、一般にpH3〜pH9の広いpH範囲にわたってタンパク質分解活性を示す(Glazer and Smith, 1971, The Enzymes, 第3巻, P. Boyer編, Academic Press, New York, pp. 501-546)。長期の皮膚曝露に関連する問題の少なくともいくつかの原因になっているのは、恐らくこれらの植物由来の酵素の広いpH範囲である。ヒト表皮系は、層状の皮膚のpH勾配を維持する;外層は、約5.5の平均pHを示すことが報告されている(W.P. Smith, 1994, Cosmetics and Toiletries 109:41-48)。表皮の連続層のpHは、深さと共に上昇し、真皮層で最終pHは生理学的範囲(pH約7.4)近くまで達する。上述の植物由来の酵素は、このpH勾配にわたって活性を保つため、これらを皮膚に適用すると、これら植物酵素の活性へのpH制御は存在しない。
【0009】
タンパク質分解酵素の局所適用から得られる治療活性の程度は、これらの酵素の内在性触媒作用により支配されている。上記で考察されたプロテアーゼにより示される、pHに関して広い範囲のタンパク質分解活性(pH3〜9)により、生成物の処方によってタンパク質分解活性を制御することはほとんどまたは全然できない(GlazerとSmith, 1971, 「酵素」, 第3巻, P. Boyer編, Academic Press, New York, pp. 501-546)。これらの酵素が得られている植物は、そう痒、浮腫、および水疱を含む症状を伴う刺激性接触皮膚炎を引き起こすことが知られている。これらの酵素は、恐らく角質細胞間合着の過剰な低下のせいであるこれらの症状の主要な原因であることと提唱されている(W.L. Epstein, 1990, 「刺激性接触皮膚炎」(Irritant Contact Dermatitis), JacksonとGlodner編, Marcel Decker, Inc., New YorkとBasel, pp. 127-165)。化粧品用に現在使用されている酵素は、表皮の全ての層にわたって基質依存性タンパク質分解活性を示すことができる。角質細胞間合着を安定化するのに役立つ表皮タンパク質の制御されないタンパク質分解は、この角質細胞間合着を過度に低下させ、そして続いて刺激を引き起こしうる。細胞再生が起こる表皮の基底層のタンパク質分解攻撃は、表皮細胞再生の速度における不均衡を引き起こしうる。水泡および浮腫は、基底膜のこのクラスの酵素による制御されないタンパク質分解の結果であろう。この可能性は、哺乳動物の皮膚へのこれらの植物酵素の注射が、皮膚の浮腫を引き起こすことが知られているという事実により支持される(Morimotoら, 1987, Ensho 7(6):563-567)。この知見を利用して、皮膚科学研究において実験的浮腫が作成されてきた。さらには、上記の刺激性接触皮膚炎の症状は、現在局所適用に使用されている最も有効な濃度の表皮に活性な酸成分により誘導される症状と同様である。したがって、局所適用に関してタンパク質分解活性へのさらに制御されたアプローチにより、これらの副作用のない望ましい結果を得ることができるはずである。
【0010】
タンパク質分解酵素(例えば、ペプシン)といくつかの酸を含有する、密な壊死形成物(この形成物は、例えば、3度のやけどで観察される)の溶解のための組成物が報告されている(ソビエト連邦特許第439288号, 1974年)。これらの組成物が表皮剥離の増強に有用であること、またはこれらの組成物が限定された時間にのみ活性であることは、示されていない。
【0011】
本出願の背景における任意の参照文献の引用または同定は、このような参照文献が本発明の先行技術として利用可能であるということを容認するものと理解すべきではない。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
3.発明の要約
本発明は、異常な皮膚症状、疾患、または障害を治療または予防するための、および/または皮膚のきめおよび/または外見を改善するための、および/または表皮の剥離を増強するための、および/または表皮の細胞の再生を増強するための、新規の医薬組成物および/または化粧品組成物に関する。本組成物は、少なくとも1つの酸性プロテアーゼと酸性緩衝剤を含む。本発明の目的において、酸性プロテアーゼは、皮膚の表面の平均pHより低いpHでペプチジルヒドロラーゼ(タンパク質分解)活性を示し、皮膚の表面の平均pH(これは、ヒトではpH約5.5である(W.P. Smith, 1994, Cosmetics and Toiletries 109:41-8))より高いかまたは等しいpHではほとんど活性がない酵素である。男性では、皮膚の表面の平均pHはpH約5.3であり、女性ではpH約6である(Ohman and Vahlquist, 1994, Acta Dermato-Venereol. 74(5):375-379)。本発明の目的において、皮膚の表面の平均pH(これはpH約5.5である)は、特に性に特異的な変動を含み、従って約5.5のpHは、男性の皮膚の表面の平均pHであるpH約5.3から、女性の皮膚の表面の平均pHであるpH約6までの範囲を含む。好ましくは、皮膚の表面の平均pH(pH約5.3〜6)より大きいかまたは等しいpHでは、本発明で有用な酸性プロテアーゼは、皮膚の表面の平均pHより低い各最適pHで示す酵素活性の約10%未満の活性を示す。
【0013】
酸性プロテアーゼは、アポ酵素、ホロ酵素、イソ酵素、またはチモーゲン型でもよい。組成物の酸性プロテアーゼ成分は、最終組成物の約0.001重量%〜約75重量%、好ましくは約0.1重量%〜約50重量%、より好ましくは約1重量%〜約5重量%の量で存在することができる。このプロテアーゼは、Food Chemicals CODEX、第3版、(1981), pp. 496-497、National Academy Press, ワシントンD.C.に記載の方法をセクション5.1(後述)に記載のように変更した方法により測定する時、約1〜約5,000HUT 単位/mg の比活性を有する。好ましくはプロテアーゼは、約50〜約3000HUT 単位/mg 、より好ましくは約500〜約1500HUT 単位/mg の比活性を有する。
【0014】
酸性緩衝剤は、皮膚に局所適用されると、皮膚の表面のpHを一時的にpH5.5未満に低下させるが、pH1未満には低下させず、好ましくはpH約2.5〜pH約4.5の間にする組成物である。酸性緩衝剤組成物は、少なくとも1つの酸および薬剤または化粧品として許容される担体、ビヒクル、または賦形剤を有する。緩衝剤の酸成分は、1つまたはそれ以上の無機酸、または1つまたはそれ以上の有機酸、または無機酸および/または有機酸の任意の組合せであり得る。酸性緩衝剤は、自然の表皮プロセス(例えば、発汗)により時間とともに皮膚の表面の平均pHに中和される。酸性緩衝剤の中和、および従ってプロテアーゼの不活性化に必要な時間は、酸性緩衝剤の処方に依存する。例えば、表皮のアルカリ性に対抗するために酸性緩衝剤が弱酸または弱緩衝物質を含有するなら、時間は短くなり、強い酸が使用されるかまたは酸性緩衝剤中に強い緩衝剤が使用されているなら、時間は長くなる。緩衝剤の酸成分は、1つまたはそれ以上の無機酸、1つまたはそれ以上の有機酸、または無機酸および/または有機酸の任意の組合せであってよく、最終組成物の約0.001重量%〜約95重量%、好ましくは約0.01重量%〜約25重量%、より好ましくは約1重量%〜約5重量%の量で存在する。
【0015】
本発明の組成物の局所適用後に皮膚の表面のpHがpH約5.5に戻るのに必要な時間の調節は、プロテアーゼ酵素の活性の調節を可能にする。本発明が、広いpHスペクトルのタンパク質分解酵素により引き起こされる、先行技術中の欠点や障害(例えば、かゆみ、やけど、水泡など)を克服するのは、このタンパク質分解活性の調節によってである。皮膚の表面pHが約5.5に戻るのに必要な時間は、多くの要因(例えば、治療中の皮膚の症状、疾患または障害、および治療される特定の被験体の皮膚の感受性)により決定される。先行技術に存在する欠点や障害を避けるために、理想的な時間は、本発明の組成物の1回の適用は約4時間を超えず、好ましくは時間は、約5分〜約4時間であり、より好ましくは約30分〜約2時間であり、最も好ましくは約30分〜約1時間である。
【0016】
本発明の医薬組成物は、皮膚に投与された時、異常な生物学的症状、疾患、または障害を治療または予防する利点または作用を与えるものであることに注意されたい。異常な生物学的症状、疾患、または障害を治療または予防する利点または作用は、異常な症状、疾患、または障害の症状または原因の重症度の低下または消失である。異常な症状、疾患、または障害の症状または原因の重症度の低下または消失は、短期的であるかまたは長期的である。本発明の組成物を投与することにより治療されるそのような異常な生物学的症状、疾患、または障害には、乾燥皮膚、重症の乾燥皮膚、ふけ、にきび、角化症、乾癬、湿疹、皮膚のはがれ、そう痒症、老人斑、ほくろ、黒皮症、しわ(大きいものおよび小さいもの、内因性および外因性傷害を含む)、いぼ、皮膚の斑点、過色素沈着皮膚、過角化性皮膚、炎症性皮膚症、年齢関連皮膚変化、洗浄の必要な皮膚、および皮膚萎縮の影響があるが、これらに限定されない。
【0017】
本発明の化粧品組成物は、皮膚に投与された時、必ずしも異常な生物学的症状、疾患、または障害を治療または予防する利点または作用を与えるものではないが、皮膚のきめや外見を改善し、または表皮の剥離および/または表皮の細胞の再生を増強するものであることに注意されたい。この意味で、皮膚のきめや外見を改善し、または表皮の剥離を増強し、および/または表皮の細胞の再生を増強することは、処置前の状態から皮膚の美しさおよび/またはなめらかさを向上させ、異常な生物学的症状、疾患、または障害の好ましくない微候を隠すように、自然に見えるおよび/または自然に感じる表面を提供することを包含する。これは、表皮に一時的な湿潤効果を提供することを含む。そのような異常な生物学的症状、または疾患には、乾燥皮膚、重症の乾燥皮膚、ふけ、にきび、角化症、乾癬、湿疹、皮膚のはがれ、そう痒症、老人斑、ほくろ、黒皮症、しわ(大きいものおよび小さいもの、内因性および外因性傷害を含む)、いぼ、皮膚の斑点、過色素沈着皮膚、過角化性皮膚、炎症性皮膚症、乾癬、年齢関連皮膚変化、洗浄の必要な皮膚、および皮膚萎縮の影響があるが、これらに限定されない。
【0018】
さらに別の実施態様において、本発明は、乾燥皮膚、重症の乾燥皮膚、ふけ、にきび、角化症、乾癬、湿疹、皮膚のはがれ、そう痒症、老人斑、ほくろ、黒皮症、しわ(大きいものおよび小さいもの、内因性および外因性傷害を含む)、いぼ、皮膚の斑点、過色素沈着皮膚、過角化性皮膚、炎症性皮膚症、年齢関連皮膚変化、および洗浄の必要な皮膚を含む(しかし、これらに限定されない)、異常な皮膚症状、疾患、または障害を治療するための方法を包含する。この方法は、上記の症状、疾患、または障害を有する被験体の皮膚の領域に、pH約5.5未満では酵素活性を有する酸性プロテアーゼと皮膚の表面pHを約5.5未満に下げる酸性緩衝剤とを含む組成物の有効量を、上記の症状、疾患、または障害の治療に有効な時間、局所投与することからなり、酸性緩衝剤は正常な表皮プロセスにより中和される。
【0019】
さらに別の実施態様において、本発明は、被験体の皮膚の領域に、pH約5.5未満では酵素活性を有する酸性プロテアーゼと皮膚の表面pHを約5.5未満に下げる酸性緩衝剤とを含む組成物の有効量を、表皮剥離および/または表皮細胞の再生の増強に有効な時間、局所投与することからなる、表皮剥離および/または表皮細胞の再生を増強するための方法を提供し、酸性緩衝剤は正常な表皮プロセスにより中和される。
【0020】
別の実施態様において、本発明は、被験体の皮膚の領域に、pH約5.5未満では酵素活性を有する酸性プロテアーゼと皮膚の表面pHを約5.5未満に下げる酸性緩衝剤とを含む組成物の有効量を、皮膚のきめと外見を改善するのに有効な時間、局所投与することからなる、皮膚のきめと外見を改善するための方法を提供し、酸性緩衝剤は正常な表皮プロセスにより中和される。
【0021】
さらに別の実施態様において、本発明は、被験体の皮膚の領域に、pH約5.5未満では酵素活性を有する酸性プロテアーゼと皮膚の表面pHを約5.5未満に下げる酸性緩衝剤とを含む組成物の有効量を、皮膚の萎縮の影響を制御するのに有効な時間、投与することからなる、皮膚の萎縮の影響を制御するための方法を提供し、酸性緩衝剤は正常な表皮プロセスにより中和される。
【0022】
表皮の剥離および/または表皮細胞の再生を増強するための好適な実施態様において、組成物はペプシンと乳酸を含む。表皮の剥離および/または表皮細胞の再生を増強するためのこの好適な実施態様において、組成物は、約1000HUT 単位/mg の比活性を有する約1重量%のペプシンと約3重量%の乳酸とを含む。表皮の剥離および/または表皮細胞の再生を増強するための別の好適な実施態様において、組成物は、約1000HUT 単位/mg の比活性を有する約1重量%のペプシンと約1.5重量%の乳酸とを含む。さらに別の好適な実施態様において、組成物は、1重量%のペプシンと1重量%のリン酸とを含む。さらに別の好適な実施態様において、組成物は、1重量%のペプシンと3重量%のリン酸とを含む。さらに別の好適な実施態様において、組成物は、1重量%のペプシンと1重量%のクエン酸とを含む。さらに別の好適な実施態様において、組成物は、1重量%のペプシンと3重量%のクエン酸とを含む。
【0023】
本発明の組成物と方法は驚くべきことに、これまで酸、α−ヒドロキシカルボン酸、サリチル酸、または広いpHスペクトルのプロテアーゼ自身では達成できなかった、皮膚疾患に対する薬剤活性または化粧品作用を証明する。
【0024】
3.1 定義
本発明において、以下の用語は、下記を包含する:
酸性緩衝剤:皮膚に典型的に適用された時、皮膚の表面pHを5.5未満に下げ、自然の皮膚のプロセスにより中和されて、自然の皮膚のプロセスが時間とともに皮膚の表面のpHを正常(これは約5.5である)に戻すような、酸と薬剤または化粧品として許容される担体、ビヒクル、または賦形剤を含む組成物。緩衝剤の酸成分は、1つまたはそれ以上の無機酸、1つまたはそれ以上の有機酸、または無機酸および/または有機酸の任意の組合せを含有することができる。
【0025】
酸性プロテアーゼ:皮膚の表面の平均の正常pH(これは約5.5である)より低いpHでペプチジルヒドロラーゼ(タンパク質分解)活性を示し、正常な皮膚の表面pHの平均より大きいかまたは等しいpHではほとんど活性がない(すなわち、pH約5.5未満のピーク活性と比較すると、pH約5.5またはこれ以上では約10%未満の活性)酵素。酸性プロテアーゼは、アポ酵素、ホロ酵素、イソ酵素、またはチモーゲン型でもよい。
【0026】
化粧品:必ずしも異常な生物学的症状または疾患を治療または予防する利点または作用を与えるものではないが、皮膚のきめや外見を改善する、皮膚に投与される調製物。そのような改善は、哺乳動物の表皮に一時的湿潤効果を提供することを含む。
【0027】
有効量:治療すべき症状のポジティブな変化を大きく誘導するのに充分高いが、重篤な副作用を避けるのに充分低い量。組成物の有効量は、治療すべき特定の症状、治療される被験体の年齢や身体症状、症状の重症度、治療の期間、併用療法の性質、使用される具体的な組成物、使用される特定の薬剤として許容される担体または化粧品として許容される担体、および当業者の知識と経験の範囲内の同様の要因により変化する。
【0028】
表皮細胞の再生:新しい皮膚細胞が基底層中で形成され、外層(角質層)に移動し、次に剥離し、さらに新しい皮膚細胞により置換されるプロセス。
【0029】
剥離:任意の組織表面から上皮の表面細胞が離れ、出ていくこと。
【0030】
薬剤:異常な生物学的症状または疾患を治療または予防する利点または作用を与える、皮膚に投与される調製物。
【0031】
皮膚萎縮の制御:哺乳動物の皮膚の萎縮のプロセスを、防止、遅延、阻止、治療、または反転させるプロセス。
【0032】
皮膚萎縮:コラーゲンおよび/またはエラスチンの減少ならびに繊維芽細胞の数、サイズおよび二倍化能力の低下をしばしば特徴とする、哺乳動物の皮膚の真皮層が薄くなることおよび/または全体的な退化。皮膚萎縮は、老化の自然の結果であるが、自然の時間的老化、光傷害、やけどまたは化学的傷害、または汚染物質またはアレルゲン(例えば、たばこの煙)への曝露により、引き起こされる。皮膚萎縮は、しばしばα−ヒドロキシカルボン酸またはサリチル酸を用いる治療に起因する好ましくない副作用である。
【0033】
本発明は、本発明の非限定的実施態様を例示することを目的とする、詳細な説明と実施例を参照することにより、より詳細に理解できるであろう。
【0034】
5.発明の詳細な説明
5.1 組成物
本発明は、異常な皮膚症状、疾患または障害の治療または予防、および/または皮膚のきめまたは外見の改善、および/または表皮剥離の増強、および/または表皮細胞の再生の増強のための新規組成物を提供する。この組成物は、少なくとも1つの酸性プロテアーゼと酸性緩衝剤を含む。この組成物は、全身への影響または好ましくない副作用を最小にするために、好ましくは局所投与される。本発明者は、特定の作用モードに限定されるつもりはないが、本発明の組成物は、まず皮膚の表面のpHを皮膚の平均pH(これは人については約5.5である)より低い値に下げることにより、本発明の方法を達成すると考える。pHの低下により、皮膚の表面pHが約5.5より低い時にタンパク質分解/ケラチン分解活性を示す、組成物の酸性プロテアーゼ成分の活性化が可能になる。この期間は、個体の皮膚pHの状況に依存し、酸性緩衝剤成分の調製により制御することができる。この期間を変更し所望の結果を達成できるように、調製物を調整することは、当業者にの技術の範囲内である。
【0035】
この期間に、酸性緩衝剤は、自然の表皮プロセス(例えば、発汗)により中和され、皮膚の表面のpHは正常(これは約5.5である)に戻る。こうしてpHの上昇は、酸性プロテアーゼを不活性化し、タンパク質分解/ケラチン分解活性が停止する(すなわち、約90%低下する)。皮膚の表面pHが約5.5未満であり、プロテアーゼ成分が活性がある期間は、約1分〜約4時間であり、好ましくは約30分〜約2時間、より好ましくは約30分〜約1時間である。
【0036】
本発明の目的について、酸性プロテアーゼは、pH約5.5(これは、皮膚の表面の平均pHである)未満で高いペプチジルヒドロラーゼ(タンパク質分解)活性を示し、約5.5より高いかまたは等しいpHではほとんど活性がない酵素である。男性では、皮膚の表面の平均pHはpH約5.3であり、女性ではpH約6である。本発明の目的において、皮膚の表面の平均pH(これはpH約5.5である)は、特に性に特異的な変動を含み、従って約5.5のpHは、男性の皮膚の表面の平均pHであるpH約5.3から、女性の皮膚の表面の平均pHであるpH約6までの範囲を含む。例えば皮膚に適用された短時間後活性(セクション6.1に記載のように塩化ダンシルにより測定)と比較すると10%であるかまたはこれより低い時、このプロテアーゼは有意に不活性である。本発明において有用な酸性プロテアーゼは、pHが約5.5またはそれ以上でのインビトロ測定法で、特定のプロテアーゼの最適pH(約5.5未満)での同じインビトロ測定法で測定した酵素活性の約10%未満を示す。例えば、セクション6.4(後述)を参照されたい。
【0037】
酸性プロテアーゼは、アポ酵素、ホロ酵素、イソ酵素、またはチモーゲン型でもよい。さらに酸性プロテアーゼは、当業者に公知の任意の供給源(例えば、細菌、真菌、組織培養細胞、および動物)から単離することができる。酸性プロテアーゼ調製物は、最終組成物の約0.001重量%〜約75重量%、好ましくは約0.1重量%〜約50重量%、最も好ましくは約1重量%〜約5重量%の量で存在する。このプロテアーゼは、以下に記載するように変更した、Food Chemicals CODEX、第3版、(1981), 496-497, National Academy Press, ワシントンD.C.に記載の方法により測定する時、約1〜約5,000HUT 単位/mg の比活性、好ましくは約50〜約3000HUT 単位/mg 、最も好ましくは約500〜約1500HUT 単位/mg の比活性を有する。
【0038】
簡単に説明すると、まず以下のストック溶液を調製する:ヘモグロビン基質は、2gのウシヘモグロビンを80mlの蒸留水中に混合して調製する。次に、溶液に例えばリン酸および/またはクエン酸を加えてpH2にし、さらに蒸留水を加えて総量を100mlにする。この溶液を4等分し、各画分を、50%水酸化ナトリウムと50%塩酸により、所望のpHにする。これらの最終溶液を次に、30℃で20分加熱し、次にガラスウールでろ過する。TCAストックは、トリクロロ酢酸を最終濃度5%(w/v) TCAになるように蒸留水に溶解して調製する。
【0039】
次に、タンパク質分解活性を測定する各試料について、「B」および「T」と書いた試験管を準備する。各試験管に、4mlのヘモグロビン溶液を入れ、37℃に置いて、試料を37℃に予備加熱する。「T」試験管に100μgの酵素溶液を加え、静かに回転し、37℃で20分インキュベートする。次に、各試験管に10mlのTCAストック溶液を加える。「T」試験管と、バックグランド吸光度の対照である「B」と記した試験管に等量の酵素を加える。各試験管を遠心分離し、各試料をシリンジフィルターでろ過し、ろ過した試料を石英キュベットに入れて、280nmで吸光度を読む。バックグランドから「T」試料の吸光度を引いて実際の吸光度を測定する。既知量のプロテアーゼ活性を測定して、標準曲線を作成することができる。
【0040】
1HUT 単位のタンパク質分解活性は、特定の測定条件下で1分間で、0.006Nの塩酸中に1.10μg/mlのチロシンを含有する溶液の吸光度と同じ280nmでの吸光度を有する加水分解物を産生する酵素の量であるとして定義する。 HUT 単位/gは、以下の式で測定される:
HUT/g =(280nmでの吸光度×V)/(0.0084×T×W)
(式中、Vは、試験溶液の最終容量であり、Tは、反応時間(分)であり、Wは、測定で使用した元々の酵素の乾燥重量(g)である)。タンパク質濃度は、当該分野で公知の方法、例えばBradford Assay(これは、Current Protocols in Molecular Biology, Ausubel et al., (編), John Wily & Sons, Inc., New York, 1994、に記載されている)により測定される。
【0041】
このようなプロテアーゼの例には、ペプシン、カテプシン、ヒト尿の酸性プロテアーゼ、ノイロスポラ・オリザエ(Neurospora oryzae)、ムコール・プシルス(Mucor pusillus)、ムコール・ミエヘイ(Mucor miehei)、リゾプス・キネンシス(Rhizopus chinensis)、またはエンドチア・パラシチカ(Endothia parasitica)から得られる真菌プロテアーゼ、細菌性プロテアーゼであるリゾプスペプシン、ペニシロペプシン、およびアンドチアペプシンがあるが、これらに限定されない。さらに、プロテアーゼは遺伝子操作法および技術を用いて、胚、成熟、または誘導細胞を用いて、かつDNAセグメント、プラスミド、ベクター、またはその発現物を含む生成物、または形質転換細胞または純粋培養物から得られる。重量%の組合せ量が上記範囲内にあるように、2つまたはそれ以上の酸性プロテアーゼを組合せて使用できることに注意されたい。
【0042】
酸性緩衝剤は、皮膚に局所投与されると、皮膚の表面のpHを一時的にpH約5.5未満に低下させるが、pH1未満には低下させず、好ましくはpH約2.5〜pH約4.5の間にする組成物である。酸性緩衝剤組成物は、少なくとも1つの酸、および薬剤または化粧品として許容される担体、ビヒクル、または賦形剤を有する。緩衝剤の酸成分は、自然の表皮プロセス(例えば、発汗)により時間とともに皮膚の表面の平均pHに中和される。酸性緩衝剤の中和、および従ってプロテアーゼの不活性化に必要な時間は、酸性緩衝剤の処方に依存する。例えば、表皮の中和能に対して、酸性緩衝剤中の酸および/または緩衝剤が弱いなら、時間は短くなり、強い酸が使用されるかまたは酸性緩衝剤中に強い緩衝剤が使用されているなら、時間は長くなる。
【0043】
組成物の酸性緩衝剤の酸成分は、1つまたはそれ以上の有機酸、1つまたはそれ以上の無機酸、または無機酸および/または有機酸の組合せであってよく、最終組成物の約0.001重量%〜約95重量%、好ましくは約0.01重量%〜約25重量%、より好ましくは約1重量%〜約5重量%の量で存在してよい。酸成分の重量%は、酸強度とモル濃度に依存する。さらに、組成物中の酸成分の量と強度は、有効なレベルのタンパク質分解/ケラチン分解活性があるが、皮膚刺激の大きなレベルは存在しないものである。さらに、酸性緩衝剤の酸成分は、ケラチン分解活性を示すことが証明されていない酸であるが、単にプロテアーゼの活性化のための酸性環境を提供する酸を含むかまたは含まない。そのような酸の例には、表皮pHを約0.1〜約7の範囲のpHに緩衝化する任意の組成物中で操作できる任意の分子を含み、例えば乳酸、ソルビン酸、リン酸、クエン酸、グリコール酸、リンゴ酸、グルコン酸、ピロリン酸、三リン酸、ポリリン酸、重硫酸ナトリウム、および重硫酸カリウムを含むが、これらに限定されない。重量%の組合せ量が上記範囲内にあるように、2つまたはそれ以上の酸を組合せて使用できることに注意されたい。
【0044】
酸性緩衝剤はまた、薬剤または化粧品として許容される担体、ビヒクル、または賦形剤である成分を含有する。このような薬剤として許容される担体、ビヒクル、または賦形剤の例は、当業者に公知であり、例えばRemington's Pharmaceutical Sciences, 第18版、A.R. Gennaro編, Mack Publishing, Co. Inc., Easton, Pennsylvania., 1990に見いだされる。このような化粧品として許容される担体、ビヒクル、または賦形剤の例は、当業者に公知であり、例えばCTFA International Cosmetic Ingredient Dictionary、第4版、J.M. Nikitakis編、The Cosmetic, Toiletry, and Fragrance Association、ワシントンD.C.、1991、に見いだされる。
【0045】
局所適用用の本発明の組成物は、非毒性であり、薬剤として、化粧品としてまたは皮膚学的に許容されるローション剤、チンキ剤、クリーム剤、乳剤、ゲル剤、または軟膏剤を生成するために、担体、賦形剤、またはビヒクル成分(例えば、水、アセトン、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタン−1,3−ジオール、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミネラル油、およびこれらの混合物)を含有してもよい。さらに、所望であれば加湿剤または保湿剤を本発明の組成物に加えることができる。医薬組成物にとって有用なこのような追加の成分の例は、Remington's Pharmaceutical Sciences, 第18版、A.R. Gennaro編, Mack Publishing, Co. Inc., Easton, Pennsylvania., 1990に見いだされる。化粧品組成物に有用なこのような追加の成分の例は、CTFA International Cosmetic Ingredient Dictionary、第4版、J.M. Nikitakis編、The Cosmetic, Toiletry, and Fragrance Association、ワシントンD.C.、1991、に見いだされる。
【0046】
これらのおよび当業者に公知の他のビヒクル以外に、本発明の医薬組成物および化粧品組成物は、他の成分、例えば老人斑、角化症、しわを改善または根絶するもの;鎮痛剤;麻酔薬;抗にきび剤;殺菌剤;抗酵母剤;抗真菌剤;抗ウイルス剤;抗ふけ剤;抗ふけ剤;抗皮膚炎剤;抗そう痒剤;鎮吐薬;乗物酔治療薬;抗炎症剤;抗過角質溶解剤;抗乾燥皮膚剤;制汗薬;抗乾癬剤;抗脂漏性剤;ヘアコンヂショナーおよびヘアトリートメント剤;抗老化剤および抗しわ剤;抗ぜん息剤および気管支拡張剤;日焼け止め;抗ヒスタミン剤;皮膚軽減感剤;抗脱色剤;ビタミン剤;コルチコステロイド;なめし剤;ホルモン剤;レチノイド剤;局所心血管疾患剤;クロトリマゾール;ケトコナゾール;ミコナゾール;グリセオフルビン;ヒドロキシジン;ジフェンヒドラミン;プラモキシン;リドカイン;プロカイン;メピバカイン;モノベンゼン;エリチドカイン;プロカイン;メピバカイン;モノベンゼン;エリスロマイシン;テトラサイクリン;クリンダマイシン;メクロシリン;ヒドロキノン;ミノシクリン;ナプロキセン;イブプロフェン;テオフィリン;クロモリン;アルブテロール;レチノイン酸;13−cisレチノイン酸;ヒドロコルチゾン;ヒドロコルチゾン21−アセテート;ヒドロ−コルチゾン17−バレレート;ヒドロコルチゾン17−ブチレート;ベータメタゾンバレレート;ベータメタゾンジプロピオネート;トリアミシノロンアセトニド;フルオシノニド;クロベタゾールプロピオネート;ベンジルペルオキシド;クロタミトン;プロプラノロール;プロメタジン;ビタミンAパルミテート;ビタミンEアセテート;薬剤で使用される親水性濃化剤;およびこれらの混合物のような他の成分を含むが、これらに限定されない。これらの成分の濃度は、使用目的(例えば、治療用または化粧品)により異なる。
【0047】
本発明の組成物の局所投与後に皮膚の表面のpHがpH約5.5の正常なpHに戻るのに必要な時間の調節は、プロテアーゼ酵素の活性の調節を可能にする。本発明が、先行技術中の欠点や障害(例えば、かゆみ、やけど、水泡、およびpHスペクトルの広いタンパク質分解酵素により引き起こされる好ましくない副作用)を克服するのは、このタンパク質分解活性の調節によってである。皮膚の表面がpH約5.5の正常なpHに戻るのに必要な時間の測定は、多くの要因(例えば、治療される皮膚のタイプ、症状、疾患または障害、皮膚のタイプおよびその身体上の位置、および治療される特定の被験体の皮膚の感受性)により決定される。先行技術に存在する欠点や障害を避けるために、理想的な時間は、本発明の組成物の1回の適用について約4時間を超えてはならない。この時間制限は、多くの要因、例えば適用の目的(例えば日々の管理、粗い乾燥皮膚の除去、または治療的/薬剤的応用)に依存する。他の要因には、皮膚のタイプ、感受性、正常、非感受性、傷害を受けている、または重症の傷害を受けているかどうか、および適用様式(例えば、単回適用、または連続的洗浄、クリーム剤またはローション剤の塗布)を含む。プロテアーゼ活性は基質依存性であるため、他の要因は酸性プロテアーゼ成分で使用される1つまたはそれ以上の具体的なプロテアーゼである。
【0048】
5.2 本発明の組成物の使用法
本発明は、表皮剥離の増強、および/または表皮細胞の再生の増強のため方法を提供する。この方法は、被験体の皮膚の領域に、pH約5.5未満ではタンパク質分解活性を有するが、約5.5またはそれ以上のpHではほとんど活性がない酸性プロテアーゼ酵素と、皮膚の表面のpHを約5.5未満に下げる酸性緩衝剤とを含む本発明の組成物の有効量を、表皮剥離および/または表皮細胞の再生の増強に有効な時間、局所投与することからなり、酸性緩衝剤は自然の表皮プロセスにより中和される。
【0049】
本発明はまた、皮膚のきめと外見を改善するための方法を提供する。この方法は、被験体の皮膚の領域に、pH約5.5未満ではタンパク質分解活性を有するが、約5.5またはそれ以上のpHではほとんど活性がない酸性プロテアーゼ酵素と、皮膚の表面pHを約5.5未満に下げる酸性緩衝剤とを含む本発明の組成物の有効量を、皮膚のきめと外見の改善に有効な時間、投与することからなり、酸性緩衝剤は自然の表皮プロセスにより中和される。
【0050】
本発明はまた、皮膚の萎縮の影響を制御するための方法を提供する。この方法は、被験体の皮膚の領域に、pH約5.5未満ではタンパク質分解活性を有するが、約5.5またはそれ以上のpHではほとんど活性がない酸性プロテアーゼ酵素と、皮膚の表面pHを約5.5未満に下げる酸性緩衝剤とを含む本発明の組成物の有効量を、皮膚の萎縮の影響の制御に有効な時間、投与することからなり、酸性緩衝剤は正常な表皮プロセスにより中和される。
【0051】
本発明はまた、異常な皮膚症状、疾患、または障害を治療または予防するための方法を提供する。この方法は、被験体の皮膚の領域に、pH約5.5未満ではタンパク質分解活性を有するが、約5.5またはそれ以上のpHではほとんど活性がない酸性プロテアーゼ酵素と、皮膚の表面pHを約5.5未満に下げる酸性緩衝剤とを含む本発明の組成物の有効量を、異常な皮膚症状、疾患、または障害を治療または予防するのに有効な時間、投与することからなり、酸性緩衝剤は自然の表皮プロセスにより中和される。このような症状、疾患、または障害は、乾燥皮膚、重症の乾燥皮膚、ふけ、にきび、角化症、乾癬、湿疹、皮膚のはがれ、そう痒症、老人斑、ほくろ、黒皮症、しわ(大きいものおよび小さいもの、内因性および外因性傷害を含む)、皮膚の斑点、過色素沈着皮膚、過角化性皮膚、炎症性皮膚症、年齢関連皮膚変化、洗浄の必要な皮膚、および皮膚萎縮の影響を含むが、これらに限定されない。
【0052】
前記の任意の方法について皮膚の領域上に本発明の組成物の有効量を投与する好適な方法は、局所適用によってである。最終組成物中の酸性緩衝剤と酸性プロテアーゼの量および皮膚への局所適用の頻度は、特定の皮膚障害、皮膚障害の重症度、関与する皮膚の位置および/またはタイプ、被験体の皮膚の感受性、所望の治療の程度のような要因に依存して変動する。被験体の必要性に応じて、適用量を制御することは、当業者の範囲内である。例として、局所適用は週約1回から日に約4または5回、好ましくは週約3回から日に約3回、最も好ましくは日に約1回から2回であることが、示唆される。局所適用の最終組成物は、約0.001重量%〜約95重量%、好ましくは約0.01重量%〜約25重量%、最も好ましくは約0.01重量%〜約5重量%の酸成分を含む。局所適用の最終組成物は、約0.001重量%〜約75重量%、好ましくは約0.1重量%〜約50重量%、最も好ましくは約1重量%〜約5重量%の酸性プロテアーゼ成分を含む。他の好適な投与様式は、慢性的投与である。本明細書において「慢性的」投与とは、局所適用の期間は、被験体の寿命にわたり、好ましくは少なくとも約1ヶ月、より好ましくは約3ヶ月〜約20年、より好ましくは約6ヶ月〜約10年、より好ましくは約1年〜約5年であり、こうして異常な皮膚症状、疾患、または障害の治療または予防、または皮膚のきめと外見の改善、または表皮剥離および/または表皮細胞再生の増強、または皮膚萎縮の影響の制御が達成される。
【0053】
本発明の別の実施態様において、前記方法では、酸性緩衝剤と酸性プロテアーゼとを含む組成物の有効量と、日焼け止め、抗炎症剤、抗酸化剤/ラジカル捕捉剤、キレート化剤、レチノイド、自己日焼け剤、および/またはベンゾフラン誘導体の1つまたはそれ以上の有効量との両方を、皮膚に同時に投与する。本明細書において「同時適用」または「同時に」とは、皮膚に物質を体の同じ部位にほぼ同じ時期に投与することを意味する。これは、物質を別々に皮膚に投与することにより行われるが、好適な方法は、すべての所望の物質を含む組成物を皮膚に投与することである。投与される日焼け止め剤の量は、一般に約0.02mg〜1mg/cm皮膚の範囲である。投与される抗炎症剤の量は、一般に約0.005mg〜約0.5mg、好ましくは約0.01mg〜約0.1mg/cm皮膚の範囲である。投与されるキレート化剤の量は、一般に約0.001mg〜約1mg、好ましくは約0.01mg〜約0.5mg、より好ましくは約0.05mg〜約0.1mg/cm皮膚の範囲である。投与されるレチノイドの量は、一般に約0.00001mg〜約0.02mg/cm皮膚の範囲である。投与されるベンゾフラン誘導体の量は、一般に投与当たり約0.001mg〜約1mg/cm皮膚、好ましくは約0.01mg〜約0.5mg/cm皮膚の範囲である。投与される酸性緩衝剤と酸性プロテアーゼとを含む組成物の量は、一般に治療される症状の重症度、被験体の皮膚の感受性、被験体の治療部位の位置、および使用される化合物の効力に依存して、一般に約0.001mg〜約1mg/cm皮膚、好ましくは約0.01mg〜約0.5mg/cm、より好ましくは約0.05mg〜約0.25mg/cm皮膚の範囲である。
【実施例】
【0054】
6.実施例
本発明の本質および本発明の実施方法をさらに詳細に説明するために、以下の実施例が提供されるが、これらは、決して本開示の残りの部分または本発明の範囲を限定するもの理解してはならない。
【0055】
セクション6.1〜6.4に記載される組成物および方法において以下の試薬を使用した:
AFP2000、真菌由来酸性プロテアーゼ(ソルベイ社(Solvay Inc.)、エルクハート、インディアナ州);藻類抽出物/アロエ抽出物(アクティブ・オーガニクス社(Active Organics, Inc.)、ダラス、テキサス州);アラントイン(サットン・ラボラトリーズ(Sutton Laboratories)、チャタム、ニュージャージー州);アーラセル65(Arlacel 65)(ICIサーファクタンツ(ICI Surfactants)、ウィルミントン、デラウェア州);アスパラギン酸(アジノモトUSA社、ティーネック、ニュージャージー州);BHT(イーストマン・コダック社(Eastman Kodak, Co.)、ロチェスター、ニューヨーク州);ブチレングリコール(ヘキスト・セラニーズ社(Hoechst Celanese, Co.)、シャーロット、ノースカロライナ州);カーボマー(Carbomer)(B.F.グッドリッチ社(B.F. Goodrich, Co.)、ブレックスヴィル、オハイオ州);セテアリールアルコール(cetearyl alcohol)(リポケミカルズ社(Lipo Chemicals, Inc.)、パターソン、ニュージャージー州);セチルアルコール(リポケミカルズ社(Lipo Chemicals, Inc.)、パターソン、ニュージャージー州);クエン酸(ロシュ・ビタミンズ・アンド・ファイン・ケミカルズ(Roche Vitamins and Fine Chemicals)、ナトリー、ニュージャージー州);コスモワックス(Cosmowax)、クロダ・ケミカルズ社(Croda Chemicals, Ltd.)、パーシッパニー、ニュージャージー州);シクロメチコン(cyclomethicone)(ダウ・ケミカルズUSA(Dow Chemicals USA)、ミッドランド、ミシガン州;ジヒドロキシアセトン(ロナ/E.メルク工業(Rona/E. Merck Industries)、ホーソーン、ニューヨーク州);ジメチコン(dimethicone)(ダウ・ケミカルズUSA(Dow Chemicals USA)、ミッドランド、ミシガン州);EDTA二ナトリウム(チバ・ガイギー社(Ciba-Geigy Co.)、グリーンズボロ、ノースカロライナ州);DL−パンテノール(ロシュ・ビタミンズ・アンド・ファイン・ケミカルズ(Roche Vitamins and Fine Chemicals)、ナトリー、ニュージャージー州;エトキシジグリコール(ガッテフォッセ社(Gattefosse S.A.)、パリ、フランス);グルコン酸(シグマ・ケミカルズ(Sigma Chemicals)、セントルイス、ミズーリ州);グリセレス−26(Glycereth-26)(アマーコール社(Amerchol Co.)、エディソン、ニュージャージー州);グリセラルステアレート(glyceral stearate)(クロダ・ケミカルズ社(Croda Chemicals, Ltd.)、パーシッパニー、ニュージャージー州);乳酸 USP 88%(リタ社(Rita Corporation)、ウッドストック、イリノイ州);レシチン/アジア酸(asiatic acid)(アクティブ・オーガニクス社(Active Organics, Inc.)、ダラス、テキサス州);メチルグルセス−20(gluceth-20)(アマーコール社(Amerchol Co.)、エディソン、ニュージャージー州);メチルパラベン(ナップ社(Napp Co.)、ロディ、ニュージャージー州);パルミチン酸オクチル(ICIサーファクタンツ(ICI Surfactants)、ウィルミントン、デラウェア州);ネオペンタン酸オクチルドデシル(ICIサーファクタンツ(ICI Surfactants)、ウィルミントン、デラウェア州);PEG−75(リポケミカルズ社(Lipo Chemicals, Inc.)、パターソン、ニュージャージー州);ステアリン酸PEG−40(リポケミカルズ社(Lipo Chemicals, Inc.)、パターソン、ニュージャージー州);ペプシン 1:15,000 NF(アメリカン・ラボラトリーズ社(American Laboratories, Inc.)、オマハ、ネブラスカ州);リン酸85%(シグマ・ケミカルズ(Sigma Chemicals)、セントルイス、ミズーリ州);ポリアクリルアミド/C13−14イソパラフィン/ラウレス−7(laureth-7)(セピック社(Seppic, Co.)、パリ、フランス);プロピレングリコール(ダウ・ケミカルズUSA(Dow Chemicals USA)、ミッドランド、ミシガン州);プロピルパラベン(ナップ社(Napp Co.)、ロディ、ニュージャージー州);パルミチン酸レチニル(ロシュ・ビタミンズ・アンド・ファイン・ケミカルズ(Roche Vitamins and Fine Chemicals)、ナトリー、ニュージャージー州);サリチル酸(カラマ社(Kalama Co.)、シアトル、ワシントン州);カルボキシル−メチルセルロースナトリウム7HXF(アクアロン社(Aqualon, Co.)、ウィルミントン、デラウェア州);ヒアルロン酸ナトリウム(アクティブ・オーガニクス社(Active Organics, Inc.)、ダラス、テキサス州);ステアレス−10(stearety-10)(リポケミカルズ社(Lipo Chemicals, Inc.)、パターソン、ニュージャージー州);酢酸トコフェリル(ロシュ・ビタミンズ・アンド・ファイン・ケミカルズ(Roche Vitamins and Fine Chemicals)、ナトリー、ニュージャージー州);トリエタノールアミン99%(バスフ社(BASF Co.)、マウントオリーブ、ニュージャージー州);およびキサンタンガム(ケルコ(Kelco)、サンジエゴ、カリホルニア州)。
【0056】
6.1 皮膚剥離の増強
本発明の組成物は、皮膚剥離および細胞再生の増強のために、個々のヒト掌側前腕で、異なる濃度の酸性プロテアーゼであるペプシン、1:15,000 NF(アメリカン・ラボラトリーズ社(American Laboratories, Inc.)、オマハ、ネブラスカ州)および酸性緩衝剤である乳酸で試験した。年齢30〜60歳の被験者20名が選択され、本試験法に関連して供給されるもの(合成石鹸を含む)を除いて、試験期間の前5日間と試験の間、いずれの製品もその掌側前腕で使用するのを控えることが求められた。被験者はいずれも、(1)妊娠または授乳しておらず、また試験後3ヶ月以内に妊娠の予定がなく;(2)1つまたはそれ以上の既知の伝染性疾患に罹っておらず;(3)試験時に他のいずれの臨床的試験にも関係しておらず;(4)乾癬、皮膚炎、および/または湿疹に罹患しておらず;(5)レチノイド、コルチコステロイド、または抗生物質を含む、試験結果を妨害する可能性があると考えられる薬物療法を受けておらず;(6)試験前の6ヶ月間レチノイド、コルチコステロイド、または抗生物質をとっておらず;および/または(7)タバコ製品を使用しておらず、敏感皮膚でなく、試験に不適切と考えられるタイプの皮膚ではなく、また試験に不適切になると考えられる他の特徴はなかった。
【0057】
各被験者の各掌側前腕に、ペトロラタム中に粉砕した5%の超純粋なダンシルクロリドを1〜2gm/cmに適用した4つの2×3cm接着包帯を貼り付けた。各前腕の包帯の3つは、試験部位として使用し、残りの1つは対照として使用した。
【0058】
各被験者の各前腕の4つの部位を、ダンシルクロリドを装填した包帯で覆い、24時間平静に保った。24時間後、包帯を除去し、部位を洗浄し、そしてダンシルクロリドによる部位の染色を長波長UV光源で見て確認した。6つの非対照のダンシルクロリドは、ランダムに選択した表Iに記載される試験組成物の1〜2ml/cmの1日2回の局所適用を受けた各被験者の試験部位を染色した。適用の際、試験組成物を皮膚の試験部位に、その部位の湿りがなくなるまで擦り込んだ。ダンシルクロリド染色を確認後、試験部位と対照部位を遮蔽なしのままにし、試験部位が試験の適用を受け、かつ対照部位がいずれの試験組成物も受けないことを除いて、同じ方法で操作した。
【0059】
【表1】

角質層の剥離/角質溶解は、染色の除去を測定するため長波長UV光源下で毎日ダンシルクロリド染色を可視化することにより測定した。角質層の剥離/角質溶解および付随する細胞再生の上昇パーセントは、以下の式により計算した:
上昇%=[(未処理領域の除去にかかる日数−処理領域の除去にかかる日数)/
未処理領域の除去にかかる日数]×100
【0060】
【表2】

試験から得られたデータは、表IIおよび図1と2に要約する。表II、カラム5に示されるように、酸性緩衝剤の乳酸は、1.5重量%および3重量%の濃度で単独である程度の正の角質溶解/細胞再生作用を有していた[対照(試験組成物1)に試験組成物2と8を比較されたい]。これらの正の角質溶解/細胞再生作用は、酸性プロテアーゼであるペプシンの存在下で著しく増強される(試験組成物3〜7および9〜13を参照のこと)。また、この増強が、用量依存性であること、すなわち、酸性プロテアーゼの濃度が上昇するにしたがい角質層の剥離/細胞再生速度が上昇することも明らかである(表IIのカラム5を参照のこと)。図1は、カラム5のデータをグラフにより表す。
【0061】
表IIのカラム6は、1.5重量%および3重量%の濃度での乳酸単独により得られる剥離/細胞再生速度に対する、種々の濃度の酸性プロテアーゼペプシンにより得られる剥離/細胞再生速度の上昇パーセントを反映する。カラム6のデータは、図2にグラフにより表される。酸性プロテアーゼ作用は、使用した両方の乳酸濃度で有意であるが、1.5重量%の乳酸濃度の酸性プロテアーゼペプシンで、より大きな増強パーセントが得られることが明らかである。
【0062】
被験者の数名の皮膚では低レベルの発赤および腫脹が観察された(3重量%の乳酸濃度では皮膚試験部位の約75%)が、1.5重量%の乳酸濃度ではほとんど観察されなかった。さらには、この知見は、ペプシンの存在にはほとんど無関係であった。すなわち、適切な濃度の酸性プロテアーゼの存在下で、低い非刺激性レベルの酸性緩衝剤を使用することにより、有意な剥離/細胞再生が達成される。生理学的pH範囲で活性なプロテアーゼとは対照的に、皮膚に適用される本明細書で規定された酸性プロテアーゼは、皮膚自体の自然のプロセスが皮膚表面のpHを約5.5のその正常値に上昇させるまでは、そのタンパク質分解活性を維持する。
6.2 本発明の方法に使用するための組成物
以下の表は、本発明の組成物の異なる実施例の処方を列挙する。以下の全ての組成物は、例えば希リン酸または水酸化ナトリウム(NaOH)により、約3〜3.2のpHに調整した。
【0063】
【表3】

【0064】
【表4】

【0065】
【表5】

【0066】
【表6】

【0067】
【表7】

【0068】
【表8】

【0069】
【表9】

【0070】
【表10】

6.3 安定化組成物
pH3の以下の組成物は、37℃で組成物を貯蔵した少なくとも3ヶ月の期間にわたりその酸性プロテアーゼ活性の少なくとも90%を保持する。
【0071】
【表11】

6.4 種々のpHレベルでのタンパク質分解活性
約5.5未満のpHでタンパク質分解活性を有するかどうか、およびその活性が最適pHでの活性に比較して約10%未満まで低下するかどうかを求めるために、ある範囲のpH値にわたって2つの酸性プロテアーゼ酵素を試験した。タンパク質分解活性は、以下に記載されるようにHUT 測定法を用いてヘモグロビンに及ぼすタンパク質分解作用を求めることにより測定した。2つの酸性プロテアーゼは、アメリカン・ラボラトリーズ社(American Laboratories, Inc.)(オマハ、ネブラスカ州)により供給されるペプシン 1:15,000 NF(約1000HUT 単位/mg )、およびソルベイ社(Solvay Inc.)(エルクハート、インディアナ州)により供給される真菌由来酸性プロテアーゼのAFP2000(約100HUT単位/mg )である。測定法は、最初にヘモグロビン基質(HEMOGLOBIN SUBSTRATE)ストック溶液とTCAストック(TCA STOCK)を調製することにより実施された。ヘモグロビン基質は、2gのウシヘモグロビン(シグマ・ケミカルズ(Sigma Chemicals)、セントルイス、ミズーリ州)を80mlの蒸留水に溶解することにより調製した。次にこの溶液を正確なpH(pH2、3.5、5.5または6)に調整した。1と3の間のpH値では、1.8gのリン酸を100mMの最終濃度に溶解して、50%水酸化ナトリウムまたは50%塩酸によりpHを調整した。3と6の間のpH値では、2gのクエン酸を100mMの最終濃度に溶解して、50%水酸化ナトリウムまたは塩酸によりpHを調節した。蒸留水を加えることにより、溶液を100mlの最終容量にした。次に異なるpH値の基質を30℃で20分間インキュベートし、続いてグラスウールによりろ過した。5gのトリクロロ酢酸を100mlの蒸留水に溶解することにより、TCAストック溶液を調製した。
【0072】
次に10mgのペプシンを10mlの蒸留水に溶解し、100mgのAFP2000および300mgのクエン酸を8mlの蒸留水に溶解することにより、酵素標準液を調製した。次に6M HClまたは50%水酸化ナトリウムにより、この溶液のpHを約3.5に調整し、蒸留水の添加により最終容量を10mlにした。
【0073】
試料のそれぞれについて、4本の試験管を「B」、「T1」、「T2」および「T3」とマークし、そして4mlのヘモグロビン基質溶液を各試験管に加え、次にこれらを37℃に置いた。100μlの酵素標準液を各「T」試験管、すなわち、T1、T2およびT3に加えた。次に試験管を、ペプシンについては37℃で20分間、そしてAFP2000については30分間インキュベートした。次に10mlのTCAストック溶液を全ての試験管に加え、そして100μlの酵素を試験管「B」に加えた。次に試験管を1000rpmで1分間遠心分離した。各試験管の試料をシリンジフィルターにより濾過して石英キュベットに入れ、280nmで吸光度を測定した。バックグラウンド吸光度は、「T」の吸光度のそれぞれから差し引き、個々の「T1」、「T2」および「T3」の吸光度を、試験した各pHで各酵素について平均した。
【0074】
図3は、両方の酵素がpH2で最適活性を有したことを示す。さらに、両方の酵素とも、pH2での最適レベルに比較してpH5.5およびそれ以上では10%未満の活性であった。これらの酵素が、本発明において使用することができる酵素であることを、この測定は明白に証明している。さらに、このような測定法を用いることにより、さらにどの酵素が、本発明に使用するのに適しているかを決定することができる。
【0075】
本明細書に開示される具体的な実施態様は、本発明のいくつかの側面の例示として意図されるため、本明細書に記載し特許請求される発明は、これらの実施態様により範囲を限定されるものではない。任意の同等な実施態様は、本発明の範囲に含まれることが意図される。実際、本明細書に示され記載されるところに加えて本発明の種々の修飾は、前述の説明から当業者には明らかであろう。このような修飾もまた、添付される請求の範囲に入ることが意図される。
【0076】
多くの参照文献が本明細書に引用され、その全開示内容は、その全体が参考のため本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】図1は、2つの異なる量の酸性緩衝剤(乳酸)を有する異なる濃度の酸性プロテアーゼ(HUT 単位×10/g)(ペプシン)による、細胞再生速度に及ぼす効果を示す棒グラフである。斜線の棒グラフは1.5%乳酸、白抜きの棒グラフは3%乳酸を表す。
【図2】図2は、1.5%と3%の濃度の酸性緩衝剤単独(乳酸)の剥離/細胞再生速度の増加パーセントに対する、種々の濃度の酸性プロテアーゼ(HUT 単位×10/g)(ペプシン)の剥離/細胞再生速度の増加パーセントを示す棒グラフである。斜線の棒グラフは1.5%乳酸、白抜きの棒グラフは3%乳酸を表す。
【図3】図3は、HUT測定法で異なるレベルのpHでの、ペプシンとAFP2000(ソルベイ社(Solvay Inc.)、エルクハート、インディアナ州、真菌由来の酸性プロテアーゼ)の活性の差を示す棒グラフである。斜線の棒グラフはAFP2000、白抜きの棒グラフはペプシンを表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異常な皮膚症状、疾患、または障害を治療または予防するための、および/または表皮の剥離を増強するための、および/または皮膚のきめまたは外見を改善するための組成物であって、(1)pH約5.5未満では酵素活性を示し、pH約5.5またはそれ以上のpHではほとんど活性がない酸性プロテアーゼと;(2)皮膚の表面pHを一時的にpH約5.5未満に下げる無機酸を含む酸性緩衝剤とを含み、この酸性緩衝剤は自然の表皮プロセスによる中和を受け、そのため皮膚の表面pHはpH約5.5に戻る、上記組成物。
【請求項2】
酸性緩衝剤は、薬剤または化粧品として許容される担体、ビヒクル、または賦形剤をさらに含む、請求項1の組成物。
【請求項3】
酸性プロテアーゼは、真菌プロテアーゼ、細菌プロテアーゼ、または哺乳動物プロテアーゼ、およびこれらの混合物よりなる群から選択される、請求項1の組成物。
【請求項4】
酸性プロテアーゼは、ペプシン、カテプシン、ヒト尿の酸性プロテアーゼ、リゾプスペプシン、ペニシロペプシン、エンドチアペプシン、およびこれらの混合物よりなる群から選択される、請求項3の組成物。
【請求項5】
無機酸は、リン酸、ピロリン酸、三リン酸、ポリリン酸、重硫酸ナトリウム、重硫酸カリウム、およびこれらの混合物よりなる群から選択される、請求項1の組成物。
【請求項6】
酸性緩衝剤の薬剤または化粧品として許容される担体、ビヒクル、または賦形剤成分は、ローション剤、チンキ剤、クリーム剤、乳剤、ゲル剤、軟膏剤、水、水で練りうるクリーム、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、セルロース、親水性アクリルポリマー、皮膚軟化薬、皮膚加湿成分、酵素安定剤、グリセロール、界面活性剤、保存剤、医薬製剤で使用される親水性濃化剤、およびこれらの混合物よりなる群から選択される、請求項2の組成物。
【請求項7】
酸性プロテアーゼは、最終組成物の約0.001重量%〜約75重量%の量で存在する、請求項1の組成物。
【請求項8】
酸性プロテアーゼは、最終組成物の好ましくは約0.1重量%〜約50重量%の量で存在する、請求項7の組成物。
【請求項9】
酸性プロテアーゼは、最終組成物の最も好ましくは約1重量%〜約5重量%の量で存在する、請求項8の組成物。
【請求項10】
酸性プロテアーゼは、約1〜約5000HUT 単位/mg の総比活性を有する、請求項1の組成物。
【請求項11】
酸性プロテアーゼは、好ましくは約50〜約3000HUT 単位/mg の総比活性を有する、請求項10の組成物。
【請求項12】
酸性プロテアーゼは、最も好ましくは約500〜約1500HUT 単位/mg の総比活性を有する、請求項11の組成物。
【請求項13】
酸性緩衝剤の酸成分は、最終組成物の約0.001重量%〜約95重量%の量で存在する、請求項1の組成物。
【請求項14】
酸性緩衝剤の酸成分は、好ましくは最終組成物の約0.01重量%〜約25重量%の量で存在する、請求項13の組成物。
【請求項15】
酸性緩衝剤の酸成分は、最も好ましくは最終組成物の約1重量%〜約5重量%の量で存在する、請求項14の組成物。
【請求項16】
表皮の剥離を増強するための、および/または表皮の細胞の再生を増強するための方法であって、(1)pH約5.5未満では酵素活性を示し、pH約5.5またはそれ以上のpHではほとんど活性がない酸性プロテアーゼと;(2)皮膚の表面pHを一時的にpH約5.5未満に下げる酸性緩衝剤とを含む組成物の有効量を、表皮の剥離および/または表皮の細胞の再生を増強するのに効果的な時間、被験体に皮膚の領域に局所投与することを含んでなり、酸性緩衝剤は自然の表皮プロセスによる中和を受け、そのため皮膚の表面pHはpH約5.5に戻る、上記方法。
【請求項17】
異常な皮膚症状、疾患、または障害の治療または予防、および/または皮膚萎縮の影響の制御のための方法であって、(1)pH約5.5未満では酵素活性を示し、pH約5.5またはそれ以上のpHではほとんど活性がない酸性プロテアーゼと;(2)皮膚の表面pHを一時的にpH約5.5未満に下げる酸性緩衝剤とを含む組成物の有効量を、症状、疾患、または障害の治療または予防、および/または皮膚萎縮の影響の制御、および/または皮膚のきめと外見の改善に有効な時間、被験体に皮膚の領域に局所投与することを含んでなり、酸性緩衝剤は自然の表皮プロセスによる中和を受け、そのため皮膚の表面pHはpH約5.5に戻る、上記方法。
【請求項18】
異常な皮膚症状、疾患または障害は、乾燥皮膚、重症の乾燥皮膚、ふけ、にきび、角化症、乾癬、湿疹、皮膚のはがれ、そう痒症、老人斑、ほくろ、黒皮症、しわ、いぼ、皮膚の斑点、過色素沈着皮膚、過角化性皮膚、炎症性皮膚症、年齢関連皮膚変化および乾癬よりなる群から選択される、請求項17の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−302680(P2007−302680A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−169470(P2007−169470)
【出願日】平成19年6月27日(2007.6.27)
【分割の表示】特願平10−501883の分割
【原出願日】平成9年6月13日(1997.6.13)
【出願人】(507173894)アクティブ オーガニクス,エルピー (1)
【Fターム(参考)】